特許第6288996号(P6288996)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6288996超音波診断装置及び超音波イメージングプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6288996
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】超音波診断装置及び超音波イメージングプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/08 20060101AFI20180226BHJP
【FI】
   A61B8/08
【請求項の数】16
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2013-188776(P2013-188776)
(22)【出願日】2013年9月11日
(65)【公開番号】特開2015-54056(P2015-54056A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2016年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】金山 侑子
(72)【発明者】
【氏名】矢野 雅彦
【審査官】 森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−023913(JP,A)
【文献】 特開2001−238884(JP,A)
【文献】 特開2001−054520(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/001776(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/004661(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/162966(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/077579(WO,A1)
【文献】 特開2012−100997(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/141220(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/015001(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00−8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響放射力でせん断波を発生させることにより関心領域内に変位を発生させる変位発生用超音波が、前記関心領域の外側に位置し、前記関心領域からラテラル方向に離れた送信位置に送信されるように、前記変位発生用超音波を超音波プローブから送信させ、前記変位発生用超音波により発生する変位を観測するための観測用超音波を、前記超音波プローブから複数回送信させる送信部と、
前記送信位置と前記関心領域の間の距離を規定したオフセット値を記憶する記憶部と、
記送信位置および前記関心領域の位置をそれぞれ示すインジケータを、前記記憶部から読み出した前記オフセット値に基づいて生成する生成部と、
前記関心領域を含む領域に対応する超音波画像を表示部に表示させ、前記インジケータを前記超音波画像に重ねて表示させる出力制御部と
を備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記生成部は、前記関心領域が分割された複数の分割関心領域の位置及び大きさを示すインジケータを生成するとともに、それぞれの分割関心領域に対応する前記送信位置を示すインジケータを生成することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記送信位置、前記関心領域の位置、又は前記関心領域の大きさを変更するための変更指示を操作者から受け付ける変更部を更に備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記送信部による前記変位発生用超音波及び前記観測用超音波の送信を制御する送信制御部を更に備え、
前記記憶部は、更に、前記分割関心領域の幅の上限値を記憶し、
前記送信制御部は、更に、前記上限値に基づいて、前記関心領域を前記複数の分割関心領域に分割することを特徴とする請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記分割関心領域の位置、前記分割関心領域の大きさ、又は前記分割関心領域の数を変更するための変更指示を操作者から受け付けて、受け付けた変更指示に基づいて、前記分割関心領域の位置、大きさ、又は数を変更する変更部を更に備えたことを特徴とする請求項2又は4に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記超音波画像から生体組織の輪郭を抽出する抽出部と、
前記輪郭と、前記送信位置とに基づいて、当該送信位置から所定の範囲内に所定の輪郭が存在するか否かを判定する判定部とを更に備え、
前記出力制御部は、前記所定の範囲内に前記所定の輪郭が存在すると判定された場合に、警告を出力することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記超音波画像から輪郭を抽出する抽出部と、
前記送信位置、前記関心領域の位置、又は前記関心領域の大きさを変更するための変更指示を操作者から受け付ける変更部と、
前記輪郭と、前記送信位置とに基づいて、当該送信位置から所定の範囲内に所定の輪郭が存在するか否かを判定する判定部とを更に備え、
前記変更部は、前記所定の範囲内に前記所定の輪郭が存在すると判定された場合に、前記送信位置、前記関心領域の位置、前記関心領域の大きさ、前記分割関心領域の位置、前記分割関心領域の大きさ、又は前記分割関心領域の数のうち少なくとも一つを変更することを特徴とする請求項2又は4に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記超音波画像から輪郭を抽出する抽出部と、
前記送信位置、前記関心領域の位置、又は前記関心領域の大きさを変更するための変更指示を操作者から受け付ける変更部と、
前記輪郭と、前記送信位置とに基づいて、当該送信位置から所定の範囲内に所定の輪郭が存在するか否かを判定する判定部とを更に備え、
前記出力制御部は、前記所定の範囲内に前記所定の輪郭が存在すると判定された場合に、警告を出力し、
前記変更部は、前記所定の範囲内に前記所定の輪郭が存在すると判定された場合に、前記送信位置、前記関心領域の位置、前記関心領域の大きさ、前記分割関心領域の位置、前記分割関心領域の大きさ、又は前記分割関心領域の数のうち少なくとも一つを変更することを特徴とする請求項2又は4に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記出力制御部は、前記変更部によって変更された前記送信位置のインジケータ、前記関心領域のインジケータ、又は前記分割関心領域のインジケータのうち、少なくとも一つを、前記超音波画像に重畳させて出力することを特徴とする請求項又はに記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記所定の輪郭は、前記変位発生用超音波の方向と略平行な接線を有することを特徴とする請求項6〜9のいずれか一つに記載の超音波診断装置。
【請求項11】
音響放射力でせん断波を発生させることにより関心領域内に変位を発生させる変位発生用超音波が、前記関心領域の外側に位置し、前記関心領域からラテラル方向に離れた送信位置に送信されるように、前記変位発生用超音波を超音波プローブから送信させ、前記変位発生用超音波により発生する変位を観測するための観測用超音波を、前記超音波プローブから複数回送信させる送信部と、
Bモード画像データから輪郭を抽出する抽出部と、
前記輪郭と、前記送信位置とに基づいて、当該送信位置から所定の範囲内に、前記変位発生用超音波の方向と略平行な接線を有する輪郭が存在するか否かを判定する判定部と、
前記所定の範囲内に前記輪郭が存在すると判定された場合に、前記送信位置、前記関心領域の位置、又は前記関心領域の大きさを変更する変更部とを備え、
前記送信部は、前記変更部によって変更された前記送信位置、前記関心領域の位置、又は前記関心領域の大きさに基づいて、前記変位発生用超音波及び前記観測用超音波を前記超音波プローブから送信させることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項12】
記所定の範囲内に前記輪郭が存在すると判定された場合に、警告を出力する出力制御部を更に備えることを特徴とする請求項11に記載の超音波診断装置。
【請求項13】
変更された前記送信位置を示すインジケータ、及び、変更された前記関心領域の位置を示すインジケータのうち、少なくとも一つを生成する生成部と、
生成された前記送信位置を示すインジケータ、及び前記関心領域の位置を示すインジケータのうち、少なくとも一つを、前記Bモード画像データに重畳させて出力する出力制御部と
を更に備えたことを特徴とする請求項11又は12に記載の超音波診断装置。
【請求項14】
前記超音波プローブにより受信された前記観測用超音波に基づいて、前記関心領域内に適切なせん断波の伝播が生じたか否かを確認するための画像を生成する画像生成部と、
前記画像を超音波画像とともに表示する出力制御部とを更に備えることを特徴とする請求項1〜13のいずれか一つに記載の超音波診断装置。
【請求項15】
音響放射力でせん断波を発生させることにより関心領域内に変位を発生させる変位発生用超音波が、前記関心領域の外側に位置し、前記関心領域からラテラル方向に離れた送信位置に送信されるように、前記変位発生用超音波を超音波プローブから送信させ、前記変位発生用超音波により発生する変位を観測するための観測用超音波を、前記超音波プローブから複数回送信させる送信手順と、
前記送信位置と前記関心領域の間の距離を規定したオフセット値を記憶する記憶部から読み出した前記オフセット値に基づいて、記送信位置および前記関心領域の位置をそれぞれ示すインジケータを生成する生成手順と、
前記関心領域を含む領域に対応する超音波画像を表示部に表示させ、前記インジケータを前記超音波画像に重ねて表示させる出力制御手順と
をコンピュータに実行させることを特徴とする超音波イメージングプログラム。
【請求項16】
音響放射力でせん断波を発生させることにより関心領域内に変位を発生させる変位発生用超音波が、前記関心領域の外側に位置し、前記関心領域からラテラル方向に離れた送信位置に送信されるように、前記変位発生用超音波を超音波プローブから送信させ、前記変位発生用超音波により発生する変位を観測するための観測用超音波を、前記超音波プローブから複数回送信させる送信手順と、
Bモード画像データから輪郭を抽出する抽出手順と、
前記輪郭と、前記送信位置とに基づいて、当該送信位置から所定の範囲内に、前記変位発生用超音波の方向と略平行な接線を有する輪郭が存在するか否かを判定する判定手順と、
前記所定の範囲内に前記輪郭が存在すると判定された場合に、前記送信位置、前記関心領域の位置、又は前記関心領域の大きさを変更する変更手順とをコンピュータに実行させ、
前記送信手順は、前記変更手順によって変更された前記送信位置、前記関心領域の位置、又は前記関心領域の大きさに基づいて、前記変位発生用超音波及び前記観測用超音波を前記超音波プローブから送信させることを特徴とする超音波イメージングプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波診断装置及び超音波イメージングプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生体組織の硬さを測定し、測定した硬さの分布を映像化するエラストグラフィー(Elastography)が知られている。エラストグラフィーは、例えば、肝硬変等、病変の進行度に応じて生体組織の硬さが変化する疾患の診断に利用されている。エラストグラフィーにおいて、生体組織を変位させて硬さを評価する方法は、以下の2つに大別される。
【0003】
1つ目の方法は、超音波プローブで体表から生体組織を圧迫・開放した際に観測される走査断面内の各点の歪みの大きさから、相対的な硬さを可視化する方法である。また、2つ目の方法は、体表から生体組織に音響放射力や機械的振動を与えてせん断波(shear wave)による変位を発生させ、走査断面内の各点における変位を経時的に観測することで、せん断波の伝播速度を求めて、弾性率を求める方法である。前者の方法では、歪みの局所的な大きさは、超音波プローブを用手的に動かす大きさに依存し、周囲と比較した時に着目領域が相対的に硬いか軟らかいかという評価が行われる。これに対して、後者の方法では、着目領域の絶対的な弾性率を求めることができる。
【0004】
ここで、後者の方法において、せん断波は硬さの違う組織間の境界面で反射する性質がある。このため、反射したせん断波による変位が観測されることにより、せん断波の伝播速度が正確に求められず、生体組織の硬さを示す硬さ画像にアーチファクトが発生することがある。したがって、反射したせん断波に起因するアーチファクトを抑制するための技術が種々提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Thomas Deffieux、 Jean−Luc Gennisson、 Jeremy Bercoff、and Mickael Tanter、 「On the Effects of Reflected Waves in Transient Shear Wave Elastography」、 IEEE Transactions on Ultrasonics、 Ferroelectrics、 and Frequency Control、 vol.58、 no.10、 October 2011、pp.2032−2035
【非特許文献2】Ned C. Rouze、 Michael H. Wang、 Mark L. Palmeri、 and Kathryn R. Nightingale、 「Parameters Affecting the Resolution and Accuracy of 2−D Quantitative Shear Wave Images」 IEEE Transactions on Ultrasonics、 Ferroelectrics、 and Frequency Control、 vol.59、 no.8、 August 2012、pp.1729−1740
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、硬さ画像の画質を向上させることができる超音波診断装置及び超音波イメージングプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る超音波診断装置は、送信部と、記憶部と、生成部と、出力制御部とを備える。送信部は、音響放射力でせん断波を発生させることにより関心領域内に変位を発生させる変位発生用超音波が、前記関心領域の外側に位置し、前記関心領域からラテラル方向に離れた送信位置に送信されるように、前記変位発生用超音波を超音波プローブから送信させ、前記変位発生用超音波により発生する変位を観測するための観測用超音波を、前記超音波プローブから複数回送信させる。記憶部は、前記送信位置と前記関心領域の間の距離を規定したオフセット値を記憶する。生成部は、前記送信位置および前記関心領域の位置をそれぞれ示すインジケータを、前記記憶部から読み出した前記オフセット値に基づいて生成する。出力制御部は、前記関心領域を含む領域に対応する超音波画像を表示部に表示させ、前記インジケータを前記超音波画像に重ねて表示させる
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成例を示すブロック図である。
図2A図2Aは、課題を説明するための図である。
図2B図2Bは、課題を説明するための図である。
図2C図2Cは、課題を説明するための図である。
図3A図3Aは、課題を説明するための図である。
図3B図3Bは、課題を説明するための図である。
図4A図4Aは、第1の実施形態に係る超音波診断装置の処理手順を示すフローチャートである。
図4B図4Bは、第1の実施形態に係る超音波診断装置の処理手順を示すフローチャートである。
図5A図5Aは、第1の実施形態に係る超音波診断装置における処理を説明するための図である。
図5B図5Bは、第1の実施形態に係る超音波診断装置における処理を説明するための図である。
図5C図5Cは、第1の実施形態に係る超音波診断装置における処理を説明するための図である。
図5D図5Dは、第1の実施形態に係る超音波診断装置における処理を説明するための図である。
図6図6は、第2の実施形態に係る超音波診断装置の構成例を示すブロック図である。
図7図7は、第2の実施形態に係る超音波診断装置の処理手順を示すフローチャートである。
図8図8は、第2の実施形態に係る超音波診断装置における処理を説明するための図である。
図9A図9Aは、第2の実施形態に係る超音波診断装置における処理を説明するための図である。
図9B図9Bは、第2の実施形態に係る超音波診断装置における処理を説明するための図である。
図10図10は、第3の実施形態に係る超音波診断装置の処理手順を示すフローチャートである。
図11A図11Aは、第3の実施形態に係る超音波診断装置における処理を説明するための図である。
図11B図11Bは、第3の実施形態に係る超音波診断装置における処理を説明するための図である。
図12図12は、第4の実施形態に係る超音波診断装置の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、実施形態に係る超音波診断装置及び超音波イメージングプログラムを説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成について説明する。図1は、第1の実施形態に係る超音波診断装置の構成例を示すブロック図である。図1に示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、超音波プローブ1と、モニタ2と、入力装置3と、装置本体10とを有する。
【0011】
超音波プローブ1は、複数の振動子(例えば、圧電振動子)を有し、これら複数の振動子は、後述する装置本体10が有する送信部11から供給される駆動信号に基づき超音波を発生する。また、超音波プローブ1が有する複数の振動子は、被検体Pからの反射波を受信して電気信号に変換する。また、超音波プローブ1は、振動子に設けられる整合層と、振動子から後方への超音波の伝播を防止するバッキング材等を有する。
【0012】
超音波プローブ1から被検体Pに超音波が送信されると、送信された超音波は、被検体Pの体内組織における音響インピーダンスの不連続面で次々と反射され、反射波信号として超音波プローブ1が有する複数の振動子にて受信される。受信される反射波信号の振幅は、超音波が反射される不連続面における音響インピーダンスの差に依存する。なお、送信された超音波パルスが、移動している血流や心臓壁等の表面で反射された場合の反射波信号は、ドプラ効果により、移動体の超音波送信方向に対する速度成分に依存して、周波数偏移を受ける。
【0013】
なお、第1の実施形態は、図1に示す超音波プローブ1が、複数の圧電振動子が一列で配置された1次元超音波プローブである場合や、一列に配置された複数の圧電振動子が機械的に揺動される1次元超音波プローブである場合、複数の圧電振動子が格子状に2次元で配置された2次元超音波プローブである場合のいずれであっても適用可能である。
【0014】
入力装置3は、マウス、キーボード、ボタン、パネルスイッチ、タッチコマンドスクリーン、フットスイッチ、トラックボール、ジョイスティック等を有し、超音波診断装置の操作者からの各種設定要求を受け付け、装置本体10に対して受け付けた各種設定要求を転送する。
【0015】
モニタ2は、超音波診断装置の操作者が入力装置3を用いて各種設定要求を入力するためのGUI(Graphical User Interface)を表示したり、装置本体10において生成された超音波画像データ等を表示したりする。
【0016】
装置本体10は、超音波プローブ1が受信した反射波信号に基づいて超音波画像データを生成する装置であり、図1に示すように、送信部11と、受信部12と、信号処理部13と、画像生成部14と、画像メモリ15と、内部記憶部16と、制御部17とを有する。
【0017】
送信部11は、超音波送信における送信指向性を制御する。具体的には、送信部11は、レートパルサ発生器、送信遅延部、送信パルサ等を有し、超音波プローブ1に駆動信号を供給する。レートパルサ発生器は、所定のレート周波数(PRF:Pulse Repetition Frequency)で、送信超音波を形成するためのレートパルスを繰り返し発生する。レートパルスは、送信遅延部を通ることで異なる送信遅延時間を有した状態で送信パルサへ電圧を印加する。すなわち、送信遅延部は、超音波プローブ1から発生される超音波をビーム状に集束して送信指向性を決定するために必要な振動子ごとの送信遅延時間を、レートパルサ発生器が発生する各レートパルスに対し与える。送信パルサは、かかるレートパルスに基づくタイミングで、超音波プローブ1に駆動信号(駆動パルス)を印加する。送信方向或いは送信遅延時間は、後述する内部記憶部16に記憶されており、送信部11は、内部記憶部16を参照して、送信指向性を制御する。
【0018】
駆動パルスは、送信パルサからケーブルを介して超音波プローブ1内の振動子まで伝達した後に、振動子において電気信号から機械的振動に変換される。この機械的振動は、生体内部で超音波として送信される。振動子ごとに異なる送信遅延時間を持った超音波は、収束されて、所定方向に伝搬していく。送信遅延部は、各レートパルスに対し与える送信遅延時間を変化させることで、振動子面からの送信方向を任意に調整する。送信部11は、超音波ビームの送信に用いる振動子の数及び位置(送信開口)と、送信開口を構成する各振動子の位置に応じた送信遅延間とを制御することで、送信指向性を与える。例えば、送信部11の送信遅延回路は、送信遅延時間をパルサ回路が発生する各レートパルスに対し与えることで、超音波送信の深さ方向における集束点(送信フォーカス)の位置を制御する。
【0019】
なお、送信部11は、後述する制御部17の指示に基づいて、所定のスキャンシーケンスを実行するために、送信周波数、送信駆動電圧等を瞬時に変更可能な機能を有している。特に、送信駆動電圧の変更は、瞬間にその値を切り替え可能なリニアアンプ型の発信回路、または、複数の電源ユニットを電気的に切り替える機構によって実現される。
【0020】
超音波プローブ1が送信した超音波の反射波は、超音波プローブ1内部の振動子まで到達した後、振動子において、機械的振動から電気的信号(反射波信号)に変換され、受信部12に入力される。
【0021】
受信部12は、超音波受信における受信指向性を制御する。具体的には、受信部12は、プリアンプ、A/D変換部、受信遅延部及び加算部等を有し、超音波プローブ1が受信した反射波信号に対して各種処理を行なって反射波データを生成する。プリアンプは、反射波信号をチャンネルごとに増幅してゲイン補正処理を行なう。A/D変換部は、ゲイン補正された反射波信号をA/D変換し、受信遅延部は、受信指向性を決定するのに必要な受信遅延時間をチャンネルごとに与える。加算部は、受信遅延時間が与えられた反射波信号(デジタル信号)を加算して、反射波データを生成する。加算器の加算処理により、反射波信号の受信指向性に応じた方向からの反射成分が強調される。受信方向或いは受信遅延時間は、後述する内部記憶部16に記憶されており、受信部12は、内部記憶部16を参照して、受信指向性を制御する。なお、第1の実施形態に係る受信部12は、並列同時受信を行なうことも可能である。
【0022】
信号処理部13は、受信部12が反射波信号から生成した反射波データに対して各種の信号処理を行う。信号処理部13は、受信部12から受信した反射波データに対して、対数増幅、包絡線検波処理等を行って、サンプル点ごとの信号強度が輝度の明るさで表現されるデータ(Bモードデータ)を生成する。
【0023】
また、信号処理部13は、受信部12から受信した反射波データより、移動体のドプラ効果に基づく運動情報を、走査領域内の各サンプル点で抽出したデータ(ドプラデータ)を生成する。具体的には、信号処理部13は、移動体の運動情報として、平均速度、分散値、パワー値等を各サンプル点で抽出したドプラデータを生成する。ここで、移動体とは、例えば、血流や、心壁等の組織、造影剤である。
【0024】
ここで、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、生体組織の硬さを測定し、測定した硬さの分布を映像化するエラストグラフィーを実行可能な装置である。具体的には、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、音響放射力を与えて生体組織に変位を発生させることで、エラストグラフィーを実行可能な装置である。
【0025】
すなわち、第1の実施形態に係る送信部11は、音響放射力で生じるせん断波により変位を発生させる変位発生用バースト波(プッシュパルス)を超音波プローブ1から送信させる。そして、第1の実施形態に係る送信部11は、変位発生用バースト波により発生する変位を観測する観測用パルスを、走査領域内の複数の走査線それぞれで超音波プローブ1から複数回送信させる。観測用パルスは、変位発生用バースト波により発生したせん断波の伝播速度を、走査領域内の各サンプル点で観測するために送信される。通常、観測用パルスは、走査領域内の各走査線に対して、複数回(例えば、100回)、送信される。受信部12は、走査領域内の各走査線で送信された観測用パルスの反射波信号から、反射波データを生成する。なお、変位発生用バースト波は、変位発生用超音波の一例である。また、観測用パルスは、観測用超音波の一例である。
【0026】
そして、信号処理部13は、走査領域内の各走査線で複数回送信された観測用パルスの反射波データを解析して走査領域の硬さの分布を示す硬さ分布情報を算出する。具体的には、信号処理部13は、変位発生用バースト波によって発生したせん断波の伝搬速度を各サンプル点で測定することで、走査領域の硬さ分布情報を生成する。
【0027】
例えば、信号処理部13は、観測用パルスの反射波データを周波数解析する。これにより、信号処理部13は、各走査線の複数のサンプル点それぞれで、運動情報(組織ドプラデータ)を複数時相に渡って生成する。そして、信号処理部13は、各走査線の複数のサンプル点それぞれで得られた複数時相の組織ドプラデータの速度成分を時間積分する。これにより、信号処理部13は、各走査線の複数のサンプル点それぞれの変位を複数時相に渡って算出する。続いて、信号処理部13は、各サンプル点で変位が最大となる時間を求める。そして、信号処理部13は、各サンプル点で最大変位が得られた時間を、各サンプル点におけるせん断波の到達時間として取得する。続いて、信号処理部13は、各サンプル点におけるせん断波の到達時間の空間的微分を行うことで、各サンプル点でのせん断波の伝搬速度を算出する。以下、「せん断波の伝播速度」を、「せん断速度」と記載する。
【0028】
そして、信号処理部13は、せん断速度をカラーコード化し、対応するサンプル点にマッピングすることで、硬さ分布情報を生成する。硬い組織ではせん断速度が大きく、柔らかい組織ではせん断速度が小さくなる。すなわち、せん断速度の値は、組織の硬さ(弾性率)を示す値となる。上記の場合、観測用パルスは、組織ドプラ用の送信パルスである。なお、上記のせん断速度は、信号処理部13が、各サンプル点で変位が最大となる時間に基づくのではなく、隣接する走査線における組織の変位の相互相関により検出することで算出する場合であっても良い。
【0029】
なお、信号処理部13は、せん断速度から、ヤング率又はせん断弾性率を算出し、算出したヤング率又はせん断弾性率により硬さ分布情報を生成しても良い。せん断速度、ヤング率及びせん断弾性率は、いずれも生体組織の硬さを表す物理量として用いることができる。以下では、信号処理部13が、生体組織の硬さを表す物理量としてせん断速度を用いる場合について説明する。
【0030】
ここで、1回の変位発生用バースト波の送信で発生するせん断波は、伝播とともに、減衰する。広い領域に渡ってせん断速度を観測しようとした場合、ある特定の一つの走査線において送信された変位発生用バースト波により発生したせん断波は、伝播に伴い減衰し、変位発生用バースト波の送信位置から十分離れると、やがて観測不可能となる。
【0031】
かかる場合、変位発生用バースト波を方位方向における複数の位置において送信する必要がある。具体的には、走査領域(或いは、関心領域)は、方位方向に沿って複数の領域に分割される。送信部11は、各領域(以下、分割領域と表記)において観測用パルスを送受信する前に、それぞれ異なった走査線位置において変位発生用バースト波を送信し、せん断波を発生させる。この際、典型的には、変位発生用バースト波の送信位置は、各分割領域の近傍に設定される。同時並列受信数が少数に限定されている場合、送信部11は、変位発生用バースト波を1回送信した後に、ある分割領域の各走査線で観測用パルスを複数回送信する処理を、方位方向に沿って複数の分割領域それぞれで順次実行する。
【0032】
画像生成部14は、信号処理部13が生成したデータから超音波画像データを生成する。画像生成部14は、信号処理部13が生成したBモードデータから反射波の強度を輝度で表したBモード画像データを生成する。また、画像生成部14は、信号処理部13が生成したドプラデータから移動体情報を表すドプラ画像データを生成する。ドプラ画像データは、速度画像データ、分散画像データ、パワー画像データ、又は、これらを組み合わせた画像データである。
【0033】
また、画像生成部14は、信号処理部13によって生成された硬さ分布情報から、生体組織の硬さがカラー表示された硬さ画像データを生成する。例えば、画像生成部14は、走査領域内の各点におけるせん断速度に応じた画素値を各点に割り当てたせん断速度画像データを、硬さ画像データとして生成する。
【0034】
ここで、画像生成部14は、一般的には、超音波走査の走査線信号列を、テレビ等に代表されるビデオフォーマットの走査線信号列に変換(スキャンコンバート)し、表示用の超音波画像データを生成する。具体的には、画像生成部14は、超音波プローブ1による超音波の走査形態に応じて座標変換を行うことで、表示用の超音波画像データを生成する。また、画像生成部14は、スキャンコンバート以外に種々の画像処理として、例えば、スキャンコンバート後の複数の画像フレームを用いて、輝度の平均値画像を再生成する画像処理(平滑化処理)や、画像内で微分フィルタを用いる画像処理(エッジ強調処理)等を行う。また、画像生成部14は、超音波画像データに、付帯情報(種々のパラメータの文字情報、目盛り、ボディーマーク等)を合成する。
【0035】
すなわち、Bモードデータ、ドプラデータ及び硬さ分布情報は、スキャンコンバート処理前の超音波画像データであり、画像生成部14が生成するデータは、スキャンコンバート処理後の表示用の超音波画像データである。なお、画像生成部14は、信号処理部13が3次元のデータ(3次元Bモードデータ、3次元ドプラデータ及び3次元硬さ分布情報)を生成した場合、超音波プローブ1による超音波の走査形態に応じて座標変換を行うことで、ボリュームデータを生成する。そして、画像生成部14は、ボリュームデータに対して、各種レンダリング処理を行なって、表示用の2次元画像データを生成する。
【0036】
画像メモリ15は、画像生成部14が生成した表示用の画像データを記憶するメモリである。また、画像メモリ15は、信号処理部13が生成したデータを記憶することも可能である。画像メモリ15が記憶するBモードデータやドプラデータ、硬さ分布情報は、例えば、診断の後に操作者が呼び出すことが可能となっており、画像生成部14を経由して表示用の超音波画像データとなる。
【0037】
内部記憶部16は、超音波送受信、画像処理及び表示処理を行うための制御プログラムや、診断情報(例えば、患者ID、医師の所見等)や、診断プロトコルや各種ボディーマーク等の各種データを記憶する。また、内部記憶部16は、必要に応じて、画像メモリ15が記憶する画像データの保管等にも使用される。また、内部記憶部16が記憶するデータは、図示しないインタフェース部を介して、外部装置へ転送することができる。
【0038】
また、内部記憶部16は、撮影済みのせん断速度画像データに関する情報を記憶する。例えば、内部記憶部16は、撮影済みのせん断速度画像データについて、各サンプル点におけるせん断波の到達時間を記憶する。
【0039】
制御部17は、超音波診断装置の処理全体を制御する。具体的には、制御部17は、入力装置3を介して操作者から入力された各種設定要求や、内部記憶部16から読込んだ各種制御プログラム及び各種データに基づき、送信部11、受信部12、信号処理部13、画像生成部14の処理を制御する。また、制御部17は、画像メモリ15が記憶する表示用の超音波画像データをモニタ2にて表示するように制御する。
【0040】
なお、装置本体10に内蔵される送信部11及び受信部12等は、プロセッサ(CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、集積回路等)のハードウェアにより構成されることもあるが、ソフトウェア的にモジュール化されたプログラムにより構成される場合もある。
【0041】
以上、第1の実施形態に係る超音波診断装置の全体構成について説明した。かかる構成のもと、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、変位発生用バースト波の送信を行なって、生体組織の硬さを映像化する。
【0042】
この方法に関して、せん断波を発生させた後、近傍の各点(サンプル点)において変位の時間変化を観測し、変位がピークとなる時間をせん断波の到達時間として求めることが一般に行われる。そして、せん断波の到達時間の空間微分を取ることによって、局所的なせん断速度を求めることができる。しかし、発生させたせん断波が、硬さの違う組織間の境界面(構造境界)で反射することによって、時間変位曲線が期待とは異なったものになってしまい、せん断波の到達時間が正しく求められないことがあり、その場合、最終的に表示される硬さ画像(せん断速度画像あるいは弾性率画像)にアーチファクトが発生してしまうことが知られている。
【0043】
図2Aから図2Cは、課題を説明するための図である。図2Aは、Bモード画像の一例である。図2Aにおいて、画像の中央に位置する楕円形の斜線ハッチング領域は、他の領域とは硬さの違う組織を表す。つまり、斜線ハッチング領域の輪郭部分は、構造境界に対応する。また、バースト波送信位置は、変位発生用バースト波が送信される送信位置を表し、観測点は、変位発生用バーストにより発生した変位が観測されるサンプル点に対応する。また、図2Bは、反射成分を含む時間変異曲線の一例であり、図2Cは、図2Bから反射成分を除外した時間変異曲線の一例である。図2B及び図2Cにおいて、横軸は時間を示し、縦軸は変位の大きさを示す。
【0044】
図2Aにおいて、変位発生用バーストが送信されると、バースト波送信位置からせん断波が伝播する。ここで、バースト波送信位置から図中の右方向へ伝播するせん断波は、観測点1、観測点2の順に観測される。そして、更に伝播したせん断波は、図示のせん断波反射位置において反射され、左方向に向かって伝播する。この反射して伝播するせん断波は、観測点2、観測点1の順に観測される。この観測点1及び観測点2における時間変位曲線を図2Bに示す。
【0045】
図2Bに示すように、バースト波送信位置から直接(反射せずに)伝播するせん断波による変位は、観測点1において最初にピークとなり、次に観測点2においてピークとなる。その後、せん断波反射位置において反射されたせん断波による変位が、観測点2においてピークとなり、次に観測点1においてピークとなる。ここで、例えば、せん断波の到達時間は、バースト波送信位置から直接伝播するせん断波の変位がピークとなる時間として観測される。図2Bに示すように、反射されたせん断波による変位のピークが時間変位曲線に含まれる場合、例えば、このピークの時間が誤って観測されてしまうことで、せん断速度画像にアーチファクトが発生してしまう。
【0046】
ここで、例えば、時間変位曲線の空間分布により、特定の方向に伝播するせん断波の成分を除外することにより、せん断波の反射に起因するアーチファクトを抑制する技術が提案されている。これによれば、図2Bの時間変位曲線から反射されたせん断波の成分(反射成分)を除外して、図2Cの時間変位曲線とすることで、反射成分が誤って観測されることを防止する。しかし、この方法では、同方向に伝播する反射せん断波の影響を除外することができない。これについて、図3A及び図3Bを用いて説明する。
【0047】
図3A及び図3Bは、課題を説明するための図である。図3Aは、Bモード画像の一例である。図3Aにおいて、画像の中央に位置する楕円形の斜線ハッチング領域は、他の領域とは硬さの違う組織を表し、図2Aと比較してバースト波送信位置とせん断波反射位置とが近い位置にある。また、図3Bは、反射成分を含む時間変異曲線の一例である。図3Bにおいて、横軸は時間を示し、縦軸は変位の大きさを示す。
【0048】
図3Aにおいて、変位発生用バーストが送信されると、バースト波送信位置からせん断波が伝播する。ここで、バースト波送信位置から図中の右方向へ伝播するせん断波は、バースト波送信位置から観測点1及び観測点2に直接伝播する。一方、バースト波送信位置から図中の左方向へ伝播するせん断波は、近い位置にあるせん断波反射位置にて反射され、観測点1及び観測点2に伝播する。このように、変位発生用バースト波が境界面に近い位置に送信される場合、発生させた位置から観測位置に直接伝播するせん断波を、境界面で反射されてから伝播するせん断波が追いかけるような形で変位が観測される。この場合、直接伝播するせん断波と、反射されて伝播するせん断波の伝播方向が同じであるため、上記の方法では反射成分を除外することができない。
【0049】
また、一般的に、変位発生用バースト波により発生する組織の変位は微小であるため、様々なノイズの影響を受けやすい。例えば、図3Bにおいて、変位が最大となる時刻をせん断波到達時間として検出する場合、本来であれば2つ見られるピークのうち時間的に早いもの、すなわち、直接伝播するせん断波に対応する到達時間を検出することが求められる。しかしながら、体動や手ぶれ等の外的な要因があると、時間的に遅い方のピークの方が振幅が大きくなり、遅い方のピークの時間が到達時間として検出されてしまう。このように、到達時間を検出する段階で誤りが生じてしまうと、その後にせん断波の到達時間を空間的に微分してせん断速度を算出する際に大きなアーチファクトとなって見えてしまうことになる。このような問題を解決するために、複数ピークが見られた場合は最初のピークを到達時間として検出する、あるいは、最大値検出ではなく相互相関に基づいて全体的な時間差を検出して到達時間を求めるなど、到達時間検出方法を工夫することも考えられる。しかし、これらの手法だと反射せん断波以外の原因によって生じる擾乱(電源ノイズによる時間変位曲線の揺らぎや体動など)に弱くなり、ロバストに到達時間が検出できなくなる可能性がある。また、後者の方法は計算コストが増加し、リアルタイム性を妨げる要因になる。
【0050】
上記のような問題は、変位発生用バースト波の送信位置の付近に構造境界がある場合に生じることが多い。この構造境界は、例えば、Bモード画像上でも十分に確認できる場合がある。このような場合に、操作者が、変位発生用バースト波の送信位置(照射位置)の付近に構造境界が含まれるのを避けることができれば、反射成分によるアーチファクトを抑制することができると考えられる。しかし、従来の超音波診断装置においては、一般的にせん断速度画像領域内で複数個所に変位発生用バースト波が送信されることが多いが、どの位置においてそれらの変位発生用バースト波が送信されているかは検査者には提示されていない。このため、操作者はどの部分に変位発生用バースト波が送信されているかを知ることができず、上記のようなアーチファクトが典型的に発生するとわかっている場合においても、その状況を積極的に避けることができない。
【0051】
そこで、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、せん断速度画像を取得する前あるいは取得している最中に、どの位置において変位発生用バースト波を送信しているのかを明示する表示手段を備える。例えば、Bモード画像上においてせん断速度画像を表示する関心領域(ROI)を設定する際、複数の変位発生用バースト波の送信位置を同時に表示する。また、例えば、変位発生用バースト波の送信位置の少なくとも1つが、硬さの違う組織間の境界面の近くに位置する場合に、該当する変位発生用バースト波の送信位置を変更できるようにしたり、変位発生用バースト波の送信位置の数を変更できるようにしたりする。
【0052】
図1に戻り、第1の実施形態に係る超音波診断装置において、制御部17は、送信制御部171と、生成部172と、出力制御部173と、変更部174とを備える。
【0053】
送信制御部171は、送信部11による変位発生用バースト波の送信や、観測用パルスの送受信を制御する。例えば、送信制御部171は、操作者からROIを決定する指示を受け付ける。そして、送信制御部171は、受け付けた指示に基づいて、ROIに対応するせん断速度画像データを生成するための変位発生用バースト波の送信位置、送信位置の数、ROIの位置、ROIの範囲、及びROIの数等を設定する。送信制御部171の制御により、送信部11は、変位発生用バースト波を超音波プローブ1から送信させる。また、送信制御部171の制御により、送信部11は、送信させた変位発生用バースト波により発生する変位を観測する観測用パルスを、走査領域内の複数の走査線それぞれで超音波プローブ1から複数回送信させる。
【0054】
生成部172は、バースト波送信位置を示す送信位置画像データ、及び、走査領域の位置を示す走査領域画像データを生成する。例えば、生成部172は、送信制御部171によって設定されたバースト波送信位置を取得する。そして、生成部172は、取得したバースト波送信位置を示す直線状の画像データ(インジケータ)を送信位置画像データとして生成する。また、生成部172は、送信制御部171によって設定されたROIの位置及び大きさを取得する。そして、生成部172は、取得したROIの位置及び大きさを示す矩形の枠線の画像データを走査領域画像データとして生成する。
【0055】
出力制御部173は、生成された送信位置画像データ及び走査領域画像データを超音波画像データに重畳させて出力する。例えば、出力制御部173は、生成部172によって生成された送信位置画像データ及び走査領域画像データを、Bモード画像上に重畳させて表示する。
【0056】
変更部174は、変位発生用バースト波の送信位置、送信位置の数、走査領域の位置、走査領域の範囲、又は走査領域の数を変更する指示である変更指示を受け付ける。そして、変更部174は、受け付けた変更指示に基づいて、送信部11によって送信される変位発生用バースト波の送信位置、送信位置の数、走査領域の位置、走査領域の範囲、又は走査領域の数を変更する。
【0057】
図4A及び図4Bは、第1の実施形態に係る超音波診断装置の処理手順を示すフローチャートである。以下では、図5Aから図5Dを参照しつつ、第1の実施形態に係る超音波診断装置の処理手順を説明する。図5Aから図5Dは、第1の実施形態に係る超音波診断装置における処理を説明するための図である。
【0058】
図4Aに示すように、第1の実施形態に係る超音波診断装置の送信制御部171は、硬さ画像を生成するための硬さ画像生成モードを開始させる開始指示を操作者から受け付けたか否かを判定する(ステップS101)。この硬さ画像生成モードとは、例えば、硬さ画像を生成するROIを設定したり、ROIを設定した後に変位発生用バースト波を送信して硬さ画像を生成したりするための状態である。ここで、開始指示を受け付けない場合(ステップS101否定)、制御部17は、開始指示を受け付けるまで待機する。
【0059】
一方、開始指示を受け付けた場合(ステップS101肯定)、送信制御部171の制御により、モニタ2は、ROI設定用GUIを表示する(ステップS102)。ここで、図5Aを用いて、モニタ2に表示されるROI設定用GUIについて説明する。図5Aに示すように、例えば、モニタ2には、超音波プローブ1により走査されたBモード画像51が表示されている。そして、モニタ2は、このBモード画像51上に、せん断速度画像生成領域を指定するROI52を表示する。このROI52の大きさや位置は、プリセットされている。送信制御部171は、操作者からROI52の大きさや位置を変更する指示を受け付けて、受け付けた指示に応じてROI52の大きさや位置を変更する。
【0060】
そして、送信制御部171は、ROI52が決定されたか否かを判定する(ステップS103)。例えば、送信制御部171は、操作者からROI52を決定する指示を受け付けたか否かに応じて、ROI52が決定されたか否かを判定する。ここで、ROIが決定されない場合(ステップS103否定)、送信制御部171は、ROIが設定されるまで待機する。一方、ROI52が決定された場合(ステップS103肯定)、送信制御部171は、決定されたROI52を分割ROIに分割し(ステップS104)、各分割ROIに対応するバースト波送信位置をそれぞれ算出する(ステップS105)。
【0061】
ここで、ROI52を分割ROIに分割する理由を説明する。エラストグラフィーにおいては、例えば、ROI52の端部において変位発生用バースト波を送信し、そこで生じたせん断波がROI52のもう一方の端部に向かって伝播する様子を捉え、その速度を画像化する。この場合、変位発生用バースト波によって生じる変位は、一般的に数〜数十マイクロメートルという微小なものであり、しかもその変位によって構成されるせん断波は伝播の過程で減衰するので、生体内においては数ミリメートル程度しか観測できない。よって、比較的広い範囲においてせん断速度画像を得たい場合、複数個所に変位発生用バースト波を送信し、それぞれの箇所で生じるせん断波伝播に対して数ミリメートル幅のせん断速度画像を生成し、最終的に表示させる際に複数のせん断速度画像を結合することが行われるからである。したがって、送信制御部171は、ROI52が決定したら、次に、指定されたROI52の大きさに応じて、ROI52を小領域(分割ROI)に分割する。そして、送信制御部171は、それぞれの小領域に対する変位発生用バースト波の送信位置を決定することとなる。
【0062】
図5Bを用いて、ステップS104及びステップS105の処理について説明する。例えば、送信制御部171は、ステップS103において決定されたROI52のラテラル方向の幅と、ROI幅の上限値に基づいて、必要な分割ROIの数を算出する。ROI幅の上限値は、例えば、内部記憶部16に予め記憶されている。例えば、図5Aにおいて設定されたROI52の幅が2.7cmであり、ROI幅の上限値が1.0cmである場合、0.9cm幅の分割ROIを3つ(分割ROI53,54,55)設定する。なお、これに限らず、例えば、1.0cmの分割ROIを2つと、0.7cm幅の分割ROIを1つとを設定しても良い。
【0063】
続いて、送信制御部171は、各分割ROIにおけるせん断速度を観測する際の変位発生用バースト波位置をそれぞれ決定する。一般的に、変位発生させた位置においてはせん断速度を正しく求めることができないため、せん断速度画像を得る領域の外側に変位発生用バースト波を送信することが好適である。例えば、バースト波送信位置と分割ROIとの距離を規定したオフセット値を内部記憶部16に記憶させておく。そして、送信制御部171は、設定した各分割ROIの左端からオフセット値だけ離れた位置をバースト波送信位置として算出する。図5Bに示す例では、送信制御部171は、分割ROI53,54,55それぞれにおいてせん断速度を観測するための送信位置として、バースト波送信位置56,57,58をそれぞれ算出する。
【0064】
このように、送信制御部171は、ROI52を分割ROI53,54,55に分割し、各分割ROI53,54,55に対応するバースト波送信位置56,57,58をそれぞれ算出する。なお、本実施形態では、ROI52を分割して分割ROI53,54,55を設定する場合を説明したが、これに限定されない。例えば、決定されたROI52の幅が上限値より小さければ、ROI52を分割しなくても良い。
【0065】
そして、生成部172は、送信位置画像データ及び分割ROI画像データを生成する(ステップS106)。例えば、図5Bに示すように、生成部172は、送信制御部171によって設定されたバースト波送信位置を取得する。そして、生成部172は、取得したバースト波送信位置を示す送信位置画像データを生成する。また、生成部172は、送信制御部171によって設定されたROIの位置及び大きさを取得する。そして、生成部172は、取得したROIの位置及び大きさを示す走査領域画像データを生成する。
【0066】
そして、出力制御部173は、送信位置画像データ及び分割ROI画像データをBモード画像データに重畳表示させる(ステップS107)。例えば、出力制御部173は、図5Bに示すように、生成部172によって生成されたバースト波送信位置56,57,58をそれぞれ示す送信位置画像データと、分割ROI53,54,55をそれぞれ示す分割ROI画像データとを生成部172から取得する。そして、出力制御部173は、取得したバースト波送信位置56,57,58をそれぞれ示す送信位置画像データと、分割ROI53,54,55をそれぞれ示す分割ROI画像データとを、Bモード画像データに重畳させ、モニタ2に表示させる。
【0067】
そして、変更部174は、操作者からの変更指示に基づいて、バースト波送信位置及び分割ROIを変更する(ステップS108)。なお、変更部174が変更指示を受け付けなければ、ステップS108及びステップS109の処理が実行されることなく、ステップS110の処理が実行されても良い。
【0068】
図5Bから図5Dを用いて、変更部174の処理を説明する。ここでは、ステップS107までの処理によって、図5Bに例示の表示画像が表示された場合を説明する。
【0069】
図5Bにおいて、操作者は、3つの分割ROI53、54,55のうち、分割ROI54に対応するバースト波送信位置57が楕円形の構造境界の近くにあることが分かる。ここで、操作者は、入力装置3を用いてバースト波送信位置57を選択し、その位置を変更する指示を行う。一例としては、操作者は、つまみを操作することによりバースト波送信位置57の位置を分割ROI54の左端から遠ざけたり近づけたりする方向に移動させる操作を行う。また、他の例としては、変更部174は、分割ROI54の左端からオフセット値だけ離れた位置と、分割ROI54の右端からオフセット値だけ離れた位置とのいずれかを選択できるようにしておき、操作者がいずれかの位置を選択する操作を行う場合であっても良い。つまり、変更部174は、操作者が選択できる位置に対して制限を設けても良い。これは、例えば、分割ROIからある程度以上離れた位置にバースト波送信位置を設定してしまうと、その位置において発生したせん断波が目的の分割ROIに到達するまでに減衰しきってしまい、目的の分割ROI内においてせん断速度を求めるのに十分な変位を得ることができなくなってしまうからである。また、逆に、目的の分割ROIからある程度以上近い位置、あるいは目的の分割ROIの内部にバースト波送信位置を設定してしまうと、その位置の近傍においてはせん断速度が正しく求められないからである。また、操作者がある程度自由にバースト波送信位置を設定できるようにしておき、設定された位置に応じて小領域の大きさや数を自動的に変化させるようにしても良い。
【0070】
例えば、図5Cに示すように、変更部174は、バースト波送信位置57をバースト波送信位置59の位置に変更する変更指示を操作者から受け付ける。そして、変更部174は、受け付けた変更指示に基づいて、バースト波送信位置57をバースト波送信位置59の位置に変更する。
【0071】
また、例えば、図5Dに示すように、変更部174は、バースト波送信位置57をバースト波送信位置60の位置に変更する変更指示を操作者から受け付けた場合に、変更後のバースト波送信位置60の位置に応じて分割ROIの位置、大きさ、数などを自動的に変更する。具体的には、変更部174は、バースト波送信位置57がバースト波送信位置60の位置に変更されると、バースト波送信位置57に対応する分割ROI54の左端の位置を、分割ROI54の左端とバースト波送信位置60との距離がオセット値と等しくなるように左方に移動させる。続いて、変更部174は、分割ROI54の幅がROI幅の上限値に含まれるように、分割ROI54の右端の位置も左方に移動させる。これによって、分割ROI55の幅がROI幅の上限値を超えてしまう。したがって、変更部174は、分割ROI55をさらに分割する。図5Dに示した例では、分割ROI55の右側の領域を他の分割ROI61として分割することによって、全ての分割ROIの幅をROI幅の上限値以下に抑えることができている。また、変更部174は、分割ROI55の左端(分割ROI54の右端)の位置の変更に伴って、バースト波送信位置58を分割ROI55の左端の移動距離と等しい距離だけ左方に移動させる。また、分割ROI61に対応するバースト波送信位置60を決定し、決定した位置に送信位置画像データを生成・表示させる。
【0072】
なお、図5Dに示した例では、変更後のバースト波送信位置の位置に応じて、他のバースト波送信位置、バースト波送信位置の数、分割ROIの位置、分割ROIの範囲、又は分割ROIの数など、各種のパラメータを自動的に変更する場合を説明したが、これに限定されない。すなわち、変更部174は、いずれかのパラメータの変更を契機として、オフセット値とROI幅の上限値とに基づいて、他のパラメータを自動的に変更しても良い。これにより、操作者は、各種のパラメータを簡易に変更できるとともに、変更後のパラメータがオフセット値やROI幅の上限値から逸脱するのを防止することができる。更に、変更部174は、全てのパラメータを操作者の任意によって変更しても良い。すなわち、変更部174は、各種のパラメータを変更する変更指示を受け付けて、受け付けた変更指示に基づいて、パラメータを変更する。この場合、操作者が全てのパラメータを任意の値に変更できるので、操作者の意図を細部に反映させることができる。更に、例えば、ROI内に目立った構造物が無く、せん断波の反射や屈折が無いと想定できる場合には、変位発生用バースト波送信位置を増やすことにより、変位の十分大きな範囲のみにおいてせん断波伝播を捉える事ができるようになり、結果的に画質を向上させることができる。
【0073】
また、図5Bに示した例では、バースト波送信位置58の位置は変更されなくて良い。これは、バースト波送信位置58の付近の構造境界がバースト波送信位置58とはほぼ垂直であり、せん断波と同方向に伝播する反射せん断波を生じる恐れが少ないからである。
【0074】
このように、変更部174は、変位発生用バースト波の送信位置、送信位置の数、走査領域の位置、走査領域の範囲、又は走査領域の数等の各種のパラメータを変更する指示である変更指示を受け付ける。そして、変更部174は、受け付けた変更指示に基づいて、各種のパラメータを変更する。
【0075】
図4Aの説明に戻る。出力制御部173は、変更後の送信位置画像データ及び分割ROI画像データをBモード画像データに重畳表示させる(ステップS109)。例えば、出力制御部173は、変更部174によってバースト波送信位置が移動された場合には、移動されたバースト波送信位置に対応する送信位置画像データを移動させてモニタ2に表示する。また、例えば、変更部174は、変更部174によって分割ROIが追加された場合には、追加された分割ROIに対応する分割ROI画像データを生成部172に生成させ、生成させた分割ROI画像データをモニタ2に表示する。
【0076】
なお、ここまでの処理により、Bモード画像51上には、N個の送信位置画像データと、N個の分割ROI画像データとが表示される。すなわち、ROI52の全域を走査するためにN箇所に分けて送信されるバースト波の送信位置と、送信されたバースト波により生じるせん断波を観測するN箇所の分割ROIとが、送信制御部171によって設定される。
【0077】
そして、送信制御部171は、操作者からせん断速度画像データの撮影開始要求を受け付けたか否かを判定する(ステップS110)。ここで、撮影開始要求を受け付けない場合(ステップS110否定)、送信制御部171は、撮影開始要求を受け付けるまで待機する。
【0078】
一方、撮影開始要求を受け付けた場合(ステップS110肯定)、送信制御部171は、せん断速度画像データ生成処理を実行する(ステップS111)。ここで、図4Bを用いて、せん断速度画像データ生成処理について説明する。
【0079】
図4Bに示すように、送信制御部171は、「n=1」に設定する(ステップS201)。そして、送信制御部171の制御により、送信部11は、n番目のバースト波送信位置において、超音波プローブ1から、変位発生用バースト波を送信させる(ステップS202)。そして、送信部11及び受信部12の制御により、超音波プローブ1は、変位発生用バースト波に対応する分割ROI内で、観測用パルスの送受信を実行する(ステップS203)。例えば、観測用パルスは、分割ROI内のある走査線(ラスタ)に対して複数回(100回程度)送受信される。これにより、各点(各サンプル点)における変位の時間変化を算出する。1つのパルスに対して多数の受信を行うことができるシステムを有している場合、1度の変位発生用バースト波の送信でROI内の全領域の変位の時間変化を知ることができるが、同時受信本数が限られている場合は、複数回の観測用パルスの送受信を、ラスタ位置を変えて複数回行われる。その際は、ラスタ位置を変えて観測用パルスを送信するたびに、変位発生用バースト波を送信する。
【0080】
続いて、信号処理部13は、分割ROIの各点(各サンプル点)で、変位を算出して、硬さ分布情報を生成する(ステップS204)。ここで、変位の算出には、2つのエコー信号間でドプラシフトを算出する方法や、相互相関を算出する方法等を用いることができる。信号処理部13は、各点における変位の時間変化に基づいて、各点におけるせん断波到達時間を算出し、更に各点におけるせん断速度を算出する。
【0081】
そして、画像生成部14は、n番目のバースト波送信位置に対応するせん断速度画像データを生成する(ステップS205)。そして、送信制御部171は、「n=N」であるか否かを判定する(ステップS206)。ここで、「n=N」でない場合(ステップS116否定)、送信制御部171は、「n=n+1」と「n」をインクリメントし(ステップS207)、送信部11は、ステップS112に戻って、n番目のバースト波送信位置において、超音波プローブ1から、変位発生用バースト波を送信させる。
【0082】
一方、「n=N」である場合(ステップS206肯定)、送信制御部171は、せん断速度画像データ生成処理を終了する。ここまでの処理により、N個のせん断速度画像データが生成される。
【0083】
図4Aの説明に戻る。画像生成部14は、送信制御部171の指示により、N個のせん断速度画像データを合成して、合成画像データを生成する(ステップS112)。そして、送信制御部171の制御により、モニタ2は、ROI全体のせん断速度画像データである合成画像データを表示する(ステップS113)。これにより、せん断速度画像データの撮影処理が終了する。
【0084】
なお、操作者が入力した要求が、せん断速度画像データの動画像の撮影要求であった場合、送信制御部171の制御により、ステップS111からステップS113までの処理が、撮影終了要求を受け付けるまで繰り返される。
【0085】
また、上記の処理手順では、せん断速度画像データの撮影開始要求を操作者から受け付ける前に、バースト波送信位置や分割ROIを変更する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、せん断速度画像データが撮影された後に、バースト波送信位置や分割ROIを変更する場合であっても良い。この場合、撮影者は、リアルタイムに更新されるせん断速度画像を見ながら、バースト波送信位置を変更することができる。
【0086】
上述したように、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、送信位置画像データ及び走査領域画像データを生成し、生成した送信位置画像データ及び走査領域画像データをBモード画像データに重畳させて表示する。これによれば、操作者は、バースト波送信位置及び走査領域を目視で確認することができる。これにより、例えば、操作者がBモード画像とバースト波送信位置とを照らし合わせながら、せん断波が反射しそうな構造境界の位置を確認し、超音波プローブ1を操作して、超音波プローブ1の位置や向きを変更することによって、せん断波の反射によってアーチファクトが発生しそうな状況を避けることができる。つまり、操作者は、変位発生用バースト波の送信位置の付近に構造境界が含まれるのを避けることができる。このため、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、硬さ画像の画質を向上させることができる。
【0087】
また、例えば、第1の実施形態に係る超音波診断装置は、変位発生用バースト波の送信位置、送信位置の数、走査領域の位置、走査領域の範囲、又は走査領域の数等の各種パラメータを変更する変更指示を受け付ける。そして、超音波診断装置は、受け付けた変更指示に基づいて、各種のパラメータを変更する。これによれば、操作者は、超音波プローブ1の位置や向きを変更するのみでは硬さの違う組織間の境界面を避けることが困難な場合にも、せん断波の反射によってアーチファクトが発生しそうな状況を避けることができる。
【0088】
また、骨などの強反射体付近や、破裂する恐れのあるプラークや腫瘤等、音響エネルギーの大きな変位発生用バースト波を送信することを避けたい位置を、操作者の意志で避けることが可能となる。
【0089】
更に、操作者が自由にバースト波送信位置を選択することによって、バースト波送信位置付近の構造特性と発生するアーチファクトの関連を調査・把握することが容易になり、最終的には、操作者がせん断速度画像の画質を積極的に向上させることが可能になる。一方で、ROI内に目立った構造が見られない場合は積極的にバースト波送信位置の数を増やすことにより、画質をより向上させることができる。
【0090】
なお、第1の実施形態では、変更部174が操作者からの変更指示にしたがって各種のパラメータを変更する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、超音波診断装置は、必ずしも変更部174を備えていなくても良い。これによれば、操作や装置構成をより単純化することができる。この場合でも、超音波診断装置は、送信位置画像データ及び走査領域画像データを生成・表示するので、操作者は、バースト波送信位置及び走査領域を目視で確認することができる。このため、操作者は、超音波プローブ1の位置や向きを変更することによって、せん断波の反射によってアーチファクトが発生しそうな状況を避けることができる。
【0091】
また、第1の実施形態では、超音波診断装置が送信位置画像データ及び走査領域画像データを生成して表示する場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、超音波診断装置は、送信位置画像データ及び走査領域画像データのうち、いずれか一方のみを生成して表示しても良い。この場合、操作者は、モニタ2に表示された構造境界から送信位置画像データ又は走査領域画像データを十分に遠ざけることにより、せん断波の反射によってアーチファクトが発生しそうな状況を避けることができる。
【0092】
また、バースト波送信位置及び分割ROIの表示は、操作者からの指示によって表示/非表示を切り替えられるようにしても良い。例えば、図4BのステップS113において、出力制御部173は、せん断速度画像データの合成画像データが表示されると、バースト波送信位置及び分割ROIを非表示とする。また、出力制御部173は、合成画像データが非表示となり、Bモード画像が表示されると、バースト波送信位置及び分割ROIを再表示する。
【0093】
また、第1の実施形態では、ROIを横方向(ラテラル方向)に分割させる場合を説明したが、縦方向(深さ方向)に分割させても良い。
【0094】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、バースト波送信位置の付近にせん断波を反射しそうな構造境界が存在するか否かを、操作者が目視で確認・判断する場合を説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、超音波診断装置は、バースト波送信位置の付近に構造境界が存在するか否かを判定しても良い。そこで、第2の実施形態では、超音波診断装置が、バースト波送信位置の付近に構造境界が存在するか否かを判定し、判定結果に応じて、表示や警告音を発して操作者に注意を促したり、構造境界から十分遠い位置にバースト波送信位置を設定し直したりする場合を説明する。
【0095】
図6は、第2の実施形態に係る超音波診断装置の構成例を示すブロック図である。第2の実施形態に係る超音波診断装置は、図1に例示した超音波診断装置と同様の構成を備え、抽出部175及び判定部176を備える点と、出力制御部173及び変更部174における処理の一部とが相違する。そこで、第2の実施形態では、第1の実施形態と相違する点を中心に説明することとし、第1の実施形態において説明した構成と同様の機能を有する点については、図1と同一の符号を付し、説明を省略する。
【0096】
抽出部175は、超音波画像データから生体組織の輪郭を抽出する。ここで言う生体組織の輪郭とは、心臓、肝臓といった臓器に限らず、超音波画像データにおいて視認可能なあらゆる組織の輪郭を示す。例えば、抽出部175は、画像データからエッジを抽出する技術を用いて、Bモード画像データから輪郭を抽出する。
【0097】
判定部176は、輪郭と、送信位置とに基づいて、送信位置から所定の範囲内に所定の輪郭が存在するか否かを判定する。例えば、判定部176は、バースト波送信位置の付近に、せん断波と同方向に伝播する反射せん断波を生じうる構造境界があるか否かを判定する。
【0098】
出力制御部173は、第1の実施形態において説明した機能と同様の機能を有する。更に、出力制御部173は、所定の範囲内に所定の輪郭が存在すると判定された場合に、警告を出力する。例えば、出力制御部173は、モニタ2上に警告メッセージを表示したり、スピーカを通じて警告音を発生させる。
【0099】
変更部174は、第1の実施形態において説明した機能と同様の機能を有する。更に、変更部174は、所定の範囲内に所定の輪郭が存在すると判定された場合に、送信部11によって送信される変位発生用バースト波の送信位置、送信位置の数、走査領域の位置、走査領域の範囲、及び走査領域の数のうち少なくとも一つを変更する。例えば、変更部174は、バースト波送信位置の付近に、せん断波と同方向に伝播する反射せん断波を生じうる構造境界が存在しなくなるまで、バースト波送信位置を変更する。そして、変更部174は、バースト波送信位置の変更に伴い、オフセット値とROI幅の上限値とに基づいて、変位発生用バースト波の送信位置の数、走査領域の位置、走査領域の範囲、及び走査領域の数等の他のパラメータを変更する。
【0100】
図7は、第2の実施形態に係る超音波診断装置の処理手順を示すフローチャートである。以下では、図8図9A及び図9Bを参照しつつ、第2の実施形態に係る超音波診断装置の処理手順を説明する。図8図9A及び図9Bは、第2の実施形態に係る超音波診断装置における処理を説明するための図である。
【0101】
図7において、ステップS301からステップS307までの処理は、図4Aに示したステップS101からステップS107までの処理とそれぞれ同様であるので説明を省略する。つまり、図5Bに例示の表示画像が表示されるまでの処理は、第1の実施形態と同様である。
【0102】
抽出部175は、Bモード画像データから輪郭を抽出する(ステップS308)。図8を用いて、抽出部175の処理を説明する。図8に示すように、抽出部175は、図5Bに例示したBモード画像51から、構造物の輪郭81を抽出する。ここで、画像からの輪郭を抽出する方法としては、既に多くの方法が提案されており、Bモード画像(超音波画像)においても広く応用されている。例えば、抽出部175は、特開2010−282268号公報に記載の技術を用いて、図5Bの楕円形の網掛け領域の輪郭81をBモード画像51から抽出する。なお、図8では説明の都合上、Bモード画像51を白色の領域として示し、その画像上に輪郭81を示したが、実際には、モニタ2に表示される任意のBモード画像51上に輪郭81の画像を重畳表示可能である。また、必ずしもBモード画像51上に輪郭81を重畳表示しなくても良い。例えば、せん断速度画像データが撮影済みである場合には、このせん断速度画像データの上に輪郭81を重畳表示しても良い。また、ここでは、抽出部175によって抽出される輪郭81が一つの場合を説明したが、抽出部175は、複数の輪郭を抽出しても良い。また、抽出部175は、抽出した一つ又は複数の輪郭の情報を内部記憶部16に格納する。
【0103】
続いて、判定部176は、バースト波送信位置から所定の範囲内に所定の輪郭が存在するか否かを判定する(ステップS309)。ここで、所定の範囲とは、例えば、バースト波送信位置から0.3cm以内の範囲である。また、所定の輪郭とは、例えば、バースト波送信位置と平行な接線を含む輪郭である。これは、変位発生用バースト波のビームとほぼ平行でなければ、せん断波の伝播には影響しにくいからである。
【0104】
図8を用いて、判定部176の処理を説明する。例えば、判定部176は、抽出部175によって抽出された輪郭81の位置と、表示されているバースト波送信位置とを比較し、輪郭81がバースト波送信位置から0.3cm以内の範囲にあるか否かを判定する。例えば、図8に示す例では、判定部176は、バースト波送信位置56,57,58の左右それぞれに0.3cm幅、すなわち、各バースト波送信位置を中心とする0.6cm幅の領域82,83,84をそれぞれ設定する。そして、判定部176は、これらの領域82,83,84内に輪郭81が含まれるか否かをそれぞれ判定する。図8の例では、判定部176は、領域83,84内に輪郭81が含まれると判定する。続いて、判定部176は、領域83,84内の輪郭81に、バースト波送信位置と平行な接線を含むか否かをそれぞれ判定する。図8の例では、判定部176は、領域83内の輪郭81にはバースト波送信位置57と平行な接線が含まれると判定し、領域84内の輪郭81にはバースト波送信位置58と平行な接線が含まれないと判定する。これにより、判定部176は、バースト波送信位置の付近に、せん断波と同方向に伝播する反射せん断波を生じうる構造境界があるか否かを判定する。なお、上記した所定の範囲及び所定の輪郭は、あくまで一例であり、必ずしも上記の例に限定されるものではない。例えば、所定の範囲は、操作者の任意の値に変更可能である。また、所定の輪郭は、操作者の任意の角度をもった輪郭に変更可能である。
【0105】
ここで、所定の範囲内に所定の輪郭が存在しないと判定された場合(ステップS309否定)、ステップS314の処理に移行する。一方、所定の範囲内に所定の輪郭が存在すると判定された場合(ステップS309肯定)、出力制御部173は、警告を出力する(ステップS310)。例えば、出力制御部173は、モニタ2上に警告メッセージを表示したり、スピーカを通じて警告音を発生させる。一例としては、出力制御部173は、図9Aに示すように、バースト波送信位置から所定の範囲内に所定の輪郭が存在すると判定されたバースト波送信位置57を、他のバースト波送信位置56,58よりも太い線85で強調表示する。また、他の例としては、出力制御部173は、図9Bに示すように、モニタ2の画面右上に注意マーク86を表示する。なお、出力制御部173が出力する警告の例は、これに限定されるものではない。例えば、図9Aに例示の線85は、他のバースト波送信位置とは異なる色で表示されても良い。
【0106】
図7の説明に戻る。変更部174は、バースト波送信位置及び分割ROIを自動的に変更する旨の指示である自動変更指示を、操作者から受け付けたか否かを判定する(ステップS311)。ここで、自動変更指示を受け付けない場合(ステップS311否定)、変更部174は、自動変更指示を受け付けるまで待機する。
【0107】
一方、自動変更指示を受け付けると場合(ステップS311肯定)、変更部174は、バースト波送信位置及び分割ROIを変更する(ステップS312)。例えば、変更部174は、バースト波送信位置57を、バースト波送信位置57から0.3cm以内の範囲に輪郭81が入らなくなるまで左方向に移動させる。そして、変更部174は、第1の実施形態において説明したように、オフセット値とROI幅の上限値とに基づいて、変位発生用バースト波の送信位置の数、走査領域の位置、走査領域の範囲、及び走査領域の数等の他のパラメータを変更する。これにより、変更部174は、図5Dに例示したように、バースト波送信位置の近辺に特定の輪郭が来ないようにバースト波送信位置を変更する。なお、実施形態は、上記の例に限定されない。例えば、変更部174は、バースト波送信位置57を右方向に移動させても良い。
【0108】
これ以降、ステップS313からステップS317までの処理は、図4Aに示したステップS109からステップS113までの処理とそれぞれ同様であるので説明を省略する。
【0109】
なお、実施形態は、上記の処理手順に限定されるものではない。例えば、警告を出力する処理(ステップS310)は、必ずしも実行されなくても良い。この場合、変更部174は、例えば、所定の範囲内に所定の輪郭が存在すると判定された場合に(ステップS309肯定)、バースト波送信位置及び分割ROIを自動的に変更する(ステップS312)。
【0110】
また、例えば、自動変更に関する処理(ステップS311及びステップS312)は、必ずしも実行されなくても良い。この場合、例えば、変更部174は、第1の実施形態で説明したように、操作者からの変更指示に基づいて、バースト波送信位置及び分割ROIを変更する。
【0111】
上述したように、第2の実施形態に係る超音波診断装置は、バースト波送信位置の付近に構造境界が存在するか否かを判定する。そして、超音波診断装置は、バースト波送信位置の付近に構造境界が存在すると判定した場合に、警告を出力する。これによれば、第2の実施形態に係る超音波診断装置は、操作者が表示されたバースト波送信位置とBモード画像とを目視で詳細に確認しなくとも、変位発生用バースト波を構造境界の付近に送信しようとしているか否かを通知することができる。
【0112】
また、例えば、第2の実施形態に係る超音波診断装置は、バースト波送信位置の付近に構造境界が存在すると判定した場合に、バースト波送信位置及び分割ROIを自動的に変更する。これによれば、第2の実施形態に係る超音波診断装置は、操作者が追加の操作をすることなく、バースト波送信位置及び分割ROIの位置を最適化することができる。操作者は、最適化された、バースト波送信位置及び分割ROIの位置を確認した上で、実際にせん断速度画像の生成・表示を開始することができる。
【0113】
なお、第1の実施形態では、抽出部175が輪郭を抽出する場合を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、抽出部175は、骨の表面や破裂する可能性のあるプラークや腫瘍などの構造を抽出しても良い。これによれば、操作者は、音響エネルギーの大きな超音波信号送信を避けたい部位に、変位発生用バースト波を送信しようとしていないかどうかを簡便に知ることができる。
【0114】
(第3の実施形態)
第1及び第2の実施形態では、バースト波送信位置の付近に構造境界があるか否かを確認した上で、バースト波送信位置及び分割ROIを変更したり、せん断速度画像データを撮影したりする場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、超音波診断装置は、せん断速度画像データが撮影された後に、その撮影において本当に適切なせん断波の伝播が起こっているかを確認するために、せん断波の到達時間に応じた到達時間カラー画像データを生成しても良い。そこで、第3の実施形態では、超音波診断装置が到達時間カラー画像データを生成する場合を説明する。
【0115】
第3の実施形態に係る超音波診断装置は、図1に例示した超音波診断装置と同様の構成を備え、画像生成部14及び出力制御部173における処理の一部が相違する。そこで、第3の実施形態では、第1の実施形態と相違する点を中心に説明することとし、第1の実施形態において説明した構成と同様の機能を有する点については、図1と同一の符号を付し、説明を省略する。
【0116】
画像生成部14は、せん断波の到達時間を表す到達時間カラー画像データを生成する。この到達時間カラー画像データは、例えば、走査領域内の各点におけるせん断波の到達時間に応じた画素値を各点に割り当てた画像データである。例えば、画像生成部14は、走査領域内の各点におけるせん断波の到達時間に応じた色を各点に割り当ることで、到達時間カラー画像データを生成する。
【0117】
出力制御部173は、到達時間カラー画像データを表示する。例えば、出力制御部173は、画像生成部14によって生成された到達時間カラー画像データを、Bモード画像データに重畳表示させる。
【0118】
図10は、第3の実施形態に係る超音波診断装置の処理手順を示すフローチャートである。以下では、図11A及び図11Bを参照しつつ、第3の実施形態に係る超音波診断装置の処理手順を説明する。図11A及び図11Bは、第3の実施形態に係る超音波診断装置における処理を説明するための図である。
【0119】
ここで、図10の説明では、第1の実施形態における処理に基づいて、モニタ2に、図11Aに例示の表示画像が表示されている場合を説明する。この表示画像は、Bモード画像51と、せん断速度画像がそれぞれ表示された分割ROI53,54,55とを含む。ここで、図11AにおいてBモード画像51上に見られる楕円形の構造物は、おおむね周囲の組織よりもせん断速度が速いことが分かるが、分割ROI54内に不規則にせん断速度の異なる部分が見られる。これらの部分が本当に組織の硬さを反映したものなのか、またはせん断波の伝搬が正しく捉えられていないことによるものなのか、図11Aの表示画像を見ただけでは操作者は判断できない。そこで、第3の実施形態に係る超音波診断装置は、到達時間カラー画像データを生成し、表示する。
【0120】
図10に示すように、第3の実施形態に係る超音波診断装置の画像生成部14は、到達時間カラー画像データを表示するための表示指示を操作者から受け付けたか否かを判定する(ステップS401)。ここで、表示指示を受け付けない場合(ステップS401否定)、画像生成部14は、表示指示を受け付けるまで待機する。
【0121】
続いて、画像生成部14は、表示中のせん断速度画像データに対応するせん断波の到達時間を、内部記憶部16から取得する(ステップS402)。なお、内部記憶部16には、例えば、撮影済みのせん断速度画像データに関する情報が記憶されている。
【0122】
そして、画像生成部14は、取得した到達時間を用いて、到達時間カラー画像データを生成する(ステップS403)。例えば、画像生成部14は、走査領域内の各点におけるせん断波の到達時間に応じた色を各点に割り当ることで、到達時間カラー画像データを生成する。なお、ここで用いられる到達時間は、変位の最大値に限定されない。例えば、到達時間は、変位の時間変化の最大値であっても良いし、ラテラル方向に隣接する2点間において時間変位曲線の相互相関を計算することによって2点間の時間差を算出し、算出した値を変位発生位置側から積算することによって各点における到達時間としても良い。
【0123】
そして、出力制御部173は、画像生成部14によって生成された到達時間カラー画像データを、表示中のBモード画像データに重畳表示させる(ステップS404)。図11Bには、出力制御部173によって表示される到達時間カラー画像データの一例を示す。この場合、分割ROI53,54,55それぞれの左側においてせん断波を発生させ、右側に伝播させているため、各分割ROIにおいて左から右に向かって到達時間が増加していれば、正しく伝播したせん断波が捉えられたと判断することができる。すなわち、各分割ROIにおいて、左から右に向かって色が濃く変化することが期待される。ところが、図11Bの例においては、分割ROI53及び分割ROI55においては、期待通りの色の変化が見られるが、分割ROI54においては、途中から急激に色が変化しており(中間の色が見られない)、右側に移動していくせん断波が正しく捉えられなかったことが示唆されている。
【0124】
上述したように、第3の実施形態に係る超音波診断装置は、到達時間カラー画像データを生成し、表示する。これによれば、第3の実施形態に係る超音波診断装置は、操作者がBモード画像51上においてバースト波送信位置を目視で確認した後、実際に期待した通りにせん断波が発生・伝播したかどうかを簡便に確認できる。例えば、せん断波の反射や屈折によってせん断速度画像にアーチファクトが発生している場合、そのアーチファクトの原因を知ることができ、せん断速度画像に表示された構造が本当に被検体内の構造を反映した結果であるか否かを判断するのが容易になる。更に、操作者が超音波プローブ1を動かしたりバースト波送信位置を個別に変更したりした際に、その操作がせん断波の伝播にどのような影響を与えるのかを逐一確認できるようになり、より信頼性の高いせん断速度画像データを生成するために、操作にフィードバックさせやすくなる。
【0125】
なお、第3の実施形態では、第1の実施形態における処理に基づいて、モニタ2に、図11Aに例示の表示画像が表示されている場合を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、第3の実施形態に係る処理は、第2の実施形態における処理に基づいて、モニタ2に、図11Aに例示の表示画像が表示されている場合に実行されても良い。
【0126】
また、例えば、第3の実施形態を第1の実施形態と組み合わせることにより、せん断速度画像と到達時間カラー画像とを同時に並列表示しても良い。また、第3の実施形態を第2の実施形態と組み合わせて、バースト波送信位置の付近に特定の輪郭が抽出された場合に、警告を出力したり、バースト波送信位置を最適化したりしても良い。
【0127】
(第4の実施形態)
第1から第3の実施形態では、バースト波送信位置及び分割ROIを表示した後に、バースト波送信位置及び分割ROIを変更したり、せん断速度画像データを撮影したりする場合を説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、超音波診断装置は、バースト波送信位置及び分割ROIを表示する前に、バースト波送信位置及び分割ROIを変更しても良い。そこで、第4の実施形態では、超音波診断装置が、バースト波送信位置及び分割ROIを表示する前に、バースト波送信位置及び分割ROIを変更する場合を説明する。
【0128】
第4の実施形態に係る超音波診断装置は、図6に例示した超音波診断装置と同様の構成を備え、超音波診断装置における処理手順が相違する。そこで、第4の実施形態では、第1の実施形態と相違する点を中心に説明することとし、第2の実施形態において説明した構成と同様の機能を有する点については、図6と同一の符号を付し、説明を省略する。
【0129】
図12は、第4の実施形態に係る超音波診断装置の処理手順を示すフローチャートである。図12において、ステップS501からステップS505までの処理は、図4Aに示したステップS101からステップS105までの処理とそれぞれ同様であるので説明を省略する。また、ステップS506からステップS510までの処理は、図7に示したステップS308からステップS312までの処理とそれぞれ同様であるので説明を省略する。
【0130】
続いて、生成部172は、送信位置画像データ及び分割ROI画像データを生成する(ステップS511)。例えば、生成部172は、変更部174によって変更されたバースト波送信位置を示す送信位置画像データ、及び、変更後の分割ROIの位置を示す分割ROI画像データを生成する。
【0131】
そして、出力制御部173は、送信位置画像データ及び分割ROI画像データをBモード画像データに重畳表示させる(ステップS512)。なお、これ以降、ステップS513からステップS516までの処理は、図4Aに示したステップS110からステップS113までの処理とそれぞれ同様であるので説明を省略する。
【0132】
なお、実施形態は、上記の処理手順に限定されるものではない。例えば、警告を出力する処理(ステップS508)は、必ずしも実行されなくても良い。この場合、変更部174は、例えば、所定の範囲内に所定の輪郭が存在すると判定された場合に(ステップS507肯定)、バースト波送信位置及び分割ROIを自動的に変更する(ステップS510)。
【0133】
また、例えば、自動変更に関する処理(ステップS509及びステップS510)は、必ずしも実行されなくても良い。この場合、例えば、変更部174は、第1の実施形態で説明したように、操作者からの変更指示に基づいて、バースト波送信位置及び分割ROIを変更する。
【0134】
上述したように、第4の実施形態に係る超音波診断装置は、超音波診断装置が、バースト波送信位置及び分割ROIを表示する前に、バースト波送信位置及び分割ROIを変更する。これによれば、第4の実施形態に係る超音波診断装置は、操作者が表示されたバースト波送信位置とBモード画像とを目視で詳細に確認しなくとも、バースト波送信位置及び分割ROIの位置が最適化された上で、せん断速度画像の生成・表示を行うことができる。
【0135】
なお、上記の第1〜第4の実施形態の説明で図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示のように構成されていなくても良い。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0136】
また、第1〜第4の実施形態で説明した超音波診断装置における各処理は、予め用意された超音波イメージングプログラムを実行することによって実現することができる。この超音波イメージングプログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この超音波イメージングプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD−ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な非一時的な記録媒体に記録され、コンピュータによって非一時的な記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0137】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、硬さ画像の画質を向上させることができる。
【0138】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0139】
10 装置本体
17 制御部
172 生成部
173 出力制御部
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12