(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記吐出部は、インクを吐出するノズルと、前記ノズルに連通して形成されるインク室と、前記インク室に面して設けられる振動部材と、前記振動部材を振動させる圧電素子とを有し、前記圧電素子が前記振動部材に加えた振動に応じて前記ノズルからインクを吐出すると共に前記ノズルに形成されるメニスカスが変動するものであり、
前記吐出制御装置は、前記吐出トリガ補正制御を実行することで、前記ノズルから吐出するインクの液滴量を均等にする、
請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
主走査方向に沿ったキャリッジの位置を検出するリニアエンコーダの出力に応じてインクの吐出トリガを生成し、当該吐出トリガに基づいて、要求される解像度を実現するために前記キャリッジに設けられた吐出部によるインクの吐出タイミングを制御する吐出制御装置であって、
予め計測された前記リニアエンコーダの出力に基づいて、前記吐出トリガの間隔が均等になるように、各前記吐出トリガを補正し、補正後の前記吐出トリガを基準として前記吐出トリガを逓倍し、実際に吐出に用いる前記吐出トリガを、逓倍された前記吐出トリガの中から、逓倍前の前記要求される解像度になるように決定することを特徴とする、
吐出制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の特許文献1に記載のインクジェット記録装置は、例えば、画質向上の点で更なる改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、画質を向上することができるインクジェットプリンタ、及び、吐出制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るインクジェットプリンタは、主走査方向に沿って移動可能であるキャリッジと、前記キャリッジに設けられ、インクを吐出可能である吐出部と、前記主走査方向に沿った前記キャリッジの位置を検出可能であるリニアエンコーダと、前記リニアエンコーダの出力に応じてインクの吐出トリガを生成し、当該吐出トリガに基づいて、前記吐出部によるインクの吐出タイミングを制御する吐出制御装置とを備え、前記吐出制御装置は、予め計測された前記リニアエンコーダの出力に基づいて、前記吐出トリガの間隔が均等になるように、各前記吐出トリガを補正する吐出トリガ補正制御を実行可能であることを特徴とする。
【0007】
これにより、上記インクジェットプリンタは、インクの吐出間隔を均一化することができ、インクの着弾位置を安定化させることができるので、画質を向上することができる。
【0008】
また、上記インクジェットプリンタでは、前記吐出部は、インクを吐出するノズルと、前記ノズルに連通して形成されるインク室と、前記インク室に面して設けられる振動部材と、前記振動部材を振動させる圧電素子とを有し、前記圧電素子が前記振動部材に加えた振動に応じて前記ノズルからインクを吐出すると共に前記ノズルに形成されるメニスカスが変動するものであり、前記吐出制御装置は、前記吐出トリガ補正制御を実行することで、前記ノズルから吐出するインクの液滴量を均等にするものとすることができる。
【0009】
これにより、上記インクジェットプリンタは、インクの吐出間隔を均一化することで、吐出時のノズルのメニスカスの状態を均一化することができ、インクの液滴量も均等化することができるので、より顕著に画質を向上することができる。
【0010】
また、上記インクジェットプリンタでは、前記リニアエンコーダは、出力に、予め設定される所定の位相差を生じさせるための複数の受光部を有し、前記吐出制御装置は、前記リニアエンコーダの前記所定の位相差を有する出力に応じてインクの吐出トリガを生成するものとすることができる。
【0011】
これにより、上記インクジェットプリンタは、リニアエンコーダの出力信号波形において、複数の受光部の取り付け誤差等に起因して、所定の位相差に対して誤差(ジッタ)が生じる場合であっても、インクの吐出間隔を均一化することができるので、画質を向上することができる。
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係る吐出制御装置は、主走査方向に沿ったキャリッジの位置を検出するリニアエンコーダの出力に応じてインクの吐出トリガを生成し、当該吐出トリガに基づいて、前記キャリッジに設けられた吐出部によるインクの吐出タイミングを制御する吐出制御装置であって、予め計測された前記リニアエンコーダの出力に基づいて、前記吐出トリガの間隔が均等になるように、各前記吐出トリガを補正する制御を実行可能であることを特徴とする。
【0013】
これにより、上記吐出制御装置は、インクの吐出間隔を均一化することができ、インクの着弾位置を安定化させることができるので、画質を向上することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るインクジェットプリンタ、及び、吐出制御装置は、画質を向上することができる、という効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0017】
[実施形態]
図1は、実施形態に係るインクジェットプリンタの概略構成を表す概略構成図である。
【0018】
図1に示す本実施形態のインクジェットプリンタ1は、メディアMに所望の図形(文字、模様等)を印刷するものである。インクジェットプリンタ1は、インクを吐出するプリンタヘッド5を主走査方向に往復移動させて、載置台2に載置されたメディアMに1ライン分の印刷を行う。その後、インクジェットプリンタ1は、主走査方向に対して直交する搬送方向(副走査方向)にメディアMを1ライン分相対移動させる。インクジェットプリンタ1は、このプリンタヘッド5の移動による印刷とメディアMの相対移動とを繰り返すことで、メディアM全体に印刷を行うことができる。このとき、インクジェットプリンタ1は、プリンタヘッド5が主走査方向に移動しながらインク液滴を落としていく際の当該インク液滴の吐出ピッチを変更しインク液滴の着弾位置のピッチを適宜変更することで、印刷物の解像度を変更することができる。
【0019】
具体的には、インクジェットプリンタ1は、載置台2と、Yバー3と、キャリッジ4と、吐出部としてのプリンタヘッド5と、キャリッジ駆動装置6と、メディア搬送装置7と、リニアエンコーダ8と、吐出制御装置としての制御装置9とを備える。
【0020】
載置台2は、インクジェットプリンタ1によって印刷を行うメディアMを載置するものである。載置台2は、例えば、プラテン、テーブル等によって構成される。
【0021】
Yバー3は、載置台2の鉛直方向上側に所定の間隔をあけて設けられる。Yバー3は、主走査方向に沿って設けられる。Yバー3は、キャリッジ4の主走査方向に沿った往復移動をガイドするガイドレールとして機能する。
【0022】
キャリッジ4は、Yバー3に保持され、当該Yバー3に沿って移動可能である。これにより、キャリッジ4は、主走査方向に沿って移動可能に構成される。キャリッジ4は、メディアMの印刷搬送方向(副走査方向)に対して直交する方向(主走査方向)に移動制御される。キャリッジ4は、鉛直方向に対して載置台2と対向する面に、ホルダ等を介してプリンタヘッド5が設けられる。なお、キャリッジ4は、当該インクジェットプリンタ1がいわゆるUV(紫外線)硬化型のインクを使用可能なものである場合には、プリンタヘッド5の近傍に、吐出されたインクを硬化させるための紫外線ランプ(露光部)等が設けられる。
【0023】
プリンタヘッド5は、キャリッジ4に設けられ、インクタンクに貯留されているインクをメディアMに吐出可能である。プリンタヘッド5は、各種インク流路、レギュレータ、ポンプ等を介してインクタンクと接続されている。プリンタヘッド5は、インクタンクの数、言い換えれば、同時に印刷可能なインクの種類の数等に応じて単数、あるいは複数が設けられる。
【0024】
ここで、
図2は、実施形態に係るプリンタヘッドを表す模式的断面図である。本図を参照してプリンタヘッド5の構成についてより詳細に説明する。
【0025】
プリンタヘッド5は、本体51と、ノズル52と、導入口53と、インク室54と、振動部材としてのダイアフラム膜55と、圧電素子56とを有する。ノズル52は、本体51において鉛直方向(典型的には、プリンタヘッド5がキャリッジ4に保持された状態での鉛直方向(以下、断りの無い限り同様)。)に沿って形成される。ノズル52は、下端に吐出口52aを有し、当該吐出口52aからインクを吐出する。導入口53は、溝57を介してノズル52に接続される。インク室54は、ノズル52及び導入口53に連通して形成される。ここでは、インク室54は、ノズル52の鉛直方向上側に形成される。ダイアフラム膜55は、インク室54の鉛直方向上側に、当該インク室54に面して設けられる。圧電素子56は、ダイアフラム膜55を振動させる素子である。圧電素子56は、ダイアフラム膜55のインク室54とは反対側の面上に積層形成される。圧電素子56は、圧電体に加えられた力を電圧に変換する、あるいは電圧を力に変換する、圧電効果を利用したピエゾ素子等によって構成される。圧電素子56には下電極56a及び上電極56bが積層されている。下電極56a及び上電極56bは、圧電素子56に電力供給する電源58に接続されている。電源58は、圧電素子56に駆動電圧を供給するドライバ回路等に接続されている。当該ドライバ回路は、制御装置9により制御される。プリンタヘッド5は、インクタンクから導入口53にインクが導入され、当該導入されたインクをインク室54に一時的に貯留する。そして、プリンタヘッド5は、制御装置9の制御によって圧電素子56がダイアフラム膜55に振動を加えることで、当該圧電素子56がダイアフラム膜55に加えた振動に応じて、インクジェット方式でノズル52の吐出口52aからインクを吐出する。
【0026】
図1に戻って、キャリッジ駆動装置6は、Yバー3に対してキャリッジ4を主走査方向に相対移動させる駆動装置である。キャリッジ駆動装置6は、例えば、キャリッジ4に連結された搬送ベルト、搬送ベルトを駆動する駆動モータ等を含んで構成され、制御装置9により制御される。
【0027】
メディア搬送装置7は、キャリッジ4とメディアMとを印刷搬送方向(副走査方向)に相対移動させる搬送装置である。メディア搬送装置7は、例えば、少なくともYバー3又はメディアMの一方を他方に対して相対移動させる種々の搬送ローラ、当該搬送ローラを駆動する駆動モータ等を含んで構成され、制御装置9により制御される。
【0028】
リニアエンコーダ8は、主走査方向に沿ったキャリッジ4の位置を検出可能である。リニアエンコーダ8は、リニアスケール81とエンコーダ82とを含んで構成される。リニアスケール81は、主走査方向に延在する板状の部材であり、Yバー3と平行に設けられる。リニアスケール81は、主走査方向における位置を示すために、所定間隔、所定寸法で複数の基準マーク(スリット状のマーク)が付されている。複数の基準マークは、主走査方向に沿って並んで設けられる。エンコーダ82は、リニアスケール81の基準マークを検出するものであり、キャリッジ4の、リニアスケール81と対向する面に設けられる。エンコーダ82は、例えば、光学式のセンサ等を用いることができる。エンコーダ82は、リニアスケール81の基準マークの検出信号を出力信号(エンコーダパルス)として制御装置9に出力する。制御装置9は、エンコーダ82からの出力信号に基づいて、主走査方向におけるキャリッジ4、さらにはプリンタヘッド5の位置を把握することが可能となる。
【0029】
制御装置9は、プリンタヘッド5を制御し、当該プリンタヘッド5によるインクの吐出タイミングを制御するものである。ここでは、制御装置9は、インクの吐出制御だけでなく、インクジェットプリンタ1の各部を制御する。制御装置9は、機能概念的に、キャリッジ駆動制御部91、メディア搬送制御部92、吐出制御部93等を含んで構成される。制御装置9は、演算装置、メモリ等のハードウェア及びこれらの所定の機能を実現させるプログラムから構成される。キャリッジ駆動制御部91は、キャリッジ駆動装置6を制御し、キャリッジ4の主走査方向に沿った相対移動を制御するものである。メディア搬送制御部92は、メディア搬送装置7を制御し、キャリッジ4とメディアMとの副走査方向に沿った相対移動を制御するものである。吐出制御部93は、プリンタヘッド5の圧電素子56等を制御し、プリンタヘッド5から吐出するインクの吐出量、吐出タイミング、吐出期間等を制御するものである。吐出制御部93は、リニアエンコーダ8の出力に応じてキャリッジ4に設けられたプリンタヘッド5の主走査方向位置を把握して、当該プリンタヘッド5からインクを吐出する吐出タイミングを把握する。典型的には、制御装置9は、リニアエンコーダ8の出力に応じてインクの吐出トリガを生成し、当該吐出トリガに基づいて圧電素子56に吐出信号を出力し、プリンタヘッド5によるインクの吐出タイミングを制御する。
【0030】
上記のように構成されるインクジェットプリンタ1は、制御装置9による制御に応じて、メディアMに対してキャリッジ4を主走査方向に往復移動させつつ、メディアMの印刷面に対してプリンタヘッド5によって所定の印刷幅でインクを吐出する。そして、インクジェットプリンタ1は、上記所定の印刷幅に応じてキャリッジ4に対してメディアMを印刷搬送方向(副走査方向)に相対移動させながら、これを繰り返し、所定のパターンを印刷していく。この間、制御装置9は、吐出制御部93がプリンタヘッド5から吐出するインクの吐出量、吐出タイミング、吐出期間等を制御する。これにより、インクジェットプリンタ1は、所望の図形を印刷することができる。
【0031】
そして、本実施形態のインクジェットプリンタ1は、制御装置9がインクの吐出制御に用いられる上述の吐出トリガを補正する吐出トリガ補正制御を実行することで、画質の向上を図っている。すなわち、本実施形態の制御装置9の吐出制御部93は、予め計測されたリニアエンコーダ8の出力に基づいて、吐出トリガの間隔が均等になるように、各吐出トリガを補正する吐出トリガ補正制御を実行可能に構成される。
【0032】
図3は、実施形態に係る制御装置の吐出制御部の概略構成の一例を表すブロック図である。本図を参照して吐出制御部93の構成についてより詳細に説明する。
【0033】
具体的には、吐出制御部93は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の半導体集積回路によって構成される。吐出制御部93は、機能概念的に、エッジ検出部93a、補正部93b、4逓倍部93c、作図エリア制御部93d、ヘッド制御部93e等を含んで構成される。
【0034】
エッジ検出部93aは、リニアエンコーダ8の出力に応じてインクの吐出トリガを生成するものである。エッジ検出部93aは、リニアエンコーダ8のエンコーダ82から入力される出力信号(検出信号)のエッジを検出し、これを吐出トリガとする。
【0035】
ここで、
図4は、実施形態に係るリニアエンコーダの構成について説明する概略構成図である。本実施形態のリニアエンコーダ8は、
図4に示すように、出力に、予め設定される所定の位相差を生じさせるための複数の受光部としてのフォトダイオード82aを有する。そして、本実施形態の吐出制御部93は、当該リニアエンコーダ8の所定の位相差を有する出力に応じてインクの吐出トリガを生成する。エンコーダ82は、複数、ここでは4つのフォトダイオード82aそれぞれにおいて基準マークからの反射光を受光し、位相がずれた2つの検出信号を出力信号としてエッジ検出部93aに出力する。言い換えれば、エンコーダ82は、2つの検出信号が所定の位相差を有するように、4つのフォトダイオード82aが主走査方向に所定の間隔をあけて配置され、フォトダイオードアレイを構成する。そして、エンコーダ82は、さらに、ディジタル波形を発生させるための信号処理回路82b、2つのコンパレータ82c等を含んで構成される。エンコーダ82は、複数のフォトダイオード82a(フォトダイオードアレイ)の出力が信号処理回路82bを通過することで信号A、 ̄A(オーバラインA)、B、 ̄B(オーバラインB)を得ることができる。そして、エンコーダ82は、2つのコンパレータがこれらの信号を受け、所定位相差、ここでは90°電気角の位相差を持ったディジタル波形チャンネルA(A相)、チャンネルB(B相)を発生させることができる。つまり、エンコーダ82は、例えば、所定の位相差として、90°位相がずれた検出信号となるようにフォトダイオード82a、信号処理回路82b、2つのコンパレータ82cが構成され、90°位相がずれた2つの検出信号を出力信号としてエッジ検出部93aに出力する。エッジ検出部93aは、リニアエンコーダ8のエンコーダ82から入力される相互に位相がずれた2つの相の出力信号(検出信号)のエッジを検出し、これを吐出トリガとする。
【0036】
図3に戻って、補正部93bは、エッジ検出部93aによって生成された各吐出トリガに対して所定の補正処理を施すものである。補正部93bは、予め計測されたリニアエンコーダ8の出力に基づいて、吐出トリガの間隔が均等になるように、各吐出トリガを補正する。補正部93bは、例えば、印刷を行わない状態で、予め計測されたリニアエンコーダ8の出力に基づいて、補正前の各吐出トリガのトリガ間隔を計測する。そして、補正部93bは、各吐出トリガのトリガ間隔が均一になるように、各吐出トリガに対する補正値を算出しておく。そして、補正部93bは、実際に印刷を行う際には、例えば、上記各吐出トリガに対する補正値等に応じて、各吐出トリガのタイミングをそれぞれ補正し、各トリガ間隔を均一に補正する。このとき、補正部93bは、実際に印刷を行う際には、例えば、上記各吐出トリガに対する補正値に加えて、さらに、キャリッジ4の現在速度等に応じて、各吐出トリガのタイミングをそれぞれ補正し、各トリガ間隔を均一に補正するようにしてもよい。この場合、補正部93bは、例えば、エンコーダ82のパルス間隔を測定することで、キャリッジ4の現在速度の検出を行うことができる。このとき、種々の要因でA相とB相の位相差が90°にならない場合があるので、補正部93bは、例えば、A相立ち上がりエッジだけの間隔を測定することでその誤差要因を排除して、キャリッジ4の現在速度を検出することができる。
【0037】
4逓倍部93cは、補正部93bによって補正された吐出トリガを4逓倍(周波数を4倍に変換)することで、より細分化された吐出トリガを生成するものである。4逓倍部93cは、エッジ検出部93aによって検出され、補正部93bによって補正された吐出トリガを基準として、4逓倍した吐出トリガを外挿する。
【0038】
作図エリア制御部93dは、要求される作図エリア(作図位置)や要求される印刷物の解像度等に基づいて実際に吐出に用いる吐出トリガを決定するものである。要求される作図エリアは、種々の入力装置を介して入力される所望の図形(文字、模様等)の画像情報等に基づいて設定される。要求される印刷物の解像度は、種々の入力装置を介して入力される所望の解像度等に基づいて設定される。作図エリア制御部93dは、4逓倍部93cによって4逓倍された吐出トリガの中から、実際に吐出に用いる吐出トリガを、要求される作図エリア、解像度等に応じて等間隔となるようにして決定し、吐出タイミングを決定する。
【0039】
ヘッド制御部93eは、作図エリア制御部93dによって決定された吐出トリガに基づいてプリンタヘッド5による吐出制御を行うものである。ヘッド制御部93eは、作図エリア制御部93dによって決定された吐出トリガに基づいて圧電素子56に吐出信号を出力し、プリンタヘッド5によるインクの吐出タイミングを制御し、実際にプリンタヘッド5によるインクの吐出を制御する。
【0040】
次に、
図5〜
図11を参照して上記のように構成されるインクジェットプリンタ1による動作を説明する。
図5は、理想的なエンコーダパルスが得られる場合の吐出トリガについて説明する模式図である。
図6は、比較例に係るインクジェットプリンタにおける吐出トリガについて説明する模式図である。
図7、
図8は、プリンタヘッドのノズルのメニスカスの状態について説明する模式的断面図である。
図9は、比較例に係るインクジェットプリンタによる作図例を表す図である。
図10は、実施形態に係るインクジェットプリンタにおける吐出トリガについて説明する模式図である。
図11は、実施形態に係るインクジェットプリンタによる作図例を表す図である。
図5、
図6、
図10は、横軸を時間軸、縦軸をリニアエンコーダの出力信号(エンコーダパルス)、及び、吐出トリガとしている。ここでは、比較例に係るインクジェットプリンタは、補正部93bを備えず、吐出トリガ補正制御を実行しない点で本実施形態のインクジェットプリンタ1とは異なるものである。
【0041】
本実施形態のエンコーダ82は、上述したように、所定の位相差として、90°位相がずれた2つの検出信号を出力信号として出力する。したがってここでは、理想的なエンコーダパルスが得られる場合、エッジ検出部93aは、
図5に示すように、例えば、A相に対してB相が90°遅れた位相でエッジ検出部93aに入力される。この場合、エッジ検出部93aは、エンコーダ82から入力されるA相、B相の出力信号のエッジを検出し、これを吐出トリガとすることで、隣り合う吐出トリガの時間間隔(以下、「トリガ間隔」という場合がある。)が均一となる。
【0042】
なお、エッジ検出部93aによって検出される出力信号の各エッジは、リニアスケール81の各基準マークのキャリッジ進行方向手前側のエッジ、及び、進行方向奥側のエッジに相当する。また、例えば、各基準マークのエッジ間隔が解像度=150dpiに相当する間隔である場合、位相がずれた2つの出力信号の各エッジを検出し、これを吐出トリガとした場合には、当該吐出トリガは、解像度=150dpi×4=600dpiの画像を印刷するための吐出トリガ(600dpiトリガ)に相当することとなる。
【0043】
そしてこの場合、エッジ検出部93aによって生成された吐出トリガ(600dpiトリガ)のトリガ間隔が均一となっていることから、4逓倍部93cによって4逓倍された吐出トリガ、ここでは、解像度=600dpi×4=2400dpiの画像を印刷するための吐出トリガ(2400dpiトリガ)もトリガ間隔が均一となる。したがって、作図エリア制御部93dによって決定された実際に吐出に用いる吐出トリガ、ここでは、解像度=600dpiの画像を印刷するための吐出トリガ(吐出に使う600dpiトリガ)もトリガ間隔が均一となり、すなわち、当該吐出に用いる吐出トリガの周期は均一となる。
【0044】
しかしながら、実際には、
図6に例示するように、種々の要因によりリニアエンコーダ8の出力信号(エンコーダパルス)のA相とB相との位相差が想定どおりの位相差(ここでは90°)にならない場合がある。ここで、種々の要因としては、例えば、上述の複数のフォトダイオード82aの取り付け誤差や製造精度、リニアスケール81の取り付け誤差、各基準マークの位置ずれ等が挙げられる。このように、出力信号のA相とB相との位相差が正確に90°とならない場合、エッジ検出部93aによって生成される吐出トリガ(600dpiトリガ)は、トリガ間隔が不均一となる。
【0045】
そして、比較例に係るインクジェットプリンタのように吐出トリガ補正制御を実行しない場合、4逓倍部93cによって4逓倍された吐出トリガ(2400dpiトリガ)、作図エリア制御部93dによって決定された実際に吐出に用いる吐出トリガ(吐出に使う600dpiトリガ)のトリガ間隔も不均一となり、当該吐出に用いる吐出トリガの周期が不均一となる。
図6の例では、解像度=600dpiの印刷を行う場合、4逓倍された吐出トリガ(2400dpiトリガ)において、4トリガおきに実際に吐出に用いる吐出トリガが決定されるが、4回に1回は急にトリガ間隔が相対的に長くなり、周期が長くなってしまうこととなる。
【0046】
この結果、比較例に係るインクジェットプリンタは、インクの吐出間隔が不均一となり、インクの着弾位置が不安定となることで、印刷物の画質が低下するおそれがある。
【0047】
また、上述した圧電素子56等を用いたプリンタヘッド5は、当該圧電素子56がダイアフラム膜55に加えた振動に応じてノズル52からインクを吐出すると共に、このような動作に伴ってノズル52に形成されるメニスカスが変動するものでもある。
【0048】
この場合、比較例に係るインクジェットプリンタは、インクの吐出間隔が不均一となることで、ひとたびインクを吐出してから次弾を吐出するまでの時間間隔にバラツキが生じ、これにより、インクを吐出する瞬間におけるノズル52のメニスカスの状態が各吐出ごとに不均一となるおそれがある。例えば、比較例に係るインクジェットプリンタは、
図7に示すようなメニスカスの状態でインクの吐出が行われた場合と、
図8に示すようにメニスカスの状態が
図7で示した位置(
図8中に点線で図示)まで戻る前に次弾の吐出が行われた場合とでは、
図8に示す場合の方が吐出されるインクの液適量が相対的に多くなる傾向にある。つまり、比較例に係るインクジェットプリンタは、ダイアフラム膜55の振動に応じてメニスカスの上下位置が変動するが、インクの吐出間隔が不均一となることで、各吐出時のメニスカスの位置が安定せず、不均一となるおそれがある。したがって、比較例に係るインクジェットプリンタは、各吐出におけるインクの液適量が不安定となり、各吐出間でインクの弾丸の大きさが相互に異なりバラツキが発生してしまうおそれがある。
【0049】
この結果、比較例に係るインクジェットプリンタは、リニアエンコーダ8の出力信号の位相ずれが極微少なものであっても、インクの吐出間隔の不均一化によるインクの着弾位置の不安定化に加えて、インクの吐出間隔の不均一化によるインクの液滴量の不均等化によって、より顕著に画質が低下するおそれがある。この場合、比較例に係るインクジェットプリンタによって印刷された印刷物は、例えば、
図9に例示するように、着弾したインクドット間に隙間が生じたり、ドット径自体が不均一となったりしてムラが発生し、これにより、例えば、副走査方向(
図9中の上下方向)に対して白い縦線が発生してしまう場合がある。
【0050】
これに対して、本実施形態のインクジェットプリンタ1は、
図10に示すように、エッジ検出部93aによって生成される吐出トリガ(600dpiトリガ)のトリガ間隔が不均一となっても、補正部93bによって、予め計測されたリニアエンコーダ8の出力に基づいて、吐出トリガの間隔が均等になるように、各吐出トリガを補正する。そして、本実施形態のインクジェットプリンタ1は、上記のように補正した各吐出トリガ(600dpiトリガ補正)を4逓倍部93cによって4逓倍することで、当該4逓倍された吐出トリガ(2400dpiトリガ)のトリガ間隔も均一となる。この結果、インクジェットプリンタ1は、作図エリア制御部93dによって決定された実際に吐出に用いる吐出トリガ(吐出に使う600dpiトリガ)のトリガ間隔も均一となり、当該吐出に用いる吐出トリガの周期が均一となる。この結果、本実施形態のインクジェットプリンタ1は、インクの吐出間隔を均一化することができ、インクの着弾位置を安定化させることができるので、画質を向上することができる。このとき、インクジェットプリンタ1は、補正部93bが上記各吐出トリガに対する補正値に加えて、さらに、キャリッジ4の現在速度等に応じて、各吐出トリガのタイミングをそれぞれ補正し、各トリガ間隔を均一に補正し、600dpiトリガ補正を生成することで、キャリッジ4の速度変動がトリガ周期より十分遅い速度変動であれば、必ずしも一定速度である必要がない構成とすることができる。これにより、このインクジェットプリンタ1は、より安価なモータを使用した場合でも、より正確な着弾位置を実現することができる。
【0051】
また、本実施形態のインクジェットプリンタ1は、制御装置9が上記のような吐出トリガ補正制御を実行することで、プリンタヘッド5のノズル52から吐出するインクの液滴量を均等にする。
【0052】
つまり、本実施形態のインクジェットプリンタ1は、インクの吐出間隔を均一化することで、ひとたびインクを吐出してから次弾を吐出するまでの時間間隔にバラツキが生じることを抑制し、インクを吐出する瞬間におけるノズル52のメニスカスの状態が各吐出ごとにばらつくことを抑制することができる。言い換えれば、インクジェットプリンタ1は、ダイアフラム膜55の振動に応じてメニスカスの上下位置が変動するが、インクの吐出間隔を均一化することができるので、各吐出時のメニスカスの位置を安定化させ、均一化することができる。したがって、インクジェットプリンタ1は、各吐出におけるインクの液適量を均等化することができ、各吐出間でインクの弾丸の大きさが相互に異なりバラツキが発生してしまうことを抑制することができる。
【0053】
この結果、インクジェットプリンタ1は、リニアエンコーダ8の出力信号に位相ずれが生じていても、インクの吐出間隔の均一化によるインクの着弾位置の安定化に加えて、インクの吐出間隔の均一化によるインクの液滴量の均等化によって、より顕著に画質を向上することができる。つまり、インクジェットプリンタ1は、リニアエンコーダ8の出力信号波形において、複数のフォトダイオード82aの取り付け誤差等に起因して、所定の位相差に対して誤差が生じる場合であっても、インクの吐出間隔を均一化することができるので、画質を向上することができる。したがって、インクジェットプリンタ1によって印刷された印刷物は、例えば、
図11に例示するように、着弾したインクドット間に隙間が生じることやドット径自体が不均一となることが抑制されるので、ムラが発生することが抑制され、例えば、
図9で示したような白い縦線が発生してしまうことが抑制される。
【0054】
以上で説明した実施形態に係るインクジェットプリンタ1によれば、主走査方向に沿って移動可能であるキャリッジ4と、キャリッジ4に設けられ、インクを吐出可能であるプリンタヘッド5と、主走査方向に沿ったキャリッジ4の位置を検出可能であるリニアエンコーダ8と、リニアエンコーダ8の出力に応じてインクの吐出トリガを生成し、当該吐出トリガに基づいて、吐出部によるインクの吐出タイミングを制御する制御装置9とを備え、制御装置9は、予め計測されたリニアエンコーダ8の出力に基づいて、吐出トリガの間隔が均等になるように、各吐出トリガを補正する吐出トリガ補正制御を実行可能である。したがって、インクジェットプリンタ1、制御装置9は、インクの吐出間隔を均一化することができ、インクの着弾位置を安定化させることができるので、画質を向上することができる。
【0055】
なお、上述した本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタ、及び、吐出制御装置は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。