特許第6289071号(P6289071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6289071タッチパネル装置およびタッチ座標処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6289071
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】タッチパネル装置およびタッチ座標処理方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20180226BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
   G06F3/041 522
   G06F3/044 120
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-260174(P2013-260174)
(22)【出願日】2013年12月17日
(65)【公開番号】特開2015-118445(P2015-118445A)
(43)【公開日】2015年6月25日
【審査請求日】2016年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】501426046
【氏名又は名称】エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100117776
【弁理士】
【氏名又は名称】武井 義一
(74)【代理人】
【識別番号】100188329
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 義行
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】三代川 智慎
【審査官】 萩島 豪
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−089937(JP,A)
【文献】 特開2013−097709(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0076650(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F3/041
G06F3/044
H01H36/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電容量方式のタッチパネルを備えたタッチパネル装置であって、
前記タッチパネルの各センサからのRawデータと、所定のベースデータとの差分をとって、差分データを生成する差分データ生成部と、
前記差分データに基づいて、タッチの有無を検出するとともに、タッチが検出された場合に、タッチ座標を算出する座標算出部と、
前記タッチ座標に座標IDを付与する座標ID設定部と、
付与された前記座標IDが新規の座標IDである場合には、前記タッチ座標に係る座標データを外部に出力せず、付与された前記座標IDが新規の座標IDでない場合には、前記タッチ座標に係る座標データを外部に出力する座標出力制御部と、
を備えたタッチパネル装置。
【請求項2】
静電容量方式のタッチパネルを備えたタッチパネル装置で実行されるタッチ座標処理方法であって、
前記タッチパネルの各センサからのRawデータと、所定のベースデータとの差分をとって、差分データを生成する差分データ生成ステップと、
前記差分データに基づいて、タッチの有無を検出する検出ステップと、
タッチが検出された場合に、タッチ座標を算出する座標算出ステップと、
前記タッチ座標に座標IDを付与する座標ID設定ステップと、
付与された前記座標IDが新規の座標IDである場合には、前記タッチ座標に係る座標データを外部に出力せず、付与された前記座標IDが新規の座標IDでない場合には、前記タッチ座標に係る座標データを外部に出力する座標出力制御ステップと、
を有するタッチ座標処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、静電容量(Projected cap)方式のタッチパネル装置およびタッチパネルのタッチ座標処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やタブレットPC等は、薄型化が進んでおり、静電容量方式のタッチパネルは、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)内部にセンサを取り込む方向になっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図9は、従来のタッチパネル装置を示すブロック構成図である。図9において、このタッチパネル装置は、タッチパネル10、タッチ制御IC(Integrated Circuit)20、MCU(Micro Control Unit)30、およびホストコントローラ40を備えている。
【0004】
また、MCU30は、ノイズフィルタ31、差分データ生成部32、座標算出部33、座標ID設定部34を有している。なお、MCU30は、CPUとメモリとを有するマイクロプロセッサ(図示せず)で構成されている。
【0005】
タッチパネル10は、例えばLCDの表面に設けられ、タッチ制御IC20からの制御命令に応じて、各センサのRawデータをアナログ信号で出力する。タッチ制御IC20は、MCU30からの制御命令に応じて、タッチパネル10に対するセンシングの仕方等を制御するとともに、タッチパネル10からのアナログ信号のRawデータを、デジタル信号に変換して出力する。
【0006】
MCU30は、ホストコントローラ40からの制御命令に応じて、タッチ制御IC20の動作を制御するとともに、タッチ制御IC20からのデジタル信号のRawデータが入力される。また、MCU30は、入力されたRawデータに基づいて、タッチ位置の座標(タッチ座標)を算出し、座標データ信号をホストコントローラ40に出力する。
【0007】
具体的には、ノイズフィルタ31は、入力されたRawデータに対して、ノイズを低減または除去する。差分データ生成部32は、ノイズフィルタ31でノイズが低減または除去されたRawデータと、任意に設定される所定のベースデータとの差分をとって、差分データを生成する。
【0008】
座標算出部33は、生成された差分データに基づいて、タッチの有無を検出するとともに、タッチが検出された場合に、タッチ座標を算出する。座標ID設定部34は、算出されたタッチ座標にID(座標ID)を付与し、タッチ座標に係る座標データ信号をホストコントローラ40に出力する。
【0009】
ホストコントローラ40は、MCU30の動作を制御するとともに、MCU30からの座標データ信号が入力される。また、ホストコントローラ40は、LCDのタイミングコントローラ(図示せず)に対して、LCDの液晶書き込みを行うための制御命令を出力する。
【0010】
以下、図10のフローチャートを参照しながら、図9に示したタッチパネル装置のMCU30の動作について説明する。
【0011】
まず、MCU30は、タッチパネル10およびタッチ制御IC20から、タッチパネル10の各センサについて、Rawデータを取得する(ステップS1)。
続いて、MCU30は、入力されたRawデータからノイズを低減または除去するとともに、所定のベースデータとの差分をとって差分データを生成する(ステップS2)。
【0012】
次に、MCU30は、生成された差分データに基づいて、タッチの有無を検出するとともに、タッチの有無に基づいてタッチ座標を算出する(ステップS3)。
続いて、MCU30は、算出されたタッチ座標に座標IDを付与し(ステップS4)、座標データ信号をホストコントローラ40に出力して(ステップS5)、図10の処理を終了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2010−232162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
上述したように、近年、携帯電話やタブレットPC等の薄型化が進んでいるが、同様に処理速度も120Hz等高速化が進んでおり、常にタッチのセンシングが行われている。そのため、タッチ途中の状態でセンシングが行われる場合があるので、変化途中のデータに基づいてタッチ座標が算出され、タッチ座標にジッタ(座標ぶれ)が発生するという問題がある。
【0015】
以下、図11を参照しながら、従来のタッチパネル装置において、変化途中のデータに基づいてタッチ座標が算出された場合に発生するジッタについて説明する。図11において、(a)はスタイラスがタッチパネルに接触していない状態を示し、(b)はスタイラスがタッチパネルに接触していないものの、差分データが増加途中で、タッチが検出された状態を示し、(c)はスタイラスがタッチパネルに十分に接触してホールドされている状態を示し、(d)は(b)と(c)以降とのタッチ座標を示している。
【0016】
まず、タップ等急激にスタイラスや指をタッチパネルに近づける場合、タッチ制御ICがタッチパネルからRawデータを取得するタイミングによっては、増加途中のRawデータが取得されることがある。続いて、この増加途中のRawデータに対してノイズが低減または除去され、差分データが生成されてタッチの有無が検出され、タッチの有無に基づいてタッチ座標が算出された後、座標データ信号がホストコントローラに出力される。
【0017】
すなわち、スタイラスがタッチパネルに接触していないものの、タッチパネルの近距離にスタイラスや指がある場合には、増加途中の差分データが生成されることがある。ここで、増加途中(図11(b)参照)の差分データに基づいて算出されたタッチ座標と、接触後(図11(c)参照)の差分データに基づいて算出されたタッチ座標とでは、タッチ座標に差が生じる(図11(d)参照)。そのため、タッチ座標に大きなジッタが発生し、誤動作が生じる。
【0018】
これは、増加途中の差分データに基づいてタッチ座標が算出され、座標データ信号がホストコントローラに出力されることが原因である。以下、図12を参照しながら、従来のタッチパネル装置において、増加途中の差分データに基づいてタッチ座標を算出することの問題について説明する。
【0019】
図12において、(a)はスタイラスがタッチパネルに接触していない状態での差分データ(全て0)を示し、(b)はスタイラスがタッチパネルに接触していないものの、タッチパネルの近距離にスタイラスがあることで増加途中の差分データを示し、(c)はスタイラスがタッチパネルに接触してホールドされ、増加が収束している差分データを示している。
【0020】
例えばスタイラスの場合、接触時の差分データの増加量が少ないので、タッチ検出を敏感にする必要があることから、差分データの増加途中でタッチが検出されることがある。そのため、増加途中の差分データに基づいてタッチ座標が算出され、座標データ信号がホストコントローラに出力される。
【0021】
ここで、増加途中の差分データ(図12(b)参照)に基づいて算出されたタッチ座標と、スタイラスがタッチパネルに接触してホールドされ(タッチが継続している状態)、増加が収束している差分データ(図12(c)参照)に基づいて、次フレームで算出されたタッチ座標とでは、大きな差が生じてジッタが発生し、誤動作が生じる。
【0022】
一方、上述したように、近年、携帯電話やタブレットPC等の薄型化が進んでいるが、これに伴って、センサとLCDの駆動に関する電極との距離が近くなっている。そのため、ノイズの影響を受けて、タッチ座標にジッタ(座標ぶれ)が発生しやすくなってきているという問題もある。
【0023】
以下、図13を参照しながら、従来のタッチパネル装置において、ノイズの影響を受けてタッチ座標が算出された場合に発生するジッタについて説明する。図13において、(a)は指でタッチパネルの一定の位置をタッチし続けている状態を示し、(b)は(a)に示した状態でホストコントローラが取得したタッチ座標を示している。
【0024】
まず、タッチ制御ICがタッチパネルから取得したRawデータに対して、ノイズが低減または除去され、差分データが生成されてタッチの有無が検出される。続いて、タッチの有無に基づいてタッチ座標が算出され、座標データ信号がホストコントローラに出力される。
【0025】
ここで、指やスタイラス等でタッチパネルをタッチした後、タッチした位置でホールド状態(図13(a)参照)を保つと、ノイズの影響により、タッチ座標の算出時に用いられる差分データが変動するので、タッチ座標に差が生じる(図13(b)参照)。そのため、指を動かしていない状態であるが、タッチ座標が細かく変動してジッタが発生し、誤動作が生じる。
【0026】
これは、変動している差分データに基づいてタッチ座標が算出され、座標データ信号がホストコントローラに出力されることが原因である。以下、図14を参照しながら、従来のタッチパネル装置において、変動している差分データに基づいてタッチ座標を算出することの問題について説明する。
【0027】
図14において、(a)は指でタッチパネルをタッチした後、タッチした位置でホールドしている状態におけるNフレーム時の差分データを示し、(b)は(a)に示した状態から10フレーム後(N+10フレーム時)の差分データを示している。
【0028】
差分データの変動は、ノイズによる影響と、指を置いている使用者によるホールド位置のずれとに起因する(図14(a)、(b)参照)。ここで、ノイズによる影響については、ノイズの低減または除去を十分に行う必要があるが、ノイズの低減または除去を強めると、差分データの細かい変動を丸めることになり、指を少し動かしたときのような、微細なタッチ座標を検出することができなくなる。
【0029】
そのため、全てのノイズを除去することができないので、算出されたタッチ座標にはジッタが発生し、誤動作が生じる。具体的には、図14の(a)と(b)とでは、差分データに50近くの差がある部分が存在するので、算出されたタッチ座標には、ジッタが発生する。
【0030】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、ジッタの影響を抑制することにより、誤動作を防止するとともに、操作感を向上させることができるタッチパネル装置およびタッチ座標処理方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0031】
この発明に係るタッチパネル装置は、静電容量方式のタッチパネルを備えたタッチパネル装置であって、タッチパネルの各センサからのRawデータと、所定のベースデータとの差分をとって、差分データを生成する差分データ生成部と、差分データに基づいて、タッチの有無を検出するとともに、タッチが検出された場合に、タッチ座標を算出する座標算出部と、タッチ座標に座標IDを付与する座標ID設定部と、付与された座標IDが新規の座標IDである場合には、タッチ座標に係る座標データを外部に出力せず、付与された座標IDが新規の座標IDでない場合には、タッチ座標に係る座標データを外部に出力する座標出力制御部と、を備えたものである。
【0032】
また、この発明に係るタッチパネル装置は、静電容量方式のタッチパネルを備えたタッチパネル装置であって、タッチパネルの各センサからのRawデータと、所定のベースデータとの差分をとって、差分データを生成する差分データ生成部と、差分データに基づいて、タッチの有無を検出するとともに、タッチが検出された場合に、タッチ座標を算出する座標算出部と、算出されたタッチ座標が所定の条件を満たす場合に、このタッチ座標をベース座標として設定するとともに、その後算出されたタッチ座標が、ベース座標を中心とするジッタ抑制エリアにあるときに、当該タッチ座標をベース座標に置き換えるジッタ抑制エリア制御部と、を備えたものである。
【0033】
この発明に係るタッチ座標処理方法は、静電容量方式のタッチパネルを備えたタッチパネル装置で実行されるタッチ座標処理方法であって、タッチパネルの各センサからのRawデータと、所定のベースデータとの差分をとって、差分データを生成する差分データ生成ステップと、差分データに基づいて、タッチの有無を検出する検出ステップと、タッチが検出された場合に、タッチ座標を算出する座標算出ステップと、タッチ座標に座標IDを付与する座標ID設定ステップと、付与された座標IDが新規の座標IDである場合には、タッチ座標に係る座標データを外部に出力せず、付与された座標IDが新規の座標IDでない場合には、タッチ座標に係る座標データを外部に出力する座標出力制御ステップと、を有するものである。
【0034】
また、この発明に係るタッチ座標処理方法は、静電容量方式のタッチパネルを備えたタッチパネル装置で実行されるタッチ座標処理方法であって、タッチパネルの各センサからのRawデータと、所定のベースデータとの差分をとって、差分データを生成する差分データ生成ステップと、差分データに基づいて、タッチの有無を検出する検出ステップと、タッチが検出された場合に、タッチ座標を算出する座標算出ステップと、算出されたタッチ座標が所定の条件を満たす場合に、このタッチ座標をベース座標として設定するベース座標設定ステップと、ベース座標の設定後に算出されたタッチ座標が、ベース座標を中心とするジッタ抑制エリアにあるときに、当該タッチ座標をベース座標に置き換えるタッチ座標置き換えステップと、を有するものである。
【発明の効果】
【0035】
この発明に係るタッチパネル装置およびタッチ座標処理方法によれば、座標出力制御部(ステップ)は、付与された座標IDが新規の座標IDである場合には、タッチ座標に係る座標データを外部に出力せず、付与された座標IDが新規の座標IDでない場合には、タッチ座標に係る座標データを外部に出力する。
また、ジッタ抑制エリア制御部(ベース座標設定ステップ、タッチ座標置き換えステップ)は、算出されたタッチ座標が所定の条件を満たす場合に、このタッチ座標をベース座標として設定するとともに、その後算出されたタッチ座標が、ベース座標を中心とするジッタ抑制エリアにあるときに、当該タッチ座標をベース座標に置き換える。
そのため、ジッタの影響を抑制することにより、誤動作を防止するとともに、操作感を向上させることができるタッチパネル装置およびタッチ座標処理方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】この発明の実施の形態1に係るタッチパネル装置を示すブロック構成図である。
図2】この発明の実施の形態1に係るタッチパネル装置のMCUの動作を説明するための図である。
図3図1に示した座標出力制御部の動作を示すフローチャートである。
図4】(a)、(b)は、この発明の実施の形態1に係るタッチパネル装置の効果を説明するための図である。
図5】この発明の実施の形態2に係るタッチパネル装置を示すブロック構成図である。
図6】(a)、(b)は、この発明の実施の形態2に係るタッチパネル装置のMCUの動作を説明するための図である。
図7図5に示したジッタ抑制エリア制御部の動作を示すフローチャートである。
図8】(a)、(b)は、この発明の実施の形態2に係るタッチパネル装置の効果を説明するための図である。
図9】従来のタッチパネル装置を示すブロック構成図である。
図10】従来のタッチパネル装置のMCUの動作を示すフローチャートである。
図11】(a)〜(d)は、従来のタッチパネル装置において、変化途中のデータに基づいてタッチ座標が算出された場合に発生するジッタを説明するための図である。
図12】(a)〜(c)は、従来のタッチパネル装置において、増加途中の差分データに基づいてタッチ座標を算出することの問題を説明するための図である。
図13】(a)、(b)は、従来のタッチパネル装置において、ノイズの影響を受けてタッチ座標が算出された場合に発生するジッタを説明するための図である。
図14】(a)、(b)は、従来のタッチパネル装置において、変動している差分データに基づいてタッチ座標を算出することの問題を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、この発明に係るタッチパネル装置およびタッチ座標処理方法の好適な実施の形態につき図面を用いて説明するが、各図において同一、または相当する部分については、同一符号を付して説明する。
【0038】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係るタッチパネル装置を示すブロック構成図である。図1において、このタッチパネル装置は、図9に示したMCU30に代えて、MCU30Aを備えている。MCU30Aは、図9に示したMCU30に加えて、座標出力制御部35を有している。
【0039】
座標出力制御部35は、座標ID設定部34によって付与された座標IDが、新規の座標IDである場合には、タッチ座標に係る座標データ信号をホストコントローラ40に出力しない。また、座標出力制御部35は、付与された座標IDが、前フレームで付与された座標IDと同一であり、新規の座標IDでない場合には、タッチ座標に係る座標データ信号をホストコントローラ40に出力する。
【0040】
以下、図2を参照しながら、この発明の実施の形態1に係るタッチパネル装置のMCU30Aの動作について説明する。図2は、差分データの生成から、ホストコントローラ40に座標データ信号を出力するまでのフレーム単位の処理を示している。
【0041】
図2において、まず、N−1フレームは、差分データ生成部32で差分データが生成された後、タッチが検出されない場合である。このときは、座標算出部33によるタッチ座標の算出以降の処理は行われない。
【0042】
続いて、Nフレームは、差分データ生成部32で差分データが生成された後、座標算出部33により最初のタッチ(ファーストタッチ)が検出された場合である。このとき、座標算出部33は、タッチ座標を算出する。また、座標ID設定部34は、算出されたタッチ座標に座標IDを付与する。
【0043】
ここで、座標ID設定部34は、タッチ座標に座標IDを付与する際、タッチ座標の継続性を保持するために、算出されたタッチ座標が前フレームで算出されたタッチ座標に近い座標(所定の範囲内の座標)である場合には、継続性があると判断して、前フレームと同じ座標IDを付与する。一方、座標ID設定部34は、継続性がないと判断した場合には、新規の座標IDを付与する。
【0044】
このNフレームでは、ファーストタッチが検出されていることから、タッチ座標の継続性がないと判断され、算出されたタッチ座標には、新規の座標IDが付与されている。このとき、ファーストタッチが、図12(b)に示した増加途中の差分データに基づいて検出された場合があり、タッチ座標にジッタが発生する恐れがあるので、座標出力制御部35は、タッチ座標に係る座標データ信号をホストコントローラ40に出力しない。
【0045】
次に、N+1フレーム以降では、継続したタッチ(セカンドタッチ)が検出されていることから、差分データの増加が収束し、タッチ座標の継続性があると判断され、算出されたタッチ座標には、前フレームと同じ座標IDが付与される。
【0046】
このとき、座標出力制御部35は、付与された座標IDが、前フレームで付与された座標IDと同一であることから、タッチ座標に係る座標データ信号をホストコントローラ40に出力する。これにより、ジッタの影響を抑制し、誤動作をなくすることができる。
【0047】
図3は、図1に示した座標出力制御部35の動作を示すフローチャートである。なお、この座標出力制御部35の動作は、図10に示したステップS5に代えて実行される。
まず、座標出力制御部35は、算出されたタッチ座標に付与された座標IDが新規の座標IDであるか否かを判定する(ステップS11)。
【0048】
ステップS11において、新規の座標IDが付与された(すなわち、Yes)と判定された場合には、座標出力制御部35は、タッチ座標に係る座標データ信号をホストコントローラ40に出力せず(ステップS12)、図3の処理を終了する。
【0049】
一方、ステップS11において、新規の座標IDが付与されていない(すなわち、No)と判定された場合には、座標出力制御部35は、タッチ座標に係る座標データ信号をホストコントローラ40に出力し(ステップS13)、図3の処理を終了する。
【0050】
図4は、この発明の実施の形態1に係るタッチパネル装置の効果を説明するための図である。図4において、(a)は従来のタッチパネル装置においてホストコントローラ40が取得したタッチ座標を示し、(b)はこの発明の実施の形態1に係るタッチパネル装置においてホストコントローラ40が取得したタッチ座標を示す。図4より、ファーストタッチに係るタッチ座標が、ホストコントローラ40に出力されていないことがわかる。
【0051】
以上のように、実施の形態1によれば、座標出力制御部は、付与された座標IDが新規の座標IDである場合には、タッチ座標に係る座標データを外部に出力せず、付与された座標IDが新規の座標IDでない場合には、タッチ座標に係る座標データを外部に出力する。
そのため、ジッタの影響を抑制することにより、誤動作を防止するとともに、操作感を向上させることができる。
【0052】
実施の形態2.
図5は、この発明の実施の形態2に係るタッチパネル装置を示すブロック構成図である。図5において、このタッチパネル装置は、図9に示したMCU30に代えて、MCU30Bを備えている。MCU30Bは、図9に示したMCU30に加えて、ジッタ抑制エリア制御部36を有している。
【0053】
ジッタ抑制エリア制御部36は、座標算出部33によって算出されたタッチ座標について、所定の条件を満たし、最初にホストコントローラ40に出力されるタッチ座標を、ベース座標として設定する。ここで、所定の条件とは、例えば算出されたタッチ座標が、実施の形態1で示したファーストタッチに係るタッチ座標ではないことである。
【0054】
また、ジッタ抑制エリア制御部36は、ベース座標を設定した後に算出されたタッチ座標が、ベース座標を中心とする第1エリア内にある場合には、算出されたタッチ座標をベース座標に置き換える(ベース座標で更新する)。
【0055】
さらに、ジッタ抑制エリア制御部36は、算出されたタッチ座標を連続してベース座標に置き換えた回数が、任意に設定される所定回数以上になった場合には、第1エリアを、より狭い第2エリアに設定し、算出されたタッチ座標が第2エリア内にあるときは、算出されたタッチ座標をベース座標に置き換える。
【0056】
以下、図6を参照しながら、この発明の実施の形態2に係るタッチパネル装置のMCU30Bの動作について説明する。図6において(a)は座標算出を行い、ジッタが発生している状態を示し、(b)はジッタの抑制により、タッチ座標がジャンピングする状態を示している。
【0057】
図6(a)において、算出されたタッチ座標(算出座標)のうち、上述した所定の条件を満たし、最初にホストコントローラ40に出力されるタッチ座標が、ベース座標として設定されている。また、ベース座標を中心として、第1エリアがジッタ抑制エリアとして設定されている。
【0058】
ここで、ジッタ抑制エリアとは、算出座標がこのエリア内にある場合に、算出座標を全てベース座標に置き換える(ベース座標で更新する)エリアである。なお、タッチの初期は、指やスタイラス等のぶれが大きいので、ジッタ抑制エリアは、広めに設定される。これにより、ジッタの影響を抑制し、誤動作をなくすることができる。
【0059】
なお、ジッタ抑制エリアは、タッチ座標のジャンピングを抑制するために、第1エリアと、第1エリアよりも狭い第2エリアが設定される。図6(b)に示されるように、第1エリアの1辺がNピクセルである場合、算出座標が第1エリア内にあると、タッチ座標としてベース座標が出力され続けるので、タッチ座標が第1エリア外に出たときに、N/2のジャンピングが発生する。
【0060】
そのため、算出座標が連続してベース座標に置き換えられた回数が、所定回数以上になった場合には、ジッタ抑制エリアが第2エリアに設定される。なお、タッチが継続すると、指やスタイラス等のぶれが小さくなるので、ジッタ抑制エリアを縮小しても影響は小さい。
【0061】
これにより、ジッタ抑制エリアが狭くなり、タッチした位置でホールドされていた指を動かした場合であっても、タッチ座標のジャンピングが抑制される。また、ジッタ抑制エリアは、第1エリアおよび第2エリアの2段階に限定されず、更新回数が増えるにつれて、徐々に小さくなるように設定されてもよい。
【0062】
図7は、図5に示したジッタ抑制エリア制御部36の動作を示すフローチャートである。なお、このジッタ抑制エリア制御部36の動作は、図10に示したステップS3またはS4の後に実行される。
【0063】
まず、ジッタ抑制エリア制御部36は、ベース座標が設定されるか否かを判定する(ステップS21)。
ステップS21において、ベース座標が設定されていない(すなわち、No)と判定された場合には、ジッタ抑制エリア制御部36は、ベース座標を設定して(ステップS22)、図7の処理を終了する。
【0064】
一方、ステップS21において、ベース座標が設定されている(すなわち、Yes)と判定された場合には、ジッタ抑制エリア制御部36は、タッチ座標が第1エリア内(ジッタ抑制エリアが第2エリアに設定されている場合は、第2エリア内)にあるか否かを判定する(ステップS23)。
【0065】
ステップS23において、タッチ座標が第1エリア内または第2エリア内にある(すなわち、Yes)と判定された場合には、ジッタ抑制エリア制御部36は、当該タッチ座標をベース座標で更新して(ステップS24)、更新回数が所定回数以上であるか否かを判定する(ステップS25)。
【0066】
一方、ステップS23において、タッチ座標が第1エリア内または第2エリア内にない(すなわち、No)と判定された場合には、そのまま図7の処理を終了する。
【0067】
ステップS25において、更新回数が所定回数以上である(すなわち、Yes)と判定された場合には、ジッタ抑制エリア制御部36は、ジッタ抑制エリアを第2エリアに設定し(ステップS26)、図7の処理を終了する。
【0068】
一方、ステップS25において、更新回数が所定回数よりも少ない(すなわち、No)と判定された場合には、ジッタ抑制エリア制御部36は、更新回数をインクリメントして(ステップS27)、図7の処理を終了する。
【0069】
図8は、この発明の実施の形態2に係るタッチパネル装置の効果を説明するための図である。図8において、(a)は従来のタッチパネル装置においてホストコントローラ40が取得したタッチ座標を示し、(b)はこの発明の実施の形態2に係るタッチパネル装置においてホストコントローラ40が取得したタッチ座標を示す。図8より、算出座標がベース座標で更新され、ジッタが抑制されていることがわかる。
【0070】
以上のように、実施の形態2によれば、ジッタ抑制エリア制御部は、算出されたタッチ座標が所定の条件を満たす場合に、このタッチ座標をベース座標として設定するとともに、その後算出されたタッチ座標が、ベース座標を中心とするジッタ抑制エリアにあるときに、当該タッチ座標をベース座標に置き換える。
そのため、ジッタの影響を抑制することにより、誤動作を防止するとともに、操作感を向上させることができる。
【0071】
なお、上述した実施の形態1および実施の形態2は、互いに組み合わせて用いられてもよい。この場合には、よりジッタの影響を抑制することにより、誤動作を防止するとともに、操作感を向上させることができる。
【符号の説明】
【0072】
10 タッチパネル、20 タッチ制御IC、30 MCU、31 ノイズフィルタ、32 差分データ生成部、33 座標算出部、34 座標ID設定部、35 座標出力制御部、36 ジッタ抑制エリア制御部、40 ホストコントローラ。
図1
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