【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
上述したように、近年、携帯電話やタブレットPC等の薄型化が進んでいるが、同様に処理速度も120Hz等高速化が進んでおり、常にタッチのセンシングが行われている。そのため、タッチ途中の状態でセンシングが行われる場合があるので、変化途中のデータに基づいてタッチ座標が算出され、タッチ座標にジッタ(座標ぶれ)が発生するという問題がある。
【0015】
以下、
図11を参照しながら、従来のタッチパネル装置において、変化途中のデータに基づいてタッチ座標が算出された場合に発生するジッタについて説明する。
図11において、(a)はスタイラスがタッチパネルに接触していない状態を示し、(b)はスタイラスがタッチパネルに接触していないものの、差分データが増加途中で、タッチが検出された状態を示し、(c)はスタイラスがタッチパネルに十分に接触してホールドされている状態を示し、(d)は(b)と(c)以降とのタッチ座標を示している。
【0016】
まず、タップ等急激にスタイラスや指をタッチパネルに近づける場合、タッチ制御ICがタッチパネルからRawデータを取得するタイミングによっては、増加途中のRawデータが取得されることがある。続いて、この増加途中のRawデータに対してノイズが低減または除去され、差分データが生成されてタッチの有無が検出され、タッチの有無に基づいてタッチ座標が算出された後、座標データ信号がホストコントローラに出力される。
【0017】
すなわち、スタイラスがタッチパネルに接触していないものの、タッチパネルの近距離にスタイラスや指がある場合には、増加途中の差分データが生成されることがある。ここで、増加途中(
図11(b)参照)の差分データに基づいて算出されたタッチ座標と、接触後(
図11(c)参照)の差分データに基づいて算出されたタッチ座標とでは、タッチ座標に差が生じる(
図11(d)参照)。そのため、タッチ座標に大きなジッタが発生し、誤動作が生じる。
【0018】
これは、増加途中の差分データに基づいてタッチ座標が算出され、座標データ信号がホストコントローラに出力されることが原因である。以下、
図12を参照しながら、従来のタッチパネル装置において、増加途中の差分データに基づいてタッチ座標を算出することの問題について説明する。
【0019】
図12において、(a)はスタイラスがタッチパネルに接触していない状態での差分データ(全て0)を示し、(b)はスタイラスがタッチパネルに接触していないものの、タッチパネルの近距離にスタイラスがあることで増加途中の差分データを示し、(c)はスタイラスがタッチパネルに接触してホールドされ、増加が収束している差分データを示している。
【0020】
例えばスタイラスの場合、接触時の差分データの増加量が少ないので、タッチ検出を敏感にする必要があることから、差分データの増加途中でタッチが検出されることがある。そのため、増加途中の差分データに基づいてタッチ座標が算出され、座標データ信号がホストコントローラに出力される。
【0021】
ここで、増加途中の差分データ(
図12(b)参照)に基づいて算出されたタッチ座標と、スタイラスがタッチパネルに接触してホールドされ(タッチが継続している状態)、増加が収束している差分データ(
図12(c)参照)に基づいて、次フレームで算出されたタッチ座標とでは、大きな差が生じてジッタが発生し、誤動作が生じる。
【0022】
一方、上述したように、近年、携帯電話やタブレットPC等の薄型化が進んでいるが、これに伴って、センサとLCDの駆動に関する電極との距離が近くなっている。そのため、ノイズの影響を受けて、タッチ座標にジッタ(座標ぶれ)が発生しやすくなってきているという問題もある。
【0023】
以下、
図13を参照しながら、従来のタッチパネル装置において、ノイズの影響を受けてタッチ座標が算出された場合に発生するジッタについて説明する。
図13において、(a)は指でタッチパネルの一定の位置をタッチし続けている状態を示し、(b)は(a)に示した状態でホストコントローラが取得したタッチ座標を示している。
【0024】
まず、タッチ制御ICがタッチパネルから取得したRawデータに対して、ノイズが低減または除去され、差分データが生成されてタッチの有無が検出される。続いて、タッチの有無に基づいてタッチ座標が算出され、座標データ信号がホストコントローラに出力される。
【0025】
ここで、指やスタイラス等でタッチパネルをタッチした後、タッチした位置でホールド状態(
図13(a)参照)を保つと、ノイズの影響により、タッチ座標の算出時に用いられる差分データが変動するので、タッチ座標に差が生じる(
図13(b)参照)。そのため、指を動かしていない状態であるが、タッチ座標が細かく変動してジッタが発生し、誤動作が生じる。
【0026】
これは、変動している差分データに基づいてタッチ座標が算出され、座標データ信号がホストコントローラに出力されることが原因である。以下、
図14を参照しながら、従来のタッチパネル装置において、変動している差分データに基づいてタッチ座標を算出することの問題について説明する。
【0027】
図14において、(a)は指でタッチパネルをタッチした後、タッチした位置でホールドしている状態におけるNフレーム時の差分データを示し、(b)は(a)に示した状態から10フレーム後(N+10フレーム時)の差分データを示している。
【0028】
差分データの変動は、ノイズによる影響と、指を置いている使用者によるホールド位置のずれとに起因する(
図14(a)、(b)参照)。ここで、ノイズによる影響については、ノイズの低減または除去を十分に行う必要があるが、ノイズの低減または除去を強めると、差分データの細かい変動を丸めることになり、指を少し動かしたときのような、微細なタッチ座標を検出することができなくなる。
【0029】
そのため、全てのノイズを除去することができないので、算出されたタッチ座標にはジッタが発生し、誤動作が生じる。具体的には、
図14の(a)と(b)とでは、差分データに50近くの差がある部分が存在するので、算出されたタッチ座標には、ジッタが発生する。
【0030】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、ジッタの影響を抑制することにより、誤動作を防止するとともに、操作感を向上させることができるタッチパネル装置およびタッチ座標処理方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0031】
この発明に係るタッチパネル装置は、静電容量方式のタッチパネルを備えたタッチパネル装置であって、タッチパネルの各センサからのRawデータと、所定のベースデータとの差分をとって、差分データを生成する差分データ生成部と、差分データに基づいて、タッチの有無を検出するとともに、タッチが検出された場合に、タッチ座標を算出する座標算出部と、タッチ座標に座標IDを付与する座標ID設定部と、付与された座標IDが新規の座標IDである場合には、タッチ座標に係る座標データを外部に出力せず、付与された座標IDが新規の座標IDでない場合には、タッチ座標に係る座標データを外部に出力する座標出力制御部と、を備えたものである。
【0032】
また、この発明に係るタッチパネル装置は、静電容量方式のタッチパネルを備えたタッチパネル装置であって、タッチパネルの各センサからのRawデータと、所定のベースデータとの差分をとって、差分データを生成する差分データ生成部と、差分データに基づいて、タッチの有無を検出するとともに、タッチが検出された場合に、タッチ座標を算出する座標算出部と、算出されたタッチ座標が所定の条件を満たす場合に、このタッチ座標をベース座標として設定するとともに、その後算出されたタッチ座標が、ベース座標を中心とするジッタ抑制エリアにあるときに、当該タッチ座標をベース座標に置き換えるジッタ抑制エリア制御部と、を備えたものである。
【0033】
この発明に係るタッチ座標処理方法は、静電容量方式のタッチパネルを備えたタッチパネル装置で実行されるタッチ座標処理方法であって、タッチパネルの各センサからのRawデータと、所定のベースデータとの差分をとって、差分データを生成する差分データ生成ステップと、差分データに基づいて、タッチの有無を検出する検出ステップと、タッチが検出された場合に、タッチ座標を算出する座標算出ステップと、タッチ座標に座標IDを付与する座標ID設定ステップと、付与された座標IDが新規の座標IDである場合には、タッチ座標に係る座標データを外部に出力せず、付与された座標IDが新規の座標IDでない場合には、タッチ座標に係る座標データを外部に出力する座標出力制御ステップと、を有するものである。
【0034】
また、この発明に係るタッチ座標処理方法は、静電容量方式のタッチパネルを備えたタッチパネル装置で実行されるタッチ座標処理方法であって、タッチパネルの各センサからのRawデータと、所定のベースデータとの差分をとって、差分データを生成する差分データ生成ステップと、差分データに基づいて、タッチの有無を検出する検出ステップと、タッチが検出された場合に、タッチ座標を算出する座標算出ステップと、算出されたタッチ座標が所定の条件を満たす場合に、このタッチ座標をベース座標として設定するベース座標設定ステップと、ベース座標の設定後に算出されたタッチ座標が、ベース座標を中心とするジッタ抑制エリアにあるときに、当該タッチ座標をベース座標に置き換えるタッチ座標置き換えステップと、を有するものである。