特許第6289072号(P6289072)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社クボタの特許一覧

<>
  • 特許6289072-乗用水田作業機 図000002
  • 特許6289072-乗用水田作業機 図000003
  • 特許6289072-乗用水田作業機 図000004
  • 特許6289072-乗用水田作業機 図000005
  • 特許6289072-乗用水田作業機 図000006
  • 特許6289072-乗用水田作業機 図000007
  • 特許6289072-乗用水田作業機 図000008
  • 特許6289072-乗用水田作業機 図000009
  • 特許6289072-乗用水田作業機 図000010
  • 特許6289072-乗用水田作業機 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6289072
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】乗用水田作業機
(51)【国際特許分類】
   A01C 15/00 20060101AFI20180226BHJP
   A01M 9/00 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
   A01C15/00 H
   A01M9/00 D
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-260360(P2013-260360)
(22)【出願日】2013年12月17日
(65)【公開番号】特開2015-116139(P2015-116139A)
(43)【公開日】2015年6月25日
【審査請求日】2015年12月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】中村 奈
(72)【発明者】
【氏名】三本 松夫
(72)【発明者】
【氏名】永田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】松木 直樹
【審査官】 大熊 靖夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−175809(JP,A)
【文献】 実開平03−018714(JP,U)
【文献】 実開昭63−101825(JP,U)
【文献】 実開昭59−077328(JP,U)
【文献】 特開平11−178415(JP,A)
【文献】 特開2010−193761(JP,A)
【文献】 実開昭54−044715(JP,U)
【文献】 実開昭59−178015(JP,U)
【文献】 米国特許第04296695(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 3/00−3/08,7/00−9/08,15/00−23/04
A01M 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子制御ユニットが搭載された乗用型の走行車体と、前記走行車体の後部にリンク機構を介して連結する播種用又は苗植え付け用の主作業装置とを備え、
肥料又は薬剤を圃場に供給する補助作業装置を着脱可能に備え、
前記補助作業装置は、前記補助作業装置の異常を検出する検出器と、前記補助作業装置での異常を報知する報知器と、前記検出器の検出に基づいて前記報知器の作動を制御する補助作業用の電子制御ユニットとを備えて、前記補助作業用の電子制御ユニットが、車載の前記電子制御ユニットから独立して、前記検出器の検出に基づく前記報知器の作動制御を行うように構成されている乗用水田作業機。
【請求項2】
前記補助作業装置は、肥料又は薬剤を貯留する貯留部を備え、
前記貯留部は、貯留した肥料又は薬剤の残量が第1基準値を下回ったことを検出する第1残量検出器と、貯留した肥料又は薬剤の残量が前記第1基準値よりも小さい第2基準値を下回ったことを検出する第2残量検出器とを、前記検出器として備えている請求項1に記載の乗用水田作業機。
【請求項3】
前記走行車体は、エンジンからの動力で作動するブロワを備え、
前記補助作業装置は、肥料又は薬剤を圃場に供給する供給経路を備え、
前記供給経路は、その供給方向上手側部位に前記ブロワの排気口との接続が可能な接続口を備えている請求項1又は2に記載の乗用水田作業機。
【請求項4】
前記ブロワは、エンジン周辺の昇温空気を吸引するように構成している請求項3に記載の乗用水田作業機。
【請求項5】
前記主作業装置が作動状態か否かを検出する作動検出器と、前記ブロワへの伝動を断続するブロワクラッチと、前記作動検出器の出力に基づいて前記ブロワクラッチの作動状態を切り替えるブロワ作動制御部とを備え、
前記ブロワ作動制御部は、前記作動検出器が前記主作業装置の作動状態を検出すると前記ブロワクラッチを接続状態に切り替え、又、前記作動検出器が前記主作業装置の停止状態を検出すると前記ブロワクラッチを遮断状態に切り替えるように構成している請求項3又は4に記載の乗用水田作業機。
【請求項6】
前記主作業装置は、前記エンジンからの動力で作動するエンジン駆動式に構成し、
前記主作業装置への伝動を断続する作業クラッチを備え、
前記ブロワは、前記作業クラッチと前記主作業装置とにわたる伝動部から取り出した動力によって作動するように構成している請求項3又は4に記載の乗用水田作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用型の走行車体と、前記走行車体の後部にリンク機構を介して連結する播種用又は苗植え付け用の主作業装置とを備えた乗用水田作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような乗用水田作業機の一例である乗用田植機においては、例えば、走行車体の後部に施肥装置(補助作業装置の一例)を備え、走行車体に備えたメータパネルに、施肥装置のホッパに貯留された肥料の残量低下を表示する「肥料切れ」ランプ、及び、施肥装置の各作溝器での肥料詰まりの発生を表示する「詰まり」ランプ、などを備え、施肥装置のホッパに備えた肥料残量センサ、及び、各作溝器に備えた詰まりセンサの検出に基づいて、第2制御装置が、「肥料切れ」ランプ及び「詰まり」ランプの作動を制御するように構成したものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−253719号公報(段落番号0015、0020、0022〜0024、図1〜4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の構成では、乗用田植機を施肥仕様(補助作業あり仕様)と施肥なし仕様(補助作業なし仕様)とに仕様変更する場合、施肥装置の着脱に加えて、走行車体に備えるメータパネルを、「肥料切れ」ランプ及び「詰まり」ランプを備える施肥仕様と、それらのランプを備えない施肥なし仕様とに交換する必要がある。そのため、仕様変更に手間がかかるようになっていた。
【0005】
又、メータパネルの交換を不要にするために、施肥仕様と施肥なし仕様とに関係なく「肥料切れ」ランプと「詰まり」ランプとをメータパネルに標準装備することも考えられるが、この場合には、施肥なし仕様の乗用田植機にかかるコストが不必要に高くなる。
【0006】
本発明の目的は、補助作業なし仕様の乗用水田作業機にかかるコストの高騰を招くことなく、乗用水田作業機の補助作業あり仕様と補助作業なし仕様との仕様変更を容易に行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題解決手段は、
電子制御ユニットが搭載された乗用型の走行車体と、前記走行車体の後部にリンク機構を介して連結する播種用又は苗植え付け用の主作業装置とを備え、
肥料又は薬剤を圃場に供給する補助作業装置を着脱可能に備え、
前記補助作業装置は、前記補助作業装置の異常を検出する検出器と、前記補助作業装置での異常を報知する報知器と、前記検出器の検出に基づいて前記報知器の作動を制御する補助作業用の電子制御ユニットとを備えて、前記補助作業用の電子制御ユニットが、車載の前記電子制御ユニットから独立して、前記検出器の検出に基づく前記報知器の作動制御を行うように構成されている。
【0008】
この手段によると、乗用水田作業機を補助作業あり仕様から補助作業なし仕様に仕様変更する場合には、乗用水田作業機から補助作業装置を取り外すことにより、補助作業装置用の検出器及び報知器をも乗用水田作業機から取り外すことができる。
【0009】
又、乗用水田作業機を補助作業なし仕様から補助作業あり仕様に仕様変更する場合には、乗用水田作業機に補助作業装置を取り付けることにより、補助作業装置用の検出器及び報知器をも乗用水田作業機に取り付けることができる。
【0010】
従って、補助作業なし仕様の乗用水田作業機にかかるコストの高騰を招くことなく、乗用水田作業機の補助作業あり仕様と補助作業なし仕様との仕様変更を容易にすることができる。
【0011】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
前記補助作業装置は、肥料又は薬剤を貯留する貯留部を備え、
前記貯留部は、貯留した肥料又は薬剤の残量が第1基準値を下回ったことを検出する第1残量検出器と、貯留した肥料又は薬剤の残量が前記第1基準値よりも小さい第2基準値を下回ったことを検出する第2残量検出器とを、前記検出器として備えている。
【0012】
この手段によると、貯留部に貯留する肥料又は薬剤の残量に関する警報を二段階で行うことにより、貯留部に対する肥料又は薬剤の補給のタイミングを計り易くなる。これにより、例えば、主作業装置に対する種子補給又は苗補給のタイミングに合わせて肥料又は薬剤の補給を行う、などの効率の良い肥料補給又は薬剤補給を計画的に行うことができる。
【0013】
従って、作業効率の向上を図ることができる。
【0014】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
前記走行車体は、エンジンからの動力で作動するブロワを備え、
前記補助作業装置は、肥料又は薬剤を圃場に供給する供給経路を備え、
前記供給経路は、その供給方向上手側部位に前記ブロワの排気口との接続が可能な接続口を備えている。
【0015】
この手段によると、ブロワからの送風を、供給経路を流動する肥料又は薬剤の搬送風とすることができ、これにより、肥料又は薬剤の圃場供給を滞りなく円滑に行うことができる。
【0016】
又、ブロワをバッテリからの電力で作動させる場合に生じる、バッテリの電力不足によるブロワの回転数の低下に起因した供給不良、又は、この供給不良を防止するためのバッテリの大型化、などを回避することができる。
【0017】
従って、バッテリの大型化を招くことなく、肥料又は薬剤の圃場供給を良好かつ確実に行うことができる。
【0018】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
前記ブロワは、エンジン周辺の昇温空気を吸引するように構成している。
【0019】
この手段によると、エンジン周辺の乾燥した昇温空気を肥料又は薬剤の搬送風として利用することができる。これにより、湿気などに起因した供給経路での肥料又は薬剤の詰まりなどを防止することができる。
【0020】
又、エンジン周辺での昇温空気の滞留を防止することができ、エンジンの冷却を促進させることができる。
【0021】
従って、肥料又は薬剤の圃場供給をより良好かつ確実に行える上に、エンジンの冷却効率を向上させることができる。
【0022】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
前記主作業装置が作動状態か否かを検出する作動検出器と、前記ブロワへの伝動を断続するブロワクラッチと、前記作動検出器の出力に基づいて前記ブロワクラッチの作動状態を切り替えるブロワ作動制御部とを備え、
前記ブロワ作動制御部は、前記作動検出器が前記主作業装置の作動状態を検出すると前記ブロワクラッチを接続状態に切り替え、又、前記作動検出器が前記主作業装置の停止状態を検出すると前記ブロワクラッチを遮断状態に切り替えるように構成している。
【0023】
この手段によると、主作業装置を作動させる作業時にはブロワが作動し、主作業装置を停止させる作業停止時にはブロワが停止する。
【0024】
これにより、作業の途中において一時的に主作業装置及び補助作業装置を停止状態に切り替えて行う種子又は苗補給あるいは肥料又は薬剤補給などの際に、ブロワが作動状態を維持して圃場に搬送風を供給し続けることに起因して、搬送風供給箇所の泥水が拡散して圃場の泥面が荒れる、あるいは、作業停止の直前に行った施肥又は施薬にムラが生じる、などの不都合が発生する虞を回避することができる。
【0025】
従って、作業精度を向上させることができる。
【0026】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、
前記主作業装置は、前記エンジンからの動力で作動するエンジン駆動式に構成し、
前記主作業装置への伝動を断続する作業クラッチを備え、
前記ブロワは、前記作業クラッチと前記主作業装置とにわたる伝動部から取り出した動力によって作動するように構成している。
【0027】
この手段によると、主作業装置が作動状態か否かを検出する作動検出器、ブロワへの伝動を断続するブロワクラッチ、作動検出器の出力に基づいてブロワクラッチの作動状態を切り替えるブロワ作動制御部、などを備えることなく、主作業装置が作動する作業時にはブロワを作動させることができ、主作業装置が停止する作業停止時にはブロワを停止させることができる。
【0028】
これにより、作業の途中において一時的に主作業装置及び補助作業装置を停止状態に切り替えて行う種子又は苗補給あるいは肥料又は薬剤補給などの際に、ブロワが作動状態を維持して圃場に搬送風を供給し続けることに起因して、搬送風供給箇所の泥水が拡散して圃場の泥面が荒れる、あるいは、作業停止の直前に行った施肥又は施薬にムラが生じる、などの不都合が発生する虞を回避することができる。
【0029】
従って、構成の簡素化を図りながら、作業精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】ミッドマウント施肥仕様に構成した乗用田植機の左側面図である。
図2】ミッドマウント施肥仕様に構成した乗用田植機の平面図である。
図3】予備苗載置装置図の第2状態を示す乗用田植機の要部の平面図である。
図4】乗用田植機における走行伝動系の概略構成を示す伝動系統図である。
図5】乗用田植機における作業伝動系の概略構成を示す伝動系統図である。
図6】施肥装置及びブロワの駆動構造を示す要部の縦断背面図である。
図7】施肥装置の残留肥料取り出し構造を示す要部の縦断正面図である。
図8】施肥装置の構成を示す要部の縦断左側面図である。
図9】乗用田植機における要部の制御構成を示すブロック図である。
図10】ブロワの駆動に関する別実施形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明を乗用水田作業機の一例である乗用田植機に適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0032】
図1〜3に示すように、本実施形態で例示する乗用田植機は、乗用型の4輪駆動形式に構成した走行車体1の後部に、単動型の油圧シリンダを採用した昇降シリンダ2の作動によって上下揺動する上下揺動式のリンク機構3を介して、苗植付装置4を主作業装置Aとして昇降可能に連結して構成している。そして、走行車体1の後部と苗植付装置4とにわたるミッドマウント式の施肥装置5を補助作業装置Bとして着脱可能に装備することにより、施肥なし仕様からミッドマウント施肥仕様に仕様変更している。又、走行車体1の前部における左右両側端箇所のそれぞれに、4枚のマット状苗を予備苗として苗箱6ごと載置する予備苗載置装置7を配備している。
【0033】
図1図4及び図5に示すように、走行車体1は、その前部側に空冷式のエンジン8及びトランスミッションケース(以下、T/Mケースと称する)9などを配備している。又、その後部側に後車軸ケース10及び搭乗運転部11などを備えている。そして、エンジン8からの動力を、主変速装置として備えた静油圧式無段変速装置(以下、HSTと称する)12、及び、副変速装置として備えたギア式変速装置13、などを介して前輪用差動装置14に伝達し、この前輪用差動装置14において左右の差動軸15から取り出した動力を前輪駆動用として左右の前輪16に伝達している。又、前輪用差動装置14において差動ケース17から取り出した動力を、後輪駆動用として、前後向きの第1伝動軸18、左右向きの第2伝動軸19、左右のサイドクラッチ20、及び、左右のギア式減速装置21、などを介して左右の後輪22に伝達している。一方、HST12による変速後の動力を、作業用として、ワンウェイクラッチ23、株間変速装置24、作業クラッチとして備えた電動式の植付クラッチ25、及び、植付クラッチ25と苗植付装置4とにわたる伝動部26、などを介して苗植付装置4に伝達している。
【0034】
T/Mケース9は、その左側部にHST12を装備している。又、その内部に、ギア式変速装置13、前輪用差動装置14、ワンウェイクラッチ23、株間変速装置24、及び、植付クラッチ25、などを備えている。後車軸ケース10は、第2伝動軸19、左右のサイドクラッチ20、及び、左右のギア式減速装置21、などを内蔵している。
【0035】
図1〜3に示すように、搭乗運転部11は、エンジン回転数などを表示する表示パネル27、前輪操舵用のステアリングホイール28、HST12の変速操作を可能にする主変速レバー29、ギア式変速装置13の変速操作を可能にする副変速レバー30、苗植付装置4の昇降操作と作動状態の切り替えなどを可能にする第1作業レバー31と第2作業レバー32、及び、前後方向に位置調節可能な運転座席33、などを配備している。そして、運転座席33の後下方箇所に、エンジン周辺の昇温空気を吸気ダクト34を介して吸引するブロワ35を配備している。これにより、エンジン冷却性能を向上させることができる。
【0036】
図示は省略するが、第1作業レバー31は、植付、下降、中立、上昇、自動、の各操作位置への揺動操作が可能な状態で各操作位置での位置保持が可能な揺動式の位置保持型に構成している。第2作業レバー32は、中立位置よりも上方の上方位置、及び、中立位置よりも下方の下方位置への揺動操作が可能な揺動式の中立復帰型に構成している。
【0037】
図5及び図6に示すように、ブロワ35は、前述した伝動部26から取り出したエンジン8からの動力で作動するエンジン駆動式に構成している。具体的には、伝動部26における前後向きの作業用伝動軸36に、ベベルギア式のブロワ動力分岐装置37及びベルト式のブロワ用伝動装置38などを介して連動連結している。これにより、消費電力の大きい電動式のブロワを採用した場合に生じるバッテリの大型化を回避することができる。又、植付クラッチ25の断続操作による苗植付装置4の作動状態と停止状態との切り替えに連動して、ブロワ35が作動状態と停止状態とに切り替わるように構成している。
【0038】
図1〜3に示すように、左右の予備苗載置装置7は、それぞれ、走行車体1の前部に立設した支持フレーム39に、単一の内側予備苗台40と3つの外側予備苗台41とを備えて構成している。各予備苗載置装置7において、内側予備苗台40は、支持フレーム39から車体内側に張り出す載置姿勢と、支持フレーム39に沿った上向きの格納姿勢とに姿勢切り替え可能に構成している。3つの外側予備苗台41は、それらが上下方向に所定間隔をあけて並ぶ第1状態と、それらが前後方向に一連に並ぶ第2状態とに切り替え可能に構成している。
【0039】
図1及び図2に示すように、苗植付装置4は、8条分のマット状苗を載置する苗載台42、苗載台42を一定ストロークで左右方向に往復移動させる横送り機構(図示せず)、苗載台42が左右のストローク端に達するごとに苗載台上の各マット状苗を苗載台42の下端に向けて所定ピッチで縦送りするベルト式の縦送り機構43、苗載台42に載置した各マット状苗の下端から所定量ずつの苗を切り取って圃場の泥土部に植え付ける8基のロータリ式の植付機構44、及び、作業走行時に苗植え付け予定箇所などの圃場泥面を整地する5つの整地フロート45、などを備えて最大8条の苗の植え付けを行う8条用に構成している。そして、植付クラッチ25の作動によって断続されるエンジン8からの動力によって作動するエンジン駆動式に構成している。
【0040】
図1〜3及び図6〜8に示すように、施肥装置5は、粒状の肥料を貯留する貯留部46、貯留部46から所定量の肥料を間欠的に繰り出す4つの繰出部47、対応する繰出部47が繰り出した肥料を案内する8本の施肥ホース48、及び、対応する施肥ホース48が案内した肥料を圃場に供給する8つの作溝器49、などを備えて最大8条の施肥を行う8条用に構成している。そして、前述した第1伝動軸18から取り出したエンジン8からの動力によって各繰出部47が作動するエンジン駆動式に構成している。具体的には、各繰出部47を、ベベルギア式の施肥動力分岐装置50、この施肥動力分岐装置50に対して着脱可能に連動連結した電動式の施肥クラッチ51、及び、ロッド連係式の施肥用伝動装置52、などを介して第1伝動軸18に連動連結している。
【0041】
貯留部46は、上端部に補給口を有するホッパ53、及び、後側を支点にした上下揺動によってホッパ53の補給口を開閉する上下揺動式の蓋体54、などを備えている。ホッパ53は、貯留した肥料を対応する繰出部47に案内する4つの漏斗部分53Aを、その下部において左右方向に連続して並べた状態で形成している。そして、それらの漏斗部分53Aの下端部を対応する繰出部47の上端部に接続している。蓋体54は、予備苗の入った複数の苗箱6を、それらの長手方向を左右向きにした横向き姿勢で左右方向に並べた状態で載置することが可能な上面54Aを有するように形成している。そして、その上面54Aの外縁部に、苗箱6の脱落を防止する状態で突出する複数の補強リブ54Bを形成している。これにより、蓋体54を、予備苗の入った複数の苗箱6を載置することが可能な強度を有する状態に補強しながら、機体の振動などに起因した苗箱6の蓋体54からの脱落を防止することができる。つまり、貯留部46の蓋体54を、予備苗台として好適に機能させることができ、これにより、機体に載置する予備苗数量の増加を、搭乗領域が狭くなるなどの不都合を招くことなく良好に行うことができる。
【0042】
各繰出部47は、最大2条分の肥料を繰り出すことが可能な2条用に構成して、走行車体1の後部に着脱可能にボルト連結した施肥フレーム55に取り付けている。又、それらの下端部分の背面に、肥料取り出し用として左右に並ぶ2つの肥料取出口47Aを備えている。そして、各肥料取出口47Aに対応する施肥ホース48を接続している。
【0043】
各作溝器49は、後方を開放する平面視U字状に形成して、対応する整地フロート45の所定位置に着脱可能に取り付けている。そして、作業走行時には、整地後の圃場泥面における対応する苗植え付け予定箇所から横方向に所定距離をあけた施肥予定箇所を作溝して、その溝内に肥料を供給するように構成している。
【0044】
つまり、この施肥装置5においては、各繰出部47の下端部分、各施肥ホース48、及び、各作溝器49により、各繰出部47が繰り出した肥料を圃場に供給する供給経路Cを形成している。そして、その供給経路Cの供給方向上手側部位となる各繰出部47における下端部分の正面に、ブロワ35の排気口35Aとの接続を可能にする接続口47Bを備えている。
【0045】
上記の構成から、この施肥装置5は、その施肥フレーム55を走行車体1の後部にボルト連結し、各作溝器49を対応する整地フロート45の所定位置に取り付け、施肥クラッチ51を施肥動力分岐装置50に連動連結することにより、走行車体1の後部と苗植付装置4とにわたって装備することができる。そして、ブロワ35の排気口35Aから各繰出部47の接続口47Bにわたる排気ダクト56を介してブロワ35の排気口35Aと各繰出部47の接続口47Bとを接続することにより、ブロワ35の排気口35Aから排出される乾燥した昇温空気を施肥用の搬送風として有効利用することができる。その結果、各繰出部47が繰り出した肥料の圃場への供給を円滑に行うことができ、各施肥ホース内及び各作溝器内での肥料詰まりの発生を効果的に抑制することができる。
【0046】
図9に示すように、走行車体1は、その運転座席33の下方箇所に、CPUやEEPROMなどを備えるマイクロコンピュータを利用して構成した電子制御ユニット(以下、ECUと称する)57を搭載している。ECU57は、苗植付装置4の昇降を制御する昇降制御部57A、及び、苗植付装置4の作動を制御する作動制御部57B、などを備えている。そして、走行車体1に搭載したバッテリ(図示せず)からの電力によって作動するように構成している。
【0047】
昇降制御部57Aは、第1作業レバー31の操作位置を検出する第1位置検出器58の出力、第2作業レバー32の操作位置を検出する第2位置検出器59の出力、左右中央の整地フロート(以下、センタフロートと称する)45の上下揺動角度を苗植付装置4の対地高さとして検出する第1角度検出器60の出力、及び、リンク機構3の上下揺動角度を苗植付装置4の対車体高さとして検出する第2角度検出器61の出力、などに基づいて、昇降シリンダ2の作動状態を切り替える電磁制御弁からなる昇降弁62の作動を制御することにより、苗植付装置4の昇降を制御するように構成している。
【0048】
具体的には、第1位置検出器58の出力に基づいて第1作業レバー31の上昇位置への操作を検知した場合は、その操作を検知している間、昇降弁62を昇降シリンダ2にオイルを供給する供給状態に切り替えて昇降シリンダ2を収縮作動させることによって苗植付装置4を上昇させる上昇制御を行う。第1位置検出器58の出力に基づいて第1作業レバー31の下降位置への操作を検知した場合は、その操作を検知している間、昇降弁62を昇降シリンダ2からオイルを排出する排出状態に切り替えて昇降シリンダ2を伸長作動させることによって苗植付装置4を下降させる下降制御を行う。第1位置検出器58の出力に基づいて第1作業レバー31の中立位置への操作を検知した場合は、昇降弁62を昇降シリンダ2に対するオイルの給排を停止する給排停止状態に切り替えて昇降シリンダ2の作動を停止させることによって苗植付装置4をそのときの高さ位置にて停止させる昇降停止制御を行う。
【0049】
つまり、第1位置検出器58の出力に基づく昇降制御部57Aの制御作動によって苗植付装置4を任意の高さ位置に昇降移動させることができるように構成している。
【0050】
又、昇降制御部57Aは、第1位置検出器58の出力に基づいて第1作業レバー31の自動位置への操作を検知した場合は、その操作を検知している間、第2位置検出器59の出力などに基づいて昇降弁62の作動を制御する。
【0051】
例えば、第2位置検出器59の出力に基づいて第2作業レバー32の下方位置への操作を検知した場合は、センタフロート45が接地して第1角度検出器60の出力が予め設定したセンタフロート45の制御目標角度に一致する(第1角度検出器60の出力が制御目標角度の不感帯幅内に収まる)状態が得られるまでの間、昇降弁62を排出状態に切り替えて昇降シリンダ2を伸長作動させることによって苗植付装置4を下降させ、この下降で第1角度検出器60の出力が制御目標角度に一致するのに伴って、昇降弁62を給排停止状態に切り替えて昇降シリンダ2の伸長作動を停止させることによって、苗植付装置4を制御目標角度に対応する所定の接地高さ位置(作業高さ位置)にて自動停止させる自動下降制御を行う。その後、第1角度検出器60の出力が制御目標角度に一致する状態が維持されるように昇降弁62の作動を制御して昇降シリンダ2の作動状態を切り替えることによって、圃場耕盤の起伏などに起因した走行車体1のピッチングにかかわらず苗植付装置4が所定の接地高さ位置を維持する状態に苗植付装置4を自動昇降させる自動昇降制御を行う。そして、第2位置検出器59の出力に基づいて第2作業レバー32の上方位置への操作を検知した場合は、第2角度検出器61の出力が予め設定したリンク機構3の制御上限角度に一致する(第2角度検出器61の出力が制御上限角度の不感帯幅内に収まる)状態が得られるまでの間、昇降弁62を供給状態に切り替えて昇降シリンダ2を収縮作動させることで苗植付装置4を上昇させ、この上昇で第2角度検出器61の出力が制御上限角度に一致するのに伴って、昇降弁62を給排停止状態に切り替えて昇降シリンダ2の収縮作動を停止させることによって、苗植付装置4を制御上限角度に対応する所定の上限位置にて自動停止させる自動上昇制御を行う。
【0052】
つまり、第2位置検出器59の出力に基づく昇降制御部57Aの制御作動によって、苗植付装置4を所定の接地高さ位置又は所定の上限位置まで自動的に昇降移動させて、それらの高さ位置に維持することができるように構成している。
【0053】
尚、センタフロート45の制御目標角度は、搭乗運転部11に備えたフロート角度設定器63を操作することによって任意の角度に設定変更することができる。
【0054】
作動制御部57Bは、第1位置検出器58の出力、第2位置検出器59の出力、及び、第1角度検出器60の出力、などに基づいて、前述した電動式の植付クラッチ25の作動を制御することによって苗植付装置4の作動を制御するように構成している。
【0055】
具体的には、第1位置検出器58の出力に基づいて第1作業レバー31の植付位置への操作を検知した場合は、植付クラッチ25を切り状態から入り状態に切り替えて苗植付装置4を停止状態から作動状態に切り替える植え付け開始制御を行う。その後、第1位置検出器58の出力に基づいて第1作業レバー31の植付位置から下降位置への操作を検知した場合は、植付クラッチ25を入り状態から切り状態に切り替えて苗植付装置4を作動状態から停止状態に切り替える植え付け停止制御を行う。
【0056】
又、作動制御部57Bは、第1位置検出器58の出力に基づいて第1作業レバー31の自動位置への操作を検知した場合は、第2位置検出器59の出力などに基づいて前述した植え付け開始制御及び植え付け停止制御を行う。
【0057】
例えば、フロート角度設定器63及び第1角度検出器60の出力に基づいて苗植付装置4の所定の接地高さ位置への到達を検知している状態(自動昇降制御の実行状態)において、第2位置検出器59の出力に基づいて第2作業レバー32の下方位置への操作を検知した場合は、その検知が苗植付装置4の所定の接地高さ位置への到達を検知してから奇数回目の検知であれば前述した植え付け開始制御を行い、偶数回目の検知であれば前述した植え付け停止制御を行う。
【0058】
そして、前述したように、植付クラッチ25の断続操作による苗植付装置4の作動状態と停止状態との切り替えに連動して、ブロワ35が作動状態と停止状態とに切り替わるように構成していることにより、植え付け開始制御による苗植付装置4の停止状態から作動状態への切り替えに伴って、ブロワ35が停止状態から作動状態に切り替わり、又、植え付け停止制御による苗植付装置4の作動状態から停止状態への切り替えに伴って、ブロワ35が作動状態から停止状態に切り替わる。
【0059】
図1図6及び図9に示すように、施肥装置5は、その貯留部46の前面に、CPUやEEPROMなどを備えるマイクロコンピュータを利用して構成した施肥装置用の電子制御ユニット(以下、施肥ECUと称する)64、及び、施肥装置5での異常を報知する各種の報知器Dを備えた報知ユニット65、を配備している。又、その貯留部46のホッパ53における各漏斗部分53Aの内部に、施肥装置5の異常を検出する検出器Eとして、貯留した肥料の残量が第1基準値を下回ったことを検出する第1残量検出器66、及び、貯留した肥料の残量が第1基準値よりも小さい第2基準値を下回ったことを検出する第2残量検出器67、を備えている。更に、各作溝器49の内部に、施肥装置5の異常を検出する検出器Eとして、対応する作溝器内での肥料詰まりの発生を検出する詰まり検出器68を備えている。
【0060】
施肥ECU64は、施肥装置5の作動を制御する施肥作動制御部64A、及び、報知ユニット65の作動を制御する報知作動制御部64B、などを備えている。そして、CAN通信などの車内通信による走行車体1のECU57との相互通信が可能となるように、ECU57にカプラ69などを介して着脱可能に接続している。一方、報知ユニット65は、施肥装置5での異常を報知する報知器Dとして、音色の異なる残量用警報ブザー70と詰まり用警報ブザー71、及び、詰まりが発生した作溝器49の位置を報知する液晶パネル72、などを備えている。
【0061】
施肥作動制御部64Aは、第1位置検出器58の出力、第2位置検出器59の出力、及び、第1角度検出器60の出力、などに基づいて、前述した電動式の施肥クラッチ51の作動を制御することによって施肥装置5の作動を制御するように構成している。
【0062】
具体的には、第1位置検出器58の出力に基づいて第1作業レバー31の植付位置への操作を検知した場合は、施肥クラッチ51を切り状態から入り状態に切り替えて施肥装置5を停止状態から作動状態に切り替える施肥開始制御を行う。その後、第1位置検出器58の出力に基づいて第1作業レバー31の植付位置から下降位置への操作を検知した場合は、施肥クラッチ51を入り状態から切り状態に切り替えて施肥装置5を作動状態から停止状態に切り替える施肥停止制御を行う。
【0063】
そして、施肥作動制御部64Aは、第1位置検出器58の出力に基づいて第1作業レバー31の自動位置への操作を検知した場合は、第2位置検出器59の出力などに基づいて前述した施肥開始制御及び施肥停止制御を行う。
【0064】
例えば、フロート角度設定器63及び第1角度検出器60の出力に基づいて苗植付装置4の所定の接地高さ位置への到達を検知している状態(自動昇降制御の実行状態)において、第2位置検出器59の出力に基づいて第2作業レバー32の下方位置への操作を検知した場合は、その検知が苗植付装置4の所定の接地高さ位置への到達を検知してから奇数回目の検知であれば前述した施肥開始制御を行い、偶数回目の検知であれば前述した施肥停止制御を行う。
【0065】
報知作動制御部64Bは、各第1残量検出器66の出力、各第2残量検出器67の出力、及び、各詰まり検出器68の出力、に基づいて施肥装置5の異常を検知した場合に、報知ユニット65を報知作動させることによって施肥装置5の異常を報知するように構成している。
【0066】
具体的には、いずれかの第1残量検出器66の出力に基づいて、貯留部46での肥料残量が第1基準値を下回ったことを検知した場合には、残量用警報ブザー70を間欠作動させることによって貯留部46での肥料残量が第1基準値を下回ったことを報知する第1補給警報発令制御を行う。これにより、貯留部46への肥料の補給を促すことができる。その後、各第1残量検出器66の出力に基づいて、貯留部46での肥料残量が第1基準値を下回っていないことを検知した場合には、残量用警報ブザー70の間欠作動を停止させる第1補給警報解除制御を行う。逆に、いずれかの第2残量検出器67の出力に基づいて、貯留部46での肥料残量が第2基準値を下回ったことを検知した場合には、残量用警報ブザー70を連続作動させることによって貯留部46での肥料残量が第2基準値を下回ったことを報知する第2補給警報発令制御を行う。これにより、貯留部46への早急の肥料補給を促すことができる。その後、各第2残量検出器67の出力に基づいて、貯留部46での肥料残量が第2基準値を下回っていないことを検知した場合には、残量用警報ブザー70を連続作動から間欠作動に切り替える第2補給警報解除制御を行い、更に、各第1残量検出器66の出力に基づいて、貯留部46での肥料残量が第1基準値を下回っていないことを検知した場合には、前述した第1補給警報解除制御を行う。
【0067】
一方、各詰まり検出器68の出力に基づいて、いずれかの作溝器内での肥料詰まりの発生を検知した場合には、詰まり用警報ブザー71を作動させることによっていずれかの作溝器内において肥料詰まりが発生したことを報知するとともに、肥料詰まりが生じた作溝器49の位置を液晶パネル72により報知する詰まり警報発令制御を行う。これにより、詰まりが発生した作溝器49からの詰まり肥料の除去を促すことができる。その後、各詰まり検出器68の出力に基づいて、各作溝器内での肥料詰まりの発生を検知しなくなった場合には、詰まり用警報ブザー71の作動を停止させるとともに液晶パネル72による報知を終了する詰まり警報解除制御を行う。
【0068】
つまり、この施肥装置5は、走行車体1の後部と苗植付装置4とにわたって装備した後、その施肥ECU64を走行車体1のECU57にカプラ69などを介して通信可能に接続することにより、施肥ECU64の施肥作動制御部64Aが、走行車体1に備えた第1位置検出器58の出力と第2位置検出器59の出力、及び、苗植付装置4に備えた第1角度検出器60の出力、などに基づいて施肥クラッチ51の作動を制御する施肥開始制御及び施肥停止制御を行えるように構成している。
【0069】
又、施肥ECU64の報知作動制御部64Bが、ECU57との接続に関係なく、貯留部46での肥料残量に関する第1補給警報発令制御、第1補給警報解除制御、第2補給警報発令制御、及び、第2補給警報解除制御、並びに、各作溝器49での肥料詰まりに関する詰まり警報発令制御及び詰まり警報解除制御を、独立して行えるように構成している。
【0070】
以上の構成から、このミッドマウント施肥仕様の乗用田植機は、走行車体1のECU57と施肥装置5の施肥ECU64とのカプラ69を介した接続を解除し、ブロワ35の排気口35Aから各繰出部47の接続口47Bにわたる排気ダクト56を取り外し、施肥動力分岐装置50から施肥クラッチ51を取り外し、対応する整地フロート45の所定位置から各作溝器49を取り外し、走行車体1の後部と施肥フレーム55とのボルト連結を解除することにより、施肥装置5を簡単に取り外すことができ、施肥なし仕様に簡単に仕様変更することができる。
【0071】
つまり、この乗用田植機においては、乗用田植機に対して着脱可能に構成した施肥装置5に、施肥装置5の異常を検出する検出器Eとして、4つの第1残量検出器66、4つの第2残量検出器67、及び、8つの詰まり検出器68を備えるとともに、施肥装置5での異常を報知する報知器Dとして、残量用警報ブザー70、詰まり用警報ブザー71、及び、液晶パネル72を備え、かつ、それらの作動を制御する施肥ECU64を備えることにより、乗用田植機に施肥用の報知器Dなどを標準装備することによるコストの高騰を招くことなく、又、乗用田植機に対して施肥用の報知器Dなどを個々に着脱する手間を要することなく、乗用田植機を施肥なし仕様とミッドマウント施肥仕様とに仕様変更することができる。
【0072】
又、走行車体1にエンジン冷却用でエンジン駆動式のブロワ35を標準装備することにより、乗用田植機をミッドマウント施肥仕様に仕様変更する場合には、前述したように、エンジン冷却用のブロワ35を施肥用に兼用することができる。これにより、乗用田植機を施肥なし仕様とミッドマウント施肥仕様とに仕様変更する場合において、施肥専用のブロワを着脱する手間を省くことができ、更に、施肥専用ブロワの有無に応じた走行車体1に搭載するエンジン8の型式変更を不要にすることができる。
【0073】
そして、第1作業レバー31又は第2作業レバー32の操作に基づく苗植付装置4及び施肥装置5の作動状態への切り替えが行われた場合には、ブロワ35も作動状態に切り替わることから、ブロワ35からの冷却排風を施肥用の搬送風として有効利用することができ、圃場への肥料供給を円滑に行うことができる。又、第1作業レバー31又は第2作業レバー32の操作に基づく苗植付装置4及び施肥装置5の停止状態への切り替えが行われた場合には、ブロワ35も停止状態に切り替わることから、作業の途中に一時的に苗植付装置4及び施肥装置5を停止状態に切り替えて行う苗補給作業又は肥料補給作業などの際に、ブロワ35が作動状態を維持して圃場に搬送風を供給し続けることに起因して、各作溝器49から圃場の泥水が吹き上がる、あるいは、施肥ムラが発生する、などの不都合が発生する虞を回避することができる。
【0074】
図1〜3に示すように、施肥装置5は、その貯留部46における蓋体54の上面54Aに、予備苗を取り出した後の空の苗箱6を起立姿勢で貯め置くことを可能にする折り畳み式の苗箱入れ73を載置している。
【0075】
これにより、例えば、左右の予備苗載置装置7を、3つの外側予備苗台41が前後方向に連接して並ぶ第2状態に切り替えて、それらの外側予備苗台41に、複数の苗箱6を、車体後部の苗補給位置に向けて引き寄せ移動させることが可能な状態で載置した場合には、予備苗を苗植付装置4の苗載台42に補給した後の空の苗箱6を、貯留部上の苗箱入れ73に入れることにより、空の苗箱6を第2状態の予備苗載置装置7の前端側まで持ち運ぶ手間を要することなく、苗補給作業の邪魔にならない位置に貯め置くことができる。その結果、苗植付装置4の苗載台42に対する苗補給作業を効率良く行うことができる。
【0076】
又、苗箱入れ73を使用しない場合には、苗箱入れ73を折り畳んで小さくすることができ、これにより、苗箱入れ73の収納に要する領域を小さくすることができるとともに、苗補給作業などにおいて苗箱入れ73を邪魔になり難くすることができる。
【0077】
図1図7及び図8に示すように、施肥装置5は、各繰出部47における上部側の正面に、貯留部46に残った肥料の取り出しを可能にする残肥取出口47Cを備えている。又、各繰出部47に、残肥取出口47Cを閉塞状態と開放状態とに切り替える揺動式の開閉体74を備えている。そして、左側の2つの繰出部47に備えた残肥取出口47Cに接続する左側の残肥案内ホース75と、右側の2つの繰出部47に備えた残肥取出口47Cに接続する右側の残肥案内ホース75とを備えている。
【0078】
左側の残肥案内ホース75は、対応する2つの繰出部47の残肥取出口47Cから流出する肥料を合流させて走行車体1の左外方に案内するY字状に形成している。又、右側の残肥案内ホース75は、対応する2つの繰出部47の残肥取出口47Cから流出する肥料を合流させて走行車体1の右外方に案内するY字状に形成している。
【0079】
左右の各残肥案内ホース75は、それらの長さ調節を可能にする蛇腹状に構成している。又、それらの案内終端に位置する排出口を開閉する開閉部材76を備えている。各開閉部材76は、走行車体1の左右両端部に位置する補助ステップ77の後端部に備えた保持具78との係合による所定位置での位置保持を可能にする係合部としての係合孔76Aを備えている。
【0080】
上記の構成から、残留肥料の取り出しを行わない場合には、各残肥案内ホース75の排出口を左右の開閉部材76により閉塞し、それらの開閉部材76の係合孔76Aを対応する保持具78に係合させることにより、排出口を閉塞した左右の各残肥案内ホース75の案内終端部を、前輪16と後輪22との離間距離の中間に位置する補助ステップ77の後端部近傍箇所(前述した所定位置)に位置保持することができる。これにより、前輪16又は後輪22が跳ね上げた泥水が左右の各残肥案内ホース75の案内終端部に付着する、又は、各残肥案内ホース75の排出口から浸入する、などの不都合の発生を抑制することができる。
【0081】
一方、残留肥料の取り出しを行う場合には、使用する残肥案内ホース75の排出口を閉塞している開閉部材76の係合孔76Aと保持具78との係合を解除することにより、使用する残肥案内ホース75の排出口を、肥料袋や回収容器などの残留肥料回収箇所に移動させることができる。そして、残留肥料の取り出しに使用する左側2つの繰出部47又は右側2つの繰出部47に備えた開閉体74を開き操作し、使用する残肥案内ホース75の排出口を開閉部材76により開放することにより、左側2つの繰出部47又は右側2つの繰出部47の各残肥取出口47Cから4条分の残留肥料を一挙に取り出して残留肥料回収箇所に回収することができる。これにより、貯留部46に残った肥料の取り出し回収を効率良く行うことができる。
【0082】
〔別実施形態〕
【0083】
〔1〕乗用水田作業機は、播種用の主作業装置Aとして直播装置を備えた乗用直播機、などであってもよい。
【0084】
〔2〕乗用水田作業機は、補助作業装置Bとして、粉状又は液状の肥料を圃場に供給する施肥装置を着脱可能に備えるものであってもよい。又、粉状や粒状又は液状の薬剤を圃場に供給する施薬装置を着脱可能に備えるものであってもよい。更に、施肥装置と施薬装置との双方を着脱可能に備えるものであってもよい。
【0085】
〔3〕主作業装置A及び補助作業装置Bの作業条数は種々の変更が可能であり、例えば、主作業装置A及び補助作業装置Bを6条用又は10条用などに構成してもよい。
【0086】
〔4〕補助作業装置Bは、走行車体1の後部と主作業装置Aとにわたって着脱可能に構成したミッドマウント式の施薬装置、あるいは、主作業装置Aに着脱可能に構成したリアマウント式の施肥装置又は施薬装置、などであってもよい。
【0087】
〔5〕補助作業装置Bは、施肥又は施薬専用のブロワを備えたものであってもよい。
【0088】
〔6〕補助作業装置Bは、施肥ECU64に代えて、補助作業装置Bの異常を検出する検出器Eの異常検出に基づいて報知器Dを報知作動させるリレー回路などを備えるように構成したものであってもよい。
【0089】
〔7〕補助作業装置Bは、複数の貯留部46を備えるように構成したものであってもよい。
【0090】
〔8〕補助作業装置Bの貯留部46は、その内部に複数の貯留部分を分割形成したものであってもよい。
【0091】
〔9〕補助作業装置Bに備える検出器Eは、貯留部46に貯留した薬剤の残量が第1基準値を下回ったことを検出する薬剤用の第1残量検出器、貯留部46に貯留した肥料の残量が第1基準値よりも小さい第2基準値を下回ったことを検出する薬剤用の第2残量検出器、貯留部46に貯留した肥料又は薬剤の残量が基準値を下回ったことを検出する残量検出器、施肥ホース内での肥料詰まりの発生を検出する詰まり検出器、又は、肥料又は薬剤の流下を検出する流下検出器、などであってもよい。
【0092】
〔10〕補助作業装置Bに備える報知器Dは、補助作業装置での異常の発生及び異常発生個所を音声で報知する音声発生器、補助作業装置での異常発生個所を点灯により報知する複数の警報ランプ、又は、補助作業装置での異常の発生及び異常発生個所を点灯により報知する複数の警報ランプ、などであってもよい。
【0093】
〔11〕走行車体1は、エンジン8とエンジン周辺の昇温空気を吸引するブロワ35とを運転座席33の下方に並べて配備するように構成したものであってもよい。
【0094】
〔12〕走行車体1は、補助作業装置B(施肥装置5)への伝動を断続する補助クラッチ(施肥クラッチ51)を標準装備したものであってもよい。
この構成においては、補助作業装置Bを着脱可能に構成する上において、例えば、補助作業装置Bから補助クラッチにわたる補助作業用伝動装置(施肥用伝動装置52)を補助クラッチに対して着脱可能に構成することが考えられる。
【0095】
〔13〕図10に示すように、走行車体1は、エンジン8からブロワ35への伝動を断続する電動式のブロワクラッチ80を備えるように構成したものであってもよい。
そして、この構成においては、例えば、同図に示すように、走行車体1に、主作業装置Aが作動状態か否かを検出する作動検出器Fを備え、かつ、走行車体1に備えたECU57に、作動検出器81の出力に基づいてブロワクラッチ80の作動状態を切り替えるブロワ作動制御部57Cを実装して、ブロワ作動制御部57Cが、作動検出器81が主作業装置Aの作動状態を検出するとブロワクラッチ80を接続状態に切り替え、又、作動検出器81が主作業装置Aの停止状態を検出するとブロワクラッチ80を遮断状態に切り替えるように構成することが考えられる。
尚、この構成における作動検出器Fには、例えば、第1作業レバー31の操作位置を検出する第1位置検出器58と第2作業レバー32の操作位置を検出する第2位置検出器59、又は、主作業装置Aへの伝動を断続する作業クラッチ25の作動状態を検出するクラッチ作動検出器、あるいは、主作業装置Aに対する動力取り出し用としてT/Mケース9に備えた作業用伝動軸36の回転を検出する回転検出器、などを採用することができる。
又、図示は省略するが、ブロワクラッチ80を備える構成においては、走行車体1に、走行車体1が走行状態か否かを検出する走行検出器を備え、かつ、走行車体1に備えたECU57に、走行検出器の出力に基づいてブロワクラッチ80の作動状態を切り替えるブロワ作動制御部を実装して、ブロワ作動制御部が、走行検出器が走行車体1の走行状態を検出するとブロワクラッチ80を接続状態に切り替え、又、走行検出器が走行車体1の停止状態を検出するとブロワクラッチ80を遮断状態に切り替えるように構成することが考えられる。
尚、この構成における走行検出器には、例えば、主変速レバー29の操作位置を検出する位置検出器、又は、HST12の出力回転数を検出する回転検出器、などを採用することができる。
【0096】
〔14〕走行車体1は、エンジン周辺の昇温空気を吸引するブロワ35を備えていないものであってもよい。
【0097】
〔15〕走行車体1に搭載したECU57が施肥ECU64としての機能を有するように構成して、施肥装置5に施肥ECU64を装備しないように構成してもよい。
【0098】
〔16〕ブロワ35は、エンジン8の稼働中はエンジン8からの動力によって作動状態を維持するように構成したものであってもよい。
【0099】
〔17〕ブロワ35は、走行車体1に搭載したバッテリからの電力で作動するように構成したものであってもよい。又、エンジン8からの動力で発電する発電機からの電力で作動するように構成したものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明は、主作業装置として苗植付装置を備えた乗用田植機、又は、主作業装置として直播装置を備えた乗用直播機、などの乗用水田作業機に適用することができる。
【符号の説明】
【0101】
1 走行車体
3 リンク機構
8 エンジン
25 作業クラッチ
26 伝動部
35 ブロワ
35A 排気口
46 貯留部
47B 接続口
57 電子制御ユニット
57C ブロワ作動制御部
64 補助作業用の電子制御ユニット
66 第1残量検出器
67 第2残量検出器
80 ブロワクラッチ
A 主作業装置
B 補助作業装置
C 供給経路
D 報知器
E 検出器
F 作動検出器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10