特許第6289185号(P6289185)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6289185
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】電動アシスト自転車
(51)【国際特許分類】
   B62M 6/90 20100101AFI20180226BHJP
   B62M 6/45 20100101ALI20180226BHJP
   B62J 99/00 20090101ALI20180226BHJP
【FI】
   B62M6/90
   B62M6/45
   B62J99/00 B
【請求項の数】12
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-52026(P2014-52026)
(22)【出願日】2014年3月14日
(65)【公開番号】特開2015-174539(P2015-174539A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2016年11月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有宗 伸泰
(72)【発明者】
【氏名】根来 正憲
(72)【発明者】
【氏名】武田 知之
(72)【発明者】
【氏名】金原 悠貴
【審査官】 山尾 宗弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−122180(JP,A)
【文献】 特開2006−130991(JP,A)
【文献】 特開2013−112143(JP,A)
【文献】 特開平11−129960(JP,A)
【文献】 特開平08−110344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 6/90
B62J 99/00
B62M 6/45
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者がペダルに加える踏力を補助するための電動モータと前記電動モータを制御するモータコントローラとを含む駆動システムと、
前記電動モータに供給するための電力を蓄えるバッテリと、前記バッテリを制御するコントローラと、インジケータとを有し、車体に対して脱着可能なバッテリユニットと、
少なくとも前記駆動システムの異常を検知する診断部と、
前記駆動システムから前記バッテリユニットに前記駆動システムの異常を示す情報を伝達する情報伝達経路と、を備え、
前記バッテリユニットのインジケータは、前記バッテリの残量と、前記駆動システムの異常とを表示し、
前記バッテリユニットは、前記バッテリユニットが車体に搭載されたときに、予め定められた信号をモータコントローラから受信しているか否かに基づいて前記モータコントローラが正常に起動したか否かを判断し、その結果に基づいて前記インジケータを駆動する
ことを特徴とする電動アシスト自転車。
【請求項2】
請求項1に記載の電動アシスト自転車において、
前記バッテリユニットのインジケータは、前記バッテリの残量と、前記駆動システムの異常とを切り換えて表示する、
ことを特徴とする電動アシスト自転車。
【請求項3】
請求項2に記載の電動アシスト自転車において、
前記バッテリユニットのインジケータは、前記駆動システムの異常を、前記バッテリの残量に優先して表示する、
ことを特徴とする電動アシスト自転車。
【請求項4】
請求項2に記載の電動アシスト自転車において、
前記診断部は前記バッテリの異常を検知する機能をさらに有し、
前記インジケータは、前記駆動システムの異常と前記バッテリの異常とを互いに異なる態様で表示する、
ことを特徴とする電動アシスト自転車。
【請求項5】
請求項2に記載の電動アシスト自転車において、
前記インジケータは少なくとも一つの発光部を含み、
前記インジケータは、前記バッテリの残量を表示する際と、前記駆動システムの異常を表示する際とでは、互いに異なる態様で前記少なくとも1つの発光部を駆動する、
ことを特徴とする電動アシスト自転車。
【請求項6】
利用者がペダルに加える踏力を補助するための電動モータと前記電動モータを制御するモータコントローラとを含む駆動システムと、
前記電動モータに供給するための電力を蓄えるバッテリと、前記バッテリを制御するコントローラと、インジケータとを有し、車体に対して脱着可能なバッテリユニットと、
前記駆動システムと前記バッテリの異常を検知する診断部と、
前記駆動システムから前記バッテリユニットに前記駆動システムの異常を示す情報を伝達する情報伝達経路と、を備え、
前記バッテリユニットのインジケータは、前記バッテリの残量と、前記駆動システムと前記バッテリの異常とを表示し、
前記バッテリユニットは、前記バッテリユニットが車体に搭載されたときに、予め定められた信号をモータコントローラから受信しているか否かに基づいて前記モータコントローラが正常に起動したか否かを判断し、その結果に基づいて前記インジケータを駆動する
ことを特徴とする電動アシスト自転車。
【請求項7】
利用者がペダルに加える踏力を補助するための電動モータと前記電動モータを制御するモータコントローラとを含む駆動システムと、
前記電動モータに供給するための電力を蓄えるバッテリと、前記バッテリの残量を表すことができ且つ利用者が座るサドルより前方に配置されるインジケータと、前記バッテリと前記インジケータとを制御するコントローラとを有し、車体に対して脱着可能なバッテリユニットと、を有し
前記バッテリユニットのコントローラは、前記バッテリユニットが車体から取り外されているときには前記インジケータの表示に関して所定の制限を行い、前記バッテリユニットが車体に搭載されているときには前記所定の制限を緩和する、
ことを特徴とする電動アシスト自転車。
【請求項8】
請求項7に記載の電動アシスト自転車において、
前記インジケータの表示に関する所定の制限は前記インジケータで情報を表している時間についての制限である、
ことを特徴とする電動アシスト自転車。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の電動アシスト自転車において、
前記バッテリユニットのコントローラは、利用者の操作を受け付けるための操作部を有し、前記バッテリが車体から取り外されている状態で前記操作部が操作を受けたときに前記所定の制限を解除する、
ことを特徴とする電動アシスト自転車。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の電動アシスト自転車において、
前記バッテリユニットのコントローラはユーザによる車両の利用に関する情報である車両利用情報を前記インジケータに表示する、
ことを特徴とする電動アシスト自転車。
【請求項11】
請求項10に記載の電動アシスト自転車において、
前記バッテリユニットは、前記車両利用情報が格納され且つ前記バッテリユニットが車体から取り外された後においても前記車両利用情報を保持するメモリを有する、
ことを特徴とする電動アシスト自転車。
【請求項12】
請求項11に記載の電動アシスト自転車において、
前記バッテリのコントローラは、前記バッテリユニットが車体から取り外された後において前記メモリで保持されている車両利用情報と、前記バッテリが再び車体に搭載されたときに新たに得られる車両利用情報とに基づいて新たな車両利用情報を算出する、
ことを特徴とする電動アシスト自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインジケータを有するバッテリユニットが脱着可能な電動アシスト自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、利用者がペダルに加える踏力を補助する電動モータと電動モータに電力を供給するバッテリとを備えている電動アシスト自転車が利用されている。下記特許文献1には利用者に貸し出すための電動アシスト自転車が開示されている。電動アシスト自転車は街中に設置されている駐車ステーションで保管されており、利用者は自身が所有しているバッテリを駐車ステーションにある自転車に搭載することにより、その自転車を借りることができる。
【0003】
下記特許文献2には、ハンドルに対して脱着可能なバッテリを備える電動アシスト自転車が開示されている。バッテリのインジケータにはバッテリの残量や走行速度などの情報が表示される。この自転車によれば車体にインジケータを設ける必要がなくなるので、自転車の製造コストを低減できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−32695号公報
【特許文献2】特開2006−130991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のレンタル方式の電動アシスト自転車のバッテリとしては、利用者が自転車を借りるまでの間に持ち運ぶことを考慮すると小型であることが要求される。特許文献2に開示されるインジケータを備えるバッテリを小型化すると、そのインジケータも簡易なのもにせざるを得ない。簡易なインジケータの場合、バッテリ残量の表示も分解能が低いものとなる。例えば、バッテリ残量を3段階や4段階でしか表示できなくなる。このような表示では、車両の駆動システムの異常に起因する補助力の低下を、バッテリ残量の不足に起因する補助力の低下として誤って認識されてしまう可能性がある。例えば、バッテリ残量が少ないことを表す表示がなされているときに、駆動システムの異常が発生しそれが原因で補助力が低下している場合、乗員はバッテリ残量が無くなったことが原因で補助力が低下したと誤認する可能性がある。
【0006】
また、バッテリを電動アシスト自転車から取り外している状態でバッテリの残量がインジケータに表示されることが望ましい。しかしながら、インジケータでのバッテリの残量を表示により、バッテリの電力が消費されてしまう。
【0007】
本発明の第1の目的は、バッテリユニットに設けられているインジケータを利用しながら、利用者が補助力の低下の原因を適切に認識できる電動アシスト自転車を提供することにある。
【0008】
本発明の第2の目的は、バッテリユニットの車体への搭載時とバッテリユニットの非搭載時のいずれにおいても、バッテリの残量など利用者が求める情報をバッテリユニットのインジケータを通して提示でき、且つバッテリユニットの車体への非搭載時にインジケータにおける電力消費を抑えることができる電動アシスト自転車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電動アシスト自転車は、利用者がペダルに加える踏力を補助するための電動モータと前記電動モータを制御するモータコントローラとを含む駆動システムを備えている。また、前記電動アシスト自転車は、前記電動モータに供給するための電力を蓄えるバッテリと、前記バッテリを制御するコントローラと、インジケータとを有し、車体に対して脱着可能なバッテリユニットを有している。さらに、前記電動アシスト自転車は、少なくとも前記駆動システムの異常を検知する診断部と、前記駆動システムから前記バッテリユニットに前記駆動システムの異常を示す情報を伝達する情報伝達経路と、を備えている。前記バッテリユニットのインジケータは、前記バッテリの残量と、前記駆動システムの異常とを表示する。
【0010】
本発明によれば、駆動システムの異常が原因で電動モータの補助力が低下している場合に、バッテリの残量が無くなったことが原因で補助力が低下したと乗員が誤認することを抑えることができる。
【0011】
本発明の一形態では、前記バッテリユニットのインジケータは、前記バッテリの残量と、前記駆動システムの異常とを切り換えて表示してもよい。この形態によれば、バッテリユニットの小型化に起因して簡素化されたインジケータを利用して、補助力低下の原因(バッテリ残量の減少と異常の発生)を乗員に示すことができる。
【0012】
本発明の一形態では、前記バッテリユニットのインジケータは、前記駆動システムの異常を、前記バッテリの残量に優先して表示してもよい。これによれば、異常が生じた場合に、乗員は早期に異常を認識できる。
【0013】
本発明の一形態では、前記診断部は前記バッテリの異常を検知する機能を有し、前記インジケータは、前記駆動システムの異常と前記バッテリの異常とを互いに異なる態様で表示してもよい。これによれば、バッテリユニットに設けられているインジケータを利用しながら、電動アシスト自転車の異常の原因がその自転車の駆動システムにあるのか或いはバッテリユニットにあるのかを利用者が判別できるようになる。
【0014】
また、本発明の一形態では、前記インジケータは少なくとも一つの発光部を含み、前記インジケータは、前記バッテリの残量を表示する際と、前記駆動システムの異常を表示する際とでは、互いに異なる態様で前記少なくとも1つの発光部を駆動してもよい。バッテリユニットの小型化に起因して簡素化されたインジケータを利用して、補助力低下の原因(バッテリ残量の減少と異常の発生)を乗員に示すことができる。
【0015】
本発明に係る電動アシスト自転車は、利用者がペダルに加える踏力を補助するための電動モータと前記電動モータを制御するモータコントローラとを含む駆動システムを備える。また、前記電動アシスト自転車は、前記電動モータに供給するための電力を蓄えるバッテリと、前記バッテリを制御するコントローラと、インジケータとを有し、車体に対して脱着可能なバッテリユニットを備える。さらに、前記電動アシスト自転車は、前記駆動システムと前記バッテリの異常を検知する診断部と、前記駆動システムから前記バッテリユニットに前記駆動システムの異常を示す情報を伝達する情報伝達経路と、を備える。前記バッテリユニットのインジケータは、前記バッテリの残量と、前記駆動システムと前記バッテリの異常とを表示する。
【0016】
本発明によれば、駆動システムの異常或いはバッテリの異常が原因で電動モータの補助力が低下している場合に、バッテリの残量が無くなったことが原因で補助力が低下したと乗員が誤認することを抑えることができる。
【0017】
本発明に係る別の電動アシスト自転車は、利用者がペダルに加える踏力を補助するための電動モータと前記電動モータを制御するモータコントローラとを含む駆動システムとを含む。また、電動アシスト自転車は、前記電動モータに供給するための電力を蓄えるバッテリと、前記バッテリの残量を表すことができ且つ利用者が座るサドルより前方に配置されるインジケータと、前記バッテリと前記インジケータとを制御するコントローラとを有し、車体に対して脱着可能なバッテリユニットを有している。前記バッテリユニットのコントローラは、前記バッテリユニットが車体から取り外されているときには前記インジケータの表示に関して所定の制限を行い、前記バッテリユニットが車体に搭載されているときには前記所定の制限を緩和する。一例では、バッテリユニットが車体に搭載された状態で、所定の操作を伴うことによってモータコントローラが起動したときに、所定の制限が緩和される。他の例では、バッテリユニットが車体に搭載されたことを検知するスイッチやセンサがバッテリユニットに設けられている場合には、バッテリユニットが車体に搭載されたことをそのスイッチやセンサを通して検知したときに、所定の制限が緩和されてもよい。
【0018】
本発明によれば、バッテリユニットの車体への搭載時とバッテリユニットの非搭載時のいずれにおいても、バッテリの残量など利用者が求める情報をバッテリユニットのインジケータを通して提示でき、且つバッテリユニットの車体への非搭載時にインジケータにおける電力消費を抑えることができる。
【0019】
本発明の一形態では、前記インジケータの表示に関する所定の制限は前記インジケータで情報を表している時間についての制限であってもよい。
【0020】
本発明の一形態では、前記バッテリユニットのコントローラは、利用者の操作を受け付けるための操作部を有し、前記バッテリが車体から取り外されている状態で前記操作部が操作を受けたときに前記所定の制限を解除してもよい。
【0021】
本発明の一形態では、前記バッテリユニットのコントローラはユーザによる車両の利用に関する情報である車両利用情報を前記インジケータに表示してもよい。これによれば、電動アシスト自転車の利便性が向上できる。
【0022】
本発明の一形態では、前記バッテリユニットは、前記車両利用情報が格納され且つ前記バッテリユニットが車体から取り外された後においても前記車両利用情報を保持するメモリを有してもよい。これによれば、バッテリユニットでユーザの利用履歴を管理できる。
【0023】
本発明の一形態では、前記バッテリのコントローラは、前記バッテリユニットが車体から取り外された後において前記メモリで保持されている車両利用情報と、前記バッテリが再び車体に搭載されたときに新たに得られる車両利用情報とに基づいて新たな車両利用情報を算出してもよい。これによれば、利用者が車両を替えても、バッテリユニットを利用した利用履歴の管理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係る電動アシスト自転車の管理システムを示す図である。
図2】駐車ステーションに配置されている電動アシスト自転車を示す図である。図2(a)は側面図であり、(b)は平面図である。
図3図3は電動アシスト自転車が備える駆動システムとバッテリユニットとを示すブロック図である。
図4】インジケータと操作部とを含む表示・操作ユニットの例を示す図である。
図5】モータコントローラが行う処理とバッテリマネージメントコントローラ(BMC)が行う処理を示すブロック図である。
図6】バッテリユニットが車体に搭載されているときにBMCが実行する処理の例を示すフローチャートである。
図7】バッテリユニットの変形例を示すブロック図である。この図では複数のセルからなるバッテリは省略されている。
図8】表示・操作ユニットの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の実施形態に係る電動アシスト自転車1の管理システム100を示す図である。
【0026】
管理システム100は予め登録された利用者に貸し出すための複数の電動アシスト自転車1を管理するためのシステムである。管理システム100は電動アシスト自転車1の駐車ステーションA1、A2、A3に設置される駐車ステーションシステム101を有している。好ましくは、図1に示されるように、管理システム100は複数のステーションシステム101を有し、これらは街中に設けられた複数の駐車ステーションA1、A2、A3にそれぞれ設置される。利用者は自転車を借りたステーションと同じステーションに自転車を返却することもできるし、別のステーションに自転車を返却することもできる。駐車ステーションの数はこれに限られない。すなわち、管理システム100は1つのステーションシステム101だけを有していてもよい。管理システム100はホスト装置102を有している。ホスト装置102は複数の利用者についてのデータベースを有し、利用者による自転車の利用状況を管理する。ステーションシステム101はインターネットや専用線などの通信ネットワークを介してホスト装置102と通信可能となっている。
【0027】
図2は駐車ステーションに配置されている電動アシスト自転車1を示す図である。図2(a)は側面図であり、図2(b)は平面図である。
【0028】
図2(a)に示すように、電動アシスト自転車1はペダル2と、運転者がペダル2を踏むことにより回転するペダルクランク3とを有している。また、電動アシスト自転車1は利用者がペダル2に加える踏力をアシストするための電動モータ22を有している。ペダル2からペダルクランク3に加えられるトルクと電動モータ22のトルクの合力が後輪5に伝えられる。電動アシスト自転車の一例では、ペダルクランク3はチェーン6などの後輪5への動力伝達部材に連結され、電動モータ22は減速機構を介して動力伝達部材に連結される。この場合、ペダルクランク3に加えられるトルクと電動モータ22のトルクとが動力伝達部材において組み合わされる。動力伝達部材に伝えられた力は変速機構を介して後輪5に加えられる。ペダルクランク3から後輪5に至る動力伝達経路おける電動モータ22の位置は、種々の変更が可能である。例えば、電動モータ22は動力伝達経路において上述のチェーン6や変速機構よりも下流に配置されてもよい。この場合、電動モータ22は例えば後輪5のハブ5aに設けられてもよいし、前輪4のハブに設けられてもよい。
【0029】
電動アシスト自転車1は、電動モータ22にその駆動電力を供給するためのバッテリユニット30と、バッテリユニット30が脱着可能なバッテリ収容部7とを有している。後において説明するように、バッテリユニット30はインジケータ41(図4参照)を有している。バッテリユニット30がバッテリ収容部7に設置されているとき、インジケータ41は利用者が座るサドル9よりも前方に位置する。これにより、利用者は電動アシスト自転車1の利用時にバッテリユニット30のインジケータを視認することができる。また、電動アシスト自転車1の車体自体にはインジケータを設ける必要がなくなり、電動アシスト自転車1の製造コストの低減を図ることができる。電動アシスト自転車1の一例では、図2(b)に示すように、バッテリ収容部7はハンドルステムを支持するヘッドパイプ8aに固定される。利用者が電動アシスト自転車1の利用時にインジケータを視認することができれば、バッテリ収容部7の固定位置は必ずしもヘッドパイプ8aに限られない。
【0030】
図2(b)に示されるように、複数の電動アシスト自転車1が街中に設置された駐車ステーションにおいて保管されている。一例では、バッテリユニット30は個々の利用者によって所有され、利用者は自身が所有するバッテリユニット30をバッテリ収容部7に設置することにより、電動アシスト自転車1を利用できる。
【0031】
図2(b)に示すように、駐車ステーションには複数のロック装置90が設置されている。電動アシスト自転車1はロック装置90に連結するための被ロック部8dを有している。ロック装置90と被ロック部8dは、好ましくは、電動アシスト自転車1の位置及び姿勢が固定されるように構成される。被ロック部8dの一例は、図2(b)に示すように、車体フレーム8(より具体的には、図2(b)においてはヘッドパイプ8aから後方かつ下方に斜めに伸びているチューブ8c)から側方に伸びている。被ロック部8dはロック装置90に形成されているロック部(受け部)90aに嵌められる。そして、被ロック部8dは、ロック部90aがその内部に有するロック機構によってロック(保持)される。電動アシスト自転車1のロック構造はこれに限られない。例えば、ロック装置90はチェーンを有し、このチェーンを介して電動アシスト自転車1の前輪4や後輪5がロック装置90に連結されてもよい。すなわち、前輪4や後輪5が被ロック部として利用されてもよい。
【0032】
図3は電動アシスト自転車1が備える駆動システム20とバッテリユニット30とを示すブロック図である。
【0033】
バッテリユニット30は電動モータ22に加える電力を蓄える複数のセルを含むバッテリ31を有している。バッテリユニット30はバッテリマネージメントコントローラ(BMC)32を有している。BMC32はマイクロプロセッサや、マイクロプロセッサで実行されるプログラムが記録されているメモリ35を有している。BMC32はバッテリ31の状態(例えば、バッテリセルの電圧や、電流、温度)を監視したり、バッテリ31の残量を算出したりする。BMC32が実行する処理については、後において詳説する。
【0034】
バッテリユニット30はインジケータ41と操作部42とを有している。インジケータ41はバッテリ31の残量や電動モータ22の制御モードなどを表す。操作部42はユーザの操作を受け付ける部分であり、例えば、利用者による制御モードの切り替え用のボタンなどを含んでいる。上述したように、本実施形態のインジケータ41は利用者が電動アシスト自転車1に乗車しているときに視認できる位置に設置される。また、操作部42も、利用者が電動アシスト自転車1に乗車しているときに操作できる位置に設置される。例えば、インジケータ41と操作部42はバッテリユニット30の上面に設けられる。
【0035】
駆動システム20は、モータコントローラ21と、モータ駆動回路23とを有している。モータコントローラ21はマイクロプロセッサと、マイクロプロセッサが実行するプログラムが格納されているメモリ25とを有している。モータコントローラ21は運転者がペダル2に加える踏力に基づいて電動モータ22を制御する。
【0036】
駆動システム20の一例は、図2に示すように、ペダルクランク3に加えられるトルクを検知するためのトルクセンサ24Aと、車速を検知するための車速センサ24Bとを有している。駆動システム20は、さらに電動モータ22の回転速度を検知するためのモータ回転センサ24Cと、ペダルクランク3の回転速度を検知するためのクランク回転センサ24Dとを有している。モータコントローラ21は、これらのセンサから入力される信号に基づいて電動モータ22を制御する。例えば、モータコントローラ21は、車速センサ24Bの出力信号とモータ回転センサ24Cの出力信号とに基づいて、変速段(変速機構における変速比)を算出する。また、モータコントローラ21は、トルクセンサ24Aの出力信号に基づいて運転者の踏力を検知し、クランク回転センサ24Dの出力信号に基づいてペダルクランク3の回転速度を算出する。そして、モータコントローラ21は、運転者の踏力と変速段とペダルクランク3の回転速度とに基づいて電動モータ22に加える電流の指令値を算出し、その指令値に応じた信号をモータ駆動回路23に入力する。モータ駆動回路23はバッテリユニット30から電力を受け、モータコントローラ21から受ける指令値に応じた電流を電動モータ22に供給する。
【0037】
バッテリユニット30と駆動システム20のそれぞれは、バッテリ31の電力をモータ駆動回路23に供給するためのコネクタ(不図示)を有している。さらに、BMC32とモータコントローラ21は通信インターフェース(不図示)と、2つの通信インターフェースを互いに接続する情報伝達経路(通信配線)L1、L2を介して通信可能となっている。なお、情報伝達経路L1、L2は必ずしも2本の通信配線によって構成されなくてもよい。すなわち、1本の通信配線によってモータコントローラ21とBMC32とが種々の情報を送受信してもよい。
【0038】
上述したように、バッテリユニット30はインジケータ41と操作部42とを有している。図4はインジケータ41と操作部42とを含む表示・操作ユニット40の例を示す図である。モータコントローラ21の一例は、電動モータ22の制御モードとして、電動モータ22のアシスト力のレベルが異なる複数の制御モードを有している。操作部42はその制御モードを切り換えるためのモード選択操作部(図4においてアップボタン42aとダウンボタン42b)とを有している。また、インジケータ41は、現在の制御モードを示すモードインジケータ部41Aを有している。モードインジケータ部41Aは、例えば図4に示されるように、LEDなどで構成される複数の発光部41aを含んでいる。また、インジケータ41はバッテリ31の残量を示すことができる残量インジケータ部41Bとを有している。一例では、残量インジケータ部41Bも、図4に示されるように、LEDなどで構成される複数の発光部41bを含んでいる。
【0039】
表示・操作ユニット40の形態は図4に示されるものに限られず、種々の変更がなされてもよい。例えば、表示・操作ユニット40は、残量インジケータ部41Bとして、文字や記号の表示が可能な表示画面を含んでもよい。この場合、残量インジケータ部41Bには、バッテリ31の残量だけでなく、電動モータ22のアシストを利用した走行が可能な残りの距離や、時間などが表示されてもよい。インジケータ41のこのような例については、後において説明する。
【0040】
BMC32は、バッテリユニット30が車体から取り外されているときにはインジケータ41の表示に関して所定の制限を行い、バッテリユニット30が車体に搭載されているときには上述の制限を緩和する。
【0041】
所定の制限の一例はインジケータ41の表示時間の制限である。BMC32は、バッテリユニット30の車体への非搭載時には、操作部42に設けられている操作ボタン42c(図4参照)がオンされてから所定時間(例えば、数十秒)だけ残量インジケータ部41Bを駆動し、バッテリ31の残量を表示する。そして、BMC32は、所定時間が経過した時に、バッテリ31の残量表示を停止する(すなわち、残量インジケータ部41Bを消灯する、以下ではこの時間を表示許可時間とする)。一方、バッテリユニット30が車体に搭載されているときは、BMC32は表示許可時間が経過した後も利用者が求める情報をインジケータ41を通して表示する。例えば、BMC32はバッテリ31の残量を常時表示する。また、BMC32は上述の表示許可時間より長く設定された時間が経過した時にバッテリ31の残量表示を停止してもよい。こうすることにより、バッテリユニット30が車体に搭載されているときに、利用者が求める情報をインジケータ41を通して提供できる。また、バッテリユニット30が車体に搭載されていない場合には、バッテリユニット30の消費電力を抑えることができる。
【0042】
所定の制限の他の例はインジケータ41の輝度についての制限である。具体的には、BMC32は、バッテリユニット30の車体への非搭載時には、バッテリユニット30の車体への搭載時に比べて、残量インジケータ部41Bの輝度を下げる。
【0043】
モータコントローラ21は駆動システム20の異常を検知する機能を有している。また、BMC32はバッテリ31の異常を検知する機能を有している。駆動システム20の異常が検知され、且つバッテリユニット30が車体に搭載されたときに、BMC32はその異常の検知を示す情報をモータコントローラ21から受信し、インジケータ41はこの異常の発生を表示する。また、バッテリユニット30が車体に搭載されているときにバッテリ31の異常が検知された場合、インジケータ41はこの異常を表示する。こうすることにより、電動モータ22の補助力が低下している場合に、その補助力低下の原因がバッテリ31の残量不足に起因するのか、或いは、その補助力低下の原因が駆動システム20とバッテリ31のいずれかの異常によるものであるのかを、乗員は適切に認識できる。
【0044】
一例では、BMC32は、インジケータ41における共通の部分を利用して、バッテリ31の残量と異常とを切り換えて表示する。すなわち、BMC32はバッテリ31の異常が検知された場合に、通常時(異常が検知されていない時)とは異なる態様でインジケータ41における共通の部分を駆動し、利用者にその異常を知らせる。例えば、BMC32は、通常時には残量インジケータ部41Bでバッテリ31の残量を表示し、異常が検知された場合には残量インジケータ部41Bを通常時とは異なる態様で駆動して、その異常の発生を乗員に通知する。例えば、通常時と異常が発生している場合とでは、BMC32は残量インジケータ部41Bの発光部41bの点滅頻度や輝度、発光色などを異ならせる。こうすることにより、バッテリユニット30の小型化に起因して簡素化されたインジケータ41を利用して、補助力低下の原因を乗員に示すことができる。
【0045】
また、本実施形態では、バッテリ31の異常が検知された場合にBMC32がインジケータ41を駆動する態様と、駆動システム20の異常が検知された場合にBMC32がインジケータ41を駆動する態様とが異なる。例えば、発光部41bの発光色や点滅速度が異なる。こうすることにより、乗員はバッテリ31に異常があるのか、駆動システム20に異常があるのかを判断できる。
【0046】
以下、モータコントローラ21とBMC32が行う処理について説明する。図5はモータコントローラ21が行う処理とBMC32が行う処理を示すブロック図である。まず、モータコントローラ21の処理について説明する。図5に示すように、モータコントローラ21は、駆動システム診断部21aと、モータ制御部21bと、通信制御部21cとを有している。これらは、モータコントローラ21が備えるマイクロプロセッサによって実現される。
【0047】
駆動システム診断部21aは駆動システム20の異常の有無を判断する。駆動システム診断部21aが検知する異常は、例えば、電動モータ22の制御に利用される上述のセンサの異常である。駆動システム診断部21aは、これらのセンサから得られる値に基づいて、それらに異常が発生しているか否かを判断する。駆動システム診断部21aは駆動システム20の異常を検知したときに、その異常を示す情報をメモリ25に格納する。駆動システム診断部21aの診断処理はモータコントローラ21が起動された時や電動アシスト自転車1の走行中に実行される。
【0048】
通信制御部21cは、後述するBMC32の通信制御部32dとの間で種々の情報を送受信する。一例では、駆動システム診断部21aが駆動システム20の異常を検知したときに、通信制御部21cはその旨を示す情報を情報伝達経路L1を介してBMC32に送信する。BMC32はその情報を受信したときに、インジケータ41を駆動して、利用者に異常を知らせる。反対に、BMC32がバッテリ31の異常を検知した場合には、通信制御部21cはそれを示す情報を情報伝達経路L2を介してBMC32から受信する。
【0049】
モータ制御部21bは、利用者の踏み力や変速段などに基づく上述した電動モータ22の制御を行う。本実施形態では、電動モータ22の制御モードを切り換えるためのモード選択操作部(具体的には、ボタン42a,42b)がバッテリユニット30の表示・操作ユニット40に設けられている(図4参照)。モータ制御部21bは、これらのボタン42a、42bが操作されたときに、その操作により選択された制御モードを示す情報を通信制御部21cを介して取得し、そのモードに対応したモータ制御を実行する。また、モータ制御部21bは、バッテリ31の異常を示す情報を通信制御部21cを介して取得したとき、必要に応じて、電動モータ32の駆動を停止する。
【0050】
次に、BMC32の処理について説明する。図5に示すように、BMC32は、バッテリ監視部32aと、バッテリ診断部32bと、表示制御部32cと、通信制御部32dと、システム状態判定部32eとを有している。これらは、BMC32が備えるマイクロプロセッサによって実現される。
【0051】
バッテリ監視部32aはバッテリ31を監視する。例えば、バッテリ監視部32aは、バッテリ31の温度や、電圧値、電流値、充放電回数などを監視する。また、バッテリ監視部32aは電流値と充放電時間とに基づいてバッテリ31の残量を算出する。
【0052】
バッテリ診断部32bはバッテリ監視部32aが取得する情報に基づいて、バッテリ31の異常の有無を判断する。バッテリ診断部32bは、例えばバッテリ監視部32aが取得した値(例えば温度)が基準値を超えた場合に、バッテリ31に異常が生じていると判断する。バッテリ診断部32bは、バッテリ31の異常を検知したときに、それを示す情報をBMC32が備えるメモリ35に記録する。なお、バッテリ診断部32bが検知する異常は以上説明したものに限られない。
【0053】
上述したように、通信制御部32dはモータコントローラ21の通信制御部21cとの間で種々の情報を送受信する。一例では、バッテリ診断部32bがバッテリ31の異常を検知した場合に、それを示す情報を情報伝達経路L2を介してモータコントローラ21に送信する。反対に、通信制御部32dは駆動システム20の異常を示す情報を情報伝達経路L1を介してモータコントローラ21から受信する。また、通信制御部32dはバッテリユニット30の操作部42により選択された制御モードを示す情報をモータコントローラ21に送信する。
【0054】
システム状態判定部32eはモータコントローラ21が正常に作動しているか否かを判断する。例えば、システム状態判定部32eは、モータコントローラ21が正常に作動していることを示す予め定めた信号をモータコントローラ21から受信しているか否かに基づいて、モータコントローラ21が正常に作動しているか否かを判断する。システム状態判定部32eは、利用者がバッテリユニット30をバッテリ収容部7に搭載した時点では(電動アシスト自転車1の利用開始時)、モータコントローラ21が正常に起動したか否かを判断する。
【0055】
表示制御部32cは、上述した、バッテリ31の残量の表示と、バッテリ31の異常と、駆動システム20の異常の表示とをインジケータ41を通して行う。これらの表示には、例えば、残量インジケータ部41Bが利用される。以下では、バッテリ31に異常が生じている場合の表示態様を「バッテリ異常態様」と称し、駆動システム20の異常が生じている場合の表示態様を「駆動システム異常態様」と称する。また、バッテリ31の残量などを示す通常時の表示態様を「正常態様」と称する。
【0056】
バッテリユニット30の車体への搭載時にバッテリ31の異常又は駆動システム20の異常が検知された場合、表示制御部32cはバッテリ31の残量の表示に優先して、利用者に異常を知らせるための表示を行う。すなわち、表示制御部32cは正常態様に優先して、バッテリ異常態様又は駆動システム異常態様でインジケータ41を駆動する。例えば、表示制御部32cは、正常態様でインジケータ41を駆動している最中にバッテリ31の異常が検知された場合、正常態様での駆動を停止し、バッテリ異常態様でインジケータ41を駆動する。
【0057】
インジケータ41を利用した異常通知は、電動アシスト自転車1の利用開始時、すなわちバッテリユニット30の車体への搭載が検知された時点で実行される。電動アシスト自転車1の利用開始時に異常を通知する場合、表示制御部32cは、駆動システム診断部21aがメモリ25に過去に記録した情報とバッテリ診断部32bがメモリ35に過去に記録した情報とを利用してインジケータ41を駆動してもよい。こうすることにより、利用者が電動アシスト自転車1の利用を開始しようとしたときに、その自転車の駆動システム20の異常を直ちに利用者に知らせることができる。また、インジケータ41を利用した異常通知は、電動アシスト自転車1の走行中に実行されてもよい。
【0058】
図6は、バッテリユニット30が電動アシスト自転車1に搭載されているときに実行されるBMC32の処理の例を示すフローチャートである。図6の処理はバッテリユニット30が電動アシスト自転車1に搭載されているときには繰り返し実行される。
【0059】
まず、システム状態判定部32eはモータコントローラ21が正常に作動しているか否かを判断する(S101)。上述したように、利用者がバッテリユニット30をバッテリ収容部7に搭載した時点では(電動アシスト自転車1の利用開始時には)、システム状態判定部32eはモータコントローラ21が正常に起動したか否かを判断する。ここでモータコントローラ21が正常に作動していない場合には、表示制御部32cによるインジケータ41の駆動がなされることなく(インジケータ41の点灯がなされることなく)、BMC32の処理が終了する。これにより、利用者は、バッテリユニット30をバッテリ収容部7に搭載したことにより、モータコントローラ21が作動したか否かを判断できる。
【0060】
モータコントローラ21が正常に作動している場合には、バッテリ診断部32bがバッテリ31に異常があるか否かを判断する(S102)。車両の走行中においては、バッテリ診断部32bは現在バッテリ31に異常が生じているか否かを判断する。また、バッテリ診断部32bはメモリ25に記録されている過去の情報に基づいてバッテリ31に異常が生じているか否かを判断してもよい。ここで、バッテリ31に異常が生じている場合には、表示制御部32cが上述のバッテリ異常態様でインジケータ41を駆動し、利用者にバッテリ31の異常を知らせる。バッテリ31の異常が生じている場合、その旨を示す情報がモータコントローラ21に送信される。そして、モータ制御部21bにより電動モータ22の駆動が制限される。また、BMC32はバッテリ31からモータ駆動回路23への電力供給を禁止してもよい。
【0061】
バッテリ31に異常が生じていない場合には、BMC32はモータコントローラ21からの情報に基づいて駆動システム20に異常が生じているか否かを判断する(S104)。駆動システム20に異常が生じている場合、表示制御部32cは上述の駆動システム異常態様でインジケータ41を駆動し、利用者に駆動システム20の異常を知らせる(S105)。このときも、モータ制御部21bにより電動モータ22の駆動が制限される。また、BMC32はバッテリ31からモータ駆動回路23への電力供給を禁止してもよい。
【0062】
駆動システム20に異常が生じていない場合、表示制御部32cはバッテリ監視部32aが算出しているバッテリ31の残量を取得し、この残量を示す態様(正常態様)でインジケータ41を駆動する(S106)。
【0063】
BMC32はこのような処理を繰り返し実行する。このような処理によれば、モータコントローラ21が正常に作動し、且つ車両の走行中にバッテリ31の異常又は駆動システム20の異常が検知されない場合には、インジケータ41においてバッテリ31の残量が常時表示されることとなる。
【0064】
なお、車両の走行中に、診断部32b、21aによって検知される異常以外の理由(例えば、バッテリ31の残量が所定値を下回った場合や0になった場合)でモータ制御部21bが電動モータ22の駆動を停止する場合(アシストを停止する場合)には、表示制御部32cは正常態様でのインジケータ41の駆動を停止してもよい。この場合、表示制御部32cは、インジケータ41を消灯してもよいし、バッテリ31の残量が所定値を下回ったことを示す、正常態様とは別の表示態様でインジケータ41を駆動してもよい。これによれば、利用者は電動モータ22によるアシストが停止していること知ることができる。
【0065】
バッテリユニット30が車体から取り外されているとき、表示制御部32cは正常態様又はバッテリ異常態様でインジケータ41を駆動するものの、その駆動について上述した制限を有している。一例では、表示制御部32cはインジケータ41の表示時間を制限している。具体的には、操作ボタン42cが操作されたときに、所定時間だけ正常態様又はバッテリ異常態様でインジケータ41を駆動する。表示制御部32cは、バッテリ診断部32bによってバッテリ31の異常が検知されている場合には、バッテリ異常態様でインジケータ41を駆動し、バッテリ31の異常が検知されていない場合には、正常態様でインジケータ41を駆動する。表示制御部32cは、操作ボタン42cが操作されてから所定時間が経過したときに、インジケータ41の駆動を停止し、インジケータ41を消灯する。なお、表示制御部32cによる表示の制限は、これに限られない。例えば、操作ボタン42cの操作から所定時間が経過したときには、表示制御部32cはインジケータ41の輝度を低下させてもよい。
【0066】
図7はバッテリユニット30の変形例を示すブロック図である。図7においては、これまで説明した箇所と同一箇所には同一符合を付している。また、図7ではバッテリユニット30を構成するバッテリ31は省略されている。
【0067】
電動アシスト自転車1は利用者に貸し出すための自転車である。街中には複数の駐車ステーションが設置され、各駐車ステーションにおいて電動アシスト自転車1は保管されている。また、バッテリユニット30は電動アシスト自転車1の車体に対して脱着可能であり、且つ利用者によって所有される。図7に示すバッテリ130は利用者による電動アシスト自転車1の利用履歴を管理するための機能を有している。
【0068】
具体的には、バッテリ130は通信部136を有している。通信部136は駐車ステーションに設置されている通信装置との間で、利用者による電動アシスト自転車1の利用に関する情報を送受信する。例えば、街中に設置されている複数の駐車ステーションのそれぞれに固有のコードが付与される(以下ではステーションコードと称する)。通信部136は駐車ステーションの通信装置からこのステーションコードを受信する。通信部136がこのステーションコードを受信することにより、バッテリ130は、そのバッテリ130を所有する利用者が電動アシスト自転車1を借りた駐車ステーションと電動アシスト自転車1を返却したステーションとを把握できる。通信部136は例えば近距離無線通信用のモジュールやICチップで構成される。駐車ステーションの通信装置は電動アシスト自転車1をロックするための複数のロック装置90のそれぞれに設けられてもよいし、1つの駐車ステーションに1つの通信装置が設けられてもよい。
【0069】
BMC32は上述のバッテリ診断部32b等に加えて、利用情報管理部132fを有している。利用情報管理部132fは、利用者による電動アシスト自転車1の利用に関する情報を取得し、それらの情報をメモリ35に記録する(以下では、この情報を車両利用情報と称する)。ここで、車両利用情報は例えば利用時間や走行距離などである。メモリ35は、好ましくは、利用者による電動アシスト自転車1の1回の利用が終了した後も、過去の或いは前回の車両利用情報を保持する。
【0070】
利用情報管理部132fは、次の利用時に得られる車両利用情報と過去の車両利用情報とに基づいて新たな車両利用情報を算出してもよい。例えば、車両利用情報が利用時間や走行距離である場合には、利用情報管理部132fはそれらの情報を車両の利用の度に加算してもよい。こうすることにより、利用情報管理部132fはある期間の利用時間や走行距離を合算して総利用時間を算出したり、総走行距離を算出できる。また、車両利用情報は利用者による自転車の利用回数であってもよい。
【0071】
利用時間は、例えば、システム状態判定部32eがモータコントローラ21が起動したと判断した時点からモータコントローラ21の作動が終了した時点までを計時することにより得られる。利用回数も、システム状態判定部32eがモータコントローラ21が起動したと判断した回数を計数することにより得られる。走行距離は、駆動システム20に設けられた車速センサ24Bの出力に関する情報を通信制御部32dを通して受信し、その情報に基づいて算出することができる。なお、走行距離はモータコントローラ21が算出し、その算出した情報を利用情報管理部132fが受信してもよい。
【0072】
利用情報管理部132fは利用者に対して課されるレンタル料を算出し、その料金をメモリ35に記録してもよい。レンタル料が総利用時間に応じて決まるシステムにおいては、利用情報管理部132fは総利用時間に基づいてレンタル料を算出してもよい。
【0073】
利用情報管理部132fは通信部136を通して受信したステーションコードを利用して、利用者が電動アシスト自転車1を利用した経路をメモリ35に記録してもよい。経路としては、例えば、利用者が電動アシスト自転車1の利用を開始した駐車ステーション(以下、利用開始ステーション)と、利用者が電動アシスト自転車1の利用を終了した駐車ステーション(以下、利用終了ステーション)とが利用できる。
【0074】
BMC132は車両利用情報が記録されるテーブルを保持していてもよい。すなわち、1回の利用について、利用時間や経路、走行距離など上述した情報が互いに対応づけられてテーブルに記録されてもよい。
【0075】
また、利用情報管理部132fは、上述の利用時間や、利用回数、走行距離、経路(利用開始ステーション、利用終了ステーション)などの複数の情報に基づいて演算を行ってもよい。例えば、利用情報管理部132fは、利用開始ステーション毎の利用回数を算出し、その値をメモリ35に記録してもよい。
【0076】
図8は表示・操作ユニット40の変形例である。図8に示す表示・操作ユニット140は利用情報管理部132fが取得した車両利用情報を表示できるように構成されている。
【0077】
具体的には、表示・操作ユニット140のインジケータ141は上述の残量インジケータ部41B等に加えて、文字や記号の表示が可能な表示画面141Cを有している。また、表示・操作ユニット140は、表示画面141Cにおける表示内容を切り換えるための操作ボタン142dを有している。表示画面141Cの表示内容の制御は上述した表示制御部32cによって実行される。
【0078】
表示制御部32cは上述の車両利用情報を表示画面141Cに表示する。すなわち、表示制御部32cは利用時間(利用開始時からの経過時間)や利用開始ステーションなどを表示する。また、表示制御部32cは複数の車両利用情報に基づいて得られた車両利用情報を表示画面141Cに表示してもよい。例えば、総利用時間や総走行距離、レンタル料などを表示してもよい。
【0079】
バッテリ130には、GPS受信機や、加速度センサなどが取り付けられてもよい。また、バッテリ130は地図情報を受信または予め保持していてもよい。この場合、表示制御部32cは、バッテリ130の現在位置を取得し、地図情報に基づいて最寄りの駐車ステーションの位置や方角、距離を算出し、それらを表示画面141Cに表示してもよい。
【0080】
以上説明したように、電動アシスト自転車1は、駆動システム20の異常を検知する診断部21aと、駆動システム20からバッテリユニット30に駆動システム20の異常を示す情報を伝達する情報伝達経路L1と、を備えている。バッテリユニット30のインジケータ41は、バッテリ31の残量と、駆動システム20の異常とを表示する。これによれば、駆動システム20の異常が原因で電動モータ22の補助力が低下している場合に、バッテリ31の残量が無くなったことが原因で補助力が低下したと乗員が誤認することを抑えることができる。
【0081】
また、電動アシスト自転車1では、BMC32はバッテリユニット30が車体から取り外されているときにはインジケータ41の表示時間に関して制限を行い、バッテリユニット30が車体に搭載されているときには制限を緩和する。これによれば、バッテリユニット30の車体への搭載時とバッテリユニット30の非搭載時のいずれにおいても、バッテリ31の残量など利用者が求める情報をバッテリユニット30のインジケータ41を通して提示できる。また、バッテリユニット30の車体への非搭載時にインジケータ41における電力消費を抑えることができる。
【0082】
なお、本発明は以上説明した電動アシスト自転車1に限られず、種々の変更がなされてもよい。
【0083】
また、以上の説明では、操作部42のモード選択操作部としてアップボタン42aとダウンボタン42bとが設けられていた。しかしながら、これらのボタンは必ずしも設けられていなくてもよい。この場合、モータコントローラ21は電動モータ22の制御について複数の制御モードを有していなくてもよい。
【0084】
以上の説明では、BMC32は、インジケータ41における共通の部分(具体的には残量インジケータ部)を利用して、バッテリ31の残量と異常とを切り換えて表示していた。しかしながら、BMC32は、インジケータ41においてバッテリの残量を表示する部分とは異なる部分(発光部)で駆動システム20の異常とバッテリ31の異常とを表示してもよい。例えば、図8に示す表示・操作ユニット140においては、表示画面141に駆動システム20の異常とバッテリ31の異常が表示されてもよい。
【0085】
以上の説明では、残量インジケータ部41Bには複数の発光部41bが設けられていた。しかしながら、残量インジケータ部41Bには1つの発光部41bだけが設けられていてもよい。この場合でも、正常態様と、バッテリ異常態様と、駆動システム異常態様とを実現できる。例えば、正常態様ではバッテリ31の残量に応じた発光色で発光部41bを発光させ、バッテリ異常態様と駆動システム異常態様では、発光部41bの点滅頻度によってバッテリ31の異常と駆動システム20の異常とを表示してもよい。
【0086】
バッテリ31の異常を検知するバッテリ診断部32bは必ずしもBMC32に設けられていなくてもよい。すなわち、バッテリ31の異常を検知する機能はモータコントローラ21に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 電動アシスト自転車、20 駆動システム、21 モータコントローラ、22 電動モータ、32b バッテリ診断部、32e システム状態判定部、40 表示・操作ユニット、41 インジケータ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8