(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6289195
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】スイング逆止弁の弁棒減肉診断方法
(51)【国際特許分類】
G01M 13/00 20060101AFI20180226BHJP
F16K 37/00 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
G01M13/00
F16K37/00 F
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-58156(P2014-58156)
(22)【出願日】2014年3月20日
(65)【公開番号】特開2015-184028(P2015-184028A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2016年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000165697
【氏名又は名称】原子燃料工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代 哲司
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【弁理士】
【氏名又は名称】神野 直美
(72)【発明者】
【氏名】稲川 聡
(72)【発明者】
【氏名】江藤 淳二
(72)【発明者】
【氏名】松永 嵩
(72)【発明者】
【氏名】礒部 仁博
【審査官】
福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−310837(JP,A)
【文献】
特開昭63−314438(JP,A)
【文献】
特開2010−054434(JP,A)
【文献】
米国特許第05228342(US,A)
【文献】
米国特許第05257545(US,A)
【文献】
欧州特許出願公開第00572715(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 13/00
F16K 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁箱内に収容された弁棒と、前記弁棒を支軸として弧状運動を行うアームとを備えたスイング逆止弁の前記弁棒の減肉の程度を診断するスイング逆止弁の弁棒減肉診断方法であって、
所定の角度の位置における前記アームの上方に超音波センサを設置し、
前記超音波センサから前記アームに向けて超音波を発振し、反射した超音波を受信することにより、前記超音波センサと前記アームとの距離を計測し、
計測した前記超音波センサと前記アームとの距離と、予め設定した前記弁棒に磨耗減肉が無い場合の前記超音波センサと前記所定の角度の位置と同一の角度の位置における前記アームとの距離とを比較することにより、前記弁棒に生じた磨耗減肉により前記アームが下降した距離を算出し、
算出した下降距離に基づいて前記弁棒の磨耗減肉の程度を診断すること
を特徴とするスイング逆止弁の弁棒減肉診断方法。
【請求項2】
弁箱内に収容された弁棒と、前記弁棒を支軸として弧状運動を行うアームとを備えたスイング逆止弁の前記弁棒の減肉の程度を診断するスイング逆止弁の弁棒減肉診断方法であって、
前記弁棒が固定されている前記弁箱の側面に超音波センサを設置し、
前記超音波センサを上下方向に移動させながら前記超音波センサから所定の角度の位置における前記アームに向けて超音波を発振し、反射した超音波を受信することにより、反射した前記超音波のピーク値が最大となる位置を計測し、
計測したピーク値が最大となる位置と、予め設定した前記弁棒に磨耗減肉が無い場合の前記所定の角度の位置における前記アームに超音波を発振し、反射した超音波を受信した時のピーク値が最大となる位置とを比較することにより、前記弁棒に生じた磨耗減肉により前記アームが下降した距離を算出し、
算出した下降距離に基づいて前記弁棒の磨耗減肉の程度を診断すること
を特徴とするスイング逆止弁の弁棒減肉診断方法。
【請求項3】
弁箱内に収容された弁棒と、前記弁棒を支軸として弧状運動を行うアームとを備えたスイング逆止弁の前記弁棒の減肉の程度を診断するスイング逆止弁の弁棒減肉診断方法であって、
前記弁棒のアーム両端付近の少なくとも一方の上方に超音波センサを設置し、
前記超音波センサから下方に向けて超音波を発振し、反射した超音波を受信することにより、前記超音波センサと前記弁棒のアーム端部付近との距離を計測し、
計測した前記超音波センサと前記弁棒のアーム端部付近との距離と、予め設定した前記弁棒の前記弁棒のアーム端部付近に隙間腐食が無い場合の前記超音波センサと前記弁棒のアーム端部付近との距離とを比較することにより、前記弁棒のアーム端部付近に生じた前記弁棒の減肉量を算出し、
算出した減肉量に基づいて前記弁棒の隙間腐食による減肉の程度を診断すること
を特徴とするスイング逆止弁の弁棒減肉診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイングタイプの逆止弁の弁棒の減肉の程度を診断することができるスイング逆止弁の弁棒減肉診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、発電プラント等では、気体や液体などの内部流体が配管内を逆流することを防止するためにスイングタイプの逆止弁(スイング逆止弁)が用いられている。
【0003】
図7は一般的なスイング逆止弁の断面構造を模式的に示す図であり、(A)は開弁状態、(B)は閉弁状態である。
図8はスイング逆止弁の弁棒およびアームを模式的に示す正面図である。
【0004】
スイング逆止弁1は、弁箱2と、弁箱2内に収容された弁棒4と、弁棒4を挿通させるための貫通孔7を有するアーム6と、弁体ボルト9とナット20によりアーム6に取り付けられる弁体8と、弁箱2の上部開口面に取り付けられる弁蓋10とを備えている。
【0005】
スイング逆止弁1は、内部流体が配管内を順流する際には、アーム6がバックストップ14に接触するまで、弁棒4を支軸として弧状運動することにより弁体8が開き、一方、逆流する際には、弁体8が弁座12に接触するまで弧状運動することにより弁体8が閉まるように構成されている。
【0006】
上記したスイング逆止弁1は、プラントの稼動の継続に伴って劣化する。この劣化の種類としては、弁体8の開閉に伴う弁棒4の磨耗減肉、弁棒4のアーム両端付近の隙間腐食による減肉などが挙げられる。
【0007】
具体的には、このスイング逆止弁1では、アーム6が弧状運動する際、アーム6の貫通孔7の内側面と弁棒4とが摺動するため、弁体8による開閉の繰り返しに伴って摺動回数が多くなると、
図9に示すように、アーム6の貫通孔7内に配置される弁棒4の摺動部4aが磨耗して減肉する。
【0008】
一方、
図7(B)に示すように、弁体8が閉まった状態が継続すると、弁箱2内で内部流体が澱み、弁棒4の材料や内部流体の種類によっては、
図10に示すように、弁棒4のアーム両端付近の部分4b、4cに隙間腐食による減肉が生じる。
【0009】
上記した磨耗による減肉(以下、「磨耗減肉」という)や隙間腐食による減肉は、プラントの稼動期間が長くなるに従って進展し、弁棒が折損してアーム6および弁体8が脱落して、スイング逆止弁1が機能しなくなる原因になる。
【0010】
そこで、従来より、定期的にスイング逆止弁を配管から取り外して分解し、弁棒の外径寸法を計測することにより減肉を検知し、減肉量が基準値を超えている場合には弁棒を交換していた。
【0011】
しかし、スイング逆止弁の分解は、プラントの稼働中は実施できないため、検査のためにプラントの稼働を停止させる必要があり、稼働効率低下の原因になっていた。
【0012】
また、配管に取り付けられた弁を分解せずに異常を診断する方法として、特許文献1および特許文献2に記載の方法が提案されているが、スイング逆止弁を分解せずに、上記した磨耗減肉や隙間腐食による減肉の程度を正確に診断することができる診断方法は未だ開発されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2010−54434号公報
【特許文献2】特開2011−80805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、プラント稼動中であっても、スイング逆止弁を分解することなく、スイング逆止弁の弁棒の磨耗減肉や隙間腐食による減肉の程度を正確に診断することができるスイング逆止弁の弁棒減肉診断方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に記載の発明は、
弁箱内に収容された弁棒と、前記弁棒を支軸として弧状運動を行うアームとを備えたスイング逆止弁の前記弁棒の減肉の程度を診断するスイング逆止弁の弁棒減肉診断方法であって、
所定の角度の位置における前記アームの上方に超音波センサを設置し、
前記超音波センサから前記アームに向けて超音波を発振し、反射した超音波を受信することにより、前記超音波センサと前記アームとの距離を計測し、
計測した前記超音波センサと前記アームとの距離と、予め設定した前記弁棒に磨耗減肉が無い場合の前記超音波センサと
前記所定の角度の位置と同一の角度の位置における前記アームとの距離とを比較することにより、前記弁棒に生じた磨耗減肉により前記アームが下降した距離を算出し、
算出した下降距離に基づいて前記弁棒の磨耗減肉の程度を診断すること
を特徴とするスイング逆止弁の弁棒減肉診断方法である。
【0016】
請求項2に記載の発明は、
弁箱内に収容された弁棒と、前記弁棒を支軸として弧状運動を行うアームとを備えたスイング逆止弁の前記弁棒の減肉の程度を診断するスイング逆止弁の弁棒減肉診断方法であって、
前記弁棒が固定されている前記弁箱の側面に超音波センサを設置し、
前記超音波センサを上下方向に移動させながら前記超音波センサから
所定の角度の位置における前記アームに向けて超音波を発振し、反射した超音波を受信することにより、反射した前記超音波のピーク値が最大となる位置を計測し、
計測したピーク値が最大となる位置と、予め設定した前記弁棒に磨耗減肉が無い場合の
前記所定の角度の位置における前記アームに超音波を発振し、反射した超音波を受信した時のピーク値が最大となる位置とを比較することにより、前記弁棒に生じた磨耗減肉により前記アームが下降した距離を算出し、
算出した下降距離に基づいて前記弁棒の磨耗減肉の程度を診断すること
を特徴とするスイング逆止弁の弁棒減肉診断方法である。
【0017】
請求項3に記載の発明は、
弁箱内に収容された弁棒と、前記弁棒を支軸として弧状運動を行うアームとを備えたスイング逆止弁の前記弁棒の減肉の程度を診断するスイング逆止弁の弁棒減肉診断方法であって、
前記弁棒のアーム両端付近の少なくとも一方の上方に超音波センサを設置し、
前記超音波センサから下方に向けて超音波を発振し、反射した超音波を受信することにより、前記超音波センサと前記弁棒のアーム端部付近との距離を計測し、
計測した前記超音波センサと前記弁棒のアーム端部付近との距離と、予め設定した前記弁棒の前記弁棒のアーム端部付近に隙間腐食が無い場合の前記超音波センサと前記弁棒のアーム端部付近との距離とを比較することにより、前記弁棒のアーム端部付近に生じた前記弁棒の減肉量を算出し、
算出した減肉量に基づいて前記弁棒の隙間腐食による減肉の程度を診断すること
を特徴とするスイング逆止弁の弁棒減肉診断方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、プラント稼動中であっても、スイング逆止弁を分解することなく、スイング逆止弁の弁棒の磨耗減肉や隙間腐食による減肉の程度を正確に診断することができるスイング逆止弁の弁棒減肉診断方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係るスイング逆止弁の弁棒減肉診断方法を説明する図である。
【
図2】本発明の第2の実施の形態に係るスイング逆止弁の弁棒減肉診断方法を説明する図である。
【
図3】本発明の第3の実施の形態に係るスイング逆止弁の弁棒減肉診断方法を説明する図である。
【
図4】実施例において使用した弁棒を模式的に示す図である。
【
図5】
図1中の超音波センサが受信した超音波(反射波)の波形信号を示す図である。
【
図6】
図3中の超音波センサが受信した超音波(反射波)の波形信号を示す図である。
【
図7】一般的なスイング逆止弁の断面構造を模式的に示す図である。
【
図8】スイング逆止弁の弁棒およびアームを模式的に示す正面図である。
【
図9】弁棒に磨耗減肉が生じたスイング逆止弁を模式的に示す正面図である。
【
図10】弁棒に隙間腐食が生じたスイング逆止弁を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施の形態に基づき、図面を参照して説明する。
【0021】
1.第1の実施の形態
図1は、第1の実施の形態に係るスイング逆止弁の弁棒減肉診断方法(以下、単に「弁棒減肉診断方法」ともいう)を説明する図である。本実施の形態に係る弁棒減肉診断方法は、上記した弁棒4の磨耗減肉(
図9参照)の程度を診断する方法である。
【0022】
図1に示すように、本実施の形態に係る弁棒減肉診断方法では、超音波センサ30aを、アーム6の上方に設置する。具体的には、超音波センサ30aは、アーム6が真下に配置されるように、弁箱2(
図7参照)の上面を形成する弁蓋10に設置する。
【0023】
そして、超音波センサ30aからアーム6の上面に向けて超音波を発振する。発振された超音波は、弁蓋10および弁箱2の内の内部流体を透過してアーム6の上面で反射し、反射した超音波(反射波)が超音波センサ30aに受信される。
【0024】
このとき、超音波センサ30aが超音波を発振してから反射波を受信するまでの時間(TOF:Time of flight)を測定し、その結果に基づいて超音波センサ30aとアーム6の上面との距離を計測する。
【0025】
具体的には、上記したTOFは、超音波が超音波センサ30aからアーム6上面までを1往復した時間に相当するため、内部流体内の超音波の速度(水の場合、約1500m/s)と、弁蓋10内の超音波の速度(青銅の場合、約3500m/s)に基づいて、超音波センサ30aとアーム6の上面との距離を得ることができる。
【0026】
次に、得られた超音波センサ30aとアーム6上面との距離と、予め設定した弁棒4に磨耗減肉が無い場合の超音波センサ30aとアーム6上面との距離とを比較する。なお、予め設定する弁棒4に磨耗減肉が無い場合の距離としては、例えば、弁棒4交換直後の実測値を用いてもよいし、予備的な実験の結果、導き出した値を用いてもよい。
【0027】
上記したように、アーム6が弧状運動を繰り返すと、弁棒4の摺動部4a全体が磨耗減肉により細くなる(
図9参照)。このため、アーム6の貫通孔7と弁棒4の摺動部4aとの間に隙間が生じて、
図1の点線6’に示すように、摺動部4aの磨耗減肉の程度に応じてアーム6が下降することにより、超音波センサ30aとアーム6上面との距離が長くなる。
【0028】
本実施の形態に係る弁棒減肉診断方法は、予め設定した弁棒4に磨耗減肉が無い場合の超音波センサ30aとアーム6上面との距離と、計測した超音波センサ30aとアーム6上面との距離とを比較することにより、弁棒4の磨耗減肉によりアーム6が下降した距離を算出し、算出した下降距離に基づいて弁棒4の磨耗減肉の程度を診断することができる。
【0029】
これにより、スイング逆止弁を分解することなく、スイング逆止弁の弁棒4の磨耗減肉の程度を正確に診断することができるため、磨耗減肉の診断のためにプラントの稼働を停止させる必要がなくなる。この結果、プラントの稼働効率の低下を防止することができる。また、スイング逆止弁の分解時における作業ミスや内部流体漏えいなどによる事故の発生を防止することができる。
【0030】
2.第2の実施の形態
図2は、第2の実施の形態に係るスイング逆止弁の弁棒減肉診断方法を説明する図である。第2の実施の形態は、上記した第1の実施の形態と同様に、弁棒4の磨耗減肉の程度を診断する方法である。
【0031】
本実施の形態では、
図2(A)に示すように、超音波センサ30bを、弁棒4が固定されている弁箱2の側面3に設置して、弁箱2の側面3に沿って上下方向に移動させながら超音波を発振する。
【0032】
そして、アーム6の側面からの反射波を超音波センサ30bで受信して、反射波のピーク値が最大になる位置を求める。このときのTOFは、正常な場合でも磨耗減肉が生じている場合でも変化しないが、磨耗減肉によるアーム6の下降が生じてくると、それに合わせて反射波のピーク値が最大になる位置も下降する。
【0033】
例えば、
図2(B)に示すように、アーム側面の中央部の位置において反射波のピーク値が最大になる。このとき、磨耗減肉によるアーム6全体の下降に伴ってアーム側面の中央部が下降すると、反射波の最大ピーク値が測定される位置も同様に下降する。
【0034】
即ち、本実施の形態では、弁棒4に磨耗減肉が無い場合のピーク値が最大となる位置を予め設定しておき、この設定値と、計測したピーク値が最大となる位置とを比較することにより、弁棒4に生じた磨耗減肉によりアーム6が下降した距離を算出することができ、算出した下降距離に基づいて弁棒4の磨耗減肉の程度を診断することができる。
【0035】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様に、スイング逆止弁を分解することなく、スイング逆止弁の弁棒4の磨耗減肉の程度を正確に診断することができるため、磨耗減肉の診断のためにプラントの稼働を停止させる必要がなくなる。
【0036】
3.第3の実施の形態
図3は、第3の実施の形態に係るスイング逆止弁の弁棒減肉診断方法を説明する図である。第3の実施の形態は、上記した第1、2の実施の形態と異なり、隙間腐食による弁棒4の減肉の程度を診断することができる。
【0037】
本実施の形態に係る弁棒減肉診断方法は、
図3に示すように、弁棒4のアーム6両端付近4b、4cの少なくとも一方の上方(
図3では符号4bの上方)に超音波センサ30cを設置する点で、上記した第1の実施の形態と異なる。
【0038】
隙間腐食が生じた弁棒4は、アーム両端付近4b、4cが局所的に減肉して細くなる。本実施の形態では、この隙間腐食による減肉の発生が想定される箇所である弁棒4のアーム端部付近4bに向けて超音波が発振されるように超音波センサ30cを設置する。
【0039】
その後、超音波センサ30cから下方に向けて超音波を発振し、弁棒4のアーム端部付近4bで反射した反射波を超音波センサ30cが受信するまでの時間を測定して、その結果に基づいて超音波センサ30cと弁棒4のアーム端部付近4bとの距離を得ることができる。
【0040】
そして、得られた超音波センサ30cとアーム端部付近4bとの距離と、予め設定した隙間腐食が無い場合の超音波センサ30cとアーム端部付近4bとの距離を比較する。これにより、弁棒4の隙間腐食により、弁棒4のアーム端部付近4bに発生した減肉量を算出することができ、算出した減肉量に基づいて弁棒4のアーム端部付近4bにおける隙間腐食による減肉の程度を診断することができる。
【0041】
本実施の形態によれば、スイング逆止弁を分解することなく、スイング逆止弁の弁棒4の隙間腐食による減肉の程度を正確に診断することができる。この場合においても、磨耗減肉を診断する際に、プラントの稼働を停止してスイング逆止弁を分解する必要がなくなり、プラントの稼働効率低下を防止できると共に、作業ミスや内部流体漏えいなどによる事故の発生を防止することができる。
【0042】
なお、上記した第1〜3の実施の形態に係る弁棒減肉診断方法は、それぞれを組合せて実施することができる。例えば、第1、3の実施の形態に係る弁棒減肉診断方法を同時に実施することにより、磨耗減肉の程度と隙間腐食による減肉の程度を同時に診断することができる。
【実施例】
【0043】
1.実施例
図4は実施例において使用した弁棒を模式的に示す図である。
図4に示すように、減肉の無い新品の弁棒4(減肉無し)と、磨耗を模擬して摺動部4a全体を半径で1.0mm分減肉させた弁棒4(磨耗小)と、摺動部4a全体を半径で2.5mm分減肉させた弁棒4(磨耗大)と、隙間腐食を模擬してアーム両端付近の部分4b、4cを半径で2.5mm分減肉させた弁棒4(隙間腐食有り)の4種類の弁棒を用意し、それぞれを
図7に示すようなスイング逆止弁1に取り付けた。なお、内部流体は水であり、スイング逆止弁1の弁蓋10は青銅製である。なお、
図4の「磨耗減肉を模擬」は、磨耗小と磨耗大の両方を表している。
【0044】
そして、減肉無し、磨耗小、磨耗大の弁棒に上記した第1の実施形態に係る弁棒減肉診断方法を実施して、それぞれの弁棒の磨耗減肉の程度を確認した。また、減肉無し、隙間腐食有りの弁棒に第3の実施形態に係る弁棒減肉診断方法を実施して隙間腐食による減肉の程度を確認した。
【0045】
2.結果
第1の実施の形態に係る弁棒減肉診断方法を実施した際に、
図1中の超音波センサが受信した反射波の波形信号を
図5に示す。
図5中の実線は減肉無し、一点鎖線は磨耗小、点線は磨耗大のそれぞれの弁棒の反射波の波形信号を示している。
【0046】
また、第3の実施の形態に係る弁棒減肉診断方法を実施した際に、
図3中の超音波センサが受信した反射波の波形信号を
図6に示す。
図6(A)は隙間腐食有り、(B)は減肉無しのそれぞれの弁棒の反射波信号の推移を示している。
【0047】
次に、
図5および
図6の反射波の位相差と、超音波の水中での速度(約1500m/s)および青銅製の弁蓋10の内部での速度(約3500m/s)とに基づいて、それぞれの弁棒の減肉量を算出した。結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
表1より、何れの弁棒の診断結果についても、実際の減肉量と計測した減肉量との差異が0.3mm以下であり、本発明に係る弁棒減肉診断方法を適用することにより、磨耗減肉や隙間腐食による減肉の実際の程度を適切に反映した診断結果が得られることが確認された。
【0050】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 スイング逆止弁
2 弁箱
3 弁箱の側面
4 弁棒
4a 弁棒の摺動部
4b、4c 弁棒のアーム端部付近
6 アーム
7 貫通穴
8 弁体
9 弁体ボルト
10 弁蓋
12 弁座
14 バックストップ
20 ナット
30a〜30c 超音波センサ