(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記底部材及び前記屋根部材は前記支持体の離間方向に沿って延びる同一の矩形プレートを複数枚ずつ並置して形成され、前記屋根部材を形成する矩形プレートは前記支持体に該矩形プレートの長手軸線回りに回転可能に支持されている、請求項1に記載の組立式虫
捕獲器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の捕虫具はその両端のみに三角の開口を有しているだけであり、捕虫具からの誘引剤の放出部及び捕虫具本体内への虫の進入部が限定されているため、本体内への虫の効果的な誘い込みが難しい。特許文献2の虫捕獲器(三角柱トラップ)は、各側面にて側面体が回転可能ではあるもの、構造上、側面体の可動域は限定され、特許文献1の捕虫具と同様の課題を有する。また、上記捕虫具及び三角柱トラップにおいて、粘着シートの両側縁部は三角柱トラップの角部となる空間的に狭い箇所に位置するので、実質的には粘着シートの中央領域のみしか虫の捕獲に使用されず、三角柱トラップに進入した虫の捕獲率は十分ではない。
更に、三角の開口は開口面積が狭いため、粘着シートが装着された捕虫具及び三角柱トラップの底内面に対し、その全域への手のアクセスを妨げるから、粘着シートの交換作業を難しくし、また、捕虫具や三角柱トラップの維持や捕獲害虫の回収にかかる負担を増大させる。
【0005】
本発明は上述の事情に基づいてなされたもので、その第1の目的は虫の捕獲率を高めた組立式虫捕獲器及びその組立キットを提供することにある。また、本発明の第2の目的は、粘着シートの交換作業を容易に行うことができる組立式虫捕獲器及びその組立キットを提供することにある。更に、本発明の第3の目的は、捕獲対象の虫の生態及び誘引剤の特性に対応した開口アレンジを容易に達成できる組立式虫捕獲器及びその組立キットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の第1の目的は本発明の組立式虫捕獲器によって達成され、該虫捕獲器は、
互いに対向して離間する一方、各々が底辺部並びに左右
対称に上辺部及び下辺部をそれぞれ有した五角形の枠形状をなし、エンド開口をそれぞれ提供する一対の支持体
であって、
前記左右の上辺部を等辺とした二等辺三角形でみて、前記底辺部の長さが該二等辺三角形の底辺よりも短いものの前記上辺部の長さに等しく、且つ、前記左右の上辺部間にて規定される内角が100〜120°の鈍角をなす一方、前記左右の下辺部と対応する側の上辺部との間の内角が鋭角をなす、一対の支持体と、
一対の支持体における底辺部のそれぞれに分離可能に支持され、底辺部間に底を形成する底部材と、
一対の支持体における左右同一側の上辺部のそれぞれに分離可能に支持され、上辺部間に亘って延びる左右の屋根部材と、
一対の支持体における左右同一側の下辺部間にそれぞれ確保された左右のサイド開口
であって、前記底部材と対応する側の屋根部材の下縁との間で規定される高さを有し,該高さに4〜8cmが確保されている、左右のサイド開口と、
少なくとも前記底部材の上面に分離可能に固定され、虫を粘着させて捕獲する粘着シートと、
粘着シート上に配置された虫の誘引源と
を具備する(請求項1)。
【0007】
上述の本発明の組立式虫捕獲器によれば、一対の支持体のエンド開口のみならず、左右の屋根部材の下方にサイド開口がそれぞれ備えられているので、虫の誘い込み方向が増える一方、これらエンド開口及びサイド開口は虫の進入を許容する開口面積の大幅な増大に寄与する。
また、支持体が五角形をなしていることから、開口面積の広いエンド開口及びサイド開口の双方から手を入れることができ、粘着シートに対するアクセスが容易となる。
【0008】
例えば、底部材及び屋根部材は支持体の離間方向に沿って延びる同一の矩形プレートを複数枚ずつ並置して形成され、屋根部材を形成する矩形プレートは支持体に該矩形プレートの長手軸線回りに回転可能に支持されている(請求項2)。
このように屋根部材を形成する複数の矩形プレートが回転できれば、矩形プレートを回転させるだけで、虫捕獲器の屋根にも屋根開口を形成でき、開口の多様なアレンジが可能となる。
この場合、底部材及び屋根部材はそれぞれ2枚の矩形プレートによって形成され
る(請求項3
)。
【0009】
更に、支持体は、底辺部の内縁及び上辺部の外縁のそれぞれに矩形プレートの数に対応した数だけ形成された支持切欠を含み、一方、矩形プレートはプレート本体と、該プレ一本体の両端面からそれぞれ突出し、対応する支持切欠に分離可能に支持される2つの嵌合突起を含み、これら2つの嵌合突起はプレート本体の長手軸線上に位置付けられ、矩形プレートの回転支持軸を形成する(請求項
4)。例えば、嵌合突起は、支持切欠内に
位置付けられ、支持切欠の内面に対して摩擦抵抗をもって摺接することで回転可能なネックと、プレート本体の端面との間にて底辺部又は上辺部を挟み込むヘッドとを有しているのが好ましい(請求項
5)。
更に、本発明は上述の一対の支持体、底部材及び左右の屋根部材を含む組立キットをも提供する(請求項
6)。
【発明の効果】
【0010】
請求項1〜
6に係る本発明の組立式虫捕獲器及びその組立キットによれば、2つのエンド開口のみならず左右にサイド開口を備えているので、虫の誘い込み方向が増える一方、これら開口全体の開口面積を大きく確保できるので、虫の捕獲に粘着シートの全域を有効に使用でき、高い虫の捕獲率を達成でき(第1の目的)。また、粘着シートにエンド開口及びサイド開口の双方からアクセスできるので、粘着シートの交換作業を容易にする(第2の目的)。
【0011】
また、屋根部材を形成する矩形プレートが回転可能であれば、虫捕獲器の屋根に屋根開口を形成できるばかりでなく、屋根開口の向きをも容易に調整可能となるから、捕獲対象の虫の生態及び誘引剤の特性に好適した開口のアレンジが可能となる(第3の目的)。
本発明の他の利点は、添付図面及び後述の具体的な実施形態の説明から明らかとなる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1を参照すれば、本発明に係る一実施形態の組立式虫捕獲器は板状をなす一対の支持体10と、例えば6枚の同一の矩形プレート12とによって分離可能に組み立てられる。これら支持体10及び矩形プレート12の材質については特に制限されないが、例えば、機械的強度や耐候性に優れたポリプロピレンが挙げられる。本実施形態では、支持体10及び矩形プレート12の双方ともポリプロピレンから一体成形されている。
各支持体10は五角形の枠形状をなし、
図2を参照すればより明らかなように、各支持体10は底辺部10Bと、この底辺部10Bの左右にそれぞれ左右対称にして上辺部10U及び下辺部10Lを有し、左右の上辺部10Uがなす内角αは鈍角に設定されている。限定されるものではないが、内角αは100〜120°、好ましくは105〜110°である。本実施形態の場合、内角αは例えば105°に設定されている。
【0014】
一対の支持体10は虫捕獲器の前後方向に互いに離間して対向し、虫捕獲器の前後に五角形のエンド開口14をそれぞれ提供する。
一対の支持体10の底辺部10B同士は例えば2枚の矩形プレート12を介して互いに接続されている。これら矩形プレート12は虫捕獲器の前後方向(一対の支持体10の離間方向)に延びる一方、虫捕獲器の幅方向に底辺部10Bに沿って並置され、互いに協働して虫捕獲器の底部材16を形成している。底部材16を形成する矩形プレート12は支持体10の対応する底辺部10Bのそれぞれに分離可能に結合されている。
【0015】
また、一対の支持体10の左右同一側の上辺部10U同士もまたそれぞれ、例えば2枚の矩形プレート12を介して互いに接続されている。これら矩形プレート12もまた虫捕獲器の前後方向に延びる一方、対応する側の上辺部10Uに沿って並置され、互い協働して左右の屋根部材18をそれぞれ形成している。屋根部材18を形成する矩形プレート12もまた支持体10の対応する上辺部10Uのそれぞれに分離可能に結合されているが、ここでの結合構成は底部材16側での結合構成と同一であるので、これらの結合構成については併せて後述する。
なお、矩形プレート12の幅は適宜選択可能であるが、捕獲した虫を計数するために実体顕微鏡等を用いた検鏡作業効率及び矩形プレート12自体の強度を考慮すると、好ましくは5〜15cm、より好ましくは7〜10cm、更に好ましくは8cmである。
【0016】
一方、一対の支持体10の左右同一側の下辺部10L間には矩形プレート12が備えられていない。それ故、
図1から明らかなように左右の下辺部10L間はサイド開口20としてそれぞれ形成され、これらサイド開口20は底部材16を含む基準面と対応する側の屋根部材18の下縁との間にて規定される高さH(
図2参照)を有し、この高さHは、虫捕獲器を設置する管理者の手がサイド開口20を通じて虫捕獲器内に十分に進入可能なサイズに設定されている。限定されるものではないが、高さHは例え
ば4〜8cm
、好ましくは5cmである。
【0017】
次に、前述の結合構成について以下に説明する。
各支持体10には虫捕獲器の組立に使用される矩形プレート12に対応した数だけ支持切欠22を備えている。即ち、これら支持切欠22は支持体10の底辺部10B及び上辺部10Uのそれぞれに2個ずつ割り当てられ、対応する辺部にその長さ方向中心位置から所定の距離を存して配置され、ここでの距離は矩形プレート12の幅の1/2よりも僅かに長い。
【0018】
本実施形態の場合、
図3に示されるように支持切欠22は対応する辺部10Xの縁に形成され、ここで、辺部10Xの「X」は「B」、「U」の何れかを指す。支持切欠22は辺部Xの縁に開口した溝24と、この溝24の内端に連なる円形の孔26とから形成され、孔26は辺部10Xの長手方向に沿う溝24の幅よりも大きな直径D1を有し、溝24に部分的にオーバラップした状態で、溝24に連通している。
【0019】
ここで、
図1,2を参照すれば明らかなように底辺部10Bの支持切欠22は、底辺部10Bの内縁に開口した溝24を有しているのに対し、上辺部10Uの支持切欠22は上辺部10Uの外縁に開口した溝24を有する。また、虫捕獲器の前後方向に対向する2つの辺部10Xに関して、一方の辺部10Xの各支持切欠22の孔26と他方の辺部10Xの対応する支持切欠22の孔26とは同一の軸線上に配置されている。
【0020】
一方、各矩形プレート12は
図4,5に示されるようにプレート本体12Bと、このプレート本体12Bの両端面にそれぞれ一体に備えられ、対応する支持切欠22にて支持されるべき嵌合突起28とを含み、これら嵌合突起28はプレート本体12Bの長手軸線上に配置されている。
例えば、嵌合突起28はプレート本体12Bの端面から突出するネック28Nを備え、このネック28Nは矩形の横断面を有する。即ち、ネック28Nの厚みTはプレート本体12Bの厚みにほぼ等しいものの、前述した支持切欠22の幅W1よりも僅かに小さい。また、ネック28Nの突出長さは辺部10Xの厚さよりも若干長い。
【0021】
また、ネック28Nの幅W2は支持切欠22の孔26の直径D1よりも若干短く、ネック28Nの横断面でみて、該横断面の対角線の長さは直径D1にほぼ一致する。
更に、嵌合突起28はネック28Nの突出端に円形のヘッド28Hを一体に有する。このヘッド28Hは直径D1よりも大きな最大外径D2を有し、その先端部はテーパ形状をなしている。
【0022】
次に、上述した矩形プレート12の結合手順を以下に説明する。
先ず、矩形プレート12は、結合すべき辺部10Xに対して垂直な姿勢にされる。この場合、
図3中の2点鎖線に示されるように矩形プレート12の両ネック28Nは対応する側の辺部10にて支持切欠22内、つまり、その溝24を通じて孔26内に差し込み可能となり、これら孔26内にそれぞれ配置される。
この後、矩形プレート12がその長手軸線(ネック28Nの軸線(回転軸線))回りに90°回転されれば、ネック28Nは孔26の内周面に沿って案内されることで、
図3に示す実線状態となり、矩形プレート12は前述したように対応する辺部10X間にて分離可能に取り付けられる。
【0023】
この際、
図4から明らかなように、辺部10Xは孔26よりも大径の嵌合突起28のヘッド28Hと矩形プレート12のプレート本体12Bの端面との間に挟み込まれているので、矩形プレート12が辺部10Xから脱落することはなく、矩形プレート12は各嵌合突起28にて、支持切欠22、つまり、辺部10Xに回転可能に支持される。
上述したように嵌合突起28のヘッド28Hが孔26よりも大径であっても、ネック28Nが溝24を通じて孔26内に簡単に配置できるから、ヘッド28Hを縮径させて孔26に挿通する場合に比べ、支持体10への矩形プレート12の取り付けは頗る容易となる。
【0024】
また、前述したようにネック28Nの横断面は、孔26の直径D1にほぼ等しい対角線の長さを有するので、孔26内をネック28Nが回転する際、ネック28Nは孔26の内周面に対して所定の摩擦抵抗でもって摺接する。それ故、ここでの摩擦抵抗は矩形プレート12を所望の取付姿勢にて保持する機能を発揮する。
この点、
図1,2に示されているように辺部10Xの長手方向に矩形プレート12の幅方向が沿う姿勢が矩形プレート12の通常の取付姿勢である場合、
図2に概略的に示すように、辺部10Xの裏面には、対応する矩形プレート12の両側縁をそれぞれ挟み込むような微小な半球凸部30を一体に形成しておくことも有用である。
【0025】
一方、上述した矩形プレート12はその表裏の面の何れに対しても粘着シートが装着可能に構成され、ここでの構成に関して以下に説明する。
図5に示されるように、矩形プレート12のプレート本体12Bの一方の面にはその両端面側にそれぞれ一対ずつの装着ピン32aが一体に突出されている。これら合計4つの装着ピン32aはプレート本体12Bの長手軸線上の中心Cに対して点対称に配置されている。
【0026】
一方、プレート本体12Bの他方の面にも合計4つの装着ピン32bが一体に突出され、これら装着ピン32bは装着ピン32aに対し、プレート本体12Bの長手軸線回りに回転対称となるべく配置されている。
図6に示されるように装着ピン32a,32bは同一の形状を有する。即ち、装着ピン32a,32bは円筒形状をなし、その上面の一部がプレート本体12Bの対応する側の端面に向けて傾斜した斜面に形成されている一方、この斜面の対応した外周部位はプレート本体12Bから所定の高さに亘って欠落され、それ故、装着ピン32a,32bはその上部が爪形状をなしている。
【0027】
一方、粘着シート34は
図7に示されている。この
図7から明らかなように、粘着シート34は矩形プレート12のプレート本体12よりも若干小さい矩形をなし、粘着シート34には装着ピン32a(又は32b)に対応した装着孔36がそれぞれ貫通して形成されている。即ち、装着孔36もまた装着ピン32a(又は32b)と同様に点対象に配置されている。
それ故、粘着シート34の装着孔36をプレート本体12Bの一方の面の装着ピン32(32a又は32b)にそれぞれ位置合わせし、装着孔36に対応する装着ピン32を根元まで貫通させることで、プレート本体12Bの一方の面上、即ち、矩形プレート12に粘着シート34を装着することができる。
【0028】
この後、装着された粘着シート34が矩形プレート12から不用意に浮き上がるようなことがあっても、粘着シート34は装着ピン32の上部が前述した爪形状をなしていることで、矩形プレート12からの装着シート34の脱落が防止される。
また、装着ピン32及び装着孔36は何れも点対称に配置されているので、粘着シート34の両端を逆向きにしても、矩形プレート12に対して粘着シート34を同様に装着でき、このことは粘着シート34の装着性を大幅に改善する。
【0029】
具体的には、粘着シート34は
図8に示されるように、ベース紙34Bと、このベース紙34Bの上面に形成された粘着層34Cと、この粘着層34Cの上面を覆う剥離紙34Dとからなり、この剥離紙34Dは粘着シート34が矩形プレート12に装着された後、粘着層34Cから取り除かれる。ベース紙34Bの素材については特に制限されないが、ポリプレピン紙や蝋引紙のように粘着シート34の耐候性を十分に確保できるものが好ましい。
例えば、本実施形態では、粘着シート34は
図1に示されるように前述した底部材16の内面、即ち、該底部材16を形成する2枚の矩形プレート12にそれぞれ装着されている。
【0030】
更に、虫捕獲器はその内部に誘引源38が配置される。この誘引源38は捕獲対象の虫を誘引する効果のある物質ならば特に制限はないが、例えば性フェロモン、集合フェロモン及び食品由来の誘引物質を含むことができる。また、これら誘引物質の形態や誘引物質を納める容器の形態にも特に制限はないが、例えば、基材に誘引物資を塗布又は湿潤させ、揮発により誘引物質を放出させるような形態や、誘引物質が放出される開口や毛細管現象を利用して誘引物質を放出させる形態を有した容器等が挙げられる。
【0031】
また、通気性を有したパウチと、該パウチ内に収容された誘引剤とからなり、この誘引剤に湿潤させた誘引物質がパウチを通じて放出させる形態であってもよく、誘引物質は例えば捕獲対象の虫に応じた性フェロモンである。
本実施形態では、誘引源38は底部材16上の粘着シート34、即ち、その粘着層34Cの中央に貼り付けることで(
図7参照)、虫捕獲器内に配置される。このように誘引源38が粘着シート34に取り付けられれば、虫捕獲器内に誘引源38のための専用の配置箇所や、配置のための手段を設ける必要はない。
【0032】
更に、本実施形態の虫捕獲器を吊り下げて設置可能とするため、各支持体10にはその頂部や、左右の角部に孔40がそれぞれ形成され、これら孔40は吊り下げのためのワイヤやフックの挿通に使用される。
上述の一実施形態の虫捕獲器は、支持体10が五角形であることに起因して、その前後のエンド開口14のみならず、その左右にもサイド開口20を備えているので、誘引源38が放出する誘引成分に誘引された虫は虫捕獲器の前後及び左右のそれぞれから虫捕獲器内に進入でき、虫の誘い込み方向を増やすことができる一方、虫の進入を許容する虫捕獲器全体の開口面積をも大幅に増大可能となる。
【0033】
しかも、虫捕獲器内に進入する虫は粘着シート34上の誘引源38を目掛けて飛翔又這うことから、虫の捕獲に粘着シート34における粘着層34Cの全域を使用できるため、虫の捕獲率を向上させることができる。
更に、驚くべきことには、上述の構成を有する5角形の支持体10において、左右の上辺部10Uがなす内角αを鈍角とすることで、虫の捕獲率が大幅に向上することが確認された(後述の虫捕獲試験2)。このように本実施形態の虫捕獲器は高い捕獲率を達成することができる。
【0034】
一方、サイド開口20は(
図2参照)は、虫捕獲器内に管理者の手が差し入れ可能な高さHを有しているので、粘着シート34の回収や取り換えの際、粘着シート34に対してエンド開口14及びサイド開口20からのアクセス、つまり、手の差し入れが可能となり、粘着シート34の交換作業のみならず、粘着シート34上への誘引源38の配置もまた容易となる。この結果、虫捕獲器の維持管理や、捕獲した虫の回収にかかる負担を大幅に低減可能となる。
【0035】
ところで、虫捕獲器の開口面積が広くなれば、捕獲された虫を摂食しようとして、小型鳥類等が虫捕獲器内に侵入する可能性が生じる。ここで、本実施形態の虫捕獲器は、支持体10にて、その左右の上辺部10Uがなす内角αが鈍角であるため、左右の上辺部10Uを2辺とする二等辺三角形を考えたとき、該二等辺三角形の底辺は支持体10の底辺部10Bよりも長くなる。つまり、五角形の形態をなす虫捕獲器によれば、上方或いは水平方向から虫捕獲器内への小型鳥類の侵入を抑制でき、小型鳥類は虫捕獲器内に侵入し難くなる。その結果、小型鳥類が粘着シート34に誤ってトラップされる自体を減少させることができる。
【0036】
また、
図2に示されるように屋根部材18を形成する矩形プレート12はその長手軸線回りに独立して回転できるから、虫捕獲器の屋根にも屋根開口を確保できるばかりでなく、該屋根開口の向きを矩形プレート12の回転角に従い任意に設定できる。つまり、本実施形態の虫捕獲器は、捕獲対象の虫の生態及び誘引物質の特性に対応した開口のアレンジを容易に達成することができる。
【0037】
例えば、
図9(A)は虫捕獲器における開口の基本アレンジを示し、この基本アレンジは、
図1での場合と同様に前述した一対ずつのエンド及びサイド開口14,20を有する。
図9(B),(C)は基本アレンジに対する開口の変形レンジ1,2をそれぞれ示す。
図9(B)の変形アレンジ1では、屋根部材18を形成する2枚の矩形プレート12のうち、下側の矩形プレート12のみが底部材16と同様に水平姿勢として配置されている。このような変形アレンジ1の虫捕獲器はその屋根に水平方向に開口した屋根開口42を左右に有する一方、サイド開口20の高さHを増加させる。
【0038】
一方、
図9(C)の変形アレンジ2では、屋根部材18を形成する2枚の矩形プレート12が全て垂直姿勢として配置されている。このような変形アレンジ2の虫捕獲器はその屋根に鉛直方向に開口した3個の屋根開口44を形成する一方、サイド開口20の高さHを減少させる。
このように開口のアレンジを変化させることにより、その種類によって拡散範囲や誘引効果等が異なるような如何なる誘引物質にも適切に対応可能となる。例えば、揮発性が低く拡散範囲も狭いフェロモンを誘引物質として使用する場合には、
図9(c)の変形アレンジのように虫捕獲器の屋根にも開口を設けることで、誘引物質の拡散方向が増えることで、誘引効果を向上させることができる。
【0039】
また、開口のアレンジを改変することで、様々な設置場所の条件にも本実施形態の虫捕獲器は対応可能となる。例えば、開口の基本アレンジの場合、屋根部が大きく確保されるため、粘着シート34への埃等の付着に起因した捕獲効果の低下を防止できる。このように本実施形態の虫捕獲器は、その設置条件を考慮して最適な開口のアレンジを選択することができる。
以上のように本実施形態の虫捕獲器によれば、捕獲対象の虫の生態や誘引物質の種類、設置条件に応じた多様な形態で虫の捕獲が可能となる。
【0040】
また、本発明は上述の組立式虫捕獲器のための組立キットをも提供する。詳しくは、本発明の組立キットは、前述の[課題を解決するための手段]の欄にて記載された何れかの組立式虫捕獲器(請求項1〜6)の構成要素のうち、粘着シート及び誘引源を除いた構成要素、即ち、一対の支持体、底部材及び左右の屋根部材を含む。
【0041】
次に、本実施形態の虫捕獲器が高い捕獲率を達成することを検証するため、以下の虫捕獲試験1,2を実施した。
(虫捕獲試験1):
捕獲対象:シバツトガ
実施例1の虫捕獲器:開口の基本アレンジ且つ105°の内角αを有する
図1の虫捕獲器
比較例1の虫捕獲器:正三角形の支持体を備え、周囲の三面が全て2枚の矩形プレート12で形成された虫捕獲器(例えば、特開2012-231733号の
図2参照)
誘引源の誘引剤:シバツトガの雄の性フェロモン(富士フレーバー株式会社製シバツトガ用フェロモン)
【0042】
試験手順:
(i);実施例1及び比較例1の虫捕獲器をゴルフコースの盛り上がった畔部分に10mの間隔を存したP1,P2位置にそれぞれ三日間設置
(ii);この後、実施例1及び比較例1の虫捕獲器をそれぞれ回収し、捕獲されたシバツトガを個別に計数
(iii);粘着シート及び誘引源を交換した実施例1及び比較例1の虫捕獲器を前回とは逆、即ち、P2,P1位置に三日間設置
(iv);この後、実施例1及び比較例1の虫捕獲器をそれぞれ回収し、捕獲されたシバツトガを個別に計数し、1回の試験手順を終了
(v);(i)〜(iv)の試験手順(2回ずつ計数)を2回繰り返し、実施例1及び比較例1毎に各試験手順での捕獲個体数を集計
【0043】
ここでの集計結果を以下の表1に示す。
【表1】
表1から明らかなように、実施例1の虫捕獲器の捕獲個体数は比較例1の虫捕獲器に比べて多く、このことは、実施例1の五角形の虫捕獲器の捕獲率が比較例1の三角形の虫捕獲器に比べて優れていることを示す。
【0044】
(虫捕獲試験2:)
捕獲対象:シバツトガ
実施例1の虫捕獲器:前述と同一
比較例1の虫捕獲器:前述と同一
比較例2の虫捕獲器:実施例1とは内角αのみが相違し、この場合の内角αは90°
誘引源の誘引剤:前述の同一
【0045】
試験手順:
(i);実施例1及び比較例1,2の虫捕獲器をゴルフコースの盛り上がった畔部分に5mの間隔を存したP3,P4,P5位置にそれぞれ三日間設置
(ii);この後、実施例1及び比較例1,2の虫捕獲器をそれぞれ回収し、捕獲されたシバツトガを個別に計数
(iii);粘着シート及び誘引源を交換した実施例1及び比較例1,2の虫捕獲器を前回とは異なる位置にそれぞれ三日間設置
(iv);この後、実施例1及び比較例1,2の虫捕獲器をそれぞれ回収し、捕獲されたシバツトガを個別に計数
(v);(iii),(iv)の操作を繰り返し、実施例1及び比較例1,2の虫捕獲器がP3,P4,P5位置の全てに設置され且つ捕獲したシバツトガが計数されたとき、1回の試験手順を終了。
(vi);(i)〜(v)の試験手順を10回繰り返し、捕獲したシバツトガの総数を個別に集計
【0046】
ここでの集計結果を以下の表2に示す。
【表2】
表2から明らかなように、実施例1の虫捕獲器(α=105°)は比較例1,2の虫捕獲器に比べて多くのシバツトガを捕獲し、また、比較例2の虫捕獲器(α=90°)は比較例1の虫捕獲器(α=60°)に比べて多くのシバツトガを捕獲している。このことは虫捕獲器における屋根の角度、即ち、内角αが虫の捕獲率に大きく影響することを示し、虫の捕獲率を高めるには、内角αは鈍角であるのが好ましい。
【0047】
本発明は上述の一実施形態に制約されるものではない。
例えば、粘着シート34は底部材16を形成する矩形プレート12のみならず、屋根部材18を形成する少なくとも1つの矩形プレートの内面に装着されていてもよい。
また
、本発明の虫捕獲器が誘引源の選択により、シバツトガ以外の害虫の捕獲に同様に使用できることは言うまでもない。