特許第6289203号(P6289203)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6289203金型離型回復用樹脂組成物およびそれを用いた金型離型回復方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6289203
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】金型離型回復用樹脂組成物およびそれを用いた金型離型回復方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/56 20060101AFI20180226BHJP
   C08L 9/02 20060101ALI20180226BHJP
   C08K 5/20 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
   B29C33/56
   C08L9/02
   C08K5/20
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-65224(P2014-65224)
(22)【出願日】2014年3月27日
(65)【公開番号】特開2015-186877(P2015-186877A)
(43)【公開日】2015年10月29日
【審査請求日】2016年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004592
【氏名又は名称】日本カーバイド工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉村 勝則
(72)【発明者】
【氏名】野村 弘明
(72)【発明者】
【氏名】福西 陽一
【審査官】 今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−159019(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/042199(WO,A1)
【文献】 特開2006−225481(JP,A)
【文献】 特開2009−120691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/56
C08K 5/20
C08L 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリロニトリルの含有量が1質量%以上50質量%以下である合成ゴムと、加硫剤と、前記合成ゴム100質量部に対して、含有量が1質量部以上50質量部以下である不飽和脂肪酸アミドと、を含む金型離型回復用樹脂組成物。
【請求項2】
前記不飽和脂肪酸アミドが、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ネルボン酸アミドからなる群より選ばれる少なくとも一つである請求項1に記載の金型離型回復用樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1〜のいずれか1項に記載の金型離型回復用樹脂組成物を用いた金型離型回復方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型離型回復用樹脂組成物およびそれを用いた金型離型回復方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂およびポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂による集積回路等の封止成形物の成形時、成形を続けると金型内部表面に汚れが発生する。そのまま連続して成形を続けようとしても、封止成形物の表面が汚れたり、封止成形物が金型表面に付着したりして封止成形物の成形作業が続けられなくなることが多々あった。そのため、金型表面を定期的に清掃する必要があり、封止成形物の成形を数百ショットする毎に金型清掃用組成物を数ショット成形することで金型表面の清掃を行っている。
【0003】
さらに、封止成形物の成形において、金型清掃用組成物を使用して清掃した直後は、金型の表面が清浄であるため、金型内部表面へ封止成形物が貼りつきやすい。封止成形物が貼りつくことにより封止成形物の外観が不良になることを抑制するため、金型清掃後に金型離型回復用樹脂組成物を成形することで金型内部表面に離型性を付与する方法が提案されている。金型内部表面に離型性を付与した後に成形する封止成形物は、金型内部表面へ封止成形物が貼りつかないため、外観が良好である。
通常、この金型離型回復用樹脂組成物の成形における金型温度、金型圧力等の成形条件は、金型離型回復作業前に行う金型清掃用組成物を用いた成形条件および金型離型回復作業後に行う封止成形物を用いた成形条件と同一である。
【0004】
このような金型離型回復用樹脂組成物は、特許文献1および特許文献2に記載されているように、合成ゴムおよび合成樹脂の少なくとも一方と離型剤と加硫剤とを添加したものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-149358号公報
【特許文献2】特開2007-238731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の金型離型回復用樹脂組成物は、金型内部表面の全面に均一に離型性を与えにくいという問題があった。
たとえば特許文献1に記載の金型離型回復用樹脂組成物は、エチレン−プロピレン−ターポリマーゴムと離型剤としてポリエチレン系ワックスまたはアミド系ワックス等とを含む。この組成物は、組成物自身の硬度および強度が不足し、金型離型回復作業時に組成物が過度に流動し、樹脂組成物が金型に十分充填できず、金型を加圧しても組成物に均一に圧力がかからないため、金型内部表面の全面に離型性を均一に付与することが難しい。
また、特許文献2に記載の金型離型回復用樹脂組成物は、エポキシ樹脂と離型剤としてカルナバワックスとを含む。この組成物は、エポキシ樹脂とカルナバワックスとの相溶性が悪く、組成物中への離型剤の分散が十分ではなく、金型離型回復作業を行うと金型内部表面の全面に離型性を均一に付与することが難しい。さらに、エポキシ樹脂を含むため、この組成物は、組成物自身の保存安定性が悪く、たとえば製造後に6か月が経過した樹脂組成物を用いた金型離型回復作業において、金型内部表面の全面に離型性を付与する性能が低下するという不具合がある。
【0007】
一般に金型離型回復用樹脂組成物は、金型離型回復作業前に用いる金型清掃組成物よりも多くの離型剤を含む。
従来の金型離型回復用樹脂組成物に離型剤を多く含ませることで、金型内部表面への離型性の付与を改良することはできる。しかしながらこのような離型剤を多く含む金型離型回復用樹脂組成物は、樹脂組成物自身の強度が著しく不足し樹脂組成物が脆くなり、金型離型回復作業後に成形金型から樹脂組成物を取り外す際に、樹脂組成物が割れたり金型内部表面へ樹脂組成物が貼りついたりという不具合があり、樹脂組成物の取り出しの作業性が著しく劣るため、実用に適さない。
本発明者は、金型離型回復用樹脂組成物が含む合成ゴムに、硬度と弾性とが共に優れるアクリロニトリルを含有する合成ゴムを用いることで、金型離型回復作業時に樹脂組成物が過不足なく流動し、金型内部表面の全面に均一に加圧できるようにすることで、金型内部表面の全面に離型性を均一に付与できると考えた。
しかしながら、アクリロニトリルを含有する合成ゴムは極性が高いため、従来金型離型回復用樹脂組成物に用いられている極性の小さいポリエチレン系ワックス等の離型剤との相溶性が悪いという問題がある。そのため、アクリロニトリルを含有する合成ゴムと離型剤とが樹脂組成物中に均一に分散できず、この樹脂組成物を用いた金型離型回復作業では金型内部表面の全面に離型性を均一に付与することが困難であった。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、金型内部表面の全面に離型性を均一に付与できる金型離型回復用樹脂組成物およびそれを用いた金型離型回復方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を達成するための具体的手段は、以下のとおりである。
(1)アクリロニトリルを含有する合成ゴムと、加硫剤と、不飽和脂肪酸アミドと、を含む金型離型回復用樹脂組成物である。
【0010】
(2)前記合成ゴムのアクリロニトリルの含有量が1質量%以上50質量%以下である(1)に記載の金型離型回復用樹脂組成物である。
【0011】
(3)前記不飽和脂肪酸アミドが、エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ネルボン酸アミドからなる群より選ばれる少なくとも一つである(1)または(2)に記載の金型離型回復用樹脂組成物である。
【0012】
(4)前記合成ゴム100質量部に対して、前記不飽和脂肪酸アミドの含有量が1質量部以上50質量部以下である(1)から(3)のいずれか一つに記載の金型離型回復用樹脂組成物である。
【0013】
(5)(1)から(4)のいずれか一つに記載の金型離型回復用樹脂組成物を用いた金型離型回復方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、金型内部表面の全面に離型性を均一に付与できる金型離型回復用樹脂組成物およびそれを用いた金型離型回復方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0016】
本明細書において、金型離型回復用樹脂組成物を単に樹脂組成物と称することがある。
また、「金型内部表面の全面」とは、成形金型により成形される封止成形物等の被成形物と接する領域の全面を意味する。
また、本明細書において、金型離型回復用樹脂組成物を用いた金型離型回復方法を金型離型回復作業と称することがある。
さらに、本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示す。組成物中の各成分の量は、特に断らない限り、各成分に複数の種類の物質が含まれる場合には複数の種類の物質を合計した量で表す。
【0017】
本発明の金型離型回復用樹脂組成物は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂およびポリイミド樹脂からなる群から選択される封止成形物の成形工程で発生する金型表面の汚れを取り除いた後に成形することで、金型内部表面の全面に離型性を均一に付与できる。そのため、本発明の樹脂組成物を成形した後に成形する封止成形物は、金型に貼りつかず、その外観が良好となる。
【0018】
(金型離型回復用樹脂組成物)
本発明の金型離型回復用樹脂組成物は、アクリロニトリルを含有する合成ゴムと、加硫剤と、不飽和脂肪酸アミドと、を含有する。
本発明の樹脂組成物が金型内部表面の全面に離型性を均一に付与できる効果を奏する理由は、以下のとおりである。
【0019】
樹脂組成物自身の強度および弾性が共に小さい金型離型回復用樹脂組成物を用いた場合、金型離型回復作業時に樹脂組成物が過度に流動するため、樹脂組成物が金型に十分に充填できず、金型を加圧しても樹脂組成物に均一に圧力がかかりにくい。そのため、樹脂組成物自身の強度および弾性が共に小さい樹脂組成物は、金型内部表面の全面に離型性を均一に付与することが困難である。
一方、樹脂組成物自身の強度および弾性が大きい金型離型回復用樹脂組成物を用いた場合、金型離型回復作業時に樹脂組成物が流動しにくいため、樹脂組成物が金型の細部まで充填できず、金型内部表面の全面に離型性を均一に付与することが困難である。
つまり、金型離型回復作業において、強度および弾性が共に適正な範囲である金型離型回復用樹脂組成物を用いる必要がある。
また、合成ゴムと離型剤とが十分に相溶していない金型離型回復用樹脂組成物を用いた場合、金型離型回復用樹脂組成物へ離型剤が十分に分散していないため、金型離型回復作業時に金型内部表面への離型性の付与が不均一となる。
本発明の樹脂組成物は、アクリロニトリルを含有する合成ゴムと特定の離型剤とを含むことで、樹脂組成物の強度および弾性が共に適正で金型離型回復作業時に樹脂組成物の流動性が過不足なく、かつ樹脂組成物が含む合成ゴムと離型剤とが十分に相溶していることで金型離型回復用樹脂組成物へ離型剤が十分に分散しているため、金型内部表面の全面に離型性を均一に付与できる。
【0020】
(合成ゴム)
本発明の樹脂組成物に用いることができるアクリロニトリルを含有する合成ゴムは、構成単位にアクリロニトリルを含む合成ゴムである。このような合成ゴムは、たとえばアクリロニトリルと他の単量体との共重合体が挙げられる。このような共重合体は、たとえばアクリロニトリルと1,3−ブタジエンとの共重合体が挙げられる。
なお、本明細書において、アクリロニトリルを含有する合成ゴムをニトリルゴムと称することがある。
一般にニトリルゴムは、高弾性という特徴を有する。本発明の樹脂組成物は、ニトリルゴムを含むため弾性が十分であり、金型離型回復作業時に樹脂組成物が過度に流動せず、成形金型内部の細部まで充填することができ、したがって金型内部表面の全面に離型性を均一に付与できる。
また、一般にニトリルゴムは、強度が大きいという特徴を有する。本発明の樹脂組成物は、ニトリルゴムを含むため強度が十分であり、金型離型回復作業時に樹脂組成物を金型から取り外す際の作業性が良好であるという特徴を有する。
一般に離型剤を多く含む金型離型回復用樹脂組成物は強度が低下する。
金型離型回復用樹脂組成物の強度が不足すると、金型離型回復作業時に樹脂組成物が脆くなることで割れ等が生じたり、金型内部表面へ樹脂組成物が貼りついたりという不具合が起きる。
本発明の樹脂組成物は、ニトリルゴムを含むため、離型剤である不飽和脂肪酸アミドを多量に含んでも樹脂組成物自身の強度および弾性を十分に保つ。したがって、金型離型回復作業時に樹脂組成物が過度に流動せず、金型内部の細部まで均一に充填できるため、本発明の樹脂組成物は、金型内部表面の全面に離型性を均一に付与できる。
【0021】
本発明に用いることができるアクリロニトリルを含有する合成ゴムは、ニトリルゴム以外の合成ゴムを含んでもよい。ニトリルゴム以外の合成ゴムを含むことにより、本発明の樹脂組成物は、樹脂組成物自身の強度と弾性との調整が容易となり、樹脂組成物の流動性が適正となることで金型離型回復作業時に金型内部の細部まで樹脂組成物を充填することができ、金型内部表面の全面に離型性をより均一に付与できる。
本発明の樹脂組成物に用いることができるニトリルゴム以外の合成ゴムは、エチレン‐プロピレンゴム、エチレン‐プロピレン‐ジエンゴム、ブタジエンゴム、天然ゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、スチレンゴム、イソプレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、水素化ニトリルゴム等が挙げられる。特にニトリルゴムとの相溶性が高く、樹脂組成物の強度を保つことができるため、ブタジエンゴム、スチレンゴムを好ましく用いることができる。
【0022】
本発明の樹脂組成物に用いることができる合成ゴムのアクリロニトリルの含有量は、1質量%以上50質量%以下が好ましく、3質量%以上48質量%以下がより好ましく、5質量%以上45質量%以下がさらに好ましい。
本明細書において、合成ゴムのアクリロニトリルの含有量とは、樹脂組成物が含む合成ゴムの総量に対するアクリロニトリル由来の成分の含有量を意味する。たとえば、樹脂組成物が、アクリロニトリル由来の成分が20質量%であるニトリルゴム5質量部と、ブタジエンゴム95質量部とを含む場合、アクリロニトリルの含有量は1質量%である。
前記合成ゴムのアクリロニトリルの含有量が1質量%以上であれば、本発明の樹脂組成物の強度が十分高くなり、金型離型回復作業時に樹脂組成物が過度に流動せず、金型内部表面の全面に圧力が均一にかかることで樹脂組成物が成形金型内部の細部まで充填し、金型内部表面の全面に離型性をより均一に付与できるため好ましい。さらに、樹脂組成物が含む合成ゴムと離型剤とが相溶することで金型離型回復用樹脂組成物への離型剤の分散が十分となり、金型内部表面の全面に離型性をより均一に付与できるため好ましい。また、50質量%以下であれば、樹脂組成物の弾性が適正であり、金型離型回復作業時に樹脂組成物が十分流動し、樹脂組成物が成形金型内部の細部まで充填し、金型内部表面の全面に離型性をより均一に付与できるため好ましい。
【0023】
なお、前記合成ゴムのアクリロニトリルの含有量は、JIS K6384に従って測定することで求めることができる。
【0024】
本発明の樹脂組成物に特に好適に用いることができるニトリルゴムは、アクリロニトリルとブタジエンとの共重合体である。このような共重合体は、アクリロニトリルの含有量が25質量%未満の低ニトリルタイプ、25質量%〜30質量%の中ニトリルタイプ、30質量%〜35質量%の中高ニトリルタイプ、35質量%〜42質量%の高ニトリルタイプ、42質量%を超える極高ニトリルタイプが挙げられる。
樹脂組成物の調製時の混練加工性が優れるため、本発明の樹脂組成物は、中高ニトリルタイプのニトリルゴムを特に好適に用いることができる。
【0025】
本発明の樹脂組成物に用いることができるニトリルゴムは、低ニトリルタイプの共重合体であるJSR社製 商品名N250SL、中ニトリルタイプであるJSR社製 商品名N241、中高ニトリルタイプであるJSR社製 商品名N239SV、高ニトリルタイプであるJSR社製 商品名NN220S、極高ニトリルタイプであるJSR社製 商品名215SLがそれぞれ挙げられる。
【0026】
(加硫剤)
本発明の樹脂組成物に用いることができる加硫剤は、合成ゴムを架橋可能なものであれば特に制約はなく、また、硫黄を含んでいなくてもよい。
なお、本明細書において加硫とは、硫黄を用いて合成ゴムを架橋することおよび過酸化物を用いて合成ゴムを架橋することの両方を包含する概念である。
【0027】
本発明の樹脂組成物に好適に用いることができる加硫剤は、有機過酸化物である。本発明の樹脂組成物が有機過酸化物を含む場合、金型内部表面に腐食が起きず、また金型離型回復作業時に短時間で離型に必要な合成ゴムの架橋が十分進むことで樹脂組成物を容易に金型から除去することができるため好ましい。
本発明の樹脂組成物に好適に用いることができる有機過酸化物は、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−t−アミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドおよび2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等のジアルキルパーオキサイド類、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレートおよび2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール類等が挙げられる。
本発明の樹脂組成物に用いることができる加硫剤は、樹脂組成物の設計に合わせて、1種単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。
【0028】
本発明に好適に用いることができる加硫剤は、日油社製パークミルD-40、日油社製パーヘキサ25B−40等が挙げられる。
【0029】
本発明の樹脂組成物における加硫剤の含有量は、樹脂組成物が含む合成ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上6質量部以下であることが好ましく、1質量部以上5質量部以下であることがより好ましく、2質量部以上4質量部以下であることが更に好ましい。前記加硫剤の含有量が、前記合成ゴム100質量部に対して0.1質量部以上であれば、樹脂組成物を用いた金型離型回復作業時に加硫が十分に進み、樹脂組成物が脆くならず、作業性が良好であるため好ましい。また加硫剤の含有量が6質量部以下であれば、金型離型回復作業時に臭気の発生が抑制できるため好ましい。
【0030】
(不飽和脂肪酸アミド)
本発明の樹脂組成物に用いることができる不飽和脂肪酸アミドは、金型内部表面に離型性を付与する、いわゆる離型剤として作用する。
不飽和脂肪酸アミドとは、その分子構造において二重結合または三重結合を有するアミド化合物である。不飽和脂肪酸アミドは、一般に、飽和脂肪酸アミドと比べて融点が低いという特徴を有する。通常、金型離型回復作業時の金型の表面温度は、90℃〜200℃である。そのため、不飽和脂肪酸アミドを含む樹脂組成物を用いた金型離型回復作業において、不飽和脂肪酸アミドは樹脂組成物中で十分に溶融できる。融点が低い不飽和脂肪酸アミドを含む樹脂組成物は、金型離型回復作業時に不飽和脂肪酸アミドが十分に溶融するため、金型内部表面の全面に離型性をより均一に付与することができる。
【0031】
本発明の樹脂組成物に用いることができる不飽和脂肪酸アミドは、好ましくはエルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ネルボン酸アミド等のω-9不飽和脂肪酸アミドからなる群より選ばれる少なくとも一つである。
これらの不飽和脂肪酸アミドの融点は、分子構造において同じ炭素数の飽和脂肪酸アミドの融点と比べ低いという特徴を有する。たとえば、炭素数が22の不飽和脂肪酸アミドであるエルカ酸アミドの融点は79〜81℃であり、一方、炭素数が22の飽和脂肪酸アミドであるベヘン酸アミドの融点は110〜113℃である。
【0032】
本発明の樹脂組成物に好適に用いることができる不飽和脂肪酸アミドは、日油社製アルフローP10、日油社製アルフローE10等が挙げられる。
【0033】
本発明の樹脂組成物に用いることができる不飽和脂肪酸アミドの含有量は、樹脂組成物が含む合成ゴム100質量部に対して1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、3質量部以上40質量部以下であることがより好ましい。前記不飽和脂肪酸アミドの含有量が1質量部以上であれば、離型剤の量が十分であるため金型内部表面の全面への離型性が十分付与できるため好ましい。また、50質量部以下であれば、樹脂組成物の強度および弾性が不足せず、金型離型回復作業時に樹脂組成物が過度に流動せず、金型の加圧時に樹脂組成物に均一に圧力がかかり樹脂組成物が金型内部の細部に充填することで、金型内部表面の全面に離型性がより均一に付与できるため好ましい。
【0034】
樹脂組成物が含むことができる合成ゴムおよび不飽和脂肪酸アミドにおいて、これらの溶解度パラメーターの差が小さい場合、合成ゴムと離型剤との相溶性が良好となる。
本発明の樹脂組成物に用いることができるニトリルゴムの溶解度パラメーターの好ましい範囲は8.7〜10.8である。また、本発明の樹脂組成物が含むことができる不飽和脂肪酸アミドの溶解度パラメーターの好ましい範囲は、9.5〜10である。
本発明の樹脂組成物は、樹脂組成物が含むニトリルゴムと離型剤との溶解度パラメーターの差が小さく、ニトリルゴムと離型剤とが十分に相溶し、樹脂組成物への離型剤の分散が十分となり、金型内部表面の全面に離型性を均一に付与できる。
なお、従来の金型離型回復用樹脂組成物に用いられていた合成ゴムの溶解度パラメーターは、エチレン‐プロピレンゴムが約7.9、ブタジエンゴムが約8.4である。また、従来の金型離型回復用樹脂組成物に用いられていた離型剤であるポリエチレンワックスの溶解度パラメーターは、約8.0である。ニトリルゴムとポリエチレンワックスとを含む金型離型回復用樹脂組成物を作製した場合、溶解度パラメーターの値の差が大きいため、これらが十分に相溶できず、樹脂組成物への離型剤の分散が不十分となり、金型離型回復作業時に金型内部表面の全面に離型性を均一に付与することが難しい。
【0035】
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、前記不飽和脂肪酸アミド以外の離型剤を併用することができる。本発明に用いることができる前記不飽和脂肪酸アミド以外の離型剤は、ポリオレフィンタイプの離型剤であるLICOWAX PED521等が挙げられる。
【0036】
(その他の成分)
本発明の樹脂組成物は、樹脂組成物の強度を得るため、無機充填剤を含むことが好ましい。前記無機充填剤は特に制限されず、通常の金型離型回復用樹脂組成物に好適に用いられる無機充填剤から適宜選択することができる。
本発明に用いることができる無機充填剤は、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化チタン等が挙げられる。特に樹脂組成物にシリカおよび酸化チタンを用いることで、樹脂組成物が金型離型回復作業時に金型表面を傷つけないため好ましい。
【0037】
本発明に用いることができる無機充填剤の粒径は、特に制限されないが、金型離型回復作業時に樹脂組成物が十分に流動することで金型内部表面の全面に離型性を均一に付与できるため、0.1μm〜20μmの範囲であることが好ましく、5μm〜18μmの範囲であることがより好ましい。
なお、前記粒径は、コールターカウンター(ベックマン・コールター製)にて、アパーチャー径70μmを使用して測定される体積平均粒子径である。
【0038】
本発明の樹脂組成物は、樹脂組成物が含む合成ゴム100質量部に対し前記無機充填剤を10質量部以上100質量部以下の範囲で含むことが好ましく、30質量部以上60質量部以下の範囲で含むことがより好ましい。10質量部以上であれば、樹脂組成物の強度が適正となり、金型離型回復作業時に樹脂組成物が過度に流動せず、金型内部の細部まで十分に充填し、金型内部表面の全面に離型性をより均一に付与することができるため好ましい。また、100質量部以下であれば、樹脂組成物の弾性が適正となり、金型離型回復作業時に樹脂組成物が十分に流動し、金型内部の細部まで樹脂組成物が充填し、金型内部表面の全面に離型性をより均一に付与することができるため好ましい。
【0039】
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、加硫助剤、加硫促進剤、加硫促進助剤等の添加剤を更に含むことができる。
加硫助剤とは、加硫剤と併用し、加硫反応の反応率を向上させる添加剤である。
加硫促進剤とは、加硫剤と併用し、加硫反応速度を著しく促進し、加硫時間を短縮し、加硫温度を低下させ、さらに加硫剤の添加量を低減させる添加剤である。
加硫促進助剤とは、加硫促進剤と併用することでその化学作用により加硫促進効果を向上させる添加剤である。
本発明の樹脂組成物に好適に用いることができる加硫助剤は、アクリル酸モノマー、硫黄等が挙げられる。
また、加硫促進剤は、ジフェニルグアニジン、トリフェニルグアニジン等のグアニジン系、ホルムアルデヒド−パラトルイジン縮合物、アセトアルデヒド−アニリン反応物等のアルデヒド−アミン系およびアルデヒド−アンモニア系、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジル・ジスルフィド等のチアゾール系等が挙げられる。
さらに、加硫促進助剤は、マグネシア、リサージ、石灰等が挙げられる。
【0040】
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、弁柄、紺青、鉄黒、群青、カーボンブラック、リトポン、チタンイエロー、コバルトブルー、ハンザイエロー、キナクリドンレッド等の無機または有機の顔料類を含むことができる。
【0041】
本発明の樹脂組成物は、必要に応じて、滑剤、可塑剤、粘着付与剤、発泡剤、スコーチ防止剤、水や各種有機溶剤等の溶剤を更に含むことができる。これらは金型形状や封止成形物の物性等に応じて適宜選択される。
【0042】
本発明の樹脂組成物の調製方法は特に限定されるものではなく、公知の方法を採用することができる。
本発明の樹脂組成物は、たとえば、以下の方法により調製することができる。
アクリロニトリルを含有する合成ゴムと、加硫剤と、不飽和脂肪酸アミドと、各種添加剤と、をジャケット付き加圧型ニーダーに入れて混練し、混練物を得る。次いで、得られた混練物を加圧ロールに通すことでシート状に調製する。
なお、上記加圧型ニーダーに代えて、バンバリーミキサー、ロールミキサー等を用いることができる。
また、本発明の樹脂組成物の形状は、シート状以外に、使用する金型に応じて適宜選択することができる。
さらに、本発明の樹脂組成物をシート状に調製する場合、この厚みは、特に限定されるものではないが、3mm〜10mmの範囲が例示できる。
【0043】
(用途)
本発明の樹脂組成物は、金型内部表面の汚れを金型清掃用組成物により取り除いた後の金型内部表面に離型性を付与することができる。本発明の樹脂組成物を用いる金型離型回復作業後に成形する封止成形物は、金型内部表面へ貼りつくことがなく、成形不良、外観不良等がない。
本発明における成形金型は、光学部材封止用金型、半導体材料封止用金型、ゴム成形金型等が挙げられる。具体的には、発光ダイオード(LED)用の封止用金型、半導体パッケージ用の封止用金型、ゴムパッキン成形用金型、熱硬化性樹脂部品成形金型等が挙げられる。本発明の樹脂組成物による金型離型回復作業に適した成形金型は、LED用の封止用金型、半導体パッケージ封止用金型等である。
【0044】
封止成形物に用いられる樹脂の種類は、特に制限されるものではなく、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂およびポリイミド等が挙げられる。
【0045】
本発明の樹脂組成物は、トランスファータイプおよびコンプレッションタイプのいずれの金型離型回復方法にも適用することができる。作業性を向上し、金型離型回復作業時間を短縮できるため、本発明の樹脂組成物は、コンプレッションタイプへの適用が好ましい。
【0046】
本発明の樹脂組成物を用いた金型離型回復作業時の金型温度は、金型離型回復作業前の金型清掃時および金型離型回復作業後に成形する封止成形物のそれぞれの物性に応じて適宜選択される。封止成形物において、成形する樹脂がエポキシ樹脂の場合には、金型温度の一例は約170℃である。
【0047】
(金型離型回復方法)
本発明の金型離型回復方法は、本発明の金型離型回復用樹脂組成物を、成形金型の内部表面に戴置する工程(以下、「戴置工程」ともいう)と、金型離型回復用樹脂組成物が付与された金型を加熱する工程(以下、「加熱工程」ともいう)とを有する。金型離型回復方法は、必要に応じてその他の工程を有していてもよい。
【0048】
(戴置工程)
戴置工程は、本発明の金型離型回復用樹脂組成物を金型内部表面に戴置する工程である。本発明の樹脂組成物を、成形金型の内部表面に戴置する方法としては、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用することができる。具体的には、コンプレッション成形する方法、トランスファー成形する方法等の公知の方法によって行うことができる。
本発明の樹脂組成物を金型内部表面に戴置する際には、成形金型キャビティ部分の一部の表面を覆うように戴置しても、全部の表面を覆うように戴置してもよいが、金型内部表面の全面に離型性をより均一に付与することができるため、全部の表面を覆うように組成物を戴置することがより好ましい。
【0049】
(加熱工程)
加熱工程は、金型内部表面に戴置した本発明の金型離型回復用樹脂組成物を加熱する工程である。本発明の樹脂組成物は、加熱工程において、成形金型に加熱とともに加圧することにより圧力がかかり、成形金型内部の細部まで充填される。
加熱方法および加熱条件(温度、時間、回数、圧力等)は、特に限定されるものではなく、たとえば戴置工程の前に用いる金型清掃用組成物および加熱工程後に成形する封止成形物の樹脂の種類、さらに本発明の金型離型回復用樹脂組成物の種類に応じて、公知の方法および条件を適宜選択することができる。
【0050】
加熱工程においては、たとえば、簡便性の観点から、戴置工程の前後に行う成形条件と同一の条件で、金型離型回復作業を行うことが好ましい。
加熱工程における金型の温度は、90℃〜200℃であることが好ましく、160℃〜190℃であることがより好ましく、170℃〜180℃であることがさらに好ましい。
【0051】
加熱時間は、金型離型回復用樹脂組成物が十分に加硫し、かつ、金型内部表面の全面に均一に行きわたれば、特に限定されるものではないが、150秒〜500秒であることが好ましく、180秒〜360秒であることがより好ましい。加熱時間が150秒以上であれば、樹脂組成物の加硫が十分に進行し、金型離型回復作業時に樹脂組成物が内部金型表面に貼りつくことを抑制できる。また、500秒以下であれば、金型離型回復作業の作業性が良好となる。
【0052】
戴置工程および加熱工程は、複数回繰り返してもよい。戴置工程および加熱工程の繰り返し回数(以下、「ショット数」ともいう)は、1回〜5回が好ましく、1回〜2回がより好ましい。
【0053】
(その他の工程)
本発明の金型離型回復方法は、必要に応じてその他の工程を設けてもよい。その他の工程としては、予熱工程、予備加圧工程等が挙げられる。
【実施例】
【0054】
以下本発明を実施例により更に具体的に説明する。ただし、本発明は、その主旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」および「%」は質量基準である。
【0055】
(金型離型回復用樹脂組成物)
[実施例1]
3000mlのジャケット付き加圧型ニーダー中に、ニトリルゴム(JSR株式会社製 N239SV、ニトリルゴム中のアクリロニトリル含有量 34質量%)254gと、ブタジエンゴム(JSR株式会社製、商品名:JSR BR01)1016gとを添加し、冷却しながら約3分間加圧混練した。混合生地の温度は約80℃となった。次いで離型剤としてエルカ酸アミド(株式会社日油製、商品名: アルフロー P−10)127g、ポリエチレンワックス(株式会社クラリアント製、商品名:LICOWAX PED521)254g、シリカ(東ソー・シリカ株式会社製、商品名:Nipsil LP)508g、酸化チタン(石原産業株式会社製、商品名:CR−80)63.5g、カーボンブラック(三菱化学社製、商品名ダイヤブラックSA)2.3g、滑剤としてステアリン酸12.7g、を加えて約3分間混練した。最後に加硫剤として2,5-ジメチル-2,5ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(株式会社日油製、商品名:パーヘキサ 25B−40、純度40%)2.54gを加えて引続き約1分間混練した。この間の混練物の温度が100℃を超えないように調節した。得られた混練物を速やかに加圧ロールに通し、シート状に加工すると共に25℃以下に冷却することにより、厚さ6mmのシート状の金型離型回復用樹脂組成物を得た。
【0056】
(実施例2〜12、比較例1〜5)
表1に示した配合にした以外は、実施例1の樹脂組成物と同様にして各実施例および各比較例の金型離型回復用樹脂組成物を得た。
【0057】
【表1】
【0058】
[評価]
上記により得た金型離型回復用樹脂組成物について、以下のようにして金型内部表面の全面への離型性付与の均一性と、樹脂組成物の強度と、金型離型回復作業後に樹脂組成物の成形金型からの取り外し時の作業性とについて評価を行った。評価結果は表1に示した。いずれの評価も成形金型の内部表面温度が175℃の条件でおこなった。なお、表1に示した各組成における単位は、質量部であり、また、表中の「−」は未配合であることを示す。
【0059】
〔離型性付与の均一性の評価試験〕
封止成形物として市販のビフェニル系エポキシ樹脂成形材料(住友ベークライト社製、商品名:EME−7351T)を用い、先端に超硬合金製のチップが付いたプランジャーを備えたPDIP−14L(8ポット−48キャビティ)の金型で500ショットのコンプレッション成形をおこなった。封止成形物の成形を500ショット行った後に、金型内部表面に汚れが生じたことを目視で確認した。
次いで、この成形金型に、金型清掃用組成物(日本カーバイド工業株式会社製 商品名:ニカレットRCC IDグレード)を用いて175℃で繰り返しコンプレッション成形し、金型内部表面の汚れを除去した。
その後、金型離型回復用樹脂組成物を用いて175℃でコンプレッション成形することで、金型内部表面への離型性の付与をおこなった。
次いで、前記ビフェニル系エポキシ樹脂成形材料を成形し、金型離型回復作業後に最初におこなった封止成形物の表面を目視で確認することで、金型離型回復用樹脂組成物の離型性付与の均一性を評価した。この封止成形物の表面に光沢ムラがないものを良好、光沢ムラがあるものを不可とそれぞれ評価した。
【0060】
〔樹脂組成物の強度の評価試験〕
樹脂組成物の強度を以下のように評価した。金型離型回復作業後、樹脂組成物を成形金型から取り外した。次に、取り外した樹脂組成物の長手方向の両端を両手でもち、180度折り曲げることで評価をおこなった。樹脂組成物が割れないものを優、折り曲げた部位に若干の亀裂が発生するが、180度折り曲げることができるものを良、180度折り曲げることができるが深い亀裂が発生するものを可、樹脂組成物が割れる等180度折り曲げることができないものを不可とそれぞれ評価した。
なお、樹脂組成物の強度を評価する樹脂組成物の大きさは約17.5cm×4.0cm、厚み約0.3cmである。
【0061】
〔成形金型からの取り外し時における作業性の評価試験〕
樹脂組成物の成形金型からの取り外し時における作業性を以下のように評価した。金型離型回復作業後、金型離型回復用樹脂組成物に割れがなくかつ成形金型の上下面へ貼りつくことがないため作業性が優れるものを優、樹脂組成物に割れが生じるまたは成形金型の上下面に貼りつくことがあるがその程度が小さいものを良、作業性が若干低下するが許容できるものを可、樹脂組成物に割れが著しく生じるまたは成形金型の上下面へ貼りつくため成形金型を改めて清掃する必要があり離型回復の作業性が著しく悪いものを不可、とそれぞれ評価した。
【0062】
表1の結果より、本発明の実施形態である金型離型回復用樹脂組成物は、いずれも金型内部表面の全面に離型性を均一に付与することができた。また、金型離型回復作業直後に成形した封止成形物(エポキシ樹脂成形材料)の表面は、光沢ムラがなく、外観が良好であった。さらに、本発明の金型離型回復用樹脂組成物は、強度が高く、金型離型回復作業で樹脂組成物に割れが生じずかつ成形金型の上下面に貼りつかないため、成形金型からの取り外し時における作業性も良好であった。
一方、比較例に係る金型離型回復用樹脂組成物は、金型内部表面の全面への離型性が不均一であるか、金型離型回復作業の作業性が著しく悪いため実用に適さないかの少なくとも一つの不具合を示した。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の金型離型回復用樹脂組成物は、封止成形物の成形工程で発生する金型内部表面の汚れを取り除いた後に用いることで、金型内部表面の全面に離型性を均一に付与することができる。