特許第6289210号(P6289210)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6289210
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】プリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 11/00 20060101AFI20180226BHJP
   B41J 11/70 20060101ALI20180226BHJP
   B65H 29/60 20060101ALI20180226BHJP
   B41J 2/325 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
   B41J11/00 B
   B41J11/70
   B65H29/60 C
   B41J2/325 A
   B41J2/325 C
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-70177(P2014-70177)
(22)【出願日】2014年3月28日
(65)【公開番号】特開2015-189204(P2015-189204A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2016年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507351883
【氏名又は名称】シチズン・システムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100119987
【弁理士】
【氏名又は名称】伊坪 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100161089
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 良一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 彰
(72)【発明者】
【氏名】田口 雄一
【審査官】 佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−296630(JP,A)
【文献】 特開2003−326783(JP,A)
【文献】 特開2011−143628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 11/00−11/70
B41J 15/00−15/24
B26D 1/00− 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録用紙に印画する印画部と、
印画時に前記印画部と退避経路の間で記録用紙を往復させ、排出時に記録用紙を排出経路に搬送する搬送部と、
搬送される記録用紙の幅方向に往復移動可能な可動部材、および前記幅方向に延びる回転軸の周りに前記可動部材の動作に応じて回転可能であり記録用紙を押さえる押付け部材を有し、前記排出経路に排出された記録用紙を切断する切断部と、
記録用紙の搬送経路における前記切断部の上流側において、前記退避経路と前記排出経路の間で当該搬送経路の切替えを行う切替え部材と、
前記押付け部材と前記切替え部材を連結し、前記可動部材の動作に連動して前記押付け部材を回転させ、さらに当該回転に連動して前記切替え部材の角度を変化させることで前記切替え部材に前記切替えを行わせる連結部材と、
を有することを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
記録用紙に印画する印画部と、
印画時に前記印画部と退避経路の間で記録用紙を往復させ、排出時に記録用紙を排出経路に搬送する搬送部と、
搬送される記録用紙の幅方向に往復移動可能な可動部材を有し、前記可動部材の移動経路上に突出した2つの突出部が当該移動経路の両端に設けられ、前記排出経路に排出された記録用紙を切断する切断部と、
記録用紙の搬送経路における前記切断部の上流側において、前記退避経路と前記排出経路の間で当該搬送経路の切替えを行う切替え部材と、
前記切断部と前記切替え部材を連結し、前記2つの突出部のいずれか一方と前記可動部材との当接および離間に連動して前記切替え部材に前記切替えを行わせる連結部材と、
を有することを特徴とするプリンタ。
【請求項3】
記可動部材は、前記印画部による印画中には第1の位置で待機し、記録用紙の排出時には当該第1の位置とは異なる第2の位置で待機し、
前記切替え部材は、前記可動部材が前記第1の位置にあるときには第1の角度で記録用紙を前記退避経路に案内し、前記可動部材が前記第2の位置にあるときには第2の角度で記録用紙を前記排出経路に案内する、請求項1または2に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記押付け部材は、前記可動部材の移動経路の両端で当該移動経路上に突出した2つの突出部を有し、前記可動部材が当該2つの突出部のいずれか一方に当接することにより前記回転軸の周りに回転する、請求項に記載のプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばロール状に巻かれた帯状の記録用紙を使用し、印画時と排出時で搬送経路を切り替えて記録用紙を搬送するプリンタが知られている。こうしたプリンタでは、搬送経路の切替えに、フラップと呼ばれる板状の可動部材が用いられる。記録用紙は、例えば、印画時には、印画部を繰り返し通過するようにプリンタ内の搬送経路上で搬送され、排出時には、フラップによりその搬送経路が切り替えられることで、プリンタの外部に排出される。このように、印画時に記録用紙をプリンタの外部に出さないことで、長尺の記録用紙を使用する場合であっても、印画中の記録用紙にユーザが触れることや、印画中の記録用紙に埃などが付くことを防いでいる。
【0003】
例えば、特許文献1には、インクリボンを用いて記録用紙にカラー印刷するプリンタであって、印画済みの記録用紙のカール量を矯正するカール矯正機構と、インクリボンにテンションを付加するテンション付加機構と、記録用紙の経路を切り替える切替機構とを一つの動力で駆動するものが記載されている。
【0004】
また、印画時と排出時で搬送経路を切り替えるプリンタではないが、特許文献2には、記録紙ロールを用いたプリンタであって、フラップを用いて不要な切断片を切断片受け部に堆積させるものが記載されている。このプリンタでは、画像が印刷された記録紙が搬送されると、切断キャリッジが待機位置から移動し、記録ヘッドの予熱の際に発色した部分を切断する。これに連動して、記録紙押さえ部材、アーム部材、フラップ部材が一方向に回動し、排出口が連通状態とされると共に、押し出し部材が後退し、切断片が切断片受け部に堆積する。その後、切断キャリッジが待機位置に復帰すると、記録紙押さえ部材、アーム部材、フラップ部材が逆方向に回動し、排出口が閉鎖状態とされると共に、押し出し部材が前進し、堆積した切断片を押し出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−137224号公報
【特許文献2】特開2005−186535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
搬送経路の切替え部材としてフラップを使用するには、それを駆動するモータなどの駆動部が必要である。しかしながら、記録用紙を搬送するローラ、記録用紙を切断するカッタ、搬送経路を切り替えるフラップなどの各部材にそれぞれ専用のモータを設けると、プリンタの部品点数が増加して、装置が大型化するとともに製造コストが上昇する。また、フラップには一般に摩擦クラッチが用いられ、この摩擦クラッチが環境や経時変化の影響を受けて劣化するため、部品交換の手間とコストがかかるという不具合もある。このため、専用のモータや摩擦クラッチを用いずに、搬送経路の切替えを実現できることが望ましい。
【0007】
そこで、本発明は、専用の駆動部を設けずに、退避経路と排出経路の間で記録用紙の搬送経路を切り替える切替え部材を動作させるプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のプリンタは、記録用紙に印画する印画部と、印画時に印画部と退避経路の間で記録用紙を往復させ、排出時に記録用紙を排出経路に搬送する搬送部と、排出経路に排出された記録用紙を切断する切断部と、記録用紙の搬送経路における切断部の上流側において、退避経路と排出経路の間で搬送経路の切替えを行う切替え部材と、切断部と切替え部材を連結し、切断部の動作に連動して切替え部材に切替えを行わせる連結部材とを有する。
【0009】
上記のプリンタでは、切断部は、搬送される記録用紙の幅方向に往復移動可能な可動部材を有し、可動部材は、印画部による印画中には第1の位置で待機し、記録用紙の排出時には第1の位置とは異なる第2の位置で待機し、切替え部材は、可動部材が第1の位置にあるときには第1の角度で記録用紙を退避経路に案内し、可動部材が第2の位置にあるときには第2の角度で記録用紙を排出経路に案内することが好ましい。
【0010】
上記のプリンタでは、切断部は、搬送される記録用紙を押さえる押付け部材をさらに有し、押付け部材は、可動部材の動作に応じて、搬送される記録用紙の幅方向に延びる回転軸の周りに回転可能であり、連結部材は、押付け部材と切替え部材を連結し、押付け部材の回転に連動して切替え部材の角度を変化させることが好ましい。
【0011】
上記のプリンタでは、押付け部材は、可動部材の移動経路の両端で移動経路上に突出した2つの突出部を有し、可動部材が2つの突出部のいずれか一方に当接することにより回転軸の周りに回転することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
上記のプリンタによれば、専用の駆動部を設けずに、退避経路と排出経路の間で記録用紙の搬送経路を切り替える切替え部材を動作させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】プリンタ1の外観を示す斜視図である。
図2】プリンタ1の概略構成を示す縦断面図である。
図3】記録用紙10の動きを説明するための図である。
図4】切断部5、フラップ19および連結部材60を示す斜視図である。
図5】印画中のプリンタ1の内部を前面12から見た図である。
図6】排出時のプリンタ1の内部を前面12から見た図である。
図7図5のA−A線およびB−B線に沿った部分断面図である。
図8図6のC−C線およびD−D線に沿った部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、プリンタについて説明する。ただし、本発明が図面または以下に記載される実施形態に限定されるものではないことを理解されたい。
【0015】
図1は、プリンタ1の外観を示す斜視図である。また、図2は、プリンタ1の概略構成を示す縦断面図である。なお、図2では、プリンタ1が備える各構成要素の内で、説明のために必要な部分のみを示し、その他の構成要素については省略している。
【0016】
プリンタ1は、主な構成要素として、ロール紙ホルダ2、ヘッド3、供給側リボンローラ4A、巻取側リボンローラ4B、切断部5、プラテンローラ9、リボンガイドローラ15、グリップローラ17、ピンチローラ18、フラップ19、排出ローラ23などを有する。これらの各構成要素は、筐体7の中に配置されている。
【0017】
プリンタ1は、ヘッド3に対してロール状の記録用紙10を往復動させることにより、記録用紙10の同一領域上に、例えばイエロー、マゼンタおよびシアンの複数色およびオーバーコートをインクリボン4から順次転写して、画像を印刷(印画)する。印刷された記録用紙10は、切断部5により切断されて、プリンタ1の前面12に設けられた排出口6からプリンタ1の外部に排出される。なお、記録用紙10の材質は、プリンタに使用可能なものであれば特に限定されない。
【0018】
ロール紙ホルダ2は、ロール状に巻かれた記録用紙10を保持する。ロール紙ホルダ2は、記録用紙駆動部32によって正方向または逆方向に駆動され、その中心軸の周りに回転する。ロール紙ホルダ2が正方向に回転することにより、記録用紙10は、ヘッド3とプラテンローラ9の間を通過して、排出口6に向けて搬送される。また、ロール紙ホルダ2が逆方向に回転することにより、記録用紙10はロール紙ホルダ2に巻き戻される。
【0019】
供給側リボンローラ4Aと巻取側リボンローラ4Bは、インクリボン4を保持する。これらのローラは、インクリボン駆動部34によって駆動され、それぞれの中心軸の周りに回転する。この駆動により、インクリボン4は、供給側リボンローラ4Aから供給され、リボンガイドローラ15を介してヘッド3とプラテンローラ9の間を通過して、巻取側リボンローラ4Bに巻き取られる。以下では、これらのローラを単に、「リボンローラ4A,4B」ともいう。
【0020】
インクリボン4は、例えば、イエロー、マゼンタおよびシアンの各インク領域ならびにオーバーコートの領域が、同じ順序で長手方向に繰り返し配置された帯状のシートである。ただし、インクリボン4はこのような複数色のインクを含むシートに限らず、単色のインクのみを含むシートであってもよい。
【0021】
ヘッド3は、プラテンローラ9に対して移動可能に構成され、印画時には、インクリボン4と記録用紙10を間に挟んだ状態でプラテンローラ9に押圧される。ヘッド3は、記録用紙10に印画する印画部の一例であり、発熱することによって、インクリボン4上の各色インクとオーバーコートを記録用紙10の同一領域上に転写する。この転写は、インクリボン4を巻き取りながらインクリボン4の領域ごとに繰り返される。ヘッド3には、例えば、昇華型、熱溶融型などのプリンタの種類に応じた機構が用いられる。
【0022】
グリップローラ17とピンチローラ18は、記録用紙10を挟んで搬送する。グリップローラ17は、記録用紙駆動部32によって、記録用紙10を送り出す方向(正方向)か、または巻き戻す方向(逆方向)のいずれかに回転駆動される。ピンチローラ18は、グリップローラ17に従動して回転する。また、ピンチローラ18は、記録用紙10の搬送時には、グリップローラ17に当接してグリップローラ17との間で記録用紙10を保持し、記録用紙10の搬送時以外には、グリップローラ17から離間して記録用紙10を解放する。グリップローラ17とピンチローラ18は、記録用紙10を搬送する搬送部の一例である。
【0023】
ロール紙ホルダ2からヘッド3とプラテンローラ9の間を通過して排出口6に向かう記録用紙10の搬送経路は、フラップ19から先で二手に分かれる。以下では、フラップ19からロール紙ホルダ2の外周を沿う方向に延びる搬送経路のことを、退避経路13Aという。また、フラップ19から切断部5を通って排出口6に向かう搬送経路のことを、排出経路13Bという。
【0024】
退避経路13Aは、印画中に往復動する記録用紙10の先端部分を一時退避させるための搬送経路である。プリンタ1では、退避経路13Aとして、筐体7内部でロール紙ホルダ2の外周部分に形成される隙間を利用する。また、排出経路13Bは、記録用紙10の印画済みの部分をプリンタ1の外部に排出するための搬送経路である。排出経路13Bに入った記録用紙10の先端部分は、排出ローラ23により排出口6に向けて搬送される。
【0025】
フラップ19は、切替え部材の一例であり、搬送される記録用紙10の記録面に対する角度を変化させることにより、ヘッド3を通過した記録用紙10の搬送経路を、退避経路13Aと排出経路13Bの間で切り替える。フラップ19は、記録用紙10の搬送経路における切断部5の上流側かつヘッド3の下流側に配置される。フラップ19は、回転軸19Aの周りに回転可能な板状の部材であり、その先端19Bがヘッド3側に位置するように筐体7内に固定される。
【0026】
フラップ19は、先端19Bが上がっているときには記録用紙10を退避経路13Aに案内し、先端19Bが下がっているときには記録用紙10を排出経路13Bに案内する。フラップ19の角度は、後述する連結部材60(図4(a)および図4(b)を参照)により切断部5の動作に連動して変化する。また、フラップ19の角度は、連結部材60により保持される。
【0027】
切断部5は、排出経路13Bを通過し、排出口6からプリンタ1の外部に排出された記録用紙10を、排出口6の手前の位置で切断する。切断部5は、切断駆動部35により駆動される。切断部5は、排出経路13B上における排出口6の直前に配置される。
【0028】
さらにプリンタ1は、制御部30、データメモリ31、記録用紙駆動部32、ヘッド駆動部33、インクリボン駆動部34、切断駆動部35および通信インタフェース36を備える。
【0029】
制御部30は、CPUやメモリなどを含むマイクロコンピュータで構成され、プリンタ1の全体の動作を制御する。データメモリ31は、通信インタフェース36を介してホストコンピュータから受信した画像データを蓄積する記憶領域である。
【0030】
記録用紙駆動部32は、グリップローラ17とロール紙ホルダ2を駆動するモータであり、記録用紙10を送り出す方向か、または巻き戻す方向のいずれかに、グリップローラ17とロール紙ホルダ2を回転させる。ヘッド駆動部33は、画像データに基づいてヘッド3を駆動し、記録用紙10上に画像を印刷(印画)させる。
【0031】
インクリボン駆動部34は、供給側リボンローラ4Aと巻取側リボンローラ4Bを駆動するモータである。インクリボン駆動部34は、巻取側リボンローラ4Bがインクリボン4を巻き取る方向か、または供給側リボンローラ4Aにインクリボン4を巻き戻す方向のいずれかに、供給側リボンローラ4Aと巻取側リボンローラ4Bを回転させる。
【0032】
切断駆動部35は、切断部5を駆動するモータである。通信インタフェース36は、例えば、通信ケーブルを介してホストコンピュータから印画対象の画像データを受信する。
【0033】
図3(a)〜図3(c)は、記録用紙10の動きを説明するための図である。これらの図では、上記で説明した各構成要素のうち、記録用紙10の動きの説明に必要な、ロール紙ホルダ2、ヘッド3、リボンローラ4A,4Bおよびフラップ19のみを示す。
【0034】
印画前には、まず、図3(a)に示すように、フラップ19はC1方向に上げられ、記録用紙10は、印画領域の大きさに応じた長さだけ送り出される。送り出された記録用紙10の先端10Eは、フラップ19が上がっているため、退避経路13Aに案内される。
【0035】
続いて、図3(b)に示すように、ヘッド3がインクリボン4と記録用紙10に押し付けられる。そして、記録用紙10を巻き戻し、かつインクリボン4を巻き取りながら、ヘッド3により最初はイエローについての印画が行われる。この記録用紙10の巻戻しとインクリボン4の巻取り、およびヘッド3による印画処理は、同期をとって行われる。
【0036】
イエローについての印画が終わると、図3(a)に示すように、一旦ヘッド3はインクリボン4と記録用紙10から離間され、記録用紙10は再び印画領域の大きさに応じた長さだけ送り出される。
【0037】
以上の工程がイエロー、マゼンタおよびシアンの各色について行われて、記録用紙10の同一領域上にカラー画像が印刷される。その後、さらにオーバーコートについても上記と同じ工程が行われて、記録用紙10の印画領域上に保護層が形成される。
【0038】
そして、印画終了時には、図3(c)に示すように、フラップ19はC2方向に下げられ、記録用紙10は排出口6に向けて搬送される。今度はフラップ19が下がっているため、送り出された記録用紙10の先端10Eは、排出経路13Bに案内される。印画が行われた記録用紙10の先端10Eは、こうして排出口6からプリンタ1の外部に排出される。このとき、切断部5により記録用紙10の印画領域の後端が切断されて、印画済みの記録用紙10がプリンタ1から取り出される。
【0039】
図4(a)および図4(b)は、切断部5、フラップ19および連結部材60を示す斜視図である。また、図5は、印画中のプリンタ1の内部を前面12から見た図である。図6は、排出時のプリンタ1の内部を前面12から見た図である。なお、図4(a)では切断駆動部35も、図4(b)ではフラップ19に隣接して記録用紙10を案内するガイド部42も併せて示している。また、図5図6では、プリンタ1の前面12のカバーを取り外した状態を示している。
【0040】
図4(a)〜図6に示すように、切断部5は、キャリッジ51、押付け部材52、ベルト53、プーリ54、レール55を有する。
【0041】
キャリッジ51は、搬送される記録用紙10の幅W方向に往復移動可能な可動部材の一例であり、下側に露出した円板刃51Aと上側に突き出た突起部51Bを有する。キャリッジ51は、ベルト53に取り付けられ、このベルト53は、一対のプーリ54に取り付けられている。キャリッジ51は、切断駆動部35のモータがプーリ54を回転させてベルト53を駆動することにより、搬送される記録用紙10の幅W方向に延びたレール55に沿って移動する。キャリッジ51は、排出口6から排出された記録用紙10を、レール55の一端から他端に移動するときに円板刃51Aで切断する。
【0042】
図5に示すように、キャリッジ51は、ヘッド3による印画中には、レール55の一方の端部P2から一定距離だけ内側の位置P1で待機する。また、図6に示すように、キャリッジ51は、記録用紙10の排出時には、レール55の一方の端部P2で待機する。位置P1は第1の位置の一例であり、端部P2は第2の位置の一例である。なお、位置P1と端部P2は、図5および図6ではプリンタ1の前面12に向かって右側にあるが、切断部5は左右対称の構造を有するため、前面12に向かって左側であってもよい。
【0043】
押付け部材52は、押付けローラ52Aを有し、円板刃51Aによる切断時に記録用紙10がずれないように、押付けローラ52Aにより記録用紙10を押さえる。また、押付け部材52は、キャリッジ51のレール55の両端でレール55上に突出した2つの突出部52Bを有する。
【0044】
さらに、押付け部材52は、搬送される記録用紙10の幅W方向に延びる回転軸52Cの周りに回転可能である。キャリッジ51がレール55の端部P2に移動して、キャリッジ51の突起部51Bが2つの突出部52Bのいずれか一方に当接すると、キャリッジ51により、押付け部材52の突出部52Bが押し上げられる。これにより、押付け部材52は、回転軸52Cを中心として矢印D2方向に一定角度だけ回転する。また、キャリッジ51がレール55の内側(位置P1)に移動して、キャリッジ51の突起部51Bが突出部52Bから離れると、押付け部材52は、回転軸52Cを中心として矢印D1方向に一定角度だけ回転して、もとの角度に戻る。
【0045】
連結部材60は、切断部5の押付け部材52とフラップ19を連結する部材であり、例えば板ばねで構成される。連結部材60は、押付け部材52が矢印D1方向に回転したときには、フラップ19をC1方向の上向き(第1の角度)に保持し、押付け部材52が矢印D2方向に回転したときは、フラップ19をC2方向の下向き(第2の角度)に保持する。このように、連結部材60は、押付け部材52の回転に連動して、フラップ19の角度を変化させる。
【0046】
図7(a)および図7(b)は、それぞれ、図5のA−A線およびB−B線に沿った部分断面図である。
【0047】
上記の通り、印画中には、キャリッジ51は、レール55の中寄りの位置P1(第1の位置)で待機する。このとき、キャリッジ51の突起部51Bによる突出部52Bの押上げがないため、押付け部材52は、矢印D1方向に一定角度だけ回転した状態となる。これにより、連結部材60を介してフラップ19の先端19BはC1方向に上がる(第1の角度になる)。このため、フラップ19の先端19Bは、筐体7の上側で記録用紙10を案内するガイド部41に近づく方向に移動し、退避経路13Aへの入口を開けるとともに排出経路13Bへの入口をふさぐ。したがって、記録用紙10の先端は、フラップ19の下面に当接して、退避経路13Aに案内される。すなわち、フラップ19は、キャリッジ51が第1の位置にあるときには、第1の角度で記録用紙10を退避経路13Aに案内する。
【0048】
図8(a)および図8(b)は、それぞれ、図6のC−C線およびD−D線に沿った部分断面図である。
【0049】
上記の通り、排出時には、キャリッジ51は、レール55の端部P2(第2の位置)で待機する。このとき、キャリッジ51の突起部51Bにより突出部52Bが押し上げられて、押付け部材52は、矢印D2方向に一定角度だけ回転した状態となる。これにより、連結部材60を介してフラップ19の先端19BはC2方向に下がる(第2の角度になる)。このため、フラップ19の先端19Bは、筐体7の上側で記録用紙10を案内するガイド部41から離れる方向に移動し、退避経路13Aへの入口をふさぐとともに排出経路13Bへの入口を開ける。したがって、記録用紙10の先端は、フラップ19の上面に沿って、排出経路13Bに案内される。すなわち、フラップ19は、キャリッジ51が第2の位置にあるときには、第2の角度で記録用紙10を排出経路13Bに案内する。
【0050】
以上説明したように、プリンタ1では、フラップ19は、連結部材60を介して押付け部材52とつながっており、切断部5のキャリッジ51の往復動に連動して上下に移動する。すなわち、ヘッド3による印画が終了して排出口6から記録用紙10が排出されるときに、フラップ19は、C1方向に上がった状態からC2方向に下がった状態に切り替えられる。また、記録用紙10の排出が終わって、再度印画が開始されるときに、フラップ19は、C2方向に下がった状態にからC1方向に上がった状態に切り替えられる。
【0051】
このように、フラップ19の動作を切断部5の動作に連動させることにより、フラップ19の専用の駆動部を設けなくても、フラップ19を動かして退避経路13Aと排出経路13Bの間で記録用紙10の搬送経路を切り替えることができる。したがって、プリンタ1では、フラップ19の駆動モータを削減することが可能になる。また、プリンタ1のフラップ19では、摩擦クラッチが不要になるため、フラップ19が環境や経時変化の影響を受けなくなる。
【0052】
さらに、プリンタ1では、切断部5の押付け部材52に左右対称に2つの突出部52Bが設けられており、キャリッジ51がレール55上のどちらの端部に移動したときでも、フラップ19の角度を変化させることができる。突出部52Bが押付け部材52の一方の端部にしか設けられていなかったとすると、フラップ19を動作させるときにはキャリッジ51が必ずその突出部52Bがある側の端部に移動しなければならないという制約が課される。しかしながら、プリンタ1では、このような制約は課されず、キャリッジ51がどこに位置していても一方の端部に1回だけ動けばよいため、切断部5とフラップ19の動作が単純化される。
【0053】
なお、上記で説明した切断部5とフラップ19の連動機構は、プリンタ1のようにインクリボン4を使用して記録用紙10上に転写するプリンタ1に限らず、例えばインクジェットなどの他のプリンタにも適用可能である。また、この連動機構は、ロール状に巻かれた帯状の記録用紙を使用するプリンタに限らず、予め特定の大きさにカットされた記録用紙を使用するプリンタにも適用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 プリンタ
2 ロール紙ホルダ
3 ヘッド
5 切断部
6 排出口
10 記録用紙
13A 退避経路
13B 排出経路
19 フラップ
19A 回転軸
51 キャリッジ
52 押付け部材
52B 突出部
60 連結部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8