特許第6289230号(P6289230)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大成建設株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6289230-仮受けジャッキ固定構造 図000002
  • 特許6289230-仮受けジャッキ固定構造 図000003
  • 特許6289230-仮受けジャッキ固定構造 図000004
  • 特許6289230-仮受けジャッキ固定構造 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6289230
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】仮受けジャッキ固定構造
(51)【国際特許分類】
   E01D 21/00 20060101AFI20180226BHJP
【FI】
   E01D21/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-80197(P2014-80197)
(22)【出願日】2014年4月9日
(65)【公開番号】特開2015-200134(P2015-200134A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2017年2月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100078031
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 皓一
(72)【発明者】
【氏名】内薗 雅仁
(72)【発明者】
【氏名】岐部 圭輔
(72)【発明者】
【氏名】小林 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】内田 隆
【審査官】 西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−129119(JP,A)
【文献】 特開平11−050676(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3064395(JP,U)
【文献】 特開2002−004221(JP,A)
【文献】 特開平08−269915(JP,A)
【文献】 特開2004−238796(JP,A)
【文献】 特開昭53−071452(JP,A)
【文献】 米国特許第4846433(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/12
E01D 21/00
E04G 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮受けジャッキの上部に底板が配置され、高架橋のハンチ部と前記底板の間に、無収縮モルタルが充填されて、下面が略水平のジャッキ支持部が形成され、前記ジャッキ支持部の周囲が複数のH型鋼材によって、鉢巻状に囲まれた仮受けジャッキ固定構造。
【請求項2】
前記底板の外周にアングルが溶接されて固定されていることを特徴とする請求項1に記載の仮受けジャッキ固定構造。
【請求項3】
前記複数のH型鋼材のフランジ部に補強のためのリブが取り付けられ、長辺方向の前記H型鋼材と短辺方向の前記H型鋼材がボルトで接合されていることを特徴とする請求項1または2に記載の仮受けジャッキ固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮受けジャッキ固定構造に関するものであり、さらに詳細には供用中の高架橋を仮受け工事する際に、高架橋の損傷を効果的に防止することができる仮受けジャッキ固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
長年使用による高架橋の橋脚ハンチ部の劣化に対する補修工事や、耐震化工事、免震化工事などをおこなう場合には、高架橋を使用しつつ、高架橋の支持構造を仮受け工事することが広く行われている(特許文献1)。
【0003】
従来、高架橋の橋脚ハンチ部の補修工事、耐震化工事、免震化工事などにあたっては、予め仮受けジャッキ上に加工した支圧板を設置し、支圧板と高架橋ハンチ面との間に無収縮モルタルを充填した後に、支圧板が動かないように、高架橋ハンチ部に後施工アンカーを打設して、支圧板を高架橋のハンチ部に固定することが行われている。
【0004】
図1は、従来、仮受けジャッキを支持するために使用されていた支圧板の一例を示す略斜視図である。
【0005】
図1に示されるように、従来、使用されていた支圧板30は、仮受けジャッキの上部に配置される底板31と、高架橋のハンチ部に当接されるフランジ板32と、底板31とフランジ板32とを連結するウェブ板33によって構成され、フランジ板32には、後施工アンカー(図示せず)を打設するための孔34が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平09−177031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の方法は、供用中の高架橋に後施工アンカーを打設するためのアンカー孔を削孔することが必要で、高架橋の強度が低下するという問題があっただけでなく、さらに、高架橋のハンチ部は鉄筋の密度が高いため、予定通りに、後施工アンカーを打設することができず、また、高架橋のハンチ部内の鉄筋と後施工アンカーとが干渉するたびに、後施工アンカーを打設するための孔を別に削孔することが必要になり、高架橋の強度がより一層低下するという虞もあった。さらに、後施工アンカーを打設するため、事前鉄筋探査試験や、引張り試験、打設長確認試験などの各種鉄筋探査試験が必要であるという問題もあった。
【0008】
したがって、本発明は、躯体に削孔を形成して、後施工アンカーを打設する必要がなく、躯体の強度の低下を防止することができ、事前鉄筋探査試験や、引張り試験、打設長確認試験などの各種鉄筋探査試験を行う必要がない仮受けジャッキ固定構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のかかる目的は、仮受けジャッキの上部に底板が配置され、高架橋のハンチ部と前記底板の間に、無収縮モルタルが充填されて、下面が略水平のジャッキ支持部が形成され、前記ジャッキ支持部の周囲が複数のH型鋼材によって、鉢巻状に囲まれた仮受けジャッキ固定構造によって達成される。
【0010】
本発明によれば、仮受ジャッキの上部に底板が配置され、高架橋のハンチ部と底板の間に、無収縮モルタルが充填されて、下面が略水平のジャッキ支持部が形成されるから、従来のように、仮受ジャッキの上部に配置される底板31と、高架橋のハンチ部に当接されるフランジ板32と、底板31とフランジ板32とを連結するウェブ板33によって構成され、フランジ板32に、後施工アンカー(図示せず)を打設するための孔34が形成された支圧板を仮受ジャッキの上部に配置する必要がない。また、ジャッキ支持部が動かないように、ジャッキ支持部の周囲がH型鋼材によって、鉢巻状に囲まれて固定されるから、従来のように、支圧板と高架橋のハンチ部との間を後施工アンカーによって固定する必要がなく、したがって、躯体である高架橋に削孔を形成する必要がないから、躯体の強度の低下を防止することができ、事前鉄筋探査試験や、引張り試験、打設長確認試験などの各種鉄筋探査試験を行うことが不要になるので、仮受けジャッキを固定するために要するコストを低減することが可能になる。
【0011】
本発明の好ましい実施態様においては、前記底板の外周にアングルが溶接されて固定されている。
【0012】
本発明の好ましい実施態様においては、前記H型鋼材のフランジ部に補強のためのリブが取り付けられ、長辺方向の前記H型鋼材と短辺方向の前記H型鋼材がボルトで接合されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、躯体である高架橋に後施工アンカーを打設するための削孔を形成する必要がなく、躯体の強度の低下を防止することができ、さらに、事前鉄筋探査試験や、引張り試験、打設長確認試験などの各種鉄筋探査試験を行う必要がない仮受けジャッキ固定構造を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、従来、仮受けジャッキを支持するために使用されていた支圧板の一例を示す略斜視図である。
図2図2は、本発明の好ましい実施態様にかかる仮受けジャッキ固定構造を示す略縦断面図である。
図3図3は、本発明の好ましい実施態様にかかる仮受けジャッキ固定構造の略分解斜視図である。
図4図4は、互いに固定され、ジャッキ支持部の長辺方向に固定される複数のH型鋼材と、互いに固定され、ジャッキ支持部の短辺方向に固定される複数のH型鋼材の構造を示す略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図2は、本発明の好ましい実施態様にかかる仮受けジャッキ固定構造を示す略縦断面図である。
【0016】
図2に示されるように、本発明の好ましい実施態様にかかる仮受けジャッキ固定構造においては、仮受けジャッキ1の上部には、底板2が配置され、高架橋6のハンチ部7と底板2の間に、無収縮モルタル3が充填されて、ジャッキ支持部5が形成されている。図1において、参照番号8で示されているのは、高架橋6の橋脚である。
【0017】
図2に示されるように、無収縮モルタル3は、底板2が略水平になるように、高架橋6のハンチ部7と底板2の間に充填され、ジャッキ支持部5の長さ方向に沿って切断した断面は略直角三角形状をなしている。図示されてはいないが、ジャッキ支持部5のハンチ部7に当接する面9は粗面化されている。
【0018】
図3は、本発明の好ましい実施態様にかかる仮受けジャッキ固定構造の略分解斜視図である。
【0019】
図3に示されるように、ジャッキ支持部5の長辺方向は互いに固定された複数のH型鋼材10により、ジャッキ支持部5の短辺方向は、互いに固定された複数のH型鋼材11により、鉢巻状に囲まれて、固定されている。
【0020】
H型鋼材11のウェブには補強のためのリブ14が溶接されている。
【0021】
図4は、互いに固定され、ジャッキ支持部5の長辺方向に固定される複数のH型鋼材10と、互いに固定され、ジャッキ支持部5の短辺方向に固定される複数のH型鋼材11の構造を示す略斜視図である。
【0022】
図4に示されるように、ジャッキ支持部5の長辺方向に固定される複数のH型鋼材10のうち、ジャッキ支持部5の短辺方向に固定されるH型鋼材11に当接するH型鋼材10の一方のフランジには、複数のボルト孔10aが形成され、ジャッキ支持部5の短辺方向に固定される複数のH型鋼材11のうち、両端に位置するH型鋼材11のフランジには、鋼板12が固定され、鋼板12には複数のボルト孔11aが形成されている。図示されてはいないが、H型鋼材10の複数のボルト孔10aと、H型鋼材11の複数のボルト孔11aには、ボルトが挿通され、ナットによって、H型鋼材10とH型鋼材11とが接合されている。
【0023】
また、図3に示されるように、底板2の外周には、アングル16が溶接されて、固定されている。アングル16は、ジャッキ支持部5の上方に延びる面とその面に直交する二面の下方部分の一部を覆うように設けられている。
【0024】
本実施態様によれば、仮受けジャッキ1の上部に底板2が配置され、高架橋6のハンチ部7と底板2の間に、無収縮モルタル3が充填されて、下面が略水平のジャッキ支持部5が形成されているから、従来のように、仮受ジャッキ1の上部に配置される底板31と、高架橋6のハンチ部7に当接されるフランジ板32と、底板31とフランジ板32とを連結するウェブ板33によって構成され、フランジ板32に、後施工アンカー(図示せず)を打設するための孔34が形成された支圧板を仮受ジャッキの上部に配置する必要がない。また、ジャッキ支持部5が動かないように、ジャッキ支持部5の長辺方向は複数のH型鋼材10により、ジャッキ支持部5の短辺方向は、複数のH型鋼材11によって、鉢巻状に囲まれて、固定されているから、従来のように、加工した支圧板と高架橋6のハンチ部7との間を後施工アンカーによって固定する必要がなく、したがって高架橋6のハンチ部7に削孔を形成する必要がないから、高架橋6のハンチ部7の強度の低下を防止することができ、後施工アンカーを打設する必要がないから、事前鉄筋探査試験や、引張り試験、打設長確認試験などの各種鉄筋探査試験を行うことが不要になるので、仮受けジャッキ1を固定するために要するコストを低減することが可能になる。
【0025】
本発明は、以上の実施態様に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0026】
たとえば、前記実施態様においては、複数のH型鋼材11のウェブには補強のためのリブ14が溶接されているのに対して、複数のH型鋼材10には補強のためのリブは取り付けられてはいないが、複数のH型鋼材10のウェブに補強のためのリブを設けることもできる。
【符号の説明】
【0027】
1 仮受けジャッキ
2 底板
3 無収縮モルタル
5 ジャッキ支持部
6 高架橋
7 高架橋のハンチ部
8 橋脚
10 H型鋼材
10a ボルト孔
11 H型鋼材
11a ボルト孔
12 鋼板
14 リブ
16 アングル
図1
図2
図3
図4