(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6289248
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】梱包材
(51)【国際特許分類】
B65D 81/113 20060101AFI20180226BHJP
B65D 81/127 20060101ALI20180226BHJP
B65D 77/26 20060101ALI20180226BHJP
B65D 85/30 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
B65D81/113 140A
B65D81/127 A
B65D77/26 R
B65D85/30 Z
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-91501(P2014-91501)
(22)【出願日】2014年4月25日
(65)【公開番号】特開2015-209222(P2015-209222A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2016年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【弁理士】
【氏名又は名称】矢田 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】兒嶋 真史
(72)【発明者】
【氏名】加藤 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 壮紀
【審査官】
宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−132331(JP,A)
【文献】
特開2013−023252(JP,A)
【文献】
特開2001−130643(JP,A)
【文献】
実開昭59−003895(JP,U)
【文献】
実開昭54−165277(JP,U)
【文献】
特開2010−065122(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 57/00−59/08
B65D 81/00−81/30
B65D 81/38
B65D 85/30−85/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板収納容器を梱包する梱包材であって、
前記基板収納容器の底面及び上面にそれぞれ取り付けられる一対の発泡材と、
前記基板収納容器の底面側及び上面側にそれぞれ前記発泡材を介して配置される一対の防振材と、を備え、
各防振材は、それぞれ、一対のはさみ板と各はさみ板に挟まれた粘弾性体と、を備え、
前記粘弾性体は、ゴム、ゲル又は熱可塑性エラストマーであり、
前記基板収納容器の底面に取り付けられる前記発泡材は、前記基板収納容器の底面側に配置される前記防振材側の面に形成された、頂部が平坦な複数の凸条部を備え、
前記基板収納容器の底面側に配置される前記防振材の前記粘弾性体は、前記凸条部が当接する前記基板収納容器の底面側に配置される前記防振材の箇所に配置されており、
前記基板収納容器の底面側に配置される前記防振材の前記粘弾性体は、初期つぶれ量を考慮してつぶれることにより、前記基板収納容器の底面側に配置される前記防振材の効果を発揮するように、前記基板収納容器の上面側に配置される前記防振材の前記粘弾性体よりも大きな厚さの前記粘弾性体にされていることを特徴とする梱包材。
【請求項2】
さらに、
前記基板収納容器を前記一対の発泡材と前記一対の防振材とともに収納する梱包箱を備え、
前記梱包箱が、前記梱包箱の側壁において、前記一対の発泡材のそれぞれと間隙を有して前記一対の発泡材を収納することを特徴とする請求項1に記載の梱包材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は梱包材に関し、特に、基板収納容器を梱包する梱包材に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば半導体ウェーハを収納する基板収納容器を梱包する梱包材は、防振性、落下耐性に優れた構成のものが知られるに至っている。
【0003】
たとえば特許文献1に開示される梱包材は、基板収納容器を挟むように配置される複数の緩衝体と、該基板収納容器及び該複数の緩衝体を収納する包装箱とを備え、少なくとも一方の緩衝体に、該基板収納容器又は該包装箱と弾性的に接して振動又は衝撃を緩和する複数の弾性体を間隔を有して配設するように構成している。
【0004】
しかし、近年、基板収納容器に収納するたとえば半導体ウェーハの径が大きくなり、基板収納容器も大型化し、梱包材も、より防振性、落下耐性に優れたものが要望されるに至っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−23252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、より防振性、落下耐性に優れた梱包材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の構成によって把握される。
(1)本発明の梱包材は、基板収納容器を梱包する梱包材であって、前記基板収納容器の底面及び上面にそれぞれ取り付けられる一対の発泡材と、前記基板収納容器の底面側及び上面側にそれぞれ前記発泡材を介して配置される一対の防振材と、を備え、各防振材は、それぞれ、一対のはさみ板と各はさみ板に挟まれた粘弾性体と、を備えることを特徴とする。
(2)本発明の梱包材は、(1)の構成において、さらに、前記基板収納容器を前記一対の発泡材と前記一対の防振材とともに収納する梱包箱を備え、前記梱包箱が、前記梱包箱の側壁において、前記一対の発泡材のそれぞれと間隙を有して前記一対の発泡材を収納することを特徴とする。
(3)本発明の梱包材は、(1)又は(2)の構成において、前記基板収納容器の底面側に配置される前記防振材が、前記基板収納容器の上面側に配置される前記防振材の前記粘弾性体よりも大きな厚さの前記粘弾性体を有することを特徴とする。
(4)本発明の梱包材は、(1)ないし(3)のいずれかの構成において、前記基板収納容器の上面に取り付けられる前記発泡材が、前記基板収納容器と反対側の面に突出するリブを有し、前記基板収納容器の上面側に配置される前記防振材が、前記リブを回避して配置され、前記リブの高さよりも大きな厚さを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このように構成された梱包材によれば、より防振性、落下耐性に優れるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の梱包材を、基板収納容器を収納した状態で示す分解斜視図である。
【
図2】本発明の梱包材のうち第1防振材を示す平面図である。
【
図3】本発明の梱包材のうち第1発泡材を示す平面図である。
【
図4】本発明の梱包材のうち第2発泡材を示す平面図である。
【
図5】本発明の梱包材のうち第2防振材を示す平面図である。
【
図7】梱包箱に、第1防振材、第1発泡材、基板収納容器、第2発泡材、及び第2防振材を収納させた断面図である。
【
図8】(a)は、本発明の梱包材の振動試験を行った結果を示すグラフ、(b)は比較のため、発泡材のみからなる梱包材の振動試験を行った結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
【0011】
(実施形態1)
図1は、本発明の梱包材を、基板収納容器を収納した状態で示す分解斜視図である。
【0012】
図1において、まず、梱包されるべき基板収納容器10がある。この基板収納容器10は、図示を簡略化しているが、たとえば、上記特許文献1に開示されるように、開口を有する容器本体と該開口を閉塞する蓋体とからなり、複数の半導体ウェーハを水平にして互いに面対向させて収納できるようになっている。また、基板収納容器10は、その外側の面において、図示しないロボテックハンドル、マニュアルハンドル、ボトムプレート等が取り付けられ、凹凸形状となっている。
【0013】
このように構成される基板収納容器10は、ほぼ立方体のたとえば段ボール等からなる梱包箱20内に、第1防振材30、第1発泡材40、第2発泡材50、及び第2防振材60とともに収納されるようになっている。すなわち、梱包箱20は、その上面において開閉蓋21を有する開口22が設けられ、この開口22を通して、第1防振材30、第1発泡材40を順次積層させ、該第1発泡材40の上面に基板収納容器10を載置した後に、第2発泡材50、及び第2防振材60を順次積層させるようになっている。
【0014】
これにより、基板収納容器10は、その底面及び上面にそれぞれ一対の発泡材40、50が取り付けられ、これら発泡材40、50を介して一対の防振材30、60が配置された状態で、梱包箱20に収納されるようになっている。
【0015】
第1防振材30は、平面視で矩形状をなし、梱包箱20の底面よりもやや小さな面積を有するようになっている。そして、第1防振材30は、一対のはさみ板31と各はさみ板31に挟まれた複数の粘弾性体32とからなっている。
図2に示すように、各粘弾性体32は第1防振材30内において散在されて形成されているが、後述の第1発泡材40の凸条部(
図1に符号42で示す)に当接する個所(図中二点鎖線枠で示す)内に配置されるようになっている。
【0016】
はさみ板31としては、たとえば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリカーボネイト等の材料によって形成されている。また、これらの材料を発泡させた発泡シートや、中空構造としたプラスチックダンボールシートの使用が、軽量化の点で好ましい。
【0017】
粘弾性体32としては、たとえば次の材料が選択される。すなわち、EPM(Ethylene Propylene Rubber)、EPDM(Ethylene Propylene Diene Rubber)、NR(Natural Rubber)、SBR(Styrene Butadiene Rubber)、BR(Butadiene Rubber)などの一般加硫ゴム、ウレタン系ゴム、シリコーン系ゴム、フッ素系ゴム、低反発ゴム、ポリウレタンやシリコーンなどのゲル、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリスチレン系などの熱可塑性エラストマー、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリウレタン、シリコーンからなる発泡樹脂や発泡ゴム、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレンなどの樹脂、そして、特に好ましくは、低反発のウレタンゴムやシリコーンゴムなどの低反発ゴムである。
【0018】
このような材料からなる粘弾性体32は、衝撃吸収性や防振性に極めて優れた性質を有するようになる。
【0019】
図1に戻り、第1発泡材40は、第1防振材30とほぼ同じ大きさからなり、表裏面の所定箇所に凹凸部が形成された平板材からなり、たとえば、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂等によって形成されている。
【0020】
第1発泡材40の表面(基板収納容器10の側の面)は、該基板収納容器10の底面が当接され、該基板収納容器10の水平方向の変位を規制できるように該基板収納容器10の周辺の周りに複数の凸部41が形成されている。これにより、第1発泡材40の表面の中央部には、基板収納容器10の底部が嵌合される凹部43が形成されることになる。
【0021】
第1発泡材40の裏面(第1防振材30の側の面)は、
図3に示すように、一方向(図中y方向)に延在し該方向に直交する方向(図中x方向)に等間隔で並設される複数の凸条部42が形成されている。各凸条部42の頂部は、平坦となっており、第1防振材30に均一に当接できるように同一面内に形成されるようになっている。なお、第1発泡材40の各凸条部42が当接する第1防振材30の個所は、
図2において二点鎖線枠の部分となることは上述した通りである。上述のように、第1防振材30の該二点鎖線枠の部分に粘弾性体32を配置させることにより、該粘弾性体32に荷重が集中でき、粘弾性体32の効果を充分に発揮させることができるようになる。
【0022】
第2発泡材50は、第1発泡材40と同様に、表裏面の所定箇所に凹凸部が形成されたほぼ平板材からなり、たとえば、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂等によって形成されている。
【0023】
第2発泡材50の裏面(基板収納容器10の側の面)は、図示されていないが、該基板収納容器10の上面が嵌合され、該基板収納容器10の水平面における変位を規制できる凹部(図にて符号51で示す)が形成されている。
【0024】
第2発泡材50の表面(基板収納容器10と反対側の面)はほぼ平坦となっており、第2防振材60が配置される領域を除く周辺の領域には複数のリブ52が形成されている。各リブ52は、板状に形成され、第2防振材60の厚さよりも若干大きな高さを有して形成されている。
【0025】
図4は、第2発泡材50の平面図を示し、
図5は、第2防振材60の平面図を示している。
図4に示すように、第2発泡材50の周辺には周方向に沿って複数のリブ52が突出して形成され、第2防振材60の周辺は第2発泡材50の各リブ52の間において各リブ52を回避して配置される部分を有し、このため第2防振材60の周辺は凹凸形状となっている。
【0026】
図6は、
図4のVI−VI線における断面図である。
図6から明らかとなるように、第2発泡材50は、裏面に基板収納容器10が収納される凹部51を有するほぼ箱型をなし、表面に突出して形成されたリブ52は第2発泡材50の側面50aにまで延在されて形成されている。第2発泡材50の側面50aに延在されるリブ52は、第2発泡材50と梱包箱20の側壁20aとの間に間隙G(
図7参照)を形成するようになっている。
【0027】
第2防振材60は、第1防振材30と同様に、一対のはさみ板61と各はさみ板61に挟まれた複数の粘弾性体62とからなっている。各粘弾性体62は第2防振材60内において散在されて形成され、
図5に示すように、たとえば、第2防振材60の周辺において密な間隔で配置され、中央部において比較的疎な間隔で配置されている。粘弾性体62としては、第1防振材30の粘弾性体32と同様に、たとえば、EPM(Ethylene Propylene Rubber)、EPDM(Ethylene Propylene Diene Rubber)、NR(Natural Rubber)、SBR(Styrene Butadiene Rubber)、BR(Butadiene Rubber)などの一般加硫ゴム、ウレタン系ゴム、シリコーン系ゴム、フッ素系ゴム、低反発ゴム、ポリウレタンやシリコーンなどのゲル、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリスチレン系などの熱可塑性エラストマー、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリウレタン、シリコーンからなる発泡樹脂や発泡ゴム、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレンなどの樹脂、そして、特に好ましくは、低反発のウレタンゴムやシリコーンゴムなどの低反発ゴムが選択される。
【0028】
図7は、梱包箱20に、第1防振材30、第1発泡材40、基板収納容器10、第2発泡材50、及び第2防振材60を順次配置させ、梱包箱20の開閉蓋21を閉塞させた状態を示す断面図である。基板収納容器10は、梱包箱20内において、上下方向の移動は第1防振材30、第1発泡材40、第2発泡材50、及び第2防振材60によって規制され、水平方向の移動は基板収納容器10が第1発泡材40および第2発泡材50に形成された凹部に嵌合されることによって規制されて収納されるようになっている。なお、第1発泡材40および第2発泡材50は梱包箱20の側壁20aとの間に後述の間隙Gが形成され、この間隙Gによって基板収納容器10は第1発泡材40および第2発泡材50とともに水平方向に若干の移動がなし得るようになっている。
【0029】
ここで、
図7に示すように、まず、第1防振材30の粘弾性体32の厚さをt1、第2防振材60の粘弾性体62の厚さをt2とした場合、t1>t2の関係が成り立つようになっている。第1防振材30の粘弾性体32の厚さt1を第2防振材60の粘弾性体62の厚さt2よりも大きくすることによって、第1防振材30の基板収納容器10の重さによる初期つぶれ量を考慮したものであり、第1防振材30の粘弾性体32がつぶれることにより第1防振材30の防振効果を発揮できるようになっている。t1を約30mm、t2を約10mmとすることにより、好ましい結果が得られた。
【0030】
また、第1発泡材40、第2発泡材50は、それぞれ、上述したように、梱包箱20の側壁20aとの間に間隙Gを有している。落下時に、第1発泡材40および第2発泡材50が変形することによって該基板収納容器10を保護できるが、間隙Gを有することによって、第1発泡材40および第2発泡材50の充分な変形を惹起させることができる。
【0031】
また、基板収納容器10の上面側に配置させる第2防振材60を、基板収納容器10の底面側に配置させる第1防振材30とともに梱包箱20に収納することにより、防振性に優れた梱包構造を形成することが確認される。
【0032】
さらに、第2防振材60の粘弾性体62の厚さt2を第1防振材30の粘弾性体32の厚さt1よりも小さくすることによって、振動時に、第2防振材60の粘弾性体62がつぶれ易くなることによって該基板収納容器10を保護できるようになる。また、落下時に、第2防振材60の粘弾性体62のつぶれ量が一定量を超えてしまうが、第2発泡材50のリブ52がつぶれることにより、落下耐性の機能を発揮できるようになる。
【0033】
このように構成した梱包材は、防振性、落下耐性に極めて優れるようになる。
図8(a)は、上述した梱包材の振動試験を行った結果を示すグラフである。比較のため、発泡材のみからなる梱包材の振動試験を行った結果のグラフを
図8(b)に示している。
図8(a)、(b)において、横軸に周波数を、縦軸に衝撃加速度をとっている。
図8(a)に示すように、本発明の梱包材によれば、図中αの部分に示すように、振動時における固有振動数を低い値にでき、この場合における共振時の衝撃加速度が低減されていることが判る。なお、
図8(a)のαの部分に対応する
図8(b)の部分を図中α’で示している。
【0034】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0035】
10 基板収納容器
20 梱包箱
21 開閉蓋
22 開口
30 第1防振材
31 はさみ板
32 粘弾性体
40 第1発泡材
41 凸部
42 凸条部
50 第2発泡材
51 凹部
52 リブ
60 第2防振材
61 はさみ板
62 粘弾性体
G 間隙