特許第6289263号(P6289263)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6289263
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】クローラ走行装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 55/14 20060101AFI20180226BHJP
   B62D 55/00 20060101ALI20180226BHJP
   B62D 55/253 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
   B62D55/14 Z
   B62D55/00
   B62D55/253 E
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-106404(P2014-106404)
(22)【出願日】2014年5月22日
(65)【公開番号】特開2015-221609(P2015-221609A)
(43)【公開日】2015年12月10日
【審査請求日】2016年6月27日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 展示会名 第67回クボタ機械グループディーラーミーティング 開催場所 国立京都国際会館 京都市左京区岩倉大鷺町422番地 開催日 2014年1月14日〜15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】石原 和真
(72)【発明者】
【氏名】武岡 達
【審査官】 米澤 篤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−17789(JP,A)
【文献】 実開平1−96385(JP,U)
【文献】 特開平4−38279(JP,A)
【文献】 実開平4−95579(JP,U)
【文献】 実開平5−42065(JP,U)
【文献】 特開平7−101365(JP,A)
【文献】 実開昭59−23474(JP,U)
【文献】 特開2013−14329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 55/14
B62D 55/00
B62D 55/253
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪と、
トラックフレームと、
前記トラックフレームの前部に支持された前従動輪と、
前記トラックフレームの後部に支持された後従動輪と、
前記前従動輪と前記後従動輪との間で前記トラックフレームに、互いに前後方向に間隔をあけて支持された少なくとも3つ以上の転輪を含む転輪群と、
前記駆動輪、前記前従動輪、前記転輪群、前記後従動輪に亘って巻き掛けられたクローラベルトとが備えられ、
前記クローラベルトが、長手方向において所定ピッチで高弾性変形領域から低弾性変形領域を経て再び高弾性変形領域に移行する弾性周期性を示す周期弾性変化構造を有し、
前記転輪のそれぞれが同時に接当する前記クローラベルトの被接当箇所の弾性がいずれも違うように、前記転輪が配置されているクローラ走行装置。
【請求項2】
前記転輪群における転輪同士の中心間距離は、前記弾性周期性の2波長を超えるように設定される請求項1に記載のクローラ走行装置。
【請求項3】
前記転輪群における転輪同士の中心間距離は、(弾性周期性の1/2波長)/(転輪数−1)に設定される請求項1に記載のクローラ走行装置。
【請求項4】
前記転輪群の少なくとも複数が、前記トラックフレームに横向き枢支軸周りで揺動可能に支持された揺動フレームの前部及び後部に前転輪及び後転輪として構成され、ボギー転輪ユニットとして組み込まれる請求項1または2に記載のクローラ走行装置。
【請求項5】
前記ボギー転輪ユニットにおける前記前転輪と前記後転輪の中心間距離は、前記弾性周期性の1/2波長の奇数倍である請求項4に記載のクローラ走行装置。
【請求項6】
前記転輪群は、前側ボギー転輪ユニットと後側ボギー転輪ユニットとを含み、前記前側ボギー転輪ユニットの後転輪と前記後側ボギー転輪ユニットの前転輪の中心間距離は、前記ボギー転輪ユニットにおける前記前転輪と前記後転輪の中心間距離より短い請求項4または5に記載のクローラ走行装置。
【請求項7】
前記ボギー転輪ユニットにおける前記前転輪と前記後転輪の中心間距離は、前記弾性周期性の(3+1/2)波長であり、前記前側ボギー転輪ユニットの後転輪と前記後側ボギー転輪ユニットの前転輪の中心間距離は、前記弾性周期性の(2+2/3)波長である請求項6に記載のクローラ走行装置。
【請求項8】
前記前側ボギー転輪ユニットの前記後転輪と前記後側ボギー転輪ユニットの前記前転輪との中心間距離は、前記弾性周期性の波長の整数倍となる長さを避ける請求項6または7に記載のクローラ走行装置。
【請求項9】
前記クローラベルトの接地面側に所定のピッチでラグが配設され、前記低弾性変形領域は前記ラグの配設領域であり、前記弾性周期性の1周期は前記ラグの配設ピッチである請求項1から8のいずれか一項に記載のクローラ走行装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車などの車両を走行させるためにクローラを用いるクローラ走行装置に関する。クローラ走行装置は、一般的に、トラックフレームと、前記トラックフレームの前部に支持された前従動輪と、前記トラックフレームの後部に支持された後従動輪と、前記前従動輪と前記後従動輪との間で前記トラックフレームに、互いに前後方向に間隔をあけて支持された少なくとも3つ以上の転輪を含む転輪群と、前記駆動輪、前記前従動輪、前記転輪群、前記後従動輪に亘って巻き掛けられたクローラベルトとを備えている。
【背景技術】
【0002】
上述した構成のクローラ走行装置は、特許文献1から知られている。このクローラ走行装置では、走行機体に支持されたトラックフレームの前後端部に前後従動輪が配置されるとともにその中間領域に前は後方向に間隔をあけて複数の転輪が配置され、後車軸から動力が伝達される駆動輪によって駆動するクローラベルトが前後従動輪と転輪とにわたって巻き掛けられている。また、このクローラ走行装置では、前記複数の転輪はトラックフレームに支持された横向きの枢支軸周りに揺動自在な揺動フレームの前部に前転輪として、後部に後転輪として設けられており、クローラベルトが石等の障害物を乗り越える際には、前転輪及び後転輪が枢支軸周りに揺動する。クローラベルトはゴム製であり、その接地面側に所定ピッチで突出しているラグが形成されている。
【0003】
このようなクローラ走行装置では、走行時にはクローラベルトが転輪に案内されて周回移動し、その際、クローラベルトのラグが周期的に地面を踏みつける。トラックフレームに支持された横向きの枢支軸周りに前転輪と後転輪が揺動するボギー転輪構造を採用している場合、地面に存在する凸部を乗り越えるときに、例えば前転輪が持ち上がるとともに後転輪が下がるように枢支軸周りに揺動する。走行地面に、突発的な凸部が存在しても、前転輪と後転輪との上下方向の相反する揺動変位を通じて、枢支軸が上下動するのが抑制され、結果的に転輪からトラックフレームへ伝達される振動が低減される。しかしながら、走行地面が平坦であってもクローラベルトから転輪を介してトラックフレームに、結果的には走行機体に振動が生じるという問題が確認されている。ラグが所定ピッチで形成されているクローラベルトの場合、ラグとラグとの間のクローラベルト部分は撓み易く、クローラベルトの弾性変形が大きいといえる。逆に、ラグが形成されているクローラベルト部分は撓み難く、クローラベルトの弾性変形が小さいといえる。この意味において、本発明で採用されているクローラベルトは、長手方向において所定ピッチで高弾性変形領域から低弾性変形領域を経て再び高弾性変形領域に移行する弾性周期性を示す周期弾性変化構造を備えている。このような周期弾性変化構造が平坦な地面での走行においても走行機体が振動する要因であると考えられるが、このことを考慮した解決策は今なお講じられていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−14329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記実情に鑑み、本発明の目的は、所定ピッチで形成されたラグなどの要因で長手方向において不均一な構造を有するクローラベルトを備えたクローラ走行装置における平坦地面での振動を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるクローラ走行装置は、駆動輪と、トラックフレームと、前記トラックフレームの前部に支持された前従動輪と、前記トラックフレームの後部に支持された後従動輪と、前記前従動輪と前記後従動輪との間で前記トラックフレームに、互いに前後方向に間隔をあけて支持された少なくとも3つ以上の転輪を含む転輪群と、前記駆動輪、前記前従動輪、前記転輪群、前記後従動輪に亘って巻き掛けられたクローラベルトとが備えられ、前記クローラベルトが、長手方向において所定ピッチで高弾性変形領域から低弾性変形領域を経て再び高弾性変形領域に周期的に移行する弾性周期性を示す周期弾性変化構造を有し、前記転輪のそれぞれが同時に接当する前記クローラベルトの被接当箇所の弾性がいずれも違うように、前記転輪が配置されている。
【0007】
この構成によれば、各転輪が、クローラベルトの同じような弾性(弾性変形)を示すような箇所に同時に接当するようなことがない。本発明で使用されるクローラベルトは、その長手方向での弾性変形がし易い高弾性変形箇所(高い弾性変形度を示す箇所)から弾性変形がし難い低弾性変形箇所(低い弾性変形度を示す箇所)を経て再び高弾性変形箇所に移行する周期弾性変化構造を有する。その周期は、例えば、ラグ付きクローラベルトではラグピッチに対応する。そこで、各転輪は、走行時においてはクローラベルト上を転動することになるが、その際それぞれの転輪が接当するクローラベルトの接当箇所の弾性変形度が異なるように配置される。したがって、例えば、高弾性変形箇所に1つの転輪が位置する場合、他の転輪はそのような高弾性変形箇所に位置することはない。同様に、2つの高弾性変形箇所の間の中央位置である低弾性変形箇所に1つの転輪が位置する場合、他の転輪はそのような低弾性変形箇所に位置することはない。このように、常に、全ての転輪がそれぞれ異なる弾性変形度を示す箇所に接当することで、従来のような振動が抑制されることが確認された。これは、少なくとも2つの転輪が最も弾性変形度が高い高弾性変形箇所(または最も弾性変形度が低い低弾性変形箇所)に位置することで当該転輪が弾み、その結果比較的大きな振動が生じることから、全ての転輪をクローラベルトが有する周期弾性変化の半周期において位相差を持つように配置することによって、当該振動が低減できるという本願発明者の実験等を通じての知見に基づいている。
【0008】
なお、本発明の対象とするクローラ走行装置で使用されるクローラベルトが、クローラベルトの接地面側に所定のピッチでラグが配設されたものとすれば、前記低弾性領域は前記ラグの配設領域であり、前記弾性周期性の1周期は前記ラグの配設ピッチとなる。このようなラグ付きの、特にゴム製のクローラベルトは、クローラ走行装置における走行安定性に貢献し、農作業機に利用される場合に特に適している。
【0009】
本発明の好適な実施形態の1つでは、前記転輪群における転輪同士の中心間距離は、前記弾性周期性の2波長を超えるように設定されている。ここでいう1波長は、最も弾性変形度が高い高弾性変形箇所から低弾性変形箇所を経て次の高弾性変形箇所に至る周期長さである。隣接する転輪間に2波長以下になれば、転輪による荷重負荷によって一旦撓んだクローラベルト部分が転輪の転動に伴う撓みの復元が十分でないうちに次の転輪がくることから、その際の転輪とクローラベルトとの間に生じる衝撃が無視できない振動を引き起こすと考えられる。このことから上記構成を採用することにより、さらなる振動の抑制が可能となる。
【0010】
上述した本願発明者の知見に基づけば、クローラベルトの周期弾性変化構造を考慮して、全体として転輪群ができる限りそれぞれ大きな差を持って異なる弾性変形箇所に位置することが好ましい。このため、本発明の好適な実施形態として、前記転輪群における転輪同士の中心間距離は、(弾性周期性の1/2波長)/(転輪数−1)に設定されることが提案される。この構成により、各転輪は、理想的に弾性の異なる位置、つまり弾性変化の周期性における理想的な位相差をもって配置されることになる。
【0011】
転輪群を、ボギー転輪構造を採用してトラックフレームに取り付ける実施形態、つまり、転輪群の少なくとも複数が、前記トラックフレームに横向き枢支軸周りで揺動可能に支持された揺動フレームの前部及び後部に前転輪及び後転輪として構成され、ボギー転輪ユニットとして組み込まれる実施形態も、好適である。この構成を採用することで、平たんでない地面の走行、例えば、石等の障害物を乗り越える場合には、前転輪及び後転輪が枢支軸周りに揺動するので、前転輪と後転輪とが同時に障害物と地面の両者にクローラベルトを介して接当して荷重を分担支持できるだけでなく、その前転輪及び後転輪の揺動によって枢支軸が上下動するのが抑制されるので、転輪からトラックフレームへ伝達される振動が抑制される。
【0012】
本発明の好適な実施形態の1つでは、前記ボギー転輪ユニットにおける前記前転輪と前記後転輪の中心間距離は、前記弾性周期性の1/2波長の奇数倍に設定されている。この構成によれば、クローラベルトの周期弾性変化構造に基づいて前転輪が上下方向のうちの一方側へ揺動する際に、後転輪が他方側へ揺動することになる。枢支軸の上下方向の変位は、前転輪の上下方向の変位と後転輪の上下方向の変位の和で表わされるが、この構成では、前転輪が上下方向のうち一方側へ揺動する際に、後転輪が他方側へ揺動するので、前転輪の上下方向の変位と後転輪の上下方向の変位とが打ち消し合って枢支軸の上下方向の変位が小さくなる。その結果、枢支軸の上下方向での振動を低減でき、枢支軸からトラックフレームへ伝達される振動が抑制される。
【0013】
ボギー転輪ユニットが2つ以上前後方向に並んで設けられている場合、隣接するボギー転輪ユニット同士の距離は短い方がクローラベルトの周回安定性及び脱輪防止効果が得られるので好ましいと見なされていた。しかしながら、隣接するボギー転輪ユニット同士の距離は短い場合、上述した本願発明者の知見によれば、転輪による荷重負荷によって一旦撓んだクローラベルト部分が転輪の転動に伴う撓みの復元が十分に行われないうちに次の転輪が来ることによる振動が引き起こされる。このような様々な制約を考慮して、本発明の好適な実施形態の1つとして、前記転輪群は、前側ボギー転輪ユニットと後側ボギー転輪ユニットとを含み、前記前側ボギー転輪ユニットの後転輪と前記後側ボギー転輪ユニットの前転輪の中心間距離を、前記ボギー転輪ユニットにおける前記前転輪と前記後転輪の中心間距離より短くする構成が提案される。
【0014】
さらに、本願発明者によって実施された実験結果を考慮すれば、適切に振動が良くされる好適な実施形態として、前記ボギー転輪ユニットにおける前記前転輪と前記後転輪の中心間距離は、前記弾性周期性の(3+1/2)波長であり、前記前側ボギー転輪ユニットの後転輪と前記後側ボギー転輪ユニットの前転輪の中心間距離は、前記弾性周期性の(2+2/3)波長である形態が提案される。
【0015】
さらに、前側転輪ユニットの後転輪と後側転輪ユニットの前転輪との中心間距離が、前記弾性周期性の波長の整数倍からはずれると、当該後転輪と当該前転輪とが、同時に、クローラベルトの最も硬い(弾性変形しにくい)箇所、あるいはクローラベルトの最も軟らかい(弾性変形しやすい)箇所に接当しなくなる。このように、前側転輪ユニットの後転輪と後側転輪ユニットの前転輪とが同時にクローラベルトの最も硬い箇所あるいはクローラベルトの最も軟らかい箇所に同時に接当しない配置では、振動が抑制されるということが解明された。これに対して、第1転輪ユニットの後転輪と第2転輪ユニットの前転輪との中心間距離が前記弾性周期性の波長の整数倍となれば、トラックフレームに対してそれぞれ独立して変位できる第1転輪ユニットの後転輪と第2転輪ユニットの前転輪の両者が周期的にクローラベルトの最も硬い箇所に接当することになる。この場合、両箇所でのクローラベルトの弾性変形が最小となり、振動をより大きくする原因の1つとなる。また、第1転輪ユニットの後転輪と第2転輪ユニットの前転輪の両者が周期的にクローラベルトの最も軟らかい箇所に接当した場合には、クローラベルトの弾性変形が最大となり、これも振動をより大きくする原因の1つとなる。したがって、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記前側転輪ユニットの前記後転輪と前記後側転輪ユニットの前記前転輪との中心間距離は、前記弾性周期性の波長の整数倍となる長さを避けるように設定されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の基本原理を説明する模式図である。
図2】本発明の基本原理をさらに説明する模式図である。
図3】本発明によるクローラ走行装置を搭載したトラクタの全体側面図である。
図4】クローラ走行装置の全体側面図である。
図5】前転輪及び後転輪の付近を示す側面図である。
図6図4におけるVI−VI断面図である。
図7】前転輪の変位、後転輪の変位、及び、枢支軸の変位の相関関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明によるクローラ走行装置の具体的な実施形態を説明する前に、図1図2を用いて本発明の基本原理を説明する。図1には、周期弾性変化構造を有するクローラベルト26を用いたクローラ走行装置の模式図が示されている。このクローラ走行装置11では、駆動輪25と、トラックフレーム20と、トラックフレーム20の前部及び後部に支持された前従動輪21及び後従動輪22、トラックフレーム20に互いに前後方向に間隔をあけて支持されたn個の転輪2を含む転輪群と、クローラベルト26とを備えている。一般的なクローラ走行装置11では転輪2の数:nは10個以下である。隣接する各転輪の中心間距離(回転軸心間距離)は、L1、L2、・・・Ln-1で表されている。
【0018】
クローラベルト26は、その一部の拡大表示から明らかなように、外側面(接地面)にラグ46が所定のラグピッチPrで形成されており、さらにラグ46とラグ46との中間位置の内側面に内方突起44が形成されている(図5参照)。ラグ46は、実質的にクローラベルト幅にわたって延びており、クローラベルト本体と同じかそれ以上の高さを有している。したがって、クローラベルト26を地面に向かって押し付ける転輪2からみて、ラグ46が存在する箇所は弾性変形しにくい硬い箇所であり、ラグ46から遠ざかるほど、弾性変形しやすい(撓みやすい)軟らかい箇所となる。転輪2は、相対的にクローラベルト26の内側面を転動するが、転輪2がラグ46の真上に位置する時にはクローラベルト26の該当部分はそれほど弾性変形しないが、転輪2がラグ46とラグ46との間に位置する時には、転輪2がラグ46の真上に位置する場合と比較して、クローラベルト26の弾性変形はかなり大きくなる。このことから、クローラベルト26は、長手方向においてラグピッチPrで高弾性変形領域から低弾性変形領域を経て再び高弾性変形領域に移行する弾性周期性を示す周期弾性変化構造を有しているといえる。このことは、図1では、硬(低弾性変形)と軟(高弾性変形)との間を繰り返す周期波形の形態で表されている。ここでは、このクローラベルト26の弾性周期性の波長はWLで示され、その1/2波長(0.5波長)は、WLhで示されている。
【0019】
本発明によるクローラ走行装置11の基本的な特徴の1つは、上述した周期弾性変化構造を有するクローラベルト26の硬(低弾性変形)と軟(高弾性変形)との間に、全ての転輪2を出来るだけ均等に割り当てることである。この転輪2の割り当ての例が模式的であるが図1に示されている。図から理解できるように、n個の転輪2が配置される場合、弾性周期性の硬から軟の振幅範囲を(n−1)等分して、各弾性値(周期振幅値)に対応する位置に各転輪2を配置するとよい。近似的に言えば、WLh/(n-1)の位相差を付けて、転輪2の中心間距離を設定すれば、ほぼ均等な割り当てとなる。つまり、第1転輪の位置を基準とすれば、第2転輪は第1転輪から中心間距離でD=WLh/(n-1)だけ離し、第3転輪は第1転輪から2Dだけ離すことになる。あとは順次、Dを増し分として離せばよい。その際、クローラベルト26の弾性周期性を考慮すれば、各転輪の位置は、以降の周期における同じ弾性値(周期振幅値)に対応する位置を選択してもよい。図に例示しているように、第3転輪は、第1転輪から(WL(波長)−2D)だけ離れた位置、あるいは第1転輪から(WL(波長)+2D)だけ離れた位置に配置することも可能である。
【0020】
次に図2を用いて、転輪群がボギー転輪ユニットとして構成されたクローラ走行装置11における本発明の基本原理を説明する。図2のクローラ走行装置11では、転輪2は、前側ボギー転輪ユニット23と後側ボギー転輪ユニット24のそれぞれに含まれる前転輪37と後転輪38である。前側ボギー転輪ユニット23及び後側ボギー転輪ユニット24における前転輪37と後転輪38との中心間距離はLrで表され、前側ボギー転輪ユニット23の後転輪38と後側ボギー転輪ユニット24の前転輪37との中心間距離(ボギー転輪ユニット間距離)はLbで表されている。このようなクローラ走行装置11の場合、各ボギー転輪ユニット23、24において、クローラベルト26の弾性周期性に合わせて、前転輪37が上下方向のうちの一方側へ揺動する際に、スムーズに後転輪38が他方側へ揺動することが好都合である。つまり、中心間距離:Lrは、弾性周期性の1/2波長の奇数倍となるように設定される(第1条件)。これにより、一方の転輪(前転輪37)がクローラベルト26の硬い(低弾性変形)箇所に接当しているときは、他方の転輪(後転輪38)がクローラベルト26の軟らかい(高弾性変形)箇所に接当することになる。また、一方の転輪(前転輪37)がクローラベルト26の硬軟中間(中弾性変形)の位置に接当している時は、他方の転輪(後転輪38)もクローラベルト26の硬軟中間(中弾性変形)の位置に接当することになる。このことからから、ボギー転輪ユニットの揺動中心の上限変動範囲が他の配置パターンに比べて小さくなり、トラックフレーム20の振動が抑制される。さらに、前側ボギー転輪ユニット23と後側ボギー転輪ユニット24とに含まれる前転輪37と後転輪38とが、クローラベルト26の硬(低弾性変形)と軟(高弾性変形)との間に出来るだけ均等に割り当てることができるように、ボギー転輪ユニット間距離:Lbが設定される(第2条件)。この第1条件と第2条件とを満たしている、図2で示した好適例では、前転輪37と後転輪38との中心間距離:Lrは、3.5波長となっており、ボギー転輪ユニット間距離:Lbは(2+2/3)波長となっている。
【0021】
次に、本発明によるクローラ走行装置の具体的な実施形態の1つを、図面を用いて説明する。図3は、クローラ走行装置を採用したトラクタの側面図であり、図4はクローラ走行装置の側面図である。
図3に示すように、この実施形態では、クローラ走行装置11は、セミクローラ型のトラクタ12の後輪として機能する。このトラクタ12は、4輪駆動型のトラクタをセミクローラ型に仕様変更したものである。トラクタ12には、キャビン13付きの走行機体14の前部に操向可能な左右一対の前輪15が備えられている。走行機体14の後部には、後部ミッションケース16が備えられている。トラクタ12は、走行機体14の後部に不図示の油圧装置及び不図示の3点リンク機構を介して不図示のロータリ耕耘機等の作業装置を牽引装着できるように構成されている。
【0022】
図3図4に示すように、クローラ走行装置11には、トラックフレーム20と、前従動輪21と、後従動輪22と、前側ボギー転輪ユニット23と、後側ボギー転輪ユニット24と、駆動輪25と、クローラベルト26とが備えられている。
【0023】
トラックフレーム20は、前後方向に長く形成されて、角材、板材、パイプ材等で構成されている。そして、トラックフレーム20は、走行機体14側から横向き水平に突出された不図示の揺動軸を中心に前後に揺動可能に走行機体14側に支持されている。
【0024】
前従動輪21は、トラックフレーム20の前部側に備えられている。前従動輪21は、トラックフレーム20の前端部の上面に下向き傾斜状に配置されて支持されたテンション調整機構30の自由端に配置された前軸受体31に支持され、横向き水平な前支軸21Aの周りに回動自在とされている。
【0025】
後従動輪22は、トラックフレーム20の後部側に備えられている。後従動輪22は、トラックフレーム20の後端部に設けられた後軸受体32に支持され、横向き水平な後支軸22Aの周りに回動自在に構成されている。
【0026】
前従動輪21と後従動輪22との間に配置された転輪群は、前側ボギー転輪ユニット23と後側ボギー転輪ユニット24とから構成されている。前従動輪21と後従動輪22との間には、トラックフレーム20の前側と後側において支持された2つの枢支軸34Aが配置され、これら枢支軸34Aの周りにシーソー揺動自在な天秤状の揺動フレーム34がそれぞれ備えられている。図4図5に示すように、揺動フレーム34の下端側には、ガイド部材35が備えられている。
【0027】
図3図4に示すように、前側ボギー転輪ユニット23は、トラックフレーム20の前部側寄りの箇所に配置されており、前側の揺動フレーム34と、前転輪37と、後転輪38とを一つの組として構成されている。前転輪37は、揺動フレーム34の前部に配置された横向き水平な前軸心37Aの周りに回動自在に取り付けられている。後転輪38は、揺動フレーム34の後部に配置された横向き水平な後軸心38Aの周りに回動自在に取り付けられている。前転輪37及び後転輪38は、前従動輪21及び後従動輪22よりも小径とされている。
【0028】
図4図5に示すように、枢支軸34Aは、前転輪37と後転輪38との間の前後中途部に備えられている。具体的には、枢支軸34Aから前軸心37Aまでの距離と、枢支軸34Aから後軸心38Aまでの距離とが略同一に設定されている。また、前軸心37A及び後軸心38Aは、枢支軸34Aよりも低い位置に設定されている。このため、枢支軸34A、前軸心37A、後軸心38Aは、枢支軸34Aを上頂点、前軸心37Aを前方の下頂点、後軸心38Aを後方の下頂点として三角形状に配置されている。
【0029】
図3図4に示すように、前側ボギー転輪ユニット23は、トラックフレーム20の下部に固定された第1ブラケット40に枢支軸34Aが枢支されることにより、トラックフレーム20に取り付けられている。後側ボギー転輪ユニット24は、トラックフレーム20の下部に固定され、第1ブラケット40よりも後方に位置する第2ブラケット41に枢支軸34Aが枢支されることにより、トラックフレーム20に取り付けられている。後側ボギー転輪ユニット24は、前側ボギー転輪ユニット23よりも後方に配置されているだけであり、実質的に前側ボギー転輪ユニット23と同じ構造である。
【0030】
前側ボギー転輪ユニット23及び後側ボギー転輪ユニット24の接地面は、前従動輪21及び後従動輪22の接地面よりも低い位置になるように設定されている。さらに、テンション調整機構30によるテンション調整により前従動輪21の位置が前方下向きに移動されても、前側ボギー転輪ユニット23及び後側ボギー転輪ユニット24の接地面が、前従動輪21よりも低い位置となるように設定されている。
【0031】
駆動輪25は、後部ミッションケース16の側面から側方へ突出された後車軸42の外端面に装着された大径の円板状のスプロケットにより構成されており、スプロケットの外周縁から等間隔で周方向に並ぶように駆動用爪体43が形成されている。駆動輪25は、トラックフレーム20の上方に配置されている。また、駆動輪25は、前転輪37、後転輪38の上方に配置されている。駆動輪25、前従動輪21、後従動輪22は、駆動輪25を上頂点、前従動輪21を前方の下頂点、後従動輪22を後方の下頂点として三角形状に配置されている。
【0032】
クローラベルト26は、主としてゴム等の弾性体で構成され、前従動輪21、後従動輪22、前側ボギー転輪ユニット23の前転輪37及び後転輪38、後側ボギー転輪ユニット24の前転輪37及び後転輪38、駆動輪25に亘って巻き掛けられ、三角形状の経路を周方向として回動(周回移動)するように構成されている。クローラベルト26には、駆動輪25の周方向での駆動用爪体43の配設間隔に対応して、クローラベルト26の内周面の径方向内方側に突出する内方突起44が形成されており、図示は省略するが、周方向で内方突起44の間に駆動用爪体43が嵌合する凹部が形成されている。駆動輪25の駆動用爪体43は、周方向でクローラベルト26の内方突起44と内方突起44との間に形成された凹部に嵌合することで、駆動輪25からクローラベルト26へ駆動力が伝達される。
【0033】
図3から図6に示すように、前側ボギー転輪ユニット23の前転輪37及び後転輪38、後側ボギー転輪ユニット24の前転輪37及び後転輪38は、それぞれ、枢支軸34Aの外端と内端にそれぞれ設けられた左右の転動体により、クローラベルト26の内方突起44を挟むマタギ転輪として構成されている。左右の転動体がクローラベルト26の内周面における車輪転動面を転動し、クローラベルト26の内方突起44が左右の転動体により挟まれて案内されるように構成されている。また、ガイド部材35が内方突起44に沿って案内され、脱輪の防止が図られている。
【0034】
図5に示すように、クローラベルト26には、径方向外方側に向けて凸設されたラグ46が形成されており、そのラグ46は、クローラベルト26の周方向に一定ピッチ(ラグピッチ)Prで備えられている。また、クローラベルト26には、内方突起44の形成箇所に対応する部分に、周方向に沿ってラグピッチと同じ一定ピッチPrで芯金45が埋設されている。なお、内方突起44もラグピッチと同じ一定ピッチPrで形成されている。この実施形態は、図5から明らかなように、内方突起44と芯金45は、隣接するラグ46の丁度中間位置に配置されている。このような構造は、図1を用いて説明したような周期弾性変化構造の一例であり、従って、クローラベルト26は、ラグピッチPrで高弾性変形領域から低弾性変形領域を経て再び高弾性変形領域に移行する弾性周期性を示す。低弾性変形領域はラグ46が形成されている箇所であり、高弾性変形領域は、隣接するラグ46の中間となる箇所である。ラグ46が形成されている箇所は、接地面に対する鉛直方向でのクローラベルト26の弾性変形は小さく(硬い)、ラグ形成箇所から離れるほどクローラベルト26の弾性変形は大きくなる(軟らかい)。言い換えると、クローラベルト26は、ラグ46が形成されている箇所において高剛性となっており、隣接するラグ46の中間となる箇所において低剛性となっている。この弾性周期性の波長WLはラグピッチPrに相当する(図5参照)。
【0035】
この転輪配置パターンにより、クローラベルト26の硬い部位と軟らかい部位とに応じて、前転輪37が上下方向のうち一方側へ揺動する際に、後転輪38が上下方向のうち他方側へ揺動する。その結果、クローラベルト26の周期的な弾性変化(硬−軟変化)に対応して、前転輪37と後転輪38とは上下方向で反対側に揺動されることになり、この反対側の揺動によって枢支軸34Aの上下動が抑制される。
【0036】
つまり、図5から理解できるように、前転輪37が低弾性の硬い領域(高剛性領域)であるラグ46の形成箇所に位置するときに、後転輪38が高弾性の軟らかい領域(低剛性領域)である芯金45の形成箇所に位置することになる。逆に、前転輪37が高弾性の軟らかい領域である芯金45の形成箇所に位置するときに、後転輪38が低弾性の硬い領域であるラグ46の形成箇所に位置することになる。
【0037】
また、前転輪37の前軸心37Aと後転輪38の後軸心38Aとの間の中心間距離は、クローラベルト26のラグピッチPrの3.5倍の距離であるので、前転輪37及び後転輪38の揺動半径は大きくなり、有利である。しかしながら、前転輪37の前軸心37Aと後転輪38の後軸心38Aとの間の中心間距離については、ラグピッチPrの1.5倍の距離、2.5倍の距離、4.5倍の距離等でもよい。
【0038】
このように設定された転輪配置パターンを導入した際に、前転輪37及び後転輪38がどのように揺動し、枢支軸34Aが上下方向でどのように変位するかを実験により確認したので、図7の模式的なグラフに基づいて説明する。前転輪37が最初の基準位置よりも上側へ変位する際には、後転輪38が最初の基準位置よりも下側へ変位する。逆に、前転輪37が最初の基準位置よりも下側へ変位する際には、後転輪38が最初の基準位置よりも上側へ変位する。言い換えれば、図7に示すように、前転輪37の上下方向の変位の時間変化を示す波と、後転輪38の上下方向の変位の時間変化を示す波とは、互いに約180度ずれた逆位相の関係となる。したがって、前転輪37の上下方向の変位と後転輪38の上下方向の変位とは打ち消し合うことになるので、図7に示すように、枢支軸34Aにおける上下方向の変位はほとんど無くなる。その結果、枢支軸34Aからトラックフレーム20に伝達される振動は抑制される。
【0039】
本発明によるクローラ走行装置11をトラクタ12に装備することにより、トラックフレーム20から走行機体14側へ伝達される振動を低減でき、特にトラクタ12が平地を走行する際の振動低減効果が大きくなり、トラクタ12の乗車感を良好にできる。
【0040】
〔別実施形態〕
(1)上述した実施形態では、クローラベルト26の弾性周期性は正弦波に類似したものを想定していたが、のこぎり波に類似するような立ち上がりと立下りの長さが異なるような周期性であってもよい。硬い箇所(低弾性箇所あるいは高剛性箇所)と軟らかい箇所(高弾性箇所あるいは低剛性箇所)が繰り返すような周期性を示すクローラベルト26であれば、本発明を好適に適用することができる。
【0041】
(2)上記実施形態では、前従動輪21と後従動輪22との間に配置された転輪群が、前側ボギー転輪ユニット23、後側ボギー転輪ユニット24のみから構成されている例を示したがこれに限られない。ボギー転輪ユニットが1つだけのものや、3つ以上のもの、やボギー転輪ユニットと非ボギー転輪ユニットや固定転輪との組み合わせたものでもよい。
【0042】
(3)上記実施形態では、クローラベルト26が、主としてゴム等の弾性体で構成されている例を挙げたがこれに限られず、クローラベルト26が、主として鉄等の金属体で構成されていてもよい。
【0043】
(4)上記実施形態では、クローラ走行装置11が、トラクタ12に装備されたものを一例として示したが、これに限られず、クローラ走行装置11が、コンバイン、建設機械等の他の作業車に装備されていてもよい。
【符号の説明】
【0044】
2 :転輪
11 :クローラ走行装置
14 :走行機体
20 :トラックフレーム
21 :前従動輪
22 :後従動輪
23 :前側ボギー転輪ユニット
24 :後側ボギー転輪ユニット
25 :駆動輪
26 :クローラベルト
34 :揺動フレーム
34A :枢支軸
37 :前転輪
38 :後転輪
45 :芯金
46 :ラグ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7