特許第6289277号(P6289277)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6289277
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】ホーンアンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 13/02 20060101AFI20180226BHJP
【FI】
   H01Q13/02
【請求項の数】8
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-118279(P2014-118279)
(22)【出願日】2014年6月9日
(65)【公開番号】特開2015-201825(P2015-201825A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2017年4月3日
(31)【優先権主張番号】特願2014-71989(P2014-71989)
(32)【優先日】2014年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003388
【氏名又は名称】東京計器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101856
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 聡
(72)【発明者】
【氏名】清水 正樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 大祐
【審査官】 橘 均憲
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第02105991(EP,A1)
【文献】 米国特許第08354970(US,B1)
【文献】 特開平09−164215(JP,A)
【文献】 特公昭28−005702(JP,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0140560(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q1/00−25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導波管が後端側に接続されることができる金属ホーンと、該金属ホーンの先端側に接続される誘電体ホーンとを備えるホーンアンテナであって、
前記金属ホーンは、後端側に前記導波管の導波路の断面形状と同一の開口を有し、該開口から先端側にかけて錐台形状に広がる空間を備え、
前記誘電体ホーンは、前記錐台形状の空間を充填する金属ホーン充填部と、前記金属ホーン充填部の後端側に設けられ、前記導波管の所定長さ部分を充填する導波管充填部と、前記導波管充填部の後端側に設けられ、前記導波管と前記誘電体ホーンとを整合させる第1整合部と、前記金属ホーン充填部の先端側の断面中央部に設けられ、前記誘電体ホーンと空気を整合させる第2整合部と、該第2整合部の前方側から前端側に錐台形状に広がり、前記誘電体ホーンの先端側に開口する空間を有するホーン部とを備え、
前記金属ホーンと前記ホーン部は、前後方向に垂直な断面外形状が前記導波管の断面外形状と同じ形をなし、かつ前記金属ホーンと前記ホーン部それぞれの前後方向に垂直な断面外形状はそれらの先端部において同一の形及びサイズをなしているホーンアンテナ。
【請求項2】
前記金属ホーンの後端に前記導波管が一体的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のホーンアンテナ。
【請求項3】
前記導波管は円形導波管であり、前記金属ホーンと誘電体ホーンの断面外形状は円形であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のホーンアンテナ。
【請求項4】
前記導波管の断面外形状は、前記金属ホーンの断面外形状よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のホーンアンテナ。
【請求項5】
前記導波管と前記金属ホーンの外周は、フッ素樹脂チューブで覆われていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のホーンアンテナ。
【請求項6】
前記フッ素樹脂チューブは、金属ホーンを覆う第1PFAチューブと、導波管を覆う第2PFAチューブとが、別体とされていることを特徴とする請求項5に記載のホーンアンテナ。
【請求項7】
前記誘電体ホーンの先端周縁に先端側に突出する突出部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のホーンアンテナ。
【請求項8】
前記突出部は三角形状をなし、前記誘電体ホーンの先端周縁の先端部が三角波形状に形成されていることを特徴とする請求項7に記載のホーンアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波を用いて対象物までの距離を測定するレベル計に用いられるホーンアンテナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のホーンアンテナとして、誘電体を用いたチューブアンテナが知られている。このホーンアンテナは、前端がコーン状に広がった円形導波管に、円形誘電体導波路が接続され、さらにこの円形誘電体導波路の前端にホーン形状をなす誘電体ホーンが接続されている。
このホーンアンテナは、誘電体ホーンが主な放射領域となり、金属だけの金属ホーンアンテナに比べると、約半分の直径で同程度の利得及び指向性を有するという利点がある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第8,354,970 B2号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このホーンアンテナは、26GHz帯のような準ミリ波帯を扱う場合には、薄い誘電体ホーンを製造しなければならず、従来の金属の円形導波管の形状と誘電体ホーンの形状とを有するホーンアンテナの構造においては、その製造が困難であった。
【0005】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、コンパクトで利得及び指向性を高めることができ、且つその構造が簡単で容易に製造を行うことができるホーンアンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、本発明は、導波管が後端側に接続されることができる金属ホーンと、該金属ホーンの先端側に接続される誘電体ホーンとを備えるホーンアンテナであって、前記金属ホーンは、後端側に前記導波管の導波路の断面形状と同一の開口を有し、該開口から先端側にかけて錐台形状に広がる空間を備え、前記誘電体ホーンは、前記錐台形状の空間を充填する金属ホーン充填部と、前記金属ホーン充填部の後端側に設けられ、前記導波管の所定長さ部分を充填する導波管充填部と、前記導波管充填部の後端側に設けられ、前記導波管と前記誘電体ホーンとを整合させる第1整合部と、前記金属ホーン充填部の先端側の断面中央部に設けられ、前記誘電体ホーンと空気を整合させる第2整合部と、該第2整合部の前方側から前端側に錐台形状に広がり、前記誘電体ホーンの先端側に開口する空間を有するホーン部とを備え、前記金属ホーンと前記ホーン部は、前後方向に垂直な断面外形状が前記導波管の断面外形状に対応する同一形状をなしているものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、コンパクトで利得及び指向性を高めることができ、且つその構造が簡単で容易に製造を行うことができるホーンアンテナを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1におけるホーンアンテナを示す断面図である。
図2】実施の形態2におけるホーンアンテナを示す断面図である。
図3】実施の形態3におけるホーンアンテナを示す断面図である。
図4】実施の形態3におけるホーンアンテナの作用を比較説明するための図である。
図5】実施の形態3におけるホーンアンテナの作用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0010】
(実施の形態1)
このホーンアンテナは、導波管として円形導波管1が後端側2bに接続されることができる金属ホーン2と、該金属ホーン2の前端側2aに接続される誘電体ホーン3とを備えている。
【0011】
金属ホーン2は、図1に示されるように、その外観が円形導波管1の外観と同じ円柱体状をなし、その外径が円形導波管の外径よりも若干大きい。金属ホーン2の前後方向の長さは取り扱う電波の波長と後述する円錐台の広がり角度に基づいて所定の長さとされている。そして、金属ホーン2の前後方向である長さ方向に垂直な断面の中心を通る中心軸を有する円錐台形状の空間21がホーンとして形成されている。この円錐台形状は、前端側21aの内径が後端側21bの内径よりも大きく、且つ後端側21bの内径が円形導波管1の内径に等しくされている。
【0012】
誘電体ホーン3は、誘電体が金属ホーン2の円錐台形状の空間21(金属ホーン2の前端側2aから後端側2bまでの空間)に充填される金属ホーン充填部32と、該金属ホーン充填部32の後端部32aに連続し、円形導波管1の所定の長さ部分に充填される導波管充填部33と、該導波管充填部33の後端部33aから円形導波管1内で後方側に円錐形状に突出され、円形導波管1と誘電体(誘電体ホーン3)とを整合させる第1整合部34と、金属ホーン2の前端側2a部分の開口中央部に形成され、誘電体(誘電体ホーン3)と空間とを整合させる第2整合部35と、第2整合部35の前端から、所定の長さに円筒状に設けられる空洞部37と、第2整合部35の前方側である空洞部37の前端部37bから誘電体ホーン3の前端にかけての長さ方向にわたって円錐台形状に広がり前端で開口する空間31を有するホーン部36とを備えている。
【0013】
ここで、金属ホーン2の前端側2aの外径と、金属ホーン2の開口径と、ホーン部36の外径と、ホーン部36の円錐台形状の空間31の開口径はほぼ等しい円形とされており、円形導波管1の前方に形成されるこれら金属ホーン2と誘電体ホーン3(ホーン部36)の外観形状は一つの連続する円柱体形状をなしている。そしてその断面外形状は、金属導波管1のそれに対応する円形をなしている。また、金属ホーン2の長さ方向の中心軸とホーン部36の長さ方向の中心軸とは、円形導波管1の中心軸と一致している。
【0014】
第2整合部35は、空洞部37の後端37aに設けられており、空洞部37に連続する空洞の第1テーパ部35aと第2テーパ部35bとが段差を有して形成されているが、テーパ状ではなく段差を有する平面により構成するようにしても良い。
【0015】
空洞部37は、ホーン部36の前端36aから第2整合部35までの距離Dを定めるために設けられている。この空洞部37の長さは、製造の容易性から、ホーン部の開き角を所定の大きさにするとともに、距離Dを適宜なものとするために設定されているものであり、設計によっては、この空洞部37は必須ではない。この第2整合部35、空洞部37、及び第1整合部34の中心軸もまた円形導波管1の上述した中心軸と一致している。
【0016】
以上の構成において、誘電体ホーン3は一体的に形成されており、金属ホーン充填部32と、導波管充填部33と、ホーン部36とは一体成型されている。
【0017】
金属ホーン2の後端側2bに接続される円形導波管1は、金属ホーン2と別に成形されて溶着等、適宜な方法で接続される。本例の場合は、円形導波管1の前端側に段差部1aを設け、該段差部1aの外周部に金属ホーン2のリング状の係止部2cが係止され、溶着により接続されている。
【0018】
そして、円形導波管1の外径は、金属ホーン2の外径よりもわずかに小さくされている。また、金属ホーン2から円形導波管1の外周全面がPFA(フッ素樹脂)チューブ4,5で覆われている。PFAは、四フッ化エチレンとパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体で、パーフルオロ樹脂として化学的・電気的・機械的特性及び表面特性を有する。また、PFAは溶融成形できる熱可塑性樹脂としての特性も有しているため、熱溶融成形法による加工性に優れている。
【0019】
なお、本実施の形態において、金属ホーン2を覆う第1PFAチューブ4と円形導波管1を覆う第2PFAチューブ5とはそれぞれの内径が異なる別体として設けられ、第1PFAチューブ4は金属ホーン2の外径寸法に、第2PFAチューブ5は円形導波管1の外径寸法にそれぞれ対応した内径を有している。
【0020】
このようにPFAチューブ4,5を、金属ホーン2を覆う部分と円形導波管1を覆う部分とで、別体とすることにより、周囲温度が変化し、第2PFAチューブ5が伸びることが生じても、それが第1PFAチューブ4に及ぼす影響を軽減でき、その結果、金属ホーン2とその内部に充填された誘電体(導波管充填部33)との間に隙間が生じることを防止することができる。もっとも、それが許容できる範囲においては、これら第1、第2PFAチューブ4,5は一体的な一つのチューブで構成してもよい。
【0021】
以上の構成において、本実施の形態のホーンアンテナにおいて、図示しない電波レベル計の本体から円形導波管1に供給された電波は、第1整合部34を介して、導波管充填部33の円形導波管1に伝送され、さらに、円形導波管1から連続的に広がる金属ホーン2に沿った形で広がりながら、金属ホーン2の内部の金属ホーン充填部32を伝送される。そして、金属ホーン2の前端側2aに達した電波は、ホーン部36の内部を伝搬しつつ、少しずつ誘電体近傍の空間にも広がり、ホーン部36の前端側から放射される。
【0022】
そして、誘電体ホーン3の外周形状は円柱状をなし、内側は金属ホーン2から離れるにしたがって、径が大きくなる円錐台形状の空間31をなすため、金属ホーン2の近傍では誘電体の肉厚が厚く、前端側31aの開口部に向かうにしたがって肉厚が薄くなっている。このため、電波は、金属ホーン2の開口付近では、その電力は誘電体ホーン3の内部にほとんど存在するが、誘電体ホーン3の前端に向かうにしたがって、ホーン部36の外にエネルギーが広がりながら伝搬するようになる。
【0023】
そして、電波の放射開口面である誘電体ホーン3の前端側では、誘電体ホーン3の外径よりも外側にまで電波が広がった状態の電力分布である。よって、実効的なアンテナの開口面積は誘電体ホーンの物理的な寸法に比べて大きくなり、同じ径を有する従来の金属ホーンに比べて大きな利得が得られることになる。また、誘電体ホーンの形状をシンプルにできるため、その製造も容易となる。
【0024】
(実施の形態2)
図2を用いて、実施の形態2について説明する。
なお、図2において、実施の形態1と相当物には、同じ符号を付しており、ここでの説明を省略する。
【0025】
実施の形態1においては、金属ホーンと円形導波管を別体構造としたが、図2に示すように、一体構造としてもよい。この場合、金属ホーン2Aの外径と円形導波管1Aの外径を等しくすると、製造が容易となる。
【0026】
また、実施の形態2は、第2整合部35Aとホーン部36Aとの間に、実施の形態1で示したような空洞部(図1)が形成されておらず、ホーン部36Aが直接第2整合部35Aに接続される。また、第2整合部35Aの形状は、単に段差を有する面構造(円平面構造)とされている。
【0027】
さらに、実施の形態2では、金属ホーン2Aの外径と円形導波管1Aの外径とが等しい場合を示している。
【0028】
(実施の形態3)
図3図5を用いて、実施の形態3について説明する。
図3において、実施の形態1と相当物には同じ符号を付しており、ここでの説明を省略する。
【0029】
実施の形態3の誘電体ホーン3Bは、実施の形態1で示した誘電体ホーン3のホーン部36の前端側31a(すなわち、誘電体ホーンの先端)周縁に、該周縁から三角形状に突出する複数の突出部38を設けるようにしたものである。より詳しくは、この三角形状はホーン部36の前端側31aの円形状の周縁方向全域に沿って等間隔となるよう周期的に設けられ、誘電体ホーン3Bの先端周縁の先端部が三角波形状に形成されている。この場合、誘電体ホーン3Bの先端から第2整合部35までの距離Dは、実施の形態1と同じ、即ち三角形状の突出部の基部、すなわちホーン部36の前端側31aからの距離でも良いし、突出部38の頂部38aからの距離であっても良い。
【0030】
実施の形態3の作用、効果について、図4図5を用いて以下に説明する。
ホーンアンテナを水蒸気雰囲気の中で使用すると、誘電体ホーン3の表面に水滴41が付着する。電波レベル計のようにアンテナが下向きの場合、アンテナ表面の一部の水滴は下方向に移動し、アンテナ先端に滞留する。
【0031】
図4に示すように、誘電体ホーン3(ホーン部36)の先端が平坦な場合、先端に滞留する水滴41の量が多くなり、アンテナに給電された電波のうち一部がアンテナ先端で反射され、電波が電波レベル計本体に戻り、電気的性能に関してその効果が低減されるおそれがある。
【0032】
図5に示すように、ホーン部36の前端側に三角形の突出部38を周期的に設けると、アンテナ先端である三角形の頂部38aに水滴が流れ、滞留する水滴41の量は少なくなる。このとき、アンテナ先端で反射される電波も小さくなり、電気的性能が改善される。
【0033】
以上に説明した実施の形態は、金属ホーンや誘電体ホーンのホーン部が円錐台形状について説明したが、角錐台形状のものであっても良いことは言うまでもない。この場合、前後方向に垂直な金属ホーンの断面外形状、誘電体ホーンの断面外形状、およびそれらの空間の断面形状は四角形状となる。また、第1整合部は四角錐状に導波管後方に突出する。
【0034】
また、実施の形態3で示した突出部38の形状は、三角形状について説明したが、突出部38の基部側(前端側31a)から先端側(頂部38a)にかけて、狭くなってゆくような形状であれば、どのような形状でもよい。
【0035】
本発明は、その要旨または主要な特徴から逸脱することなく、他の様々な形で実施することができる。そのため、前述の実施の形態は、あらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、何ら拘束されない。更に、特許請求の範囲の均等範囲に属する全ての変形、様々な改良、代替および改質は、全て本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0036】
1、1A 円形導波管
2、2A 金属ホーン
3、3A、3B 誘電体ホーン
4 第1PFAチューブ
5 第2PFAチューブ
21 円錐台形状の空間
31,31A 円錐台形状の空間
32 金属ホーン充填部
33 導波管充填部
34 第1整合部
35,35A 第2整合部
36,36A ホーン部
37 空洞部
38 突出部
38a 頂部
図1
図2
図3
図4
図5