【文献】
鎌田良基ら,マイクロ波放電による二酸化炭素の分解および再資源化の検討,電気関係学会九州支部連合大会講演論文集(CD−ROM),2007年,vol.60th,no.06−2P−14,478
【文献】
児玉健太朗ら,大気圧マイクロ波プラズマによるCO2分解,電気学会プラズマ研究会資料,2009年,vol.PST−09−118,no.113−126,27−30
【文献】
須藤広雄ら,マイクロ波プラズマを利用した二酸化炭素の改質反応,化学工学会秋季大会研究発表講演要旨集,1998年,vol.31st,第1分冊,282
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1は本発明の一つの実施形態に係る、マイクロ波プラズマを発生し、ガスを変換するガス変換システム1の模式図である。図示されるように、ガス変換システム1は、ガラス、セラミック又はその他のあらゆる誘電性の材料など、マイクロ波に透明な材料、好ましくは石英のガス流管26、マイクロ波をガス流管26に供給するためのマイクロ波供給ユニット11、及びマイクロ波をマイクロ波供給ユニット11からガス流管26へ伝達する導波管24を有することができる。ガス流管26は燃焼排気などのガス供給源からガス及び/又は混合ガスを受容する。
【0008】
マイクロ波供給ユニット11はガス流管26へマイクロ波を提供する。マイクロ波供給ユニット11は、マイクロ波を発生するマイクロ波発生器12、マイクロ波発生器12へ電力を供給する電源13、及び断路器15を有する。断路器15はマイクロ波発生器12に向かって伝搬する反射されたマイクロ波を消散するためのダミーロード16、及び反射されたマイクロ波をダミーロード16へと方向付けるサーキュレーター18を有する。
【0009】
一つの実施形態において、マイクロ波供給ユニット11はマイクロ波の強度を測定するための連結器20、ダミーロード16において消散させるべき反射されたマイクロ波の強度を測定するためにダミーロード16上に位置する他の連結器17、及びガス流管26から反射されたマイクロ波を低減するためのチューナー22、を更に有する。
図1に示されているマイクロ波供給ユニット11の構成要素はよく知られたものであり、ここでは例示的な目的のみのために記載されている。また、本発明から逸脱することなく、マイクロ波供給ユニット11をガス流管26にマイクロ波を供給する能力を有するシステムで置き換えることも可能である。断路器15と連結器20の間に位相調整器を配置することも可能である。
【0010】
ガス変換システム1は、ガス流管26内での容易なプラズマの生起(ignition)のためのガス流管26上の高電圧スパーク生起器(igniter)28、ガスを受容し、それをガス流管26内へ供給するガス流入口271を有する頂蓋27、及び、効率的なプラズマのため定常波位置を調整するための可動ショート35を有することができる。頂蓋27は好ましくは金属で作られ、ガス流管26の頂部からのマイクロ波の漏れを避ける。ガス流管26内側のガスの流れは、ガス流入口271が側方噴射として構成されていることにより渦を巻く動きをもっていても良い。ガス流入口271は頂部噴射として、直線状の流れ(渦を巻く動きをもたない)をもつように構成されていても良く、又は、斜め噴射として構成されていても良い。
【0011】
ガス変換システム1は煙道ガス(flue gas)処理のために使用することができる。より具体的には、それは煙道ガス中の二酸化炭素(CO
2)の一酸化炭素(CO)及び酸素(O
2)へのプラズマ101を用いた変換のために使用することができる。ガス変換システム1は煙道ガスをCO
2と他の成分(Non-CO
2)とに分離する流入ガス分離器41を有していても良い。流入ガス分離器41は既存の方法、例えば吸収による気体分離、低温気体分離又は気体分離膜を使用することができる。流入ガス分離器41はガス流入口271を通過してガス流管26にCO
2を供給する。ガス流管26から排出された変換後のガスは流出ガス分離器42に供給され、変換後のガスがCO、O
2及びCO
2に分離される。流出ガス分離器42は既存の方法、例えば吸収による気体分離、圧力スイング吸着法又は気体分離膜を使用することができる。流出ガス分離器42によって分離されたCO
2は更なる変換のためにガス流入口271へ循環させても良い。従って、ガス分離器42及びガスライン421はガス循環システムを形成する。
【0012】
図2Aは
図1に示されたガス変換システムの一部の代替的な実施形態の模式的な断面図である。図示されるように、温度制御手段241(第一の温度制御手段)及び261(第二の温度制御手段)が導波管24上及びガス流管26上にそれぞれ設けられ、それぞれが導波管24及びガス流管26の温度を制御している。温度制御手段241及び261のそれぞれは水冷式システム、他の冷却剤を用いる冷却システム、又は、温水、オイル又はガスなどの加熱媒体を使用した加熱器とすることができる。温度制御手段241及び261の熱媒体の流れが矢印242及び262として示されている。導波管24及びガス流管26の温度は熱媒体の流量を調整すること及び温度計(温度センサ
ー)29を使用して導波管又はガス流管の温度を感知することによって制御され得る。
また、温度センサーの構成は図示したものに限定されず、ガス流管26の近傍に配置され、ガス流管26の温度を測定するように構成された温度センサーを更に有してもよい。
【0013】
図2Bは
図1に示されたガス変換システムの一部の代替的な実施形態の模式的な断面図である。図示されるように、例えばヒートシンク等の空気冷却手段243(第一の温度制御手段)及び263(第二の温度制御手段)が導波管24上及びガス流管26上にそれぞれ設けられ、それぞれが導波管24及びガス流管26の温度を制御している。冷却のための空気流は矢印244として図示されている。導波管24及びガス流管26の温度は空気流量を調整すること及び温度計(温度センサ
ー)29を使用して温度を感知することによって制御され得る。
また、温度センサーの構成は図示したものに限定されず、ガス流管26の近傍に配置され、ガス流管26の温度を測定するように構成された温度センサーを更に有してもよい。
【0014】
図2Cは
図1に示されたガス変換システムの一部の代替的な実施形態の模式的な断面図である。図示されるように、熱交換機264がガス流管26の下流に設けられ、反応器領域に存在するガスの温度が所定の水準に保たれるようになっている。反応器領域は絶縁材料265によって絶縁され、反応器領域内のガス温度がより高い温度に保たれ、それにより反応器の変換効率が向上するようにすることができる。熱交換機264は例えば水等の冷却剤を用いた急速ガス冷却手段とすることができる。
【0015】
図3A及び
図3Bは本発明による統合ガス変換システムの様々な実施形態の模式図である。
図3Aは4つのガス変換システム1a−1dを持つ統合ガス変換システムを示す。4つのガス変換システム1a−1dのそれぞれは
図1に示されたガス変換システム1に類似する。煙道ガスは、制御部61によって制御される流入ガスマニホールド51へ供給される。4つのガス変換システム1a−1dのそれぞれに供給された煙道ガスは、ガス分離器によって分離され、そしてプラズマを使用して変換され、続いて流出ガスマニホールド52へ送られる。それぞれのガス変換システム1a−1dは
図1のシステム1と同様の機構及び機能を有しているため、ガスの分離及びCO
2の循環はガス変換システム1a−1dの内側(内部)で行われる。ガス変換システムが機能できない、例えばプラズマが不意に消滅させられた場合は、制御部61は流入ガスマニホールド51からのガスの分配を制御して、その機能できないガス変換システムへガスが供給されないようにする。加えて、制御部61はガス変換システムに供給される全体のガス流量を、作動中のガス変換システムの数に応じて制御することができる。それぞれの反応領域でプラズマを監視するための検出器が
図5に併せて記載されている。
【0016】
図3Bは本発明による4つのガス変換ユニット2a−2dを持つ統合ガス変換システムの他の実施形態を示す。4つのガス変換システム2a−2dのそれぞれは
図1に示されたガス変換ユニット2と同様の機構及び機能を有している。
図1に示されたように、ガス変換ユニット2は如何なるインレット/流出ガス分離器又はガス循環システムも含んでいない。煙道ガスは流入ガス分離器41に供給され、分離されたCO
2は制御部61によって制御される流入ガスマニホールド51へ供給される。4つのガス変換システム2a−2dへ供給されたCO
2はプラズマによって変換され、続いて流出ガスマニホールド52へ送られる。流出ガスマニホールド52に集められた変換後のガスは流出ガス分離器42に供給される。それぞれのガス変換システム2a−2dは如何なる
図1のガス分離器又はガス循環システムも含んでいないため、ガスの分離及びCO
2の循環はガス変換ユニット2a−2dの外側(外部)で行われる。ガス変換システムが機能できない、例えばプラズマが不意に消滅させられた場合は、制御部61は流入ガスマニホールド51からのガスの分配を制御して、その機能できないガス変換システムへガスが供給されないようにする。加えて、制御部61はガス変換システムに供給される全体のガス流量を、作動中のガス変換システムの数に応じて制御することができる。それぞれの反応領域でプラズマを監視するための検出器が
図5に併せて記載されている。
【0017】
図3Bに示された実施形態に基づいて、流出ガス分離器42及びCO
2循環システムをそれぞれのガス変換システム2a−2d内に移動することで、他の統合ガス変換システムを構成することができる。もしくは、流出ガス分離器42のみをそれぞれのガス変換システム2a−2d内に移動することで、他の統合ガス変換システムを構成することができる。
【0018】
図4は4つのガス変換システム3a−3dを含む、他の統合ガス変換システムを示す。ガス変換システム3a−3dのそれぞれは
図1に示されたガス変換ユニット2に類似し、ガス変換システム3a−3dのそれぞれが断路器15、連結器20、チューナー22及び可動ショート35を有さない点で相違する。ガス変換システム3a−3dのそれぞれは効率的なプラズマ発生のために十分に最適化されており、従ってこれらの要素はシステムの適切な動作のために必須ではない。煙道ガスは流入ガス分離器41に供給され、分離されたCO
2は制御部61によって制御される流入ガスマニホールド51へ供給される。分離されたCO
2は、4つのガス流管26a−26dを持つ4つのガス変換システム3a−3dへそれぞれ供給され、続いてプラズマによって変換され、そして流出ガスマニホールド52へ送られる。流出ガスマニホールド52に集められた変換後のガスは流出ガス分離器42へ供給される。それぞれのガス変換システムは如何なるガス分離システム又はCO
2循環システムも持たないため、ガスの分離及びCO
2の循環はガス変換システム3a−3dの外側(外部)で行われる。ガス変換システムが機能できない、例えばプラズマが不意に消滅させられた場合は、制御部61は流入ガスマニホールド51からのガスの分配を制御して、その機能できないガス変換システムへガスが供給されないようにする。加えて、制御部61はガス変換システムに供給される全体のガス流量を、作動中のガス変換システムの数に応じて制御することができる。それぞれの反応領域でプラズマを監視するための検出器が
図5に併せて記載されている。
【0019】
図5は本発明による
図1のガス変換システムの一部の代替的な実施形態の模式的な断面図である。図示されるように、プラズマを監視し、それによってガス変換システム1の適切な動作を監視するためにプラズマ検出器30が導波管24上に設けられている。プラズマ検出器30はプラズマの発光を検出する光学センサー又はプラズマ発生に起因する温度上昇を検出する温度センサーであっても良い。プラズマ検出器30は導波管24上の代わりにガス流管26上に設けられても良い。
【0020】
図6は本発明による
図1のガス変換システムの一部の代替的な実施形態の模式的な断面図である。メッシュ板32、好ましくは接地された金属製のメッシュ板がガス流管26の底に設けられている。メッシュ板32の設置はガス流及びプラズマの安定性を高め、ガス流管26の底からのマイクロ波の漏れを回避する。メッシュ板32の網目寸法はマイクロ波供給ユニット11によって発生されるマイクロ波の波長よりもはるかに小さい。メッシュ板32を導波管24の底表面から所定の距離を持った位置に設けて、プラズマのために十分な容積を持ち、ガス流管26内でのアーク放電を回避することが好ましい。
【0021】
図7Aから
図7Dは本発明による
図1のガス流管26の代替的な実施形態の平面図である。図示されるように、ガス流管266から269の断面形状は円、楕円、正方形、長方形、又は六角形とすることができる。当業者には他の適切な幾何学的形状が使用できることが明らかであろう。
【0022】
図8Aは本発明による
図4の統合ガス変換システムの代替的な実施形態の斜視図である。図示されるように、統合ガス変換モジュール4は複数の、例えば五十個の、ガス変換システム3を含む。それは制御部(図示なし)によって制御される流入ガスマニホールド51a及び流出ガスマニホールド52aを含む。それぞれのガス変換システム3はスライド可能に取り付けられており、保守整備が必要な場合に簡単にアクセス可能である。
【0023】
図8Bは本発明による
図4の統合ガス変換システムの代替的な実施形態の斜視図である。図示されるように、統合ガス変換システム5は複数の、例えば百九十二個の、ガス変換モジュール4を含む。それは制御部(図示なし)によって制御される流入ガスマニホールド51b、及び流出ガスマニホールド52bを含む。それぞれのガス変換モジュール4はスライド可能に取り付けられており、保守整備が必要な場合に簡単にアクセス可能である。煙道ガスは流入ガス分離器(図示なし)に供給される。分離されたCO
2は流入ガスマニホールド51bに供給され、その後にガス変換モジュール4上の流入ガスマニホールド51aを通してそれぞれのガス変換システム3に供給される。プラズマによって変換されたガスはガス変換モジュール4上の流出ガスマニホールド52aを通して流出ガスマニホールド52bに集められ、その後に流出ガス分離器(図示なし)へ供給される。CO
2の循環を含む、流入ガス分離器以前及び流出ガス分離器以後の動作は
図4に示されたシステムと同一であり、簡潔さのため繰り返しの記述は行わない。
【0024】
図9Aは本発明による
図4の統合ガス変換システムの代替的な実施形態の斜視図である。図示されるように、統合ガス変換モジュール400は複数の、例えば六十個の、ガス変換システム3を含む。それは制御部(図示なし)によって制御される流入ガスマニホールド51a、及び流出ガスマニホールド52aを含む。それぞれのガス変換システム3は放射状に配置されており、配管の容易さのためにガス管が中央に集中させることができ、人間である操作者は保守整備のための十分な空間を持つ。
【0025】
図9Bは本発明による
図4の統合ガス変換システムの代替的な実施形態の斜視図である。図示されるように、統合ガス変換システム500は複数の、例えば二十個の、ガス変換モジュール400を含む。それは制御部(図示なし)によって制御される流入ガスマニホールド51b、及び流出ガスマニホールド52bを含む。煙道ガスは流入ガス分離器(図示なし)に供給される。分離されたCO
2は流入ガスマニホールド51bに供給され、その後にガス変換モジュール400上の流入ガスマニホールド51aを通してそれぞれのガス変換システム3に供給される。プラズマによって変換されたガスはガス変換モジュール400上の流出ガスマニホールド52aを通して流出ガスマニホールド52bに集められ、その後に流出ガス分離器(図示なし)へ供給される。CO
2の循環を含む、流入ガス分離器以前及び流出ガス分離器以後の動作は
図4に示されたシステムと同一であり、簡潔さのため繰り返しの記述は行わない。
【0026】
図3A、
図3B及び
図4に示された統合ガス変換システムは4つのガス変換システムだけを持っていることが留意される。
図8Aに示された統合ガス変換モジュール及び
図8Bに示された統合ガス変換システムはそれぞれ五十個のガス変換システム及び百九十二個のガス変換モジュールを持っていることもまた留意される。しかしながら、モジュール又はシステムは他の如何なる適切な数のガス変換モジュール又はシステムを含んでも良いことが当業者にとって明らかであろう。同様に、
図9A及び
図9Bに示された統合ガス変換モジュールは他の適切な数のガス変換システム及びモジュールを持つことができる。
【0027】
マイクロ波発生器12a特にマグネトロンの価格は、出力が上がるにつれて急激に上昇する。例えば、十台の市販の電子レンジ(マイクロ波オーブン)のマグネトロンの価格は、その電子レンジの十倍の出力を持つ一台の高出力マグネトロンの価格よりも大幅に低い。従って、
図3Aから
図8Bの複数のガス変換システムは、設計者が合計の変換能力を妥協せずに低コストのガス変換システムを作り上げることを可能にする。また、それは障害が発生した場合にガス分配を制御することで、より短いシステムのダウン時間をもつシステムを確立することを可能にする。
【0028】
当然ながら、以上本明細書において記述したものは本発明の例示的な実施形態に関するものであり、添付の特許請求の範囲に記載の本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく変更を加えることが可能であることが理解されるであろう。