(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)一分子中に反応性官能基を3個以上有する硬化性樹脂、(B)熱ラジカル重合開始剤、及び(C)一分子中に反応性官能基を3個未満有する(メタ)アクリル化エポキシ樹脂を含有し、前記成分(A)がエチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクトン変性(2モル)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクトン変性(6モル)ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、及びペンタエリスリトールトリアクリレートからなる群より選択される少なくとも1種であり、前記成分(C)がレゾルシンジグリシジルエーテルの(メタ)アクリルエステル化物である液晶シール剤。
【背景技術】
【0002】
近年の液晶表示セルの大型化に伴い、液晶表示セルの製造方法として、より量産性の高い、いわゆる液晶滴下工法が提案されていた(特許文献1、2)。具体的には、一方の基板に形成された液晶シール剤からなる堰の内側に液晶を滴下した後、もう一方の基板を貼り合わせ、その後液晶シール剤を硬化する液晶表示セルの製造方法である。
【0003】
しかし、液晶滴下工法では、液晶シール剤が硬化する前に、液晶と液晶シール剤とが接触するため、液晶による圧力によって液晶シール剤に差込現象が発生し、最悪の場合には、液晶シール剤からなる堰が決壊してしまうこともあり、問題とされている。この問題は、光及び熱を併用する液晶滴下工法においても、配線等の影になって十分な紫外線が照射されない部分が存在する場合には発生する。また、紫外線照射を行わず、熱のみで液晶シール剤を硬化する場合には特に大きな問題である。この解決のためには、液晶の滴下量の精度を高めることが必要であるが、それでも液晶シール剤の硬化工程である加熱時に液晶が膨脹するため、上記差込現象を完全に抑えるのは困難である。
【0004】
また、液晶滴下工法用液晶シール剤には、低液晶汚染性、高接着強度、高耐湿性、高耐熱性等の一般特性や保存安定性等の作業性といった種々の課題を解決する必要がある。
【0005】
この課題を解決するため、様々な技術が提案されている。
特許文献3では、有機ベントナイトを用いて上記課題の解決を図っている。この方法は、液晶の差し込みに対して一定の成果は有するものの、十分であるとは言いがたい。
特許文献4には、ヒュームドシリカ、ポリチオールを用いた液晶シール剤を用い、液晶シール剤のBステージ化処理を行う方法が記載されている。しかし、この方法には、工程が長くなってしまう、その工程のための装置が必要となってしまうという欠点がある。
特許文献5には、熱ラジカル重合開始剤を用いて、硬化速度を上げることにより差し込みを防止する液晶滴下工法用液晶シール剤が開示されている。
【0006】
以上述べたように、液晶シール剤の開発は非常に精力的に行われているにもかかわらず、優れた差込耐性を有し、かつ低液晶汚染性、高接着強度等の液晶シール剤としての一般特性においても優れるといったものは未だ完成していない。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の液晶シール剤は、成分(A)として、一分子中に反応性官能基を3個以上有する硬化性樹脂を含有する。この成分は、架橋速度(反応速度)が速いため、優れた差込耐性を実現できる。なお、この方法を用いた場合、熱ラジカル重合開始剤等の量を増やして反応性を向上させる方法とは異なり、ハンドリング性にも優れる。ハンドリング性とは、液晶シール剤の使用のし易さを意味する。例えば液晶シール剤の脱泡工程やスペーサー剤混合工程等、真空下に置かれたり熱がかかったりする工程において、液晶シール剤が硬化又はゲル化してしまうという現象があり、本願では、この現象の生じ易さをハンドリング性と定義する。したがって、硬化又はゲル化を起こし難いものをハンドリング性の良い液晶シール剤とし、硬化又はゲル化を起こし易いものをハンドリング性の悪い液晶シール剤とする。
成分(A)としては、例えば、KAYARAD
RTMPET−30、DPHA、DPCA−20、DPCA−30、DPCA−60、DPCA−120、DPEA−12、GPO−303、TMPTA、THE−330、TPA−320、TPA−330、D−310,D−330、RP−1040、UX−5000、DPHA−40H(以上、日本化薬株式会社製)、NKエステル
RTMA−9300、A−9300−1CL、A−GLY−9E、A−GLY−20E、A−TMM−3、A−TMM−3LM−N、A−TMPT、AD−TMP、ATM−35E、A−TMMT、A−9550、A−DPH(以上、新中村化学工業株式会社製)、SR295、SR350、SR355、SR399、SR494、CD501、SR502、CD9021、SR9035、SR9041(以上、サートマー社製)、デナコール
RTMEX−314、EX−411、EX−421、EX−512、EX−521、EX−611、EX−612、EX−614(以上、ナガセケムテックス株式会社製)、jER
RTM152、154、157S70、1031S、1032H60、604、630(以上、三菱化学株式会社製)等を挙げることができる。なお、本明細書中、上付きのRTMは登録商標を意味する。
【0013】
また、上記成分(A)の反応性官能基は、環状エーテル基及び/又は(メタ)アクリロイル基である場合が好ましい。環状エーテル基とは、オキシラン環、オキセタン環等の基を表すが、オキシラン環である場合が好ましい。また、特に好ましくは、反応性官能基がアクリロイル基である場合である。
この場合の成分(A)としては、例えば、KAYARAD
RTMPET−30、DPHA、DPCA−20、DPCA−30、DPCA−60、DPCA−120、DPEA−12、GPO−303、TMPTA、THE−330、TPA−320、TPA−330、D−310,D−330、RP−1040、UX−5000、DPHA−40H(以上、日本化薬株式会社製)、NKエステル
RTMA−9300、A−9300−1CL、A−GLY−9E、A−GLY−20E、A−TMM−3、A−TMM−3LM−N、A−TMPT、AD−TMP、ATM−35E、A−TMMT、A−9550、A−DPH(以上、新中村化学工業株式会社製)、SR295、SR350、SR355、SR399、SR494、CD501、SR502、CD9021、SR9035、SR9041(以上、サートマー社製)等を挙げることができる。
【0014】
さらに、上記成分(A)は、反応性基当量(一反応性官能基当たりの分子量)が200以下である場合が好ましい。反応性基当量が200より大きい場合、液晶シール剤中の反応性官能基の密度が低下することにより架橋反応が阻害され、優れた差込耐性を得るために十分な架橋速度(反応速度)を得ることができない場合がある。反応性基当量の好ましい範囲は、特に限定されるものではないが、例えば80〜200である。
好ましい成分(A)としては、例えば、KAYARAD
RTMPET−30、DPHA、DPCA−20、DPCA−30、DPEA−12、GPO−303、TMPTA、THE−330、TPA−320、TPA−330、D−310,D−330、RP−1040、UX−5000、DPHA−40H(以上、日本化薬株式会社製)、NKエステル
RTMA−9300、A−9300−1CL、A−TMM−3、A−TMM−3LM−N、A−TMPT、AD−TMP、A−TMMT、A−9550、A−DPH(以上、新中村化学工業株式会社製)、SR295、SR350、SR355、SR399、SR494、SR9041(以上、サートマー社製)等を挙げることができる。
【0015】
またさらに、上記成分(A)は、モル平均分子量が800以上である場合が好ましい。成分(A)のモル平均分子量が800より低い場合、溶剤のように液晶へ溶解し易くなるため、硬化前の状態で液晶シール剤が液晶と接触した際に液晶を汚染し、表示性能を劣化させてしまう可能性がある。モル平均分子量の好ましい範囲は、特に限定されるものではないが、例えば800〜10000である。
好ましい成分(A)としては、例えば、KAYARAD
RTMDPCA−20(モル平均分子量807)、DPCA−30(モル平均分子量921)、DPEA−12(モル平均分子量1191)(いずれも日本化薬株式会社製)等を挙げることができる。
【0016】
上記成分(A)は、分子内にC1〜C4アルキレンオキサイド(−O−R
1−O−)を含有する硬化性樹脂である場合が好ましい。ここで、上記R
1は、分岐を有してもよい鎖状又は環状のアルキレン基を表す。
C1〜C4アルキレンオキサイドの例としては、メチレンオキサイド、エチレンオキサイド、n−プロピレンオキサイド、i−プロピレンオキサイド、n−ブチレンオキサイド、sec−ブチレンオキサイド等を挙げることができる。このうち、好ましくはエチレンオキサイド、n−プロピレンオキサイドであり、特に好ましくはエチレンオキサイドである。
具体的には、KAYARAD
RTMDPEA−12(日本化薬株式会社製)を挙げることができる。
【0017】
成分(A)の液晶シール剤総量中における含有率は、5〜40質量%である場合が好ましい。含有率が多くなりすぎると硬化収縮が大きくなることでガラス基板に対する接着強度が低下する場合があり、少なすぎると本願発明の効果、すなわち優れた差込耐性を実現できない場合がある。含有率として、さらに好ましくは10〜30質量%であり、特に好ましくは10〜25質量%の場合である。
【0018】
成分(B)である熱ラジカル重合開始剤は、加熱によりラジカルを生じ、連鎖重合反応を開始させる化合物であれば特に限定されないが、有機過酸化物、アゾ化合物、ベンゾイン化合物、ベンゾインエーテル化合物、アセトフェノン化合物、ベンゾピナコール等が挙げられ、ベンゾピナコールが好適に用いられる。例えば、有機過酸化物としては、カヤメック
RTMA、M、R、L、LH、SP−30C、パーカドックスCH−50L、BC−FF、カドックスB−40ES、パーカドックス14、トリゴノックス
RTM22−70E、23−C70、121、121−50E、121−LS50E、21−LS50E、42、42LS、カヤエステル
RTMP−70、TMPO−70、CND−C70、OO−50E、AN、カヤブチル
RTMB、パーカドックス16、カヤカルボン
RTMBIC−75、AIC−75(以上、化薬アクゾ株式会社製)、パーメック
RTMN、H、S、F、D、G、パーヘキサ
RTMH、HC、パTMH、C、V、22、MC、パーキュアー
RTMAH、AL、HB、パーブチル
RTMH、C、ND、L、パークミル
RTMH、D、パーロイル
RTMIB、IPP、パーオクタ
RTMND、(以上、日油株式会社製)等が市販品として入手可能である。また、アゾ化合物としては、VA−044、V−070、VPE−0201、VSP−1001(以上、和光純薬工業株式会社製)等が市販品として入手可能である。
上記成分(B)として好ましいのは、ベンゾピナコール系の熱ラジカル重合開始剤(ベンゾピナコールを化学的に修飾したものを含む)である。具体的には、ベンゾピナコール、1,2−ジメトキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1,2−ジエトキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1,2−ジフェノキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1,2−ジメトキシ−1,1,2,2−テトラ(4−メチルフェニル)エタン、1,2−ジフェノキシ−1,1,2,2−テトラ(4−メトキシフェニル)エタン、1,2−ビス(トリメチルシロキシ)−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1,2−ビス(トリエチルシロキシ)−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1,2−ビス(t−ブチルジメチルシロキシ)−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1−ヒドロキシ−2−トリメチルシロキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1−ヒドロキシ−2−トリエチルシロキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1−ヒドロキシ−2−t−ブチルジメチルシロキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン等が挙げられ、好ましくは1−ヒドロキシ−2−トリメチルシロキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1−ヒドロキシ−2−トリエチルシロキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1−ヒドロキシ−2−t−ブチルジメチルシロキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1,2−ビス(トリメチルシロキシ)−1,1,2,2−テトラフェニルエタンであり、さらに好ましくは1−ヒドロキシ−2−トリメチルシロキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、1,2−ビス(トリメチルシロキシ)−1,1,2,2−テトラフェニルエタンであり、特に好ましくは1,2−ビス(トリメチルシロキシ)−1,1,2,2−テトラフェニルエタンである。
上記ベンゾピナコールは東京化成工業株式会社、和光純薬工業株式会社等から市販されている。また、ベンゾピナコールのヒドロキシ基をエーテル化した化合物は、周知の方法によって容易に合成可能である。また、ベンゾピナコールのヒドロキシ基をシリルエーテル化した化合物は、対応するベンゾピナコールと各種シリル化剤とをピリジン等の塩基性触媒下で加熱させる方法により合成して得ることができる。シリル化剤としては、一般に知られているトリメチルシリル化剤であるトリメチルクロロシラン(TMCS)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、N,O−ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミド(BSTFA)や、トリエチルシリル化剤であるトリエチルクロロシラン(TECS)、t−ブチルジメチルシリル化剤であるt−ブチルメチルシラン(TBMS)等が挙げられる。これらの試薬はシリコン誘導体メーカー等の市場から容易に入手することができる。シリル化剤の反応量としては対象化合物の水酸基1モルに対して1.0〜5.0倍モルが好ましい。さらに好ましくは1.5〜3.0倍モルである。1.0倍モルより少ないと反応効率が悪く、反応時間が長くなるため熱分解を促進してしまう。5.0倍モルより多いと回収の際に分離が悪くなったり、精製が困難になったりしてしまう。
【0019】
本発明の液晶シール剤は、成分(C)として、一分子中に反応性官能基を3個未満有する(メタ)アクリル化エポキシ樹脂を含有してもよい。成分(C)は、一分子中に反応性官能基を3個未満有するエポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との周知の反応により得ることができる。例えば、エポキシ樹脂に所定の当量比の(メタ)アクリル酸と触媒(例えば、ベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、トリフェニルホスヒン、トリフェニルスチビン等)と、重合防止剤(例えば、メトキノン、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、フェノチアジン、ジブチルヒドロキシトルエン等)とを添加して、例えば80〜110℃でエステル化反応を行うことにより得られる。原料となるエポキシ樹脂としては、特に限定されるものではないが、2官能以上のエポキシ樹脂が好ましく、例えばレゾルシノール(レゾルシン)のジグリシジルエーテル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、その他、二官能フェノール類のジグリシジルエーテル化物、二官能アルコール類のジグリシジルエーテル化物、及びそれらのハロゲン化物、水素添加物等が挙げられる。これらのうち液晶汚染性の観点から、より好ましいものはビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシノール(レゾルシン)のジグリシジルエーテルである。
なお、成分(C)の含有量は、液晶シール剤の作業性、物性を考慮して適宜決定され、通常、液晶シール剤中に10〜60質量%程度であり、好ましくは20〜50質量%である。
【0020】
本発明の液晶シール剤は、成分(D)として熱硬化剤を含有してもよい。この成分(D)は、上記成分(B)である熱ラジカル重合開始剤とは異なり、ラジカルを発生しない熱硬化剤を意味する。具体的には、非共有電子対や分子内のアニオンによって、求核的に反応するものであって、例えば多価アミン類、多価フェノール類、有機酸ヒドラジド化合物等を挙げることができる。ただし、これらに限定されるものではない。これらのうち有機酸ヒドラジド化合物が特に好適に用いられる。例えば、芳香族ヒドラジドであるテレフタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド、2,6−ピリジンジヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド、ピロメリット酸テトラヒドラジド等を挙げることができる。また、脂肪族ヒドラジド化合物であれば、例えば、ホルムヒドラジド、アセトヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、1,4−シクロヘキサンジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イミノジ酢酸ジヒドラジド、N,N’−ヘキサメチレンビスセミカルバジド、クエン酸トリヒドラジド、ニトリロ酢酸トリヒドラジド、シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド、1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントイン等のヒダントイン骨格、好ましくはバリンヒダントイン骨格(ヒダントイン環の炭素原子がイソプロピル基で置換された骨格)を有するジヒドラジド化合物、トリス(1−ヒドラジノカルボニルメチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(3−ヒドラジノカルボニルプロピル)イソシアヌレート、ビス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート等を挙げることができる。硬化反応性と潜在性とのバランスから好ましくは、イソフタル酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、トリス(1−ヒドラジノカルボニルメチル)イソシアヌレート、トリス(2−ヒドラジノカルボニルエチル)イソシアヌレート、トリス(3−ヒドラジノカルボニルプロピル)イソシアヌレートであり、特に好ましくはマロン酸ジヒドラジドである。
成分(D)の含有率は、液晶シール剤の総量中、0.1〜10質量%である場合が好ましく、1〜5質量%である場合がさらに好ましい。
【0021】
本発明の液晶シール剤は、さらに、成分(E)として一分子中に反応性官能基を3個未満有するエポキシ樹脂を含有させて、接着強度の向上を図ることができる。成分(E)としては、液晶に対する汚染性、溶解性が低いものが好ましい。好適なエポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、レゾルシノール(レゾルシン)のジグリシジルエーテル、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、その他、二官能フェノール類のジグリシジルエーテル化物、二官能アルコール類のジグリシジルエーテル化物、及びそれらのハロゲン化物、水素添加物等が挙げられる。
成分(E)の含有率は、液晶シール剤の作業性、物性を考慮して適宜決定され、通常、液晶シール剤総量中に5〜30質量%程度であり、好ましくは5〜20質量%である。
【0022】
本発明の液晶シール剤は、さらに、成分(F)としてシランカップリング剤を添加して、接着強度や耐湿性の向上を図ることができる。成分(F)としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(2−(ビニルベンジルアミノ)エチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらのシランカップリング剤はKBMシリーズ、KBEシリーズ等として信越化学工業株式会社等によって販売されているため、市場から容易に入手可能である。
成分(F)の含有率は、液晶シール剤の総量中、0.05〜3質量%である場合が好ましい。
【0023】
本発明の液晶シール剤は、上記成分以外にも、例えば光重合開始剤、ラジカル重合防止剤、無機フィラー、ゴム微粒子、有機酸やイミダゾール化合物等の硬化促進剤、有機フィラー、あるいは顔料、レベリング剤、消泡剤、溶剤等の添加剤を配合することができる。
【0024】
上記光重合開始剤としては、紫外線や可視光の照射によって、ラジカルや酸を発生し、連鎖重合反応を開始させる化合物であれば特に限定されないが、例えば、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジエチルチオキサントン、ベンゾフェノン、2−エチルアンスラキノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−メチル−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノ−1−プロパン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスヒンオキサイド、カンファーキノン、9−フルオレノン、ジフェニルジスルヒド等を挙げることができる。具体的には、IRGACURE
RTM 651、184、2959、127、907、396、379EG、819、784、754、500、OXE01、OXE02、DAROCURE
RTM1173、LUCIRIN
RTM TPO(以上、BASF社製)、セイクオール
RTMZ、BZ、BEE、BIP、BBI(以上、精工化学株式会社製)等を挙げることができる。
また、液晶汚染性の観点から、分子内に(メタ)アクリル基を有するものを使用することが好ましく、例えば2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートと1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2メチル−1−プロパン−1−オンとの反応生成物が好適に用いられる。この化合物は国際公開第2006/027982号記載の方法にて製造して得ることができる。
光重合開始剤を用いる場合の液晶シール剤総量中の含有率は、通常0.001〜3質量%、好ましくは0.002〜2質量%である。
【0025】
上記ラジカル重合防止剤としては、光重合開始剤や熱ラジカル重合開始剤等から発生するラジカルと反応して重合を防止する化合物であれば特に限定されるものではなく、キノン系、ピペリジン系、ヒンダードフェノール系、ニトロソ系等を用いることができる。具体的には、ナフトキノン、2−ヒドロキシナフトキノン、2−メチルナフトキノン、2−メトキシナフトキノン、2,2,6,6,−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6,−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6,−テトラメチル−4−メトキシピペリジン−1−オキシル、2,2,6,6,−テトラメチル−4−フェノキシピペリジン−1−オキシル、ハイドロキノン、2−メチルハイドロキノン、2−メトキシハイドロキノン、パラベンゾキノン、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチルクレゾール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β―(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]、2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニルプロピオネート)メタン、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−sec−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、パラメトキシフェノール、4−メトキシ−1−ナフトール、チオジフェニルアミン、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミンのアルミニウム塩、商品名アデカスタブLA−81、商品名アデカスタブLA−82(以上、株式会社アデカ製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのうちナフトキノン系、ハイドロキノン系、ニトロソ系ピペラジン系のラジカル重合防止剤が好ましく、ナフトキノン、2−ヒドロキシナフトキノン、ハイドロキノン、2,6−ジ−tert−ブチル−P−クレゾール、ポリストップ7300P(伯東株式会社製)がさらに好ましく、ポリストップ7300P(伯東株式会社製)が最も好ましい。
ラジカル重合防止剤は、成分(C)である(メタ)アクリル化エポキシ樹脂を合成する際に添加する方法や、成分(C)である(メタ)アクリル化エポキシ樹脂及び/又は成分(E)であるエポキシ樹脂に溶解させる方法がある。より有効な効果を得るためには、成分(C)及び/又は成分(E)に対して添加して、溶解させるほうが好ましい。
ラジカル重合防止剤の含有率としては、本発明の液晶シール剤総量中、0.0001〜1質量%が好ましく、0.001〜0.5質量%がさらに好ましく、0.01〜0.2質量%が特に好ましい。
【0026】
上記無機フィラーとしては、溶融シリカ、結晶シリカ、シリコンカーバイド、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸リチウムアルミニウム、珪酸ジルコニウム、チタン酸バリウム、硝子繊維、炭素繊維、二硫化モリブデン、アスベスト等が挙げられ、好ましくは溶融シリカ、結晶シリカ、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、アルミナ、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウムであり、さらに好ましくは溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、タルクである。これら無機フィラーは2種以上を混合して用いてもよい。その平均粒径は、大きすぎると狭ギャップの液晶セル製造時に上下ガラス基板を貼り合わせる際のギャップ形成がうまくできない等の不良要因となるため、3μm以下が適当であり、好ましくは2μm以下である。粒径はレーザー回折・散乱式粒度分布測定器(乾式)(株式会社セイシン企業製;LMS−30)により測定することができる。
本発明の液晶シール剤において、無機フィラーを使用する場合には、液晶シール剤の総量中、通常5〜50質量%、好ましくは5〜40質量%である。無機フィラーの含有率が5質量%より低い場合、ガラス基板に対する接着強度が低下し、また耐湿信頼性も劣るために、吸湿後の接着強度の低下も大きくなる場合がある。一方、無機フィラーの含有率が50質量%より多い場合、フィラー含有量が多すぎるため、つぶれにくく液晶セルのギャップ形成ができなくなってしまう場合がある。
【0027】
上記ゴム微粒子としては、例えば天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、二トリルゴム(NBR)、エチレン・プロピレンゴム(EPM、EP)、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム(ACM、ANM)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、ウレタンゴム(PUR)、シリコーンゴム(Si、SR)、フッ素ゴム(FKM、FPM)、多硫化ゴム(チオコール)等が挙げられ、単独のゴム微粒子でもよいし、2種以上を用いてコアシェル構造としてもよい。また2種以上を併用してもよい。これらのうち、好ましくは、アクリルゴム、シリコーンゴムである。
アクリルゴムを使用する場合、2種類のアクリルゴムからなるコアシェル構造のアクリルゴムである場合が好ましく、コア層がn−ブチルアクリレートであり、シェル層がメチルメタクリレートであるものが特に好ましい。これはゼフィアック
RTMF−351としてアイカ工業株式会社から販売されている。
また、上記シリコーンゴムとしては、オルガノポリシロキサン架橋物粉体、直鎖のジメチルポリシロキサン架橋物粉体等が挙げられる。また、複合シリコーンゴムとしては、上記シリコーンゴムの表面にシリコーン樹脂(例えば、ポリオルガノシルセスキオキサン樹脂)を被覆したものが挙げられる。これらのゴム微粒子のうち、特に好ましいのは、直鎖のジメチルポリシロキサン架橋粉末のシリコーンゴム又はシリコーン樹脂被覆直鎖ジメチルポリシロキサン架橋粉末の複合シリコーンゴム微粒子である。これらのものは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、好ましくは、ゴム粉末の形状は、添加後の粘度の増粘が少ない球状がよい。
本発明の液晶シール剤において、ゴム微粒子を使用する場合には、液晶シール剤の総量中、通常5〜50質量%、好ましくは5〜40質量%である。
【0028】
上記硬化促進剤としては、有機酸やイミダゾール等を挙げることができる。
有機酸としては、有機カルボン酸や有機リン酸等が挙げられるが、有機カルボン酸である場合が好ましい。具体的には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、フランジカルボン酸等の芳香族カルボン酸、コハク酸、アジピン酸、ドデカン二酸、セバシン酸、チオジプロピオン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、トリス(2−カルボキシメチル)イソシアヌレート、トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2−カルボキシプロピル)イソシアヌレート、ビス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート等を挙げることができる。
また、イミダゾール化合物としては、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−ウンデシルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−エチル−4−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6(2’−メチルイミダゾール(1’))エチル−s−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸の2:3付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−3,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−ヒドロキシメチル−5−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニル−3,5−ジシアノエトキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
本発明の液晶シール剤において、硬化促進剤を使用する場合には、液晶シール剤の総量中、通常0.1〜10質量%、好ましくは1〜5質量%である。
【0029】
本発明の液晶シール剤を得る方法の一例としては、次に示す方法がある。まず、成分(A)である一分子中に反応性官能基を3個以上有する硬化性樹脂に、必要に応じ、成分(C)である一分子中に反応性官能基を3個未満有する(メタ)アクリル化エポキシ樹脂、成分(E)である一分子中に反応性官能基を3個未満有するエポキシ樹脂を加熱混合し、室温まで冷却後、成分(B)である熱ラジカル重合開始剤、及び必要に応じて、成分(D)である熱硬化剤、成分(F)であるシランカップリング剤、消泡剤、レベリング剤、溶剤等を添加し、公知の混合装置、例えば3本ロール、サンドミル、ボールミル等により均一に混合し、金属メッシュにて濾過することにより本発明の液晶シール剤を製造することができる。
【0030】
本発明の液晶表示セルは、基板に所定の電極を形成した一対の基板を所定の間隔に対向配置し、周囲を本発明の液晶シール剤でシールし、その間隙に液晶が封入されたものである。封入される液晶の種類は特に限定されない。ここで、基板とはガラス、石英、プラスチック、シリコン等からなる少なくとも一方に光透過性がある組み合わせの基板から構成される。その製法としては、本発明の液晶シール剤に、グラスファイバー等のスペーサー(間隙制御材)を添加後、該一対の基板の一方にディスペンサー、スクリーン印刷装置等を用いて該液晶シール剤を塗布した後、必要に応じて、80〜120℃で仮硬化を行う。その後、該液晶シール剤からなる堰の内側に液晶を滴下し、真空中にてもう一方のガラス基板を重ね合わせ、ギャップ出しを行う。ギャップ形成後、90〜130℃で1〜2時間硬化することにより、本発明の液晶表示セルを得ることができる。このようにして得られた本発明の液晶表示セルは、液晶汚染による表示不良が無く、接着性、耐湿信頼性に優れたものである。スペーサーとしては、例えばグラスファイバー、シリカビーズ、ポリマービーズ等が挙げられる。その直径は、目的に応じ異なるが、通常2〜8μm、好ましくは4〜7μmである。その使用量は、本発明の液晶シール剤100質量%に対し通常0.1〜4質量%、好ましくは0.5〜2質量%、さらに好ましくは0.9〜1.5質量%程度である。
【0031】
本発明の液晶シール剤は、液晶の差し込みへの耐性が非常に良好であり、液晶滴下工法における基板の貼り合わせ工程、加熱工程においても液晶が差し込んだり、シールが決壊したりする現象を起こさない。したがって、安定した液晶表示セルの作成が可能である。また、硬化性樹脂が架橋される速度が速いため、構成成分の液晶への溶出も極めて少なく、液晶表示セルの表示不良を低減することが可能である。また、保存安定性にも優れるため、液晶表示セルの製造に適している。さらに、その硬化物は接着強度、耐熱性、耐湿性等の各種硬化物特性にも優れるため、本発明の液晶シール剤を用いることにより、信頼性に優れる液晶表示セルを作成することが可能である。また、本発明の液晶シール剤を用いて作成した液晶表示セルは、電圧保持率が高く、イオン密度が低いという液晶表示セルとして必要な特性も充足される。
【実施例】
【0032】
以下、実験例、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、特別の記載のない限り、本文中「部」及び「%」とあるのは質量基準である。
【0033】
[合成例1]
[1,2−ビス(トリメチルシロキシ)−1,1,2,2−テトラフェニルエタンの合成]
市販のベンゾピナコール(東京化成製)100部(0.28モル)をジメチルホルムアルデヒド350部に溶解させた。これに塩基触媒としてピリジン32部(0.4モル)、シリル化剤としてBSTFA(信越化学工業製)150部(0.58モル)を加え、70℃まで昇温し、2時間撹拌した。得られた反応液を冷却し、撹拌しながら、水200部を入れ、生成物を沈殿させると共に未反応シリル化剤を失活させた。沈殿した生成物を濾別分離した後、十分に水洗した。次いで得られた生成物をアセトンに溶解し、水を加えて再結晶させ、精製した。目的の1,2−ビス(トリメチルシロキシ)−1,1,2,2−テトラフェニルエタンを105.6部(収率88.3%)得た。
HPLC(高速液体クロマトグラフィー)で分析した結果、純度は99.0%(面積百分率)であった。
【0034】
[合成例2]
[レゾルシンジグリシジルエーテルの全アクリル化物の合成]
レゾルシンジグリシジルエーテル181.2g(EX−201:ナガセケムテックス株式会社製)をトルエン266.8gに溶解し、これに重合禁止剤としてジブチルヒドロキシトルエン0.8gを加え、60℃まで昇温した。その後、エポキシ基の100%当量のアクリル酸117.5gを加え、さらに80℃まで昇温し、これに反応触媒であるトリメチルアンモニウムクロライド0.6gを添加して、98℃で約30時間撹拌し、反応液を得た。この反応液を水洗し、トルエンを留去することにより、目的とするレゾルシンジグリシジルエーテルのエポキシアクリレート293gを得た。得られたエポキシアクリレートの反応性基当量は理論値で183である。
【0035】
[実施例1〜5、比較例1]
下記表1に示す量の成分(A)、(C)、(E)を加熱混合し、冷却後、成分(B)、(D)、(F)、(その他成分)を添加し、撹拌した後、3本ロールミルにて分散させ、金属メッシュ(635メッシュ)で濾過し、実施例1〜5の液晶シール剤を調製した。また、同様の工程により、表1に示す材料を配合して、比較例1の液晶シール剤を調製した。
【0036】
【表1】
【0037】
実施例1〜5、比較例1で調製した液晶シール剤について、以下の評価を行った。結果を表2にまとめる。
【0038】
[液晶の差込耐性評価]
液晶シール剤各100gにスペーサーとして直径5μmのグラスファイバー1gを添加して混合撹拌脱泡を行い、シリンジに充填した。このシリンジに充填した液晶シール剤を、ディスペンサー(SHOTMASTER300:武蔵エンジニアリング株式会社製)を使ってITO透明電極付きガラス基板に塗布し、シールパターン及びダミーシールパターンを形成した。次いで、液晶(MLC−3007;メルク株式会社製)の微小滴をシールパターンの枠内に滴下した。さらにもう一枚のラビング処理済みガラス基板に面内スペーサー(ナトコスペーサKSEB−525F;ナトコ株式会社製;貼り合わせ後のギャップ幅5μm)を散布、熱固着し、貼り合わせ装置を用いて真空中で先の液晶滴下済み基板と貼り合わせた。大気開放してギャップ形成した後、10分間放置し、120℃オーブンに投入して1時間加熱硬化させた。その後、偏光顕微鏡にてシールと液晶との界面を観察し、以下の基準に従って評価を行った。結果を表2に示す。
○:液晶シール剤に液晶の差し込みが観察されない。
△:液晶シール剤にわずかに液晶の差し込みが観察される。
×:液晶シール剤に液晶の差し込みが観察される。
【0039】
[液晶への汚染性評価]
液晶シール剤各100gにスペーサーとして直径5μmのグラスファイバー1gを添加して混合撹拌脱泡を行い、シリンジに充填した。このシリンジに充填した液晶シール剤を、ディスペンサー(SHOTMASTER300:武蔵エンジニアリング株式会社製)を使ってITO透明電極付きガラス基板に塗布し、シールパターン及びダミーシールパターンを形成した。次いで、液晶(MLC−3007;メルク株式会社製)の微小滴をシールパターンの枠内に滴下した。さらにもう一枚のラビング処理済みガラス基板に面内スペーサー(ナトコスペーサKSEB−525F;ナトコ株式会社製;貼り合わせ後のギャップ幅5μm)を散布、熱固着し、貼り合わせ装置を用いて真空中で先の液晶滴下済み基板と貼り合わせた。大気開放してギャップ形成した後、10分間放置し、120℃オーブンに投入して1時間加熱硬化させた。その後、偏光顕微鏡にてシールと液晶との界面を観察し、以下の基準に従って評価を行った。結果を表2に示す。
○:液晶シール剤近傍の液晶に変色又は異物が観察されない。
△:液晶シール剤近傍の液晶にわずかに変色又は異物が観察される。
×:液晶シール剤近傍の液晶に変色又は異物が観察される。
【0040】
[接着強度評価]
液晶シール剤100gにスペーサーとして直径3μmのグラスファイバー1gを添加して混合撹拌を行った。この液晶シール剤を50mm×50mmのガラス基板上に塗布し、その液晶シール剤上に1.5mm×1.5mmのガラス片を貼り合わせ、120℃オーブンに1時間投入して硬化させた。そのガラス片のせん断接着強度をボンドテスター(SS−30WD:西進商事株式会社製)を使用して測定した。その結果を表2に示す。
【0041】
【表2】
【0042】
表2の結果より、実施例1乃至5は成分(A)を添加していない比較例1よりも液晶の差込耐性が向上したことが確認された。