(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
加熱調理する食材が収容される調理鍋と、前記調理鍋の開口部に開閉可能に配置された蓋体と、前記調理鍋の前記開口部と対向する前記蓋体の対向面に離脱可能に装着されて前記調理鍋の前記開口部を閉塞する内蓋とを備え、前記蓋体は前記調理鍋内で発生した蒸気を前記調理鍋の外部へ排出する排気通路を有し、前記内蓋は前記排気通路の一部を構成する排気孔を有する調理器であって、
前記蓋体は、前記内蓋の前記排気孔と対向する部分に設けた弁体配置部と、前記弁体配置部の前記内蓋側の端部を閉塞する弾性変形可能な弾性部材と、前記弁体配置部の前記弾性部材より前記蓋体の内部側に配置した弁体とを備え、前記内蓋の前記排気孔を前記弾性部材を介して前記弁体によって閉塞するようにした、調理器。
前記弁体は、前記内蓋の前記排気孔に対して間隔をあけて位置する第1の位置と、前記内蓋の前記排気孔を前記弾性部材を介して閉塞する第2の位置との間を移動可能に配置され、
前記蓋体は、前記弁体を前記第1の位置と前記第2の位置に移動させる駆動機構を備える、請求項1に記載の調理器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、調理鍋の内部を大気圧より高い圧力に昇圧可能な調理器における清掃性の向上を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、加熱調理する食材が収容される調理鍋と、前記調理鍋の開口部に開閉可能に配置された蓋体と、前記調理鍋の前記開口部と対向する前記蓋体の対向面に離脱可能に装着されて前記調理鍋の前記開口部を閉塞する内蓋とを備え、前記蓋体は前記調理鍋内で発生した蒸気を前記調理鍋の外部へ排出する排気通路を有し、前記内蓋は前記排気通路の一部を構成する排気孔を有する調理器であって、前記蓋体は、前記内蓋の前記排気孔と対向する部分に設けた弁体配置部と、前記弁体配置部の前記内蓋側の端部を閉塞する弾性変形可能な弾性部材と、前記弁体配置部の前記弾性部材より前記蓋体の内部側に配置した弁体とを備え、前記内蓋の前記排気孔を前記弾性部材を介して前記弁体によって閉塞するようにした、調理器を提供する。
【0007】
この調理器によれば、内蓋の排気孔を閉塞する弁体が蓋体に配置されているため、内蓋は、排気孔の周辺を凹凸部分がないフラットな形状にすることができる。よって、食材成分が付着し易い内蓋の清掃性を大幅に向上できる。また、蓋体は、弁体を配置する弁体配置部の端部を弾性部材によって閉塞しているため、排気孔を通して流入した調理鍋内の蒸気が蓋体の内部に侵入することを防止できる。さらに、内蓋を装着する対向面を清掃することで、確実に衛生を保つことができる。
【0008】
前記弁体は、前記内蓋の前記排気孔に対して間隔をあけて位置する第1の位置と、前記内蓋の前記排気孔を前記弾性部材を介して閉塞する第2の位置との間を移動可能に配置され、前記蓋体は、前記弁体を前記第1の位置と前記第2の位置に移動させる駆動機構を備える。この態様によれば、調理鍋の内部を大気圧と平衡させた状態(第1の位置)と、調理鍋の内部を大気圧より高い圧力に昇圧可能とした状態(第2の位置)に、確実に切り換えることができる。よって、調理鍋の内部を大気圧より高い圧力に昇圧した状態での調理を実現できる。
【0009】
前記弁体が前記第1の位置にあるときに、前記弾性部材は、前記蓋体の前記対向面と同一平面上に位置する。この態様によれば、調理鍋内で発生した食材成分を含む蒸気が付着する蓋体の対向面の清掃性を向上できる。
【0010】
前記弁体が前記第1の位置にあるときに、前記弾性部材は非平坦な断面形状である。この態様によれば、駆動手段に過剰な負荷を与えることなく、弁体を第1の位置から第2の位置へ移動させることができる。
【0011】
前記蓋体は、前記弁体配置部の前記内蓋側の端部と対向する他端側の端部側を閉塞する第2の弾性部材を有する。ここで、弁体配置部の内蓋側の端部と対向する他端側の端部側とは、蓋体の内部側であり、ユーザが触ることができない位置である。よって、この態様によれば、清掃時に意図しない負荷が第1の弾性部材に加わり、第1の弾性部材が破損したとしても、調理鍋内で発生した蒸気が蓋体の内部に侵入することを防止できる。
【0012】
前記蓋体は、前記調理鍋の前記開口部を覆う蓋本体と、前記蓋本体の前記調理鍋側に配置した前記対向面である放熱板を有し、前記弁体配置部は、前記蓋本体に設けた筒状部と、前記放熱板に設けた挿通部を有し、前記弾性部材は、前記筒状部を含む前記蓋本体と前記放熱板の前記挿通部との間をシールする。この態様によれば、排気通路を構成する放熱板の挿通部から蓋体の内部に蒸気が侵入することを確実に防止できる。
【0013】
前記弁体は、前記弁体配置部に干渉して前記弁体が前記蓋体の内部側へ入り込むことを防ぐ干渉部を有する。詳しくは、弁体の干渉部は、蓋本体の筒状部の内蓋側端部に干渉することで、蓋体の内部側に入り込むことが防止される。この態様によれば、蓋体の対向面を清掃する際に、弁体が蓋体の内部側に押し込まれることを防止できるため、弁体の破損を防止しつつ、第1の弾性部材を含む対向面の清掃性を向上できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の調理器では、内蓋の排気孔を閉塞する弁体が蓋体に配置されているため、内蓋の排気孔の周辺を凹凸部分がないフラットな形状にすることができる。よって、内蓋の清掃性を大幅に向上できる。また、蓋体は、弁体配置部の端部を弾性部材によって閉塞しているため、排気孔から流入した調理鍋内の蒸気が蓋体の内部に侵入することを防止できる。また、内蓋を装着する対向面を清掃することで、確実に衛生を保つことができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0017】
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係る調理器である炊飯器10を示す。この炊飯器10は、炊飯する飯米を収容する内鍋(調理鍋)20と、内鍋20を着脱可能に収容する炊飯器本体(本体)30とを備える。炊飯器本体30の内部には、誘導加熱コイル等の加熱手段(図示せず)が配置されている。予め設定されたプログラムに従って制御手段(マイコン)が加熱手段を制御することで、内鍋20の内部に収容した飯米及び水を加熱し、飯米を炊き上げる。
【0018】
炊飯器10は、炊飯器本体30に収容させた内鍋20の開口部21を開閉可能に覆う蓋体40を備える。蓋体40は、蓋本体41と、蓋本体41の外周部を覆う外装カバー42とを備える。蓋本体41は、炊飯器本体30の背部のヒンジ接続部31に回転可能に接続される接続部43(
図3参照。)を備える。蓋本体41は、炊飯器本体30から上方に突出した内鍋20の開口部21を覆う収容凹部44を備える。収容凹部44の中央には、金属製で円形状の放熱板50が配置されている。この放熱板50は、炊飯器本体30を蓋体40で閉塞した状態で、内鍋20の開口部21と対向する対向面である。
図2Aを参照すると、放熱板50には、内蓋60を介して内鍋20内を加熱する蓋ヒータ(加熱手段)51が配置されている。
【0019】
収容凹部44には、内鍋20の開口部21を閉塞する内蓋60が離脱可能に装着されている。内蓋60は、金属製の内蓋本体61と、内蓋本体61の外周部に配置したシール部材65と、シール部材65を挟み込むように内蓋本体61の外周部に配置した樹脂製の枠部材67とを備える。内蓋本体61は、放熱板50に対して平行に配置される。シール部材65は、蓋体40で炊飯器本体30を塞ぐことで、内鍋20の開口部21の内周面をシールする。枠部材67には、収容凹部44の係止受部45に係止される第1係止部68と、収容凹部44の係止部材46に係止される第2係止部69とが設けられている。係止部材46をスライドさせて第2係止部69の係止を解除することで、内蓋60を蓋体40から取り外すことができる。
【0020】
内蓋60には、内鍋20内で発生した蒸気を内鍋20から外部に排気するための排気孔63が設けられている。また、放熱板50の外周部には、放熱板50と内蓋60との間をシールする円環状のシール部材52が配置されている。また、放熱板50のヒンジ接続部31側には連通穴53が設けられている。蓋本体41には、連通穴53に連通するダクト部47(
図3参照。)が設けられている。そして、外装カバー42にはダクト部47に連通する蒸気口セット(図示せず)が配置されている。
【0021】
内蓋60の排気孔63、放熱板50と内蓋60の間の空隙、放熱板50の連通穴53、蓋本体41のダクト部47、及び蒸気口セットは、内鍋20内で発生した蒸気を内鍋20の外部に排気する排気通路70を構成する。詳しくは、加熱により内鍋20内で発生した蒸気は、排気孔63からシール部材52で囲まれた放熱板50と内蓋60との間の空隙に流入する。ついで、蒸気は、放熱板50の連通穴53を通って蓋本体41のダクト部47に流入し、外装カバー42に配置した蒸気口セットから、炊飯器10の外部に流出する。
【0022】
排気通路70の入口(一部)である排気孔63は、内蓋本体61に設けられている。内蓋本体61には、内鍋20内に向けて窪む凹部62が設けられている。この凹部62の底部は、放熱板50に対して平行に延びる平坦面である。この凹部62の底部に、円形状をなす排気孔63が設けられている。排気孔63は、内鍋20内で発生した蒸気によって内鍋20の内部の圧力が上昇することなく、大気圧と平衡可能な排気量を確保できる開口面積に設定されている。なお、本実施形態では凹部62を平面視で円形状に形成しているが、その平面視形状は希望に応じて変更が可能である。
【0023】
図1から
図2Bに示すように、蓋体40には、排気孔63と対向する部分に、排気孔63を閉塞(密閉)する閉塞機構100が配置されている。
図1に最も明瞭に示すように、閉塞機構100は、放熱板50から露出しており、排気通路70(空隙)に面する部分が第1シール部材(弾性部材)140によって閉塞されている。
図3に示すように、閉塞機構100は、蓋本体41の上部に配置した駆動機構170によってそれぞれ駆動される。
【0024】
(閉塞機構の詳細)
図2A及び
図2Bに示すように、閉塞機構100は、蓋体40に設けた弁体配置部110に配置されている。弁体配置部110は、蓋本体41に設けた筒状部111と、放熱板50に設けた挿通部115とを備える。弁体配置部110は、放熱板50に向けて窪む凹部112を備える。凹部112の底には円形状の貫通孔113が設けられている。この貫通孔113の縁に、円筒状に突出する筒状部111が設けられている。筒状部111は、軸線が放熱板50に対して直交方向に延び、放熱板50から離れる方向に突出する。凹部112の底には、放熱板50に向けて円筒状に突出するシール部材装着部114が設けられている。放熱板50の挿通部115は、凹部112と概ね同一直径の円形孔からなる。
【0025】
閉塞機構100は、自重によって排気孔63を閉塞する弁体120を備える。弁体120は、筒状部111と挿通部115の間に配置した第1シール部材140を介して排気孔63を閉塞する。
図3を併せて参照すると、弁体120は、蓋本体41の上部に配置した駆動機構170によって、排気孔63に対して間隔をあけて位置する
図2Aに示す開放位置(第1の位置)と、放熱板50側から排気孔63を閉塞した
図2Bに示す閉塞位置(第2の位置)との間を移動される。
【0026】
弁体120は、弁体配置部110に対して、第1シール部材140より蓋体40の内部側に位置するように配置されている。
図4に示すように、弁体120は、錘部材121と、駆動機構170に係着するための係着部材123と、第1シール部材140を装着するための装着部材130とを備える。これらは、ネジ(図示せず)等の連結材によって一体に連結されている。なお、連結材はネジに限らず、一体に連結可能な周知の構成(方法)であれば、いずれでも適用可能である。
【0027】
図2A及び
図2Bを参照すると、錘部材121は、筒状部111の内部に配置可能な直径の円柱形状である。この錘部材121は、自重で排気孔63を上方から閉塞し、内鍋20内が設定した圧力(例えば1.30atm)を超えて昇圧すると、内鍋20内の蒸気圧で排気孔63から離反する(浮き上がる)重量である。
【0028】
図4から
図5Bに示すように、係着部材123は、錘部材121の上部に連結され、駆動機構170のスライド部材185に係着されることで、弁体120を開放位置と閉塞位置との間で移動させる。係着部材123は、錘部材121に連結する連結部124を備える。連結部124の上部には、概ねU字形状の挿通溝部125が設けられている。挿通溝部125の上端(開口側)には、一方の側壁部126から他方の側壁部126にかけて架設部127が設けられている。架設部127の中央には、錘部材121に向けて突出する摺接部128が設けられている。摺接部128の先端は、摩擦抵抗を低減するために半球状に面取りされている。
【0029】
装着部材130は、錘部材121の下部に連結され、第1シール部材140を装着することで、第1シール部材140を介して排気孔63を閉塞する。錘部材121の軸線に沿って見ると、装着部材130は、筒状部111の内径より大きい外径の円形状である。装着部材130の外周部は、筒状部111に干渉することで、弁体120が蓋体40の内部側(
図2Aにおいて上側)に入り込むことを防ぐ干渉部131の機能を兼ね備える。装着部材130の下部には、放熱板50に向けて突出するシール部材装着部132が設けられている。シール部材装着部132は、先端に径方向外向きに突出するフランジ部133を備える逆T字形状である。
【0030】
(第1シール部材の詳細)
図2A及び
図2Bに示すように、第1シール部材140は、弁体配置部110の内蓋60側の端部である、筒状部111と挿通部115との間をシールする弾性部材である。この第1シール部材140は、蓋本体41のシール部材装着部114に装着される第1嵌合部141と、弁体120のシール部材装着部132に装着される第2嵌合部144と、これら嵌合部141,144の間に設けられた弾性変形部148とを備える。
【0031】
図6A及び
図6Bに示すように、第1嵌合部141は、挿通部115の内径より大きい外径の円筒状である。この第1嵌合部141には、上端から下向き窪む嵌合溝142が設けられている。また、第1嵌合部141の下部には、内蓋60の挿通部115の外周部上面に圧接されるシール部143が設けられている。第1嵌合部141を蓋本体41のシール部材装着部114に装着し、蓋本体41に放熱板50を装着することで、筒状部111を含む領域の蓋本体41と放熱板50の挿通部115との間がシール部143によってシールされる。
【0032】
第2嵌合部144は、フランジ部133の外径より僅かに小さい内径の筒部145と、筒部145の先端から径方向内向きに突出する係止部146を備える。第2嵌合部144をシール部材装着部132に嵌合することで、係止部146がフランジ部133の上面に係止する。第2嵌合部144の内蓋60側の端面は、排気孔63を密閉する圧接部147である。この圧接部147は、内蓋60に対して平行に位置する平坦な面であり、排気孔63の直径より大きい直径である。
【0033】
弾性変形部148は、第1嵌合部141側から第2嵌合部144に向けて、内蓋60側へ湾曲する第1湾曲部149と、蓋体40の内部側へ湾曲する第2湾曲部150とを備える非平坦な断面形状である。第1湾曲部149は平面視円環形状である。第2湾曲部150は、第1湾曲部149に対して平面視で同心円環形状である。第1湾曲部149の径方向の全長と第2湾曲部150の径方向の全長を合わせた弾性変形部148の全長(弧長)は、弾性的な変形によって弁体120が
図2Aに示す開放位置と
図2Bに示す閉塞位置の間を移動できる長さである。
図2Aに示す弁体120の開放位置では、第1湾曲部149と第2湾曲部150が湾曲した状態を維持する。
図2Bに示す弁体120の閉塞位置では、第1湾曲部149と第2湾曲部150が弾性的に延びた状態になる。また、
図2Bに示す閉塞位置から
図2Aに示す開放位置に弁体120が移動すると、第1湾曲部149と第2湾曲部150とは、弾性的に湾曲した状態に復元する。
【0034】
図2Aに示すように、弁体120が開放位置にあるときには、第1湾曲部149の頂部は、圧接部147に対して同一平面上に位置する。また、弁体120が開放位置にあるときには、第1湾曲部149の頂部と圧接部147とは、放熱板50に対して概ね同一平面上に位置する。ここで、放熱板50と同一平面上に位置するとは、清掃性を確保できる程度の許容範囲を含む。即ち、フキン等で放熱板50を清掃する際に、清掃性が悪くなる段差が生じない程度で、放熱板50から第1湾曲部149の頂部と圧接部147が突出した状態及び窪んだ状態を含む。
【0035】
図2A及び
図2Bに示すように、弁体120は、内蓋60から離れた弁体配置部110の上端部側が第2シール部材155及びカバー部材160によって覆われている。また、駆動機構170は、駆動手段であるソレノイド180と、動力伝達部材であるスライド部材185とを備える。
【0036】
第2シール部材155は、弁体配置部110の内蓋60側の端部と対向する他端側の端部側である筒状部111の上端に嵌合され、筒状部111の内蓋60側と蓋体40の内部側をシールする第2弾性部材である。詳しくは、第2シール部材155は、筒状部111の上端に外嵌される第1嵌合部156と、係着部材123に嵌合される第2嵌合部157と、これら嵌合部156,157の間に設けられた弾性変形部158とを備える。第2嵌合部157は、連結部124の外周部に嵌合され、錘部材121と係着部材123との間に固定されている。弾性変形部158は、弾性的な変形によって弁体120が
図2Aに示す開放位置と
図2Bに示す閉塞位置の間を移動できる全長(弧長)である。
【0037】
カバー部材160は、スライド部材185が第2シール部材155に干渉することを防ぐ樹脂製のカバーである。このカバー部材160は、第1嵌合部156に外嵌される嵌合部161を備える。また、カバー部材160には、第2シール部材155から突出した弁体120の係着部材123(挿通溝部125)を挿通する挿通孔162が設けられている。
【0038】
図2Aから
図3を併せて参照すると、ソレノイド180は、蓋本体41の上部において、接続部43と反対の先端側の筒状部111の近傍に配置されている。ソレノイド180は、通電(駆動)することで後退し、通電を遮断することで進出するロッド181を備える。また、ソレノイド180は、ロッド181を進出方向に付勢するスプリング182を備える。
【0039】
スライド部材185は、ソレノイド180のロッド181に固定され、ソレノイド180の駆動によりロッド181と一体に移動する。スライド部材185は、内蓋60に沿って平行に移動するように配置されている。スライド部材185は、ロッド181が進出することで係止位置に移動し、ロッド181が後退することで係止解除位置に移動する。
【0040】
スライド部材185は、架設部127に対して間隔をあけて位置するように、挿通溝部125に挿通されている。このスライド部材185には、係止位置で弁体120を自重に抗して開放位置に移動させ、係止解除位置で弁体120を自重で閉塞位置に移動させる突出部187が設けられている。この突出部187は、架設部127に向けて突出しており、係止位置では架設部127の下部に位置し、係止解除位置では架設部127から離れてソレノイド180側に位置する。突出部187には、弁体120を自重に抗して上向きに移動させるために傾斜部188が設けられている。この傾斜部188は、スライド部材185の進出方向先端側から進出方向後側に向けて、上向きに傾斜している。
【0041】
図3に示すように、本実施形態のスライド部材185は、ソレノイド180の通電状態(内鍋20内が昇圧可能な状態)で蓋体40の開放を不可能とするロック部189を備える。ロック部189は、ソレノイド180を取り囲む四角形状の枠体である。ロック部189の先端が蓋体40のロック部材48と蓋本体41との間に入り込み、ロック部材48が炊飯器本体30との係合を解除する方向に回転することを阻止することで、蓋体40の開放を不可能とする。
【0042】
このようにした閉塞機構100は、
図2Aに示す状態でソレノイド180がオン(通電)されると、スライド部材185が後退する。これにより、
図2Bに示すように、スライド部材185の突出部187が弁体120の摺接部128から離れる。すると、弁体120が自重によって内蓋60側に移動し、凹部62上に載置される。よって、排気孔63は、第1シール部材140を介して弁体120の自重で閉塞される。
【0043】
図2Bに示す状態でソレノイド180がオフされると、スライド部材185が進出する。これにより、
図2Aに示すように、スライド部材185の突出部187が弁体120の摺接部128の下側に入り込む。すると、弁体120が自重に抗して内蓋60から離れる方向に移動する。この際、突出部187には傾斜部188が設けられているため、スライド部材185の水平方向の移動を弁体120の垂直方向の移動に変換するとともに、弁体120を徐々に上向きに移動させることができる。そして、突出部187が摺接部128の下部に位置することで、排気孔63から弁体120を離反させた開放位置に安定して保持できる。
【0044】
炊飯器10は、ソレノイド180をオンすることで、スライド部材185を介して弁体120を閉塞位置に移動させることができる。そして、弁体120が閉塞位置にあるときには、装着部材130が挿通部115から内蓋60側へ突出し、シール部材140を介して排気孔63を閉塞する。この際、第1シール部材140は、湾曲した弾性変形部158を備えるため、無駄な負荷を加えることなく、錘部材121の自重によって弁体120を開放位置から閉塞位置へ確実に移動させることができる。これにより内鍋20内を密閉し、内鍋20の内部を大気圧より高い圧力に昇圧することができる。
【0045】
そして、内鍋20の内部が設定した圧力を超えて昇圧すると、内鍋20内の蒸気圧で弁体120を離反させ、内鍋20内の蒸気を排気通路70を介して炊飯器10の外部に排気できる。この際、蓋体40は、弁体配置部110の端部を第1シール部材140によって閉塞しているため、排気孔63を通して流入した蒸気が蓋体40の内部に侵入することを防止できる。
【0046】
また、炊飯器10は、ソレノイド180をオフすることで、スライド部材185を介して弁体120を開放位置に移動させることができる。そして、弁体120が開放位置にあるときには、装着部材130が放熱板50に対して同一平面上に位置し、排気孔63を開放する。これにより、内鍋20内を大気圧と平衡させることができる。
【0047】
このように、炊飯器10は、内鍋20の内部を大気圧と平衡させた状態と、内鍋20の内部を大気圧より高い圧力に昇圧可能とした状態に、切り換えることができる。よって、内鍋20の内部を大気圧より高い圧力に昇圧した状態での圧力炊飯を実現できる。
【0048】
また、各閉塞機構100の駆動機構170は、内蓋60に沿って移動するスライド部材185を有し、傾斜部188によって弁体120を開放位置及び閉塞位置に移動させる構成であるため、ソレノイド180のような安価な駆動手段を用いることができる。よって、炊飯器10の製造コストを低減できる。
【0049】
また、本実施形態の炊飯器10は、駆動機構170は勿論、内蓋60の排気孔63を閉塞する閉塞機構100も蓋体40に配置している。そのため、
図1に示すように、内蓋60の排気孔63の周辺は、閉塞機構100のような清掃を阻害する凹凸部分がないフラットな形状にすることができる。よって、食材成分が付着し易い内蓋60の清掃性を大幅に向上できる。
【0050】
また、弁体120には、弁体配置部110に干渉する干渉部132を設けているため、シール部材140を含む放熱板50を清掃する際に、弁体120が蓋体40の内部側に押し込まれることを防止できる。よって、弁体120を含む閉塞機構100やスライド部材185を含む駆動機構170に負荷が加わることを防止できる。よって、これらの破損を防止しつつ、清掃性を向上できる。また、内蓋60を装着する放熱板50を清掃することで、確実に衛生を保つことができる。特に、本実施形態では、弁体120が開放位置にあるときに、第1シール部材140が蓋体40の放熱板50と同一平面上に位置するため、放熱板50の清掃性を向上できる。
【0051】
しかも、本実施形態の炊飯器10は、弁体配置部110の蓋体40内部側端部を第2シール部材155によってシールしている。そして、第2シール部材155を配設した弁体配置部110の内側端部は、蓋体40の内部側であり、ユーザが触ることができない位置であるため、この第2シール部材155の破損は実質的に有り得ない。そのため、清掃時に意図しない負荷が第1シール部材140に加わり、第1シール部材140が破損したとしても、炊飯中に発生した蒸気が蓋体40の内部に侵入することを防止できる。
【0052】
なお、本発明は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0053】
例えば、前記実施形態ではソレノイド180によってスライド部材185を水平方向に移動させたが、ステッピングモータによってスライド部材185を水平方向に移動させてもよい。また、閉塞機構100は、錘部材121を備える弁体120を用いたが、駆動手段により所定の付勢力で排気孔63を閉塞する弁体を用いてもよい。即ち、排気孔63を閉塞する閉塞機構100、及び閉塞機構100を駆動する駆動機構170は、希望に応じて変更が可能である。
【0054】
また、前記実施形態では、蓋体40に1個の閉塞機構100を配置したが、2個の閉塞機構を配置してもよい。また、前記実施形態では、加熱による蒸気圧で内鍋20の内部を大気圧より高い圧力に昇圧可能としたが、ポンプ等の加圧手段により強制昇圧可能としてもよい。
【0055】
また、第1シール部材140は、嵌合部140,144の間に一対の湾曲部149,150を備える弾性変形部148を設けた構成としたが、この弾性変形部148の構成は希望に応じて変更が可能である。例えば
図7Aに示すように、内蓋60側へ湾曲する一対の第1湾曲部149a,149bと、蓋体40の内部側へ湾曲する一対の第2湾曲部150a,150bとを備える非平坦な断面形状としてもよい。また、
図7Bに示すように、内蓋60側へ湾曲する1個の第1湾曲部149だけで構成してもよいし、
図7Cに示すように、蓋体40の内部側へ湾曲する1個の第2湾曲部150だけで構成してもよい。
【0056】
また、第1シール部材140の第1嵌合部141は、シール部143によって放熱板50をシールする構成としたが、この放熱板50のシール構造も希望に応じて変更が可能である。例えば
図8Aに示すように、第1嵌合部141の外周部に放熱板50を嵌める嵌合溝159を径方向内向きに延びるように設けてもよい。また、
図8Bに示すように、第1嵌合部141の内蓋60側端部に放熱板50のバーリング部54に嵌合する嵌合溝159を設けてもよい。
【0057】
また、本発明は、蓋体側に閉塞機構を配置し、内蓋は排気孔の周辺をフラットな形状とし、蓋体側を第1シール部材(弾性部材)で閉塞した構成に特徴を有する。そのため、飯米を炊き上げる炊飯器に限られず、種々の食材を調理可能な加熱調理器でも適用可能であり、同様の作用及び効果を得ることができる。また、加熱手段を一体に搭載した加熱機器に限らず、加熱手段を有する本体がない圧力鍋に本発明を適用してもよい。