【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1の特徴による糸によって、および/または請求項7の特徴による熱電モジュール用の部品の製造のための方法によって、解決される。本発明の有利な構成、およびまた、(そのように製造された)部品の、(例えば熱電モジュールまたは熱電発電機のような)上位の構造ユニットへの統合は、従属請求項に示される。請求項に個々に挙げられた特徴は、任意に、技術的に有意な方法で、互いに組み合わせ可能であり、本発明のさらなる構成を示す。これは、特に、糸に関する説明が、同じように、部品の製造のための方法に、および熱電モジュールにも、応用でき、その逆もそうであることを、意味する。明細書は、特に図と関連して、本発明を説明し、本発明のさらなる実施例を挙げる。
【0009】
糸は、広がりを有し、少なくとも部分的に熱電材料を備える。広がりは、特に糸の長さを記述し、糸は、さらに、糸の横断面の(最大)直径として定義される直径により、記述される。
【0010】
糸は、特に、(熱電材料なしに)容易に変形可能、巻くことが可能等である。糸は、一部分から成って、または複数部分から成って(例えば、複数の繊維/フィラメントで)、構成されることができる。糸が複数部分から成って構成される場合、これは、例えば、繊維/フィラメントの数および/または配置が、いろいろな糸領域/部分で異なることによって、部分が異なることもできる。
【0011】
糸は、特に広がりを呈し、それは、技術的意味で、連続的と表現される。連続的は、糸が、それが(熱電)部品用の製造方法において使用される際に、通常切られる長さであるような広がりを呈することを、ここでは意味する。特に、広がりは、少なくとも50mm[ミリメートル]であり、特に少なくとも500mmであり、望ましくは1000mmを上回る。
【0012】
糸には、異なった材料から成る繊維も使用されることができる。望ましくは、糸は、少なくとも部分的に、
‐セラミック材料、
‐ガラス繊維材料、
‐炭素繊維、
‐金属材料、
‐熱電材料、
のグループから選ばれる少なくとも1つの材料により、形成される。繊維の材料の選択により、糸の特性を、特に個々の部分において、利用に合わせて調節することができる。糸は、従って、特に以下の特性を(単独でまたは組み合わせで)呈する:熱電性、電気伝導性、電気絶縁性、熱伝導性、熱絶縁性、シール性、および/または高い機械的強度。
【0013】
熱電材料として、特に以下の材料が使用される。
【表1】
【0014】
望ましい構成によると、糸は、広がりに沿って異なった熱電材料を備える。換言すると、特に、広がりの方向に(連続して、または互いに隣接して)少なくとも2つの糸領域が形成され、少なくとも2つの糸領域は、異なる熱電材料を備える。これは、特に、糸がまだ熱電部品の製造用の出発要素としてある、つまり特にあとでさらに糸領域の間で分割される場合に、当てはまる。特に、これらの異なった熱電材料は、温度依存性の効率最大値に関して異なる。どの熱電材料も、固有の最適使用温度を備え、固有の最適使用温度では、電気エネルギーへの熱エネルギーの変換に関して、最大効率が達成される。糸領域の熱電材料は、異なってドープされることが、可能である。
【0015】
特に、糸は、広がりに沿って非熱電材料も備える。特に、これは、広がりに沿って非熱電材料のみによって形成される部分が設けられることを、意味する。特に、糸は、少なくとも部分的に交互に熱電材料と非熱電材料とを有する、複数の部分を備える。
【0016】
糸の特に有利な構成によると、糸は、広がりに沿って、材料(熱電材料、非熱電材料)で(追加的に)コーティングされる。これは、特に、糸にまたは糸表面上に、コーティングが設けられ、コーティングは、熱電材料および/または非熱電材料を含むことを、意味する。異なる材料が(個々の)糸に設けられる場合、これらのコーティングは、通常、重なり合ってではなく、互いに並んで設けられる。層厚さは、同様に変化することができるが、これはしかし不可欠ではない。望ましくは、層厚さは、糸表面から進んで、閉じた表面が形成されるが、糸が(場合によってはまだしっかり固定されない)コーティングでまだ変形できるように、定められる。
【0017】
特に、糸は、少なくとも1つの繊維を備え、特に少なくとも200N/mm
2の引張強さR
mを有する繊維である。
【0018】
望ましくは、その上、糸の繊維の少なくとも1つは、以下のグループ:
‐熱電材料、
‐非熱電材料、
‐電気絶縁材料、
‐電気伝導材料、
‐熱絶縁材料、
‐熱伝導材料、
‐シール材料(気体および/または液体に対して)、
から選ばれた少なくとも1つの材料でコーティングされる。相対的に示される特性または材料特性は、電気エネルギーへの熱エネルギーの変換の目的で使用される、熱電材料に関係付けられる。これは、特に、「電気絶縁性」は、材料の電気伝導度が、熱電材料の電気伝導度よりも低いということを、意味する。同じことが、「電気伝導性」(この場合さらに高い限り)、「熱絶縁性」、「熱伝導性」、および「シール性」について言える。
【0019】
特に、糸は、異なった部分に、異なったコーティングを備え、特に、上に示されたグルーブから選ばれた、少なくとも1つの材料でコーティングされる。個々の部分では、これらの特性または材料の組み合わせも可能である。特に、電気絶縁性も熱絶縁性もある材料がコーティングとして存在する、部分が設けられ得る。
【0020】
特に、糸は、互いにねじれた、複数の繊維を備える。繊維の数は、例えば2〜30であることができ、2〜10の繊維の使用が望ましい。
【0021】
糸のねじれた配置は、特に、繊維がその広がりに沿って互いに接して置かれ、互いに絡み合ったときに、現れる。ねじれは、特に、繊維が互いによじれる、および/または繊維がらせん状に互いに巻かれる、と解釈される。
【0022】
望ましくは、異なった特性を有する少なくとも2つの種類の繊維が、糸の同じ部分で一緒にねじられる。従って、熱電特性を有する繊維を、非熱電および熱絶縁およびまた電気絶縁特性を備える繊維と、組み合わせることができる。糸は、特に、高い機械的強度を有する繊維により、強化されることができる。
【0023】
糸の特に有利な構成によると、糸は、空洞を備える。空洞は、例えば細孔のように、構成され得る。それに関し、空洞は、閉鎖および/または互いに接続され得る。通常、空洞は、少なくとも部分的に、糸のまたは繊維の材料によって形成/画定される。空洞は、繊維の間におよび/または繊維内に形成され得る。
【0024】
特に、空洞は、以下のグループ:
‐熱電材料、
‐非熱電材料、
‐電気絶縁材料、
‐電気伝導材料、
‐熱絶縁材料、
‐熱伝導材料、
‐シール材料(気体および/または液体に対して)、
から選ばれた少なくとも1つの材料で、少なくとも部分的に満たされる。
【0025】
望ましくは、糸は、少なくとも、径方向に、または広がりの方向に、異なった材料特性を備える。従って、糸は、両方の方向に、異なった材料特性を備えることができる。特に、異なった材料特性は、異なった材料の使用により、および糸の異なった構造により、および/または糸の製造の間の異なった処理により、生じる。そのような処理は、例えば、熱処理、および/または圧力による処理または同様のものを含むことができる(例えば焼結法)。
【0026】
特に有利な構成によると、糸は、特に、広がりの方向に、異なった横断面領域を備える。「異なった」は、ここでは、横断面領域の直径または大きさが、広がりの方向に変化することを、意味する。この変化は、段階的におよび/または連続的に起こる。これらの異なった横断面領域により、非常に薄い層が、熱電モジュールに生じることもでき、特に、熱電モジュール全体も、少なくとも部分的に、1つ以上の提案された糸から製造可能である。
【0027】
特に、糸は、管状のレセプタクルの外側周囲面に、径方向に複数の層を備える巻きに、巻きつけ可能であり、従って、nドープまたはpドープされた、少なくとも1つの環状の熱電半導体素子が形成されることができ、熱電半導体素子は、他の環状の部品と共に、管状の熱電モジュールの外スリーブと内スリーブとの間に、配置可能である、
【0028】
糸は、今度は、追加的に、熱電モジュール用の部品の製造のための望ましい方法と関連して使用される。
【0029】
熱電モジュールの部品の製造のための本方法は、少なくとも以下のステップを含む:
a)広がりを有する少なくとも1つの糸を提供するステップ、
b)熱電材料をその少なくとも1つの糸に適用するステップ、
c)外側周囲面を有する管状のレセプタクルを提供するステップ、
d)その少なくとも1つの糸をその管状のレセプタクルの周りに巻き、外側周囲面に、熱電モジュール用の少なくとも1つの環状の部品が形成されるようにするステップ。
【0030】
熱電モジュール用の部品として、特に、環状の熱電半導体素子を挙げることができる。複数のそのような、nドープおよびpドープ半導体素子は、後に、交互に連続して配置され、相応の電気相互接続で、管状の熱電モジュールを形成するように組み立てられる。交互の電気相互接続は、熱電モジュールにある温度ポテンシャルが、電流に変換されることを、可能にする。熱電部品に加えて、電気絶縁性または熱絶縁性の環状の部品も作り出されることができ、かかる環状の部品は、熱電部品の間に配置される。さらに、電気伝導性およびまた熱伝導性の部品も作り出されることができ、かかる部品は、例えば、個々の熱電部品の電気伝導接続のために、用いられる。
【0031】
本方法は、特に、熱電モジュール用の少なくとも個々の部品を作り出すこと、および特にまた、個々の糸または複数の糸を有する熱電モジュールを、相次いでおよび/または並行して製造すること、に適している。特に、(連続的な)糸が提供され、糸は、同じおよび/または個々の部分で、異なった材料および/または異なった特性を備える。
【0032】
糸の特性は、例えば:‐温度ポテンシャルを電流に変換するための熱電特性、
‐電気絶縁性、つまり熱電材料よりも低い電気伝導度[アンペア/(ボルト・メートル)]、
‐電気伝導性、つまり熱電材料よりも高い電気伝導度[アンペア/(ボルト・メートル)]、
‐熱絶縁性、つまり熱電材料よりも低い比熱伝導度[ワット/(ケルビン・メートル)]、
‐熱伝導性、つまり、熱電材料よりも高い比熱伝導度[ワット/(ケルビン・メートル)]、
‐高い機械的強度(特に200N/mmを上回る引張強さ)、
‐気体および/または液体に対するシール性、
であり得る。ここで挙げられた、「電気絶縁性」、「電気伝導性」、「熱絶縁性」、「熱伝導性」についての定義は、糸の特性にだけでなく、コーティング、繊維、部品、および空洞内に配置された材料にも適用される。
【0033】
原則として、本方法のステップは、ここで文字により示された順序で実行され得るが、これはしかし不可欠ではない。特に、いくつかの/全てのステップは、また少なくとも同時に実行され得る。従って、糸は、例えば糸枠から引き出されることができ(ステップa))、コーティング浴槽を通って引き抜かれることができ(ステップc))、さらにレセプタクルに導かれてそこで巻きつけられることができる(ステップb)およびd))。糸が熱電材料なしでレセプタクルに置かれ、そのあとで熱電材料が(例えばこうして形成された空洞の中に)適用されることも、可能である。さらに、糸をコーティング浴槽の中で巻きつけることが、可能である。その上、例えば、複数の糸および/またはレセプタクルの提供、および必要に応じて熱電材料の再三の適用(糸の異なる部分におよび/または異なる時点で)のように、必要に応じてステップが繰り返して実行されることも、可能である。
【0034】
ステップd)は、望ましくは、レセプタクルの外側周囲面の少なくとも一部が、熱電材料を含む糸により覆われるように、実行される。特に、従って、径方向に外側へ、多数重なった巻きが糸で形成され、環状の部品の径方向厚さが、糸直径の倍数になるようになっている。それに関し、複数の糸および/または異なった配向を有する巻きが、設けられることができる。
【0035】
特に有利な構成によると、管状のレセプタクルは、周囲方向に少なくとも部分的に周りに延びる、少なくとも1つのウェブを備え、ポケットが、軸方向に、管状のレセプタクルの外側周囲面に、形成されるようになっており、ポケットは、少なくとも1つの糸によって少なくとも部分的に満たされる。
【0036】
提供された管状のレセプタクルは、特に、管状の熱電モジュールの内スリーブを表す。特に、管状のレセプタクルは、しかし熱電モジュールから独立して製造することができ、環状の部品が、レセプタクルから離れることができるようになっている。管状のレセプタクルは、特に、環状の部品にとっての内部形状として役立ち、従って、少なくとも1つの糸が、管状のレセプタクルから進んで、環状の部品を、連続的に、径方向におよび周囲方向におよび軸方向にも、作り出す。
【0037】
特に、ウェブは、管状のレセプタクルに、形態嵌めの態様でまたは材料的に結合される。形態嵌め結合の場合、例えば係合により、結合パートナーの一方は、他方の行く手にある、つまりそれが移動する可能性を阻止する。材料的な結合は、結合パートナーが原子のまたは分子の力によって結び付けられる、全ての結合が挙げられる。特に、ウェブは、軸方向における巻きの進捗に応じて、順次、管状のレセプタクルに適用される。
【0038】
個々のウェブの間に、ポケットが形成され、ポケットは、特に、個々の、本方法により製造された環状の部品を、軸方向に互いから分ける。
【0039】
特に、複数の、さらに異なる糸が、用いられることができ、糸は、異なったまたはさらに同じポケットに、相次いでまたは同時に、環状の部品を作り出す。
【0040】
方法の特別な構成によると、複数の糸が提供され、複数の糸は、同時にステップd)で管状のレセプタクルに適用される。この場合、複数の糸は、同じまたは異なった材料を備え得る。さらに、複数の糸は、少なくとも部分的に等しく構成される。
【0041】
特に、ウェブは、例えば電気絶縁性糸により、作り出されることができ、場合によっては、同時に糸の熱絶縁特性が存在する。使用される糸が、異なった部分で、対応して異なった特性を備えることも可能であり、先に定められた箇所で、管状のレセプタクルに沿って、熱電部品、電気絶縁部品、熱伝導部品またはシール部品が、作り出されることができるようになっている。これらの異なった部品は、軸方向に沿っておよび/または周囲方向に沿って互いに並んでおよび/または径方向に重なり合って、作り出されることおよび配置されることができる。
【0042】
特に、こうして作り出された部品は、先にただ部分的に作り出された後でも、さらなる方法ステップに供給され得る。これらの方法ステップは、例えば熱処理および/または圧力処理(例えば焼結法)を含み得る。さらに、コーティングの適用のための方法ステップが導入され得る。
【0043】
特に、追加的に、非熱電材料から成る少なくとも1つの糸が、共に巻きつけられる。これは、例えば、空洞の生成のためにおよび/または所望の強度の調節のために、設けられることができる。
【0044】
特に有利な構成によると、ステップc)は、少なくとも部分的にステップd)と同時におよび/またはステップd)の後に実行される。
【0045】
熱電材料は、例えばコーティングの形で、例えばスプレー法によりまたはペースト塊を広げることにより、少なくとも部分的に製造された部品に、適用されることができる。場合によっては、さらなる方法ステップが後に続くおよび/またはその間に実行される(熱または圧力処理)。
【0046】
特に、本方法には、少なくとも1つの糸が用いられることができ、糸は、特に、広がりに沿って異なった横断面を備える。これらの異なった横断面により、非常に薄い層が、熱電モジュールに作り出されることもでき、特に、熱電モジュール全体も、少なくとも部分的に、提案された1つ以上の糸から製造できるようになっている。
【0047】
さらに、管状の熱電モジュールが提案され、少なくとも、コールドサイド、ホットサイド、およびその間に配置された環状の部品を備え、かかる部品は、
‐熱電材料を含む部品、
‐電気絶縁材料を含む部品、
‐熱絶縁材料を含む部品、
‐電気伝導材料を含む部品、
‐シール材料を含む部品、
‐熱伝導材料を含む部品、
のグルーブから選ばれた少なくとも1つの部品を備え、さらに、少なくとも1つの環状の部品は、ここで提案された方法によって製造される。
【0048】
とりわけ望ましくは、管状の熱電モジュールの全ての環状の部品は、糸を備えるそのような部品で設計される。管状の熱電モジュールは、それに関し、望ましくは、高温または低温媒体が周囲を流れ得る、内部チャネルおよび外部円筒表面を有し、その間に配置された環状の部品が、内部でおよび外部で、異なる温度ポテンシャルにさらされるようになっている(ホットサイド、コールドサイド)。
【0049】
本発明および技術周辺は、以下で図に基づいてより詳細に説明される。図は特に好ましい実施形態を示すが、本発明はそれに限定されない。個々の図の中の同じ物には、同じ参照符号が付けられる。図では、概略的に示している。