特許第6289457号(P6289457)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6289457光情報記録媒体、再生方法、及び再生装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6289457
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】光情報記録媒体、再生方法、及び再生装置
(51)【国際特許分類】
   G11B 7/007 20060101AFI20180226BHJP
   G11B 7/24085 20130101ALI20180226BHJP
   G11B 7/24097 20130101ALI20180226BHJP
   G11B 20/12 20060101ALI20180226BHJP
   G11B 20/10 20060101ALI20180226BHJP
   G11B 20/14 20060101ALI20180226BHJP
   G11B 20/18 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
   G11B7/007
   G11B7/24085
   G11B7/24097
   G11B20/12
   G11B20/10 321Z
   G11B20/14 341B
   G11B20/18 570F
   G11B20/18 570G
【請求項の数】5
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2015-521332(P2015-521332)
(86)(22)【出願日】2014年4月8日
(86)【国際出願番号】JP2014060171
(87)【国際公開番号】WO2014196264
(87)【国際公開日】20141211
【審査請求日】2015年11月4日
(31)【優先権主張番号】特願2013-120958(P2013-120958)
(32)【優先日】2013年6月7日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】595047020
【氏名又は名称】メモリーテック・ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】中 峻之
(72)【発明者】
【氏名】山田 博久
(72)【発明者】
【氏名】山本 真樹
(72)【発明者】
【氏名】田島 秀春
(72)【発明者】
【氏名】小西 正人
【審査官】 中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−519143(JP,A)
【文献】 特開平11−045458(JP,A)
【文献】 特開平06−162575(JP,A)
【文献】 特開2009−099229(JP,A)
【文献】 特開平01−220148(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/050994(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 7/007
G11B 7/24085
G11B 7/24097
G11B 20/10
G11B 20/12
G11B 20/14
G11B 20/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生装置が有する光学系解像限界の長さより短い長さのピットを含む第1ピット列により情報が記録された第1領域と、
上記光学系解像限界の長さ以上の長さを有するピットからなる第2ピット列により情報が記録された第2領域と、が割り当てられた記録層を有する光情報記録媒体であって、
上記第1ピット列の最長ピット、または、最長スペースから得られる反射光量から算出される反射率を第1反射率、上記第2ピット列の最長ピット、または、最長スペースから得られる反射光量から算出される反射率を第2反射率とした場合、
上記第1ピット列は、上記第1反射率が上記第2反射率と略同一となるように、上記第2ピット列の形成条件とは異なる形成条件で形成されており、
上記光情報記録媒体は、再生専用の光情報記録媒体であることを特徴とする光情報記録媒体。
【請求項2】
再生光の波長が405nmであり、対物レンズの開口数が0.85である再生装置により再生され、
119nmより短い長さのピットを含む第1ピット列により情報が記録された第1領域と、
119nm以上の長さを有するピットからなる第2ピット列により情報が記録された第2領域と、が割り当てられた記録層を有する光情報記録媒体であって、
上記第1ピット列の最長ピット、または、最長スペースから得られる反射光量から算出される反射率を第1反射率、上記第2ピット列の最長ピット、または、最長スペースから得られる反射光量から算出される反射率を第2反射率とした場合、
上記第1ピット列は、上記第1反射率が上記第2反射率と略同一となるように、上記第2ピット列の形成条件とは異なる形成条件で形成されており、
上記光情報記録媒体は、再生専用の光情報記録媒体であることを特徴とする光情報記録媒体。
【請求項3】
上記第1ピット列は、1−7PP変調記録方式を用いて形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光情報記録媒体。
【請求項4】
請求項3に記載の光情報記録媒体の再生方法であって、
上記第1領域に再生光を照射することによって得られた再生信号波形を、PR(12221)ML方式にて復号することを特徴とする光情報記録媒体の再生方法。
【請求項5】
請求項3に記載の光情報記録媒体を再生可能な光情報記録媒体の再生装置であって、
上記光情報記録媒体に再生光を照射する再生光照射手段と、
上記再生光照射手段が上記第1領域に上記再生光を照射することにより得られた再生信号波形を、PR(12221)ML方式にて復号する信号処理手段と、を備えていることを特徴とする光情報記録媒体の再生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報が記録可能な光情報記録媒体、並びに、その再生方法および再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高画質映像等の膨大な情報を保存するために、光情報記録媒体の大容量化、即ち記録密度を高めることが求められている。そこで、再生装置が有する光学系解像限界の長さより短い長さを有するピットを含むピット列によって情報が高密度記録された光情報記録媒体(超解像媒体)を、上記光学系解像限界以下の長さを有するピットを含まないピットからなるピット列によって情報が記録された光情報記録媒体(通常媒体)を再生する場合の再生光強度(再生レーザパワー)よりも高い再生光強度で再生する超解像技術が提案されている。なお、光学系超解像限界は、再生装置が出射する再生光の波長をλ、対物レンズの開口数をNAとした場合、λ/4NAとなる。
【0003】
上記超解像媒体の例として、特許文献1が挙げられる。特許文献1には、光学系解像限界の長さより短い長さを含むピット(凹及び/または凸)によりコンテンツが記録された第1領域と、媒体の種類を特定するための媒体識別情報がピットにより記録された第2領域とが割り当てられた光情報記録媒体が開示されている。また、この光情報記録媒体では、上記媒体識別情報を形成するピットが、光学系解像限界の長さ以上で形成されている。これにより、超解像媒体の媒体識別時に、通常媒体の情報再生に適した再生レーザパワーで超解像媒体であることを識別させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2007/100139号(2007年9月7日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の光情報記録媒体では、第1領域に形成されたピットの長さ及びピット間隔と、第2領域に形成されたピットの長さ及びピット間隔とが互いに異なっている。すなわち、第1領域における情報の記録密度と、第2領域における情報の記録密度に差異が生じている。
【0006】
この場合、第1領域から得られる反射率と、第2領域から得られる反射率との間に、再生装置がこれらの反射率を略同一とみなすことができない差異が生じる可能性がある。この差異が生じた場合には、一方の領域の情報再生と、他方の領域の情報再生とが連続して行われた場合には、他方の領域においてフォーカスが外れてしまうなどの現象が生じる可能性がある。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、情報の再生品質を向上させることが可能な光情報記録媒体、及び、該光情報記録媒体を再生可能な再生装置等を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る光情報記録媒体は、
再生装置が有する光学系解像限界の長さより短い長さのピットを含む第1ピット列により情報が記録された第1領域と、
上記光学系解像限界の長さ以上の長さを有するピットからなる第2ピット列により情報が記録された第2領域と、が割り当てられた記録層を有する光情報記録媒体であって、
上記第1ピット列の最長ピット、または、最長スペースから得られる反射光量から算出される反射率を第1反射率、上記第2ピット列の最長ピット、または、最長スペースから得られる反射光量から算出される反射率を第2反射率とした場合、
上記第1ピット列は、上記第1反射率が上記第2反射率と略同一となるように形成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、情報の再生品質を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る超解像媒体のピットの形状について説明するための図であり、(a)はデータ領域におけるピット形状の一例を示す図であり、(b)は(a)に示す最長スペースを含む一点鎖線内に照射された再生光から得られる信号強度を示す図である。
図2】上記超解像媒体の外観を示す斜視図である。
図3】上記超解像媒体における基板の要部構成を示す平面図である。
図4】上記超解像媒体の構造を示す断面図である。
図5】上記超解像媒体が備えるピットの極性を示す図である。
図6】上記超解像媒体の一実施例を示す図であり、(a)は媒体情報領域の一部(最長スペース近傍)に再生光が照射された状態を示す図、(b)はデータ領域の一部(最長スペース近傍)に再生光が照射された状態を示す図である。
図7】上記超解像媒体の比較例としての超解像媒体の外観を示す斜視図である。
図8】上記比較例としての超解像媒体における基板の要部構成を示す平面図である。
図9】上記比較例としての超解像媒体のデータ領域の一部(最長スペース近傍)に再生光Lが照射された状態を示す図である。
図10】上記超解像媒体に関する一実験例の実験結果を示す図である。
図11】上記超解像媒体に関する一実験例の実験結果を示す図である。
図12】本発明の別の一実施形態に係る超解像媒体の一実施例と、当該超解像媒体の比較例とを示す図であり、(a)は上記一実施例におけるデータ領域の一部(最長スペース近傍)に再生光が照射された状態を示す図であり、(b)は上記比較例におけるデータ領域の一部(最長スペース近傍)に再生光Lが照射された状態を示す図である。
図13】上記超解像媒体に関する一実験例の実験結果を示す図である。
図14】本発明のさらに別の一実施形態に係る超解像媒体が備えるピットの極性を示す図である。
図15】上記超解像媒体の一実施例を示す図であり、(a)は媒体情報領域の一部(最長スペース近傍)に再生光が照射された状態を示す図であり、(b)はデータ領域の一部(最長スペース近傍)に再生光が照射された状態を示す図である。
図16】本発明のさらに別の一実施形態に係る超解像媒体の一実施例におけるデータ領域の一部(最長スペース近傍)に再生光が照射された状態を示す図である。
図17】本発明のさらに別の一実施形態に係る再生装置の一例を示すブロック図である。
図18】上記再生装置の信号処理回路・制御部の概略構成の一例を示すブロック図である。
図19】(a)は、通常媒体を通常媒体に適した再生クロックでサンプリングし、PRML復号した場合のピットと出力信号との関係を示す図であり、(b)は、通常媒体を超解像媒体に適した再生クロックでサンプリングし、PRML復号した場合のピットと出力信号との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態1〕
本発明の一実施形態に係る光情報記録媒体について、図1図11を用いて説明すると以下の通りである。なお、本実施形態では、再生専用媒体で、断面構造がBD(Blu-ray Disc:登録商標)タイプの超解像領域を有する光情報記録媒体(以下、超解像媒体1とする)を例として説明するが、これに限られない。超解像媒体1としては、例えば、情報の記録が可能な光情報記録媒体であってもよいし、DVDタイプであってもよい。
【0012】
〔超解像媒体1の構造〕
図2は、本実施形態に係る超解像媒体1の外観を示している。図2に示すように、円盤状の媒体である超解像媒体1は、例えば映像やソフトウェアなどのコンテンツが記録されているデータ領域2(第1領域)と、例えば超解像媒体1に関する情報が記録されている媒体情報領域3(第2領域)とが予め割り当てられた記録層を有している。
【0013】
また、図3は、図2に示す超解像媒体1のa部を拡大して示している。図3に示すように、データ領域2および媒体情報領域3には、複数のピットP1(第1ピット列のピット)、ピットP2(第2ピット列のピット)と、当該ピットP1間、ピットP2間のそれぞれに形成された複数のスペースS1(第1スペース)、スペースS2(第2スペース)とが、所定のトラックピッチTpD、TpR(所定の間隔)ごとに、周方向に列をなすように形成されている。換言すれば、データ領域2には、ピットP1及びスペースS1によって第1ピット列が形成されており、媒体情報領域3には、ピットP2及びスペースS2によって第2ピット列が形成されている。
【0014】
データ領域2および媒体情報領域3の情報記録には、形状および大きさが異なるピットP1、P2およびスペースS1、S2を用いて情報を記録可能なマークエッジ記録方式が採用されている。本実施形態では、そのうちの1−7PP(1−7 Parity Preserve/Prohibit RMTR(Repeated Minimum Transition Run Length))と呼ばれる変調記録方式(記録符号化方式)が用いられている。すなわち、この方式では、(1,7)RLL変調(Run Length Limited)の1種である変調方式によって、ピットP1、P2が形成されている。例えばBDにおいては、2T〜8Tのピット(または記録マーク)及びスペースによって、情報が記録される。本実施形態では、便宜上、データ領域2のピットP1の長さを「D2T〜D8T」と表現し、媒体情報領域3のピットP1の長さを「R2T〜R8T」と表現する場合がある。
【0015】
なお、上記変調は、元情報(変調前の情報)のビット列パターンに依存することなく所定の周波数帯域幅(即ち、複数種類で制限された記録マークとスペースとの組み合わせ)を有した記録パターンへと元情報のビット列パターンを変換すると共に、最短の記録マークまたはスペースの長さを元情報のそれらの長さよりも拡大することで、記録密度を増大させるものである。1−7PP変調記録方式の場合、元情報の2ビット単位が3チャネルビット単位に変換され、変換後の記録パターンとして2チャネルビット(2T)から8チャネルビット(8T)までの長さに制限された記録マークとスペースとに変調されることで、周波数帯域幅を制限する。これと共に、最短の記録マーク及びスペースの長さは、元情報のそれらの長さの1.5倍の長さとなる。それゆえ、1−7PP変調記録方式による変調は高密度記録に好適である。なお、変調方式は1−7PP変調に限られるものではなく、1−7PP変調以外の(1,7)RLL変調の他、8/16変調、(2,7)RLL変調等の他の高密度記録に適した変調方式を用いてもよい。
【0016】
(データ領域2)
データ領域2は、図2に示すように、媒体情報領域3の間に割り当てられ、基板成型時にピットP1を設けることにより、上記コンテンツが記録されている。このピットP1は、図3におけるD2T〜D8Tの長さを有するピットであり、最短ピットP1minの長さD2Tが、再生装置の有する光学系解像限界よりも短い。すなわち、再生装置が有する光学系解像限界より短い長さのピットP1も含めて上記コンテンツを記録するため(超解像記録形態)、通常媒体より高密度な記録が可能となっている。
【0017】
なお、D8Tの長さを有するピットが、データ領域2に形成された複数のピットP1のうち、最長である最長ピットP1maxである。また、複数のピットP1の間に形成された複数のスペースS1のうち、最短であるスペースS1が最短スペースS1min(不図示)であり、最長であるスペースS1が最長スペースS1max(最長第1スペース)(図1の(a)参照)である。
【0018】
(媒体情報領域3)
媒体情報領域3は、図2に示すように、超解像媒体1の最内周部と最外周部とに予め割り当てられ、超解像媒体1に関する情報がピットP2によって記録されている(通常記録形態)。このピットP2は、図3におけるR2T〜R8Tの長さを有するピットP2であり、最短ピットP2minの長さR2Tが、再生装置が有する光学系解像限界以上である。すなわち、媒体情報領域3の全ピットP2の長さは、データ領域2の上記最短ピットP1minの長さより長く、媒体情報領域3における情報の記録密度は、データ領域2よりも低い。
【0019】
なお、R8Tの長さを有するピットが、媒体情報領域3に形成された複数のピットP2のうち、最長である最長ピットP2maxである。また、複数のピットP2の間に形成された複数のスペースS2のうち、最短であるスペースS2が最短スペースS2min(不図示)であり、最長であるスペースS2が最長スペースS2max(最長第2スペース)(図6の(a)参照)である。
【0020】
また、媒体情報領域3は、超解像媒体1の内周及び外周に設けられているが、これに限定されるものではなく、内周及び外周のいずれかに割り当てられていてもよい。
【0021】
以上のように、超解像媒体1は、いわゆる超解像技術を用いた光情報記録媒体である。そして、データ領域2は、超解像技術により情報が再生される超解像領域であり、媒体情報領域3は、超解像技術を用いずに情報が再生される非超解像領域である。
【0022】
(媒体情報領域3の記録情報例)
超解像媒体1に関する情報には、超解像媒体1を特定するための媒体識別情報、データ領域2における位置を特定するための領域位置情報、データ領域2および媒体情報領域3に記録されているデータを管理するためのデータ管理情報等が含まれる。
【0023】
上記媒体識別情報には、光情報記録媒体の種類(BD、DVD等、または、再生専用型、追記型、書換え型等)、記録容量を示す情報などのディスクタイプ識別情報、及び/または、個々の光情報記録媒体を識別(超解像媒体1を識別)するための個体識別情報(コピープロテクトのための媒体固有番号)などが含まれる。
【0024】
また、上記超解像媒体1に関する情報には、再生速度情報、再生光強度情報、極性情報、及び/または、領域位置情報が含まれていることが好ましい。また、媒体識別情報は、再生速度情報、及び再生光強度情報を含んでいても良い。
【0025】
上記再生速度情報には、映像情報等のコンテンツをシームレスに再生するために必要となる再生速度が示されている。また、上記再生速度情報には、超解像媒体1に適切な再生光(再生レーザ)を照射した場合に、デジタル信号化可能なアナログ波形を得るために必要な再生速度範囲情報、コンテンツ等を再生するために再生されたアナログ波形をデジタル信号化するときに必要なデジタル処理情報、または、その組み合わせなどが含まれている。
【0026】
上記再生速度範囲情報は、超解像再生が熱によって可能になる場合に、再生速度が速すぎると熱が不足し超解像再生が不可能になり、遅すぎると発生する熱エネルギーが増大しすぎて媒体にダメージを与えてしまうため、超解像再生により安定にアナログ波形を得るために、再生速度を規定する情報である。
【0027】
なお、再生速度とは、再生時の線速度(媒体再生時にスピンドルモータによって光情報記録媒体が回転することによって生じる、光学ヘッド(再生光照射)位置と光情報記録媒体の再生位置との相対速度)のことを指す。
【0028】
上記デジタル処理情報には、例えば、再生クロック切替情報、再生速度切替情報、またはその組み合わせなどが含まれる。これらの情報は、例えば1−7PP変調方式で記録され、かつ、記録密度が互いに異なるデータ領域2および媒体情報領域3に記録された情報を再生した場合、得られるアナログ波形をデジタル信号化する場合に必要となる情報である。
【0029】
上記再生光強度情報には、超解像媒体1に再生光(再生レーザ)を照射した場合に、デジタル信号化可能なアナログ波形を得るために必要な再生光強度範囲情報などが含まれる。超解像再生が熱によって可能になる場合、再生光強度が低すぎると熱が不足し超解像再生が不可能になり、高すぎると発生する熱エネルギーが増大しすぎて媒体にダメージを与えてしまい、かつ、再生装置に負担がかかってしまう。再生光強度範囲情報は、超解像再生により、再生装置に過度な負担をかけることなく安定したアナログ波形を得るために、再生光強度を規定する情報である。
【0030】
上記極性情報には、超解像媒体1の再生光を入射する側に対して、ピットP1、P2が凹形状(インピット形式)であるか、または、凸形状(オンピット形式)であるかを表すピット極性情報などが含まれる。例えばトラッキングサーボをプッシュプル(PP(Push-Pull))法や差動プッシュプル(DPP(Differential Push-Pull))法などを用いて行う場合、ピットP1、P2の極性によってトラッキング誤差信号の正負が異なる。ピット極性情報は、再生光の照射位置がトラックの中心にある状態(オントラック状態)である場合のトラッキング誤差信号が、超解像媒体1の中心からの距離に関するトラッキング誤差信号の一次微分の値が正となるトラッキング誤差信号の振幅中心であるのか、または、負となるトラッキング誤差信号の振幅中心であるのか、を直ちに判別可能とする情報である。
【0031】
上記領域位置情報には、超解像媒体1におけるデータ領域2の位置を表すデータ領域位置情報などが含まれる。データ領域位置情報としては、データ領域2における情報の再生開始位置及び/または再生終了位置を表す情報、媒体情報領域3における情報の再生開始位置及び/または再生終了位置を表す情報、または、その組み合わせが挙げられる。データ領域位置情報は、例えば記録密度が互いに異なるデータ領域2と媒体情報領域3とにおいて、それぞれ適した情報再生条件が異なり、かつ、再生装置がデータ領域2と媒体情報領域3とを連続して再生する場合、これら2つの領域ごとに設定された情報再生条件へと切り替えるために再生装置において必要となる情報である。
【0032】
なお、情報再生条件とは、再生光強度、再生速度、または、トラッキングサーボの手法などのうち、再生装置が光情報記録媒体に記録された情報を再生するために設定が必要となる条件のことを指す。
【0033】
(超解像媒体1の具体的構造)
次に、超解像媒体1の具体的構造について説明する。図4は、超解像媒体1の断面図を示す。また、図5は、ピットP1、P2の極性を示す図である。
【0034】
図4に示すように、超解像媒体1は、再生装置から出射された再生光Lが入射される側から順に、カバー層6、機能層5及び基板4が設けられている。
【0035】
基板4は、例えば、直径約120mm、厚さ約1.1mmのポリカーボネート(PC)からなり、基板4の、再生光Lが入射する側には、図5に示すように、凹形状のピットP1、P2によって各種情報が記録されている(インピット形式)。すなわち、基板4に形成された凹部がピットP1、P2である。なお、ピットP1、P2は、凸形状からなっていてもよく、凹形状及び凸形状からなっていてもよい。すなわち、ピットP1、P2は、凹及び/または凸からなっていればよい。なお、ピットP1、P2が凸形状からなる場合(オンピット形式)の構造については、実施形態3にて説明する。
【0036】
カバー層6は、例えば、厚さ約100μmの紫外線硬化樹脂(例えば、再生光Lの波長λ=405nmにおける屈折率1.50)からなる。カバー層6の材質は、再生光Lの波長において透過率の高いものであればよく、例えばポリカーボネートからなるフィルム(ポリカーボネートフィルム)と透明粘着材とで形成されていてもよい。
【0037】
機能層5は、超解像現象を発生させるための層であり、基板4上に、例えばスパッタリングにより形成されている。機能層5は、例えば、厚さ約12nmのタンタル(Ta)からなる。機能層5は、2種類以上の膜から構成されていてもよく、この場合例えば、再生光Lを吸収可能な、厚さ約8nmのタンタルからなる吸光膜と、厚さ約50nmの酸化亜鉛(ZnO)からなる超解像再生膜とから構成されていてもよい。この場合、情報の記録密度を高めることができる。
【0038】
また、機能層は、2層以上の機能層5から構成されていてもよい。この場合には、各々の機能層5の間に中間層が設けられていてもよい。中間層の材質としては、例えば紫外線硬化樹脂が挙げられるが、これに限らず、再生光Lの波長において透過率の高いものであればよい。また、各中間層の、再生光Lが入射する側に少なくともピットP1が形成されてもよい。この場合、超解像媒体1の記録容量をさらに高めることができる。
【0039】
この機能層5が設けられていることにより、データ領域2のピットP1によって記録された情報が再生可能となる。機能層5が薄い金属膜等からなる場合、機能層5の温度変化によって光学系解像限界の長さより短い長さのピットの信号が再生可能となる。また、機能層5が、吸光膜と超解像再生膜とからなる場合、ピットP1に再生光を照射すると、超解像媒体1上に再生光の照射領域(レーザスポット)が形成され、当該照射領域内に、光強度分布により生じる温度分布によって、透過率の分布が生じる。その結果、上記照射領域が擬似的に縮小した状態となり、これにより、ピットP1によって記録された情報が再生可能となり、通常媒体より多くの情報を記録することができる。
【0040】
(各領域のピット形状)
次に、図1を用いて、超解像媒体1のピットP1の形状(大きさ)について説明する。図1の(a)はデータ領域2におけるピットの形状の一例を示し、図1の(b)は(a)に示す最長スペースS1maxを含む一点鎖線内に照射された再生光Lから得られる信号強度を示す図である。本実施形態では、ピット(記録マーク)の長さと、当該ピット(例えば8Tピット)に対応するスペース(例えば8Tスペース)の長さとの比を「duty」と表現し、その比が1:1の場合を「duty50%」と表現する。
【0041】
このピット及びスペースの長さ(duty)は、再生装置によって再生可能な範囲内で増減可能である。本発明者らは、この増減可能であることに着目し、超解像領域と非超解像領域とを備えた超解像媒体において、ピット及びスペースの長さを変更することによって超解像領域における反射率の向上を図り、ひいては、当該超解像媒体における情報の再生品質の向上を図ることができることを見出した。
【0042】
上記再生品質の向上を実現するために、超解像媒体1では、ピットP1は、データ領域2における反射率(第1反射率)が、媒体情報領域3における反射率(第2反射率)と略同一となるように、データ領域2に形成されている。換言すれば、ピットP1を含む、データ領域2に形成された第1ピット列は、上記第1反射率が上記第2反射率と略同一となるように形成されている。さらに換言すれば、データ領域2には、超解像媒体1または再生装置に対して、データ領域2及び媒体情報領域3に互いに異なる反射率の規定を設けることなく、再生装置が上記2つの反射率を略同一と扱えるように、ピットP1が形成されている。
【0043】
なお、本実施形態の反射率とは、例えば再生装置が出射した再生光が、記録トラック(トラック)へのトラッキング時に、最長ピットまたは最長スペースに照射されることにより、上記再生装置のディテクタで得られる、記録層からの最大の反射光量から算出される値の、再生光の強度に対する割合のことである。なお、上記反射率は上記割合に限定されず、再生光の強度に対する記録層からの反射光の強度の割合などであってもよい。
【0044】
すなわち、本実施形態の超解像媒体1においては、上記第1反射率(データ領域2から得られる反射率)とは、第1ピット列の最長ピットP1maxまたは最長スペースS1maxから得られる反射光量から算出される反射率を指す。一方、上記第2反射率(媒体情報領域3から得られる反射率)とは、第2ピット列の最長ピットP2maxまたは最長スペースS2maxから得られる反射光量から算出される反射率を指す。なお、最長ピットまたは最長スペースから得られる反射光量とは、当該最長ピットまたは最長スペースに再生光Lが反射することによって生じる反射光の光量とも換言できる。
【0045】
ここで、記録層とは、通常媒体または超解像媒体において情報が記録されている層のことであり、再生専用の光情報記録媒体ではピットと反射層とからなる。反射層とは、通常媒体または超解像媒体に記録された情報を再生可能とする基板とカバー層との間に設けられた層である。この反射層は、超解像媒体では機能層のことを指し、通常媒体では、例えば、厚さ数十nmの金属または金属合金などからなる。
【0046】
より具体的には、図1の(a)に示すように、超解像媒体1におけるピットP1(同図の実線の楕円形状)の大きさは、一般的な超解像媒体におけるピットP1’(同図の破線の楕円形状)の大きさよりも一回り小さくなるように形成されている。すなわち、ピットP1のdutyが、スペースS1のdutyよりも小さくなる(すなわち、一般的な超解像媒体のピットP1’のdutyよりも小さくなる)ように、ピットP1が形成されている。なお、この一般的な超解像媒体の一例として、図9に示す比較例としての超解像媒体が挙げられ、この場合ピットP1’は図9に示すピットP101に相当する。
【0047】
本実施形態では、超解像媒体1のピットP1と、一般的な超解像媒体のピットP1’とは相似形となっている。すなわち、ピットP1は、dutyの変更に伴って、半径方向の長さも周方向の長さと同様に変更となる。例えば、duty50%のときのピットの長さ(ピットP1’)が0.448μm、幅が0.112μmである場合に、duty45%に変更した場合には、ピット(ピットP1)の長さは0.404μm、幅が0.101μmとなる。しかし、少なくとも周方向の長さが変更されればよく、幅については、例えばピットP1’の長さと同一であってもよい。
【0048】
ここで、上述したように、超解像媒体1では、データ領域2は、光学系解像限界の長さより短い長さを含む複数のピットP1により情報が記録された超解像領域であり、媒体情報領域3は、光学系解像限界の長さ以上の長さを有する複数のピットP2により情報が記録された非超解像領域である。
【0049】
一般に、ピット長およびスペース長(ピット間隔)は、情報記録に用いられる変調記録方式によってそれぞれの上限値が規定されるため、最短ピットの長さに応じて、光情報記録媒体における情報の記録密度が異なる。上述の1−7PP変調記録方式の場合、最短ピット長が2Tとなり、最長ピット長が最短ピット長の4倍の8Tとなる。
【0050】
すなわち、超解像媒体1においてはピットP1、P2の長さが互いに異なるので、データ領域2および媒体情報領域3において上記情報の記録密度が互いに異なる。この場合、仮にピットP1とスペースS1との長さ、及び、ピットP2とスペースS2との長さがそれぞれ同じ(duty50%)であるとした場合には、再生装置が取得する、データ領域2の所定位置における反射率と、媒体情報領域3の所定位置における反射率との間に、再生装置がこれらの反射率を同一とみなすことができない差異が生じる可能性がある。なお、これらの所定位置とは、各領域において互いに対応する位置であり、例えばデータ領域2および媒体情報領域3のそれぞれにおける最長ピットどうし(最長ピットP1maxとP2max)、または最長スペースどうし(最長スペースS1maxとS2max)等を指す。
【0051】
また一般に、再生装置では、反射率を用いてフォーカス制御等の各種制御が行われる。そのため、上記差異が生じた場合には、一方の領域(例えばデータ領域2)の情報再生と、他方の領域(例えば媒体情報領域3)の情報再生とが連続して行われた場合に、例えば、他方の領域において、光情報記録媒体上に形成される再生光の照射領域の大きさが変わり(フォーカスが外れてしまい)、領域が変更されるたびに、再生装置が再度のフォーカス制御を行うことが必要となる可能性がある。
【0052】
超解像媒体1では、データ領域2と媒体情報領域3とで記録密度の差異が生じているが、図1の(a)に示すように、一般的な超解像媒体のピットP1’とは異なる形状を有する(形状が限定された)ピットP1がデータ領域2に形成されている。そのため、上記記録密度の差異があっても、データ領域2から得られる反射率が、媒体情報領域3から得られる反射率と同一である超解像媒体1として再生装置に扱わせることができる。これら2つの反射率が略同一であることについて、図1の(b)を用いて説明する。
【0053】
図1の(b)は、図1の(a)に示すデータ領域2の最長スペースS1maxに再生光Lが照射されたときの、超解像媒体1と一般的な超解像媒体との信号強度の違いを示すものである。同図においては、図1の(a)に示す周方向位置x1〜x2の範囲の信号強度が示されている。また、Tは、非超解像領域(例えば媒体情報領域3)に再生光Lを照射したときの信号強度の最大値を示し、Tは信号強度0を示しており、T−Tの値に比例した値が反射率として測定される。
【0054】
図1の(b)に示すように、一般的な超解像媒体が示す信号強度(同図の破線)の最大値はTよりも小さい。一方、超解像媒体1の場合(同図の実線)には、Tと略同一の値となっている。すなわち、超解像媒体1から得られる反射率は、一般的な超解像媒体から得られる反射率よりも大きく、かつ非超解像領域から得られる反射率と略同一となっている。
【0055】
図1の(a)に示すように、一般的な超解像媒体のスペースに再生光Lが照射された場合、再生光Lは、当該スペースだけでなくピットP1’にも照射される。一般に、ピットから得られる信号強度は、スペースから得られる信号強度よりも小さくなるため、ピットP1’に照射された分だけ信号強度が小さくなる。
【0056】
一方、超解像媒体1では、上述のように、dutyを調整して、ピットP1の長さよりも当該ピットP1に対応するスペースS1の長さの方が大きくなるように、ピットP1が形成されている。すなわち、ピットP1は、図1の(a)に示すように、最長スペースS1maxの長さが、再生光Lが超解像媒体1上に形成した照射領域(図1の(a)の円形部分)の直径以上となるように、データ領域2に形成されている。
【0057】
そのため、最長スペースS1maxに照射された再生光LがピットP1には照射されない(または、ほとんど照射されない)ので、信号強度が小さくなる可能性をほとんど排除できる。それゆえ、非超解像領域である媒体情報領域3(最長スペースS2max)から得られる信号強度とほぼ同じ信号強度、つまり反射率を得ることができる。
【0058】
以上のように、超解像媒体1では、ピットP1が上記のような形状(大きさ)を有しているため、一方の領域の情報再生に連続した他方の領域の情報再生(各領域間における連続再生)時に、各領域における反射率が略同一ではない(再生装置において同一と扱えない程度の差異が生じる)ために生じる可能性、例えば光情報記録媒体上に形成される再生光の照射領域の大きさが変わるといった可能性を低減させることができる。そのため、上記連続再生時においても、再度のフォーカス制御を行うことなく、迅速かつ確実に情報再生を行うことが可能となる。
【0059】
すなわち、上記連続再生時に、一方の領域の再生制御のうち、他方の領域において維持可能な制御については再度の制御を行うことなく、他方の領域の情報再生を行うことが可能となり、情報の再生品質を向上させることができる。
【0060】
また、1−7PP変調記録方式においては、光情報記録媒体に再生光が照射されたときに得られる反射光の光量(反射光量)は、隣接トラックのピットも多少の影響を及ぼすが、主として、最長スペースの長さによって決まる。また、反射光量の増加に伴って反射率が増加する。
【0061】
そこで、超解像媒体1では、上述のように、最長スペースS1maxの長さが、上記照射領域の直径以上となるように、ピットP1をデータ領域2に形成することにより、最長スペースS1maxの反射率を高めている。すなわち、ピットP1は、最長スペースS1maxにおける反射率が、最長スペースS2max(図6の(a)参照)における反射率と略同一となるように、データ領域2に形成されている。
【0062】
なお、最長スペースS1maxの長さは、再生光Lのスポットの直径以上である必要は必ずしもない。すなわち、データ領域2から得られる反射率が媒体情報領域3から得られる反射率と略同一であれば(例えば、再生装置が、データ領域2(最長スペースS1max)から得られる反射率を、媒体情報領域3(最長スペースS2max)から得られる反射率と同一であるとみなすことが可能な範囲内であれば)、上記直径未満であってもよい。その一例については、実施形態2において説明する。
【0063】
また、他の変調記録方式が用いられた場合には、最長スペースS1maxから得られる反射率を基準として、データ領域2の反射率を向上させるためにピットP1の形状(duty)を設定する必要は必ずしもなく、例えば最長ピットP1maxから得られる反射率を基準に当該ピットP1の形状が設定されてもよい。
【0064】
ところで、超解像媒体1の基板4に設けられているピットP1およびピットP2は、例えばカッティングマシンにより作製された原盤に対して射出成型を行うことにより製造されるが、原盤作製時にかかる時間を増加させないことを考慮すると、ピットP1およびピットP2は連続して形成されることが好ましい。しかしながら、ピットP1、P2の長さが互いに異なるだけでなく、ピットP1の長さはピットP1’の長さとも異なる。ゆえに、ピットP1とピットP2との形成条件としては、ピットP1及びピットP2を形成する速度だけでなく、データ領域2及び媒体情報領域3のライトストラテジも互いに異なるので、データ領域2及び媒体情報領域3の境界部分付近におけるピットP1およびピットP2は、ピットP1とピットP2との中間的な形状のピットとなり、正しく情報が再生できない可能性がある。そこで、データ領域2と媒体情報領域3との境界部分から所望の範囲を中間領域として設けることが好ましい。この場合、中間領域には、超解像媒体1に関する情報やコンテンツなどの情報の再生に影響を与えない所定の情報が、ピットP1及び/またはピットP2により記録されていてもよい。
【0065】
〔実施例〕
次に、本実施形態の超解像媒体1の一実施例について、図6を用いて説明する。図6は、超解像媒体1の一実施例を示す図であり、(a)は媒体情報領域3の一部(最長スペースS2max近傍)に再生光Lが照射された状態を示す図、(b)はデータ領域2の一部(最長スペースS1max近傍)に再生光Lが照射された状態を示す図である。
【0066】
本実施例における超解像媒体1の大きさ、各層の厚み、材質は上述したとおりである。媒体情報領域3のトラックピッチTpR、及びデータ領域2のトラックピッチTpDは、0.32μmである。なお、媒体情報領域3のトラックピッチTpRは、0.35μmであってもよい。また、本実施例では、1−7PP変調記録方式を用いて情報が記録されている。
【0067】
図6の(a)に示すように、媒体情報領域3は、最長ピットP2max(8Tピット)及び最長スペースS2max(8Tスペース)の長さが0.596μmである。すなわち、ピットP2及びスペースS2のdutyがともに50%となっており、媒体情報領域3の最短ピットP2min(2Tピット、不図示)の長さは0.149μmである。
【0068】
一方、図6の(b)に示すように、データ領域2は、最長ピットP1max(8Tピット)の長さが0.404μmであり、最長スペースS1max(8Tスペース)の長さが0.492μmである。すなわち、ピットP1のdutyが約45%、スペースS1のdutyが約55%となっており、データ領域2の最短ピットP1min(2Tピット、不図示)の長さは0.101μm(≒0.112μm×2×0.45)である。
【0069】
なお、0.112μmという長さは、後述の比較例におけるデータ領域102の最短ピットP101minの長さである。すなわち、比較例におけるデータ領域102のdutyを上記のように変更したものが、本実施例のデータ領域2である。
【0070】
また、媒体情報領域3の記録容量は25GBであり、データ領域2の記録容量は33.3GBである(これらの記録容量は、超解像媒体1を直径120mmのディスクとしたときの相当記録容量である)。
【0071】
さらに、本実施例1の超解像媒体1を再生可能な再生装置が出射する再生光L(再生光学系の再生光L)の波長をλ、当該再生装置が備える対物レンズの開口数をNAとした場合に、再生装置の光学系解像限界は、λ/4NAで表される。本実施例1では、λ=405nm、NA=0.85であり、光学系解像限界はλ/4NA=0.119μm(=119nm)である。
【0072】
すなわち、本実施例1の超解像媒体1において、データ領域2は、ピットP1(スペースS1)の少なくとも1つの長さが光学系解像限界の長さ未満(119nm未満)となっている超解像領域である。一方、媒体情報領域3は、全てのピットP2(スペースS2)の長さが光学系解像限界の長さ以上(119nm以上)となっている非超解像領域となっている。換言すれば、本実施例1の超解像媒体1は、119nmより短い長さのピットP1を含む第1ピット列により情報が記録されたデータ領域2と、119nm以上の長さを有するピットからなる第2ピット列により情報が記録された媒体情報領域3と、が割り当てられた記録層を有している。そして、当該超解像媒体1は、上記再生光の波長λ及び対物レンズの開口数NAである再生装置によって再生される。
【0073】
〔比較例〕
次に、本実施形態の比較例としての超解像媒体101について、図7図9を用いて説明する。図7は、超解像媒体101の外観を示す図であり、図8は、超解像媒体101のb部を拡大して示している。また、図9は、データ領域102の一部(最長スペースS101max近傍)に再生光Lが照射された状態を示す図である。なお、超解像媒体101を再生する再生装置は、実施例1に用いられるものと同じである。
【0074】
超解像媒体101の基本構造は、データ領域102のピットP101(スペースS101)の形状がデータ領域2のピットP1(スペースS1)の形状と異なることを除いて、超解像媒体1と同様である。すなわち、媒体情報領域103におけるピットP102の形状および配置は、図6の(a)に示すピットP2の形状および配置と同じであり、図8に示す「R2T’」及び「R8T’」は、ぞれぞれ「R2T」及び「R8T」に対応する。
【0075】
具体的には、図7に示すように、超解像媒体101は、超解像媒体1と同様、コンテンツが記録されているデータ領域102と、超解像媒体101に関する情報が記録されている媒体情報領域103とが予め割り当てられている。また、図8に示すように、データ領域102および媒体情報領域103には、複数のピットP101、P102と、当該ピット間に形成された複数のスペースS102、S102とが、所定のトラックピッチで、周方向に列をなすように形成されている。
【0076】
データ領域102において、最短ピットP101min(2Tピット、不図示)の長さD2T’は0.112μmであり、図9に示すように、最長ピットP101max(8Tピット)の長さD8T’は0.448μmである。また、最長スペースS101max(8Tスペース)の長さも0.448μmである。すなわち、本比較例においては、ピットP101およびスペースS101のdutyはともに50%である。なお、データ領域2の記録容量(超解像媒体101を直径120mmのディスクとしたときの相当記録容量)は33.3GBである。
【0077】
〔比較例との対比〕
比較例としての超解像媒体101では、図9に示すように、再生光LがスペースS101だけでなく、ピットP101の一部にも照射されている。すなわち、ピットP101への照射分だけ、再生装置が取得する反射率が低下する。そのため、当該反射率は、媒体情報領域103の最長スペースS102max(不図示)において得られる反射率よりも低い値となるため、場合によっては、上記連続再生時に再度のフォーカス制御を行う必要性が生じる。
【0078】
一方、上記実施例の超解像媒体1では、データ領域2は、上記のようなduty(ピットP1およびスペースS1の長さ)としている。すなわち、データ領域2のピットP1のdutyは、データ領域102のピットP101のdutyよりも小さくなっており、図6の(b)に示すように、最長スペースS1maxの長さが再生光Lの照射領域よりも大きくなっている。
【0079】
そのため、超解像媒体1では、再生光Lが最長スペースS1maxの周囲に存在するピットP1に照射されないので、データ領域2の最長スペースS1maxから得られる反射率と、媒体情報領域3の最長スペースS2maxから得られる反射率とを、再生装置において同一と扱うことができる。それゆえ、超解像媒体1では、上記連続再生時に、他方の領域に記録された情報を迅速かつ確実に再生することが可能となる。
【0080】
〔実験例〕
次に、図10及び図11を用いて、本実施形態に係る超解像媒体1に関する一実験例について説明する。図10及び図11は、超解像媒体1に関する一実験例の実験結果を示す図である。この実験例では、データ領域2におけるピットP1及びスペースS1の長さ(duty)として適切な値を検証したものである。ただし、この検証結果は一例にすぎず、再生状況に応じてその許容範囲は変更される。
【0081】
図10は、ピットの長さが互いに異なる光情報記録媒体「Pit群A」〜「Pit群D」の反射率を、BD標準の評価機であるパルステック製ODU−1000(λ:405nm、NA:0.85)で、再生光の強度を1.0mWとして測定した結果を示すものである。
【0082】
図10において、「Pit群A」は、光学系解像限界の長さ以上の長さを有するピットのみからなる非超解像領域を含む光情報記録媒体である。「Pit群A」の最短ピットの長さは0.149μm(duty50%基準)である。
【0083】
「Pit群B」〜「Pit群D」は、光学系解像限界の長さより短い長さを有するピットを少なくとも1つ含む超解像領域を含む光情報記録媒体である。「Pit群B」〜「Pit群D」の最短ピットの長さは、0.112μm(duty50%基準)である。
【0084】
「Pit群B」、「Pit群C」及び「Pit群D」のピット及びスペースの長さ(ピット及びスペースのduty)は互いに異なり、ピットの長さ(ピットのduty)が順に小さくなっている。各光情報記録媒体におけるピットのdutyは、
・「Pit群B」…51.7%(スペースのduty48.3%)
・「Pit群C」…50.3%(スペースのduty49.7%)
・「Pit群D」…48.8%(スペースのduty51.2%)
となっている。
【0085】
また、各光情報記録媒体は、基板上に、厚さ12nmのタンタルからなる機能層と、厚さ100μmの、ポリカーボネートフィルムと透明粘着材とからなるカバー層とが順に積層されて構成されている。さらに、各光情報記録媒体には、1−7PP変調記録方式にて情報が記録されている。すなわち、最短ピット(最短スペース)の長さは2T、最長ピット(最長スペース)の長さは8Tである。
【0086】
再生装置が安定したフォーカス制御を行うためには、各光情報記録媒体における反射率が当該フォーカス制御を行うことが可能な所定の範囲内となるように、最長ピット及び最長スペースが形成されている必要がある。上記所定の範囲とは、再生装置において同一と扱われる、各光情報記録媒体から得られる反射率の許容範囲といえる。本実施形態の超解像媒体1でいえば、上記所定の範囲が、データ領域2から得られる反射率と、媒体情報領域3から得られる反射率との両方が含まれる所定の誤差範囲であると換言することもできる。そして、これら2つの反射率が上記所定の範囲内である場合に、当該2つの反射率が略同一であるとしてもよい。
【0087】
上記所定の範囲は、(1)製造時に生じる基板の変形、(2)基板、機能層・反射膜からなる情報記録層、またはカバー層の膜厚分布、(3)再生装置が備える光源、検出器(ディテクタ)等の製造ばらつき、(4)各光情報記録媒体間でのフォーカス時の測定誤差等を考慮すると、所定の基準に対して約±5%以内であることが好ましい。
【0088】
また、上述のように、非超解像媒体の最長スペースは、当該媒体上に形成される再生光の照射領域よりも大きい。そのため、上記所定の基準は、非超解像媒体の最長スペースに照射した反射率を基準とすることが好ましい。すなわち、超解像媒体1のように、超解像領域(データ領域2)と非超解像領域(媒体情報領域3)とを備えている場合、測定される反射率は、非超解像領域の反射率を基準として約±5%以内であることが好ましい。
【0089】
本実験例では、図10に示すように、「Pit群A」の反射率(10.56%)を上記所定の基準とし、上記所定の範囲(反射率の許容範囲)が10.03%以上、11.12%以下に設定されている。
【0090】
図10に示すように、「Pit群B」、「Pit群C」及び「Pit群D」の反射率の測定結果は、それぞれ「9.51%」、「10.27%」、「10.52%」となった。また、「Pit群C」及び「Pit群D」の反射率は、「Pit群A」の反射率との差が小さく、上記所定の範囲内となった。
【0091】
この測定結果から、ピットのdutyが小さくなる(ピットの長さが短くなる)につれ、スペースのdutyが大きくなる(スペースの長さが長くなる)ため、最長スペース(8Tスペース)に照射したときの反射率も増加していることがわかる。また、「ピット群C」及び「ピット群D」の反射率は、上記所定の範囲となっているので、当該反射率と、「ピット群A」の反射率とは、再生装置において同一と扱えることがわかる。
【0092】
したがって、超解像媒体1では、超解像領域であるデータ領域2のピットP1の長さを小さくするほど、データ領域2から得られる反射率を、非超解像領域である媒体情報領域3から得られる反射率と同一であると再生装置に扱わせることができる。すなわち、情報の記録密度が互いに異なるデータ領域2及び媒体情報領域3の連続再生においても、フォーカスが外れる等の反射率の差異に伴う情報再生の支障が生じることがなく、安定した情報の再生を行うことができる。
【0093】
次に、図11は、「Pit群B」、「Pit群C」及び「Pit群D」の各光情報記録媒体における再生信号品質を表すi−MLSE(Integrated-Maximum Likelihood Sequence Error Estimation)の値を測定した結果を示す。
【0094】
再生時のエラーを抑制し、迅速に情報の再生を行うためには、良好な再生信号品質を得る必要があり、一般に、i−MLSEの値としては15.5%以下となることが要求される。
【0095】
図11に示すように、「Pit群B」、「Pit群C」及び「Pit群D」のi−MLSEの値は、それぞれ「10.0%」、「10.5%」、「15.2%」となった。この測定結果から、超解像媒体1のピットP1の形状を、一般的な超解像媒体のピットのdutyと異なる値となるように変更しても、良好な情報の再生を行うことができることがわかる。すなわち、超解像媒体1においても、一般的な超解像媒体の再生信号品質を維持できることがわかる。
【0096】
また、図10及び図11の測定結果から、超解像媒体1のデータ領域2としては、「Pit群C」及び「Pit群D」を適用することが好ましいことがわかる。すなわち、1−7PP変調記録方式を用いた場合、データ領域2のピットP1のdutyが、スペースのdutyよりも大きい場合であっても、一般的な超解像媒体のピットのdutyよりも小ければよいことがわかる(一般的な超解像媒体のピットのdutyが50%とは限らない)。これにより、情報の記録密度が互いに異なるデータ領域2及び媒体情報領域3を有する超解像媒体1において、データ領域2から得られる反射率を、媒体情報領域3から得られる反射率と同一であると再生装置に扱わせることができるとともに、再生装置において良好な情報の再生を行うことができる。
【0097】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、図12図13に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0098】
本実施形態に係る超解像媒体1は、ピットP1及びスペースS1の長さが、当該ピットP1及びスペースS1に対応する実施形態1のピットP1及びスペースS1の長さよりも短くなっている点で、実施形態1とは異なる。それ以外の構成(例えば、媒体情報領域3のピット形状等)は、実施形態1と同様である。
【0099】
この場合、最長スペースS1maxの長さが、超解像媒体1上に形成された再生光Lの照射領域の直径よりも短くなるため、再生光Lが最長スペースS1maxに照射された場合、最長スペースS1maxの周囲に存在するピットP1の一部にも照射され、当該一部への照射分だけ、得られる反射率が低くなる。
【0100】
しかし、この場合であっても、最長スペースS1maxから得られる反射率が、最長スペースS2max(図6の(a)参照)から得られる反射率と再生装置において同一であると扱える程度に、ピットP1が形成されていればよい。これにより、最長スペースS1maxの長さが、上記再生光Lの照射領域の直径未満であっても、上記連続再生時に、フォーカスが外れることなく情報の再生を行うことが可能となる。
【0101】
〔実施例〕
次に、本実施形態の超解像媒体1の一実施例について、図12を用いて説明する。図12の(a)は、本実施形態の超解像媒体1の一実施例におけるデータ領域2の一部(最長スペースS1max近傍)に再生光Lが照射された状態を示す図である。
【0102】
なお、本実施形態の超解像媒体1の媒体情報領域3に再生光Lが照射された状態は、図6の(a)と同じである。また、以下に述べる以外の構成についても、実施形態1における実施例の構成と同様である。したがって、これらの詳細な説明は省略する。
【0103】
本実施例では、図12の(a)に示すように、データ領域2は、最長ピットP1max(8Tピット)の長さが0.339μmであり、最長スペースS1max(8Tスペース)の長さが0.413μmである。すなわち、ピットP1のdutyが約45%、スペースS1のdutyが約55%となっており、データ領域2の最短ピットP1min(2Tピット、不図示)の長さは約0.085μm(≒0.094μm×2×0.45)である。
【0104】
なお、0.094μmという長さは、後述の比較例におけるデータ領域102の最短ピットP101minの長さである。すなわち、比較例におけるデータ領域102のdutyを上記のように変更したものが、本実施例のデータ領域2である。
【0105】
また、本実施例では、データ領域2のトラックピッチTpDは0.32μmであり、データ領域2の記録容量(超解像媒体1を直径120mmのディスクとしたときの相当記録容量)は40GBである。すなわち、実施形態1の実施例と比べ、ピットP1の長さ及びスペースS1の長さが短くなっているので、上記記録容量が増加している。また、最長スペースS1maxの長さは上記再生光Lの照射領域の直径よりも小さくなっている。
【0106】
〔比較例〕
図12の(b)は、本実施形態の超解像媒体1の比較例としての超解像媒体101におけるデータ領域102の一部(最長スペースS101max近傍)に再生光Lが照射された状態を示す図である。
【0107】
なお、上記比較例の媒体情報領域103に再生光Lが照射された状態は、図6の(a)と同じである。また、以下に述べる以外の構成についても、実施形態1における比較例の構成と同様である。したがって、これらの詳細な説明は省略する。
【0108】
本実施形態の比較例に係る超解像媒体101では、データ領域2の最短ピットP101min(2Tピット、不図示)の長さは0.094μmであり、データ領域2のトラックピッチTpDは0.32μmである。
【0109】
また、図12の(b)に示すように、データ領域102は、最長ピットP1max(8Tピット)の長さ及び最長スペースS1max(8Tスペース)の長さは、ともに0.376μmである。すなわち、ピットP101及びスペースS101のdutyがともに50%となっている。なお、データ領域2の記録容量(超解像媒体101を直径120mmのディスクとしたときの相当記録容量)は40GBである。
【0110】
〔比較例との対比〕
図12の(a)及び(b)に示すように、本実施例及び比較例においては、スペースS1max、S101maxに照射された再生光Lは、ピットP1、P101の一部にそれぞれ照射される。そのため、ピットP1、P101への照射分だけ、再生装置が取得する反射率が低下する。
【0111】
一方、本実施例のピットP1の大きさは、比較例の、当該ピットP1に対応するピットP101の大きさよりも小さい。すなわち、本実施例のピットP1のdutyは、比較例のピットP101のdutyよりも小さい。そのため、本実施例における、上記再生光Lの照射領域に対する、当該照射領域に含まれるピットP1の一部が占める割合は、比較例における、上記再生光Lの照射領域に対する、当該照射領域に含まれるピットP101の一部が占める割合よりも小さくなっている。
【0112】
したがって、本実施例では、比較例よりも、データ領域2の最長スペースS1maxから得られる反射率を高めることができる。そして、本実施例では、データ領域2の最長スペースS1maxから得られる反射率を、媒体情報領域3の最長スペースS2maxから得られる反射率と再生装置において同一であると扱うことができる。
【0113】
このように、超解像媒体1では、最長スペースS1maxの長さが再生光Lの照射領域の直径未満であっても、実施形態1と同様、上記連続再生時に、他方の領域の情報を迅速かつ確実に再生することが可能となる。
【0114】
また、実施形態1に比べ、ピットP1の形状が小さいため、データ領域2の記録容量を増加させることができる。
【0115】
〔実験例〕
次に、図13を用いて、本実施形態に係る超解像媒体1に関する一実験例について説明する。図13は、超解像媒体1に関する一実験例の実験結果を示す図である。この実験例は、データ領域2におけるピットP1及びスペースS1の長さ(duty)として適切な値を検証したものである。ただし、この検証結果は一例にすぎず、再生状況に応じてその許容範囲は変更される。
【0116】
なお、本実験例において用いた評価機は、実施形態1の実験例において用いた評価機と同じである。また、「Pit群E」〜「Pit群G」の各光情報記録媒体の構造は、ピットの形状を除いて、実施形態1の実験例において用いた「Pit群B」〜「Pit群D」の光情報記録媒体と同様の構造を有している。したがって、これらの詳細な説明は省略する。
【0117】
図13は、ピットの長さが互いに異なる光情報記録媒体「Pit群A」、「Pit群E」〜「Pit群G」の反射率を、BD標準の評価機で、再生光の強度を1.0mWとして測定した結果を示すものである。
【0118】
図13において、「Pit群E」〜「Pit群G」は、光学系解像限界の長さより短い長さを有するピットを少なくとも1つ含む超解像領域を含む光情報記録媒体である。「Pit群E」〜「Pit群G」の最短ピットの長さは、0.094μm(duty50%基準)である。
【0119】
「Pit群E」、「Pit群F」及び「Pit群G」のピット及びスペースの長さ(ピット及びスペースのduty)は互いに異なり、ピットの長さ(ピットのduty)が順に小さくなっている。また、「Pit群E」〜「Pit群G」の最長スペースに再生光Lが照射された場合、再生光Lがピットの一部にも照射される。
【0120】
図13に示すように、「ピット群E」、「ピット群F」及び「ピット群G」の反射率の測定結果は、それぞれ「9.85%」、「10.37%」、「10.40%」となった。また、「ピット群F」及び「ピット群G」の反射率は、「ピット群A」の反射率との差が小さく、上記所定の範囲内となった。
【0121】
この測定結果から、ピットのdutyが小さくなるにつれ、スペースのdutyが大きくなるため、最長スペース(8Tスペース)に照射したときの反射率も増加していることがわかる。また、「ピット群F」及び「ピット群G」の反射率は、上記所定の範囲となっているので、当該反射率と、「ピット群A」の反射率とは、再生装置において同一と扱えることがわかる。
【0122】
したがって、超解像媒体1では、超解像領域であるデータ領域2のピットP1の長さを小さくするほど、データ領域2から得られる反射率を、非超解像領域である媒体情報領域3から得られる反射率と同一であると再生装置に扱わせることができる。
【0123】
また、ピットP1の大きさを実施形態1の実施例よりも小さくし、その結果、最長スペースS2maxに再生光Lが照射されたときに、当該再生光LがピットP1に照射された場合であっても、ピットP1のdutyを小さくすることで、再生装置における上記反射率の扱いが可能となる。すなわち、超解像媒体1の記録容量の増大化を図ることができる。
【0124】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、図14図15に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0125】
図14は、ピットP1、P2の極性を示す図である。図14に示すように、本実施形態の超解像媒体1は、凸形状のピットP1、P2が基板4に形成されている(オンピット形式で形成されている)点で、実施形態1(インピット形式)とは異なる。それ以外の構成は、実施形態1と同様である。
【0126】
〔実施例〕
次に、本実施形態の超解像媒体1の一実施例について、図15を用いて説明する。図15は、超解像媒体1の一実施例を示す図であり、(a)は媒体情報領域3の一部(最長スペースS2max近傍)に再生光Lが照射された状態を示す図であり、(b)はデータ領域2の一部(最長スペースS1max近傍)に再生光Lが照射された状態を示す図である。
【0127】
本実施例における超解像媒体1は、ピットP1、P2の形状が凸形状であること以外の構成は、図6に示す実施例と同じである。そのため、図15の(a)に示すように、媒体情報領域3の最長スペースS2maxに再生光Lが照射された場合には、ピットP2に再生光Lが照射されることはない。また、図15の(b)に示すように、データ領域2の最長スペースS1maxに再生光Lが照射された場合であっても、一般的な超解像媒体とは異なり、ピットP1に再生光Lが照射されることはない。
【0128】
したがって、超解像媒体1では、ピットP1、P2が凸形状であっても、実施形態1と同様、データ領域2の最長スペースS1maxから得られる反射率と、媒体情報領域3の最長スペースS2maxから得られる反射率とを、再生装置において同一と扱うことができる。
【0129】
〔実施形態4〕
本発明の他の実施形態について、図16に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0130】
本実施形態に係る超解像媒体1は、実施形態2における超解像媒体1のデータ領域2のトラックピッチTpDを狭めた構成である。
【0131】
〔実施例〕
次に、本実施形態の超解像媒体1の一実施例について、図16を用いて説明する。図16は、データ領域2の一部(最長スペースS1max近傍)に再生光Lが照射された状態を示す図である。
【0132】
なお、本実施形態の超解像媒体1の媒体情報領域3に再生光Lが照射された状態は、図6の(a)と同じである。また、以下に述べる以外の構成についても、実施形態2における実施例の構成と同様である。したがって、これらの詳細な説明は省略する。
【0133】
本実施例では、図16に示すように、データ領域2は、最長ピットP1max(8Tピット)の長さが0.301μmであり、最長スペースS1max(8Tスペース)の長さが0.451μmである。すなわち、ピットP1のdutyが約40%、スペースS1のdutyが約60%となっており、データ領域2の最短ピットP1min(2Tピット、不図示)の長さは約0.075μm(≒0.094μm×2×0.40)である。
【0134】
なお、0.094μmという長さは、実施形態2の実施例において述べたように、実施形態2の比較例におけるデータ領域102の最短ピットP101minの長さである。すなわち、当該比較例におけるデータ領域102のdutyを上記のように変更したものが、本実施例のデータ領域2である。
【0135】
また、本実施例では、データ領域2のトラックピッチTpDは0.29μmであり、データ領域2の記録容量(超解像媒体1を直径120mmのディスクとしたときの相当記録容量)は44GBである。
【0136】
すなわち、実施形態2の実施例に比べ、ピットP1の長さ及びスペースS1の長さが短くなっているので、上記記録容量はさらに増加している。また、最長スペースS1maxの長さは、超解像媒体1上に形成された再生光Lの照射領域の直径よりも小さくなっている。
【0137】
〔比較例〕
本実施例の比較例としての超解像媒体101は、実施形態2の比較例の構造と同一であるため、ここではその説明を省略する。なお、超解像媒体101のデータ領域102の一部(S101max近傍)に再生光Lが照射された状態は、図12の(b)に示されている。なお、データ領域102のトラックピッチは0.32μmである。
【0138】
〔比較例との対比〕
実施形態2と同様、本実施例のピットP1の大きさは、比較例の、当該ピットP1に対応するピットP101の大きさよりも小さい。また、本実施例では、トラックピッチTpDを狭めているので、最長スペースS1maxに照射された再生光Lが、隣接トラックのピットP1に照射される可能性がある。そのため、この場合には、反射率が低下してしまう可能性がある。そのため、本実施例では、ピットP1のdutyを、実施形態2の実施例におけるピットP1よりもさらに小さくしている。
【0139】
これにより、上記再生光Lが、隣接トラックのピットP1に照射されることを回避できるので、トラックピッチTpDの減少による隣接トラックのピットP1の、測定される反射率に与える影響を排除することができる。
【0140】
また、実施形態2と同様、最長スペースS1maxに照射された再生光Lが、当該最長スペースS1maxと同一トラック上のピットP1の一部に照射されたとしても、その照射部分を比較例に比べ小さくすることができるので、データ領域2から得られる反射率を、媒体情報領域3から得られる反射率と同一であると再生装置に扱わせることができる。
【0141】
また、上記のように、本実施例におけるデータ領域2のトラックピッチTpD及びピットP1の大きさは、比較例のトラックピッチ及びピットP101の大きさよりも小さいので、比較例に比べ、トラックピッチの本数及びピット数が多くなる。そのため、比較例に比べ、記録容量を増大させることができる。さらに、実施形態2の実施例におけるデータ領域2のトラックピッチTpD及びピットP1の大きさよりも小さいので、さらに記録容量を増大させることができる。
【0142】
〔実施形態1〜4に係る超解像媒体1の変形例〕
なお、(1)データ領域2から得られる反射率を、媒体情報領域3から得られる反射率と同一であると再生装置に扱わせることができ、(2)再生装置において良好な情報の再生を行うことができるのであれば、上述したようなピットP1の形状に限定されない。
【0143】
例えば、最長ピットP1maxのdutyのみが一般的な超解像媒体の最長ピットのdutyよりも小さく、その他のピットP1のdutyは一般的な超解像媒体のピットのdutyと同一であってもよい。すなわち、最長スペースS1maxのdutyのみが一般的な超解像媒体の最長スペースよりも大きくてもよい。
【0144】
一般に、最短ピット(最短スペース)またはそれに準じるピット(それに準じるスペース)が再生信号品質に与える影響の大部分を占め、最長ピットまたは最長スペースが再生信号品質に与える影響が少ない。なお、1−7PP変調記録方式の場合、最短ピットは2Tピット、それに準じるピットは3Tピットであり、最短スペースは2Tスペース、それに準じるピットは3Tスペースである。
【0145】
そのため、最長ピットまたは最長スペースのdutyのみを、一般的な超解像媒体よりも小さくすることにより、再生信号品質をさらに向上させることができる。すなわち、さらに良好な情報の再生を行うことが可能となる。
【0146】
また、ピットP1のdutyを一般的な超解像媒体のピットと同一とした上で、一般的な超解像媒体のピットよりも、ピットP1の幅を短くしてもよいし、ピットP1の深さを浅くしてもよい。
【0147】
ピットP1のdutyが一般的な超解像媒体のピットと同じである場合、例えば最長スペースS1maxに照射された再生光Lが、当該最長スペースS1max近傍に存在するピットP1の一部にも照射される。
【0148】
しかし、ピットP1の幅が短い場合、一般的な超解像媒体の場合に比べ、再生光Lが形成する照射領域に対してピットP1の一部が占める割合を少なくすることができる。また、ピットP1の深さが浅い場合には、一般的な超解像媒体の場合に比べ、上記ピットP1の一部から得られる反射率を最長スペースS1maxから得られる反射率に近づけることができる。
【0149】
それゆえ、いずれの場合であっても、データ領域2から得られる反射率を、媒体情報領域3から得られる反射率の値に近づけ、再生装置において同一と扱わせることが可能となる。
【0150】
すなわち、データ領域2における反射率を実質的に決定する最長スペースS1maxの大きさが、上記(1)および(2)を満たすように、ピットP1の形状が設定されていればよい。
【0151】
〔実施形態5〕
本発明の他の実施形態について、図17図19に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0152】
<再生装置10の構成>
図17は、本実施形態に係る再生装置10の概略構成を示している。本実施形態の再生装置10は、上記実施の形態1〜4の何れかの超解像媒体1と、通常媒体との両方を再生可能である。
【0153】
再生装置10は、図示のように、レーザ制御回路14、信号処理回路・制御部17(信号処理手段)、サーボ処理回路18(サーボ処理手段)、スピンドルモータ19、光ピックアップ20(再生光照射手段)、光ピックアップ用モータ21を備えている。光ピックアップ20は、超解像媒体1または通常媒体に再生光を照射するものであり、偏光ビームスプリッタ12、レーザ光源13、および検出器15を備えている。なお、図中の光情報記録媒体11は、超解像媒体1である場合と、通常媒体である場合とがある。
【0154】
再生装置10は、まず、スピンドルモータ19により光情報記録媒体11を回転させ、光ピックアップ用モータ21により光ピックアップ20を所定位置に移動させる。次に、レーザ制御回路14によりレーザ光源13から出射される再生光の強度を所定の強度とし、レーザ光源13から再生光を出射させる。この再生光が、偏光ビームスプリッタ12を介して、光情報記録媒体11に照射され、光情報記録媒体11からの反射光が、偏光ビームスプリッタ12を介して検出器15に到達する。
【0155】
検出器15は、到達した反射光に基づいて電気信号を出力し、該電気信号は、サーボ処理回路18に送られ、各種のサーボ制御(例えばフォーカシングサーボおよびトラッキングサーボ)が行われる。また、該電気信号は、信号処理回路・制御部17へ送られる。信号処理回路・制御部17は、該電気信号に基づいて、光ピックアップ用モータ21へ駆動指示を行うか、または、再生データを復号生成し、外部装置(例えば表示装置)に出力する。
【0156】
図18は、信号処理回路・制御部17の構成を示している。信号処理回路・制御部17は、光ピックアップ20がデータ領域2に再生光を照射することにより得られた再生データなどの再生信号波形を、PR(12221)ML方式にて復号するものであり、図示のように、信号処理部22、媒体識別部23およびアクセス位置制御部24を備えている。
【0157】
信号処理部22は、光ピックアップ20から送られた媒体識別情報を示す電気信号を処理し、媒体識別部23に与える。媒体識別部23は、信号処理部22により与えられた上記媒体識別情報を示す電気信号に基づいて、光情報記録媒体11の識別を行う。また、光ピックアップ20から送られたコンテンツを示す電気信号を、再生データとして復号し、上記外部装置に出力する。
【0158】
アクセス位置制御部24は、光情報記録媒体11の所望の位置に光ピックアップ20がアクセスするように、光ピックアップ用モータ21を制御する。なお、超解像媒体1にてデータ領域2のトラックピッチと媒体情報領域3のトラックピッチとが異なる場合には、アクセス位置制御部24は、媒体識別部23による光情報記録媒体11の識別結果に基づいて、アクセス位置を制御することが望ましい。
【0159】
ここで、サーボ処理回路18におけるトラッキングサーボの手法について説明する。例えば、トラッキングサーボの手法には、検出器15における反射光を受光するディテクタを少なくとも2分割し、分割したディテクタからの検出信号に位相差が生じることを利用した手法がある。しかし、この手法の場合、直径120mmのディスクでの相当記録容量が例えば45GB以上といった記録密度の高い領域(データ領域2)ではトラッキングが不安定になり、媒体情報領域3からデータ領域2へと連続した再生ができなくなる可能性が生じる。このため、データ領域2では、トラッキングサーボの手法を変更する必要が生じる。
【0160】
一方、3ビーム法、PP法、またはDPP法などでは、記録密度が高い領域であっても十分なトラッキングエラー信号が得られるため、トラッキングを安定して行うことが可能である。データ領域2と媒体情報領域3とをともにトラッキング可能なトラッキングサーボの手法(3ビーム法、PP法、またはDPP法など)をサーボ処理回路18に採用することで、超解像媒体1のように一方の領域の記録密度が他方の領域の記録密度よりも高い場合であっても、記録密度の異なるこれら2つの領域に記録された情報を、迅速にかつ確実に連続して再生することができる。
【0161】
また、信号処理回路・制御部17は、再生クロック制御部、または、再生速度制御部(ともに不図示)を備えていることが好ましい。
【0162】
上記再生クロック制御部、または再生速度制御部を備えている場合、再生クロック制御部は、媒体識別部23による光情報記録媒体11の識別結果に基づいて、信号処理部22にて利用される再生クロックをそのまま(すなわち、通常媒体に適した再生クロック)とするか、または、超解像媒体1に適した再生クロックに切り替える。再生速度制御部は、媒体識別部23による光情報記録媒体11の識別結果に基づいて、スピンドルモータ19を制御して再生速度をそのまま(すなわち、通常媒体に適した再生速度)とするか、または、超解像媒体1に適した再生速度に切り替える。
【0163】
なお、上記では、光情報記録媒体11の媒体識別情報に再生速度情報が含まれている場合の処理を例示しているが、媒体識別情報に再生速度情報が含まれていない場合もある。この場合、信号処理回路・制御部17に再生速度情報取得部(再生速度情報取得手段)(不図示)が備えられていればよい。再生速度情報取得部によって取得された再生速度情報が、再生クロック制御部または再生速度制御部に出力されることにより、媒体識別部23を備えていなくても、再生装置10に装填された光情報記録媒体11に適した再生クロック及び再生速度を実現できる。
【0164】
さらに、信号処理回路・制御部17は、パワー制御部(不図示)を備えていることが好ましい。
【0165】
上記パワー制御部を備えている場合、パワー制御部は、媒体識別部23による光情報記録媒体11の識別結果に基づいて、レーザ光源13から出射される再生光の強度をそのまま(すなわち、通常媒体に適した再生光強度)とするか、または、レーザ制御回路14を制御して、超解像媒体1に適した再生光の強度に切り替える。
【0166】
なお、上記では、光情報記録媒体11の媒体識別情報に再生光強度情報が含まれている場合の処理を例示しているが、媒体識別情報に再生光強度情報が含まれていない場合もある。この場合、信号処理回路・制御部17に再生光強度情報取得部(再生光強度情報取得手段)(不図示)が備えられていればよい。再生光強度情報取得部によって取得された再生光強度情報が、パワー制御部に出力されることにより、媒体識別部23を備えていなくても、再生装置10に装填された光情報記録媒体11に適した強度を有する再生光の出射を実現できる。
【0167】
さらに、信号処理回路・制御部17は、極性識別部(極性識別手段)(不図示)を備えていることが好ましい。
【0168】
上記極性識別部を備えている場合、信号処理部22は、光ピックアップ20から送られた極性情報を示す電気信号(極性識別信号)を処理し、極性識別部に与える。極性識別部は、信号処理部22により与えられた上記極性識別信号に基づいて、光情報記録媒体11のピットの極性の識別を行う。サーボ処理回路18は、極性識別部による光情報記録媒体11のピットの極性の識別結果に基づいて、トラッキングサーボを行う。
【0169】
さらに、信号処理回路・制御部17は、領域位置情報認識部(領域位置情報認識手段)、および情報再生条件制御部(情報再生条件制御手段)を備えていることが好ましい。
【0170】
上記領域位置情報認識部、および情報再生条件制御部を備えている場合、信号処理部22は、光ピックアップ20から送られたデータ領域位置情報を示す電気信号(データ領域位置信号)を処理し、領域位置情報認識部に与える。領域位置情報認識部は、信号処理部22により与えられた上記データ領域位置信号に基づいて、光情報記録媒体11のデータ領域の位置を認識する。情報再生条件制御部は、領域位置情報認識部によるデータ領域の位置の認識結果に基づいて、データ領域に適した情報再生条件へと切り替える。つまり、情報再生条件制御部は、レーザ制御回路14、及び/またはスピンドルモータ19を制御して、超解像媒体1に適した再生光の強度及び/または再生速度に切り替える。
【0171】
<再生装置10の処理動作>
次に、再生装置10の処理動作について説明する。
【0172】
再生装置10に、光情報記録媒体11が装填されると、信号処理回路・制御部17のアクセス位置制御部24によって、光ピックアップ用モータ21が制御され、レーザ光源13からの再生光が、再生初期用として予め定められていた通常媒体用の再生光の強度で、光情報記録媒体11の再生初期のアクセス位置である媒体情報領域に照射される。そして、媒体情報領域に記録されている、光情報記録媒体11が超解像媒体であるか、通常媒体であるかを示す媒体識別情報、すなわち、光情報記録媒体11のデータ領域が超解像形態か否かを示す媒体識別情報が、検出器15を介して、信号処理回路・制御部17の信号処理部22によって処理され、媒体識別部23で、光情報記録媒体11の識別が行われる。
【0173】
その後、データ領域2にアクセスされ、データ領域2のコンテンツが、検出器15および信号処理部22を介して再生データとして再生される。
【0174】
ここで、信号処理部22における復号方式について説明する。CD及び/またはDVDよりも高密度に、1−7PP変調記録方式によって情報が記録されたBDでは、PRML(Partial Response Maximum Likelihood)復号が用いられる。なお、PRMLの例としては、BDXL(TM)で用いられるPR(12221)MLなどが挙げられる。
【0175】
データ領域2に記録される情報の変調記録方式が、例えばMFM(Modified FrequencyModulation)変調記録方式である場合、1T、1.5Tおよび2Tのピットおよびスペースにより情報記録がなされるため、データ領域2の反射率を媒体情報領域3の反射率と略同一とするために選択できるピットP1の形状の自由度が限られてしまい、良好な再生信号品質を保てない可能性が生じる。しかしながら、1−7PP変調記録方式によって情報が記録された光情報記録媒体であれば、2Tから8Tまでのピットおよびスペースにより情報記録がなされる。さらに、再生信号品質に与える影響が少ない8Tスペースの主に長さによって反射光量が決まる。このため、超解像媒体1の情報記録において1−7PP変調記録方式が採用されている場合、選択できるピットP1の形状の自由度を高くすることができ、超解像媒体1の生産を容易にすることができる。
【0176】
加えて、本実施形態では、信号処理部22の復号方式としてPR(12221)ML方式を採用している。すなわち、本実施形態の再生方法では、データ領域2に再生光を照射することによって得られた再生データなどの再生信号波形を、PR(12221)ML方式にて復号する。これにより、選択できるピットP1の形状の自由度が高い超解像媒体1に再生装置10が対応できるとともに、良好な再生信号品質を保って信頼性高く情報を再生することができる。
【0177】
なお、信号処理部22の復号方式としては、上記PR(12221)ML方式に限定されず、超解像媒体1に所定の変調方式によって記録された情報が復号可能である復号方式であれば、2値検出方式、または、PR(1221)ML方式などの復号方式であってもよい。
【0178】
(再生装置10の処理動作の別例)
また、上記信号処理回路・制御部17が、上記再生クロック制御部、上記パワー制御部、上記極性識別部、上記領域位置情報認識部、および上記情報再生条件制御部を備えている場合における再生装置10の処理動作の別例について説明する。以下では、主として、上述した再生装置10の処理動作と異なる点を説明する。
【0179】
まず、媒体識別部23により光情報記録媒体11の識別が行われ、光情報記録媒体11の識別結果が通常媒体であった場合、再生光の強度及び再生クロックは切り替えられることなく、通常媒体のデータ領域がアクセスされる。一方、媒体識別部23による識別結果が超解像媒体1であった場合、パワー制御部は、上記識別結果に基づいてレーザ制御回路14を制御して、予め定められた超解像媒体1に適した再生光の強度に調整することが可能となる。この調整とともに、再生クロック制御部は、上記識別結果に基づいて、再生クロックを予め定められている超解像媒体1用の再生クロックに変更することが可能となる。
【0180】
また、少なくともトラッキングサーボの手法としてPP法またはDPP法などを用いている場合は、超解像媒体1の媒体情報領域3に記録されている、ピットP1、P2がインピット形式であるか、オンピット形式であるかを示すピット極性情報が再生される。該ピット極性情報を示すピット極性信号は、検出器15を介して信号処理部22に送られ、信号処理部22によって処理された後、極性識別部によってピットP1、P2の極性の識別が行われる。サーボ処理回路18は、極性識別部によるピットP1、P2の極性の識別結果に基づいて、超解像媒体1のトラッキングサーボに適したサーボ処理を選択する。
【0181】
続いて、媒体情報領域3に記録されている、データ領域2の位置を示すデータ領域位置情報が再生される。該データ領域位置情報を示すデータ領域位置信号は、検出器15を介して信号処理部22に送られ、信号処理部22によって処理された後、領域位置情報認識部でデータ領域2の位置の認識が行われる。
【0182】
その後、データ領域2が、超解像媒体1用の再生光強度でアクセスされるとともに、領域位置情報認識部によるデータ領域2の位置の認識結果に基づいて、情報再生条件制御部がデータ領域2に適した情報再生条件に切り替える。つまり、情報再生条件制御部は、レーザ制御回路14、または/およびスピンドルモータ19を制御して、データ領域2に適した再生光強度、または/および再生速度に切り替える。そして、データ領域2のコンテンツが、検出器15および信号処理部22を介して再生データとして再生される。
【0183】
なお、上記では、光情報記録媒体11の媒体識別情報に再生速度情報および再生光強度情報が含まれている場合の処理を例示しているが、媒体識別情報に再生速度情報が含まれていない場合もある。この場合、上記信号処理回路・制御部17に再生速度情報取得部が備えられていればよい。そして、媒体識別部23による識別結果が超解像媒体1であった場合には、再生速度情報を示す再生信号が、検出器15および信号処理部22を介して、再生速度情報取得部から再生クロック制御部または再生速度制御部へと送られることにより、上記再生信号に基づいて、再生クロックを予め定められている超解像媒体1用の再生クロックに変更されればよい。
【0184】
また、媒体識別情報に再生光強度情報が含まれていない場合もある。この場合、上記信号処理回路・制御部17に再生光強度取得部が備えられていればよい。そして、媒体識別部23による識別結果が超解像媒体1であった場合には、再生光強度情報を示す再生信号が、検出器15および信号処理部22を介して、再生光強度情報取得部からパワー制御部へと送られ、レーザ制御回路14が制御されることにより、上記再生信号に基づいて、予め定められた超解像媒体1に適した再生光強度に調整されればよい。
【0185】
以上のように、再生装置10は、超解像媒体1が上述のような構成であるため、装填された光情報記録媒体が超解像媒体1であるか否かの識別を、通常媒体用の低い再生光の強度で、容易に、かつ的確に行うことができる。これにより、再生装置10は、超解像媒体1と通常媒体とのいずれの媒体も再生できる。また、上記識別を通常媒体用の低い再生光の強度で行えるため、再生装置10の消費電力を抑えることができ、さらに、超解像媒体1用の再生光の強度で通常媒体を破壊してしまうことがない。
【0186】
また、再生装置10は、超解像媒体1の各情報を再生する場合には、データ領域2から得られる反射率と、媒体情報領域3から得られる反射率とを同一であると扱える。そのため、再生装置10は、上記連続再生時に、一方の領域の再生制御のうち、他方の領域において維持可能な制御については再度の制御を行うことなく、他方の領域の情報再生を行うことができる。
【0187】
<種々の処理が行われる理由>
(再生クロックの切り替え理由)
ここで、再生装置10が、超解像媒体1と通常媒体とで再生クロックを切り替えることが好ましい理由について、再生専用の通常媒体が、通常媒体用の再生クロックおよび超解像媒体1用の再生クロックで再生される場合を例として図19の(a)及び(b)を用いて説明する。
【0188】
なお、上記通常媒体は、1−7PP変調方式により各情報が記録されている。すなわち、チャネルビットの長さTを基準にして、最短ピット2Tから、最長ピット8Tまでの長さのピットが基板上に設けられている。また、光情報記録媒体の再生は、基板上に設けられているピットに、再生光を照射し、その反射光により得られる出力信号を再生クロックでサンプリングした結果をPRML復号することで信号が再生される。図19の(a)は、上記通常媒体を上記通常媒体用の再生クロックでサンプリングし、PRML復号した様子を示しており、出力信号は、同図下側にあるピットに対応している。図19の(b)は、上記通常媒体を超解像媒体1用の再生クロックでサンプリングし、PRML復号した様子を示しており、出力信号は、同図下側にあるピットに対応している。
【0189】
上記通常媒体が、超解像媒体1用の再生クロックで再生される場合について説明する。なお、超解像媒体1は、上記通常媒体の2倍の線密度であるとする。このため、超解像媒体1用の再生クロック幅は、上記通常媒体用の再生クロック幅の半分となる。
【0190】
上述のような超解像媒体1用の再生クロックで通常媒体を再生すると、図19の(b)に示すように、PRML復号された信号は、「1・1・1・1・0・0・0・0・1・1・1・1・1・1・1・1」となる。このため、図19の(a)に示す通常媒体の再生時と同様の状態とするために、「1・1・1・1」の信号を2Tピット、「1・1・1・1・1・1・1・1」の信号を4Tピットとして処理する必要が生じ、回路が複雑化する。よって、通常媒体と超解像媒体1とをそれぞれ最適な状態で再生するためには、それぞれの場合で、再生クロックを変更することが好ましい。そして、以上のことから、再生装置10は、超解像媒体1と通常媒体とで再生クロックを切り替えることが好ましい。
【0191】
また、上記再生クロック切替情報は、再生装置10が有する光学系解像限界の長さより長い長さのピットP2によって記録されている。このため、通常媒体用の再生クロックで再生でき、無駄な再生クロックの切り替えを必要としない。
【0192】
また、再生装置10では、通常媒体と超解像媒体1とで再生クロックを切り替えた場合、基準発振器が2台になるなど回路負担が大きくなる。そこで、再生クロックを切り替える代わりに、再生速度を切り替えてもよい。
【0193】
例えば、超解像媒体1が通常媒体の2倍の線密度である場合、再生速度を切り替えてその速度を半分にすると、再生される信号が転送される速度は通常媒体の場合と同等になるため、再生クロックを切り替えなくとも、上述のような再生の信頼性が低下するといった問題を生じることがなくなる。したがって、再生クロックを切り替える代わりに、再生速度を切り替える構成としてもよい。
【0194】
なお、再生速度を切り替える構成の場合、再生クロックを切り替える構成と比較して回路負担を低減できるが、超解像媒体1の転送速度が通常媒体と変わらなくなる。逆に、再生クロックを切り替える構成の場合、超解像媒体1の情報の転送速度を速くできる。
【0195】
(再生光強度の切り替え理由)
ここで、再生装置10が、超解像媒体1と通常媒体とで再生光強度を切り替えることが好ましい理由について説明する。超解像再生が熱によって可能になる場合、再生光強度が低すぎると熱が不足し超解像再生が不可能になるため、通常媒体用の再生光強度より高い強度にて超解像媒体1の少なくともデータ領域2に記録された情報を再生する必要がある。一方で、通常媒体を通常媒体用の再生光強度にて再生することで、通常媒体の劣化が早まる可能性を阻止できる。また、上記再生光強度情報は、再生装置10が有する光学系解像限界の長さより長い長さのピットP2によって記録されている。このため、超解像媒体1では、再生光強度情報を通常媒体用の再生光強度で再生できるので、無駄な再生クロックの切り替えを必要としない。
【0196】
(ピット極性の識別理由)
また、再生装置10が、ピットP1、P2の極性を識別することが好ましい理由について説明する。再生装置10が例えばトラッキングサーボをPP法やDPP法などを用いて行う場合、ピットP1、P2の極性によってトラッキング誤差信号の正負が異なる。このため、ピットP1、P2の極性の識別を行わない場合には、再生光の照射位置がオントラック状態である場合のトラッキング誤差信号が、超解像媒体1の中心からの距離に関するトラッキング誤差信号の一次微分の値が正となるトラッキング誤差信号の振幅中心であるのか、または、負となるトラッキング誤差信号の振幅中心であるのか、の判別を直ちに行うことができない。ゆえにこの場合には、例えばピットP1、P2の存在による反射光量の変動の有無を確認してオントラック状態にあるか否かを確認する必要が生じる。
【0197】
一方、再生装置10が超解像媒体1に記録されたピット極性情報に基づいてピットP1、P2の極性の識別を行うことで、超解像媒体1に対してトラッキングサーボを迅速に行うことができる。さらに、トラッキングサーボの手法の自由度を高くすることができ、再生装置10の生産を容易にすることができる。
【0198】
(データ領域2の位置認識理由)
また、再生装置10が、データ領域2の位置を認識することが好ましい理由について説明する。超解像再生が熱によって可能になる場合、例えば媒体情報領域3に記録された情報を良好な品質で再生し、かつ光ピックアップ20にかかる負荷を低減させるために、データ領域2と媒体情報領域3との再生速度および再生光強度を、媒体情報領域3に記録された情報を再生可能な再生速度の上限値および再生光強度の下限値と同一にすると、記録密度の高いデータ領域2では、超解像再生に必要な熱が不足し、超解像再生ができない可能性がある。そこで、データ領域2の再生時には、再生速度を遅くする、または、再生光強度を高めることで、データ領域2においても記録された情報を良好な品質で再生し、かつ光ピックアップ20にかかる負荷を低減させることができる。
【0199】
ゆえに、データ領域2の位置を認識することで、データ領域2と媒体情報領域3とのそれぞれに対して許容される再生速度の上限値および再生光強度の下限値を考慮した再生条件に切り替え可能となり、データ領域2と媒体情報領域3とに記録された情報をそれぞれ良好な品質で再生でき、かつ光ピックアップ20にかかる負荷を低減させることができる。
【0200】
〔ソフトウェアによる実現例〕
再生装置10の制御ブロック(特に信号処理回路・制御部17)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0201】
後者の場合、再生装置10は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムおよび各種データがコンピュータ(またはCPU)で読み取り可能に記録されたROM(Read Only Memory)または記憶装置(これらを「記録媒体」と称する)、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを備えている。そして、コンピュータ(またはCPU)が上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0202】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る光情報記録媒体(超解像媒体1)は、
再生装置が有する光学系解像限界の長さより短い長さのピットを含む第1ピット列により情報が記録された第1領域と、
上記光学系解像限界の長さ以上の長さを有するピットからなる第2ピット列により情報が記録された第2領域と、が割り当てられた記録層を有する光情報記録媒体であって、
上記第1ピット列の最長ピット、または、最長スペースから得られる反射光量から算出される反射率を第1反射率、上記第2ピット列の最長ピット、または、最長スペースから得られる反射光量から算出される反射率を第2反射率とした場合、
上記第1ピット列は、上記第1反射率が上記第2反射率と略同一となるように形成されている。
【0203】
上記の構成によれば、第1領域には、再生装置が有する光学系解像限界の長さより短い長さのピットを含む第1ピット列により情報が記録されている。また、第2領域には、光学系解像限界の長さ以上の長さを有するピットからなる第2ピット列により情報が記録されている。
【0204】
一般に、最短ピットの長さに応じて、光情報記録媒体における情報の記録密度が異なる。また、上記第1ピット列を形成するピットと上記第2ピット列を形成するピットとの長さが互いに異なる。そのため、第1領域および第2領域における情報の記録密度は互いに異なる。この場合、第1反射率と第2反射率との間に、再生装置がこれらの反射率を略同一とみなすことができない差異が生じ、この差異が情報の再生に影響を与える可能性がある。
【0205】
本発明の一態様に係る光情報記録媒体では、第1ピット列が、第1反射率が第2反射率と略同一となるように形成されている。
【0206】
それゆえ、各領域間における連続再生時に、第1反射率及び第2反射率が互いに略同一ではないために生じる可能性、例えば再生光が光情報記録媒体上に形成する照射領域の大きさが変わるといった可能性を低減させることができる。そのため、上記連続再生時に、再度のフォーカス制御を行うことなく、迅速かつ確実に情報の再生を行うことが可能となる。
【0207】
すなわち、上記連続再生時に、一方の領域の再生制御のうち、他方の領域において維持可能な制御については再度の制御を行うことなく、他方の領域の情報再生を行うことが可能となり、情報の再生品質を向上させることができる。
【0208】
また、第2領域には、再生装置が有する光学系解像限界以上の長さのピットからなる第2ピット列が形成されている。そのため、通常媒体の情報再生に適した再生光の強度で、第2領域に記録されている情報を再生することができる。なお、この情報としては、例えば、媒体識別情報、再生速度情報、媒体固有番号などの各種情報(超解像媒体に関する情報)が挙げられる。
【0209】
なお、「上記第1反射率が上記第2反射率と略同一となる」とは、光情報記録媒体(超解像媒体1)または再生装置に対して、第1領域及び第2領域に互いに異なる反射率の規定を設けることなく、再生装置が上記2つの反射率を同一と扱える程度の大きさとなると換言することもできる。
【0210】
さらに、本発明の態様2に係る光情報記録媒体は、態様1において、
上記第1ピット列を形成する複数のピットの間に形成された複数の第1スペース(スペースS1)のうち、最長である第1スペースを最長第1スペース(最長スペースS1max)とし、
上記第2ピット列を形成する複数のピットの間に形成された複数の第2スペース(スペースS2)のうち、最長である第2スペースを最長第2スペース(最長スペースS2max)としたとき、
上記第1ピット列は、上記最長第1スペースにおける反射率が、上記最長第2スペースにおける反射率と略同一となるように形成されていることが好ましい。
【0211】
上記の構成によれば、第1最長スペースにおける反射率が、最長第2スペースにおける反射率と略同一となるように、上記第1ピット列が第1領域に形成されている。それゆえ、上記連続再生時においても、迅速かつ確実に情報再生を行うことができる。
【0212】
さらに、本発明の態様3に係る光情報記録媒体は、態様2において、
上記最長第1スペースの長さは、上記再生装置が出射した再生光が上記光情報記録媒体上に形成する照射領域の直径以上であることが好ましい。
【0213】
上記の構成によれば、最長第1スペースの長さが、再生光が光情報記録媒体上に形成する照射領域の直径以上であるので、最長第1スペースに再生光が照射されたときに、最長第1スペースと同一トラック上に存在する、第1ピット列を形成するピットに当該再生光が照射されることがない。そのため、第1反射率は、最長第1スペースにのみ由来する反射率となる。
【0214】
一方、第2領域においては、最長第2スペースの長さが、上記再生光の照射領域の直径よりも大きいので、第2反射率は、最長第2スペースにのみ由来する反射率となる。
【0215】
それゆえ、上記のようにピットを形成することにより、第1反射率を、第2反射率とほぼ同一の値として、再生装置に扱わせることができる。
【0216】
さらに、本発明の態様4に係る光情報記録媒体は、
再生光の波長(λ)が405nmであり、対物レンズの開口数(NA)が0.85である再生装置により再生され、
119nmより短い長さのピットを含む第1ピット列により情報が記録された第1領域と、
119nm以上の長さを有するピットからなる第2ピット列により情報が記録された第2領域と、が割り当てられた記録層を有する光情報記録媒体であって、
上記第1ピット列の最長ピット、または、最長スペースから得られる反射光量から算出される反射率を第1反射率、上記第2ピット列の最長ピット、または、最長スペースから得られる反射光量から算出される反射率を第2反射率とした場合、
上記第1ピット列は、上記第1反射率が、上記第2反射率と略同一となるように形成されている。
【0217】
上記の構成によれば、態様1における効果に加えて、再生光の強度等を変更することにより、第1領域においては超解像技術による再生を行い、第2領域においては非超解像技術による再生を行うことができる。
【0218】
さらに、本発明の態様5に係る光情報記録媒体は、態様1から4のいずれかにおいて、
上記第1ピット列は、1−7PP変調記録方式を用いて形成されていることが好ましい。
【0219】
上記の構成によれば、同一長さのピットを用いて情報を記録した場合に比べ、情報の記録密度を増大させることができる。また、良好な信号品質を得ることができる。
【0220】
さらに、本発明の態様6に係る光情報記録媒体は、態様1から5のいずれかにおいて、
上記第2領域には、媒体の種類を特定するための媒体識別情報が含まれることが好ましい。
【0221】
上記の構成によれば、通常媒体の情報再生に適した再生光の強度で、媒体識別情報を再生することができる。それゆえ、通常媒体の情報再生に適した再生光の強度を用いて、上記光情報記録媒体を超解像媒体であると識別させることができる。
【0222】
また、本発明の態様7に係る光情報記録媒体の再生方法は、態様5の光情報記録媒体の再生方法であって、
上記第1領域に再生光を照射することによって得られた再生信号波形を、PR(12221)ML方式にて復号することが好ましい。
【0223】
上記の構成によれば、上記第1領域における第1ピット列を形成するピットの形状の自由度が高い光情報記録媒体、つまり、生産が容易な光情報記録媒体に対応した再生を行うことができるとともに、良好な再生信号品質を保って信頼性高く情報を再生することができる。
【0224】
さらに、本発明の態様8に係る光情報記録媒体の再生装置は、態様5の光情報記録媒体を再生可能な光情報記録媒体の再生装置であって、
上記光情報記録媒体に再生光を照射する再生光照射手段と、
上記再生光照射手段が上記第1領域に上記再生光を照射することにより得られた再生信号波形を、PR(12221)ML方式にて復号する信号処理手段と、を備えていることが好ましい。
【0225】
上記の構成によれば、上記第1領域における第1ピット列を形成するピットの形状の自由度が高い光情報記録媒体、つまり、生産が容易な光情報記録媒体に再生装置が対応できるとともに、良好な再生信号品質を保って信頼性高く情報を再生することができる。
【0226】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0227】
本発明に係る光情報記録媒体(超解像媒体)は、光学読取式のディスク、光磁気ディスク、相変化型ディスク等、種々の光ディスクに対して好適であるが、磁気ディスクなど、光学系解像限界の長さより短い長さの記録マークを有する情報記録媒体にも適用できる。また、本発明に係る再生方法及び再生装置は、本発明に係る光情報記録媒体を再生する方法及び装置に適用できる。
【符号の説明】
【0228】
1 超解像媒体(光情報記録媒体)
2 データ領域(第1領域)
3 媒体情報領域(第2領域)
5 機能層
10 再生装置
17 信号処理回路・制御部(信号処理手段)
20 光ピックアップ(再生光照射手段)
P1 ピット(第1ピット列のピット)
P2 ピット(第2ピット列のピット)
P1max 最長ピット
P2max 最長ピット
S1max 最長スペース
S2max 最長スペース
L 再生光
λ 波長
NA 開口数
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図19