特許第6289465号(P6289465)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6289465
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】注射デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/20 20060101AFI20180226BHJP
   A61M 5/315 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
   A61M5/20
   A61M5/315 550Z
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-526949(P2015-526949)
(86)(22)【出願日】2013年8月12日
(65)【公表番号】特表2015-524721(P2015-524721A)
(43)【公表日】2015年8月27日
(86)【国際出願番号】EP2013066772
(87)【国際公開番号】WO2014026935
(87)【国際公開日】20140220
【審査請求日】2016年7月29日
(31)【優先権主張番号】12180357.1
(32)【優先日】2012年8月14日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】フランク・リヒター
(72)【発明者】
【氏名】ロス・マッカーサー
【審査官】 今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−504008(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/043714(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/113039(WO,A1)
【文献】 特表2007−500530(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/123024(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0092915(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/20
A61M 5/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
剤(3、3’)を注射するための送達機構と、フィードバック要素を含む用量終了機構とを含む注射デバイスであって、
該用量終了機構は、送達機構が用量終了に達した位置で起動するように動作可能であり、用量終了機構は、放出ボタンの起動方向の反対もしくはそれに平行なフィードバック方向、および/または長手方向にフィードバック要素を移動させるようにさらに動作可能であり、そして、送達機構は、用量終了機構を起動するために、用量終了時に、径方向開口部(85)を通るように動作可能である、径方向要素(80)を含む、
前記注射デバイス。
【請求項2】
フィードバック要素が放出ボタン(10、10’、10’’)を含み、その近位端面を含む場合、フィードバック要素は、起動方向の反対もしくはそれに平行に移動させられ、および/または、
フィードバック要素がハウジング(1、1’)もしくはニードルカバー(7)を含み、そのそれぞれの遠位端面を含む場合、フィードバック要素は、デバイスの遠位側長手方向であるフィードバック方向に移動させられる、請求項1に記載の注射デバイス。
【請求項3】
用量終了機構は、予荷重されたまたは予荷重可能なばね(39、49)を含む、請求項1または2に記載の注射デバイス。
【請求項4】
用量終了機構は、フィードバック要素をフィードバック方向に急激に押しやるように動作可能である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項5】
注射デバイスの送達機構が、注射中にナット(81)に対して回転するように動作可能で薬剤の注射をもたらす親ねじ(30、30’)を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項6】
径方向開口部(85)がプレート(83)によって提供される、請求項1に記載の注射デバイス。
【請求項7】
プレート(83)は、回転不能な親ねじに対して回転する、請求項6に記載の注射デバイス。
【請求項8】
径方向要素(80)はロッドであり、該ロッドの長手方向は注射デバイスに対して径方向に収容される、請求項1に記載の注射デバイス。
【請求項9】
停止位置で、ロッドはプレート(83)の径方向開口部(85)と位置合わせされ、これにより、ばね(39)によって予荷重されたプレートが解放され、放出ボタンを近位側長手方向に移動させるために、近位方向に駆動される、請求項6〜8のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項10】
送達機構は、用量終了機構を起動するために、用量終了時に係合解除するように動作可能である、2つの係合された要素を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項11】
用量終了機構はラチェット手段(61)を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項12】
用量終了機構は止め具部材(65)を含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項13】
用量終了機構は可聴信号(29、29’)を生成するように構成される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項14】
用量終了機構は可視信号を生成するように構成される、請求項1〜13のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項15】
用量終了機構は針(33、33’)を格納する、または引き込むように動作可能である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくは針を通して、薬剤を注射するための送達機構を含む注射デバイスを対象とする。
【背景技術】
【0002】
本発明は特に、特別の薬剤の1回量を送達するように設計された医療用デバイスである、自己注射器について言及する。自己注射器は、使用が簡単であり、患者による自己投与、または訓練されていない人による投与を意図している。しかし、本発明は、この種の注射デバイスに限定されず、注射前の正確かつ制御された薬用量を可能にし、再使用可能または使い捨てである注射器およびペンにも適用可能である。
【0003】
自己注射器デバイスは、注射療法の自己投与を患者にとってより簡単にすることを目標とする。自己投与される注射剤によって送達される現在の治療としては、糖尿病用の薬物(インスリンおよびより新しいGLP−1類の薬物の両方)片頭痛、ホルモン療法、抗凝血剤などが挙げられる。
【0004】
今日知られている自己注射器は、注射前は針先端を被覆した状態で保ち、また、偶発的な発射(注射)を防ぐ受動安全機構を含む。単に放出ボタン(release button)を押すことによって、注射器針は自動的に送り出され、薬剤が送達される。
【0005】
かかる自己注射器の使用における問題の1つは、いくつかの理由によってしばしば全用量が送達されないことである。しかし、ヒトまたは動物の治療される身体内において薬剤の完全な有効性に達するために、全用量を投与することが必要である。したがって、完全な送達をより容易に認識するために、市販の一部の自己注射器は、全用量が消費されたことを確認する視覚表示を有する。
【0006】
特許文献1は、可聴の「クリック」音を生成し、それによって薬用量全体が注射されていることを聴覚的に確認する、用量終了(end−of−dose)クリック配置を含む、医療用投薬デバイスを開示している。この音は、可撓性の指の縁部が、ハウジング縁部を越えて溝内に移動することによって生成される。
【0007】
さらに、特許文献2により、用量送達機構および用量終了フィードバック機構を備える注射デバイスが知られている。その中で、注射デバイスの第1および第2の部品は、用量の注射中、互いに対して相対的な回転移動を行うように適合される。相対的な回転移動によって、注射デバイスの少なくとも2つの部品が当接または係合し、その当接または係合によって視覚以外のフィードバック信号が生じる。これは、たとえば、注射デバイスの少なくとも1つの部品の回転速度の変化によって、たとえばねじ山付き部分のピッチを変更することによって、または回転しない部品および回転する部品を係合し、それによって回転しない部品が回転し始めることによって生じてもよい。
【0008】
上述の現況技術における用量終了指示の欠点は、それらを聞き逃すおそれがあるか、または触覚による方法でしかほとんど認識できないことである。騒々しい環境での1回のクリック音は簡単に聞き逃される。回転移動の速度の変化は、ユーザが触覚信号を明らかに感じるほど十分には明瞭なものでも明確なものでもないことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】EP0730876B1
【特許文献2】WO2006/079481A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、全用量が注射されたことをユーザに対して触覚による方法で非常に明瞭かつ明確に示すことができる、注射デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これは、請求項1に定義されるような注射デバイスによって達成される。
【0012】
本発明の主な態様は、デバイスがフィードバック要素を備える用量終了機構を含み、用量終了機構が、送達機構が用量終了に達した位置で起動するように動作可能であり、用量終了機構が、放出ボタンの起動方向の反対もしくはそれに平行、および/または長手方向に平行な、フィードバック方向にフィードバック要素を移動させるようにさらに動作可能であり、フィードバック方向が好ましくはデバイスの長手方向である。ここで、起動方向は、薬剤の注射を起動するために放出ボタンが押される方向である。
【0013】
本発明の注射デバイスの利点は、用量終了時のフィードバック要素の移動が、起動方向の反対もしくはそれに平行であるか、または長手方向である点にある。その中で、フィードバック要素の移動は回転移動を含まず、起動方向に平行もしくはその反対である、または長手方向に平行な、長さ方向の移動のみを含む。発明者らは、フィードバック要素の移動がこれらの方向の1つである場合、ユーザがそれを簡単に感じることができ、したがって、フィードバック要素の変位がバックストローク、キックバック、または斥力をもたらすことから、簡単に認識することができることを見出した。起動方向は、デバイスの長手方向軸に対して平行である、デバイスの長手方向に平行であってもよい。あるいは、起動方向は、長手方向または他の任意の方向に垂直であってもよい。
【0014】
さらに、フィードバック要素が、親ねじまたは歯車駆動装置のような、薬剤の注射をもたらす注射デバイスのハウジング内の要素とは別個であることが好ましい。好ましい一実施形態では、フィードバック要素は、患者または薬剤を投与する者、たとえば医療従事者の皮膚と直接接触している要素である。その結果、フィードバック要素の移動は患者またはユーザによって直接感じられる。
【0015】
本発明の一実施形態では、注射デバイスは次のバージョンで実現されてもよい:すなわち、フィードバック要素が好ましくはその近位端面に放出ボタンを含む場合、フィードバック要素は、起動方向に平行なまたはその反対のフィードバック方向に移動させられ、起動方向は、好ましくはデバイスの長手方向に平行である。別の方法として、またはそれに加えて、そのフィードバック要素または別のフィードバック要素がハウジングまたは針カバーをそれぞれ含む場合、好ましくはハウジングまたは針カバーそれぞれの遠位端面に含む場合、フィードバック要素は、デバイスの遠位側長手方向であるフィードバック方向に移動させられる。
【0016】
本発明のデバイスは、獣医学用途、小児科用途、またはより高齢のユーザ向けに設計された用途に使用されてもよいが、それは用量終了機構が、より若年者または高齢者であってもバックストロークを良好に感じられるような強いものであるためである。本発明により、回転要素を含む上述した現況技術のフィードバック機構によって提供されるもの、たとえば回転速度の変化よりも、はるかに強い触覚認知的なフィードバックが用量終了時に提供される。
【0017】
認知的なフィードバックは、デバイスの適用中のエラーを回避し、特に、注射器を早く除去し過ぎたときに起こる過少投与(underdose)が回避される。
【0018】
さらに、薬剤用量は前もって正確に計測されるが、それは、用量終了に達した時点または注射デバイスの要素の位置で、用量終了機構がそれ以上の薬剤の注射を停止するためである。したがって、薬剤は注射デバイスから垂れず、注射デバイスを除去した後の皮層刺激(たとえば、エノキサパリンによる)が回避される。
【0019】
一実施形態によれば、新しい本発明の注射デバイスの用量終了機構は、予荷重されたまたは予荷重可能なばねを含んでもよい。ばねは、用量終了機構の部材であり、薬剤の注射中に注射デバイスが用量終了に達した送達機構の構成要素の位置で起動され、それによって自由になるかまたは回復して、フィードバック要素を上述の方向のうち1つに移動させる。
【0020】
認知的なフィードバックは、用量終了機構がフィードバック要素を上述のフィードバック方向に急激に押しやるように動作可能である場合に特に強い。
【0021】
本発明の注射デバイスを実現する簡単でコスト効率の良いやり方は、デバイスが、注射中にナットに対して回転するように動作可能な親ねじを含む場合に提供される。好ましくは、かかる親ねじはその遠位端に、薬剤をカートリッジから送り出すプランジャを含む。親ねじは、特に、ユーザ定義の用量が注射のためにダイヤル設定されてもよい、本発明の注射デバイスで使用される。
【0022】
特に、親ねじが注射デバイスで使用される場合、一実施形態では、送達機構は、好ましくは親ねじから突出する径方向要素を、たとえば長手方向がデバイスに対して径方向に適応したロッドを含んでもよい。径方向要素は、用量終了機構を起動するために、用量終了時に、好ましくはプレートの径方向開口部を通るように動作可能である。あるいは、送達機構は、用量終了機構を起動するために、用量終了時に係合解除させるように動作可能である、2つの係合された要素を含んでもよい。
【0023】
触覚フィードバックのさらなる向上は、用量終了機構がラチェット手段を含む一実施形態において到達することができる。好ましくは、フィードバック要素の変位中、ユーザが上述のフィードバック方向内で揺れる、またはごつごつした動きを感じるように、弾性の指が同時にラチェット手段に乗り上げる。
【0024】
好ましい一実施形態では、用量終了機構は、フィードバック要素の移動を急激に止める止め具部材を含む。止め具部材はさらに、好ましくは止め具部材に対するデバイスの要素の当接によって、音のフィードバックを生成してもよい。
【0025】
さらなる実施形態では、用量終了機構は、「クリック」音のような可聴信号を提供してもよい。別の方法として、またはそれに加えて、用量終了機構は可視信号を生成してもよく、たとえば、LEDによってたとえば生成される閃光信号を示してもよく、または色の変化などを示してもよい。
【0026】
別の実施形態では、用量終了機構は針を格納する、または引き込むように動作可能であってもよく、それによって、同じ機構が一方では用量終了の信号を送り、他方では針を保護する。この実施形態では、本発明の注射デバイスは、有利には、安全針機構を提供し、それによって病院でも使用可能である。
【0027】
好ましくは、本発明の注射デバイスは、注射中に好ましくは針を通して注射される薬剤を含有するカートリッジを含む。注射は、薬剤を注射するために、好ましくはデバイスの長手方向である起動方向で押される、放出ボタンの動作によって制御される。
【0028】
本明細書で使用する用語「薬剤」は、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、および/または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモンもしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチの処置および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4もしくはエキセンジン−3もしくはエキセンジン−4の類似体もしくは誘導体を含む。
【0029】
インスリン類似体は、たとえば、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0030】
インスリン誘導体は、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0031】
エキセンジン−4は、たとえば、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドであるエキセンジン−4(1−39)を意味する。
【0032】
エキセンジン−4誘導体は、たとえば、以下のリストの化合物:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);または
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
(ここで、基−Lys6−NH2が、エキセンジン−4誘導体のC−末端に結合していてもよい);
【0033】
または、以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
desPro36エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2(AVE0010)、
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desMet(O)14,Asp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2;
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物
から選択される。
【0034】
ホルモンは、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストである。
【0035】
多糖類としては、たとえば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。
【0036】
抗体は、基本構造を共有する免疫グロブリンとしても知られている球状血漿タンパク質(約150kDa)である。これらは、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各抗体の基本的な機能単位は免疫グロブリン(Ig)単量体(1つのIg単位のみを含む)であり、分泌型抗体はまた、IgAなどの2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳動物のIgMのように5つのIg単位を有する五量体でもあり得る。
【0037】
Ig単量体は、4つのポリペプチド鎖、すなわち、システイン残基間のジスルフィド結合によって結合された2つの同一の重鎖および2本の同一の軽鎖から構成される「Y」字型の分子である。それぞれの重鎖は約440アミノ酸長であり、それぞれの軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、これらの折り畳み構造を安定化させる鎖内ジスルフィド結合を含む。それぞれの鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは約70〜110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に基づいて異なるカテゴリー(たとえば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインと他の荷電アミノ酸との間の相互作用によって一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的な免疫グロブリン折り畳み構造を有する。
【0038】
α、δ、ε、γおよびμで表される5種類の哺乳類Ig重鎖が存在する。存在する重鎖の種類により抗体のアイソタイプが定義され、これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体中に見出される。
【0039】
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり、αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(C)と可変領域(V)を有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体で本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム型のIgドメインと、可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4つの免疫グロブリン・ドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体では異なるが、単一B細胞またはB細胞クローンによって産生された抗体すべてについては同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
【0040】
哺乳類では、λおよびκで表される2種類の免疫グロブリン軽鎖がある。軽鎖は2つの連続するドメイン、すなわち1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211〜217個のアミノ酸である。各抗体は、常に同一である2本の軽鎖を有し、哺乳類の各抗体につき、軽鎖κまたはλの1つのタイプのみが存在する。
【0041】
すべての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所与の抗体の固有の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域によって決定される。より具体的には、各軽鎖(VL)について3つおよび重鎖(VH)に3つの可変ループが、抗原との結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
【0042】
「抗体フラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全抗体と本質的に同じ機能および特異性を示す。パパインによる限定的なタンパク質消化は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。1つの完全なL鎖および約半分のH鎖をそれぞれが含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズが同等であるが、鎖間ジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR結合部位を含む。限定的なペプシン消化により、Fab片とH−H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖および軽鎖の可変領域は、縮合して単鎖可変フラグメント(scFv)を形成することもできる。
【0043】
薬学的に許容される塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩としては、たとえば、HClまたはHBr塩がある。塩基性塩は、たとえば、アルカリまたはアルカリ土類、たとえば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1〜R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1〜C6アルキル基、場合により置換されたC2〜C6アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10アリール基、または場合により置換されたC6〜C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0044】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物である。
【0045】
当業者であれば、本発明が説明される可能性に限定されないことを理解する。
【0046】
本発明の様々な態様の上述した利点ならびに他の利点は、添付図面の説明と併せて以下の詳細な説明を読むことによって、当業者には明白となるであろう。
【0047】
本発明の例示的な実施形態について、概略図を参照して本明細書に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】注射前の本発明の注射デバイスを示す斜視図である。
図2】a)注射前、b)注射中、ならびにc)用量終了時における、本発明の注射デバイスの第1の実施形態を示す斜視図である。
図3図2による本発明の注射デバイス用の力対変位の図である。
図4】用量終了時における本発明の注射デバイスの第2の実施形態を示す斜視図である。
図5】a)注射前、b)注射中、ならびにc)用量終了時における、本発明の注射デバイスの第3の実施形態を示す斜視図である。
図6】用量終了時における本発明の注射デバイスの第4の実施形態を示す斜視図である。
図7】a)注射前ならびにb)用量終了時における、図2による本発明の注射デバイスの断面図である。
図8】a)注射前ならびにb)用量終了時における、図5による本発明の注射デバイスの断面図である。
図9】本発明の注射デバイスの第4の実施形態の修正例における用量終了機構の一部を示す断面図である。
図10図9による本発明の注射デバイスの力対変位の図である。
図11】本発明の注射デバイスの第4の実施形態における送達機構の一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図面は概略であり、明瞭にするために単純化されており、本発明を理解するために必須である詳細のみを示し、他の詳細は省略している。さらに、「遠位端」という用語は、添付図面では、注射針を有する注射デバイスの端部を指すことを意味し、「近位端」という用語は、注射針から離れる方向を指し示す反対端を指すことを意味する。
【0050】
以下、好ましい実施形態の説明は、ユーザ定義の用量をダイヤル設定する可能性を有さない自己注射器を指す。より正確には、自己注射器は、たとえば成人のヒトまたは成獣向けに予め定義された用量を収容する。しかし、説明された特徴はまた、注射前にユーザ定義の用量をダイヤル設定することが可能にされた、注射器または自己注射器に適用することができる。さらに、本発明は、再使用可能または使い捨ての注射デバイスで使用することができる。
【0051】
図1は、本発明の自己注射器の原則的な構造を示す。自己注射器は、カートリッジ内に収容された薬剤3を含む。カートリッジはハウジング1内に収納される。遠位端では、自己注射器は、中に収納された針を格納し保護するとともに、注射後の針の安全性を提供するニードルシールド7を含む。あるいは、自己注射器は、全用量を自動的に注射した後、針を引き込む針引込みユニットを含んでもよい。投与中、薬剤3は、針を通して注射するために、プランジャ5によって遠位方向に押しやられる。自己注射器の近位端では、薬剤3の予め定義された用量を注射するために、送達機構を起動する放出ボタン10が収納される。放出ボタン10は、ユーザによって、たとえば起動のための遠位側長手方向に押されるように動作可能である。
【0052】
図2では、薬剤の予め定義された用量の注射は、本発明の自己注射器の第1の実施形態に関して説明される。この実施形態および以下の実施形態に関して、患者自身または別の人間であってもよいユーザによって放出ボタンが押されることによって、注射が起動されるものと指摘されるであろう。
【0053】
第1のステップ(図2a)に図示)で、自己注射器は、治療すべきヒトまたは動物の皮膚13にそのニードルシールド7を位置させる。ここで、ユーザは、薬剤3の予め定義された用量を注射しようとしており、したがって、指15(図2b)を参照)で遠位方向(図2a)に矢印16で示される起動方向)に放出ボタン10を押す。長手遠位側方向に指15で放出ボタン10を押すことによって、送達機構が起動されて、プランジャ15が遠位方向(この方向は矢印17で示される)に移動するので、薬剤3が針(図示なし)を通して投与される。予め定義された全用量が投与された後、用量終了に達する。ここで、送達機構は、自己注射器内に実現された用量終了機構を解除する。これは、自己注射器の内部構成要素が用量終了点に達する位置によって達成することができる。用量終了機構の起動の一例は、図11に関して記載される。
【0054】
図2に示される実施形態では、用量終了機構のフィードバック要素はニードルシールド7を含む。図2c)に示されるように一旦用量終了機構が起動されると、ニードルシールド7は、たとえば予圧ばねを解放することによって、遠位方向(フィードバック方向、矢印aを参照)に移動させられる。これにより、ニードルシールド7は距離dの分、自己注射器のハウジング1の遠位端の外に出る(またはそこから伸長する)。同時に、針は、皮膚13から自動的に引き抜かれ、距離d伸長したニードルシールド7によって格納される。用量終了時の自己注射器のこの遠位方向力は衝突のように感じられ、したがって、患者が自身の皮膚によって簡単に認識する。後に続くデバイスの後方移動を、ユーザは自身の指15でバックストロークとして簡単に認識する。これにより、ユーザおよび患者(同一人物ではない場合)は用量終了に達したことを知り、ユーザは自己注射器を皮膚13から除去する。
【0055】
本発明の自己注射器の挙動は、図3の力対距離の図20に概略的に示され、この図では、長手遠位方向(矢印18によって示される方向とは反対)に皮膚13に加えられる認知的な力が、自己注射器のハウジング1の端部からニードルシールド7が引き抜かれる距離dの関数として示される。点23および距離dゼロにおいて、用量終了に達し、用量終了機構が起動する。ここで、用量終了機構によって駆動される力Fは最大値26に達するまで増加する(フランク25を参照)。次に、力Fはわずかに減少し(フランク27を参照)、プラトー28に達する。ニードルシールド7が最大伸長に、したがって最大距離dmaxに達した場合、力Fはゼロに達するまで減少する。ニードルシールド7が急激に押しやられた場合、フランク25は非常に急である。
【0056】
図4に示されるように、用量終了機構の起動には、可聴信号、たとえば「クリック」音が伴ってもよい(参照番号29を参照)。
【0057】
別の方法として、またはそれに加えて、可聴の用量終了信号には、たとえば点滅するLED、色の変化などによる、視覚信号(図示なし)が伴ってもよい。
【0058】
図5は、本発明の自己注射器の別の実施形態を示す。図2a)およびb)に関して記載した方法と同様に、第1のステップで、自己注射器はハウジング1’の遠位端が皮膚13に位置する。次に、ユーザの指15で放出ボタン10’を起動方向(矢印16’を参照)に押すことで、自己注射器の送達機構が起動し、プランジャ5’が針(図示なし)を通して薬剤3’(矢印17’を参照)を送り、治療されるヒトまたは動物にそれを注射する。
【0059】
用量終了に達した場合、用量終了機構が起動され、距離d’の分、ハウジング1’の外に近位方向(フィードバック方向、矢印bを参照)に放出ボタン10’を送り、それによって、近位側長手方向(矢印18’を参照)への認知的な力をユーザの指15に触覚信号として加える。この実施形態に関して、図3の距離対力の図は、距離dの代わりに、ハウジング1’から放出ボタン10’が伸長する距離d’の違いを適用することが示される。
【0060】
図2および4に関して記載した実施形態と同様に、この実施形態の触覚信号は、視覚および/または可聴の用量終了信号とも組み合わされてもよい(図6の参照番号29’を参照)。
【0061】
図7および8に関して、自己注射器のニードルシールド7または用量ボタン10’を駆動する用量終了機構を、図2または5に示されるような親ねじ30、30’を用いて実現する、2つの可能性がそれぞれ説明される。
【0062】
本発明の自己注射器は、予荷重された第1のばね38を備える送達機構を含み、薬剤3を投与するために、プランジャ5を用いて遠位方向で親ねじ30を駆動する。図7a)は、注射中の注射デバイスを示す。用量終了に達した場合(図7b)を参照)、同様に予荷重されている第2のばね39が起動され、それによってニードルシールド7を遠位方向に駆動し、針33を格納する。自動的に針33は皮膚13から引き込まれる。
【0063】
図5に示されるような実施形態の用量投与中(図8a)を参照)、予荷重された第1のばね48は、プランジャ5’によって遠位方向で親ねじ30’を駆動する。用量終了に達した場合(図8b)を参照)、第2の予荷重されたばね49が起動されて、放出ボタン10’を近位方向に駆動して、認知的な力をユーザの指15に対して提供する。用量終了機構の活性時間中、針33’は治療されるヒトまたは動物の皮膚13に挿入されたままである。自己注射器の除去中、用量終了機構が終了した後に皮膚13から引き抜かれる。同時に、ニードルシールド(図示なし)が針を覆ってもよく、あるいは針引込みユニット(図示なし)が針を本発明のデバイスのハウジング1’内に引き込む。
【0064】
図9は、図5に示される機構の修正例として実現されてもよい、図6に示されるような自己注射器の実施形態の用量終了機構を示す。用量終了機構は、放出ボタン10’’の内表面にラチェット手段61を提供する。放出ボタン10’’を近位方向に変位させる間、可撓性の指63がラチェット手段61に乗り上げて、「クリック」音を生成する。最後に、放出ボタン10’’の最大変位に達した場合、指63の縁部が、放出ボタン10’’からその内容積に突出する径方向の突起65に当接する。
【0065】
この修正された実施形態によって、力対変位の図70によって図10に示されるように、異なる認知的な出力が実現される。力曲線は、点73で用量終了に達した場合に力Fが増加する、第1のフランク75を含むことが示される。次に、指63がラチェット61に乗り上げるプラトー77に達し、ユーザは、簡単に認識される、跳ね上がるまたはでこぼこする力を感じる。放出ボタン10’’の変位の終了に達した場合、力Fはフランク78におけるゼロまで減少する。
【0066】
図11は、用量終了機構を起動する可能性を実現するのが容易な方法を示す。図6および8に関して上述した自己注射器の実施形態に関して説明される。投与中、親ねじ30’は、親ねじ30の外表面上にあるねじ山82を使用して、止め具要素(ペグ)に達するまでナット81に対して回転する(矢印79を参照)。特に、親ねじ30’の回転は、ナット81の内径上にある図示されない突起によって停止される。この位置で、親ねじ30’の径方向に突出するロッド80は、自己注射器のハウジング1内のピン84によって収納されたプレート83のそれぞれの貫通穴85と位置合わせされる。これにより、第2のばね39によって予荷重されたプレート83が解放され、上述したように放出ボタン10’を近位側長手方向(フィードバック方向)に移動させるために、近位方向に駆動することができる。
【0067】
あるいは、プレート83は、回転不能な親ねじ30’に対して回転し、それによって遠位方向に移動してもよい。この場合、プレート83は、親ねじ30’のねじ山83と一致する螺旋溝を含んでもよい。
【0068】
本発明の自己注射器は、用量終了時に認知的なフィードバックを提供するので、ユーザは用量終了に達したことを簡単に感じることができる。本発明の主な態様は、認知的な力が起動方向もしくはその反対方向に、または遠位側長手方向に作用する、触覚的なフィードバックが提供されることである。触覚的なフィードバックは、過少投与を防ぐように、注射デバイスの使用中のエラーを回避する。
【符号の説明】
【0069】
1、1’ ハウジング
3、3’ 薬剤
5、5’ プランジャ
7 ニードルシールド
10、10’、10’’ 放出ボタン
13 皮膚
16、16’ 矢印
17、17’ 矢印
18、18’ 矢印
20 力対変位の図
23 用量終了点
25、27 フランク
26 曲線の最大値(最大力)
28 プラトー
29、29’ 「クリック」音信号
30、30’ 親ねじ
33、33’ 針
38 第1のばね
39 第2のばね
48 第1のばね
49 第2のばね
61 ラチェット手段
63 指
65 径方向突起
70 力対変位図
73 用量終了点
75 フランク
77 プラトー
78 フランク
79 矢印
80 ロッド
81 ナット
82 スレッド
83 プレート
84 ピン
85 貫通穴
a 矢印
b 矢印
F 力
d 距離
max ニードルシールド伸長の最大距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11