(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両が走行している道路区間である走行区間を特定する走行区間特定手段と、前記走行区間を走行した際の前記車両の走行情報を当該走行区間に関連付けて記録媒体に記録する走行情報記録手段と、を備える走行情報記録システムであって、
前記走行情報記録手段は、
前記走行区間上において特定される前記車両の現在位置が不連続に遷移したことにより、分岐地点から分岐する複数の道路区間のいずれかから前記走行区間が変化する区間変化が生じたと判定される場合に、
前記区間変化前における前記走行情報に基づいて、前記区間変化後における前記走行区間である変化後区間に関連付けて記録する前記走行情報を取得する、
走行情報記録システム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)ナビゲーションシステムの構成:
(1−1)通常記録処理:
(1−2)差替記録処理:
(1−3)個別記録処理:
(1−4)統合記録処理:
(1−5)運転支援:
(2)走行情報記録処理:
(3)他の実施形態:
【0011】
(1)ナビゲーションシステムの構成:
図1は、車両に搭載された走行情報記録システムの構成を示すブロック図である。本実施形態において走行情報記録システムは、ナビゲーションシステム10によって実現される。ナビゲーションシステム10は、CPU、RAM、ROM等を備える制御部20を備えており、ROMに記憶されたプログラムを制御部20で実行する。本実施形態においては、このプログラムの一つとしてナビゲーションプログラムを実行可能である。当該ナビゲーションプログラムは、ナビゲーションシステム10の表示部に車両の現在位置が含まれる地図を表示して運転者を目的地までの走行予定経路を案内する機能を制御部20に実現させるプログラムである。当該ナビゲーションプログラムは、走行過程で利用される各種のプログラムを備えており、本実施形態においては、車両が走行した道路区間ごとに当該車両の走行情報を記録する走行情報記録プログラム21を含んでいる。
【0012】
記録媒体30には地図情報30aが記録されている。また、記録媒体30には、車両の走行過程で走行情報データベース(DB)30bが記録される。地図情報30aは、車両が走行する道路区間の端点(始点、終点)に対応するノードの位置等を示すノードデータ、ノード間の道路区間の形状を特定するための形状補間点の位置等を示す形状補間点データ、ノード同士の連結を示すリンクデータ等を含んでいる。また、リンクデータには、道路区間の道路種別を示す情報と、リンクの長さである区間長を示す情報と、リンクにおける車両の走行方向を示す情報とが含まれている。道路区間の端点のうち、車両の走行方向前方の端点が道路区間の終点となる。また、3個以上の道路区間が接続している端点が分岐地点および交差点を構成する。本実施形態において、道路種別とは、一般道路と高速道路との区別を意味する。
【0013】
さらに、記録媒体30には、走行情報記録プログラム21の運用過程において、走行情報DB30bが記録される。走行情報DB30bは、車両が走行した道路区間ごとに、当該道路区間における車両の走行情報を関連付けて記録したデータベースである。本実施形態において、走行情報として、道路区間を走行する期間において消費したパワー積算値が走行情報DB30bに蓄積される。パワー積算値とは、一定の走行距離ごとに取得したバッテリ49aの消費パワー(仕事率)を、道路区間を走行する期間において積算した値である。
【0014】
本実施形態にかかる車両は、GPS受信部41と車速センサ42とジャイロセンサ43とユーザI/F部44とバッテリ49aと内燃機関49bとギア機構49cと出力軸49dとモータ48とECU50とを備えている。本実施形態にかかる車両は、内燃機関49bとモータ48の回転駆動力がギア機構49cによって出力軸49dに伝達されることによって駆動されるハイブリッド車両である。内燃機関49bとモータ48とから出力軸49dに伝達されるエネルギー配分はECU50が生成する制御信号に基づいてギア機構49cが調整する。本実施形態の走行情報DB30bに蓄積される走行情報としてのパワー積算値は、内燃機関49bを停止し、モータ48によって車両を駆動させた場合(いわゆるEV走行)におけるバッテリ49aの消費パワーを時刻ごとに積算した値(消費電力相当値)である。
【0015】
GPS受信部41は、GPS衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介して車両の現在位置を算出する
ための信号を出力する。制御部20は、この信号を取得して車両の現在位置を取得する。車速センサ42は、車両が備える車輪の回転速度に対応した信号を出力する。制御部20は、図示しないインタフェースを介してこの信号を取得し、車速を取得する。ジャイロセンサ43は、車両の水平面内の旋回についての角加速度を検出し、車両の向きに対応した信号を出力する。制御部20は、この信号を取得して車両の進行方位を取得する。
【0016】
ユーザI/F部44は、運転者の指示を入力し、また運転者に各種の情報を提供するためのインタフェース部であり、図示しないタッチパネルディスプレイからなる表示部やスイッチ等の入力部、スピーカ等の音声出力部を備えている。ユーザI/F部44は制御信号を制御部20から受信し、各種案内を行うための画像をタッチパネルディスプレイに表示する。
【0017】
走行情報記録プログラム21は、走行区間特定部21aと走行情報記録部21bと運転支援部21cとを含む。
走行区間特定部21aは、車両が走行している道路区間である走行区間を特定する機能を制御部20に実行させるモジュールである。具体的に、走行区間特定部21aの機能により制御部20は、車両の走行軌跡を取得するとともに、地図情報30aを参照して車両の周辺に存在する道路区間の道路形状を取得する。そして、制御部20は、車両の走行軌跡と道路形状との一致度に応じた自信度を各道路区間について取得し、自信度が最も大きい道路区間を走行区間として特定する。本実施形態において、制御部20は、ジャイロセンサ43および車速センサ42からの出力信号に基づく軌跡である自立航法軌跡を、GPS信号に基づいて特定した車両の位置の軌跡であるGPS軌跡等に基づいて補正した走行軌跡を取得する(特開2012−7939号公報、参照)。走行区間を特定すると、走行区間特定部21aの機能により制御部20は、走行区間上にて車両の現在位置を特定する。例えば、制御部20は、走行区間上の地点のうち、車両の走行軌跡の最新の地点に最も近い地点を車両の現在位置として特定してもよい。
【0018】
走行情報記録部21bは、走行区間を走行した際の車両の走行情報を当該走行区間に関連付けて記録媒体30の走行情報DB30bに記録する機能を制御部20に実行させるモジュールである。走行情報記録部21bの機能により制御部20は、通常記録処理と差替記録処理と統合記録処理と個別記録処理とを切り替えて実行する。走行情報記録部21bの機能により制御部20は、車両が走行区間の走行を完了したタイミングにおいて、事前に取得されている走行情報を走行情報DB30bに記録する記録処理(通常記録処理と差替記録処理と統合記録処理と個別記録処理のいずれか)を実行する。走行区間の走行を完了するとは、走行区間の終点から所定距離(例えば5m)以内の地点を車両が走行することであってもよい。
【0019】
(1−1)通常記録処理:
まず、通常記録処理について説明する。走行情報記録部21bの機能により制御部20は、車両が走行中において一定の走行距離(例えば10m)ごとにバッテリ49aの消費パワーを取得し、当該消費パワーを積算することにより、パワー積算値を取得し、当該パワー積算値をRAMに記録する。通常記録処理において、走行情報記録部21bの機能により制御部20は、走行区間の走行が完了すると、当該走行区間を走行中に積算されたパワー積算値を、当該走行区間に関連付けて走行情報DB30bに記録する。走行区間の走行が完了すると、制御部20は、RAMに記録されたパワー積算値を0にリセットし、次の走行区間におけるパワー積算値を引き続きRAMに記録する。
【0020】
図2Aは通常記録処理が実行される場合の車両の走行状態を示す模式図であり、
図2B通常記録処理において記録されるパワー積算値を示す模式図である。
図2Aにおいて、道路区間の端点に相当するノードを丸で示し、特に分岐地点Aを黒丸で示す。
図2Aは、車両が紙面右側に走行する場合の道路区間S1の終点である分岐地点Aに対して道路区間S2,S3が接続している様子を示す。分岐地点Aに接続する道路区間S3に対して道路区間S4が接続していることとする。
【表1】
図2A(2C,2E,2G)に示された線は道路区間(道路区間の一部分も含む)を表し、各線の線種と道路区間の特性との関係を表1に示している。すなわち、実線は車両が実際に走行し、かつ、走行区間として特定された道路区間を表し、一点鎖線は車両が実際に走行しなかったが、走行区間として特定された道路区間の部分を表し、二点鎖線は車両が実際に走行したが、走行区間として特定されなかった道路区間の部分を表し、破線は車両が実際に走行せず、かつ、走行区間として特定されなかった道路区間を表す。
図2B(2D,2F,2H)は、パワー積算値Dと当該パワー積算値Dに対応
する道路区間Sとの関係を示す模式図である。同図のグラフの縦軸がパワー積算値Dを示し、横軸が車両の位置を示す。
図2Bにおいて破線で示すように、パワー積算値Dは車両が走行にともなって積算されていく値である。
【0021】
図2Aにおいて、車両が現実に道路区間S
1,S
3,S
4を順に走行し、道路区間S
1,S
3,S
4が順に走行区間として特定されたこととする。分岐地点Aを走行する際に、制御部20は、RAMに蓄積されているパワー積算値Dを0にリセットし、道路区間S
2を走行する期間においてパワー積算値Dを積算する。次に、走行区間として特定されている道路区間S
2の走行が完了すると、制御部20は、RAMに蓄積されているパワー積算値Dを道路区間S
2に関連付けて走行情報DB30bに記録する。
図2Aの場合、車両が現実に道路区間S
2を走行する期間において道路区間S
2が走行区間として特定されているため、
図2Bに示すように、制御部20は、パワー積算値Dをそのまま道路区間S
2に関連付けて走行情報DB30bに記録する。
【0022】
以上説明したように、車両が現実に走行している道路区間Sと走行区間として特定されている道路区間Sとが一致する場合、制御部20は、通常記録処理によって、走行区間として特定されている道路区間Sにパワー積算値Dを関連付けて記録する。しかしながら、マップマッチングの状況によっては、車両が現実に走行している道路区間Sと走行区間として特定されている道路区間Sとが一致しないと推定される場合があり、このような場合には通常記録処理ではなく、後述する差替記録処理と統合記録処理と個別記録処理のいずれかを実行する。
【0023】
(1−2)差替記録処理:
次に、差替記録処理について説明する。差替記録処理において、走行情報記録部21bの機能により制御部20は、分岐地点Aから分岐する複数の道路区間Sのいずれかから走行区間が変化する区間変化Cが生じた場合に、区間変化C前におけるパワー積算値Dに基づいて、区間変化C後における走行区間である変化後区間に関連付けて走行情報DB30bに記録するパワー積算値Dを取得する。区間変化Cが生じた場合とは、車両が現実に走行している道路区間Sと走行区間として特定されている道路区間Sとが一致しないと推定される場合を意味する。
【0024】
図2Cは差替記録処理が実行される場合の車両の走行状態を示す模式図であり、
図2Dは差替記録処理において記録されるパワー積算値Dを示す模式図である。
図2Cにおいて、車両が現実に道路区間S
1,(S
4+S
5)を順に走行している。道路区間(S
4+S
5)は、単一の道路区間Sであり、第1部分S
4と第2部分S
5とで構成される。
図2Cにおいて、車両が分岐地点Aを走行した直後において、車両が現実に道路区間(S
4+S
5)を走行しているにも拘わらず、走行区間として道路区間S
2が誤特定されている。走行区間として道路区間S
2が誤特定された状態がしばらく継続した後に、現実に走行している道路区間(S
4+S
5)が走行区間として特定されている。すなわち、
図2Cの場合、分岐地点Aから分岐する複数の道路区間Sのいずれかの道路区間S
2から走行区間が道路区間(S
4+S
5)へと変化する区間変化Cが生じている。
【0025】
本実施形態において、走行情報記録部21bの機能により制御部20は、走行区間上において特定される車両の現在位置Pが不連続に遷移した場合に、区間変化Cがあったと判定する。現在位置Pが不連続に遷移したと判定するための条件は、例えば単位時間あたりの現在位置Pの移動量が所定距離以上であることや、現在位置Pの移動方向が走行区間(区間変化C前の走行区間または/および区間変化C後の走行区間)のリンクの方向に対して所定角度以上であることであってもよい。なお、区間変化C後に走行区間として特定されている道路区間(S
4+S
5)が変化後区間となる。変化後区間(S
4+S
5)は、区間変化C前に現実に車両が走行していた第1部分S
4(
二点鎖線)と、区間変化C後に現実に車両が走行していた第2部分S
5(実線)とで構成される。
【0026】
走行情報記録部21bの機能により制御部20は、区間変化Cが生じたと判定した場合に、分岐地点Aと変化後区間(S
4+S
5)とが走行区間として特定されなかった非特定区間によって接続されるか否かを判定する。具体的に、制御部20は、分岐地点Aと変化後区間(S
4+S
5)とを接続する最短経路を探索し、当該最短経路上に走行区間として特定されていなかった道路区間Sである非特定区間が存在するか否かを判定する。また、分岐地点Aは、地図情報30aが示す交差点のうち、区間変化Cよりも前の期間において最後に走行した走行区間の終点である。走行情報記録部21bの機能により制御部20は、分岐地点Aと変化後区間(S
4+S
5)とが走行区間として特定されなかった非特定区間によって接続されると判定しなかった場合、差替記録処理を実行する。
図2Cにおいては、分岐地点Aと変化後区間(S
4+S
5)とが直接接続しており、分岐地点Aと変化後区間(S
4+S
5)とが走行区間として特定されなかった非特定区間によって接続されていない。
【0027】
差替記録処理において、走行情報記録部21bの機能により制御部20は、区間変化C前におけるパワー積算値Dのうち、分岐地点Aの走行後におけるパワー積算値Dに基づいて、区間変化C後における走行区間である変化後区間(S
4+S
5)に関連付けて走行情報DB30bに記録するパワー積算値Dを取得する。具体的に、走行情報記録部21bの機能により制御部20は、区間変化C前におけるパワー積算値Dと、区間変化C後において車両が変化後区間(S
4+S
5)を走行した際のパワー積算値Dとを統合することにより、変化後区間(S
4+S
5)に関連付けて記録するパワー積算値Dを取得する。
【0028】
図2Dに示すように、パワー積算値Dは分岐地点Aにて0にリセットされるため、分岐地点Aの走行後において、分岐地点Aの走行後におけるパワー積算値Dが積算されることとなる。また、パワー積算値Dは走行区間の走行が完了するまで積算されるため、区間変化Cが生じた際にリセットされることなく、変化後区間(S
4+S
5)の走行が完了するまで積算されることとなる。すなわち、
図2Dに示すように、分岐地点Aから変化後区間(S
4+S
5)の走行が完了するまでパワー積算値Dを積算することにより、区間変化C前におけるパワー積算値Dと、区間変化C後において変化後区間(S
4+S
5)を走行した際のパワー積算値Dとを実質的に統合したパワー積算値Dを取得できる。
【0029】
パワー積算値Dの記録は走行区間の走行が完了するタイミングで実行される処理であり、差替記録処理も変化後区間(S
4+S
5)の終点を走行したタイミングで実行される。差替記録処理において、制御部20は、変化後区間(S
4+S
5)の終点を走行したタイミングでRAMに記録されているパワー積算値Dを取得し、当該パワー積算値Dを変化後区間(S
4+S
5)に関連付けて走行情報DB30bに記録する。
図2Dの場合、分岐地点Aの走行直後において走行区間として道路区間S
2が特定されている。
【0030】
(1−3)個別記録処理:
次に、個別記録処理について説明する。個別記録処理も変化後区間(S
4+S
5)の終点を走行したタイミングで実行される。上述したように、分岐地点Aと変化後区間(S
4+S
5)とが、走行区間として特定されなかった非特定区間によって接続されない場合に、差替記録処理を実行するが、分岐地点Aと変化後区間(S
4+S
5)とが、非特定区間によって接続される場合に、制御部20は、個別記録処理または統合記録処理を実行する。すなわち、走行情報記録部21bの機能により制御部20は、分岐地点Aと変化後区間(S
4+S
5)とが、非特定区間によって接続される場合に、非特定区間と変化後区間(S
4+S
5)のそれぞれに対してパワー積算値Dを関連付けて記録する個別記録処理と、非特定区間と変化後区間(S
4+S
5)とを統合した統合区間に対してパワー積算値Dを関連付けて記録する統合記録処理とを切り替えて実行する。具体的に、走行情報記録部21bの機能により制御部20は、非特定区間の終点が交差点である場合に、個別記録処理を実行し、非特定区間の終点が交差点でない場合に、統合記録処理を実行する。
【0031】
図2E、2Gは、分岐地点Aと変化後区間(S
4+S
5)とが、非特定区間S
6によって接続される場合を示す。
図2Eにおいて、非特定区間S
6の終点B(二重丸)は、非特定区間S
6と変化後区間(S
4+S
5)以外に、他の道路区間S
7が接続する交差点となっている。従って、
図2Eの場合、個別記録処理が実行されることとなる。一方、
図2Gにおいて、非特定区間S
6の終点Bは、非特定区間S
6と変化後区間(S
4+S
5)しか接続していないため、交差点ではない。
【0032】
走行情報記録部21bの機能により制御部20は、非特定区間S
6の道路種別と変化後区間(S
4+S
5)の道路種別とが異なる場合に、個別記録処理を実行し、非特定区間の道路種別S
6と変化後区間(S
4+S
5)の道路種別とが同一である場合に、統合記録処理を実行する。すなわち、制御部20は、非特定区間の終点Bが交差点でない場合であっても、非特定区間S
6の道路種別と変化後区間(S
4+S
5)の道路種別とが異なる場合には、統合記録処理ではなく個別記録処理を実行する。つまり、制御部20は、非特定区間S
6の終点Bが交差点でなく、かつ、非特定区間S
6の道路種別と変化後区間の道路種別とが同一である場合に、統合記録処理を実行する。なお、
図2Gにおいて、非特定区間S
6の道路種別と変化後区間(S
4+S
5)の道路種別とが双方とも一般道路であり、
図2Gの場合に統合記録処理が実行されることとする。
【0033】
走行情報記録部21bの機能により制御部20は、分岐地点Aと変化後区間とが、非特定区間S
6によって接続される場合に、非特定区間S
6と変化後区間のそれぞれに対して個別にパワー積算値Dを関連付けて記録する個別記録処理を実行する。具体的に、走行情報記録部21bの機能により制御部20は、分岐地点Aと変化後区間とが、走行区間として特定されなかった非特定区間S
6によって接続される場合に、区間変化C前におけるパワー積算値Dに基づいて、道路区間S
6(少なくとも非特定区間S
6を含む区間)に関連付けて記録するパワー積算値Dを取得する。
【0034】
図2Fは、個別記録処理において記録されるパワー積算値Dを示す模式図である。個別記録処理を実行するタイミングも車両が変化後区間(S
4+S
5)の走行を完了したタイミングである。このタイミングにおいて、RAMには分岐地点Aの走行後から変化後区間(S
4+S
5)の走行が完了するまでの間に積算されたパワー積算値Dが記録されており、非特定区間S
6と変化後区間(S
4+S
5)との全体を走行した際のパワー積算値Dが記録されていることとなる。
【0035】
そこで、走行情報記録部21bの機能により制御部20は、個別記録処理において、分岐地点Aの走行後から変化後区間(S
4+S
5)の走行が完了するまでにおけるパワー積算値Dを、変化後区間(S
4+S
5)と非特定区間S
6の区間長の割合に基づいて分配することにより、非特定区間S
6に関連付けて記録するパワー積算値Dと、変化後区間(S
4+S
5)に関連付けて記録するパワー積算値Dとを取得する。
図2Fに示すように、変化後区間(S
4+S
5)の走行が完了する際にRAMに記録されているパワー積算値Dを取得することにより、分岐地点Aの走行後から変化後区間(S
4+S
5)の走行が完了するまでに積算されたパワー積算値Dを取得できる。走行情報記録部21bの機能により制御部20は、地図情報30aのリンクデータを参照することにより、非特定区間S
6の区間長L
6と、変化後区間(S
4+S
5)の区間長(L
4+L
5)とを取得する。そして、制御部20は、RAMから取得したパワー積算値Dに、割合L
6/(L
4+L
5+L
6)を乗算することにより、非特定区間S
6に関連付けるパワー積算値Dを取得する。一方、制御部20は、RAMから取得したパワー積算値Dに、割合(L
4+L
5)/(L
4+L
5+L
6)を乗算することにより、変化後区間(S
4+S
5)に関連付けるパワー積算値Dを取得する。
【0036】
(1−4)統合記録処理:
次に、統合記録処理について説明する。統合記録処理も変化後区間(S
4+S
5)の終点を走行したタイミングで実行される。走行情報記録部21bの機能により制御部20は、分岐地点Aと変化後区間(S
4+S
5)とが、非特定区間S
6によって接続される場合に、非特定区間S
6と変化後区間(S
4+S
5)とを統合した統合区間(S
4+S
5+S
6)に対して走行情報を関連付けて記録する統合記録処理を実行する。具体的に、走行情報記録部21bの機能により制御部20は、区間変化C前におけるパワー積算値Dと、区間変化C後において車両が変化後区間(S
4+S
5)を走行した際のパワー積算値Dとを統合することにより、統合区間(S
4+S
5+S
6)に関連付けて記録するパワー積算値Dを取得する。
【0037】
図2Hは、統合記録処理において記録されるパワー積算値Dを示す模式図である。
図2Hに示すように、変化後区間(S
4+S
5)の走行が完了する際にRAMに記録されているパワー積算値Dを取得することにより、分岐地点Aの走行後から変化後区間(S
4+S
5)の走行が完了するまでに積算されたパワー積算値Dを取得できる。すなわち、制御部20は、非特定区間S
6における
パワー積算値Dと変化後区間(S
4+S
5)におけるパワー積算値Dとを実質的に統合したパワー積算値DをRAMから取得できる。ここで、統合区間(S
4+S
5+S
6)は、非特定区間S
6と変化後区間(S
4+S
5)とを統合した道路区間Sであるため、RAMに記録されているパワー積算値Dを統合区間(S
4+S
5+S
6)に関連付けて記録すればよい。
【0038】
(1−5)運転支援:
運転支援部21cは、走行情報DB30bに記録されたパワー積算値Dに基づいて、制御区間ごとにエネルギー配分を設定する処理を制御部20に実行させるモジュールである。エネルギー配分とは、内燃機関49bおよびモータ48から出力軸49dに伝達されるエネルギーの配分であり、ギア機構49cによって調整される。制御区間とは、エネルギー配分が設定される区間の単位である。運転支援部21cの機能により制御部20は、公知の経路探索手法によって探索された車両の走行予定経路を取得し、当該走行予定経路上において連続している道路区間Sを複数個結合することにより、制御区間を設定する。このとき、制御部20は、道路種別が異なる道路区間S同士を結合しないようにする。そして、制御部20は、制御区間を構成する各道路区間Sに関連付けられているパワー積算値Dの平均値や合計値等に基づいて、エネルギー配分を制御区間ごとに設定する。例えば、パワー積算値Dが大きい制御区間ほど、内燃機関49bのエネルギー配分を大きく設定する。なお、パワー積算値Dの平均値や合計値等に対応するエネルギー配分を規定したテーブル(不図示)は、道路種別ごとに予め記録媒体30上に用意されている。従って、高速道路と一般道路とのそれぞれにおいて、パワー積算値Dの平均値や合計値等に適したエネルギー配分の設定を実現できる。
【0039】
以上説明した本実施形態において、分岐地点Aの走行から長時間・長距離にわたってマップマッチングを行うことにより特定された走行区間の方が、分岐地点Aの走行直後に特定された走行区間よりも信頼度が高くなる。従って、分岐地点Aの走行後に区間変化Cがあった場合、区間変化C前に特定された走行区間よりも、区間変化C後に特定された変化後区間(S
4+S
5)の方が、走行区間としての信頼度が高くなる。すなわち、車両は、区間変化C前において、区間変化C前の走行区間ではなく、区間変化C後の走行区間である変化後区間(S
4+S
5)を走行していたと考えることができる。そこで、走行情報記録部21bの機能により制御部20は、区間変化C前におけるパワー積算値Dに基づいて、変化後区間(S
4+S
5)に関連付けるパワー積算値Dを取得することにより、車両のパワー積算値Dを適切な道路区間に関連付けることができる。
【0040】
図2Cに示すように、変化後区間(S
4+S
5)は、車両が区間変化C前に走行していた部分(第1部分S
4)と、車両が区間変化C後に走行した部分(第2部分S
5)とで構成される。区間変化C前におけるパワー積算値Dは、第1部分S
4におけるパワー積算値Dを意味する。区間変化C後において変化後区間(S
4+S
5)を走行した際のパワー積算値Dは、第2部分S
5におけるパワー積算値Dを意味する。従って、区間変化C前におけるパワー積算値D(第1部分S
4におけるパワー積算値D)と、区間変化C後において変化後区間(S
4+S
5)を走行した際のパワー積算値D(第2部分S
5におけるパワー積算値D)とを統合することにより、変化後区間全体(S
4+S
5)におけるパワー積算値Dを取得できる。なお、
図2Dに示すように、区間変化Cの際にパワー積算値Dが0にリセットされないため、分岐地点Aの走行後から変化後区間(S
4+S
5)の走行を完了するまで積算されたパワー積算値Dを取得すれば、第1部分S
4におけるパワー積算値Dと第2部分S
5におけるパワー積算値Dとを実質的に統合したパワー積算値Dを取得できる。
【0041】
分岐地点Aの走行前は分岐元の道路区間S
1を走行していたと判断できるため、区間変化C前におけるパワー積算値Dのうち、分岐地点Aの走行前におけるパワー積算値Dは、変化後区間(S
4+S
5)におけるパワー積算値Dから除外できる。従って、区間変化C前におけるパワー積算値Dのうち、分岐地点Aの走行後におけるパワー積算値Dに基づいて、変化後区間(S
4+S
5)に関連付けて記録するパワー積算値Dを取得できる。なお、
図2Dに示すように、分岐地点Aを走行する際にパワー積算値Dが0にリセットされるため、変化後区間(S
4+S
5)の走行が完了したタイミングでRAMからパワー積算値Dを取得すれば、変化後区間(S
4+S
5)におけるパワー積算値Dから分岐地点Aの走行前におけるパワー積算値Dを実質的に除外できる。
【0042】
また、走行情報記録部21bの機能により制御部20は、分岐地点Aと変化後区間(S
4+S
5)とが、走行区間として特定されなかった非特定区間S
6によって接続される場合に、区間変化C前におけるパワー積算値Dに基づいて、少なくとも非特定区間S
6を含む区間に関連付けて記録するパワー積算値Dを取得する。本実施形態において、少なくとも非特定区間S
6を含む区間とは、
図2Fの個別記録処理において道路区間S
6であり、
図2Hの統合記録処理において統合区間(S
4+S
5+S
6)である。分岐地点Aと変化後区間(S
4+S
5)とが直接接続しているのではなく、分岐地点Aと変化後区間(S
4+S
5)の間に非特定区間S
6が存在している場合、車両は分岐地点Aから非特定区間S
6を経由して変化後区間(S
4+S
5)へと進入していると考えることができる。すなわち、区間変化C前において車両は非特定区間S
6を走行しているため、区間変化C前におけるパワー積算値Dは、少なくとも非特定区間S
6を含む区間を走行する際のパワー積算値Dであると考えることができる。従って、制御部20は、区間変化C前におけるパワー積算値Dに基づいて、少なくとも非特定区間S
6を含む区間に関連付けるパワー積算値Dを取得できる。このように、実際には走行区間として特定されなかった非特定区間S
6を含む区間に対しても、適切なパワー積算値Dを取得でき、非特定区間S
6におけるパワー積算値Dが欠損することを防止できる。
【0043】
また、上述した個別記録処理を実行することにより、非特定区間S
6と変化後区間(S
4+S
5)とのそれぞれについてパワー積算値Dを取得できるため、非特定区間と変化後区間(S
4+S
5)とのうち、非特定区間S
6だけを含む経路(例えば、
図2Eにおける道路区間S
1→S
6→S
7)や、変化後区間(S
4+S
5)だけを含む経路(例えば、
図2Eにおける道路区間S7→S4→S5)においてもパワー積算値Dに基づいて運転支援ができる。個別記録処理において、変化後区間(S
4+S
5)と非特定区間S
6の区間長の割合を考慮することにより、分岐地点の走行後から変化後区間(S
4+S
5)の走行が完了するまでにおけるパワー積算値Dのなかから、非特定区間S
6に対応する部分と、変化後区間(S
4+S
5)に対応する部分とを取得できる。
【0044】
一方、上述した統合記録処理において、非特定区間S
6と変化後区間(S
4+S
5)のそれぞれに対して個別にパワー積算値Dを関連付けないため、パワー積算値Dを関連付ける区間数を抑制できる。従って、パワー積算値Dを記録する走行情報DB30bの記録容量を抑制できる。また、区間変化C前のパワー積算値Dを非特定区間S
6と変化後区間(S
4+S
5)とに分配する処理を省くことができる。また、統合記録処理において、区間変化C前におけるパワー積算値Dと、区間変化C後において車両が変化後区間(S
4+S
5)を走行した際のパワー積算値Dとを統合することにより、統合区間におけるパワー積算値Dを取得できる。
図2Hに示すように、統合区間(S
4+S
5+S
6)は、分岐地点Aの走行後から変化後区間(S
4+S
5)の走行が完了するまでに車両が現実に走行した道路区間であるため、分岐地点Aの走行後から変化後区間(S
4+S
5)の走行が完了するまで積算されているパワー積算値DをRAMから取得することにより、統合区間(S
4+S
5+S
6)に関連付けて記録するパワー積算値Dを取得できる。
【0045】
ここで、非特定区間S
6の終点Bが交差点である場合、非特定区間S
6から変化後区間(S
4+S
5)以外の道路区間Sへと退出可能である。すなわち、非特定区間S
6の終点Bが交差点である場合には、非特定区間S
6と変化後区間(S
4+S
5)とのうち、非特定区間S
6だけを含む経路を車両が走行し得る。このような状況において、非特定区間S
6に対して個別にパワー積算値Dを関連付けることにより、非特定区間S
6だけを含む経路が形成された場合でも、当該非特定区間S
6に関連付けられたパワー積算値Dに基づいて運転支援ができる。
【0046】
一方、非特定区間S
6の終点Bが交差点でない場合、非特定区間S
6から変化後区間(S
4+S
5)のみに退出可能である。すなわち、非特定区間S
6の終点が交差点でない場合には、非特定区間S
6の走行後に必ず変化後区間(S
4+S
5)を走行する経路が形成され、非特定区間S
6だけを含む経路を車両が走行し得ない。従って、非特定区間S
6に対して個別にパワー積算値Dを関連付けなくても、非特定区間S
6と変化後区間(S
4+S
5)とが統合した統合区間にパワー積算値Dを関連付けておけば、車両が走行する経路についてパワー積算値Dを取得できる。さらに、非特定区間S
6の道路種別と変化後区間(S
4+S
5)の道路種別とが異なる場合に、個別記録処理を実行することにより、道路種別ごとに区間を分けてパワー積算値Dを把握できるため、道路種別ごとに道路区間Sを結合することができる。
【0047】
(2)走行情報記録処理:
次に、走行情報記録処理について詳細に説明する。
図3は、走行情報記録処理のフローチャートである。なお、走行区間特定部21aの機能により制御部20は、常時、車両が走行している走行区間を特定している。まず、走行情報記録部21bの機能により制御部20は、分岐地点Aから分岐する複数の道路区間Sのいずれかから走行区間が変化する区間変化Cが生じたか否かを判定する(ステップS100)。すなわち、制御部20は、走行区間上において特定される車両の現在位置Pが不連続に遷移したか否かを判定し、現在位置Pが不連続に遷移した場合に区間変化Cがあったと判定する。
【0048】
区間変化Cが生じたと判定されない状態で(ステップS100:N)、走行区間の走行が完了した場合に、走行情報記録部21bの機能により制御部20は、通常記録処理を実行する(ステップS105)。
図2A,2Bに示すように、道路区間S
2が走行区間として特定されている場合、制御部20は、RAMに記録されているパワー積算値Dをそのまま道路区間S
2に関連付けて走行情報DB30bに記録する。
【0049】
一方、区間変化Cが生じたと判定された場合、走行情報記録部21bの機能により制御部20は、分岐地点Aと現在の走行区間との最短経路を探索する(ステップS110)。現在の走行区間とは、区間変化C後に特定されている走行区間、すなわち変化後区間(S
4+S
5)である。次に、走行情報記録部21bの機能により制御部20は、分岐地点Aと変化後区間(S
4+S
5)とが走行区間として特定されていない非特定区間によって接続されるか否かを判定する(ステップS120)。すなわち、制御部20は、分岐地点Aと変化後区間(S
4+S
5)との間の最短経路上に非特定区間が存在するか否かを判定する。
図2Cの場合、分岐地点Aと変化後区間(S
4+S
5)との間の最短経路上に非特定区間が存在しておらず、
図2E,2Gの場合、分岐地点Aと変化後区間(S
4+S
5)との間の最短経路上に非特定区間S
6が存在する。
【0050】
分岐地点Aと変化後区間(S
4+S
5)とが非特定区間S
6によって接続さると判定しない状態で(ステップS120:N)、変化後区間(S
4+S
5)の走行が完了した場合に、走行情報記録部21bの機能により制御部20は、差替記録処理を実行する(ステップS130)。すなわち、
図2C,2Dに示すように、走行情報記録部21bの機能により制御部20は、分岐地点Aの走行後から変化後区間(S
4+S
5)の走行が完了するまでの間に積算されたパワー積算値D(RAMに記録されているパワー積算値D)を、変化後区間(S
4+S
5)に関連付けて記録する。RAMに記録されているパワー積算値Dは、区間変化C前におけるパワー積算値Dと、区間変化C後において変化後区間(S
4+S
5)を走行した際におけるパワー積算値Dとを統合したパワー積算値Dを意味する。
【0051】
一方、分岐地点Aと変化後区間(S
4+S
5)とが非特定区間S
6によって接続さると判定した場合(ステップS120:Y)、走行情報記録部21bの機能により制御部20は、非特定区間S
6の道路種別と変化後区間(S
4+S
5)の道路種別とが同一であるか否かを判定する(ステップS140)。なお、非特定区間S
6は、1個に限らず、複数存在してもよい。非特定区間S
6が複数存在する場合、制御部20は、非特定区間S
6のすべての道路種別と変化後区間(S
4+S
5)の道路種別とが同一であるか否かを判定すればよい。
【0052】
非特定区間S
6の道路種別と変化後区間(S
4+S
5)の道路種別とが同一であると判定しない状態で(ステップS140:N)、変化後区間(S
4+S
5)の走行が完了した場合に、走行情報記録部21bの機能により制御部20は、個別記録処理を実行する(ステップS150)。すなわち、
図2E,2Fに示すように、走行情報記録部21bの機能により制御部20は、分岐地点Aの走行後から変化後区間(S
4+S
5)の走行が完了するまでの間に積算されたパワー積算値D(RAMに記録されているパワー積算値D)を、変化後区間(S
4+S
5)と非特定区間S
6の区間長の割合に基づいて分配することにより、非特定区間S
6に関連付けて記録するパワー積算値Dと、変化後区間(S
4+S
5)に関連付けて記録するパワー積算値Dとを取得する。具体的に、制御部20は、RAMから取得したパワー積算値Dに、区間長の割合L
6/(L
4+L
5+L
6)を乗算することにより、非特定区間S
6に関連付けるパワー積算値Dを取得する。一方、制御部20は、RAMから取得したパワー積算値Dに、区間長の割合(L
4+L
5)/(L
4+L
5+L
6)を乗算することにより、変化後区間(S
4+S
5)に関連付けるパワー積算値Dを取得する。そして、制御部20は、変化後区間(S
4+S
5)と非特定区間S
6とのそれぞれに対してパワー積算値Dを関連付けて走行情報DB30bに記録する。なお、非特定区間S
6が複数存在する場合、制御部20は、非特定区間S
6のそれぞれについて区間長の割合に基づいて非特定区間S
6のそれぞれに関連付けるパワー積算値Dを取得すればよい。
【0053】
一方、非特定区間S
6の道路種別と変化後区間(S
4+S
5)の道路種別とが同一であると判定した場合(ステップS140:Y)、走行情報記録部21bの機能により制御部20は、非特定区間S
6の終点Bが交差点であるか否かを判定する(ステップS160)。制御部20は、
図2Eに示すように、非特定区間S
6の終点Bに対して非特定区間S
6および変化後区間(S
4+S
5)以外の道路区間S
7が接続している場合に、非特定区間S
6の終点Bが交差点であると判定する。なお、非特定区間S
6が複数存在する場合、制御部20は、非特定区間S
6の終点Bが1個でも交差点である場合に、非特定区間S
6の終点Bが交差点であると判定する。非特定区間S
6の終点Bが交差点であると判定した場合(ステップS160:Y)、走行情報記録部21bの機能により制御部20は、個別記録処理を実行する(ステップS150)。
【0054】
一方、非特定区間S
6の終点Bが交差点であると判定しなかった場合(ステップS160:N)、走行情報記録部21bの機能により制御部20は、統合記録処理を実行する(ステップS170)。すなわち、
図2G,2Hに示すように、走行情報記録部21bの機能により制御部20は、分岐地点Aの走行後から変化後区間(S
4+S
5)の走行が完了するまでの間に積算されたパワー積算値D(RAMに記録されているパワー積算値D)を、変化後区間(S
4+S
5)と非特定区間S
6とを結合した統合区間(S
4+S
5+S
6)に関連付けて記録するパワー積算値Dとして取得する。そして、制御部20は、RAMに記録されているパワー積算値Dを統合区間(S
4+S
5+S
6)に関連付けて走行情報DB30bに記録する。RAMに記録されているパワー積算値Dは、変化後区間(S
4+S
5)におけるパワー積算値Dと、非特定区間S
6におけるパワー積算値Dとを統合したパワー積算値Dを意味する。なお、制御部20は、地図情報30aのリンクデータにおいて、変化後区間(S
4+S
5)と非特定区間S
6とを削除し、新たに統合区間(S
4+S
5+S
6)を定義してもよい。
【0055】
(3)他の実施形態:
走行情報記録部21bの機能により制御部20は、区間変化Cが生じ、かつ、変化後区間(S
4+S
5)が予め探索された走行予定経路上の道路区間Sでない場合に、区間変化C前におけるパワー積算値Dに基づいて、変化後区間(S
4+S
5)に関連付けて記録するパワー積算値Dを取得してもよい。これにより、走行予定経路上に存在しない変化後区間(S
4+S
5)についてもパワー積算値Dを関連付けて記録していくことができる。すなわち、走行予定経路が案内されている状態で、運転者が誤って走行した道路区間Sについて、パワー積算値Dを関連付けて記録していくことができる。なお、制御部20は、変化後区間(S
4+S
5)が予め探索された走行予定経路上の道路区間Sでないことをもって、車両が走行予定経路上を走行していないことを認識できる。従って、車両が走行予定経路上を走行していない場合に、現在の走行区間を出発地として目的地までの走行予定経路を新たに探索(リルート探索)する構成において、制御部20は、リルート探索があったことをトリガーとして、差替記録処理と統合記録処理と個別記録処理のいずれかを実行してもよい。
【0056】
前記実施形態では、統合記録処理と個別記録処理とを切り替えて実行するようにしたが、分岐地点Aと変化後区間(S
4+S
5)とが非特定区間S
6によって接続されると判定した場合に(
図3のステップS120:Y)、統合記録処理と個別記録処理とのいずれか一方を常に実行してもよい。また、統合記録処理と個別記録処理とを切り替える条件は前記実施形態の条件に限らず、例えば車両の走行頻度や記録媒体30の残記録容量等に基づいて統合記録処理と個別記録処理とを切り替えてもよい。
【0057】
前記実施形態では、分岐地点Aの走行後から変化後区間(S
4+S
5)の走行が完了するまで、パワー積算値Dをリセットすることなくパワー積算値Dを積算されたが、区間変化Cが生じた場合にパワー積算値Dがリセットされてもよい。この場合、差替記録処理において、制御部20は、分岐地点Aの走行後から区間変化Cが生じる前まで積算したパワー積算値Dと、区間変化Cが生じてから変化後区間(S
4+S
5)の走行が完了するまで積算したパワー積算値Dとを合計(統合)することにより、変化後区間(S
4+S
5)に関連付けるパワー積算値Dを取得してもよい。また、パワー積算値Dのような積算値ではなく、走行区間における走行状態を示す値の平均値(消費パワーの平均値等)を走行情報として記録してもよい。この場合、区間長の割合に基づく加重平均値を算出することにより、非特定区間S
6における平均値と、変化後区間(S
4+S
5)における平均値とを統合することができる。
【0058】
走行区間特定手段は、車両が走行している道路区間である走行区間を特定すればよく、走行区間を特定するための手法は種々考えられる。例えば、走行区間特定手段は、車両の位置や方位や走行軌跡(時系列の位置)と、道路区間の位置や形状との一致度に応じた自信度を各道路区間について取得し、前記自信度が所定の条件を満足した道路区間を走行区間として特定してもよい。例えば、前記自信度が最も大きい道路区間を走行区間として特定してもよいし、前記自信度が閾値以上の道路区間を走行区間として特定してもよい。また、車両の位置や方位や走行軌跡は、GPS信号に基づいて取得されてもよいし、自立航法によって特定されもよいし、GPS信号と自立航法との組み合わせによって特定されてもよい。
【0059】
ここで、上述したマップマッチングの性質上、分岐地点にて分岐する道路区間同士で形状や位置が類似している場合に、分岐地点の走行後に区間変化が生じやすくなる。すなわち、分岐地点にて分岐する道路区間同士で形状や位置が類似している場合に、各道路区間についての自信度が近似することとなるため、ある道路区間についての自信度が所定の条件を満足する状態から、別の道路区間についての自信度が所定の条件を満足する状態へと変化しやすくなる。一般に、分岐地点から複数の道路区間が分岐している角度の差が小さい狭角分岐地点において区間変化が生じやすくなる。なお、区間変化後の走行区間である変化後区間は、分岐地点の走行後に進入可能な道路区間であればよく、分岐地点に直接接続している道路区間であってもよいし、分岐地点に直接接続している道路区間に接続している道路区間であってもよい。
【0060】
さらに、走行区間上において車両の現在位置を特定する構成を備える場合、区間変化が生じたタイミングで現在位置が不連続に遷移することとなる。従って、走行情報記録手段は、車両の現在位置が不連続に遷移した場合に、区間変化があったと見なしてもよい。また、車両の走行経路上において走行区間が適正に特定される場合、ある走行区間の終点まで走行した後に、当該終点にて接続している道路区間が次の走行区間として特定されることとなる。従って、ある走行区間の終点まで走行するよりも前(所定距離以上手前)にて、別の道路区間が走行区間として特定された場合に、区間変化が生じたと見なしてもよい。
【0061】
走行情報記録手段は、走行区間における車両の走行情報を記録すればよく、走行情報は車両の走行状態を示すいかなる情報であってもよい。例えば、走行情報は、車両の運動状態(車速、加速度、減速度、角速度、角加速度、進行方位)を示す情報であってもよいし、車両の運転操作状態(ペダル踏み込み量、操舵角、シフト段)を示す情報であってもよいし、車両のエネルギー状態を示す情報(残電力量、残燃料、電費、燃費)であってもよいし、天候や渋滞度等の車両の環境情報であってもよい。走行情報記録手段は、走行情報を記録媒体に記録すればよく、ローカルの記録媒体に走行情報を記録してもよいし、通信を介して外部のサーバ等が備える記録媒体に走行情報を記録してもよい。さらに、走行情報は、道路区間ごとの統計値を算出するための情報であってもよいし、運転支援に使用するための情報であってもよい。例えば、運転支援に使用するための走行情報として、車両を制御するための
情報と、運転者に案内を提供するための情報と、走行予定経路を探索するための情報と、地図表示を行うための情報等が挙げられる。
【0062】
走行情報記録手段は、区間変化が生じた場合に、区間変化前における走行情報に基づいて、変化後区間における走行情報を取得すればよく、区間変化前における走行情報の少なくとも一部に基づいて変化後区間における走行情報を取得すればよい。すなわち、走行情報記録手段は、区間変化前における走行情報のうち、変化後区間に対応する部分を取得し、当該変化後区間に対応する部分を変化後区間に関連付けてもよい。
【0063】
また、走行情報記録手段は、区間変化前における走行情報と、区間変化後において車両が変化後区間を走行した際の走行情報とを統合することにより、変化後区間に関連付けて記録する走行情報を取得してもよい。ここで、変化後区間は、車両が区間変化前に走行していた部分(第1部分)と、車両が区間変化後に走行した部分(第2部分)とで構成される。区間変化前における走行情報は、第1部分における走行情報を含む。区間変化後において変化後区間を走行した際の走行情報は、第2部分における走行情報を意味する。
従って、区間変化前における走行情報(第1部分における走行情報)と、区間変化後において変化後区間を走行した際の走行情報(第2部分における走行情報)とを統合することにより、変化後区間全体における走行情報を取得できる。
【0064】
分岐地点の走行前は分岐元の道路区間を走行していたと判断できるため、区間変化前における走行情報のうち、分岐地点の走行前における走行情報は、変化後区間における走行情報から除外できる。従って、区間変化前における走行情報のうち、分岐地点の走行後における走行情報に基づいて、変化後区間に関連付けて記録する走行情報を取得できる。
【0065】
分岐地点と変化後区間とが直接接続しているのではなく、分岐地点と変化後区間の間に非特定区間が存在している場合、車両は分岐地点から非特定区間を経由して変化後区間へと進入していると考えることができる。すなわち、区間変化前において車両は非特定区間を走行しているため、区間変化前における走行情報は、少なくとも非特定区間を含む区間を走行する際の走行情報であると考えることができる。従って、走行情報記録手段は、区間変化前における走行情報に基づいて、少なくとも非特定区間を含む区間に関連付ける走行情報を取得できる。このように、実際には走行区間として特定されなかった非特定区間を含む区間に対しても、適切な走行情報を取得でき、非特定区間における走行情報が欠損することを防止できる。
【0066】
さらに、走行情報記録手段は、分岐地点と変化後区間とが、非特定区間によって接続される場合に、非特定区間と変化後区間のそれぞれに対して個別に走行情報を関連付けて記録する個別記録処理を実行してもよい。このように個別記録処理を実行しておけば、非特定区間と変化後区間とのそれぞれについて走行情報を取得できるため、非特定区間と変化後区間とのうち、非特定区間だけを含む経路や、変化後区間だけを含む経路においても走行情報に基づいて運転支援ができる。
【0067】
また、走行情報記録手段は、分岐地点と変化後区間とが、非特定区間によって接続される場合に、非特定区間と変化後区間とを統合した統合区間に対して走行情報を関連付けて記録する統合記録処理を実行してもよい。非特定区間と変化後区間のそれぞれに対して個別に走行情報を関連付けないため、走行情報を関連付ける区間数を抑制できる。従って、走行情報を記録する記録容量を抑制できる。また、区間変化前の走行情報を非特定区間と変化後区間とに分配する処理を省くことができる。
【0068】
さらに、上述した個別記録処理と統合記録処理とを切り替えて実行してもよい。例えば、非特定区間の終点が交差点である場合に、個別記録処理を実行し、非特定区間の終点が交差点でない場合に、統合記録処理を実行してもよい。交差点とは、ある道路区間から交差点に進入した場合に、複数の道路区間へと退出可能な地点である。ここで、非特定区間の終点が交差点である場合、非特定区間から変化後区間以外の道路区間へと退出可能である。すなわち、非特定区間の終点が交差点である場合には、非特定区間と変化後区間とのうち、非特定区間だけを含む経路を車両が走行し得る。このような状況において、非特定区間に対して個別に走行情報を関連付けることにより、非特定区間だけを含む経路が形成された場合でも、当該非特定区間に関連付けられた走行情報に基づいて運転支援ができる。
【0069】
一方、非特定区間の終点が交差点でない場合、非特定区間から変化後区間のみに退出可能である。すなわち、非特定区間の終点が交差点でない場合には、非特定区間の走行後に必ず変化後区間を走行する経路が形成され、非特定区間だけを含む経路を車両が走行し得ない。従って、非特定区間に対して個別に走行情報を関連付けなくても、非特定区間と変化後区間とが統合した統合区間に走行情報を関連付けておけば、車両が走行する経路について走行情報を取得できる。
【0070】
さらに、走行情報記録手段は、非特定区間の道路種別と変化後区間の道路種別とが異なる場合に、個別記録処理を実行し、非特定区間の道路種別と変化後区間の道路種別とが同一である場合に、統合記録処理を実行してもよい。非特定区間の道路種別と変化後区間の道路種別とが異なる場合に、個別記録処理を実行することにより、道路種別ごとに区間を分けて走行情報を把握できるため、道路種別ごとの運転支援が可能となる。車速ごとに区別された道路の種別であってもよいし、料金の有無によって区別された道路の種別であってもよいし、道路の管轄者によって区別された道路の種別であってもよい。具体的な道路種別として、高速道路、国道、県道、主要地方道、一般幹線道路、細街路等が挙げられ、これらの道路種別が非特定区間と変化後区間とで異なる場合に個別記録処理を実行してもよい。
【0071】
さらに、走行情報記録手段は、分岐地点の走行後から変化後区間の走行が完了するまでにおける走行情報を、変化後区間と非特定区間の区間長の割合に基づいて分配することにより、非特定区間に関連付けて記録する走行情報と、変化後区間に関連付けて記録する走行情報とを取得してもよい。すなわち、変化後区間と非特定区間の区間長の割合を考慮することにより、分岐地点の走行後から変化後区間の走行が完了するまでにおける走行情報のなかから、非特定区間に対応する部分と、変化後区間に対応する部分とを取得できる。
【0072】
また、走行情報記録手段は、統合記録処理において、分岐地点の走行後から変化後区間の走行が完了するまでにおける走行情報を、統合区間に関連付けて記録する走行情報として取得してもよい。統合区間は、分岐地点の走行後から変化後区間の走行が完了するまでに走行した全体の区間を意味するため、分岐地点の走行後から変化後区間の走行が完了するまでにおける走行情報を、統合区間に関連付けることができる。
【0073】
さらに、走行情報記録手段は、区間変化が生じ、かつ、変化後区間が予め探索された走行予定経路上の道路区間でない場合に、区間変化前における走行情報に基づいて、変化後区間に関連付けて記録する走行情報を取得してもよい。これにより、走行予定経路上に存在しない変化後区間についても走行情報を関連付けて記録していくことができる。
【0074】
さらに、本発明のように、変化後区間に走行情報を関連付けて記録する手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のようなシステム、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合や、複数の装置によって実現される場合、車両に備えられる各部と共有の部品を利用して実現される場合が想定可能であり、各種の態様を含むものである。例えば、以上のような装置を備えたナビゲーションシステムや方法、プログラムを提供することが可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、システムを制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。