(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
金属ケイ酸塩の金属は、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム及びこれらの混合物から、好ましくは、アルミニウム又はマグネシウムから選択される、請求項8に記載の硬化性液状組成物。
配位子は、ビスピドン配位子、N4Py配位子、TACN配位子、トリスピセン配位子、サイクレン配位子、又は架橋配位子から選択される、請求項16に記載の硬化性液状組成物。
バインダは、アルキド樹脂であり、又はアルキド樹脂を含み、硬化性液状組成物は、水ベースの塗料、溶媒ベースの塗料、ニス、木材着色剤、又はインクである、請求項21に記載の使用。
つや消し剤は、アモルファス沈降ケイ酸アルミニウム、アモルファス沈降ケイ酸カルシウム、アモルファス沈降ケイ酸マグネシウム又はこれらの混合物から、好ましくはアモルファス沈降ケイ酸アルミニウムから選択される、請求項21乃至23の何れかに記載の使用。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書の全体を通して、用語「含んでいる」又は「含む」は、特定された成分を含むが、他の存在を除外しないことを意味する。用語「から実質的になっている」又は「から実質的になる」は、特定された成分を含んでおり、他の成分は除外されることを意味するが、当該他の成分からは、不純物として存在する材料、成分を提供するために用いられるプロセスの結果として存在する不可避の材料、及び本発明の技術的効果を達成する以外の目的のために添加される成分は除かれる。典型的には、1組の成分から実質的になる組成物は、10重量%未満、より典型的には5重量%未満、さらに典型的には1重量%未満の非特定成分を含み得る。
【0016】
適切であればいつでも、用語「含む」又は「含んでいる」の使用は、「から実質的になる」又は「から実質的になっている」の意味を含むとみなされてよく、そしてまた、「からなる」又は「からなっている」の意味を含むとみなされてもよい。
【0017】
水性又は水ベースの溶媒又は液体への言及は、溶媒又は液体が、65乃至100重量%の水を含むことを意味する。
【0018】
以下で詳述される随意選択的な特徴、及び/又は好ましい特徴は、適切な場合には、特に、添付の特許請求の範囲において詳述される組合せにおいて、個別に又は互いに組み合わされて用いられてよい。以降で詳述される本発明の各態様について任意の特徴及び/又は好ましい特徴は、明らかに不適切でない限り、本発明の任意の他の態様にも適用可能であると理解されるべきである。
【0019】
本発明の第1の態様は、酸化架橋によって硬化するバインダを含む硬化性液状組成物を提供する。そのバインダは、好ましくは、共役ポリ不飽和脂肪酸部分を含んでいる。
【0020】
バインダは単に、不飽和油又は酸であってよく、好ましくは、不飽和ポリエステル、ビニルエステル又はアクリル樹脂のような、不飽和基を含む架橋可能な樹脂であってよい。バインダは、アルキド樹脂であるか、アルキド樹脂を含んでいるのが好ましい。
【0021】
本発明の組成物は、典型的には、約1乃至約90重量%のバインダ、好ましくは約20乃至約70重量%のバインダを含むこととなる。
【0022】
アルキド樹脂は、1又は複数の多価アルコール、1又は複数のポリカルボン酸若しくは対応する無水物、及び長鎖不飽和脂肪酸又は油の重縮合反応によって得られてよい。
【0023】
グリセロールは、アルキド樹脂の調製の際に用いるのに適した、広く入手可能なポリオールである。適切な多価アルコールの他の例としては、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、1,6−ヘキサンジオール等が挙げられる。アルキド樹脂を調製する際に用いるのに適しているポリカルボン酸又はその対応する無水物として、フタル酸及びその異性体、トリメリット酸、ピロメリット酸、ピメリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、及びテトラヒドロフタル酸が挙げられる。アルキド樹脂の調製に有用である、適切な乾性脂肪酸、半乾性脂肪酸又はこれらの混合物として、エチレン性不飽和共役又は非共役C
12−C
24カルボン酸、例えば、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレン酸、リカン酸及びエレオステアリン酸、又はこれらの混合物が挙げられる。典型的には、酸は、天然油又は合成油に由来する脂肪酸の混合物の形態で用いられてよい。用語「半乾性」及び用語「乾性脂肪酸」は、半乾性油又は乾性油(即ち、アマニ油等のハードニング油)に由来する脂肪酸を説明するために、先に用いられている。このような油の分類は、油のヨウ素価に基づいている。乾性油では、ヨウ素価が140よりも大きいのが適切である。所謂半乾性油では、ヨウ素価は125乃至140であり、非乾性油では、ヨウ素価は125未満である。脂肪酸は、油の加水分解、及び続くグリセロールの除去によって得られ得る。
【0024】
アルキド樹脂は、典型的には、アルキド塗料に用いられる場合、外気由来の酸素との反応によって酸化架橋される。そのような塗料(本明細書で詳述されるように、ニスなどが挙げられる)は、一般に、薄層として塗布される。これを大気の酸素が迅速に通過して拡散することで、酸化的硬化が実現され得る。
【0025】
より厚い構造が本発明の硬化性液状組成物から形成されることが所望される場合、硬化性液状組成物は、過酸化物タイプの開始剤の使用によって硬化されてよい。硬化性液状組成物はまた、硬化性液状組成物の硬化を促進するために、スチレン等の不飽和ビニルモノマーを含んでもよい。過酸化物化合物が酸化架橋のために用いられる場合、外気由来の酸素よりも、過酸化物開始剤は、不飽和ポリエステル、ビニルエステル又はアクリル樹脂の硬化の際に用いるのに適しているとして当業者に知られている任意の過酸化物であるのがよい。そのような過酸化物としては、有機過酸化物及び無機過酸化物が挙げられ、固体でも液体でもよく、また、過酸化水素が用いられてもよい。適切な過酸化物の例としては、パーオキシカーボネート、パーオキシエステル、ジアルキル過酸化物等が挙げられる。適切な過酸化物は、オリゴマー構造又はポリマー構造であってよい。液状パーオキシエステル(peroxyester)、液状ヒドロ過酸化物、又はヒドロ過酸化物の液状混合物が、本発明の硬化性液状組成物に混和するのに特に有用であり得る。
【0026】
本発明の第1の態様の硬化性液状組成物はまた、バインダの酸化架橋を触媒するのに適した乾燥促進化合物を含む。乾燥促進化合物は、配位子を含む遷移金属キレート錯体である。本明細書中で用いられる用語「遷移金属」は、第3乃至12元素族を含む周期表のd−ブロック部の元素を意味しており、例えば、亜鉛、カドミウム及び水銀、並びにランタニド及びアクチニドが挙げられる。乾燥促進化合物は、マンガン、鉄又はこれらの混合物のキレート錯体であるのが好ましい。このような化合物は、酸化的硬化の触媒作用に非常に有効であって、毒性が比較的低い。コバルト石鹸をベースとするコバルトベースの乾燥促進化合物が先行技術において広く用いられているが、そのような化合物は、その健康有害性及び環境有害性のため、望ましくなくなっている。コバルト化合物はまた、硬化性液状組成物に由来する硬化産物に、不所望の色合いを導入する虞もある。それ故に、本発明の第1の態様の液状組成物は、コバルトベースの乾燥促進化合物を含むコバルト化合物を含まないのが好ましい。本発明において用いられる乾燥促進化合物は、遷移金属化合物であり、遷移金属は、不純物としてコバルトを含むことがある。そのような任意のコバルトは、乾燥促進化合物の総金属含有量の、好ましくは5重量%未満、より好ましくは1重量%未満、さらにより好ましくは0.1重量%未満である。
【0027】
典型的には、本発明において用いられる乾燥促進化合物は、広い組成範囲(compositional range)にわたって硬化の触媒作用に有効である。それ故に、乾燥促進化合物は、本発明の組成物中に、硬化性液状組成物の0.0005乃至0.1重量%の濃度で存在してよく、例えば、0.001乃至0.05重量%、0.002乃至0.01重量%の濃度となる。典型的には、本発明の組成物中の乾燥促進化合物によってもたらされるキレート化遷移金属の重量(組成物の重量の100万分の1)は、0.45乃至90ppmであって、例えば、0.9乃至45ppm、1.8乃至9ppmとなる。
【0028】
本発明の第1の態様の硬化性液状組成物はまた、つや消し剤を含んでいる。つや消し剤は、沈降シリカ、沈降金属ケイ酸塩又はこれらの混合物である。シリカ及びケイ酸塩の混合物が、つや消し剤として用いられてよい。沈降シリカ及び/又は沈降金属ケイ酸塩は、性質的にアモルファスであるのが好ましい。アモルファス材料を使用すると、十分に大きい細孔容積に加えて表面積が小さい、良好なつや消し効果を得るのに必要とされる材料がもたらされる。
【0029】
本発明の第1の態様の組成物におけるつや消し剤が、沈降シリカである、又は沈降シリカを含む場合、沈降シリカの表面積は、BETによって測定されると、250m
2/g以下、好ましくは200m
2/g以下、より好ましくは150m
2/g以下、さらにより好ましくは100m
2/g以下、最も好ましくは70m
2/g以下である。表面積がより大きな沈降シリカが、硬化性液状組成物中に存在すると、組成物の硬化速度に有害な影響が及ぶ虞がある。本発明においてつや消し剤として用いられる沈降シリカの表面積は、BETによって測定されると、10m
2/g以上、例えば20m
2/g以上であるのが好ましい。表面積がより小さくなると、沈降シリカの形態のつや消し剤は、つや消し剤としての効果の低下を示して、乾燥/硬化組成物の表面の光沢を下げるには効果がない虞がある。
【0030】
沈降シリカ、又は沈降金属ケイ酸塩の表面積及び細孔容積は、マルチポイント法を用いるブルナウアー、エメット及びテラー(Brunauer,Emmett and Teller)(BET)の標準的な窒素吸着法を用いて、Micromeritics社(米国)によって供給されるASAP 2420装置により測定されてよい。当該方法は、S.Brunauer,P.H.Emmett and E.Teller,J.Am.Chem.Soc.,60,309(1938)による論文に従っている。サンプルは、測定前に270℃で1時間、真空下でガスを抜かれる。サンプルチューブ(ガスを抜かれたサンプルを含む)は、分析ステーションへ移されて、液状窒素に浸漬されて、窒素等温線(nitrogen isotherm)が決定される。0.08乃至0.20のP/Po範囲においてデータポイントを取って、BET理論を用いて表面積が算出される。細孔容積測定値は、吸着レッグ(adsorption leg)の0.98のP/Poにて記録される。
【0031】
250m
2/g未満であるような、表面積が小さいアモルファス沈降シリカを調製する典型的なプロセスは、国際特許公開第97/02211号に詳述されている。当該プロセスは、2.1:1乃至2.5:1のモル比のケイ酸塩溶液(SiO
2:Na
2O)の17.0乃至21.5重量%溶液を、(例えば、かき混ぜによる)内容物の撹拌用に構成された混合ベッセル中の水に加えることを含む。その後、2.1乃至2.5モル比のケイ酸塩溶液の17.0乃至21.5重量%溶液のさらなる添加が、15乃至20重量%の硫酸溶液の同時添加と共に、40分を超える、好ましくは80分未満の期間にわたって、pHが8.0から9.0の範囲に維持されるような流量で実行される。生じた溶液/スラリーがかき混ぜ又は撹拌されると、混合されて、スラリー中にて沈降固体が懸濁状態で維持される。続いて、生じたスラリーは、0乃至30分、好ましくは8乃至12分の期間、90℃乃至100℃の温度でエージングされる。続いて、15乃至20重量%の硫酸溶液の第2の添加がなされて、pHは、pH3乃至5に下げられる。生じたスラリーはさらに、0乃至20分、好ましくは8乃至12分の期間、90乃至100℃の温度でエージングされる。pHは最終的にpH3.5乃至5に調整されて、スラリーは濾過され、洗浄され、乾燥される。
【0032】
これは単に、適切なプロセスの例であって、さらなる詳細は、国際公開第97/02211号に与えられている。他の適切なプロセスが用いられてよく、先に詳述されたプロセスは、必要に応じて修正されてよく、例えば、最大で3.5:1のようなケイ酸塩溶液に異なるモル比が用いられてよい。
【0033】
続いて、洗浄され、乾燥されたアモルファス沈降シリカは、従来の技術、例えば、ハンマーミリング、ジェットミリング、流体エネルギーミリングなどを用いて、また、随意選択的に空気分級などの分級を用いて、粉砕され、分級されて、所望の粒子サイズ範囲がもたらされる。
【0034】
本発明の第1の態様に、例えば、つや消し剤の調製のための粉砕及び分級のベースとして用いる又は本発明に用いるつや消し剤の調製に利用できる沈降アモルファスシリカは、PQ Corporationなどの業者から市販されている。典型的な好適な材料としては、Sorbosil(登録商標)AC39があり、歯磨き粉にて研磨材として使用するために市販されている。
【0035】
本発明のつや消し剤が沈降金属ケイ酸塩である場合、金属は、周期表の第2族乃至13族の金属(或いは、1又は複数の金属)である。但し、沈降金属ケイ酸塩は、アルカリ金属(即ち、第1族の金属)を、その沈降の副産物として含むこともある。
【0036】
金属が第2族の1又は複数の金属である場合、金属ケイ酸塩の金属は、好ましくは、カルシウム、マグネシウム又はこれらの混合物から選択される。第2族の金属ケイ酸塩の金属は、マグネシウムであるのがより好ましい。金属が第12族である場合、金属ケイ酸塩は亜鉛であるのが好ましい。金属が第13族である場合、金属ケイ酸塩はアルミニウムであるのが好ましい。
【0037】
本発明におけるつや消し剤としての使用に適しているアモルファス金属ケイ酸塩を調製する典型的なプロセスは、以下の通りである。
【0038】
典型的にはSiO
2:M
2O(Mは、アルカリ金属であって、通常、Na若しくはK又はこれらの混合物である)のモル比が、2.0:1乃至3.5:1の範囲であるようなアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液と、水性金属塩(例えば、塩化物、硫酸塩、又は硝酸塩)溶液と、随意選択的に無機酸(例えば、塩酸、硝酸又は硫酸−pHの引下げが必要な場合)とが、撹拌によって、例えば、かき混ぜられて反応ベッセル内で混合されて、水性反応混合物が形成される。例えば、金属としてカルシウム又はマグネシウムが用いられる場合には、酸は必要とされないが、金属としてアルミニウムが用いられる場合には、酸が添加されて沈降の速度が上げられてよい。アルカリ金属ケイ酸塩溶液、任意の無機酸溶液、及び金属塩溶液は、典型的には、必要とされるモル比で、混合ベッセル中に一緒に供給される。これは、反応混合物のpHが、約8乃至12の範囲内の値にてほぼ一定の状態に保持されることが確実となるレートでなされ、十分に撹拌されて、結果として生じるスラリー中で沈降固体の懸濁が維持される。ケイ酸塩、無機酸、及び金属塩の導入中の反応混合物の温度は、約30乃至90℃(例えば、カルシウムの場合、50乃至90℃)に維持される。これらの成分が組み合わされて反応混合物が形成される期間は、典型的には、約15乃至25分である。
【0039】
続いて、沈降固体(金属ケイ酸塩)が、生じた反応混合物の液状成分から、例えば濾過によって分離されて、当該固体は洗浄、乾燥される。反応プロセスは、バッチプロセス又は連続プロセスとしてなされてよく、そこで反応混合物は、投入溶液の添加レートの合計と等しいレートで、反応ベッセルから取り出される。この連続プロセス又はバッチプロセスの反応混合物では、シリカの濃度は典型的には、反応混合物の約3乃至10重量パーセントである。
【0040】
続いて、洗浄且つ乾燥されたアモルファス沈降金属ケイ酸塩固体は、ハンマーミリング、ジェットミリング、流体エネルギーミリングなどの従来の技術を用いて粉砕、分級され、また、随意選択的に、空気分級等の分級が実行されて、所望の粒子サイズ範囲がもたらされてよい。
【0041】
本発明に用いるつや消し剤の調製のための粉砕及び分級のベースとして適した沈降金属ケイ酸塩は、粉末流動化剤(flow aids)として、又は不活性液状キャリアとして使用するために、PQ Corporation等の業者から市販されている。これらは、例えば、アモルファス沈降ケイ酸アルミニウムについては商品名Alusil(登録商標)として、アモルファス沈降ケイ酸カルシウムについては商品名Microcal(登録商標)として市販されている。
【0042】
本発明に用いられる沈降金属ケイ酸塩は、必ずしも化学量論的な(stoichiometric)金属沈降物でなくともよいことは明らかであろう。沈降は、ケイ酸と金属塩の間の反応として、金属ケイ酸塩及び酸を生じさせると考えられ得る。しかしながら、(例えば、共沈物の構造内で緊密に共混合(co-mingled)した)金属ケイ酸塩を伴うシリカとしての、ケイ酸の共沈(co-precipitation)は、例えば、酸及び金属塩を試薬として組み合わせて、アルカリ金属ケイ酸塩溶液と反応させて共沈物を生じさせることで選択肢となる。明確にするため、用語「沈降金属ケイ酸塩」は、沈降物のモル比M
xO/SiO
2の値が0.05以上であって、ここで、Mは、周期表の第2乃至13族の1又は複数の金属を表し、M
xOは、沈降ケイ酸塩における金属酸化物の化学量論式を表し、xは、2/vと等しく、vは、金属Mの価数であることを意味すると理解されるべきである。
【0043】
用語「沈降シリカ」は、沈降物のモル比M
xO/SiO
2の値が0.05未満であることを意味し、ここで、Mは、周期表の第2乃至13族の1又は複数の金属を表す。
【0044】
本発明の第1の態様の組成物におけるつや消し剤が、沈降金属ケイ酸塩である又は沈降金属ケイ酸塩を含む場合、これが有効であるために、沈降金属ケイ酸塩の表面積に対する特定の制限はない。しかしながら、沈降金属ケイ酸塩の表面積は、BETによって測定されると、好ましくは450m
2/g以下、より好ましくは400m
2/g以下、さらには250m
2/g以下である。特に好ましい実施形態において、沈降金属ケイ酸塩の表面積は、BETによって測定されると、200m
2/g以下、好ましくは100m
2/g以下、最も好ましくは70m
2/g以下である。好ましくは、本発明においてつや消し剤として用いられる沈降金属ケイ酸塩の表面積は、BETによって測定されると、10m
2/g以上、例えば、20m
2/g以上である。より表面積が小さくなると、沈降金属ケイ酸塩の形態のつや消し剤は、つや消し剤としての効果の低下を示して、乾燥/硬化組成物の表面の光沢を下げるには効果がない虞がある。
【0045】
本発明に用いるのに適したつや消し剤はまた、アマニ油を用いた吸油値(oil absorption value)によって特徴付けられる。適切なつや消し剤は、80乃至400g/100gの吸油値を示すだろう。吸油値は、ASTMへら練合せ法(spatula rub-out method)(米国材料試験協会規格D 281)によって決定される。この試験に用いられたアマニ油は、Fisher Scientific(英国)の未処理アマニ(cm
3あたりおよそ0.93グラムの密度であり、汎用グレード)である。
【0046】
この試験は、へらで切られる場合に壊れたり分離することはない硬いパテ様のペーストが形成されるまで、滑らかな表面上でへらでこすることによって、アマニ油と粒状の固体を混合することを基礎とする。続いて、用いられた油の量が、以下の等式に入れられる。
【0047】
吸油値=(吸油グラム×100)/(シリカのグラム重量)
【0048】
吸油値は、g/100gとして表される。良好なつや消し性能を提供するために、つや消し剤の吸油値は、100g/100g以上であるのがよい。
【0049】
光沢は、BYK Multiglossメータを用いて、Leneta(商標)カード上にコーティングされた乾燥塗料又はニスで、60度にて測定される。
【0050】
つや消し表面を過剰に粗くすることなくつや消し作用を実現するためには、つや消し剤の粒子サイズは、つや消し剤のメディアン粒子サイズ径D
50(粒子の50重量%の直径は、D
50未満)が、光散乱によって測定されると3乃至15μmであるようになっているのが好ましい。適切には、つや消し剤のD
90値(粒子の90重量%の直径は、D
90未満)が、30μm以下である。
【0051】
沈降金属ケイ酸塩粒子の粒径は、適切には、Malvern Mastersizerモデル200、Malvern Mastersizer 2000ソフトウェアv5.60、及びHydro−G分散ユニットを用いたレーザ回折によって決定される。このMalvern Instruments(ウースターシャー、モールバーン)製の装置は、Mie理論を利用して粒子サイズ分布を算出する。用いられたシリカの屈折率における推定の散乱成分は1.46であり、推定の吸収成分は1.0である。水には、1.33の屈折率が割り当てられる。
【0052】
サンプルは、水中にて、2.5分間超音波で分散されてから、50%のパワーセッティングで測定されて、オブスキュレーション(obscuration)が15乃至25%である水性懸濁液が形成される。ポンプ速度は50%(1250+/−20r.p.m.)にセットされて、スターラ(stirrer)速度も50%(500+/−5r.p.m.)にセットされる。低パワー(2乃至5mW)のHe/Neレーザ光(波長632.6nm)が、脱イオン水中に分散された粒子を含むフローセルを通過する。青の光源(波長486nm)も用いられて、微細な粒子に対する装置の感度が増加する。散乱光強度が、角度の関数として測定されて、このデータが用いられて、見掛けの粒子サイズ分布が算出される。生データに適したMieモデルでは、誤差(residual)が1%未満である。任意の指定されたサイズを上回る又は下回る材料の量、つまり、重量パーセンテージは、粒子について一定の密度を仮定して、装置によって生じたデータから容易に得られる。本明細書の全体を通して、一定の密度を仮定して、重量ベースの粒子サイズ測定値が用いられるが、代わりに、この測定値は、如何なる密度も仮定されない、体積ベースの粒子サイズ測定値として表されてもよい。
【0053】
適切には、アモルファス沈降金属ケイ酸塩又はアモルファス沈降シリカは、つや消し剤として、硬化性液状組成物中に、組成物の2重量%乃至15重量%、好ましくは3重量%乃至10重量%存在して、硬化時間をあまり長くすることなく十分なつや消し性能を付与するのがよい。
【0054】
典型的には、本発明のつや消し剤は、2.0cm
3/g以下、例えば、1.5cm
3/g以下又はさらに1.3cm
3/g以下の細孔容積を示すのがよい。細孔容積の測定は、先に述べたように実行される。本発明に用いられるつや消し剤の細孔容積は、例えば、0.1cm
3/g以上であって、できるだけ大きいことが好ましい。細孔容積の値が低いほど、つや消し性能が下がり得る。
【0055】
つや消し剤は、表面積が70m
2/g以下であるのが好ましい。これらの特性を有するつや消し剤は、アルキド樹脂含有量が高い、例えば50重量%以上であるつや消しニス組成物に用いられると、用いられる乾燥促進化合物が、配位子を含む遷移金属キレート錯体、特にこのタイプの鉄又はマンガンキレート錯体である場合に、特に有効であるとわかった。
【0056】
好ましくは、つや消し剤は、アモルファス沈降金属ケイ酸塩などの沈降金属ケイ酸塩であり、金属Mは、周期表の第2乃至13族における1又は複数の金属であり、モル比M
xO/SiO
2は、0.05以上である。より好ましくは、金属ケイ酸塩の金属Mは、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛又はこれらの混合物から選択される。さらにより好ましくは、金属ケイ酸塩の金属Mは、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム及びこれらの混合物から、最も好ましくはアルミニウム又はマグネシウムから選択される。金属ケイ酸塩、特に、好ましい金属ケイ酸塩は、要求されたほどに表面積が小さく、十分な細孔容積を備えており、つや消し作用が良好であり、つや消し剤が不在である等価の組成物の硬化時間と比較した場合にて、組成物の硬化時間の延長を最小限にするつや消し剤を実現することがわかった。沈降金属ケイ酸塩では、モル比M
xO/SiO
2が約0.05乃至0.6であるのが適切であり、ここで、M
xOは、沈降ケイ酸塩における金属酸化物の化学量論式を表し、xは、2/vと等しく、vは、金属の価数である。特に好ましい構成では、金属Mがカルシウム又はマグネシウムである場合、モル比M
xO/SiO
2は、0.05乃至0.6で、例えば、0.1乃至0.4、0.2乃至0.3であってよく、M=Ca又はM=Mgでは、x=1及びv=2である。別の特に好ましい構成では、金属Mがアルミニウムである場合、モル比Al
2O
3:SiO
2は、0.017乃至0.2であってよく、これは、M=Al及びx=2/3である場合における、M
xO/SiO
2のモル比0.05乃至0.6に、例えば0.07乃至0.5、0.09乃至0.4に等しい。
【0057】
高表面積アモルファスゲル又はアモルファス沈降シリカの存在は、本発明の組成物の硬化速度に有害な影響を及ぼす虞があるので、本発明の硬化性液状組成物は、BETによって測定された表面積が250m
2/gを越えるアモルファスシリカを、0.1重量%以下(即ち0乃至0.1重量%)含むことが好ましい。本発明の組成物は、BETによって測定された表面積が250m
2/gを越えるアモルファスシリカを含んでいないことがより好ましい。つや消し剤が沈降金属ケイ酸塩、好ましくはアモルファスである場合、本発明の組成物は、任意のアモルファスシリカを0.1重量%以下含んでよく、好ましくはアモルファスシリカを全く含まなくてもよい。
【0058】
別の好ましい構成では、つや消し剤は、BETによって測定された表面積が70m
2/g以下であってよく、そして硬化性液状組成物は、表面積が70m
2/gを超えるアモルファスシリカを含まなくてよく、或いは、0.1重量%以下含んでもよい。この構成は、つや消し剤がアモルファス沈降金属ケイ酸塩である場合には、特に有用である。
【0059】
塗料調製物の実施において一般的に行われているように、シリカ又はケイ酸塩つや消し剤は、ワックスコーティングされてよく、塗料調製物の他の成分とつや消し剤との適合性が向上する。ワックスコーティングされたつや消し剤が用いられる場合、ワックス含有量は、典型的には、つや消し剤の総重量に基づいて、少なくとも1wt%であり、且つ最大約25wt%である。好ましくは、ワックス含有量は、最大約20wt%、より好ましくは最大約15wt%であって、最も好ましいのは、最大約10重量%のワックスである。つや消し剤をコーティングするのに適したワックスとしては、ポリエチレンワックス、微結晶性ワックス(ペトロラタムから製造されるようなもの)等があげられる。
【0060】
シリカは、任意の方法を用いてワックスで処理できて、シリカが適度に一様にワックスでコーティングされた産物がもたらされる。好ましい方法は、マイクロナイザ又はジェットミルのようなサイズ縮小装置に、シリカ及びワックスを同時に通す工程を含む。好ましい方法では、ワックス及びシリカは、一般的なブレンダ(blender)で混合されてからマイクロナイザ又はミルへ送られることによって、適切な割合で十分に混和する。或いは、ワックス及びシリカは、マイクロナイザ又はミルに適切なレートで別々に送られてよい。シリカ及びワックスの混合物が、マイクロナイザ又はミルを通過すると、ワックスの融点を超える温度に達することを確実とするように、ミルの運転条件は一定にされる。シリカのサイズはまた、微粉化プロセス又はミリングプロセス中に縮小されて、処理済みシリカは、つや消し剤としての使用に適しており、通常、先に言及された限度内の粒子サイズを有する。
【0061】
本発明の組成物に用いられる乾燥促進化合物は、配位子を含む遷移金属キレート錯体である。このような化合物は、特に、塗料産業及び樹脂産業において一般に用いられる石鹸ベースのコバルト乾燥促進化合物に代わる乾燥促進化合物として有効であることがわかった。
【0062】
配位子は、二座、三座、四座、五座若しくは六座の配位子、又はこれらの混合物から選択されてよい。特に、配位子は、窒素ドナー配位子であってよい。具体的に好適な配位子として、ビスピドン(bispidon)配位子、N4Py配位子、TACN配位子、トリスピセン(trispicen)配位子、サイクレン(cyclen)配位子又は架橋(cross-bridged)配位子から選択される配位子が挙げられる。
【0063】
乾燥促進化合物は、鉄ベース又はマンガンベースの乾燥促進化合物であるのが好ましい。鉄イオンは、Fe(II)及びFe(III)から選択されてよく、マンガンイオンはMn(II)、Mn(III)及びMn(IV)から選択されてよい。
【0064】
配位子は、複数の形態[MnLCl
2];[FeLCl
2];[FeLCl]Cl;[FeL(H
2O)](PF
6)
2;[FeL]Cl
2、[FeLCl]PF
6及び[FeL(H
2O)](BF
4)
2のうちの1又は複数の形態で存在してよく、ここで、Lは配位子を表す。
【0065】
適切な乾燥促進化合物の具体例は、国際公開第2008/003652号に詳述されており、以下を含んでいる。
【0066】
ジメチル2,4−ジ−(2−ピリジル)−3−メチル−7−(ピリジン−2−イルメチル)−3,7−ジアザ−ビシクロ[3.3.1]ノナン−9−オン−1,5−ジカルボキシレート(N2py3o−Cl)、及びその鉄(II)錯体[Fe(N2py3o−Cl)Cl]Cl(国際公開第02/48301号に記載されているように調製される)。
【0067】
ジメチル2,4−ジ−(2−ピリジル)−3−オクチル−7−(ピリジン−2−イルメチル)−3,7−ジアザ−ビシクロ[3.3.1]ノナン−9−オン−1,5−ジカルボキシレート(N2py3o−C8)、及びジメチル2,4−ジ−(2−ピリジル)−3−オクタデシル−7−(ピリジン−2−イルメチル)−3,7−ジアザ−ビシクロ[3.3.1]ノナン−9−オン−1,5−ジカルボキシレート(N2py3o−C18)、並びに対応する鉄錯体、[Fe(N2py3o−C8)Cl]Cl及び[Fe(N2py3o−C18)Cl]Cl(国際公開第2005/042532号に記載されているようにして調製される)。
【0068】
N,N−ビス(ピリジン−2−イル−メチル)−ビス(ピリジン−2−イル)メチルアミン(N4Pyと呼ばれる)及び対応する鉄(II)錯体、[Fe(N4py)Cl]Cl(欧州特許第0765381号に記載されているようにして調製される)。
【0069】
N,N−ビス(ピリジン−2−イル−メチル−1,1−ビス(ピリジン−2−イル)−1−アミノエタン(MeN4Pyと呼ばれる)及び対応する鉄(II)錯体、[Fe(MeN4py)Cl]Cl(欧州特許第0909809号に記載されているようにして調製される)。
【0070】
4,11−ジメチル−1,4,8,11−テトラアザビシクロ[6.6.2]ヘキサデカン(Bcyclamと呼ばれる)及び対応するマンガン(II)錯体、[Mn(Bcyclam)Cl
2](国際公開第98/39098号及びJ.Am.Chem.Soc,122,2512(2000)に記載されているようにして調製される)。
【0071】
N−メチル−トリスピセン(Metrispicen)、N−オクチル−トリスピセン(C8−トリスピセン)、N−オクタデシル−トリスピセン(C18−トリスピセン)(文献の手順(Bernal,J.;et al.J.Chem.Soc,Dalton Trans.1995,3667)及び英国特許出願公開第2386615号に従って合成される)。対応する鉄(II)錯体、[Fe(Metrispicen)Cl]Cl、[Fe(C8−トリスピセン)Cl]Cl及び[Fe(C18−トリスピセン)Cl]Clは、MeN4py類似体について欧州特許出願公開第0909809号に記載されている手順と同様にして調製されてよい。
【0072】
1,4−ビス(キノリン−2−イルメチル)−7−エチル−1,4,7−トリアザシクロノナン(Quin
2TACN)及び対応する[Fe(Quin
2TACN)Cl]ClO
4化合物(欧州特許出願公開第1259522号に開示されているようにして調製される)。Mn
2([ミュー]−O)
3(1,4,7−トリメチル−1,4,7−トリアザシクロノナン)
2]PF
6)
2が、J.Chem.Soc,Dalton Trans,353(1996)に掲載されているようにして調製されてよい。
【0073】
本発明に用いるのに適した市販の適切な乾燥促進化合物は、Borchi(登録商標)Oxy−coat 1101であり、配位子を含む鉄キレート錯体として供給されている。その乾燥促進化合物は、1%水溶液として供給され、Feの全含有量は、溶液に存在する金属の重量パーセントとして表すと、0.09%である。
【0074】
本発明に用いるのに適した市販の代わりの乾燥促進化合物は、配位子を含むマンガンキレート錯体として供給されているNuodex DryCoat(Rockwood)である。乾燥促進化合物は、8%ケロシン溶液として供給され、Mnの全含有量は、溶液に存在する金属の重量パーセントとして表すと、1%である。
【0075】
本発明に用いるのに適した市販の他の乾燥促進化合物は、WorleeAdd 2500(Worlee)、Borchers Dry 0133、Borchers Dry 0246、及びBorchers Dry 0410(OMG Borchers)(これらは全て、配位子を含むマンガンキレート錯体として供給される)、Mordry 410/20(Delta)、Nouryact(Akzo Nobel)、並びにDrycat 408(Dura Chemicals)である。
【0076】
本発明の硬化性液状組成物は、例えば、エマルジョン塗料又は分散系塗料などの水ベースの塗料であってよく、水又は水溶液は、連続相、溶媒ベースの塗料(連続相として非水性溶媒を有する)、ニス、木材着色剤、又はインクを形成する。
【0077】
典型的には、他の成分も、本発明の硬化性液状組成物中に存在するであろう。本発明の組成物に用いるのに適した有機溶媒としては、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素及び芳香薬炭化水素、アルコールエーテル、アルコールエステル、並びにN−メチルピロリドンが挙げられる。しかしながら、本発明の組成物はまた、エマルジョンの形態であってもよく、水性溶媒(水性溶媒によって意味するところは、少なくとも65重量%の水を含有する溶媒である)が、エマルジョンの形態でアルキド樹脂(有機溶媒に溶解し得る)を保持している。典型的には、溶媒が、本発明の組成物の10重量%以上存在してよい。適切な乳化剤が用いられて、安定したエマルジョンが提供されてよく、それは周知の技術である。
【0078】
本発明の組成物は、着色剤、顔料、耐食性顔料、体質顔料、染料、可塑剤、表面調整剤、所謂スルー乾燥(through-drying)剤、皮張り防止剤、消泡剤、流動調整(rheological controlling)剤、紫外線吸収剤等から選択される1又は複数のさらなる成分を含有してよい。スルー乾燥剤は、乾燥作用を修正することを意図した化合物であり、カルシウムベース又はジルコニウムベースの触媒化合物などがある。この段落において示すさらなる成分は、典型的には、本発明の組成物の最大5重量%の濃度で存在することとなるが、より高い濃度、例えば、最大20重量%、又はさらにそれ以上等で存在してよい顔料又は増量剤は除かれる。顔料は、色及び不透明度を付与するのに役立つが、UVを吸収し、硬化組成物の構造強度に寄与することもできる。不透明剤として存在するあらゆるTiO
2の一部を置き換えるために、コスト節減を目的として、塗布特性を向上させるために、つや消し剤として作用して光沢をさらに下げるために、顔料の沈殿(settling)を阻害するために、又は、その後の塗料のコーティングの定着(keying)を向上させるために、増量剤は含まれてよい鉱物成分である。一般的な増量剤としては、炭酸カルシウム、タルク、バライト、カオリン、マイカ等の鉱物が挙げられる。
【0079】
本発明の組成物は、先に詳述されたような溶媒、バインダ、乾燥促進化合物、つや消し剤から、例えばニスタイプの組成物用のものから構成されてよく、これらから実質的に構成されてもよい。
【0080】
本発明の組成物の混合は、従来の、当業者に知られている混合技術を用いて実行されてよい。つや消し剤は、本発明の組成物の製造中に、適切な任意の時点にて添加されてよい。
【0081】
本発明の第2の態様は、BETによって測定された表面積が、250m
2/g以下、好ましくは200m
2/g以下、より好ましくは150m
2/g以下、さらにより好ましくは100m
2/g以下、最も好ましくは70m
2/g以下である沈降シリカ、沈降金属ケイ酸塩、又はそれらの混合物を含む硬化性液状組成物用のつや消し剤としての使用を提供するものであり、当該硬化性液状組成物は、酸化架橋によって硬化するバインダと、バインダの酸化架橋を触媒するように構成された乾燥促進化合物として配位子を含む遷移金属キレート錯体とを含む。本発明の第2の態様の組成物中のつや消し剤が、沈降金属ケイ酸塩である、又は沈降金属ケイ酸塩を含む場合、ケイ酸塩の表面積は、BETによって測定されると、好ましくは450m
2/g以下、より好ましくは400m
2/g以下、さらには250m
2/g以下である。特に好ましい実施形態において、沈降金属ケイ酸塩の表面積は、BETによって測定されると、200m
2/g以下、好ましくは100m
2/g以下、最も好ましくは70m
2/g以下である。
【0082】
本発明の第2の態様であるこの使用は、表面がつや消し仕上げされる硬化組成物を製造するためのものであって、硬化性液状組成物の硬化に必要とされる時間は、つや消し剤が存在しない同じ硬化性液状組成物の硬化に必要とされる時間よりも、過度に長くはない。
【0083】
本発明の第1の態様について詳述された好ましい特徴は、バインダ、乾燥促進化合物及び沈降金属ケイ酸塩に関して、本発明の第2の態様の使用に等しく適用可能である。例えば、つや消し剤は、好ましくはアモルファスである。本発明の第2の態様のためのつや消し剤は、沈降金属ケイ酸塩である場合には、好ましくはケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム又はこれらの混合物から、より好ましくはケイ酸アルミニウムから選択される。
【0084】
本発明の第2の態様は、バインダが、アルキド樹脂である又はアルキド樹脂を含んでおり、硬化性液状組成物が、エマルジョン塗料又は分散系塗料などの水ベースの塗料、溶媒ベースの塗料、ニス、木材着色剤、又はインクである場合、特に適用可能である。
【0085】
つや消し剤の表面積が、70m
2/g以下であり、そして硬化性液状組成物が、BETによって測定された表面積が70m
2/gを超えるアモルファスシリカを含まない、又は0.1重量%以下含む場合に、本発明の第2の態様の使用は、良好なつや消しと組み合わせて迅速な硬化を提供するので特に有益である。本発明の第2の態様のこの特定の構成は、表面がつや消し仕上げされる硬化組成物を製造するのに特に適しており、硬化性液状組成物の硬化に必要とされる時間が、つや消し剤が存在しない同じ硬化性液状組成物の硬化に必要とされる時間よりも、過度に長くなることはない。本発明に基づくこの使用は、つや消し剤が、先に記載されたアモルファス沈降金属ケイ酸塩である場合に、特に有益である。
【0086】
乾燥促進化合物が、二座、三座、四座、五座若しくは六座の配位子、又はこれらの混合物である窒素ドナー配位子を含む鉄又はマンガンキレート錯体である場合、本発明の第2の態様の使用はまた、硬化時間が過度に増加するのを阻止するのに特に有効である。
【0087】
次に、本発明は、以下の非限定的な例について説明される。
【実施例】
【0088】
A.P.は、以下で詳述される表の全体を通して「アモルファス沈降(Amorphous Precipitated)」を示す。
【0089】
表1は、本発明に基づく一連のつや消し剤及び比較のためのつや消し剤について、BETによって測定した表面積及び細孔容積と、先に詳述したように測定したアマニ吸油値を示す。表1において、本発明に基づく金属ケイ酸塩は、1iから7iと示されており(参照を容易にするために、表示「i」は「発明(invention)」を指している)、本発明に基づくシリカは8iとして識別される。シリカ9cから12cは、比較例(表示「c」は「比較(comparison)」を指している)である。
【0090】
【表1】
【0091】
表1のつや消し剤A.P.ケイ酸Al R、A.P.ケイ酸Al P W1、A.P.ケイ酸Al P W2、A.P.ケイ酸Ca Q、A.P.シリカC、A.P.シリカD、シリカゲルX、シリカゲルY(それぞれ、2i、3i、4i、5i、9c、10c、11c及び12c)を、つや消し剤として用いるのに適したそれぞれの粒子サイズに、流体エネルギーミル/分級器を用いて製粉した。他のつや消し剤は、「製造したままの」形態で用いた。これらの粒子サイズも先の表1に示す。
【0092】
つや消し剤A.P.ケイ酸Al P W1、A.P.ケイ酸Al P W2及びシリカゲルY(それぞれ3i、4i及び12c)は、ワックスコーティングされた。A.P.ケイ酸Al P W1の含有ワックスは、10%硬質ポリエチレンワックス(ケイ酸塩の重量に基づく)であり、A.P.ケイ酸Al P W2の含有ワックスは、15%微結晶性ワックスであり、シリカゲルYの含有ワックスは、12%微結晶性ワックスであった。
【0093】
[実施例1]
実験の第1のシリーズにおいて、(先の表1から取った)以下に一覧したつや消し剤を用いて、表2に報告する空気硬化ニス組成物のつや消し仕上げニスを調製した。
【0094】
1i A.P.ケイ酸Al P
5i A.P.ケイ酸Ca Q
8i A.P.シリカA
9c A.P.シリカC
10c A.P.シリカD
11c シリカゲルX
【0095】
ニスは、K−barワイヤハンドコータ(K-bar, wired hand coater)又はブロックアプリケータ(block applicator)を用いて、100μmの未乾燥膜厚にて塗布された。
【0096】
つや消し剤を添加しなかった組成物を除いて(これは光沢仕上げをもたらした)、乾燥したニスは全て、十分なつや消し仕上げをもたらした。
【0097】
つや消し剤を含めた各組成物について、組込み濃度は組成物の5重量%であった。
【0098】
【表2】
【0099】
Borchi(登録商標)Oxy−coat 1101のレベルは、組成物中3.7ppm(100万分の1)キレート化鉄に相当する。
【0100】
表3及び表4は、組成物が種々の乾燥ステージに達するのに必要な時間を示す。時間は、以下で詳述する乾燥ステージを用いて、手で触れることによって測定した。
【0101】
−Tacky=触れると粘着性。触れると顕著な跡が残り、ほとんどの場合、表面はダメージを受けたまた/破れたまま、いつまでも残る。指を離す時に、かなりの抗力を受ける。
−Sl.Tacky=触れると僅かに粘着性。触れると少しの跡しか残らず、そしていつまでもダメージが残らない。指を離す時に、少しの抗力を受ける。
−V.Sl.Tacky=触れると非常に僅かに粘着性。触れる時に気付く跡はないが、触れると表面は乾燥していない。
−Dry=粘着性なし。
【0102】
表3では、乾燥時間は室温(25℃)で測定されており、表4では、低温乾燥条件を用いた(9℃)ので、乾燥時間はより長かった。
【0103】
光沢ニスでは、つや消し剤がないと、完全な乾燥までの時間は、それぞれ8時間(RT)及び16時間(低温)であった。
【0104】
比較つや消し剤A.P.シリカC、A.P.シリカD及びシリカゲルX(それぞれ、9c、10c及び11c)をニスベースに組み込むと(全て表面積が250m
2/gを超えていた)、乾燥時間が、RTで55時間にまで増大し、低温で60時間を超えた。これらの実験において、60時間までに乾燥が達成されなかった場合、さらなる測定をしなかった。
【0105】
【表3】
【0106】
【表4】
【0107】
A.P.ケイ酸Al P、A.P.ケイ酸Ca Q、及びA.P.シリカAつや消し剤(それぞれ1i、5i、及び8i)について、RT乾燥の乾燥時間は光沢ニスよりもかなり長いが、これらのつや消し剤は、この系において、シリカA.P.シリカC、A.P.シリカD、及びシリカゲルX(それぞれ、9c、10c、及び11c)と比較して、RT乾燥の乾燥時間をかなり改善して短縮している。
【0108】
低温乾燥(9℃)については、A.P.ケイ酸Al Pサンプル(1i)のみが、60時間以内に乾燥し、サンプルA.P.ケイ酸Ca Q、及びA.P.シリカA(それぞれ5i及び8i)のみが60時間以内にV.Sl.粘着性を達成した。
【0109】
全体として、ニスの実験結果は、特許請求の範囲に詳述されるつや消し剤が、コバルト石鹸ベースの乾燥促進剤の代替物を用いる組成物中のつや消し剤として、従来の高表面積シリカに取って代わる有用性を実証している。
【0110】
コバルト石鹸ベースの乾燥促進剤を用いるニス組成物においてつや消し効果をもたらすために5%の濃度で添加した場合、本発明に基づくつや消し剤A.P.ケイ酸Al P、A.P.ケイ酸Ca Q、及びA.P.シリカA(それぞれ1i、5i、及び8i)は、そして、A.P.シリカC、A.P.シリカD、及びシリカゲルX(それぞれ9c、10c、及び11c)のような比較の高表面積シリカアモルファス沈降つや消し剤も、乾燥時間が顕著に延長するようなことは何ら見られなかった。このことは、Borchi(登録商標)Oxy−coat乾燥促進化合物をOctasoligen(商標)Cobalt(OMG Borchersにより供給されている)に置き換えたこと以外、表2のニスと実質的に同じであるニス組成物を調製することによって、確認した。この場合、つや消し剤の有無による組成物の乾燥時間は同じであり、室温では5乃至8時間、低温では10乃至20時間の範囲であった。
【0111】
[実施例2]
空気硬化塗料組成物を、以下の表5に示すベース組成物につや消し剤を組み込むことによって調製した。つや消し剤は、以下の表6及び表7に示すw/w%で与えられる組込み濃度で、ベース組成物中に含められた。空気硬化塗料組成物をそれぞれ調製するのに用いたつや消し剤は、以下の通りであった。
【0112】
1i A.P.ケイ酸Al P
2i A.P.ケイ酸Al R
5i A.P.ケイ酸Ca Q
6i A.P.ケイ酸Mg S
7i A.P.ケイ酸Mg T
8i A.P.シリカA
9c A.P.シリカC
11c シリカゲルX
12c シリカゲルY
【0113】
塗料は、K−barワイヤハンドコータ又はブロックアプリケータを用いて、100μmの未乾燥膜厚にて塗布された。
【0114】
【表5】
【0115】
各塗料組成物が種々の乾燥ステージに達するのにかかった時間を、B.K.ドライヤ試験法(ASTM D5895−13)及びBraiveレコーダ(Sheen Instruments Ltd.)を用いて測定した。これらの測定は、乾燥しつつある塗料上で、鈍針を24.4mm/hの速度で引きずって、塗料に跡/痕を生じさせることを含んでいる。塗料が乾燥するにつれ、種々の痕が観察され、これらを、以下で詳述する乾燥ステージに大別した。
【0116】
−Set−to−touch=塗料が、針によって残された跡中に逆流せず、洋ナシ形の陥没が塗料中に現れる。
−Tack−free=塗料表面が乾燥し始め、針は塗料の表面を引き裂く。
−Dry hard=塗料が硬化乾燥し始め、針は塗料の表面に痕を残す。
−Dry through=痕が形成されない。
【0117】
以下の表6は、前述の一連の各塗料について、乾燥ステージの開始に達するのに必要な時間を示す。各塗料組成物は、各例において、その塗料組成物を製造するのに用いたつや消し剤によって特定されている。つや消し剤なしで調製した付加的塗料は、「シリカなし」と示されている。表6では、乾燥時間は、RT(25℃)で測定されている。実験は、24時間で終了した。
【0118】
一部の例では、目に見えるような跡は、各乾燥ステージで明らかではなかった。これを以下の表6に示す。一部の例では、試験を開始して24時間以内にステージに達しなかった。これも、以下の表6に示す。
【0119】
低温条件でのほとんどのサンプルでは、24時間以内に顕著な乾燥が観察されなかった。低温乾燥条件でのさらなるデータを得るために、実施例1で詳述した接触乾燥法を用いて、低温乾燥条件においてさらなる実験を行った。この実験は、48時間にて終了した。以下の表7は、接触乾燥法を用いて9℃で測定した組成物の種々の接触乾燥ステージに達するのに必要な時間を示す。
【0120】
乾燥14日後の各塗料組成物の光沢値を、BYK Multiglossメータを用いて、Leneta(商標)カード上にコーティングした乾燥塗料又はニスで、60度にて測定した。これらは、以下の表6及び表7に含まれている。
【0121】
【表6】
【0122】
【表7】
【0123】
RT(25℃)乾燥によるB.K.ドライヤ試験法では、A.Pケイ酸Mg Sつや消し剤(6i)で調製した塗料は、乾燥時間が最も短かった。
【0124】
RT(25℃)乾燥によるB.K.試験法では、つや消し剤A.P.ケイ酸Al P、A.P.ケイ酸Al R、A.P.ケイ酸Ca Q、及びA.P.ケイ酸Mg T(それぞれ、1i、2i、5i、及び7i)で調製した塗料は、つや消し剤A.P.シリカC、シリカゲルX、及びシリカゲルY(それぞれ、9c、11c、及び12c)で調製した塗料と比較して、乾燥時間がかなり向上したことがさらにわかった。つや消し剤A.P.シリカA(8i)は、A.P.シリカC、シリカゲルX、及びシリカゲルY(それぞれ、9c、11c、及び12c)に対するいくらかの向上を示した。
【0125】
低温乾燥(9℃)の接触試験法では、RT結果は、つや消し剤A.P.ケイ酸Mg S(6i)で調整した塗料の乾燥時間が最も速いことを示しており、光沢(即ちシリカなし)塗料よりも僅かに遅い乾燥時間を実証していることが確認された。
【0126】
低温乾燥の接触試験法では、つや消し剤A.P.ケイ酸Al P、A.P.ケイ酸Al R、A.P.ケイ酸Ca Q、及びA.P.ケイ酸Mg T(それぞれ、1i、2i、5i及び7i)で調製した塗料が、つや消し剤A.P.シリカC、シリカゲルX、及びシリカゲルY(それぞれ、9c、11c、及び12c)で調製した塗料と比較して、乾燥時間がかなり向上したことがさらにわかった。
【0127】
全体として、乾燥促進剤Oxy−coatで調製した塗料の実験結果は、特許請求の範囲に詳述されるつや消し剤が、コバルト石鹸ベースの乾燥促進剤の代替物を用いる組成物中のつや消し剤として、従来の高表面積シリカに取って代わる有用性を実証している。
【0128】
つや消し剤を添加しなかった組成物を除いて(これは光沢仕上げをもたらした)、乾燥した塗料は全て、十分なつや消し仕上げをもたらした。
【0129】
[実施例3]
空気硬化塗料組成物を、概して以下の表5に示したベース組成物につや消し剤を組み込むことによって調製したが、乾燥促進剤が異なっている。この実験では、表5(実施例2)のベース組成物に用いたBorchi Oxy−coat 1101乾燥促進剤を、Nuodex DryCoat(Rockwood)乾燥促進剤(先に述べたマンガンキレート錯体の8%ケロシン溶液)の代わりとした。つや消し剤は、以下の表8に示すw/w%で与えられる組込み濃度で含められた。空気硬化塗料を調製するのに用いたつや消し剤は、以下の通りであった。
【0130】
1i A.P.ケイ酸Al P
2i A.P.ケイ酸Al R
3i A.P.ケイ酸Al P W1
4i A.P.ケイ酸Al P W2
5i A.P.ケイ酸Ca Q
6i A.P.ケイ酸Mg S
7i A.P.ケイ酸Mg T
9c A.P.シリカC
11c シリカゲルX
12c シリカゲルY
【0131】
比較のために、付加的な塗料を、つや消し剤なしで調製した。各塗料組成物が種々の乾燥ステージの開始に達するのにかかった時間を、実施例2に基づくB.K.ドライヤ試験法を用いて測定した。乾燥時間は、低温乾燥条件(9℃)下で測定された。表8は、組成物が種々の乾燥ステージに達するのに必要な時間を示す。各塗料組成物を、各例において、その塗料組成物を製造するのに用いたつや消し剤によって示す。つや消し剤なしで調製した付加的塗料を、「シリカなし」と示す。各塗料組成物の光沢値は、実施例2に記載する方法を用いて測定されて、以下の表8に含められている。
【0132】
【表8】
【0133】
B.K.試験法を用いた低温乾燥(9℃)では、つや消し剤A.P.ケイ酸Al P、A.P.ケイ酸Al R、A.P.ケイ酸Al P W1、A.P.ケイ酸Al P W2、A.P.ケイ酸Ca Q、A.P.ケイ酸Mg S、及びA.P.ケイ酸Mg T(それぞれ、1i、2i、3i、4i、5i、6i、及び7i)で調製した塗料は、つや消し剤A.P.シリカC、シリカゲルX、及びシリカゲルY(それぞれ、9c、11c、及び12c)で調製した塗料と比較して、乾燥時間がかなり向上した。
【0134】
全体として、乾燥促進剤DryCoatで調製した塗料の実験結果は、特許請求の範囲に詳述されるつや消し剤が、コバルト石鹸ベースの乾燥促進剤の代替物を用いる組成物中のつや消し剤として、従来の高表面積シリカに取って代わる有用性を実証している。
【0135】
つや消し剤を添加しなかった組成物を除いて(これは光沢仕上げをもたらした)、乾燥した塗料は全て、十分なつや消し仕上げをもたらした。
【0136】
先に記載された実施形態に対する数多くの修正が、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の要旨を逸脱しない範囲でなされてよいことは勿論である。
【0137】
記載され、且つ説明される実施形態は、特徴について説明的であって、制限的でないと考えられるべきである。本発明に基づく具体的な実施形態のみが示され、且つ記載されており、そして、添付の特許請求の範囲において詳述される本発明の範囲内でなされる全ての変更及び修正は、保護が求められるものと理解されなければならない。記載中の「好ましい」、「好ましくは」、「好まれる」又は「より好まれる」等の用語の使用は、そのように記載される特徴が所望され得ることを示唆しているが、必須でなくてよく、そしてそのような特徴を欠いている実施形態が、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲内であると意図されてよいことが理解されるべきである。特許請求の範囲に関して、「1つ」、「少なくとも1つ」又は「少なくとも一部」等の用語が、特徴を前置きするのに用いられている場合、特許請求の範囲において別段の具体的な記載がなされない限り、特許請求の範囲をそのような1つの特徴にのみ限定する意図はない。文言「少なくとも一部」及び/又は「一部」が用いられる場合、別段の具体的な記載がなされない限り、その事項は、事項の一部及び/又は全体を含んでよい。