特許第6289518号(P6289518)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6289518ナイロン66中空繊維、その製造方法及びその生産設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6289518
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】ナイロン66中空繊維、その製造方法及びその生産設備
(51)【国際特許分類】
   D01F 6/60 20060101AFI20180226BHJP
   D01D 5/098 20060101ALI20180226BHJP
   D01D 5/24 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
   D01F6/60 321A
   D01F6/60 351B
   D01D5/098
   D01D5/24 Z
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-12577(P2016-12577)
(22)【出願日】2016年1月26日
(65)【公開番号】特開2017-31543(P2017-31543A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2016年5月13日
(31)【優先権主張番号】104125119
(32)【優先日】2015年8月3日
(33)【優先権主張国】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】515143588
【氏名又は名称】展頌股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100093779
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】陳 ▲彦▼孝
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 濬承
(72)【発明者】
【氏名】▲黄▼ 吉▲禄▼
(72)【発明者】
【氏名】林 傳▲しゅん▼
【審査官】 小石 真弓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−020518(JP,A)
【文献】 特開2008−088583(JP,A)
【文献】 特開昭48−053013(JP,A)
【文献】 特公昭47−050007(JP,B1)
【文献】 特開昭57−061710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D 1/00−13/02
D01F 1/00−6/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のナイロン66樹脂粒子を提供する工程と、
前記ナイロン66樹脂粒子を溶融させ、紡糸液を形成する溶融工程と、
前記紡糸液に中空糸用紡糸口金を通過させ、複数の中空紡糸口糸を形成する吐糸工程と、
吸気する方式で前記中空紡糸口糸から熱を奪い、前記中空紡糸口糸を一応硬化させ、複数の中空半硬化糸を形成する吸気工程と、
前記中空糸用紡糸口金からの距離が15cm〜30cmに設定されている送風装置から供給される16℃〜22℃の温度の冷却風を提供し、前記中空半硬化糸を冷却し硬化させ、複数の硬化糸を形成する冷却工程と、
前記硬化糸を集束しかつ集束された糸に対し給油し、集束糸を形成する集束給油工程と、
前記集束糸を延伸し、延伸糸を形成する引伸工程と、
前記延伸糸を円柱部材に巻き付け、ナイロン66中空繊維を取得する巻取工程と、
を含み、
前記引伸工程は、
回転速度が580m/min〜780m/minに設定された第1のゴデットローラアセンブリによって前記集束糸が延伸される第1のサブ引伸工程と、
第1中間引伸工程の後、オイルローラアセンブリによって前記集束糸に給油するオイルローラ給油サブ工程と、
前記給油工程の後、温度が55℃〜65℃に設定され、回転速度が615m/min〜815m/minに設定された第2のゴデットローラアセンブリによって前記集束糸が延伸される第2のサブ引伸工程と、
前記第2中間引伸工程の後、温度が130℃〜150℃に設定され、回転速度が1700m/min〜2300m/minに設定された第3のゴデットローラアセンブリによって前記集束糸が延伸される第3のサブ引伸工程と、
前記第3中間引伸工程の後、温度が200℃〜220℃に設定され、回転速度が2600m/min〜3200m/minに設定された第4のゴデットローラアセンブリによって前記集束糸が延伸される第4のサブ引伸工程と、
前記第4中間引伸工程の後、温度が210℃〜230℃に設定され、回転速度が2950m/min〜3350m/minに設定された第5のゴデットローラアセンブリによって前記集束糸が延伸される第5のサブ引伸工程と、
前記第5中間引伸工程の後、温度が170℃〜190℃に設定され、回転速度が2780m/min〜3180m/minに設定された第6のゴデットローラアセンブリによって前記集束糸が延伸される第6のサブ引伸工程と、
を有するナイロン66中空繊維の製造方法。
【請求項2】
前記ナイロン66樹脂粒子の硫酸相対粘度を3.2〜3.4にする粘度調整工程を更に含む請求項1に記載のナイロン66中空繊維の製造方法。
【請求項3】
前記ナイロン66樹脂粒子の水分率を500ppm〜2000ppmにする水分調整工程を更に含む請求項1に記載のナイロン66中空繊維の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナイロン66繊維、その製造方法及びその生産設備に関し、特に、ナイロン66中空繊維、その製造方法及びその生産設備に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド(Polyamide;PA)は、カルボキシル基及びアミノ基を含有するモノマーがアミド結合によって重合してなる高分子であり、プロセスが簡単で、耐久性と強度に優れるため、織物、自動車部品、電子機器、食品外装等の分野に広く適用され、ポリアミド66(Nylon66又はナイロン66とも呼ばれる)は、アジピン酸とヘキサンジアミンとの縮合重合による生成物であり、細糸に製造されやすく、後で製造される織物の品質が優れるため、紡織分野における主流の原料となる。
【0003】
近年、路上ランニング、サイクリング、登山、キャンピング等の屋外運動の盛行につれて、用途によって吸湿排汗、軽量、凉感、保温、UVカット及び/又は耐磨耗等の機能を持つ機能性生地の市場も興ってくる。従来の円形断面を有する繊維では、もう要求を満足できなくなるが、高品質の機能性生地を製造するために、例えば、一字形、三角形、十字形、Y字形、中空繊維等の様々な異形断面が機運に応じて生まれた。その中、中空繊維は、原料を節約でき、且つ軽量、保温等のメリットを有することで、広く注目されている。
【0004】
現在のポリアミド66中空繊維を製造するには、円形糸用紡糸口金を中空糸用紡糸口金に交換し、ポリアミド66の紡糸液が中空糸用紡糸口金を通過してから徐冷領域(無風条件で冷却する)及び冷風領域を介して硬化された後、ポリアミド66中空繊維が形成される。しかしながら、ポリアミド66の紡糸液が中空糸用紡糸口金を通過してから徐冷領域で膨潤し、過度の膨潤によりポリアミド66中空繊維の中空口径があまり小さくなり、中空率を効果的に維持できないことがある。この問題を解決するために、ある当業者により、例えば、徐冷領域の距離又はポリアミド66中空繊維の徐冷領域を通す時間を短くするように、冷却を加速する解决手段が提案された。この解决手段では、過度の膨潤を避け、中空率を維持することができるが、ポリアミド66中空繊維の強度が大幅に低下してしまう。従って、如何にポリアミド66中空繊維の強度を維持する前提で、ポリアミド66中空繊維の中空率を向上させるかは、当業者の努力する目標となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の1つの目的は、ナイロン66中空繊維の製造方法を提供することである。この製造方法によるナイロン66中空繊維は、高い中空率を有し、且つナイロン66中空繊維の強度を維持することができる。
【0006】
本発明の別の目的は、中空率が8%〜12%であるナイロン66中空繊維を提供することである。これにより、ナイロン66中空繊維は、軽量化及び保温機能対応のメリットを有し、製造された織物が軽量化の要求を満足するとともに、引裂強度と引張強度を維持でき、且つ優れた耐摩擦性を有する。
【0007】
本発明の更に別の目的は、ナイロン66中空繊維の生産設備を提供することである。この生産設備によって取得するナイロン66中空繊維は、高い中空率を有し、且つナイロン66中空繊維の強度を維持することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によると、複数のナイロン66樹脂粒子を提供することと、ナイロン66樹脂粒子を溶融させて、紡糸液を形成する溶融工程と、紡糸液に中空糸用紡糸口金を通過させて、複数の中空紡糸口糸を形成する吐糸工程と、吸気する方式で中空紡糸口糸から熱を奪い、中空紡糸口糸を一応硬化させて、複数の中空半硬化糸を形成する吸気工程と、16℃〜22℃の温度の冷却風を提供し、中空半硬化糸を冷却し硬化させて、複数の硬化糸を形成する冷却工程と、硬化糸を集束しかつ集束された糸に対し給油し、集束糸を形成する集束給油工程と、集束糸を延伸して、延伸糸を形成する引伸工程と、延伸糸を円柱部材に巻き付けて、ナイロン66中空繊維を取得する巻取工程と、を備えるナイロン66中空繊維の製造方法を提供する。
【0009】
ナイロン66中空繊維の製造方法によると、引伸工程は、複数のサブの引伸工程を含んでもよく、且つサブの引伸工程の間に行われてもよく、オイルローラ群によって集束糸を給油するサブのオイルローラ給油工程を更に含んでもよい。本発明の一実施例によると、引伸工程は、第1のサブの引伸工程、第2のサブの引伸工程、第3のサブの引伸工程、第4のサブの引伸工程、第5のサブの引伸工程、第6のサブの引伸工程、を含み、サブのオイルローラ給油工程が第1のサブの引伸工程と第2のサブの引伸工程との間に行われる。
【0010】
ナイロン66中空繊維の製造方法によると、ナイロン66樹脂粒子の硫酸相対粘度を3.2〜3.4にする粘度調整工程を行うことを更に含んでもよい。
【0011】
ナイロン66中空繊維の製造方法によると、ナイロン66樹脂粒子の水分率を500ppm〜2000ppmにする水分調整工程を行うことを備えてもよい。
【0012】
本発明の別の態様によると、ナイロン66中空繊維の製造方法によって製造されるナイロン66中空繊維であって、中空率が8%〜12%であるナイロン66中空繊維を提供する。
【0013】
本発明の更に別の態様によると、複数のナイロン66樹脂粒子を溶融させて、紡糸液を形成するための押出機と、押出機と連通して、紡糸液を押出機から入らせるための紡糸液の管路と、一端が紡糸液の管路と連通し、他端が中空糸用紡糸口金を含み、紡糸液が紡糸液の管路を介して紡糸箱に流れ、中空糸用紡糸口金を通過して複数の中空紡糸口糸を形成する紡糸箱と、紡糸箱の他端と接続し、且つ吸気装置と接続し、吸気装置によって吸気室に対して吸気を行い、中空紡糸口糸から熱を奪い、中空紡糸口糸を一応硬化させて、複数の中空半硬化糸を形成する吸気室と、一端が吸気室と接続し、且つ送風装置と接続し、送風装置によって冷却室に16℃〜22℃の温度の冷却風を提供し、中空半硬化糸を冷却し硬化させて、複数の硬化糸を形成する冷却室と、冷却室の他端に設けられ、硬化糸を集束しかつ集束された糸に対し給油し、集束糸を形成するための集束給油装置と、集束給油装置の冷却室に対向する他端に隣接して設けられ、引伸装置によって集束糸を延伸して、延伸糸を形成する引伸装置と、引伸装置の集束給油装置に対向する他端に隣接して設けられ、円柱部材を含み、延伸糸を円柱部材に巻き付けて、ナイロン66中空繊維を取得する巻取装置と、を備えるナイロン66中空繊維の生産設備を提供する。
【0014】
ナイロン66中空繊維の生産設備によると、引伸装置は、複数のゴデットローラアセンブリを含んでもよい。引伸装置は、ゴデットローラアセンブリの間に設けられてもよく、オイルローラアセンブリによって集束糸を給油するオイルローラアセンブリを更に含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るナイロン66中空繊維の製造方法の工程流れ図である。
図2図1に示す工程170の工程流れ図である。
図3】本発明の別の実施形態に係る工程170の工程流れ図である。
図4】本発明の更に1つの実施形態に係るナイロン66中空繊維の製造方法の工程流れ図である。
図5】本発明の更に別の実施形態に係るナイロン66中空繊維の生産設備を示す模式図である。
図6図5に示す吸気装置を示す模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<ナイロン66中空繊維の製造方法>
本発明の一実施形態に係るナイロン66中空繊維の製造方法の工程流れ図である図1を参照されたい。図1において、ナイロン66中空繊維の製造方法は、工程110と、工程120と、工程130と、工程140と、工程150と、工程160と、工程170と、工程180と、を備える。
【0017】
工程110では、複数のナイロン66樹脂粒子を提供する。ナイロン66樹脂粒子は、重量平均分子量が30000〜50000であってもよく、分子量の多分散指数(polydispersity index;PDI)が1.5〜2.5であってもよい。ナイロン66樹脂粒子の硫酸相対粘度HAは、3.2〜3.4であってもよく、3.2より小さくなると、製造したナイロン66中空繊維の強度が低くすぎるが、3.4より大きくなると、紡糸液が紡糸液の管路内における滞留時間が長すぎて紡糸に不利である。ナイロン66樹脂粒子の水分率を500ppm〜2000ppmにしてもよい。これにより、ナイロン66樹脂粒子の水分率がちょうどよくなり、好ましい紡糸物性が得られ、また糸の断裂及びナイロン66の分解確率を低下させることができる。
【0018】
工程120では、ナイロン66樹脂粒子を溶融させて、紡糸液を形成する溶融工程を行う。溶融工程は、押出機内で290℃〜295℃の温度で行われてもよい。温度が290℃より低くなると、押出機の電流が大きくなり、ナイロン66樹脂粒子の溶融効果が不良であるが、温度が295℃を超えると、ナイロン66樹脂粒子が開裂されるので紡糸できなくなる。
【0019】
工程130では、紡糸液に中空糸用紡糸口金を通過させて、複数の中空紡糸口糸を形成する吐糸工程を行う。
【0020】
工程140では、吸気する方式で中空紡糸口糸から熱を奪い、中空紡糸口糸を一応硬化させて、複数の中空半硬化糸を形成する吸気工程を行う。これにより、中空紡糸口糸の過度の膨潤による仕上げたナイロン66中空繊維の中空口径が小さすぎることを避け、更に、中空紡糸口糸の急速冷却による仕上げたナイロン66中空繊維の強度の大幅低下を避けることができる。
【0021】
工程150では、16℃〜22℃の温度の冷却風を提供し、中空半硬化糸を冷却し硬化させて、複数の硬化糸を形成する冷却工程を行う。これにより、冷却風の温度はちょうどよくなる。温度が16℃より低くなると、冷却が速すぎで分子配向が影響されやすいが、温度が22℃より高くなると、冷却不足により引伸しにくくなりやすい。冷却風は、風速が0.55m/s〜0.75m/sであってもよい。
【0022】
工程160では、硬化糸を集束しかつ集束された糸に対し給油し、集束糸を形成する集束給油工程を行う。硬化糸への給油については、従来の技術であるので、ここで詳しく説明しない。
【0023】
工程170では、集束糸を延伸して、延伸糸を形成する引伸工程を行う。
【0024】
図1に示す工程170の工程流れ図である図2を参照されたい。図2において、工程170は、工程171と、工程172と、工程173と、工程174と、工程175と、工程176と、を含む。
【0025】
工程171は、第1のサブの引伸工程であり、580m/min〜780m/minの回転速度で常温下で集束糸を延伸してもよい。工程172は、第2のサブの引伸工程であり、615m/min〜815m/minの回転速度、55℃〜65℃の温度で集束糸を延伸してもよい。工程173は、第3のサブの引伸工程であり、1700m/min〜2300m/minの回転速度、130℃〜150℃の温度で集束糸を延伸してもよい。工程174は、第4のサブの引伸工程であり、2600m/min〜3200m/minの回転速度、200℃〜220℃の温度で集束糸を延伸してもよい。工程175は、第5のサブの引伸工程であり、2950m/min〜3350m/minの回転速度、210℃〜230℃の温度で集束糸を延伸してもよい。工程176は、第6のサブの引伸工程であり、2780m/min〜3180m/minの回転速度、170℃〜190℃の温度で集束糸を延伸してもよい。工程171〜工程176の多段延伸により、仕上げたナイロン66中空繊維の強度を更に向上させることができ、また、熱定型によって集束糸の内応力を緩むことが仕上げたナイロン66中空繊維の中空率の安定化に役立つ。
【0026】
本発明の別の実施形態に係る工程170の工程流れ図である図3を参照されたい。図3において、工程170は、工程171aと、工程172aと、工程173aと、工程174aと、工程175aと、工程176aと、工程177aと、を含む。工程171aは第1のサブの引伸工程であり、工程173aは第2のサブの引伸工程であり、工程174aは第3のサブの引伸工程であり、工程175aは第4のサブの引伸工程であり、工程176aは第5のサブの引伸工程であり、工程177aは第6のサブの引伸工程である。第1のサブの引伸工程〜第6のサブの引伸工程については、ここで詳しく説明しないので、上記を参照されたい。図3に示す実施形態は、1つのオイルローラアセンブリによって集束糸を給油するサブのオイルローラ給油工程である工程172aが加えられることに、図2に示す実施形態と異なっている。サブのオイルローラ給油工程をサブの引伸工程の間に行う(本実施形態では、第1と第2のサブの引伸工程との間に行われるが、他の実施形態では、他のサブの引伸工程の間に行われてもよい)ことによって、給油の均一性を強化することができ、集束糸が後のサブの引伸工程において切れないように役立ち、歩留まりを向上させることができる。
【0027】
また図1を参照されたい。工程180では、延伸糸を円柱部材に巻き付けて、ナイロン66中空繊維を取得する巻取工程を行う。巻取工程では、2800m/min〜3200m/minの回転速度で常温下で行われてもよい。これにより、ナイロン66中空繊維をケーキ状に形成することができ、後で容易に外装や運送できる。また、工程170と工程180との組み合わせにより、仕上げたナイロン66中空繊維に、例えば、強度又は延伸率等の必要な物理的な性質を与えることができる。
【0028】
本発明の更に1つの実施形態に係るナイロン66中空繊維の製造方法の工程流れ図である図4を参照されたい。図4には、工程100及び工程105が加えられることに、図1に示す製造方法と異なっている。
【0029】
工程100では、ナイロン66樹脂粒子の硫酸相対粘度を3.2〜3.4にする粘度調整工程を行う。購入又は製造されたナイロン66樹脂粒子の硫酸相対粘度値が前記範囲から外れた場合、仕上げたナイロン66中空繊維の歩留まり及び物性を向上させるために、工程110を行う前に、先に工程100を行ってもよい。
【0030】
工程105では、ナイロン66樹脂粒子の水分率を500ppm〜2000ppmにする水分調整工程を行う。購入又は製造されたナイロン66樹脂粒子の水分率が前記範囲から外れた場合、仕上げたナイロン66中空繊維の歩留まり及び物性を向上させるために、先に工程105を行ってもよい。
【0031】
工程110〜工程180については、ここで詳しく説明しないので、上記を参照されたい。
【0032】
<ナイロン66中空繊維の生産設備>
本発明の更に別の実施形態に係るナイロン66中空繊維の生産設備を示す模式図である図5を参照されたい。この生産設備は、図1に示すナイロン66中空繊維の製造方法を実施することに用いられる。ナイロン66中空繊維の生産設備は、押出機510と、紡糸液の管路520と、紡糸箱530と、吸気室540と、冷却室550と、集束給油装置560と、引伸装置570と、巻取装置580と、を備える。押出機510は、材料供給槽511と、サーボモータ512と、を含む。紡糸液の管路520が押出機510と連通する。紡糸箱530は、一端が紡糸液の管路520と連通し、他端が複数の中空糸用紡糸口金531を含む。吸気室540が紡糸箱530の中空糸用紡糸口金531が設けられた一端と接続し、且つ吸気装置541と接続し、吸気装置541によって吸気室540を吸気する。また、図5に示す吸気装置を示す斜視模式図である図6を参照されたい。吸気装置541は、複数の吸気管541aと、吸気動力源541bと、を含む。本実施形態において、吸気管541aの数が4本であり、且つ吸気動力源541bが水流による吸気ポンプである。図5に示すように、吸気装置541の吸気管541aの管口を異なる中空糸用紡糸口金531の間に設けることで、中空紡糸口糸の過度の膨潤を避けることに寄与し、仕上げたナイロン66中空繊維の中空率を維持することに役立つ。冷却室550は、一端が吸気室540と接続し、且つ送風装置551と接続し、送風装置551によって冷却室550に16℃〜22℃の温度、0.55m/s〜0.75m/sの風速の冷却風を提供し、図5において矢印551aで冷却風の方向を表示する。集束給油装置560が冷却室550の吸気室540から離れる端に設けられ、引伸装置570が集束給油装置560の冷却室550に対向する他端に隣接して設けられる(即ち、集束給油装置560の冷却室550から離れる端に隣接して設けられる)。本実施形態において、引伸装置570は、第1のゴデットローラアセンブリ571と、オイルローラアセンブリ572と、第2のゴデットローラアセンブリ573と、第3のゴデットローラアセンブリ574と、第4のゴデットローラアセンブリ575と、第5のゴデットローラアセンブリ576と、第6のゴデットローラアセンブリ577と、を含む。巻取装置580は、引伸装置570の集束給油装置560に対向する他端(即ち、引伸装置570の集束給油装置560から離れる端)に隣接して配置され、円柱部材581を含む。本発明の一実施形態によると、吸気室540の高度d1を15cm〜30cmにし、冷却室550の高度d2を1.5m〜2.1mにしてもよい。これにより、ナイロン66中空繊維の中空率の向上と強度の維持とのバランスに寄与する。本発明の一実施形態によると、第2のゴデットローラアセンブリ573、第3のゴデットローラアセンブリ574、第4のゴデットローラアセンブリ575、第5のゴデットローラアセンブリ576及び第6のゴデットローラアセンブリ577が加熱機能を兼ね備えてよもい。これにより、熱定型によって集束糸の内応力を緩むことができ、仕上げたナイロン66中空繊維の中空率の安定化に役立つ。
【0033】
ナイロン66中空繊維を製造する場合、ナイロン66樹脂粒子を材料供給槽511から押出機510へ投入し、押出機510によってナイロン66樹脂粒子を溶融させて、紡糸液を形成し、押出機510の温度を290℃〜295℃にしてもよく、且つサーボモータ512によって押出機510内のスクリュ(図示せず)動かせ、紡糸液を押出機510から絞り出して紡糸液の管路520に入らせ、紡糸液が紡糸箱530に入る前に温度の低下による凝固を避けるように、紡糸液の管路520の温度が290℃〜295℃に抑えられる。続いて、紡糸液が紡糸液の管路520から紡糸箱530に流れ、中空糸用紡糸口金531を通して複数の中空紡糸口糸を形成する。この場合、吸気装置541によって吸気室540に対して吸気することで、中空紡糸口糸から熱を奪い、中空紡糸口糸を一応硬化させて、複数の中空半硬化糸を形成することができ、吸気装置541の吸気レートを5m/s〜12m/sにしてもよい。続いて、送風装置551による冷却風で、中空半硬化糸を冷却し硬化させて、複数の硬化糸を形成し、集束給油装置560によって硬化糸を集束しかつ集束された糸に対し給油し、集束糸を形成し、引伸装置570における第1のゴデットローラアセンブリ571、第2のゴデットローラアセンブリ573、第3のゴデットローラアセンブリ574、第4のゴデットローラアセンブリ575、第5のゴデットローラアセンブリ576及び第6のゴデットローラアセンブリ577によって集束糸を延伸し、引伸装置570におけるオイルローラアセンブリ572によって集束糸を給油して、延伸糸を形成する。第1のゴデットローラアセンブリ571の回転速度を580m/min〜780m/minにしてもよい。第2のゴデットローラアセンブリ573の回転速度を615m/min〜815m/minに、温度を55℃〜65℃にしてもよい。第3のゴデットローラアセンブリ574の回転速度を1700m/min〜2300m/minに、温度を130℃〜150℃にしてもよい。第4のゴデットローラアセンブリ575の回転速度を2600m/min〜3200m/minに、温度を200℃〜220℃にしてもよい。第5のゴデットローラアセンブリ576の回転速度を2950m/min〜3350m/minに、温度を210℃〜230℃にしてもよい。第6のゴデットローラアセンブリ577の回転速度を2780m/min〜3180m/minに、温度を170℃〜190℃にしてもよい。最後に、巻取装置580によって、2800m/min〜3200m/minの回転速度で、延伸糸を円柱部材581に巻き付けて、ナイロン66中空繊維を取得する。
【0034】
<ナイロン66中空繊維>
本発明に係るナイロン66中空繊維は、前記ナイロン66中空繊維の製造方法とナイロン66中空繊維の生産設備によって製造されることができる。ナイロン66中空繊維の中空率が8%〜12%でもあるが、従来のナイロン66中空繊維の中空率が約1%〜3%である。本発明に係る製造方法と生産設備により、ナイロン66中空繊維の中空率を大幅に向上させることができる。また、本発明に係るナイロン66中空繊維の強度が7.0g/d〜9.0g/dであり、延伸率が20%〜26%でもあり、ナイロン66中空繊維が高い中空率を有する前提で、依然としてその強度、延伸率等の物性を維持できることが判明される。
【0035】
<実施例と比較例>
実施例1:市販のナイロン66樹脂粒子に対して粘度調整工程を行った。即ち、ナイロン66樹脂粒子をドライバレルに置き、加熱器によって加熱された、温度175℃の窒素ガスを800Nm3/hrの速度でドライバレルに入れ、バレル槽における露点を−20℃にして、ナイロン66樹脂粒子を硬化重合させ、硬化重合時間を24時間にし、ナイロン66樹脂粒子の硫酸相対粘度を3.2〜3.4にした。続いて、水分調整工程を行った。即ち、粘度調整工程がなされたナイロン66樹脂粒子を窒素ガス条件で、90℃〜100℃の温度でドライし、ナイロン66樹脂粒子の水分率を500ppm〜2000ppmにした。粘度調整工程と水分調整工程がなされたナイロン66樹脂粒子を図5に示す生産設備によって紡糸し、押出機510の温度を290℃〜295℃に設定し、紡糸液の管路520と紡糸箱530との温度を290℃〜295℃にし、吸気装置541が5m/sec〜12m/secの吸気レートで吸気室540を吸気するようにし、送風装置551が18℃、風速0.55m/sの冷却風を提供するようにする。第1のゴデットローラアセンブリ571の回転速度を680m/minにし、第2のゴデットローラアセンブリ573の回転速度を715m/minに、温度を60℃にし、第3のゴデットローラアセンブリ574の回転速度を2000m/minに、温度を140℃にし、第4のゴデットローラアセンブリ575の回転速度を2900m/minに、温度を210℃にし、第5のゴデットローラアセンブリ576の回転速度を3150m/minに、温度を220℃にし、第6のゴデットローラアセンブリ577の回転速度を2980m/minに、温度を180℃にしてもよい。巻取装置580の回転速度を3000m/minにし、これにより、仕様235/72のナイロン66中空繊維を取得した。実施例1の工程条件については、下記表1に示す。説明すべきなのは、前記仕様では、235がナイロン66中空繊維が中実である場合に有すべきなデニール(Denier)を表す。実施例1では、ナイロン66中空繊維が中空であるため、実際のデニールが235より低く、実施例1の実際のデニールについては、下記表2を参照されたい。
【0036】
比較例1:
比較例1は、紡糸箱530の中空糸用紡糸口金531を円形糸用紡糸口金に交換し(糸用紡糸口金における紡糸孔の形状も数も変わった)、吸気装置541によって吸気室540を吸気することなく、且つ引伸装置570におけるオイルローラアセンブリ572によって集束糸を給油することがないことに、実施例1と異なっている。他の工程や条件は、下記表1に示すように、実施例1と同じようにして、仕様235/68のナイロン66中実繊維を取得した。
【0037】
比較例2:
比較例2は、吸気装置541によって吸気室540を吸気することなく、且つ引伸装置570におけるオイルローラアセンブリ572によって集束糸を給油することがないことに、実施例1と異なっている。他の工程と条件は、下記表1に示すように、実施例1と同じようにして、仕様235/72のナイロン66中空繊維を取得した。
【表1】
【0038】
実施例1、比較例1及び比較例2について、実際のデニール、強度、延伸率及び中空率の測定を行った。実際のデニールはASTM D1907−2010規格に基づいて測定され、強度はASTM2256規格に基づいて測定され、延伸率はASTM2256規格に基づいて測定され、中空率は走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)によって実施例1及び比較例2のナイロン66中空繊維の断面のSEM写真を得て、ナイロン66中空繊維の中心口径及び最大外径を測定し、中空率(%)=(中心口径/最大外径)*100%によって測定された。測定の結果を表2に示す。
【表2】
【0039】
表2から、実施例1での中空率が比較例2より遥かに大きいことがわかったため、本発明に係るナイロン66中空繊維の製造方法及び生産設備により、ナイロン66中空繊維の中空率を効果的に向上させることができることは判明される。実施例1での強度が比較例1より優れ、延伸率が比較例1に比肩でき、本発明に係るナイロン66中空繊維が高い中空率を有する場合にも、強度と延伸率等の物性を維持でき、ナイロン66中実繊維に比肩できる。
【0040】
実施例2
実施例1のナイロン66中空繊維を仕様450/144のエア・テクスチャード・ヤーン(AIR−TEXTURE YARN;ATY)に更に加工し、編んで、縦糸密度*横糸密度が49*35(単位:本/インチ)の織物を得た。
【0041】
比較例3:
。。比較例1のナイロン66中実繊維を仕様500/136のエア・テクスチャード・ヤーンに更に加工し、編んで、縦糸密度*横糸密度が49*35(単位:本/インチ)の織物を得た。
【0042】
実施例2と比較例3との織物について、耐摩擦性(Taber Abrasion)、引裂強度(Tearing Strength)及び引張強度(Tensile Strength)の測定を行った。耐摩擦性はASTMD‐3884(2000 cycle)規格に基づいて測定され、引裂強さはISO 13937‐2規格に基づいて測定され、引張り強さはISO 13934‐1規格に基づいて測定された。測定結果を表3に示す。
【表3】
【0043】
表3から、実施例2の織物はナイロン66中空繊維で製造されたエア・テクスチャード・ヤーンにより織られ、比較例3の織物はナイロン66中実繊維で製造されたエア・テクスチャード・ヤーンにより織られたが、実施例2のエア・テクスチャード・ヤーンのデニールが比較例3より小さいが、実施例2の織物の耐摩擦性と引裂強度が比較例3より優れ、引張強度が比較例3より僅かに見劣りすることが分かった。本発明に係るナイロン66中空繊維で製造された織物が軽量化の要求を満足するとともに、引裂強度と引張強度を維持でき、且つ優れた耐摩擦性を有することが容易に判明される。
【0044】
本発明を実施形態で前述の通り開示したが、これは本発明を限定するためのものではなく、当業者であれば、本発明の精神と範囲から逸脱しない限り、各種の変更や修正を加えることができる。従って、本発明の保護範囲は、下記添付の特許請求の範囲で指定した内容を基準とするものである。
【符号の説明】
【0045】
100、105、110、120、130、140、150、160、170、180、171〜176、171a〜177a 工程
510 押出機
511 材料供給槽
512 サーボモータ
520 紡糸液の管路
530 紡糸箱
531 中空糸用紡糸口金
540 吸気室
541 吸気装置
541a 吸気管
541b 吸気動力源
550 冷却室
551 送風装置
551a 矢印
560 集束給油装置
570 引伸装置
571 第1のゴデットローラアセンブリ
572 オイルローラアセンブリ
573 第2のゴデットローラアセンブリ
574 第3のゴデットローラアセンブリ
575 第4のゴデットローラアセンブリ
576 第5のゴデットローラアセンブリ
577 第6のゴデットローラアセンブリ
580 巻取装置
581 円柱部材
d1、d2 高度
図1
図2
図3
図4
図5
図6