特許第6289529号(P6289529)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6289529
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】車載用灰皿
(51)【国際特許分類】
   B60N 3/08 20060101AFI20180226BHJP
【FI】
   B60N3/08
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-79647(P2016-79647)
(22)【出願日】2016年4月12日
(65)【公開番号】特開2017-190015(P2017-190015A)
(43)【公開日】2017年10月19日
【審査請求日】2016年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】594174987
【氏名又は名称】株式会社セイワ
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】岩間 巧
【審査官】 小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3082990(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0098031(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 3/08
A24F 19/14
B65F 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部開口及び下部開口を有する筒形状の本体部と、
前記上部開口と前記下部開口をそれぞれに開閉する上蓋及び下蓋と、
前記本体部に設けられ、前記上蓋または前記下蓋を選択的に開放可能とする切換スイッチと、
を具備することを特徴とする車載用灰皿。
【請求項2】
請求項1記載の車載用灰皿であって、
前記上蓋及び前記下蓋が前記本体部に回転自在にヒンジ結合され、
前記上蓋及び前記下蓋がそれぞれ上蓋付勢部材と下蓋付勢部材とにより開方向に付勢され、
前記上蓋及び前記下蓋が上蓋係止解除ボタンと下蓋係止解除ボタンとによりそれぞれ付勢力に抗して閉じた状態に係止され、
前記切換スイッチは、前記本体部にスライド自在に設けられて、一方のスライド側で前記上蓋係止解除ボタンの係止解除を許可するとともに前記下蓋係止解除ボタンの係止解除を不能とし、他方のスライド側で前記上蓋係止解除ボタンの係止解除を不能とするとともに前記下蓋係止解除ボタンの係止解除を許可することを特徴とする車載用灰皿。
【請求項3】
請求項2の車載用灰皿であって、
前記切換スイッチは、前記他方のスライド側で表出する着色部を有することを特徴とする車載用灰皿。
【請求項4】
請求項または3に記載の車載用灰皿であって、
前記下蓋は、閉蓋位置から前記下蓋付勢部材の付勢力により90度以上回転された開蓋位置に保持されることを特徴とする車載用灰皿。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用灰皿に関する。
【背景技術】
【0002】
後付の車載用蓋付灰皿として、上面の開口した有底筒状の本体部の開口部に、蓋体を開閉可能にヒンジ結合したものが知られている(特許文献1等参照)。車載用灰皿は、開口部の内側壁部に、煙草おき部や防煙部が形成されている。この車載用蓋付灰皿は、蓋体を常時開方向に付勢し、この付勢力に抗して蓋体を閉じた時に閉蓋状態とするロック手段を有する。車載用灰皿は、閉蓋状態とすることにより容器本体部の内部が密閉され、煙草の火を酸欠消火、煙や臭気の漏れを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3141193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の車載用灰皿は、吸殻を捨てる際には、蓋体を開放して、逆さに、すなわち蓋体側を下向きにする。このとき、車載用灰皿は、本体部の内側に煙草おき部や防煙部があるため、灰や吸殻が引っ掛かり捨てづらく、これら灰や吸殻が容易に排出できないことで、手を汚す虞がある。これに対し、本体部の底を開放する構造とすればよいが、単に底を開放させる構造では、誤って開放させた場合、車室内を汚す虞もあり、実現に至っていなかった。
【0005】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、誤って底を開放させることがなく、車室内や手を汚さずに、容易に灰や吸殻を捨てることができる車載用灰皿を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載の車載用灰皿100は、上部開口29及び下部開口31を有する筒形状の本体部11と、
前記上部開口29と前記下部開口31をそれぞれに開閉する上蓋13及び下蓋15と、
前記本体部11に設けられ、前記上蓋13または前記下蓋15を選択的に開放可能とする切換スイッチ27と、
を具備することを特徴とする。
【0007】
この車載用灰皿100では、切換スイッチ27が、上蓋13または下蓋15の開放を選択的に許可する。喫煙による通常の使用時、切換スイッチ27は、上蓋13の開放を許可する位置に配置される。車載用灰皿100は、喫煙時、上蓋13が開かれ、灰や吸殻が本体部11に捨てられる。この状態で、切換スイッチ27は、下蓋15の開放を不能としている。車載用灰皿100は、喫煙が終われば、上蓋13が閉められる。車載用灰皿100は、本体部11の清掃時、切換スイッチ27を、下蓋15の開放を許可する位置に配置させる。これにより、下蓋15の開放が可能となる。このとき、上蓋13の開放は不要であり開放が不能となる。本体部11は、下蓋15を開放することにより、内部に収容状態の灰や吸殻を引っ掛かり無く落下させて容易に廃棄することができる。
【0008】
本発明の請求項2記載の車載用灰皿100は、請求項1記載の車載用灰皿100であって、
前記上蓋13及び前記下蓋15が前記本体部11に回転自在にヒンジ結合され、
前記上蓋13及び前記下蓋15がそれぞれ上蓋付勢部材65と下蓋付勢部材95とにより開方向に付勢され、
前記上蓋13及び前記下蓋15が上蓋係止解除ボタン23と下蓋係止解除ボタン25とによりそれぞれ付勢力に抗して閉じた状態に係止され、
前記切換スイッチ27は、前記本体部11にスライド自在に設けられて、一方のスライド側で前記上蓋係止解除ボタン23の係止解除を許可するとともに前記下蓋係止解除ボタン25の係止解除を不能とし、他方のスライド側で前記上蓋係止解除ボタン23の係止解除を不能とするとともに前記下蓋係止解除ボタン25の係止解除を許可することを特徴とする。
【0009】
この車載用灰皿100では、ヒンジ結合により回転自在となった上蓋13と下蓋15とが、上蓋付勢部材65と下蓋付勢部材95との付勢力に抗して、上蓋係止解除ボタン23と下蓋係止解除ボタン25とにより上部開口29と下部開口31を閉鎖した状態で保持される。切換スイッチ27は、一方のスライド側にスライド操作されると、上蓋係止解除ボタン23の係止解除を許可する。このとき、切換スイッチ27は、下蓋係止解除ボタン25の係止解除を不能にロック状態とする。また、切換スイッチ27は、上蓋13を閉じた後、他方のスライド側にスライド操作されると、上蓋係止解除ボタン23の係止解除を不能とする。このとき、切換スイッチ27は、下蓋係止解除ボタン25の係止解除を許可しロック解除とする。このように、切換スイッチ27は、スライド方向両側の2位置で、上蓋13と下蓋15との係止を選択的に解除可能とする。車載用灰皿100は、喫煙による使用状態から、下蓋15を開放するには、上蓋13を閉鎖する手順と、切換スイッチ27を他方のスライド側にスライドしロック解除する手順と、下蓋係止解除ボタン25を操作する手順との3段階の手順を踏まなければならない。これにより、車載用灰皿100は、誤って下蓋係止解除ボタン25を操作することにより即座に下蓋15が開放してしまう誤操作を生じにくくしている。
【0010】
本発明の請求項3記載の車載用灰皿100は、請求項2の車載用灰皿100であって、
前記切換スイッチ27は、前記他方のスライド側で表出する着色部37を有することを特徴とする。
【0011】
この車載用灰皿100では、切換スイッチ27が、他方のスライド側に配置されると、着色部37が表出する。着色部37は、下蓋係止解除ボタン25を操作すれば、即座に下蓋15が開放される状態であることを知らせる。車載用灰皿100は、例えば、切換スイッチ27の着色部37を赤色とすることにより、下蓋15が開放されることによって、灰や吸殻が即座に落下することをユーザに注意喚起することができる。
【0012】
本発明の請求項4記載の車載用灰皿100は、請求項または3に記載の車載用灰皿100であって、
前記下蓋15は、閉蓋位置から前記下蓋付勢部材95の付勢力により90度以上回転された開蓋位置に保持されることを特徴とする。
【0013】
この車載用灰皿100では、下蓋15が下蓋付勢部材95により開放されると、下蓋15は、閉蓋位置から90度以上回転された開蓋位置に配置される。開放状態に保持された下蓋15は、下部開口31の直下よりも下部開口31の半径方向外側に配置される。本体部11は、灰や吸殻を廃棄するとき、振られることが予想される。落下途中の灰や吸殻は、本体部11が振られると、下部開口31から半径方向外側に飛散する場合がある。このような場合であっても、車載用灰皿100は、下蓋15が下部開口31の直下よりも半径方向外側に保持されるので、落下途中の灰や吸殻が下蓋15に干渉することを抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る請求項1記載の車載用灰皿によれば、切換スイッチによって上蓋と下蓋とを選択的に開放の許可をすることから、喫煙中など通常使用時に誤って底を開放させることがなく、車室内や手を汚さず、そして、容易に灰や吸殻を捨てることができる。
【0015】
本発明に係る請求項2記載の車載用灰皿によれば、切換スイッチのスライド操作により上蓋または下蓋を簡素な構造で選択的に開放可能とすることができるとともに、開放されない下蓋または上蓋は、この切換スイッチによってロック状態とすることができる。そして、通常時に開放させない下蓋の下蓋係止解除ボタンを誤操作しにくくでき、灰や吸殻にて車室内を汚すことがない。
【0016】
本発明に係る請求項3記載の車載用灰皿によれば、下蓋係止解除ボタンの係止が解除可能となった状態を、着色部の表出によりユーザに明示させることができ、さらに誤操作の防止となる。
【0017】
本発明に係る請求項4記載の車載用灰皿によれば、灰や吸殻を捨てるとき、本体部を振っても下蓋が90度未満になることがなく、灰や吸殻が下蓋に当たって飛散することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る車載用灰皿の分解斜視図である。
図2】(a)は切換スイッチが一方のスライド側(下蓋ロック側)に配置された要部断面図、(b)は切換スイッチが他方のスライド側(下蓋ロック解除側)に配置された要部断面図である。
図3】切換スイッチが一方のスライド側(下蓋ロック側)に配置された車載用灰皿の縦断面図である。
図4】上蓋が開放された車載用灰皿の縦断面図である。
図5】切換スイッチが他方のスライド側(下蓋ロック解除側)に配置された車載用灰皿の縦断面図である。
図6】下蓋が開放された車載用灰皿の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の実施形態に係る車載用灰皿の分解斜視図である。なお、本実施形態において、上下前後左右の方向は、図1に示した矢印の方向に従う。
本実施形態に係る車載用灰皿100は、本体部11と、上蓋13と、下蓋15と、を有する。
【0020】
本体部11は、筒部17と、ボタン取付座19と、周縁リング21と、上蓋係止解除ボタン23と、下蓋係止解除ボタン25と、切換スイッチ27と、を有する。筒部17は、筒形状、本実施形態では略円筒形に形成され、それぞれ略円形の上部開口29及び下部開口31を有する。筒部17の前面側には、上部開口29と下部開口31とに渡って取付座嵌合凹部33が形成される。取付座嵌合凹部33は、ボタン取付座19をネジ固定する座部となる。ボタン取付座19は、切換スイッチ27のスライドボタン35及び着色部37(図2参照)を表出させる窓部39を有する。切換スイッチ27は、取付座嵌合凹部33とボタン取付座19との間で上下方向にスライド自在に保持される。
【0021】
ボタン取付座19の上下方向略中央部分には、一対の揺動軸41が左右に設けられる。揺動軸41は、上下に長い短冊の下蓋係止解除ボタン25の上下方向略中央を揺動自在に支持する。
【0022】
上部開口29には、周縁リング21が嵌着される。周縁リング21は、後部に雌ヒンジ部43を一体に有する。雌ヒンジ部43は、周縁リング21が筒部17に嵌着されると、筒部17に形成されたヒンジ収容部45に収容される。周縁リング21の後部内方には、前方下方に向かって傾斜する半円板形の支持板兼火消し板22が突設される。
【0023】
本体部11は、上部開口29の前部内方に、円筒形火消し部47(図2参照)を有する。円筒形火消し部47は、軸線を含む面で半割とした固定側半割体49と、可動側半割体51と、からなる。固定側半割体49は、筒部17の上部開口29の前部内面に設けられる。
【0024】
周縁リング21と筒部17との間には、上蓋係止解除ボタン23が前後方向にスライド自在に保持される。上蓋係止解除ボタン23は、付勢部材としての圧縮バネである上ボタン用バネ53により前方向(本体部11から半径方向外側へ突出する方向)に付勢される。上ボタン用バネ53は、バネ保持板55により上蓋係止解除ボタン23に保持される。この上蓋係止解除ボタン23は、上記の可動側半割体51と一体に形成される。可動側半割体51は、上蓋係止解除ボタン23が上ボタン用バネ53に付勢された状態で固定側半割体49と接して一体な筒体となる。
【0025】
上蓋13は、上蓋本体57と、上蓋カバー59と、を有する。上蓋本体57は、上記した周縁リング21の雌ヒンジ部43に対し、ヒンジピン61によりヒンジ結合する雄ヒンジ部63を有する。上蓋13は、ヒンジ結合により上部開口29を開閉可能とする。上蓋13は、つる巻きバネよりなる上蓋付勢部材65により開放方向に付勢される。上蓋13の前部下面には、フック爪67が垂設される。フック爪67は、上蓋係止解除ボタン23の係止段部69に係止する。上蓋13は、フック爪67が係止段部69に係止することにより、上蓋付勢部材65の付勢力に抗して閉蓋状態に保持される。このフック爪67と係止段部69(図2参照)との係止は、上蓋係止解除ボタン23が後方へ押されることにより解除される。
【0026】
上蓋カバー59の上面中央には、開口部71が形成される。開口部71の背面には給電用のソーラ電池パネル73が配置される。ソーラ電池パネル73は、充電池等よりなる光源用電源の充電用として用いられる。ソーラ電池パネル73は、上蓋本体57に配置された回路基板75の明暗認識回路に接続される。
【0027】
上蓋本体57には照明用開口部77が形成される。回路基板75の下面には、照明具としての高輝度LED79(図3参照)が実装される。回路基板75の周囲には、電源としてのニッケル水素二次電池などの電池パック74が配置され回路基板75に接続される。また、回路基板75には、電源のオンオフ用のマイクロスイッチ81が接続される。このマイクロスイッチ81は、上蓋13の開蓋時に、筒部17のヒンジ収容部45に起立する突起部83に 接触子85が押圧されてスイッチオンする。
【0028】
高輝度LED79は、上蓋13を開蓋状態とすると、マイクロスイッチ81の接触子85が突起部83に当接してマイクロスイッチ81がオンし、明暗認識回路が駆動を許可すれば、点灯により本体部11の内側を照射する。これにより、暗がりで灰皿を使用する場合には、手明りを得られることになる。また、LEDそのものが消費電力が極めて少ない上に、ソーラ電池パネル73を通じて電池パック74は充電されるため、暗がりにおいて開蓋する毎に照明を得ることができる。高輝度LED79は、上蓋13を閉じれば、マイクロスイッチ81がオフとなり、消灯される。
【0029】
下蓋15は、下部開口31を開閉する。下蓋15は、下蓋本体87と、パッキン89と、金属底板91と、からなる。下蓋本体87は、下部開口31を閉鎖する面に、環状のパッキン89が装着される。パッキン89は、下蓋本体87と下部開口31との間を気密シールする。これにより、パッキン89は、下部開口31と下蓋15との間からの灰の漏れを防止する。金属底板91は、パッキン89に囲まれる下蓋本体87の内側の面に固定される。下蓋本体87は、雄ヒンジ部93を有する。雄ヒンジ部93は、筒部17の下部開口31の後部に設けられた雌ヒンジ部(図示略)にヒンジピン61によりヒンジ結合する。下蓋15は、ヒンジ結合により下部開口31を開閉可能とする。下蓋15は、つる巻きバネよりなる下蓋付勢部材95により開放方向に付勢される。
【0030】
上記した揺動軸41により揺動自在に支持された下蓋係止解除ボタン25は、コイルバネよりなる下ボタン用バネ97により下端26が下蓋15に接近する方向に付勢される。この下蓋係止解除ボタン25の下端26には、下蓋15に向かって突出する下蓋係止爪99(図3参照)が形成される。下蓋係止爪99は、下蓋15の被係止部101に係止する。これにより、下蓋係止解除ボタン25は、下蓋付勢部材95の付勢力に抗して下蓋15を下部開口31に閉じた状態に係止する。
【0031】
車載用灰皿100は、この下蓋15が、下部開口31を閉鎖する閉蓋位置から下蓋付勢部材95の付勢力により90度以上回転された開蓋位置に保持される(図6参照)。
【0032】
図2(a)は切換スイッチ27が一方のスライド側(下蓋ロック側)に配置された要部断面図、(b)は切換スイッチ27が他方のスライド側(下蓋ロック解除側)に配置された要部断面図である。
本体部11にスライド自在に設けられた切換スイッチ27は、上蓋13または下蓋15を選択的に開放可能とする。すなわち、切換スイッチ27は、一方のスライド側(図2(a)の下側)で上蓋係止解除ボタン23の係止解除を許可する。このとき、切換スイッチ27は、図2(a)に示す垂下部103が、下蓋係止解除ボタン25の上端係合部105に当接する。切換スイッチ27は、垂下部103を上端係合部105に当接することにより、下蓋係止解除ボタン25の揺動を規制し、下蓋係止解除ボタン25の係止解除を不能とする。つまり、下蓋15を開放不能にロックする。
【0033】
また、切換スイッチ27は、他方のスライド側(図2(b)の上側)で、図2(b)に示すように、上蓋係止解除ボタン23の凹部107に、上端凸部109を嵌入して上蓋係止解除ボタン23の係止解除を不能とする。このとき、切換スイッチ27は、垂下部103を上端係合部105から離間して下蓋係止解除ボタン25の係止解除を許可する。つまり、下蓋15をロック解除する。
【0034】
また、この切換スイッチ27は、着色部37を有する。着色部37は、切換スイッチ27が他方のスライド側にスライドされることにより上記したボタン取付座19の窓部39から表出する。また、着色部37は、切換スイッチ27が一方のスライド側にスライドされることにより表出せず目視不可能となる。
【0035】
図3は切換スイッチ27が一方のスライド側(下蓋ロック側)に配置された車載用灰皿の縦断面図である。
車載用灰皿100は、通常時(喫煙使用時)、切換スイッチ27が一方のスライド側(下蓋ロック側)に配置されている。
【0036】
図4は上蓋13が開放された車載用灰皿の縦断面図である。
煙草を吸おうとする時、上蓋係止解除ボタン23を押すと、上蓋係止解除ボタン23の係止段部69が上蓋13のフック爪67から離れ、上蓋13が開かれる。同時に、円筒形火消し部47が開閉され、円筒形火消し部47内側に残留する灰や葉が除去される。
【0037】
喫煙が終わり、煙草の火種を消火しようとする時、煙草の先端を円筒形火消し部47内に差込む。これにより、煙草の火種が酸欠消火される。
【0038】
次に、煙草の吸殻を本体部11に投入し、上蓋13を閉める。この時、上蓋13のフック爪67が上蓋係止解除ボタン23の係止段部69を後方に押す。これにより、円筒形火消し部47が開閉され、円筒形火消し部47内側に残留する灰や葉が除去される。すなわち、車載用灰皿100は、上蓋13の開閉時に円筒形火消し部47を開閉するので、円筒形火消し部47内に灰や煙草の葉が詰まることが防止される。
【0039】
図5は切換スイッチ27が他方のスライド側(下蓋ロック解除側)に配置された車載用灰皿の縦断面図である。
車載用灰皿100は、灰や吸殻を捨てる時、切換スイッチ27を他方のスライド側にスライド操作する。すると、上蓋係止解除ボタン23の凹部107に、切換スイッチ27の上端凸部109が嵌入し、上蓋係止解除ボタン23の係止解除が不能となる。同時に、切換スイッチ27は、垂下部103が下蓋係止解除ボタン25の上端係合部105から離間して下蓋係止解除ボタン25の係止解除を許可する。このとき、切換スイッチ27は、着色部37が窓部39から表出する。
【0040】
図6は下蓋15が開放された車載用灰皿の縦断面図である。
切換スイッチ27を他方のスライド側にスライドされた状態、すなわち、着色部37が表出した状態で、下蓋係止解除ボタン25の上部が下蓋付勢部材95の付勢力に抗して押下されると、下蓋係止爪99が、下蓋15の被係止部101から離間する。下蓋15は、下蓋係止爪99による係止が解除されることにより下蓋付勢部材95の付勢力によって開放される。下蓋付勢部材95に付勢された下蓋15は、90度以上の角度で回転された位置で保持される。
【0041】
次に、上記した構成の作用を説明する。
本実施形態に係る車載用灰皿100では、切換スイッチ27が、上蓋13または下蓋15の開放を選択的に許可する。喫煙による通常の使用時、切換スイッチ27は、上蓋13の開放を許可する位置に配置される。車載用灰皿100は、喫煙時、上蓋13が開かれ、灰や吸殻が本体部11に捨てられる。このとき、車載用灰皿100は、下部開口31が下蓋15により塞がれ、捨てられた灰や吸殻を収容する。この状態で、切換スイッチ27は、下蓋15の開放を不能とする。
【0042】
車載用灰皿100は、喫煙が終わると、上蓋13が閉められる。一方、車載用灰皿100は、本体部11の清掃時、切換スイッチ27が、下蓋15の開放を許可する位置に配置される。車載用灰皿100は、下蓋15の開放が可能となる。このとき、上蓋13は、開放が不能となる。本体部11は、下蓋15を開放することにより、収容していた灰や吸殻を引っ掛かり無く落下させて容易に廃棄することができる。下蓋15は、灰や吸殻が除去された後に閉められる。切換スイッチ27は、再び上蓋13の開放が可能となる位置に配置され、次の喫煙時に備え上蓋13を開放可能な状態とする。すなわち、下蓋15は開放不能にロックされる。
【0043】
車載用灰皿100は、ヒンジ結合により回転自在となった上蓋13と下蓋15とが、上蓋付勢部材65と下蓋付勢部材95との付勢力に抗して、上蓋係止解除ボタン23と下蓋係止解除ボタン25とにより上部開口29と下部開口31を閉鎖した状態で保持される。切換スイッチ27は、本体部11にスライド自在に設けられる。切換スイッチ27は、一方のスライド側にスライド操作されると、上蓋係止解除ボタン23の係止解除を許可する。このとき、切換スイッチ27は、下蓋係止解除ボタン25の係止解除を不能(ロック)とする。
【0044】
また、切換スイッチ27は、上蓋13を閉じた後、他方のスライド側にスライド操作されると、上蓋係止解除ボタン23の係止解除を不能とする。このとき、切換スイッチ27は、下蓋係止解除ボタン25の係止解除を許可(ロック解除)する。
このように、切換スイッチ27は、スライド方向両側の2位置で、上蓋13と下蓋15との係止を選択的に解除可能とする。切換スイッチ27は、上蓋13を係止解除可能としているとき、下蓋15を係止解除不能な状態にロックする。
【0045】
従って、車載用灰皿100は、喫煙による使用状態から、下蓋15を開放するには、先ず、上蓋13を閉鎖する手順と、切換スイッチ27を他方のスライド側にスライド(ロック解除)する手順と、下蓋係止解除ボタン25を操作する手順との3段階の手順を踏まなければならない。これにより、車載用灰皿100は、誤って下蓋係止解除ボタン25を操作することにより即座に下蓋15が開放してしまう誤操作を生じにくくしている。その結果、切換スイッチ27のスライド操作により上蓋13または下蓋15を簡素な構造で選択的に開放可能とすることができ、かつ下蓋係止解除ボタン25を誤操作しにくくできる。
【0046】
また、車載用灰皿100は、切換スイッチ27が、他方のスライド側に配置されると、着色部37が表出する。着色部37は、下蓋係止解除ボタン25を操作すれば、即座に下蓋15が開放される状態であることを知らせる。車載用灰皿100は、例えば、切換スイッチ27の着色部37を赤色や蛍光色など周囲の色とは大きく異なる目立つ色やコントラストのある色とすることにより、下蓋15が開放されてしまって、灰や吸殻が即座に落下することをユーザに注意喚起することができる。
【0047】
また、下蓋15は、下蓋付勢部材95により開放されると、閉蓋位置から90度以上回転された開蓋位置に配置される。開放状態に保持された下蓋15は、下部開口31の直下よりも下部開口31の半径方向外側に配置される。本体部11は、灰や吸殻を廃棄する時、振られることが予想される。落下途中の灰や吸殻は、本体部11が振られると、下部開口31から半径方向外側に飛散する場合がある。
【0048】
このような場合であっても、車載用灰皿100は、下蓋15が下部開口31の直下よりも半径方向外側に位置するので、落下途中の灰や吸殻が下蓋15に干渉することを抑制できる。その結果、灰や吸殻を捨てるとき、本体部11を振っても、灰や吸殻が下蓋15に当たって飛散することを防止できる。
【0049】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0050】
例えば上記の構成例では、本体部11が円筒である場合を例に説明したが、本発明の構成は、本体部が角筒であってもよい。また、切換スイッチ27は、上下方向のスライド以外に、左右方向にスライド操作、或いは揺動操作や回転操作されるものとしてもよい。
【0051】
従って、本実施形態に係る車載用灰皿100によれば、誤って底を開放させることがなく、車室内や手を汚さずに、容易に灰や吸殻を捨てることができる。
【符号の説明】
【0052】
11…本体部
13…上蓋
15…下蓋
23…上蓋係止解除ボタン
25…下蓋係止解除ボタン
27…切換スイッチ
29…上部開口
31…下部開口
37…着色部
65…上蓋付勢部材
95…下蓋付勢部材
100…車載用灰皿
図1
図2
図3
図4
図5
図6