(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る鉄道車両用台車1を表した斜視図である。
図2は、
図1に示す板バネ台車1の平面図である。
図3は、
図1に示す板バネ台車1の側面図である。
図1乃至3に示すように、鉄道車両用台車1は、二次サスペンションとなる空気バネ2を介して車体11を支持するための台車枠3として車幅方向(以下、横方向ともいう)に延びる横ばり4を備えているが、横ばり4の横方向両端部から車両長手方向(以下、前後方向ともいう)に延びる側ばりを備えていない。横ばり4の前方及び後方には、横方向に沿って前後一対の車軸5が配置されており、車軸5の横方向両側には車輪6が固定されている。車軸5の横方向両端部には、車輪6よりも横方向外側にて車軸5を回転自在に支持する軸受7が設けられ、その軸受7は軸箱8に収容されている。横ばり4には、電動機9が取り付けられており、その電動機9の出力軸には、車軸5に動力を伝達する減速ギヤが収容されたギヤボックス10が接続されている。なお、横ばり4には、車輪6の回転を制動するためのブレーキ装置(図示せず)も設けられている。
【0014】
横ばり4は、横方向に延びる金属からなる一対の角パイプ12と、それら角パイプ12を接続する金属からなる接続板13,14とを有し、接続板13,14は、角パイプ12に対して溶接やボルト結合等により固定されている。横ばり4の横方向両端部4aには、筒状の接続板14が間隔をあけて一対設けられており、それらの上面に空気バネ台座15が設置されている。なお、横ばり4の横方向長さは、左側の軸箱8と右側の軸箱8との間の距離よりも長い(すなわち、横ばり4は軸箱8よりも車幅方向外方に突出している)。
【0015】
横ばり4の横方向両端部4aは、連結機構16によって軸箱8に連結されている。連結機構16は、軸箱8から一体的に前後方向に沿って延びた軸ばり17を備えている。軸ばり17の端部には、内周面が円筒形状で横方向両側が開口する筒状部18が設けられている。筒状部18の内部空間には、ゴムブッシュ(図示せず)を介して心棒20が挿通されている。横ばり4の横方向両端部4aには、連結機構16を構成する一対の受け座21,22が前後方向に突出して設けられている。一対の受け座21,22は、その上端部が連結板23によって連結されており、その連結板23がボルト24によって角パイプ12に固定されている。受け座21,22には、下方に向けて開口する嵌入溝25が形成されている。嵌入溝25には、心棒20の横方向両端部が下方から嵌入されている。その状態で、嵌入溝25の下側開口を閉鎖するように蓋部材26がボルト(図示せず)により下方から受け座21,22に固定され、心棒20が蓋部材26によって下方から支持されている。
【0016】
横ばり4と軸箱8との間には、前後方向に延びた板バネ30(側部材)が架け渡されており、板バネ30の前後方向中央部30aが横ばり4の横方向両端部4aを支持し、板バネ30の前後方向両端部30cが軸箱8に支持されている。即ち、板バネ30が、一次サスペンションの機能と従来の側ばりの機能とを兼ねている。軸箱8の上端部には支持部材31が取り付けられており、板バネ30の前後方向両端部30cは支持部材31によって下方から支持されている。板バネ30の前後方向中央部30aは、横ばり4の下方に潜り込むように配置されており、横ばり4の横方向両端部4aに設けた当接部材33(
図4参照)が上方から載せられている。
【0017】
板バネ30のうち前後方向中央部30aと前後方向両端部30cとの間の延在部30bは、側面視で前後方向中央部30aに向けて下方に傾斜しており、板バネ30の前後方向中央部30aは、板バネ30の前後方向両端部30cよりも下方に位置している。即ち、板バネ30は、側面視で全体として下方に凸となる弓形状に形成されている。板バネ30の延在部30bの一部は、側面視で連結機構16と重なる位置に配置されている。但し、板バネ30は、連結機構16と隙間をあけて配置されている。具体的には、板バネ30の延在部30bの一部は、一対の受け座21,22で挟まれた空間27を通過し、連結板23の下方を通過して横ばり4の下方位置に至っている。
【0018】
図4は、
図2のIV−IV線断面における横ばり4の当接部材33と板バネ30とを表した要部断面図である。
図5は、
図2のV−V線断面図である。
図4に示すように、横ばり4の横方向両端部4aには、一対の角パイプ12の下面に固定された金属(例えば、一般鋼材)からなる固定板32と、その固定板32の下面に固定された剛性部材(例えば、金属や繊維強化樹脂等で構成された非弾性部材)からなる当接部材33とが設けられており、その当接部材33が板バネ30の下面を支持せずに開放した状態で板バネ30の前後方向中央部30aに上方から載せられて自由接触している。換言すれば、当接部材33は、板バネ30に対して上下方向に固定されない状態で板バネ30の上面に離隔可能に接触している。即ち、当接部材33は、固定具により板バネ30に固定されることなく、横ばり4からの重力による下方荷重とそれに対する板バネ30の反力との接触圧によって板バネ30の上面との接触が保たれた状態となっている。また、
図5に示すように、横ばり4には、当接部材33の横方向両側にて下方に突出する一対のガイド側壁39が互いに距離をあけて設けられており、それらガイド側壁39の間に板バネ30が隙間をあけて配置されている。
【0019】
図4に示すように、板バネ30の前後方向両端部30cは、横ばり4の当接部材33の下面である接触面33aよりも高い位置にある。当接部材33の板バネ30との接触面33aは、側面視で下方に向けて凸となる略円弧形状を呈している。側面視において、当接部材33の接触面33aの曲率は、台車1が車体11を支持していない状態で、板バネ30の当接部材33と接触する部分の曲率よりも大きくなるよう設定されている。また、台車1が車体11を支持した状態では、車体11からの下方荷重によって横ばり4が下方に沈むように板バネ30が弾性変形し、板バネ30の当接部材33と接触する部分の曲率は増加するが、空車時には、当接部材33の接触面33aの曲率が板バネ30の当接部材33と接触する部分の曲率よりも大きい状態が保たれる(
図4の実線)。
【0020】
そして、車体11に乗車する人数が増えて横ばり4に対する下方荷重が増加していくと、板バネ30の当接部材33と接触する部分の曲率が増加していく。即ち、横ばり4に対する下方荷重が増加していくと、板バネ30が弾性変形して当接部材33との接触面積が増加していき、板バネ30の当接部材33との接触箇所から板バネ30の支持部材31との接触箇所までの最短距離はL1からL2へと短くなる(
図4の破線)。そうすると、車体11への乗車率が増加して横ばり4に掛かる下方荷重が増加するにつれて、板バネ30のバネ定数が増加することとなる。よって、乗車率の変化に応じてバネ定数が変化して、乗車率が低いときも高いときも乗り心地の良い車両が実現される。
【0021】
板バネ30は、繊維強化樹脂(例えば、CFRPやGFRP)からなる下層部35と、下層部35よりも薄い金属(例えば、一般鋼材)からなる上層部36とを備えた二層構造である。言い換えると、板バネ30は、繊維強化樹脂からなる板バネ本体部分(下層部35)の上面側を金属(上層部36)で一体的に被覆してなるものである。板バネ30の延在部30bは、前後方向における端部側から中央部側に向けて徐々に肉厚Tが大きくなるよう形成されている。具体的には、板バネ30の延在部30bにおいて、下層部35の肉厚が前後方向における端部側から中央部側に向けて徐々に大きくなり、上層部36の肉厚は一定である。例えば、下層部35の最も薄い部分の厚みが、上層部36の最も薄い部分の厚みの3〜10倍であり、下層部35の最も厚い部分の厚みが、上層部36の最も厚い部分の厚みの5〜15倍である。当接部材33の接触面33aと板バネ30の上面との接触箇所には、遊びをもって上下方向に嵌合する嵌合部である凹凸嵌合構造が設けられている。具体的には、当接部材33の接触面33aの中央部分に上方に窪んだ凹部33bが形成され、板バネ30の上層部36の上面に凹部33bと遊びをもって嵌合する凸部36aが形成されている。
【0022】
図6は、
図3に示す板バネ台車1における板バネ30と軸箱8の支持部材31とを表した要部側面図である。
図6に示すように、軸箱8の上端部には支持部材31が載せられている。支持部材31には、その中央に穴部31aが形成されており、その穴部31aに軸箱8の上に設けた凸部8aが嵌合されている。支持部材31は、下から順に、ゴム板41、金属板42及びゴム板43が互いに接着された状態で積層されてなる。即ち、板バネ30の繊維強化樹脂からなる下層部35に対する支持部材31の接触面43aは、ゴムから形成されている。
【0023】
板バネ30の前後方向両端部30cは、支持部材31に上方から載せられて自由接触している。換言すれば、板バネ30の前後方向両端部30cは、支持部材31に対して上下方向に固定されない状態で支持部材31の上面に接触している。即ち、板バネ30の前後方向両端部30cは、固定具により支持部材31に固定されることなく、板バネ30からの下方荷重とそれに対する支持部材31の反力との接触圧のみによってにより支持部材31の上面との接触が保たれた状態となっている。支持部材31の接触面43a(上面)と板バネ30の下面との接触箇所には、遊びをもって上下方向に嵌合する嵌合部である凹凸嵌合構造が設けられている。具体的には、板バネ30の前後方向両端部30cに下層部35から下方に一体的に突出する凸部35aが形成され、その凸部35aが支持部材31の穴部31aに遊びをもって嵌合されている。
【0024】
以上に説明した構成によれば、横ばり4の当接部材33は、板バネ30の前後方向中央部30aに上方から載せられて板バネ30に対して上下方向に固定されない状態で、板バネ30の上面に自由接触している。さらに、板バネ30の前後方向両端部30cも、軸箱8の支持部材31に上方から載せられて支持部材31に対して上下方向に固定されない状態で、支持部材31の上面に自由接触している。よって、板バネ30と横ばり4との間の支持構造及び板バネ30と軸箱8との間の支持構造が簡素になるとともに、台車1の組立作業性も大幅に向上する。
【0025】
さらに、横ばり4の当接部材33が板バネ30に対して上下方向に固定されずに接触しており、かつ、軸箱8の支持部材31も板バネ30に対して上下方向に固定されずに接触しているので、横ばり4と板バネ30との間及び板バネ30と軸箱8との間に捩り力が伝達されにくくなる。よって、捩り対策として各部材を高強度にしたり台車1を補強したりする必要もなく、台車の軽量化を促進することができる。また、横ばり4と板バネ30と軸箱8との間に捩り力が伝達されにくいので、複数の車輪6のうち一部の車輪6に輪重抜けが発生することも抑止することができる。
【0026】
さらに、繊維強化樹脂は金属と違ってリサイクルが難しいが、他部品と簡単に分離できる板バネ30に繊維強化樹脂を用いているので、他部位の金属からなる部材のリサイクル性を良好に保つことができる。また、板バネ30は、金属からなる被覆材である上層部36を介して当接部材33と接触しており、かつ、板バネ30の繊維強化樹脂からなる下層部35は支持部材31のゴム板43と接触しているため、板バネ30の繊維強化樹脂を保護することができる。
【0027】
また、横ばり4への下方荷重が増加して板バネ30が弾性変形する際には板バネ30の上面側に圧縮応力が生じるが、一般に繊維強化樹脂の圧縮強度はその引張強度に比べて低い。本実施形態では、上層部36は、その圧縮強度が下層部35の繊維強化樹脂の圧縮強度よりも高い金属で形成されている。よって、下層部35に固着された上層部36が、板バネ30の弾性変形時に繊維強化樹脂からなる下層部35を補強する役目を果たすことができる。さらに、板バネ30は、その一部が側面視で連結機構16の受け座21,22と重なるように配置されているので、板バネ30及び連結機構16の上下の占有スペースを抑制することができる。そして、板バネ30の前後方向中央部30aは、板バネ30の前後方向両端部30cよりも下方に位置しているので、横ばり4を低く配置することができ、車両の低床化に寄与することができる。
【0028】
また、当接部材33と板バネ30との接触箇所及び板バネ30と支持部材31との接触箇所に遊びをもって上下方向に嵌合する凹凸嵌合構造が設けられているので、組み付け時の作業性が良好になるとともに、水平方向への位置ズレを防止することができる。なお、当接部材33と板バネ30との間の凹凸嵌合構造を設けずに、板バネ30に対して水平方向にも固定されない状態で当接部材33を板バネ30の上に載せた構成としてもよい。
【0029】
(第2実施形態)
図7は、本発明の第2実施形態に係る板バネ台車の
図4相当の図面である。
図7に示すように、第2実施形態の板バネ台車は、横ばり104の当接部材133の前後方向両端部分に弾性部材52(例えば、ゴム)を設けている。具体的には、当接部材133は、角パイプ12に固定された固定板32の下面に固定された剛性部材(例えば、金属や繊維強化樹脂等で構成された非弾性部材)からなる本体部51と、その本体部51の前後方向両側に隣接して配置された弾性部材52とを備えている。本体部51及び弾性部材52の下面は、側面視で滑らかに連続して下方に向けて凸となる略円弧形状の接触面133aを形成している。これにより、横ばり104に対する下方荷重の増加によって板バネ30が弾性変形して当接部材133の前後方向両端部分に接触しても、当該部分が弾性部材52からなるので、板バネ30への局所的な負荷を良好に緩和することができる。なお、他の構成は前述した第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0030】
(第3実施形態)
図8は、本発明の第3実施形態に係る板バネ台車の
図4相当の図面である。
図8に示すように、第3実施形態の板バネ台車は、横ばり204の当接部材233の下面に板バネ30の上面と面接触する弾性部材152(例えば、ゴム)を設けている。具体的には、当接部材233は、角パイプ12に固定された固定板32の下面に固定された剛性部材(例えば、金属や繊維強化樹脂等で構成された非弾性部材)からなる本体部51と、その本体部51の下面及び前後方向両端を覆う弾性部材152とを備えている。本体部51の下面は、側面視で下方に向けて凸となる略円弧形状を呈し、弾性部材152の下面は、側面視で下方に向けて凸となる略円弧形状の接触面233aを形成している。
【0031】
台車が車体を支持していない状態において、弾性部材152の接触面233a(下面)は、その全体が板バネ30の上面に接触している。そして、台車が車体を支持した状態において、車体に乗車する人数が増えて横ばり204に対する下方荷重が増加すると、板バネ30の前後方向中央部30aの曲率が増加(撓み量が増加)し、弾性部材152の接触面233aが板バネ30の上面に押されて弾性部材152の主に前後方向両側部分が収縮する。逆に、横ばり204に対する下方荷重が減少して板バネ30の前後方向中央部30aの曲率が減少(撓み量が減少)すると、弾性部材152の主に前後方向両側部分が圧縮力の減少により膨張することで、当接部材233の接触面233a全体が板バネ30の上面に面接触した状態が保たれる。よって、当接部材233の接触面233aと板バネ30との間に隙間が生じず、当該隙間にゴミ等が侵入することが防止される。
【0032】
また、横ばり204に対する下方荷重が増加して板バネ30の曲率が増加していくと、弾性部材152の前後方向両側部分と板バネ30との間の接触圧が増加するため、板バネ30の延在部30bの非拘束部分の前後方向長さが実質的に短くなるのと同等の作用が得られ、板バネ30のバネ定数が増加することとなる。よって、乗車率の変化に応じてバネ定数が変化し、乗車率が低いときも高いときも乗り心地の良い車両が実現される。なお、他の構成は前述した第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0033】
(第4実施形態)
図9は、本発明の第4実施形態に係る板バネ台車の
図6相当の図面である。
図9に示すように、第4実施形態の板バネ台車は、板バネ130(側部材)の前後方向両端部130cにおいて繊維強化樹脂からなる下層部35の下面にゴム板61が固着されている。軸箱8の上端部に設けた支持部材131は、下から順に、ゴム板41及び金属板42が積層されてなる。即ち、支持部材131の上面が金属で形成されているが、板バネ130の前後方向両端部130cの下面がゴムで形成されているので、板バネ130の繊維強化樹脂からなる下層部35を良好に保護することができる。なお、他の構成は前述した第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0034】
(第5実施形態)
図10は、本発明の第5実施形態に係る板バネ台車の
図6相当の図面である。
図10に示すように、第5実施形態の板バネ台車は、軸箱8の上端部に設けた支持部材231の上面が側面視で上方に向けて凸である略円弧状に形成されている。具体的には、支持部材231は、下から順に、ゴム板41、金属板42及びゴム板143が積層されてなり、その最上層のゴム板143の上面143aが側面視で略円弧形状に形成されている。即ち、側面視において、支持部材231の上面143aの曲率は、板バネ30の支持部材231と接触する部分(前後方向両端部30c)の下面の曲率よりも大きい。これにより、板バネ30の当接部材33(
図4)との接触箇所から板バネ30の支持部材231との接触箇所までの最短距離は、横ばり4(
図4)に対する下方荷重が増加して板バネ30が弾性変形するにつれて短くなる。そうすると、車体11への乗車率が増加するにつれて板バネ30のバネ定数が増加することとなる。よって、乗車率の変化に応じてバネ定数が変化して、乗車率が低いときも高いときも乗り心地の良い車両を実現することができる。なお、他の構成は前述した第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0035】
(参考形態)
図11は、参考形態に係る台車301の
図3相当の図面である。
図11に示すように、参考形態の台車301は、板バネ30の代わりに、剛性部材(例えば、金属や繊維強化樹脂等で構成された非弾性部材)からなり前後方向に延びる長尺部材330(側部材)を用いている。長尺部材330は、例えば、筒形状を有している。長尺部材330は、横ばり304の横方向両端部304aを支持する前後方向中央部330aと、軸箱8に支持されて中央部330aよりも高い位置にある前後方向両端部330cと、中央部330aと両端部330cとを接続する傾斜部330bとを有している。即ち、長尺部材330は、中央部330aとその前後にある一対の傾斜部330bとで凹部を構成している。長尺部材330の両端部330cと軸箱8との間には、一次サスペンションとしてコイルバネ331が介装されている。長尺部材330の傾斜部330bの一部は、側面視で連結機構16と重なる位置に配置されている。具体的には、長尺部材330の傾斜部330bの一部は、一対の受け座21,22で挟まれた空間27(
図1参照)を挿通している。
【0036】
横ばり304の横方向両端部304aには、底壁として当接部材333が設けられている。横ばり304の横方向両端部304aの当接部材333は、長尺部材330の下面を支持せずに開放した状態で長尺部材330の中央部330aの上にゴム板350を介して上方から載せられている。即ち、当接部材333は、固定具により長尺部材330に固定されることなく離隔可能に長尺部材330に載せられており、横ばり4からの重力による下方荷重とそれに対する長尺部材330の反力との接触圧によって長尺部材330と一体な状態が維持されている。
【0037】
このように、横ばり304の当接部材333は、長尺部材330に上方から載せられて長尺部材330に対して上下方向に固定されていないので、長尺部材330と横ばり304との間の支持構造が簡素になり、台車の組立作業性が大幅に向上する。さらに、横ばり304の当接部材333が長尺部材330に対して上下方向に固定されていないので、横ばり304と長尺部材330との間で捩り力が伝達されにくくなる。よって、捩り対策として各部材を高強度にしたり台車を補強したりする必要がなく、台車の軽量化を促進することができる。また、横ばり304と長尺部材330との間で捩り力が伝達されにくいので、複数の車輪6のうち一部の車輪6に輪重抜けが発生することも抑止することができる。
【0038】
なお、当接部材333と長尺部材330とは、互いに上下方向に嵌合する嵌合部を有してもよく、当接部材333と長尺部材330とを上下方向に固定しない状態で互いの水平方向の相対移動を規制するようにしてもよい。
【0039】
(第6実施形態)
図12は、本発明の第6実施形態に係る台車の横ばり404の側方(左右方向)から見た断面図である。
図12に示すように、第6実施形態の横ばり404は、金属を切削加工してなる横ばり本体460と、その横ばり本体460の加工面に形成された開口部460gを塞ぐ板状の蓋461とを備えている。横ばり本体460は、金属からなる横方向に長尺の六面体を一面側(本例では下面側)から切削加工して凹空間Sが形成されたものである。これにより、横ばり本体460は、上壁部460a、前壁部460b、後壁部460c、右壁部460dおよび左壁部460eの5面の外壁部を備えるとともに、凹空間Sを区切る内壁部460fを備える。そして、横ばり本体460の下面には、凹空間Sの開口部460gを塞ぐように蓋461が取り付けられている。この蓋461は、横ばり本体460よりも薄肉なプレートであり、固定具(例えば、ボルトやネジ等)により横ばり本体460に固定されている。つまり、横ばり404は、溶接を用いずに製作が可能である。なお、横ばり本体460の外面及び内面の角部は、面取り加工が施されて丸められている。
【0040】
このような構成にすれば、横ばり404を切削加工機により自動的に製造することができて溶接のような熟練作業が不要となるため、製造効率及び製作精度が向上する。そして、この構成は、横ばり404を側部材(板バネ30や長尺部材330)に溶接しない構成と併せることで、溶接による累積歪みを除去する作業が大幅に削減され、製造効率を飛躍的に改善することができる。
【0041】
(第7実施形態)
図13は、本発明の第7実施形態に係る台車501の側面図である。
図14は、
図13に示す台車501における板バネ530の側面図である。
図13及び14に示すように、第7実施形態の台車501では、側面視において全体として下方に凸となる弓形状に形成された板バネ530が用いられている。板バネ530は、側面視において、その長手方向中央部530aが下方に向けて突出する円弧形状であり、その長手方向両端部530cが上方に向けて反っている。よって、板バネ530の長手方向両端部530cの下面は、平坦面ではあるが、水平面に対して傾斜している。即ち、長手方向両端部530cの下面は、車両長手方向の外側に向かうにつれて高くなるように傾斜している。
【0042】
軸箱8の上端部には支持部材531が取り付けられており、板バネ530の長手方向両端部530cが支持部材531の上面に上方から載せられている。そして、その支持部材530の上面は、板バネ530の長手方向両端部530cに沿うように水平面に対して傾斜している。また、横ばり4の車幅方向両端部4aの下部には、円弧状の下面533aを有する当接部材533が設けられ、その当接部材533が板バネ530の長手方向中央部530aに上方から載せられて自由接触している。但し、当接部材533及び板バネ530には互いに上下方向に嵌合する嵌合部は設けられていない。なお、板バネ530の長手方向中央部530aの上面には、当接部材533に接触する介装シート570(例えば、ゴムシート等)が設けられている。
【0043】
図14に示すように、板バネ530は、上層561、中間層562及び下層563を有し、中間層562の体積は、上層561及び下層563の全体の体積よりも大きい。上層561及び下層563はCFRPによって形成され、中間層562はGFRPによって形成されている。CFRPは、GFRPよりも引張又は圧縮に対する強度が高い。板バネ530の肉厚は、その長手方向中央部530aから長手方向両端部530cに向けて徐々に薄くなるよう形成されている。中間層562の肉厚は、その長手方向中央部530aから長手方向両端部530cに向けて徐々に薄くなるよう形成されており、上層561及び下層563の肉厚は一定であり、上層561の肉厚は下層563の肉厚よりも厚い。
【0044】
台車1が支持する車体11が空車状態であるとき、板バネ530の長手方向両端部530cの水平面に対する傾斜角θは、10°以上25°以下の値(例えば、15°)に設定されている。車両走行時は、上下、前後及び左右の振動が車輪6から台車枠に伝達され、振動成分のうち支配的な加速度となる上下振動成分が板バネ530により伝達及び吸収されている。このとき、板バネ530の長手方向両端部530cの下面は傾斜しているため、振動により支持部材531から板バネ530に伝達される上向きの力Fは、板バネ530の長手方向両端部530cに対して垂直な分力Faと水平な分力Fbとに分けられる。よって、支持部材531から板バネ530に伝達される荷重は、力Fから分力Faに低減される(Fa=F・cosθ)。また、板バネ530は、当接部材533に対して固定されておらず、当接部材533の円弧状の下面533aに沿ってシーソーのように回動し得る。そのため、板バネ530の長手方向片側の端部530cに上下振動が伝わったとき、板バネ530の長手方向中央部530aを支点とした回動によっても上下振動の加速度を吸収できる。 また、振動により、板バネ530の長手方向片側の端部530cの傾斜角θが、長手方向他側の端部530cの傾斜角θよりも大きくなったときには、傾斜角θの大きい側の端部530cの分力Faが、傾斜角θの小さい側の端部530cの分力Faよりも小さくなる。そのため、板バネ530の長手方向両側の傾斜角θが同じになるように(即ち、元の姿勢に戻るように)力が作用し、板バネ530は平衡を保つ自己修正機能を持つことになる。
【0045】
さらに、板バネ530の長手方向両端部530cの各々に対して支持部材531から上向きの荷重が掛って板バネ530が撓んだときには、板バネ530の曲率が大きくなるので、板バネ530の長手方向中央部530aは相対的に下方に落ち込むことになる。そのことは、板バネ530の長手方向中央部530aの支持する当接部材533が下方に落ち込む方向に作用するので、支持部材531から板バネ530を介して当接部材533に伝わる上向きの加速度成分を打ち消す働きもある。勿論、板バネ530自身にバネ効果があるので、その長手方向両端部530cの辺りが撓んで、支持部材531から伝わる上向きの加速度を吸収し、当接部材533への振動伝達を減らす役割もある。
【0046】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲でその構成を変更、追加、又は削除することができる。前述した各実施形態では、支持部材31,131,231は、軸箱8の上に載せた別体物としたが軸箱8の一部であってもよい。また、当接部材33,133の板バネ30,130との接触面をゴムで形成し、そのゴムとの接触する板バネ30,130の表面は繊維強化樹脂から形成されてもよい。また、板バネ全体を繊維強化樹脂にしてもよいし、また、板バネ以外を繊維強化樹脂としてもよい。また、横ばりと軸箱との間の水平方向の相対変位が所定以上にならないように横ばり及び軸箱が側部材を介して規制されていれば、連結機構16を無くしてもよい。前述した各実施形態は互いに任意に組み合わせてもよく、例えば1つの実施形態中の一部の構成又は方法を他の実施形態に適用してもよい。