(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6289557
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】蒸煮穀物冷却装置
(51)【国際特許分類】
C12G 3/02 20060101AFI20180226BHJP
F25D 7/00 20060101ALI20180226BHJP
F25D 23/12 20060101ALI20180226BHJP
F25C 1/04 20180101ALI20180226BHJP
A23L 7/10 20160101ALI20180226BHJP
【FI】
C12G3/02 119E
F25D7/00 A
F25D23/12 D
F25C1/04
A23L7/10 A
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-144192(P2016-144192)
(22)【出願日】2016年7月22日
(65)【公開番号】特開2018-11570(P2018-11570A)
(43)【公開日】2018年1月25日
【審査請求日】2016年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】592225353
【氏名又は名称】新洋技研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】516221373
【氏名又は名称】株式会社齋彌ホールディングス
(73)【特許権者】
【識別番号】309042967
【氏名又は名称】株式会社片桐鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】100090985
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】高橋 典久
(72)【発明者】
【氏名】大辻 英郎
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 銑四郎
【審査官】
野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−125415(JP,A)
【文献】
特開2001−241817(JP,A)
【文献】
特開昭55−096883(JP,A)
【文献】
特開2010−270928(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3181166(JP,U)
【文献】
特開2011−030499(JP,A)
【文献】
実開平06−057191(JP,U)
【文献】
特開昭62−196576(JP,A)
【文献】
特開2008−149210(JP,A)
【文献】
特開2000−310186(JP,A)
【文献】
特開2010−273577(JP,A)
【文献】
特開平09−152268(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/005018(WO,A1)
【文献】
特開平10−332246(JP,A)
【文献】
特開平10−205961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00−35/00
C12G 3/02
F25B 1/00−49/04
F25D 1/00−31/00
F26B 5/00− 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀物を蒸煮して得られた蒸煮穀物を収容する真空チャンバと、該真空チャンバ内を減圧して蒸煮穀物内に含まれる蒸発させて醸造や発酵に適した含水量にするとともに、その気化熱によって蒸煮穀物の温度を急速に低下させるための真空ポンプと、真空チャンバと真空ポンプとの間に設けられ、蒸煮穀物から蒸発して真空ポンプに吸引された水蒸気を冷却して復水する凝縮器とからなり、
かつ、同凝縮器内に、内側に凍結した氷盤を有し、底部に冷媒を循環させるパイプが配設されたトレーを上下に複数段内設して構成され、
同トレーに水を注入して前記パイプ内の冷媒を循環させて凍結して生成した氷盤上に前記真空ポンプで吸引した水蒸気を含む空気を通過させることによって冷却して水蒸気を氷盤上に復水し、乾燥した空気を真空ポンプから外部に排出するようにしたことを特徴とする蒸煮穀物冷却装置。
【請求項2】
前記上下に配設された各トレー間に、真空チャンバから吸引された水蒸気を含む空気を蛇行させて氷盤及びトレー底面外壁面との接触機会を増加させる複数のガイド板を垂設した仕切板を配設してなることを特徴とする請求項1に記載の蒸煮穀物冷却装置。
【請求項3】
前記真空チャンバが、使用直前にその外壁を50℃〜60℃に加熱する加熱機構を備えてなることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の蒸煮穀物冷却装置。
【請求項4】
前記蒸煮穀物収容容器が、上蓋に上部に開口部を有するタジン鍋構造(円錐台形)の水蒸気排出ガイドを有してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の蒸煮穀物冷却装置。
【請求項5】
前記蒸煮穀物収容容器が、熱伝導率0.4kcal/mh℃以下の素材で形成されてなるものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の蒸煮穀物冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
蒸煮後の穀物を真空チャンバ内に収容し、真空ポンプによって前記真空チャンバ内を減圧して蒸煮穀物内に含まれる水分を蒸発させて醸造や発酵に適した含水量にするとともに、その気化熱によって蒸煮穀物の温度を急速に低下させる蒸煮穀物の冷却方法、及びそれに使用する蒸煮穀物冷却装置に係り、蒸煮穀物から蒸発した水蒸気を冷却して復水する凝縮器内に、底部に冷媒を循環させるパイプを備えたトレー配設し、該トレーに注入した水を冷媒の循環によって凍結して氷盤とし、該氷盤上に真空ポンプで吸引した水蒸気を含む空気を導いて冷却し水蒸気を氷盤上に復水し、乾燥した空気のみを真空ポンプから外部に排出する蒸煮穀物の冷却方法、及び蒸煮穀物冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
清酒醸造用の蒸米をはじめ、味噌、醤油等発酵食品用の大豆等蒸煮穀物の冷却とこれらに含まれる水分の蒸散には、従来から、ベルトコンベア上に堆積させた蒸米や蒸煮穀物に大気又は冷風を吹き付ける装置が広く用いられてきている。
しかし、大気や冷気を吹き付けての冷却ではベルトコンベアに堆積した蒸米や蒸煮穀物を均等に冷却することは難しく、表面と内部に大きな温度差ができ、またコンベア上を通過し終えた蒸米や蒸煮穀物の含水量も表面は少なく内部が多く均一性に欠けるという問題があり、また、大気中や冷気中に含まれる雑菌によって蒸米や蒸煮穀物が汚染される恐れもあった。さらに加えてベルトコンベアを設置する広い場所も必要としていた。
この問題を解決する方策として、特に蒸米を真空容器内に収容し、真空容器内を高い真空度に保つことによって蒸米の水分を蒸発させるとともにその蒸発潜熱により蒸米を冷却させる装置の発明が、これまでに2件見られるが、未だ実用に供されるには至っていない。
特許文献1の発明では、その請求項2に
『洗米浸積された浸積米を収容し開放または軽く蓋を閉じて前記浸積米を蒸煮し蒸煮終了後前記蓋を密閉する真空容器と、前記真空容器内を高度真空度に保持し蒸米の水分を蒸発させてその蒸発潜熱により冷却させる真空ポンプと、その冷却温度を任意の5度Cないし35度Cに選定して前記真空ポンプを停止させる温度センサとを備えることを特徴とする蒸煮装置付き真空蒸米冷却装置。』が開示され、
そして、明細書の段落0016には
『本実施例では蒸煮装置付き真空蒸米冷却装置の容量として、直径30cm、内容積30リッターを備え、これに試料としタイ米70%を有し、重量310グラム、水分36.7%の蒸米を投入した真空乾燥テストを表に示す。』と記し、
段落0018に示された表1には当初67℃あった蒸米品温が2分後に30℃に、25分後に5℃まで低下し、蒸米36.7%あった蒸米の水分洋も10〜11分後には33.1%に、41〜42分後には31.8%まで低下したとの結果が示され、続けて、
『このように、蒸煮装置付き真空蒸米冷却装置により、真空缶本体1内で浸積米を蒸煮した蒸米の高真空度を確保して蒸米中の水分を飛ばし、その際の蒸発潜熱により、処理される蒸米全体の温度が任意の所要温度5度C〜35度Cに冷却され、蒸米の表面と中心部との温度差がなく、温度が均一化され、蒸米中の水分が一定となり水分率が均一化されて、雑菌による汚染の恐れがなく、長期保存が可能な清酒の醸造に最適な蒸米を確保することが可能で、取り出された蒸米は直ちに麹と混合されて清酒の仕込み工程に移ることが可能である。』とその効果が記述されている。
しかしこの効果は310グラムという極めて小容量の蒸米でのテスト結果であり、この結果を基にして実際の清酒醸造現場において扱う400kg〜1000kgの蒸米の冷却を30分程度の短時間で行おうとすれば真空容器、真空ポンプとも大型で高価となり、真空ポンプの運転コストも高いものとなる。また、装置構成が真空容器、真空ポンプと、真空ポンプを設定した冷却温度で停止させる温度センサからなるとされているので、真空容器から吸引された水蒸気は真空ポンプを経て排出されることとなり、水封ポンプにせざるを得ず、水封ポンプより小型な油回転式ポンプが使用できないという問題もある。
【0003】
また、特許文献2の発明では、その請求項4に、
『蒸煮米を収容し密閉する真空容器と、その真空容器内を高真空度に保持し蒸米の水分を蒸発させてその蒸発潜熱により冷却させる真空ポンプと、その蒸発させた水蒸気を冷却管群に接触させて復水に戻し真空容器内を高真空度に保持する凝縮器と、凝縮器内の冷却管群に冷却水を送り込み還流した温水を再び冷水にする冷却水循環装置と、蒸米から蒸発させた水分の減量を常時計測し蒸米の含水率が目標値に到達したことを定量的に確認できる電子はかりと、減圧中の真空容器に大気圧の空気を導入する際に雑菌を除去する空気導入装置を備えることを特徴とする真空蒸米冷却調湿装置。』が開示されている。
そして段落0019に
『
図2は真空蒸米冷却調湿テストの結果を示している。
本実施例では、真空蒸米冷却調湿装置として、直径600mm、高さ250mm、内容積約70リッターの容量の真空容器を使用し、これに試料として精米率50%、質量20キログラムの酒米(山田錦)を初期含水率37.5%、初期温度約45度Cで投入した場合である。』とし、段落0022と0023に
『このように、真空蒸米冷却調湿装置により、真空容器内で蒸米中の水分を飛ばし、その際の蒸発潜熱により、90分後には蒸米は10度Cに冷却され、蒸米の表面と中心部との温度差がなく温度が均一化され、また90分後には蒸米中の含水率は32.5質量%になり、その分布が均一化されて、蒸米のガラス化や雑菌による汚染の恐れがなく、取り出された蒸米は直ちに製麹工程および清酒の仕込み工程に移ることが可能である。
特に製麹工程で最も望ましいとされる蒸米の含水率を32〜33質量%に仕上げる時間は、従来手法では半日程度と言われているが、この真空蒸米冷却調湿方法の所要時間は1時間30分と非常に短時間であり、非常に迅速な蒸米調湿方法であることが実証された。』とその効果を示している。
この発明においては、蒸発させた水蒸気を冷却管群に接触させて復水する凝縮器と、凝縮器内の冷却管群に冷却水を送り込み還流した温水を再び冷水にする冷却水循環装置とを備えることによって。特許文献1の発明に比べて、水封ポンプより小型な油回転式ポンプの使用が可能になり、真空ポンプの小型化は図られはするが、前記凝縮器によって腹水した水は装置運転中は装置内に蓄えておかねばならず、そのため前記凝縮器には凝縮水溜め部が設けられている。
前記した段落0019の記述『資料として精米率50%、質量20キログラムの酒米(山田錦)を初期含水率37.5%、初期温度約45度Cで投入した場合』と、段落0022の記述『90分後には蒸米中の含水率は32.5質量%になり』との記述から、含水率は5質量%の減少、重量にして水1kgが前記凝縮水溜め部に蓄えられたこととなる。
また、前記真空ポンプの運転に先駆けて前記凝縮器に冷却水を循環させ、運転中は停止できないため、冷却水を備蓄する冷水槽を備えておくことが好ましいが、実際の清酒醸造現場において400kg〜1000kgの蒸米を冷却するには多量の冷却水が必要となり、冷水槽も大型になることが予想される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−56268号公報
【特許文献2】特開2008−1254215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記背景技術における問題点に鑑みてなされたものであって、特に特許文献2の発明における、凝縮器に冷却水を循環させて復水する装置に替えて、トレーに蓄えた水を凍結して氷盤とし、その氷盤上に水蒸気を導いて復水させる新たな凝縮器を備えた蒸煮穀物の冷却方法、及び同方法で使用する蒸煮穀物冷却装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を下記の手段により解決した。
(1)穀物を蒸煮して得られた蒸煮穀物を
収容する真空チャンバと、該真空チャンバ内を減圧して蒸煮穀物内に含まれる蒸発させて醸造や発酵に適した含水量にするとともに、その気化熱によって蒸煮穀物の温度を急速に低下させるための真空ポンプと、真空チャンバと真空ポンプとの間に設けられ、蒸煮穀物から蒸発して真空ポンプに吸引された水蒸気を冷却して復水する凝縮器とからなり、
かつ、同凝縮器内に、内側に凍結した氷盤を有し、底部に冷媒を循環させるパイプが配設されたトレーを上下に複数段内設して構成され、
同
トレーに水を注入して前記パイプ内の冷媒を循環させて凍結して生成した氷盤上に前記真空ポンプで吸引した水蒸気を含む空気を通過させることによって冷却して水蒸気を氷盤上に復水し、乾燥した空気を真空ポンプから外部に排出する
ようにしたことを特徴とする蒸煮穀物冷却
装置。
(2)
前記上下に配設された各トレー間に、真空チャンバから吸引された水蒸気を含む空気を蛇行させて氷盤及びトレー底面外壁面との接触機会を増加させる複数のガイド板を垂設した仕切板を配設してなることを特徴とする(1)に記載の蒸煮穀物冷却装置。
(3)前記真空チャンバが、使用直前にその外壁を50℃〜60℃に加熱する加熱機構を備えてなることを特徴とする(1)又は(2)のいずれか1項に記載の蒸煮穀物冷却装置。
(4)前記蒸煮穀物収容容器が、上蓋に上部に開口部を有するタジン鍋構造(円錐台形)の水蒸気排出ガイドを有してなることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の蒸煮穀物冷却装置。
(5)前記蒸煮穀物収容容器が、熱伝導率0.4kcal/mh℃以下の素材で形成されてなるものであることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の蒸煮穀物冷却装置。
【0007】
なお、本発明の装置を使用する蒸煮穀物の冷却方法は以下の通りである。
穀物(例えば清酒醸造用の米)を蒸煮して得られた蒸煮穀物(例えば蒸米)を真空チャンバ内に収容した後、真空ポンプによって該真空チャンバ内を減圧して蒸煮穀物内に含まれる水分を蒸発させて醸造や発酵に適した含水量にするとともに、その気化熱によって蒸米の温度を急速に低下させる蒸煮穀物の冷却方法であって、真空チャンバと真空ポンプとの間に、蒸煮穀物から蒸発して真空ポンプで吸引される水蒸気を冷却して復水する凝縮器を設け、その凝縮器内に、底部に冷媒を循環させるパイプを備えたトレーを配設し、同トレーに水を注入し、冷媒を循環させて凍結して氷盤とし、該氷盤上を前記真空ポンプで吸引した水蒸気を含む空気を通過させることによって冷却して水蒸気を氷盤上に復水し、乾燥した空気を真空ポンプから外部に排出する蒸煮穀物(例えば蒸米)の冷却方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明
の蒸煮穀物冷却装置によって、下記の効果が発揮される。
(a)凝縮器内には、内側に凍結した氷盤を有し、底部に冷媒を循環させるパイプが配設されたトレーを上下に複数段内設してあるため、
同トレーに水を注入して前記パイプ内の冷媒を循環させて凍結して生成した氷盤上に前記真空ポンプで吸引した水蒸気を含む空気を通過させることによって水蒸気を容易に氷盤上に復水することができ、乾燥した空気を真空ポンプから外部に排出することができる。
従来の冷却水の循環によって熱交換する凝縮器に必要とされた貯水槽を設けることなく、また、真空ポンプにも小型で安価な油回転式真空ポンプの使用が可能となり、装置設置場所の狭小化も併せて、機能性、経済性に富んだ蒸煮穀物の冷却方法が提供できる。
【0009】
(b)前記トレーが上下に複数段設けられ、かつ上下に配設された各トレー間に、真空チャンバから吸引された水蒸気を含む空気を蛇行させて氷盤及びトレー底面外壁面との接触機会を増加させる複数のガイド板を垂設した仕切板を配設しているので、
熱交換効率のよい凝縮器となり、大量の蒸煮穀物の冷却にも対応可能な蒸煮穀物冷却装置が提供できる。
【0010】
(c)前記真空チャンバが、使用直前にその外壁を50℃〜60℃に加熱するヒータ等の加熱機構を備えているので、
真空チャンバ内に高温(90℃前後)の蒸米を収容して減圧することによって、常温(10℃〜30℃)時に発生する真空チャンバ内壁の結露が防止でき、前記結露を再蒸発させるに要するエネルギーが不要となり、真空ポンプのエネルギーが、蒸煮穀物の含水量の低減と冷却とにすべて使用され、効率のよい蒸煮穀物冷却装置が提供できる。
(d)前記蒸煮穀物収容容器が、上蓋に上部に開口部を有するタジン鍋構造(円錐台形)の水蒸気排出ガイドを有しているので、
前記蒸煮穀物収容容器内で蒸発した水蒸気が真空チャンバ内に拡散して真空チャンバ内壁に結露することなく凝縮器に導かれ、前記
(c)に記述の効果をより高めることができる。
(e)前記蒸煮穀物収容容器が、熱伝導率0.4kcal/mh℃以下の素材で形成されているので、
減圧によって蒸米とともに温度が低下する蒸煮穀物収容容器の外壁への結露が抑制され、前記
(c)、(d)に記載の効果をより高めることができる。
特に穀物が清酒醸造用の米である場合には、清酒醸造に使用する大量の蒸米を短時間で冷却できる好適な蒸米冷却装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】トレーの構造図(a)上面図(b)A−A断面図
【
図4】仕切板の構造図(a)仕切板I及びIIの下面図(b)仕切板IのB−B断面図(c)仕切板IIのB−B断面図断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の蒸煮穀物冷却装置を実施するための形態を、実施例の図に基づいて説明する。
図1は本発明の蒸煮穀物冷却装置の機器構成図、
図2は本発明の凝縮器の構造図、
図3はトレーの構造図であり、(a)は上面図(b)はA−A断面図、そして
図4は仕切板の構造図であり、(a)は仕切板I及びIIの下面図、(b)は仕切板IのB−B断面図、(c)は仕切板IIのB−B断面図断面図を示している。
図において、1は真空チャンバ、2は真空チャンバ1からの水蒸気を冷却して復水する凝縮器、3は真空ポンプ、4は冷凍器、5は蒸煮穀物収容容器、6はタジン鍋形状の水蒸気排出ガイド、7は真空チャンバ1の加熱機構、8は真空チャンバ1を開放して冷却処理した蒸米を取り出す際にチャンバ内に取り込む際に外気から雑菌等の侵入を防止するためのエアフィルターであり、9a、9b、9cはバルブ、21は凝縮器2のトレー、22はトレー21の底部に配設された渦巻き状の冷媒循環用パイプ、23は上下のトレー間に配設された仕切り板、24は前記仕切り板23に設けられ、上段のトレーから下段のトレーに水蒸気や水を流下させる穿設孔、25はガイド板、26は氷盤、27復水貯留部、28はトレー・仕切り板取付用外筒を示す。
なお、前記仕切り板Iは上下に配設された各トレー21間に配設され、仕切り板IIは最上段のトレー上に配設され、両仕切板23の下面に垂設されたガイド板25は、その下端部を図で点線で示す下方のトレ−21の側壁面上端より下方になるようトレー21内に挿入され、上面に垂設されたガイド板25はその上端が2点鎖線で示すトレー21の底面外壁面に当接して、前記水蒸気・水等を蛇行させる経路を形成することになる。
【0013】
本発明
に係る蒸煮穀物の冷却方法は、穀物を蒸煮して得られた蒸煮穀物を真空チャンバ1内に収容した後、真空ポンプ3によって該真空チャンバ1内を減圧して蒸煮穀物内に含まれる水分を蒸発させて醸造や発酵に適した含水量にするとともに、その気化熱によって蒸米の温度を急速に低下させるものであって、
真空チャンバ1と真空ポンプ3との間に、蒸煮穀物から蒸発して真空ポンプ3で吸引される水蒸気を冷却して復水する凝縮器2を設け、その凝縮器2内に配設した、底部に冷媒を循環させるパイプ22を備えたトレー21に水を注入し、前記パイプ22に冷媒を循環させて凍結して氷盤26とし、該氷盤26上及び冷却されたトレーを前記真空ポンプ3で吸引した水蒸気を含む空気を通過させることによって冷却して水蒸気を氷盤26上に復水し、乾燥した空気を真空ポンプから外部に排出してなる冷却方法であり、特に清酒醸造に用いる大量の蒸米を短時間で冷却するのに好適な方法である。
【0014】
前記蒸煮穀物の冷却方法を実現する
本発明の蒸煮穀物冷却装置は、
図1に示すように、穀物を蒸煮して得られた蒸煮穀物を収容する真空チャンバ1と、該真空チャンバ1内を減圧して蒸煮穀物内に含まれる水分を蒸発させて醸造や発酵に適した含水量にするとともに、その気化熱によって蒸煮穀物の温度を急速に低下させるための真空ポンプ3と、真空チャンバ1と真空ポンプ3との間に設けられ、蒸煮穀物から蒸発して真空ポンプ3に吸引された水蒸気を冷却して復水する凝縮器2とからなり、
かつ、前記凝縮器2が、その内部に、
図2に示すように、底部に冷媒を循環させる渦巻き状のパイプ22を配設したトレー21[
図3(a)、(b)参照]を複数段内設してなり、同トレー21に水を注入し、前記パイプ22に冷媒を循環させて前記トレー21に注入した水を凍結して氷盤26とし、該氷盤26上及び氷盤26によって冷却されたトレー底面外壁面に沿わせて前記真空ポンプ3で吸引した水蒸気を含む空気を通過させることによって冷却し、前記水蒸気を氷盤26上に復水し、乾燥した空気を真空ポンプから外部に排出するよう構成されている。なお、水蒸気からの復水と、熱交換によって氷盤26から溶け出した水とは凝縮器2の底部に設けた復水貯留部27に貯留されるので、作業終了後熱交換によって減少したトレー21への補給水として再利用できる。
また、前記トレー21が
図4に示すように、前記氷盤26上及びトレー底面外壁面に沿って通過する水蒸気を含む空気を蛇行させて氷盤26との接触機会を増加させるための複数のガイド板25を垂設した仕切板23を備えており、熱交換効率のよい凝縮器2を形成している。
【0015】
さらに前記真空チャンバ1が、使用直前にその外壁を50℃〜60℃に加熱するヒータ等の加熱機構7を備えており、前記真空チャンバ1の内壁に蒸煮穀物から蒸発した水蒸気が付着して結露するのを防止していること、
前記蒸煮穀物収容容器5が、上蓋に上部に開口部を有するタジン鍋構造(円錐台形)の水蒸気排出ガイド6を有して、蒸煮穀物から蒸発した水蒸気が前記真空チャンバ1内に拡散するのを抑制していること、
前記蒸煮穀物収容容器5が、熱伝導率0.4kcal/mh℃以下の素材で形成されており、該蒸煮穀物収容容器5に収容されて冷却された蒸煮穀物の温度が前記蒸煮穀物収容容器5の外壁面に伝達され難く同蒸煮穀物収容容器5の外壁に結露を生じないことから、経済性に富んだ蒸煮穀物冷却装置となっている。
【0016】
本蒸煮穀物冷却装置の効果を確認する実験を次の条件の下で実施した。
外壁を加熱機構7によって50℃〜60℃に加熱した容量200リットルの真空チャンバ1内に、熱伝導率0.23kcl/mh℃のポリエチレン製蒸煮穀物収容容器5に含水率33%、温度87℃ の蒸米40kgを2つの甑布袋に分けて収容し、これを前記真空チャンバ1内に収めた。なお、タジン鍋形式の水蒸気排出ガイド6として前記蒸し煮穀物収容容器5と同じ熱伝導率のポリエチレン製のものを上蓋として被せた。このときバルブ9aは閉じられており、真空チャンバ1は密閉状態にあった。
そして前記凝縮器2の複数のトレイ21には、予め30kgの水を凍結して氷盤26を形成しておき、これを前記真空チャンバ1に接続した。ちなみに、この氷盤は400Wの冷凍機4を使って約4時間で形成できた。
真空チャンバ1内を減圧する真空ポンプ3には排気能力0.5m
3/分の油回転式真空ポンプ2台を使用した。同真空ポンプ3の本体重量は55kg、本体寸法は482mm×396mm×410mmであった。
実験は上記の実験準備か整った後、真空チャンバ1の加熱を停止してバルブ9bを開き真空ポンプ3を稼働(バルブ9cは閉鎖状態)して凝縮器2内を減圧した後、バルブ9aを開き真空チャンバ1内を減圧して蒸米内の水分を蒸発させて凝縮器2内に導入して復水した。
そして、バルブ9aを開いた30分後に、バルブ9bを閉じるとともに真空ポンプを停止し、バルブ9cを開いて、エアフィルタ8を介して外気を減圧された凝縮器2内に取り入れ、氷盤上及び冷却されたトレー21の底面外壁面に沿って冷却して前記真空チャンバ1内に導入しで真空状態を解徐し、前記真空チャンバ1内が大気圧になった状態で前記蒸煮穀物収容容器5を真空チャンバから取り出し、4.8℃に冷却された含水率17%の蒸米35kgが得られた。
【0017】
また、冷水循環式凝縮器を用いた蒸米冷却装置との比較のため、伝熱面積20m
2のプレート型熱交換器に水温0.5℃の冷水を冷水循環ポンプによって、毎分60リットル供給して熱交換する実験も実施した。冷水槽として1800リットルのタンクを用いた。
実験は外壁を50℃〜60℃に加熱した容量200リットルの真空チャンバ1内に、熱伝導率0.23kcl/mh℃のポリエチレン製蒸煮穀物収容容器5に含水率33%、温度87℃ の蒸米40kgを2つの甑布袋に分けて収容した後、真空チャンバ1の加熱を止めて真空ポンプを稼働し、30分後に取り出すという本発明の蒸煮穀物の冷却方法の実験と同一方法で行い、4.8℃に冷却された含水率17%の蒸米35kgが得られ、前記本発明の蒸煮穀物の冷却方法と同一の結果を得たが、本発明の蒸煮穀物冷却装置と比べて、1800リットルの冷水槽と冷水循環ポンプが必要で装置が大型になること、また蒸米冷却中は冷水循環ポンプを稼働し続けねばならず保守運用面での注意が欠かせないことが難点であった。
【符号の説明】
【0018】
1:真空チャンバ
2:凝縮器
3:真空ポンプ
4:冷凍器
5:蒸煮穀物収容容器
6:タジン鍋形状の水蒸気排出ガイド
7:真空チャンバの加熱機構
8:エアフィルター
9a、9b、9c:バルブ
21:トレー
22:渦巻き状の冷媒管
23:仕切板
24:仕切板の穿設孔
25:ガイド板
26:氷盤
27:復水貯留部
28:トレー・仕切り板取付用外筒