(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記リガンドが、抗体、抗原、核酸、ヌクレオチド、ヌクレオシド、オリゴヌクレオチド、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、多糖、糖、糖タンパク質、脂質、糖脂質、ビタミン、薬物、基質、ホルモン、神経伝達物質、ウイルス又は細胞である、請求項16に記載のリガンド結合固相担体。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において、a〜b等の数値範囲を示す記載は、a以上、b以下と同義であり、a及びbをその範囲内に含むものとする。
【0017】
<固相担体>
本発明の鎖状ポリマーが結合してなる固相担体は、前記鎖状ポリマーが、反応性官能基を有する第1の構造単位と、反応性官能基を有しないか、第1の構造単位が有する反応性官能基よりも反応性が低い反応性官能基を有する第2の構造単位とを含むランダムポリマー構造を含有してなり、前記第1の構造単位に含まれる反応性官能基のモル数aと、前記鎖状ポリマーに含まれる全構造単位のモル数bとの含有比率(a/b)が、0.01〜0.7であることを特徴とする。
【0018】
(第1の構造単位)
第1の構造単位は、反応性官能基(以下、第1の構造単位が有する反応性官能基を、第1の反応性官能基ともいう)を有するものである。第1の構造単位としては、第1の反応性官能基を側鎖に有する構造単位が好ましい。第1の反応性官能基の個数は、上記構造単位1個中に好ましくは1〜3個であり、より好ましくは1個である。
第1の構造単位としては、第1の反応性官能基を有するエチレン性不飽和モノマーに由来する構造単位が好ましい。ここで、エチレン性不飽和モノマーとは、ビニル基やアリル基、(メタ)アクリルオキシ基、(メタ)アクリルアミド基等のエチレン性不飽和結合を有するモノマーをいう。
また、第1の構造単位としては、例えば、(メタ)アクリル酸又はその塩に由来する構造単位、第1の反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系モノマーに由来する構造単位、第1の反応性官能基を有する(メタ)アクリルアミド系モノマーに由来する構造単位、第1の反応性官能基を有するスチレン系モノマーに由来する構造単位が挙げられる。中でも、非特異吸着抑制の観点から、(メタ)アクリル酸又はその塩に由来する構造単位、第1の反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系モノマーに由来する構造単位、第1の反応性官能基を有する(メタ)アクリルアミド系モノマーに由来する構造単位が好ましく、第1の反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系モノマーに由来する構造単位、第1の反応性官能基を有する(メタ)アクリルアミド系モノマーに由来する構造単位がより好ましい。
【0019】
また、第1の反応性官能基は、リガンドと反応可能なものであれば特に限定されないが、カルボキシ基、トシル基、アミノ基、エポキシ基、アシル基、アジド基、マレイミド基、活性化エステル基が挙げられ、これらのうち1種を有していてもよく、2種以上を有していてもよい。これらの中でも、結合したリガンドが外れにくくする観点や、リガンドとしてタンパク質や核酸等の生体分子を使用する場合に、リガンドが元来有している官能基を使用して固相担体と結合できる点から、カルボキシ基、トシル基、アミノ基、エポキシ基が好ましく、固相担体に対しリガンドを簡便且つ迅速に結合させやすい点等から、カルボキシ基がより好ましい。
【0020】
また、固相担体の固形分1gあたりの第1の反応性官能基の含有量は、リガンド結合量の観点や検出の高感度化と低ノイズ化を両立する観点から、好ましくは1μmol以上、より好ましくは10μmol以上、さらに好ましくは20μmol以上、特に好ましくは25μmol以上であり、また、非特異吸着を抑制する観点から、好ましくは500μmol以下、より好ましくは400μmol以下、さらに好ましくは200μmol以下、さらに好ましくは180μmol以下、特に好ましくは135μmol以下である。
第1の反応性官能基の含有量は、例えば、第1の反応性官能基がカルボキシ基の場合、電気伝導度測定法等により測定可能であり、具体的には、後述する実施例に記載の方法に従い測定できる。また、第1の反応性官能基がトシル基の場合は、固相担体に導入されたトシル基の紫外可視光吸収を測定するなどして求めることができ、第1の反応性官能基がアミノ基の場合は、アミノ基にN−スクシイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオナートを反応させた後、還元し、遊離のチオピリジル基の吸光度を測定するなどして求めることができる。
【0021】
第1の反応性官能基の含有量で前記固相担体の表面積を除した値としては、リガンド結合量の観点や非特異吸着を抑制する観点から、好ましくは0.4Å
2/反応性官能基以上、より好ましくは0.6Å
2/反応性官能基以上、さらに好ましくは1.2Å
2/反応性官能基以上、特に好ましくは1.8Å
2/反応性官能基以上であり、また、好ましくは220Å
2/反応性官能基以下、より好ましくは22Å
2/反応性官能基以下、さらに好ましくは20Å
2/反応性官能基以下、さらに好ましくは9Å
2/反応性官能基以下、特に好ましくは7.4Å
2/反応性官能基以下である。
ここで、本明細書においては、第1の反応性官能基の含有量で固相担体の表面積を除した値を「パーキングエリア」とも称する。パーキングエリアは、固相担体表面において1分子の反応性官能基が占める面積を示す指標であり、一般的に、リガンドの結合量はパーキングエリアの数値に反比例し、パーキングエリアが大きいほどリガンド結合量は少なくなる。また、上記固相担体の表面積は、鎖状ポリマー結合前の担体の表面積を意味する。
【0022】
第1の構造単位の好適な具体例としては、下記式(1)で表される構造単位が挙げられる。
【0024】
〔式(1)中、
R
1は、水素原子又はメチル基を示し、
R
2は、−O−*、−(C=O)−O−*、−(C=O)−NR
4−*(R
4は、水素原子又は炭素数1〜10の有機基を示し、*は、式(1)中のR
3と結合する位置を示す)又はフェニレン基を示し、
R
2が−(C=O)−O−*である場合、R
3は、水素原子、又は第1の反応性官能基を有する有機基を示し、R
2が−O−*、−(C=O)−NR
4−*又はフェニレン基である場合、R
3は、第1の反応性官能基を有する有機基を示す。〕
【0025】
式(1)中、R
2としては、水との親和性が高め、非特異吸着を抑制する観点から、−(C=O)−O−*、−(C=O)−NR
4−*が好ましい。
【0026】
R
4は、水素原子又は炭素数1〜10の有機基を示す。
R
4で示される有機基の炭素数としては、1〜8が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜3が特に好ましい。また、上記有機基としては、炭化水素基が好ましく、脂肪族炭化水素基がより好ましい。脂肪族炭化水素基は直鎖状でも分岐状でもよく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基が挙げられる。
上記のようなR
4の中でも、水素原子が好ましい。
【0027】
また、R
3で示される反応性官能基を有する有機基としては、下記式(2)で表される有機基が好ましい。なお、R
3における第1の反応性官能基は上記と同様である。
【0029】
〔式(2)中、
R
5は、2価の有機基を示し、
Yは、第1の反応性官能基を示し、
*は、式(1)中のR
2と結合する位置を示す。〕
【0030】
R
5で示される2価の有機基としては、2価の炭化水素基、炭素数2以上の2価の炭化水素基の炭素−炭素原子間にエーテル結合、イミノ基、アミド結合及びエステル結合から選ばれる1種以上を有する基が挙げられる。
2価の有機基が2価の炭化水素基である場合、その炭素数としては、1〜10が好ましく、1〜8がより好ましく、1〜6が特に好ましい。一方、2価の有機基が炭素数2以上の2価の炭化水素基の炭素−炭素原子間にエーテル結合、イミノ基、アミド結合及びエステル結合から選ばれる1種以上を有する基である場合、斯かる基における2価の炭化水素基の炭素数としては、2〜10が好ましく、2〜8がより好ましく、2〜6が特に好ましい。
【0031】
R
5における「2価の炭化水素基」としては、2価の脂肪族炭化水素基が好ましい。当該2価の脂肪族炭化水素基は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。
上記2価の脂肪族炭化水素基としては、アルカンジイル基が好ましく、具体的には、メタン−1,1−ジイル基、エタン−1,1−ジイル基、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、ブタン−1,2−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基等が挙げられる。
【0032】
また、炭素数2以上の2価の炭化水素基の炭素−炭素原子間にエーテル結合、イミノ基、アミド結合及びエステル結合から選ばれる1種以上を有する基としては、簡便に鎖状ポリマーが得られる観点等から、炭素数2以上の2価の炭化水素基の炭素−炭素原子間にエステル結合を有する基が好ましく、−R
a−O(C=O)−R
b−*で表される2価の基がより好ましい(R
a及びR
bは、それぞれ独立して、炭素数2〜4のアルカンジイル基を示し、*は、式(2)中のYとの結合位置を示す)。アルカンジイル基の炭素数としては、2又は3が好ましく、2がより好ましい。アルカンジイル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、例えば、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基が挙げられる。
【0033】
上記R
2とR
3との組み合わせとしては、R
2が、−(C=O)−O−*であり、且つR
3が、水素原子、又は反応性官能基を有する有機基である組み合わせ、R
2が、−(C=O)−NR
4−*であり、且つR
3が、反応性官能基を有する有機基である組み合わせが好ましく、R
2が、−(C=O)−O−*、又は−(C=O)−NR
4−*であり、且つR
3が、反応性官能基を有する有機基である組み合わせがより好ましい。
【0034】
第1の構造単位の含有量としては、ランダムポリマー構造全量に対して、1〜70質量%が好ましく、5〜70質量%がより好ましく、5〜35質量%が特に好ましい。
第1の構造単位の含有量は、例えばNMR等を利用するなどして測定すればよい。
【0035】
(第2の構造単位)
第2の構造単位は、反応性官能基を有しないか、第1の構造単位が有する反応性官能基よりも反応性が低い反応性官能基(以下、この反応性官能基を第2の反応性官能基ともいう)を有するものである。
上記第2の反応性官能基は、第1の反応性官能基よりも反応性が低いものである。この反応性には、親和定数、あるいは反応速度定数が指標となる。具体的には、第2の反応性官能基のリガンドに対する親和定数、あるいは反応速度定数が、第1の反応性官能基のリガンドに対する親和定数、あるいは反応速度定数よりも低い場合は、第2の反応性官能基の反応性は、第1の反応性官能基の反応性よりも低いといえる。このような観点から、第2の反応性官能基が第1の反応性官能基と異なっていることにより、第2の反応性官能基が低い反応性を有していてもよいことはもちろんのこと、例えば、第2の構造単位の側鎖の構造に起因する立体障害により第2の反応性官能基の反応性が抑えられていてもよい。また、第2の構造単位の側鎖に連結した他の原子により、第2の反応性官能基の求核性あるいは求電子性が低減されていてもよい。
【0036】
第2の構造単位としては、反応性官能基を有しないか、第2の反応性官能基を有するエチレン性不飽和モノマーに由来する構造単位が好ましい。ここで、エチレン性不飽和モノマーとは、ビニル基やアリル基、(メタ)アクリルオキシ基、(メタ)アクリルアミド基等のエチレン性不飽和結合を有するモノマーをいう。
第2の構造単位としては、例えば、反応性官能基を有しないか、第2の反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系モノマーに由来する構造単位、反応性官能基を有しないか、第2の反応性官能基を有する(メタ)アクリルアミド系モノマーに由来する構造単位、反応性官能基を有しないか、第2の反応性官能基を有するスチレン系モノマーに由来する構造単位が挙げられる。中でも、非特異吸着抑制の観点から、反応性官能基を有しないか、第2の反応性官能基を有する(メタ)アクリレート系モノマーに由来する構造単位、反応性官能基を有しないか、第2の反応性官能基を有する(メタ)アクリルアミド系モノマーに由来する構造単位が好ましい。
【0037】
第2の構造単位としては、親水性基を有する構造単位が好ましく、親水性基を側鎖に有する構造単位がより好ましい。親水性基の個数は、上記構造単位1個中に好ましくは1〜3個であり、より好ましくは1個である。
なお、本明細書において、親水性とは、水との親和力が強い性質を持つことを意味する。
【0038】
上記親水性基は、水系中性条件下としたときに荷電するものでもよく、同条件下としたときに荷電しないものでもよい。
水系中性条件下としたときに荷電する親水性基としては、4級アンモニウム基(塩化トリメチルアンモニウム基等)等の塩基性基;リン酸基、スルホ基等の酸性基;双性イオン構造を有する基が挙げられる。なお、第2の構造単位が斯様な水系中性条件下としたときに荷電する親水性基を有する場合は、塩を形成していてもよく、対イオンを有していてもよい。
水系中性条件下としたときに荷電しない親水性基としては、水酸基、アルコキシ基、ポリオキシアルキレン基、スルホニル基、スルフィニル基、3級アミノ基が挙げられる。アルコキシ基としては、炭素数1又は2のアルコキシ基が好ましい。例えば、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。
上記ポリオキシアルキレン基としては、−(R
cO)
q−で表される基が好ましい(R
cは、アルカンジイル基を示し、qは、2〜100の整数を示す。なお、q個のR
cは同一でも異なっていてもよい)。
R
cで示されるアルカンジイル基の炭素数は、好ましくは2〜4であり、より好ましくは2又は3であり、特に好ましくは2である。
また、R
cで示されるアルカンジイル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、具体的には、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基等が挙げられる。これらの中でも、エタン−1,2−ジイル基が好ましい。
qは、2〜100の整数を示すが、好ましくは3〜80の整数であり、より好ましくは4〜60の整数であり、さらに好ましくは5〜40の整数であり、さらに好ましくは6〜30の整数であり、特に好ましくは7〜20の整数である。
第2の構造単位は、上記親水性基のうち1種を有していてもよく、2種以上を有していてもよい。
【0039】
これらの中でも、親水性基としては、非特異吸着抑制の観点から、水酸基、双性イオン構造を有する基、ポリオキシアルキレン基、リン酸基が好ましく、水酸基、双性イオン構造を有する基、ポリオキシアルキレン基がより好ましく、水酸基、双性イオン構造を有する基がさらに好ましく、双性イオン構造を有する基が特に好ましい。親水性基が双性イオン構造を有する基である場合は、含有比率(a/b)が0.3を超える場合でも、非特異吸着が効率的に抑制される。
【0040】
上記双性イオン構造を有する基としては、非特異吸着抑制の観点から、第4級アンモニウム塩型カチオン性官能基と、−(C=O)O
−、−SO
3−及び−O−(O=P−O
−)−O−から選ばれる1価又は2価のアニオン性官能基とを有する有機基が好ましく、下記式(3)又は(4)で表される有機基がより好ましく、下記式(3)で表される有機基が特に好ましい。
【0042】
〔式(3)中、
R
6及びR
7は、それぞれ独立して、単結合又は炭素数1〜10の2価の有機基を示し、
R
8は、−(C=O)O
−又は−SO
3−を示し、
R
9及びR
10は、それぞれ独立して、メチル基又はエチル基を示す。〕
【0044】
〔式(4)中、
R
11及びR
12は、それぞれ独立して、単結合又は炭素数1〜10の2価の有機基を示し、
R
13、R
14及びR
15は、それぞれ独立して、メチル基又はエチル基を示す。〕
【0045】
式(3)中のR
6及びR
7、式(4)中のR
11及びR
12は、それぞれ独立して、単結合又は炭素数1〜10の2価の有機基を示すが、非特異吸着抑制の観点から、炭素数1〜10の2価の有機基が好ましく、炭素数1〜10の2価の炭化水素基、炭素数2〜10の2価の炭化水素基の炭素−炭素原子間にエーテル結合、アミド結合及びエステル結合から選ばれる1種以上を有する基がより好ましく、炭素数1〜10の2価の炭化水素基が特に好ましい。
2価の有機基が2価の炭化水素基である場合、その炭素数としては、1〜8が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜4がさらに好ましく、1〜3が特に好ましい。一方、2価の有機基が2価の炭化水素基の炭素−炭素原子間にエーテル結合、アミド結合及びエステル結合から選ばれる1種以上を有する基である場合、斯かる基における2価の炭化水素基の炭素数としては、2〜8が好ましく、2〜6がより好ましく、2〜4がさらに好ましく、2又は3が特に好ましい。
【0046】
R
6、R
7、R
11及びR
12における「2価の炭化水素基」としては、2価の脂肪族炭化水素基が好ましい。当該2価の脂肪族炭化水素基は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。
上記2価の脂肪族炭化水素基としては、アルカンジイル基が好ましく、具体的には、メタン−1,1−ジイル基、エタン−1,1−ジイル基、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、ブタン−1,2−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基等が挙げられる。
【0047】
式(3)中のR
8としては、−(C=O)O
−が好ましい。
式(3)中のR
9及びR
10、式(4)中のR
13、R
14及びR
15としては、メチル基が好ましい。
【0048】
また、第2の構造単位の好適な具体例としては、下記式(5)で表される構造単位が挙げられる。
【0050】
〔式(5)中、
R
16は、水素原子又はメチル基を示し、
R
17は、−O−*、−(C=O)−O−*、−(C=O)−NR
19−*(R
19は、水素原子又は炭素数1〜10の有機基を示し、*は、式(5)中のR
18と結合する位置を示す)又はフェニレン基を示し、
R
18は、双性イオン構造を有する基、水酸基を有する有機基、又はポリオキシアルキレン基を有する有機基を示す。〕
【0051】
式(5)中、R
17としては、非特異吸着抑制の観点から、−(C=O)−O−*、−(C=O)−NR
19−*が好ましい。
【0052】
R
19は、水素原子又は炭素数1〜10の有機基を示す。
R
19で示される有機基の炭素数としては、1〜8が好ましく、1〜6が好ましく、1〜3が特に好ましい。また、上記有機基としては、炭化水素基が好ましく、脂肪族炭化水素基がより好ましい。脂肪族炭化水素基は直鎖状でも分岐状でもよく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基が挙げられる。
上記のようなR
19の中でも、水素原子が好ましい。
【0053】
R
18で示される双性イオン構造を有する基は、上記双性イオン構造を有する基と同様である。
【0054】
R
18で示される水酸基を有する有機基としては、下記式(6)で表されるものが挙げられる。
【0056】
〔式(6)中、
R
20は、2価の有機基を示し、
*は、式(5)中のR
17と結合する位置を示す。〕
【0057】
R
20で示される2価の有機基としては、2価の炭化水素基、炭素数2以上の2価の炭化水素基の炭素−炭素原子間にエーテル結合、アミド結合及びエステル結合から選ばれる1種以上を有する基が挙げられるが、好ましくは2価の炭化水素基である。
2価の有機基が2価の炭化水素基である場合、その炭素数としては、1〜8が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜4がさらに好ましく、1〜3が特に好ましい。一方、2価の有機基が炭素数2以上の2価の炭化水素基の炭素−炭素原子間にエーテル結合、アミド結合及びエステル結合から選ばれる1種以上を有する基である場合、斯かる基における2価の炭化水素基の炭素数としては、2〜8が好ましく、2〜6がより好ましく、2〜4がさらに好ましく、2又は3が特に好ましい。
【0058】
R
20における「2価の炭化水素基」としては、2価の脂肪族炭化水素基が好ましい。当該2価の脂肪族炭化水素基は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。
上記2価の脂肪族炭化水素基としては、アルカンジイル基が好ましく、具体的には、メタン−1,1−ジイル基、エタン−1,1−ジイル基、エタン−1,2−ジイル基、プロパン−1,1−ジイル基、プロパン−1,2−ジイル基、プロパン−1,3−ジイル基、プロパン−2,2−ジイル基、ブタン−1,2−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基、ブタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,4−ジイル基、ペンタン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,5−ジイル基、ヘキサン−1,6−ジイル基等が挙げられる。
【0059】
R
18で示されるポリオキシアルキレン基を有する有機基としては、−(R
cO)
q−R
dで表される基が好ましい(R
dは、炭素数1〜4のアルキル基を示す。なお、R
c及びqは前記と同義であり、R
cはアルカンジイル基を、qは2〜100の整数を、それぞれ示す)。
R
dで示されるアルキル基の炭素数は、好ましくは1〜3であり、より好ましくは1又は2である。また、R
dで示されるアルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられるが、メチル基が特に好ましい。
【0060】
第2の構造単位の含有量としては、ランダムポリマー構造全量に対して、30〜99質量%が好ましく、35〜95質量%がより好ましく、65〜95質量%が特に好ましい。
第2の構造単位の含有量は、例えばNMR等を利用するなどして測定すればよい。
【0061】
上記ランダムポリマー構造は、第1の構造単位及び第2の構造単位以外の構造単位を有していてもよい。また、本発明の固相担体に結合している鎖状ポリマーは、上記ランダムポリマー構造以外のポリマー構造を有していてもよい。例えば、鎖状ポリマーとしては、**−(第1の構造単位)−ran−(第2の構造単位)−で表されるランダムポリマーの他に、**−(他のポリマー構造)−(第1の構造単位)−ran−(第2の構造単位)−で表されるポリマー、**−(第1の構造単位)−ran−(第2の構造単位)−(他のポリマー構造)−で表されるポリマーが挙げられる(**は、固相担体表面側の結合位置を示し、ranは、これに隣り合う2種の構造単位がランダムポリマー構造であることを意味する)。これらの中でも、**−(第1の構造単位)−ran−(第2の構造単位)−で表されるランダムポリマー、**−(他のポリマー構造)−(第1の構造単位)−ran−(第2の構造単位)−で表されるポリマーが好ましい。
また、上記他のポリマー構造としては、第2の構造単位から構成されるブロックポリマー構造が好ましい。
【0062】
また、鎖状ポリマーは、エチレン性不飽和結合の重合により形成される鎖状ポリマーであるのが好ましく、鎖状のビニルポリマーであるのがより好ましい。
【0063】
また、鎖状ポリマーの片方の末端は、固相担体に結合していれば、直接結合していても連結基を介して結合していてもよいが、2価の連結基を介して固相担体に結合しているのが好ましい。この2価の連結基は、固相担体の表面に共有結合し、鎖状ポリマーとも共有結合するものであり、固相担体の表面にエステル結合又はアミド結合で結合するのが好ましく、結合が安定であり加水分解で選択的に切断することも容易な点から、固相担体の表面にエステル結合で結合するのがより好ましい。
【0064】
また、2価の連結基としては、重合開始基の残基を含む2価の連結基が好ましい。重合開始基としては、リビング重合可能な重合開始基が好ましく、リビングラジカル重合開始基がより好ましく、原子移動ラジカル重合開始基、可逆的付加開裂連鎖移動重合開始基、ニトロキシドを介したラジカル重合の重合開始基がさらに好ましく、原子移動ラジカル重合開始基が特に好ましい。原子移動ラジカル重合開始基の残基を含む2価の連結基としては、下記式(7−1)又は(7−2)で表される2価の基が挙げられる。
【0066】
〔上記式中、
R
25及びR
29は、−O−、−S−又は−NR
31−を示し(R
31は、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を示す)、
R
26及びR
30は、それぞれ独立して、単結合又はフェニレン基を示し、
R
27及びR
28は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基又はアリール基を示し、
**は、鎖状ポリマーの末端と結合する位置を示す。〕
【0067】
R
25及びR
29としては、結合が安定であり加水分解で選択的に切断することも容易な点で、−O−が好ましい。また、R
31で示されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が挙げられる。
また、R
26及びR
30としては、単結合が好ましく、R
27及びR
28としては、アルキル基が好ましい。
【0068】
R
27及びR
28で示されるアルキル基の炭素数としては、1〜8が好ましく、1〜4がより好ましく、1又は2が特に好ましい。アルキル基は直鎖状でも分岐鎖状でもよく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられる。
R
27及びR
28で示されるアリール基の炭素数としては、6〜12が好ましい。アリール基の好適な具体例としては、フェニル基が挙げられる。
【0069】
一方、鎖状ポリマーの他方の末端は特に限定されないが、ハロゲン原子が好ましい。ハロゲン原子としては、臭素原子、塩素原子、フッ素原子等が挙げられる。
【0070】
また、本発明の固相担体は、第1の反応性官能基のモル数aと、上記鎖状ポリマーに含まれる全構造単位のモル数bとの含有比率(a/b)が、0.01〜0.7である。斯かる構成によって、非特異吸着が抑制される。
含有比率(a/b)は、リガンドを結合しやすくする観点から、好ましくは0.025以上、より好ましくは0.05以上であり、また、非特異吸着抑制の観点から、好ましくは0.6以下、より好ましくは0.4以下、さらに好ましくは0.35以下、特に好ましくは0.25以下である。
また、鎖状ポリマーが親水性基を有する場合、鎖状ポリマーに含まれる親水性基のモル数cと、鎖状ポリマーに含まれる全構造単位のモル数bとの含有比率(c/b)は、リガンドを結合しやすくする観点から、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.4以上、さらに好ましくは0.6以上、特に好ましくは0.75以上であり、また、ポリマー合成が容易である観点から、好ましくは0.99以下、より好ましくは0.95以下、特に好ましくは0.9以下である。
また、モル数a〜cは、いずれも、鎖状ポリマー1本あたりに含まれるモル数を意味し、X線光電子分光分析、鎖状ポリマーのNMR分析や、固相担体1gあたりに結合した鎖状ポリマーの重量、鎖状ポリマーの分子量及び反応性官能基量等から算出可能である。具体的には、後述する実施例に記載の方法に従い測定できる。
【0071】
本発明の固相担体としては、上記鎖状ポリマーが固相担体の少なくとも表面に結合してなるものが好ましい。
また、鎖状ポリマーは固相担体表面上でポリマーブラシを形成しているのが好ましい。本発明の固相担体の表面に対して上記鎖状ポリマーが占有する密度は、非特異吸着を抑制する観点やリガンド結合量の観点、検出の高感度化と低ノイズ化を両立させる観点から、好ましくは0.1本/nm
2以上、より好ましくは0.3本/nm
2以上、さらに好ましくは0.5本/nm
2以上であり、また、ポリマーブラシの形成が簡便な点で、好ましくは2本/nm
2以下、より好ましくは1.5本/nm
2以下、さらに好ましくは1.3本/nm
2以下、特に好ましくは1.2本/nm
2以下である。
上記鎖状ポリマーの密度は、例えば、下記式で算出可能である。具体的には、加水分解等により固相担体から鎖状ポリマーを遊離させ、後述する実施例に記載の方法に従い測定できる。
鎖状ポリマーの密度(本/nm
2)=担体1gに結合した鎖状ポリマーの本数(本)/担体1gの総表面積(nm
2)
なお、上記担体1gの総表面積は、鎖状ポリマー結合前の担体の総表面積を意味する。
【0072】
また、鎖状ポリマーの数平均分子量(Mn)としては、非特異吸着抑制の観点から、1,000〜100,000が好ましく、3,000〜50,000がより好ましく、5,000〜30,000がさらに好ましい。
また、鎖状ポリマーの重量平均分子量(Mw)としては、非特異吸着抑制の観点から、1,000〜100,000が好ましく、3,000〜50,000がより好ましい。
また、分子量分布(Mw/Mn)としては、非特異吸着の抑制及び固相担体に結合されたリガンドの活性を高める観点から、1.0〜2.5が好ましく、1.0〜2.0がより好ましく、1.0〜1.8がさらに好ましく、1.0〜1.5がさらに好ましい。
なお、数平均分子量、重量平均分子量は、加水分解等により固相担体から鎖状ポリマーを遊離させ、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定したポリエチレングリコール換算の平均分子量を意味する。なお、後述する実施例に記載のような方法で反応性官能基導入前の鎖状ポリマーの分子量を測定し、斯かる分子量と、反応性官能基が導入される構造単位のモル数と、反応性官能基の導入に用いる化合物の構造から計算することもできる。
【0073】
本発明の固相担体を構成する鎖状ポリマー以外の部分(支持体部、担体部)は、有機物でも金属や金属酸化物等の無機物でもよく特に限定されないが、本発明の固相担体は、鎖状ポリマーの他に支持体として樹脂を含むものが好ましい。これにより、鎖状ポリマーを容易に導入できる。
樹脂としては、アガロース、デキストラン、セルロース等の多糖類で構成される天然高分子でもよく、合成高分子でもよい。
また、本発明の固相担体の形態は特に限定されるものではなく、粒子、モノリス、膜、繊維、チップ、プレート等のいずれでもよいが、標的物質の検出又は分離の容易性の観点から、粒子が好ましく、磁性粒子がより好ましい。なお、形態として粒子を採用した場合、鎖状ポリマーのポリマー密度を増大させることもできる。また、磁性粒子の製造方法は、特開2007−224213号公報に詳述されている。
本明細書において「磁性粒子」とは、磁性体を有する粒子を意味する。本発明の固相担体は、磁性粒子の形態でも高い水分散性を有する。また、磁性粒子とした場合には、遠心分離器等を用いずに磁石等を用いて分離することができるため、試料からの固相担体の分離を簡素化又は自動化することができる。
また、磁性体は、強磁性、常磁性、超常磁性のいずれであってもよいが、磁場による分離と磁場を取り除いた後の再分散を容易にする観点から、超常磁性であることが好ましい。磁性体としては、フェライト、酸化鉄、鉄、酸化マンガン、マンガン、酸化ニッケル、ニッケル、酸化コバルト、コバルト等の金属、又は合金が挙げられる。
また、磁性粒子としては、具体的には、以下の(i)〜(iv)のいずれかの粒子の少なくとも表面に、上記鎖状ポリマーを結合してなるものが挙げられる。好ましくは多孔質又は非多孔質の磁性ポリマー粒子である。
【0074】
(i)樹脂等の非磁性体を含む連続相中に磁性体微粒子が分散している粒子
(ii)磁性体微粒子の2次凝集体をコアとし、樹脂等の非磁性体をシェルとする粒子
(iii)樹脂等の非磁性体で構成される核粒子と、該核粒子の表面に設けられた磁性体微粒子を含む磁性体層(2次凝集体層)とを有する母粒子をコアとし、該母粒子の最外層に、樹脂等の非磁性体層がシェル(以下、最外層シェルとも称する)として設けられた粒子
(iv)粒子の最外層に樹脂等の非磁性体層がシェルとして設けられていてもよい、樹脂やシリカ等からなる多孔質粒子の孔内に磁性体微粒子が分散している粒子
なお、(i)〜(iv)の粒子はいずれも公知であり、常法に従い製造可能である。
【0075】
上記(iii)の核粒子及び(iv)の多孔質粒子における樹脂としては、単官能性モノマー及び多官能性モノマーから選ばれる1種又は2種以上に由来する樹脂が挙げられる。
上記単官能性モノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ハロゲン化スチレン等の単官能性芳香族ビニル系モノマー;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の単官能性(メタ)アクリレート系モノマーが挙げられる。
上記多官能性モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン等の多官能性芳香族ビニル系モノマー;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)メタクリレート、アリル(メタ)アクリレート等の多官能性(メタ)アクリレート系モノマー;ブタジエン、イソプレン等の共役ジオレフィン等が挙げられる。
【0076】
また、上記(i)及び(ii)における樹脂並びに上記(iii)及び(iv)の最外層シェルにおける樹脂としては、グリシジル基、アミノ基及び水酸基から選ばれる1種又は2種以上の官能基を少なくとも表面に有している樹脂が好ましい。上記官能基は、樹脂表面の化学修飾により導入してもよいし、上記官能基を有するモノマー1種又は2種以上を少なくとも含むモノマー組成の重合により導入してもよい。上記化学修飾としては、例えばグリシジル基の加水分解による水酸基の生成や、ニトロ基の還元によるアミノ基の生成が挙げられる。上記官能基を有するモノマー組成としては、グリシジル基含有モノマーを少なくとも含むモノマー組成がより好ましい(以下、上記最外層シェルにおける樹脂が、グリシジル基含有モノマーを少なくとも含むモノマー組成により形成された樹脂である粒子を、グリシジル基含有磁性粒子とも称する)。なお、上記単官能性モノマー及び多官能性モノマーから選ばれる1種又は2種以上をさらに含んでいてもよい。
【0077】
グリシジル基含有モノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。アミノ基含有モノマーとしては、2−アミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。水酸基含有モノマーとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0078】
また、本発明の固相担体が粒子の場合の平均粒径(体積平均粒径)は、好ましくは0.1〜500μmであり、より好ましくは0.2〜50μmであり、さらに好ましくは0.3〜10μmである。斯様な範囲とすることにより、固相担体が磁性粒子である場合に集磁速度が速くなりハンドリング性が改善され、また、リガンド結合量が大きくなり、検出感度等が良好になる。また、平均粒径の変動係数は、20%以下程度であればよい。
また、比表面積は、1.0〜2.0m
2/g程度であればよい。
なお、上記平均粒径及び比表面積は、レーザー回析・散乱粒子径分布測定等により測定できる。
【0079】
また、本発明の固相担体は、例えば、以下の式のように模式的に示すことができる(ranは、これに隣り合う2種の構造単位がランダムポリマー構造であることを意味する)。
【0081】
<固相担体の製造方法>
本発明の固相担体は常法を適宜組み合わせて製造することができるが、本発明の固相担体の製造方法としては、固相担体の表面に対する鎖状ポリマーが占有する密度を高密度化しさらに非特異吸着が抑制されたものとする観点や、分子量分布の狭い鎖状ポリマーを固相担体に結合しさらに非特異吸着が抑制されたものとする観点、固相担体に結合するリガンドの働きを高める観点等から、以下の工程1及び工程2を含む方法が好ましい。
(工程1)重合開始基を少なくとも表面に有する担体(以下、重合開始基含有担体とも称する)を準備する工程
(工程2)前記重合開始基を起点として、反応性官能基を有する第1の構造単位と、反応性官能基を有しないか、第1の構造単位が有する反応性官能基よりも反応性が低い反応性官能基を有する第2の構造単位とを含むランダムポリマー構造を含有する鎖状ポリマーを、前記第1の構造単位に含まれる反応性官能基のモル数aと、前記鎖状ポリマーに含まれる全構造単位のモル数bとの含有比率(a/b)が、0.01〜0.7となるように形成させる工程
上記製造方法としては、具体的には、以下の方法<PR−1>〜<PR−3>が挙げられる。なお、第2の構造単位から構成されるブロックポリマー構造等の他のポリマー構造を鎖状ポリマーに導入する場合は、上記工程2の前及び/又は後に、このポリマー構造を導入する方法を、常法に従い行えばよい。
【0082】
<PR−1>(工程1)重合開始基含有担体を準備し、(工程2−1−1)前記重合開始基を起点として、第2の構造単位を誘導するモノマーを重合して、ポリマーを形成させ、(工程2−1−2)当該工程で得られたポリマーを構成する第2の構造単位の一部の側鎖に、第1の反応性官能基をランダムに導入し、第1の反応性官能基を有する第1の構造単位とする工程とを含む方法。
<PR−2>(工程1)重合開始基含有担体を準備し、(工程2−2)前記重合開始基を起点として、第1の構造単位を誘導するモノマーと第2の構造単位を誘導するモノマーとをランダム共重合させる工程とを含む方法。
<PR−3>(工程1)重合開始基含有担体を準備し、(工程2−3−1)前記重合開始基を起点として、水酸基又はアミノ基を有するモノマーと水酸基及びアミノ基を有さないモノマーとをランダム共重合させて、ランダムポリマー構造を形成させ、(工程2−3−2)当該工程で得られたランダムポリマー構造中の水酸基又はアミノ基を有する構造単位に、第1の反応性官能基を導入し、第1の反応性官能基を有する第1の構造単位とする工程とを含む方法。
これら方法を、カルボキシ基、アミノ基又はトシル基を第1の反応性官能基として有する鎖状ポリマーが結合した固相担体の製造方法を例に挙げて説明する。
【0083】
(工程1)
重合開始基含有担体は、例えば、水酸基、アミノ基、エポキシ基及びカルボキシ基から選ばれる1種又は2種以上(以下、これを総称して水酸基等とも称する)を少なくとも表面に有する原料担体(以下、原料担体とも称する)に、重合開始基を有する化合物を接触させ、上記水酸基等に含まれる水素原子を重合開始基に変換することで得ることができる(以下、この反応を重合開始基導入反応とも称する)。なお、上記原料担体のうち、水酸基を少なくとも表面に有する原料担体は、例えば、上記グリシジル基含有磁性粒子と無機酸、有機酸等の酸とを接触させ、グリシジル基を開環するなどして得ることができる。
また、重合開始基含有担体は、重合開始基を有するモノマーを含むモノマー組成を重合しても得ることもできる。重合開始基を有するモノマーとしては、2−(2−ブロモイソブチリルオキシ)エチルメタクリレート等が挙げられる。
【0084】
上記重合開始基を有する化合物としては、リビング重合可能な重合開始基を有する化合物が好ましく、リビングラジカル重合開始基を有する化合物がより好ましく、原子移動ラジカル重合開始基を有する化合物、可逆的付加開裂連鎖移動重合開始基を有する化合物、ニトロキシドを介したラジカル重合の重合開始基を有する化合物がさらに好ましく、原子移動ラジカル重合開始基を有する化合物が特に好ましい。原子移動ラジカル重合開始基を有する化合物としては、例えば、2−ブロモイソブチリルブロミド、4−(ブロモメチル)安息香酸、2−ブロモイソ酪酸エチル、2−ブロモプロピオニルブロミド、トシルクロリド等が挙げられる。
重合開始基導入反応において、重合開始基を有する化合物の合計使用量は、原料担体に対し、通常0.001〜100質量倍程度であり、好ましくは0.01〜50質量倍程度である。
【0085】
重合開始基導入反応は、トリエチルアミン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン等の塩基性触媒存在下で行うのが好ましい。なお、これら塩基性触媒のうち1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してよい。
塩基性触媒の合計使用量は、重合開始基を有する化合物に対し、通常1〜10モル当量程度であり、好ましくは1〜5モル当量程度である。
また、重合開始基導入反応は、溶媒存在下で行うのが好ましい。溶媒としては、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン等のエーテル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等のプロトン性溶媒が挙げられ、これら溶媒は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
また、重合開始基導入反応の反応時間は、通常30分〜24時間程度であり、反応温度は、溶媒の沸点以下で適宜選択すればよい。
【0086】
(工程2−1−1、工程2−2及び工程2−3−1)
工程2−1−1は、重合開始基を起点として、第2の構造単位を誘導するモノマー(以下、モノマー(11)ともいう)を重合して、ポリマーを形成させる工程である。
工程2−2は、重合開始基を起点として、第1の構造単位を誘導するモノマー(以下、モノマー(12)ともいう)と第2の構造単位を誘導するモノマー(以下、モノマー(13)ともいう)とをランダム共重合させる工程である。
工程2−3−1は、重合開始基を起点として、水酸基又はアミノ基を有するモノマー(以下、モノマー(14)ともいう)と水酸基及びアミノ基を有さないモノマー(以下、モノマー(15)ともいう)とをランダム共重合させて、ランダムポリマー構造を形成させる工程である。
【0087】
工程2−1−1で使用するモノマー(11)としては、例えば、カルボキシ基、アミノ基又はトシル基を導入可能な親水性基(例えば、水酸基等である。以下、同じ。)を有する第2の構造単位を誘導するモノマーが挙げられる。
モノマー(11)としては、水酸基を有するモノマーが好ましい。水酸基を有するモノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド、グリセロール1−(メタ)アクリレート、グリセロール1−(メタ)アクリルアミド等が例示される。
なお、これらのうち1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してよい。
【0088】
工程2−2で使用するモノマー(12)としては、例えば、カルボキシ基、アミノ基又はトシル基を有するモノマーが挙げられる。例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩、アミノエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート等が挙げられる。なお、エポキシ基を第1の反応性官能基として有する鎖状ポリマーが結合したものを製造する場合は、グリシジル(メタ)アクリレート等を使用すればよい。
なお、これらのうち1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してよい。
【0089】
工程2−2で使用するモノマー(13)としては、水酸基を有するモノマー、ポリオキシエチレン基を有するモノマー、双性イオンを有する基を有するモノマー、リン酸基を有するモノマー、4級アンモニウム基を有するモノマー等の親水性基を有するモノマーの他、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド等の親水性を示すものが例示される。
水酸基を有するモノマーとしては、上記モノマー(11)と同様のものが挙げられる。ポリオキシエチレン基を有するモノマーとしては、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリルアミド等が例示される。双性イオンを有する基を有するモノマーとしては、[2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル](カルボキシラトメチル)ジメチルアミニウム、[2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル](カルボキシラトエチル)ジメチルアミニウム、[2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル](カルボキシラトプロピル)ジメチルアミニウム、[2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]ジメチル−(3−スルホメチル)アンモニウムヒドロキシド、[2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]ジメチル−(3−スルホエチル)アンモニウムヒドロキシド、[2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル]ジメチル−(3−スルホプロピル)アンモニウムヒドロキシド、O−[2−((メタ)アクリロイルオキシ)エトキシ(オキシラト)ホスフィニル]コリン等が例示される。リン酸基を有するモノマーとしては、2−ホスフォリックエチル(メタ)アクリレート、2−ホスフォリックエチル(メタ)アクリルアミド等が例示される。4級アンモニウム基を有するモノマーとしては、等が例示される。
なお、これらのうち1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してよい。
【0090】
工程2−3−1で使用するモノマー(14)は、水酸基又はアミノ基を有するモノマーである。水酸基を有するモノマーとしては、上記モノマー(11)と同様のものが挙げられる。アミノ基を有するモノマーとしては、アミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、これらのうち1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してよい。
【0091】
工程2−3−1で使用するモノマー(15)は、水酸基及びアミノ基を有さないモノマーである。具体的には、水酸基及びアミノ基以外の親水性基を有するモノマーである。例えば、ポリオキシエチレン基を有するモノマー、双性イオンを有する基を有するモノマー、リン酸基を有するモノマー等が例示される。ポリオキシエチレン基を有するモノマー、双性イオンを有する基を有するモノマー、リン酸基を有するモノマーとしては、上記モノマー(13)と同様のものが挙げられる。
なお、これらのうち1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してよい。
【0092】
モノマー(11)〜(15)の各使用量は、それぞれ、担体表面に結合している重合開始基に対し、通常5〜10000モル当量程度であり、好ましくは10〜5000モル当量程度である。
【0093】
工程2−1−1、工程2−2及び工程2−3−1における重合反応の重合法は、重合開始基の種類に応じて選択すればよいが、目的物を簡便且つ容易に得る観点から、リビング重合が好ましく、リビングラジカル重合がより好ましく、原子移動ラジカル重合(ATRP重合)、可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT重合)、ニトロキシドを介したラジカル重合(NMP)がさらに好ましく、原子移動ラジカル重合が特に好ましい。原子移動ラジカル重合で重合させることにより、幅広い種類の担体に鎖状ポリマーを簡便に結合させることができ、しかも、生体適合性や高圧縮弾性、低摩擦特性、サイズ排除特性が、得られる固相担体に付与され、且つ固相担体の表面に対する鎖状ポリマーが占有する密度を高密度化されるため非特異吸着しにくくなる。
【0094】
また、工程2−1−1、工程2−2及び工程2−3−1における重合反応を、原子移動ラジカル重合により行う場合は、反応効率の観点から、遷移金属化合物及び配位子の存在下で反応を行うのが好ましい。
遷移金属化合物としては、銅化合物が好ましい。銅化合物としては、臭化銅(I)、臭化銅(II)、塩化銅(I)、塩化銅(II)等のハロゲン化銅の他、銅(I)トリフレート、銅(II)トリフレート等が挙げられる。なお、これらのうち1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してよい。遷移金属化合物の合計使用量は、反応系中、通常1〜10,000ppm程度である。
配位子としては、同一分子内に2つ以上の窒素原子を含む配位子が好ましい。同一分子内に2つ以上の窒素原子を含む配位子としては、トリス(2−ピリジルメチル)アミン、ビピリジン、ビピリジン誘導体、トリス[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミン等が挙げられる。なお、これらのうち1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してよい。配位子の合計使用量は、遷移金属化合物に対し、通常0.5〜10モル当量程度である。
【0095】
また、工程2−1−1、工程2−2及び工程2−3−1における重合反応は、反応効率の観点から、還元剤、溶媒存在下で行うのが好ましい。
還元剤としては、アスコルビン酸、グルコース、ヒドラジン、銅等が挙げられ、これら還元剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
溶媒としては、水系溶媒、有機溶媒が挙げられる。具体的には、水;ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒;メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒;アニソール等のエーテル系溶媒等が挙げられ、これら溶媒は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。特に、重合反応は、水系溶媒中で行うことが好ましい。水系溶媒は、扱いが簡便で、反応系の調製が容易である。水系溶媒中で原子移動ラジカル重合を行う場合、水系溶媒は緩衝液であることが好ましい。なお、緩衝剤の好ましい濃度は、10〜100mMである。
また、重合反応の反応系のpHとしては、3〜10が好ましく、より好ましくは7〜9である。重合反応の反応時間は、通常30分〜12時間程度であり、反応温度は、溶媒の沸点以下で適宜選択すればよい。重合反応は、25〜60℃程度の温和な条件でも進行する。
【0096】
(工程2−1−2及び工程2−3−2)
工程2−1−2は、工程2−1−1で得られたポリマーを構成する第2の構造単位の一部の側鎖に、付加反応、置換反応、縮合反応又は脱保護反応などによって第1の反応性官能基をランダムに導入し、第1の反応性官能基を有する第1の構造単位とする工程である。これにより、第2の構造単位の一部が第1の構造単位に変換されるため、第1の構造単位と第2の構造単位のランダムポリマー構造が得られる。
工程2−3−2は、工程2−3−1で得られたランダムポリマー構造中の水酸基又はアミノ基を有する構造単位に、付加反応、置換反応、縮合反応又は脱保護反応などによって第1の反応性官能基を導入し、第1の反応性官能基を有する第1の構造単位とする工程である。これにより、水酸基又はアミノ基を有する構造単位が第1の構造単位に変換されるため、第1の構造単位と第2の構造単位のランダムポリマー構造が得られる。
【0097】
カルボキシ基を導入する方法としては、例えば、モノマー(11)、(14)に由来する水酸基又はアミノ基にカルボン酸無水物を付加反応させる方法が挙げられる。
カルボン酸無水物としては、例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。中でも、水酸基やアミノ基との反応が容易に進行する観点から、無水コハク酸が好ましい。
カルボン酸無水物等の合計使用量は、モノマー(11)由来の構造単位に対しては、通常0.01〜0.99モル当量程度であり、モノマー(14)由来の構造単位に対しては、通常1〜100モル当量程度である。
【0098】
また、工程2−1−2及び工程2−3−2は、工程1と同様の塩基性触媒、溶媒存在下で行うのが好ましい。工程2−1−2及び工程2−3−2の反応時間は、通常30分〜24時間程度であり、反応温度は、溶媒の沸点以下で適宜選択すればよい。
【0099】
なお、鎖状ポリマーを形成する方法、カルボキシ基、アミノ基又はトシル基を導入する方法は、上記方法に限定されるものではない。例えば、工程2−1−2は、反応性官能基の前駆体(例えば酸塩化物)を有する分子(例えばコハク酸ジクロリド)を第2の構造単位の側鎖にまずランダムに導入し、次いで、この前駆体を反応性官能基(例えばカルボキシ基)に変換してもよい。また例えば、PR−3の工程2−3−1〜2−3−2では、加水分解により反応性官能基を生成する官能基(例えばエステル基)と親水性基(例えば水酸基)とを有するモノマー(例えば2−ヒドロキシエチルメタクリレート)を重合してポリマーを形成し、次いで、当該官能基を部分的に加水分解することにより、ポリマーを構成する構造単位の一部の側鎖に、反応性官能基(例えばカルボキシ基)をランダムに導入してもよい。
【0100】
そして、上記のようにして得られる本発明の固相担体は、夾雑物が非特異吸着しにくい。特に、リガンドとの結合に用いられる反応性官能基に夾雑物が非特異吸着しにくいものである。また、リガンドが反応性官能基に結合しやすいものである。
したがって、本発明の固相担体をアフィニティー担体とすることで、酵素免疫測定、放射免疫測定、化学発光免疫測定等の抗原抗体反応を利用したイムノアッセイや、免疫沈降、競合アッセイ;タンパク質、核酸等の検出;細胞、タンパク質、核酸等の生体関連物質のバイオセパレーション;薬物探索;バイオセンサー等をはじめとする、体外診断や生化学分野における研究等に広く利用できる。本発明の固相担体は、イムノアッセイのため、或いは核酸検出のための使用に特に適する。
【0101】
<リガンド結合固相担体>
本発明のリガンド結合固相担体は、本発明の固相担体にリガンドを結合させてなるものである。
上記リガンドは、標的物質と結合する分子であればよいが、例えば、抗体;抗原(ハプテン等の不完全抗体を含む);DNA、RNA等の核酸;ヌクレオチド;ヌクレオシド;オリゴヌクレオチド;プロテインA、プロテインG、(ストレプト)アビジン、酵素、レクチン、リンホカイン等のタンパク質;インシュリン等のペプチド;アミノ酸;ヘパリン、オリゴ糖等の糖又は多糖;糖タンパク質;脂質;糖脂質;ビオチン等のビタミン;薬物;基質;ホルモン;神経伝達物質;ウイルス;細胞等が挙げられる。
これらの中でも、診断薬用等に適したリガンド結合固相担体とする観点からは、抗体、抗原が好ましい。抗体、抗原は標的物質と結合するものであればよいが、例えば、抗アンチプラスミン抗体、抗Dダイマー抗体、抗FDP抗体、抗tPA抗体、抗トロンビン・アンチトロンビン複合体抗体、抗FPA抗体等の凝固線溶関連検査用抗体又はこれに対する抗原;抗BFP抗体、抗CEA抗体、抗AFP抗体、抗TSH抗体、抗フェリチン抗体、抗CA19−9抗体等の腫瘍関連検査用抗体又はこれに対する抗原;抗アポリポタンパク抗体、抗β2−ミクロブロブリン抗体、抗α1―ミクログロブリン抗体、抗免疫グロブリン抗体、抗CRP抗体等の血清蛋白関連検査用抗体又はこれに対する抗原;抗HCG抗体等の内分泌機能検査用抗体又はこれに対する抗原;抗ジゴキシン抗体、抗リドカイン抗体等の薬物分析用抗体又はこれに対する抗原;HBs抗原、HCV抗原、HIV−1抗原、HIV−2抗原、HTLV−1抗原、マイコプラズマ抗原、トキソプラズマ抗原、ストレプトリジンO抗原等の感染症関連検査用抗原又はこれに対する抗体;DNA抗原、熱変成ヒトIgG等の自己免疫関連検査用抗原又はこれに対する抗体等が挙げられる。なお、抗体は、ポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でもよい。
また、核酸を検出する場合は、リガンドとして、オリゴヌクレオチドを用いるのが好ましい。
【0102】
リガンド結合固相担体は、本発明の固相担体の製造方法により製造された固相担体の第1の構造単位に含まれる反応性官能基に、リガンドを結合させることにより、製造することができる。
リガンドの結合は、特開2007−224213号公報等の記載を参考にし常法に従い行えばよいが、共有結合法で行うのが好ましい。例えば、反応性官能基がカルボキシ基であり、リガンドがアミノ基を有するものである場合は、脱水縮合剤を用いて結合させればよい。
【0103】
本発明のリガンド結合固相担体は、体外診断や生化学分野における研究等に広く利用できる。本発明のリガンド結合固相担体は、イムノアッセイのため、或いは核酸検出のための使用に特に適する。
【0104】
<標的物質の検出又は分離方法>
本発明の試料中の標的物質を検出又は分離する方法は、本発明のリガンド結合固相担体を用いることを特徴とするものである。
【0105】
標的物質はリガンドと結合するものであればよいが、具体的には、抗原;モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体等の抗体(ハプテン等の不完全抗体を含む);細胞(正常細胞、及び大腸がん細胞、血中循環がん細胞等のがん細胞);DNA、RNA等の核酸;ヌクレオチド;ヌクレオシド;オリゴヌクレオチド;プロテインA、プロテインG、(ストレプト)アビジン、酵素、レクチン、リンホカイン等のタンパク質;ペプチド、アミノ酸、糖や多糖(ヘパリン、オリゴ糖等)、糖タンパク質、脂質、糖脂質、ビタミン、ホルモン、ウイルス等の生体関連物質が挙げられ、創薬ターゲットとなる薬物、ビオチン等の小分子化合物でもよい。なお、標的物質は、蛍光物質などにより標識化されたものでもよい。
なお、試料は、上記標的物質を含むもの又は標的物質を含む可能性があるものであればよく、具体的には、発酵培地、細胞溶解物、原核細胞、真核細胞、ウイルス粒子の懸濁液、組織液、体液、尿、血液、血漿、血清、リンパ液、細胞抽出液、粘液、唾液、糞便、生理的分泌物、細胞分泌液、標的物質を含有するバッファー溶液等が挙げられる。
【0106】
本発明の検出又は分離方法は、本発明のリガンド結合固相担体を用いる以外は、特開2007−224213号公報、WO2011/034115等の記載を参考にし常法にしたがって行えばよい。例えば、本発明のリガンド結合固相担体と標的物質を含む試料を、混合するなどして接触させる工程(接触工程)、及び該接触工程で標的物質を捕捉したリガンド結合固相担体を、磁石などを用いて試料から分離する工程(分離工程)を含む方法が挙げられる。なお、当該分離工程の後に、標的物質を検出する工程、又はリガンドと標的物質を解離させる工程を含んでいてもよい。
【実施例】
【0107】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。実施例における各分析条件は以下に示すとおりである。
【0108】
<分析条件1:体積平均粒径>
各粒子の体積平均粒径は、レーザー回析・散乱粒子径分布測定装置(Beckman Coulter LS13 320)にて測定した。
【0109】
<分析条件2:鎖状ポリマーの分子量測定>
鎖状ポリマーの分子量は、水酸化ナトリウム水溶液を用いて加水分解することで、鎖状ポリマーを粒子から遊離させてから測定した。
すなわち、水酸化ナトリウム水溶液(1N、pH14)4gに粒子1gを分散し、25℃で3時間撹拌して、鎖状ポリマーを粒子から遊離した。磁気を用いて粒子を分離し、鎖状ポリマーが溶解した上清を回収した。次に、この鎖状ポリマー溶液に、溶液のpHが7になるまで1Mの塩酸を加え中和した。鎖状ポリマーの重量の算出に用いるために、加えた1M塩酸の重量から、生成する塩化ナトリウムの重量を計算しておき、中和後の溶液を凍結乾燥することで、粉末として、塩化ナトリウムを含む鎖状ポリマーを得た。また、鎖状ポリマーの重量の算出に用いるために、粉末の重量を測定しておいた。
上記粉体を検体とし、東ソー社製 TSKgel G3000PWXLカラム及び日本分光社製 Chrom NAV クロマトグラフィデータステーションプログラムを使用して、ゲル浸透クロマトグラフィー(Gel PermeationChromatography: GPC)により以下の条件で測定することで、粒子表面に形成された鎖状ポリマーのMn及びMwを測定した。
(測定条件)
流量:0.8mL/分
溶出溶媒:0.2M りん酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)
カラム温度:25℃
標準物質:東ソー社製 TSKgel standard Poly(ethylene oxide) SE−kit 及び和光純薬工業社製 PolyethyleneGlycol 4,000
【0110】
<分析条件3:粒子表面を占める鎖状ポリマーのポリマー密度>
粒子から遊離させた鎖状ポリマーの重量、鎖状ポリマーの数平均分子量、及び粒子の表面積から、下記式よりポリマー密度を算出した。
〔粒子表面を占める鎖状ポリマーの密度(本/nm
2)〕=〔粒子1gに結合した鎖状ポリマーの本数(本)〕/〔粒子1gあたりの総表面積(nm
2)〕
なお、粒子1gに結合した鎖状ポリマーの本数と粒子1gの総表面積の算出法は以下のとおりである。
(粒子1gに結合した鎖状ポリマーの本数)
粒子1gあたりに結合した鎖状ポリマー重量を下記式(α)により算出し、得られた値から、粒子1gあたりに結合した鎖状ポリマーの本数を下記式(β)及び(γ)により算出した。
(α): 粒子1gあたりに結合した鎖状ポリマー重量(mg) = 凍結乾燥後の粉末の重量(mg) − 塩化ナトリウムの重量(mg)
(β): 粒子1gあたりに結合した鎖状ポリマーの本数(mol) = {粒子1gあたりに結合した鎖状ポリマー重量(mg) ÷ 鎖状ポリマーの数平均分子量(g/mol)}÷1000
(γ): 粒子1gあたりに結合した鎖状ポリマーの本数(本) = 粒子1gあたりに結合した鎖状ポリマーの本数(mol) × 6.02×10
23(アボガドロ数)
(粒子1gあたりの総表面積)
下記式(δ)〜(θ)により算出した。なお、式(ε)中の粒子の比重は、ポリマーの比重、磁性体の比重及び粒子に占めるポリマーと磁性体の比率から計算した。
(δ): 粒子1個あたりの体積(μm
3) = 4/3 × π × {粒子の体積平均半径(μm)}
3
(ε): 粒子1個あたりの質量(g) = 粒子1個あたりの体積(μm
3)×粒子の比重(g/μm
3)
(ζ): 粒子1gあたりの粒子数(個) = 1g / 粒子1個あたりの質量(g)
(η): 粒子1個あたりの表面積(nm
2) = 4 × π × {粒子の半径(nm)}
2
(θ): 粒子1gあたりの総表面積(nm
2) = 粒子1個あたりの表面積(nm
2) × 粒子1gあたりの粒子数(個)
【0111】
<分析条件4:反応性官能基(カルボキシ基)含有量>
粒子から遊離させた鎖状ポリマーに含まれる反応性官能基(カルボキシ基)の含有量を、電気伝導度測定法(Metrohm社、794 Basic Titrino)を用いて測定することで、粒子固形分1gあたりの反応性官能基(カルボキシ基)の含有量を求めた。
【0112】
<分析条件5:パーキングエリア>
パーキングエリアは、鎖状ポリマー結合前の粒子の表面積を、上記反応性官能基(カルボキシ基)含有量で除することで求めた。
【0113】
<分析条件6:含有比率(a/b)>
モル数aとモル数cを以下の方法で算出し、次に、モル数aとモル数cを合計することでモル数bを算出し、この値から含有比率(a/b)を求めた。
(モル数a)
モル数a = 粒子1gあたりの反応性官能基(カルボキシ基)量(mol) / 粒子1gあたりのポリマー本数(本)
(モル数c)
下記式(A)、(B)及び(C)から算出した。
(A): 第1の構造単位の粒子1gあたりの重量(g) = 粒子1gあたりの反応性官能基(カルボキシ基)量(mol) × 第1の構造単位の分子量(g/mol)
(B): 第1の構造単位以外の構造単位の粒子1gあたりの重量(g) = 粒子1gあたりの鎖状ポリマーの重量(g) ― 第1の構造単位の粒子1gあたりの重量(g)
(C): モル数c = {第1の構造単位以外の構造単位の粒子1gあたりの重量(g) / 第1の構造単位以外の構造単位の分子量(g/mol)} / 粒子1gあたりのポリマー本数(本)
【0114】
〔合成例1 水酸基を表面に有する磁性粒子の作製〕
ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド75%溶液(「パーロイル355−75(S)」、日油(株)製)2gをドデシル硫酸ナトリウム1質量%水溶液20gと混合し、超音波分散機にて微細乳化した。これを、ポリスチレン粒子(数平均粒子径:0.77μm)13g及び水41gの入った反応器に入れ、25℃で12時間撹拌した。
次いで別の容器にて、スチレン96g及びジビニルベンゼン4gをドデシル硫酸ナトリウム(以下、「SDS」という。)0.1質量%水溶液400gで乳化させ、これを上記反応器に入れ、40℃で2時間撹拌した後、75℃に昇温して8時間重合した。室温まで冷却した後、遠心分離により粒子のみ取り出したものを水洗し、乾燥した。この粒子を核粒子(数平均粒径:1.5μm)とする。
【0115】
次に別の容器にて、油性磁性流体(「EXPシリーズ、EMG」、(株)フェローテック製)にアセトンを加えて粒子を析出沈殿させた後、これを乾燥することにより、疎水化処理された表面を有するフェライト系の磁性体微粒子(平均一次粒子径:0.01μm)を得た。
【0116】
次いで、上記核粒子15g及び上記疎水化処理された磁性体微粒子15gをミキサーでよく混合し、この混合物をハイブリダイゼーションシステムNHS−0型((株)奈良機械製作所製)を使用して、羽根(撹拌翼)の周速度100m/秒(16,200rpm)で5分間処理し、磁性体微粒子からなる磁性体層を表面に有する母粒子(数平均粒子径:2.0μm)を得た。
【0117】
次に、SDS0.50質量%水溶液250gを500mLセパラブルフラスコに投入し、次いで、上記磁性体層を有する母粒子10gを加え、ホモジナイザーで分散した後、60℃に加熱し温度を保持した。
次いで別の容器に、SDS0.50質量%水溶液75g、メタクリル酸メチル(以下、「MMA」という。)13.5g、トリメチロールプロパントリメタクリレート(以下、「TMP」という。)1.5g及びジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド75%溶液(「パーロイル355−75(S)」、日油(株)製)0.3gを入れて分散させプレエマルジョンを得た。このプレエマルジョンを、60℃に保持した上記500mLセパラブルフラスコに2時間かけて全量滴下した。滴下終了後、60℃に保持し1時間撹拌した。
その後別の容器に、SDS0.50質量%水溶液37.5g、グリシジルメタクリレート(以下、「GMA」という。)6.56g、TMP0.94g及びジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド75%溶液(「パーロイル355−75(S)」、日油(株)製)0.15gを入れて分散させプレエマルジョンを得た。このプレエマルジョンを、60℃に保持した上記500mLセパラブルフラスコに1時間20分かけて全量滴下した。その後75℃に昇温した後さらに2時間重合を続けて、反応を完了させた。続けて、この500mLセパラブルフラスコに1mol/Lの硫酸水溶液10mLを入れ、60℃で6時間撹拌した。次いで、上記500mLセパラブルフラスコ中の粒子を、磁気を用いて分離した後、蒸留水を用いて繰り返し洗浄した。
以上により、水酸基を表面に有する磁性粒子を得た。
【0118】
〔合成例2 原子移動ラジカル重合開始基を表面に有する磁性粒子の作製〕
合成例1で得た水酸基を表面に有する磁性粒子10gをフラスコに投入し、窒素フロー下、脱水テトラヒドロフラン32mLとトリエチルアミン7.5mLとを加え、撹拌した。このフラスコを氷浴に浸し、2−ブロモイソブチリルブロミド6.3mLを30分かけて滴下した。室温で6時間反応後、フラスコ内の粒子を、磁気を用いて分離した後、粒子をアセトンに再分散させた。磁気分離と再分散をさらに複数回行った後、SDS0.10質量%水溶液に粒子を分散した。蛍光X線分析により、原子移動ラジカル重合開始基(2−ブロモイソブチリル基)に含まれるBrを検出した。
以上により、原子移動ラジカル重合開始基(2−ブロモイソブチリル基)を表面に有する磁性粒子を得た。この粒子を、粒子(A)と命名した。
【0119】
〔実施例1 反応性官能基(カルボキシ基)を有する親水性ランダム共重合体の鎖状ポリマーが表面に結合した磁性粒子の作製 1〕
以下の合成経路に従い、表題の磁性粒子を作製した(なお、式中のranは、これに隣り合う2種の構造単位がランダムポリマー構造であることを意味する。以下同じ。)。具体的手順を以下に示す。
【0120】
【化9】
【0121】
合成例2で得た粒子(A)6gを、りん酸ナトリウム緩衝液(50mM、pH7.8)18mLに分散させ、これに、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド3g、及びトリス(2−ピリジルメチル)アミンと臭化銅(II)とをそれぞれ0.05mol/L含有する混合水溶液1.20mLを加えた。続いて、L−アスコルビン酸0.2mol/L水溶液3mLを加え、密栓し反応を開始した。45℃で4時間撹拌後、開封し空気にばく露することで反応を停止させた。磁気を用いて粒子を分離し、未反応のモノマーや触媒等を除去し、得られた粒子を水に分散させた。
以上により、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド由来の繰り返し単位で構成される鎖状ポリマーが表面に結合した磁性粒子を得た。この粒子を、粒子(B)と命名した。
【0122】
次に、粒子(B)1gを、ジメチルスルホキシド5mLに分散させ、これに、トリエチルアミン0.2mLと無水コハク酸とをジメチルスルホキシド4.8mLに溶解させた溶液を加え、25℃で4時間反応させた。この反応は、鎖状ポリマー中の反応性官能基(カルボキシ基)の量が異なる粒子を作製するために、0.01g、0.02g、0.04g、0.08g及び0.16gの5通りの無水コハク酸の添加量で行った。
その後、磁気を用いて粒子を分離した後、水に分散させた。
以上により、反応性官能基(カルボキシ基)を有する親水性ランダム共重合体の鎖状ポリマーが表面に結合した磁性粒子を得た。得られた粒子を、反応性官能基量(カルボキシ基量)が少ない順に、粒子(C)〜(G)と命名した。
【0123】
〔実施例2 反応性官能基(カルボキシ基)を有する親水性ランダム共重合体の鎖状ポリマーが表面に結合した磁性粒子の作製 2〕
以下の合成経路に従い、表題の磁性粒子を作製した。具体的手順を以下に示す。
【0124】
【化10】
【0125】
合成例2で得た粒子(A)2gを、りん酸ナトリウム緩衝液(50mM、pH7.8)/エタノール=1/1(v/v)の混合溶液6mLに分散させ、これに、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド及び2−メタクリロイルオキシエチルサクシネートを計1gと、さらにトリス(2−ピリジルメチル)アミンと臭化銅(II)とをそれぞれ0.05mol/L含有する混合水溶液0.40mLとを加えた。続いて、L−アスコルビン酸0.2mol/L水溶液1mLを加え、密栓し反応を開始した。この反応は、鎖状ポリマー中の反応性官能基(カルボキシ基)の量が異なる粒子を作製するために、1/1(w/w)、4/1(w/w)及び9/1(w/w)の3通りの2−ヒドロキシエチルアクリルアミド/2−メタクリロイルオキシエチルサクシネート混合比率で行った。45℃で4時間撹拌後、開封し空気にばく露することで反応を停止させた。
その後、磁気を用いて粒子を分離し、未反応のモノマーや触媒等を除去し、得られた粒子を水に分散させた。
以上により、反応性官能基(カルボキシ基)を有する親水性ランダム共重合体の鎖状ポリマーが表面に結合した磁性粒子を得た。得られた粒子を、反応性官能基量(カルボキシ基量)が少ない順に、粒子(H)〜(J)と命名した。
【0126】
〔実施例3 反応性官能基(カルボキシ基)を有する親水性ランダム共重合体の鎖状ポリマーが表面に結合した磁性粒子の作製 3〕
以下の合成経路に従い、表題の磁性粒子を作製した。具体的手順を以下に示す。
【0127】
【化11】
【0128】
合成例2で得た粒子(A)2gを、りん酸ナトリウム緩衝液(50mM、pH7.8)6mLに分散させ、これに、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン及び2−ヒドロキシエチルアクリルアミドを計0.5gと、さらにトリス(2−ピリジルメチル)アミンと臭化銅(II)とをそれぞれ0.05mol/L含有する混合水溶液0.40mLとを加えた。続いて、L−アスコルビン酸0.2mol/L水溶液1mLを加え、密栓し反応を開始した。この反応は、1/1(w/w)及び4/1(w/w)の2通りのN−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン/2−ヒドロキシエチルアクリルアミド混合比率で行った。45℃で4時間撹拌後、開封し空気にばく露することで反応を停止させた。
その後、磁気を用いて粒子を分離し、未反応のモノマーや触媒等を除去し、得られた粒子を水に分散した。
【0129】
次に、得られた粒子1.5gを、ジメチルスルホキシド8mLに分散させ、これに、トリエチルアミン0.3mLと無水コハク酸1.5gとをジメチルスルホキシド7.2mLに溶解させた溶液を加えた。25℃で4時間反応させることで反応性官能基(カルボキシ基)を導入した後、磁気を用いて粒子を分離し、粒子を水に分散した。
以上により、反応性官能基(カルボキシ基)を有する親水性ランダム共重合体の鎖状ポリマーが表面に結合した磁性粒子を得た。得られた粒子を、反応性官能基量(カルボキシ基量)が少ない順に、粒子(K)〜(L)と命名した。
【0130】
〔実施例4 反応性官能基(カルボキシ基)を有する親水性ランダム共重合体構造を含む鎖状ポリマーが表面に結合した磁性粒子の作製〕
以下の合成経路に従い、表題の磁性粒子を作製した。具体的手順を以下に示す。
【0131】
【化12】
【0132】
合成例2で得た粒子(A)2gを、りん酸ナトリウム緩衝液(50mM、pH7.8)6mLに分散させ、これに、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン0.5g、及びトリス(2−ピリジルメチル)アミンと臭化銅(II)とをそれぞれ0.05mol/L含有する混合水溶液0.40mLを加えた。続いて、L−アスコルビン酸0.2mol/L水溶液1mLを加え、密栓し反応を開始した。45℃で4時間撹拌後、開封し空気にばく露することで反応を停止させた。磁気を用いて粒子を分離し、未反応のモノマーや触媒等を除去し、得られた粒子をりん酸ナトリウム緩衝液(50mM、pH7.8)6mLに分散させた。
【0133】
次に、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン/2−ヒドロキシエチルアクリルアミド=1/1(w/w)計0.5g、及びトリス(2−ピリジルメチル)アミンと臭化銅(II)とをそれぞれ0.05mol/L含有する混合水溶液0.40mLを加えた。続いて、L−アスコルビン酸0.2mol/L水溶液1mLを加え、密栓し反応を開始した。45℃で1時間撹拌後、開封し空気にばく露することで反応を停止させた。磁気を用いて粒子を分離し、未反応のモノマーや触媒等を除去し、得られた粒子を水に分散させた。
【0134】
次に、得られた粒子1.5gを、ジメチルスルホキシド8mLに分散させ、これに、トリエチルアミン0.3mLと無水コハク酸1.5gとをジメチルスルホキシド7.2mLに溶解させた溶液を加えた。25℃で4時間反応させることで反応性官能基(カルボキシ基)を導入した後、磁気を用いて粒子を分離し、粒子を水に分散した。
以上により、反応性官能基(カルボキシ基)を有する親水性ランダム共重合体構造を含む鎖状ポリマーが表面に結合した磁性粒子を得た。得られた粒子を、粒子(M)と命名した。
【0135】
〔比較例1 鎖状ポリマーを有さない反応性官能基(カルボキシ基)含有磁性粒子の作製〕
合成例1で得た水酸基を表面に有する磁性粒子1gを、1,3−ジオキソラン4.8mLに分散させ、これに、トリエチルアミン0.2mLと無水コハク酸0.08gを1,3−ジオキソラン4.8mLに溶解させた溶液を加えた。25℃で4時間反応後、磁気を用いて粒子を分離し、粒子を水に分散させた。
以上により、鎖状ポリマーを有さない反応性官能基(カルボキシ基)含有磁性粒子を得た。得られた粒子を、粒子(X)と命名した。
【0136】
〔比較例2 ブロック共重合体の鎖状ポリマーが表面に結合した磁性粒子の作製〕
合成例2で得た粒子(A)2gを、りん酸ナトリウム緩衝液(50mM、pH7.8)6mLに分散させ、これに、N−メタクリロイルオキシエチル−N,N−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン0.5g、及びトリス(2−ピリジルメチル)アミンと臭化銅(II)とをそれぞれ0.05mol/L含有する混合水溶液0.40mLを加えた。続いて、L−アスコルビン酸0.2mol/L水溶液1mLを加え、密栓し反応を開始した。45℃で4時間撹拌後、開封し空気にばく露することで反応を停止させた。磁気を用いて粒子を分離し、未反応のモノマーや触媒等を除去し、得られた粒子をりん酸ナトリウム緩衝液(50mM、pH7.8)6mLに分散させた。
【0137】
次に、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド0.5g、及びトリス(2−ピリジルメチル)アミンと臭化銅(II)とをそれぞれ0.05mol/L含有する混合水溶液0.40mLを加えた。続いて、L−アスコルビン酸0.2mol/L水溶液1mLを加え、密栓し反応を開始した。45℃で一定時間(1時間又は30分間)撹拌後、開封し空気にばく露することで反応を停止させた。磁気を用いて粒子を分離し、未反応のモノマーや触媒等を除去し、得られた粒子を水に分散した。
【0138】
次に、得られた粒子1.5gを、ジメチルスルホキシド8mLに分散させ、これに、トリエチルアミン0.3mLと無水コハク酸1.5gとをジメチルスルホキシド7.2mLに溶解させた溶液を加えた。25℃で4時間反応させることで反応性官能基(カルボキシ基)を導入した後、磁気を用いて粒子を分離し、粒子を水に分散した。
以上により、ブロック共重合体の鎖状ポリマーが表面に結合した磁性粒子を得た。得られた粒子について、上記一定時間を1時間として得た粒子を粒子(Y)、30分間として得た粒子を粒子(Z)とそれぞれ命名した。
【0139】
〔比較例3 カルボキシ基を有さない親水性鎖状ホモポリマーが表面に結合した磁性粒子の作製〕
合成例2で得た粒子(A)6gを、りん酸ナトリウム緩衝液(50mM、pH7.8)18mLに分散させ、これに、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド3g、及びトリス(2−ピリジルメチル)アミンと臭化銅(II)とをそれぞれ0.05mol/L含有する混合水溶液1.20mLを加えた。続いて、L−アスコルビン酸0.2mol/L水溶液3mLを加え、密栓し反応を開始した。45℃で4時間撹拌後、開封し空気にばく露することで反応を停止させた。磁気を用いて粒子を分離し、未反応のモノマーや触媒等を除去し、得られた粒子を水に分散した。
以上により、2−ヒドロキシエチルアクリルアミド由来の繰り返し単位で構成される鎖状ポリマーが表面に結合した磁性粒子を得た。この粒子を、粒子(W)と命名した。
【0140】
上記各実施例及び比較例で得た粒子(C)〜(M)、(X)〜(Z)、(W)について、前掲の分析条件に従って、体積平均粒径や鎖状ポリマーの分子量等を測定した。結果を表1〜2に示す。
【0141】
〔試験例〕
粒子(C)〜(M)及び(W)〜(Z)1mgを、それぞれ2mLエッペンドルフチューブに投入し、PBS(−)緩衝液で洗浄した。各粒子にJurkat細胞破砕液(タンパク質夾雑物100μgが含まれる)100μLを加え、30分間インキュベートした。磁気を用いて粒子を分離して上清を除去し、粒子をTBS−T(0.05質量%Tween20)緩衝液で5回洗浄した。次に、各粒子にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液(0.5質量%)を加え、非特異吸着したタンパク質夾雑物を粒子から剥離した。非特異吸着したタンパク質夾雑物の量をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動により目視で確認した。結果を
図1に示す。
そして、反応性官能基量(カルボキシ基量)を考慮した上で、各粒子の非特異吸着抑制効果について以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
【0142】
(評価基準)
AA:タンパク質夾雑物の吸着がみられず、非常に良好
A:反応性官能基量が大きいにも拘らず、タンパク質夾雑物の吸着があまりみられず、良好
B:タンパク質夾雑物の吸着が少し確認され、且つ反応性官能基量を考慮すると、反応性官能基の多くにタンパク質夾雑物が吸着していると考えられるため、やや不良
C:タンパク質夾雑物の吸着がはっきりと確認され、不良
【0143】
【表1】
【0144】
【表2】
【0145】
図1及び表2に示すとおり、実施例の各粒子は、比較例1の粒子と比較して、いずれも、タンパク質夾雑物の非特異吸着を大きく抑制していた。この結果は、親水性の鎖状ポリマーが表面に結合していることに起因するものと推察される。
【0146】
また、実施例の粒子(C)、(D)、(E)、(H)、(I)、(K)、(L)及び(M)は、比較例2の粒子と比較して、反応性官能基量(カルボキシ基量)が同等又はそれ以上であるにも拘らず、タンパク質夾雑物の非特異吸着を大きく抑制していた。一方、実施例の粒子(F)、(G)及び(J)は、比較例2の粒子と比較して、反応性官能基量(カルボキシ基量)が2倍以上であるにも拘らず、タンパク質夾雑物の非特異吸着があまりみられなかった。すなわち、実施例の粒子(F)、(G)及び(J)は、比較例2の粒子よりも、反応性官能基への非特異吸着は少ないと云える。
【0147】
また、実施例の粒子のうち、含有比率(a/b)が0.35以下のもの(粒子(C)、(D)、(E)、(H)、(I)、(K)及び(M))は、いずれも、タンパク質夾雑物の非特異吸着が極めて効果的に抑制されていた。
【0148】
また、実施例の粒子(K)〜(M)は、含有比率(a/b)が比較的高く0.3を超えるような場合でも、タンパク質夾雑物の非特異吸着が効果的に抑制されていた。この結果は、鎖状ポリマーに含まれるベタイン骨格に起因するものと推察される。