特許第6289610号(P6289610)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6289610-単一ヌクレオチド検出方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6289610
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】単一ヌクレオチド検出方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/68 20180101AFI20180226BHJP
   C12M 1/34 20060101ALN20180226BHJP
【FI】
   C12Q1/68 AZNA
   !C12M1/34 B
【請求項の数】21
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-507057(P2016-507057)
(86)(22)【出願日】2014年4月9日
(65)【公表番号】特表2016-519576(P2016-519576A)
(43)【公表日】2016年7月7日
(86)【国際出願番号】GB2014051106
(87)【国際公開番号】WO2014167324
(87)【国際公開日】20141016
【審査請求日】2015年12月7日
(31)【優先権主張番号】1306445.6
(32)【優先日】2013年4月9日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】510060453
【氏名又は名称】ベース4 イノベーション リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】311007497
【氏名又は名称】メディカル リサーチ カウンシル
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100136858
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【弁理士】
【氏名又は名称】柿沼 公二
(72)【発明者】
【氏名】キャメロン アレキサンダー フレイリング
(72)【発明者】
【氏名】バーナビー バームフォース
(72)【発明者】
【氏名】ブルーノ フラヴィオ ノゲイラ デ スーザ ソアレス
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ヘンリー アイザック
(72)【発明者】
【氏名】ボリス ブレイナー
(72)【発明者】
【氏名】アレッサンドラ ナターレ
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル アマーシオ
(72)【発明者】
【氏名】ポール ディア
【審査官】 中村 勇介
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2003/0138831(US,A1)
【文献】 国際公開第2003/080861(WO,A1)
【文献】 特表平08−506664(JP,A)
【文献】 特表2009−534653(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0164181(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0184020(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q1/00−3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)加ピロリン酸分解酵素の存在下の漸進的加ピロリン酸分解により、分析物から単一ヌクレオチド塩基三リン酸のストリームを生成するステップ;(2)各単一ヌクレオチド塩基三リン酸を、ポリメラーゼ及びリガーゼの存在下、捕捉システムと反応させることにより捕捉分子を生成するステップ、ここで、前記捕捉システムは(i)(a)二本鎖領域および一本鎖領域を備える第1オリゴヌクレオチド、ならびに(b)そのヌクレオチド塩基配列が前記第1オリゴヌクレオチドの一本鎖領域のそれに少なくとも部分的に相補的である第2一本鎖オリゴヌクレオチド;又は(ii)その末端が2つの異なる二本鎖オリゴヌクレオチド領域に結合した一本鎖ヌクレオチド領域を備える単一オリゴヌクレオチド、のいずれかを含む;(3)前記捕捉分子の少なくとも一部を増幅させ、単一ヌクレオチド塩基三リン酸に特徴的な複数のアンプリコンを生成するステップ;(4)前記アンプリコンを、特徴的な検出可能要素を有する対応プローブで標識するステップ;および(5)前記検出可能要素に特徴的な特性を検出するステップ、により特徴づけられる、ポリヌクレオチド分析物中のヌクレオチド塩基の配列を決定する方法。
【請求項2】
前記ストリーム中のヌクレオチド塩基の順序が、分析物中のヌクレオチド塩基配列に対応することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記捕捉システム(i)が、ヌクレオチド塩基三リン酸の各タイプの2つの成分を備えることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記捕捉システム(ii)が、ヌクレオチド塩基三リン酸の各タイプの単一オリゴヌクレオチドを備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリヌクレオチド分析物が、表面に結合されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
ステップ(1)の反応条件下で、前記加ピロリン酸分解酵素が、エキソヌクレアーゼ挙動もエンドヌクレアーゼ挙動も示さないことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(1)が、加ピロリン酸分解酵素、ピロリン酸アニオンおよびマグネシウムカチオンを含む流動水性媒体の存在下で非平衡条件下で行われ、単一ヌクレオチド塩基が、それらが生成される反応ゾーンから連続的に除去されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
ステップ(1)および(2)の間に、残留ピロリン酸アニオンが、ピロホスファターゼによりすべて破壊されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
捕捉システム(i)において、前記第1オリゴヌクレオチドがj形状であることを特徴とする、請求項1〜3および5〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
捕捉システム(i)において、前記第1オリゴヌクレオチドの全長が、20〜100ヌクレオチド塩基であることを特徴とする、請求項1〜3および5〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記捕捉システム(i)が、4つの異なる第1オリゴヌクレオチド中の4つの異なる一本鎖領域の1つの一部に相補的な配列をそれぞれ有する4つの異なる第2オリゴヌクレオチドタイプを備えることを特徴とする、請求項1〜3および5〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記捕捉システム(ii)において、各二本鎖オリゴヌクレオチド領域が、10〜30ヌクレオチド対からなることを特徴とする、請求項1、2および4〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記捕捉システム(ii)において、それぞれクローズドループである一本鎖ヌクレオチド領域から離れた末端を備える2つの別々の二本鎖オリゴヌクレオチド領域が用いられることを特徴とする、請求項1、2、4〜8および12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記捕捉システム(ii)において、前記二本鎖オリゴヌクレオチド領域が、一本鎖オリゴヌクレオチド前駆体から、その末端を折り畳み、前記一本鎖ヌクレオチド領域からなるギャップをもたらすことにより誘導可能であることを特徴とする、請求項1、2、4〜8、12および13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記捕捉システムが、各タイプが異なるヌクレオチド塩基に選択的である少なくとも2つの異なる捕捉システムタイプを備えることを特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
ステップ(3)および(4)が同時に行われることを特徴とする、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
ステップ(3)の増幅がポリメラーゼ連鎖反応、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅およびローリングサークル増幅から選択される方法を用いて行われることを特徴とする、請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
ステップ(2)で用いられるリガーゼが、ステップ(4)を行う前に不活性化されることを特徴とする、請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
ステップ(4)で用いられる前記プローブが、分子ビーコンおよびスコーピオンプローブから選択されることを特徴とする、請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
ステップ(5)が、活性化プローブ上でフルオロフォアにより発光される蛍光を検出することを含むことを特徴とする、請求項1〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
ステップ(1)〜(5)の少なくとも1つが、微小液滴中で行われることを特徴とする、請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RNAまたはDNAを、漸進的分解によりそれらから生成される単一ヌクレオチド塩基の順序づけられた配列を検出することにより、特徴分析する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝物質の次世代配列決定は、ますます高速化する配列決定装置の販売に伴い配列決定の単価が下落しているように、すでに一般に生物科学、とくに医学に顕著な影響を与えている。このように、1つのこうした装置では、二本鎖DNA分析物はまず複数のより小さなポリヌクレオチド断片に分解され、そのそれぞれは一本鎖の両端で一本鎖第1オリゴヌクレオチドを不対アデニン塩基へのハイブリダイゼーションによりその補体の両端に結合することができるようにまずアデニル化される。こうして得られる処理断片は次にサイズ選択され、それ自体が第1の配列補体である結合一本鎖第2オリゴヌクレオチドで覆われた表面上で捕捉され、実際にはさらなるハイブリダイゼーションにより表面結合二本鎖断片のライブラリを形成することができる。その後のクラスタリングステップでは、これらのライブラリ構成要素は次に、未使用の第2オリゴヌクレオチドを用いる伸長および等温架橋反応を用いて表面上で何百万回もクローン的に増幅される。これは、実際には、その鎖の1つによって表面に結合したポリヌクレオチド断片の密集体をもたらす。各断片の非結合相補鎖は次に配列決定用の結合一本鎖断片を残して除去される。配列決定段階では、これらの一本鎖断片のそれぞれはプライムされ、ポリメラーゼ連鎖反応およびジデオキシヌクレオチド三リン酸(ddNTP)形態のDNAの4つの特徴的なヌクレオチド塩基の混合物を用いる伸長によりその相補鎖が再形成される。各ddNTPタイプは異なる波長で蛍光する異なるフルオロフォアで標識される部分で末端ブロックされる。伸長反応はここで3ステップのサイクルの形態をとる;第1に、適切なddNTPが伸長鎖に結合され;第2に、これが含有するヌクレオチド塩基が試料を照射し、蛍光の波長を検出することにより識別され;最後に、末端ブロックおよびその関連フルオロフォアが除去され、次の伸長事象の発生を可能にする。この手段により、相補鎖の配列を塩基ごとに形成することができる。この方法は高度に自動化することができ、高精度の配列リードを生成することができるが、その処理速度は伸長サイクルの速度により制限されることが理解されるだろう。このように、実際には、この技術の使用は比較的短いポリヌクレオチド断片の並列処理およびそれから得られるさまざまなリードからの全配列のアセンブリを含む傾向がある。これは本質的にコンピュータ処理の複雑さおよび潜在的なエラーの発生につながり得る。
【0003】
より最近では、直接配列決定方法の開発の努力がなされている。例えば、国際公開第WO2009/030953号は、とくに一本または二本鎖ポリヌクレオチド試料(例えば自然発生RNAまたはDNA)中のヌクレオチド塩基または塩基対の配列がこれをナノポアの開口部内にまたはこれに隣接して並置されたプラズモンナノ構造を備えるナノ多孔質基板を通して転位させることにより読まれる、新規高速配列決定装置について開示する。この装置では、プラズモンナノ構造は、その中で(任意で標識された)各ヌクレオチド塩基が順に光子を入射光との相互作用により特徴的に蛍光またはラマン散乱させるように誘導される、検出窓(本質的には電磁場)を画定する。こうして生成された光子はその後遠隔検出され、多重化され、その情報内容がポリヌクレオチドに関連するヌクレオチド塩基配列に特徴的であるデータストリームに変換される。この配列はその後、それと一体化したマイクロプロセッサまたはそれに付属した補助計算装置中にプログラムされた対応するソフトウェアにおいて具現化された計算アルゴリズムを用い、データストリームから回収することができる。プラズモンナノ構造およびそれらの関連共鳴特性の使用についてのさらなる背景は、例えばAdv.Mat.2004,16(19)pp.1685−1706を参照することができる。
【0004】
ポリヌクレオチドの高速配列決定の別の装置は、例えば、米国特許第US6627067号、第US6267872号および第US6746594号に記載される。そのもっとも単純な形態では、この装置はプラズモンナノ構造の代わりに電極を用い、基板上またはナノポアの開口部中もしくは周辺の検出窓を画定する。次に電極に異なる電位が印加され、その間を流動するイオン性媒体の電気特性の変化が、ナノポアを通るポリヌクレオチドおよび関連電解質の電気泳動的転位の結果として、時間の関数で測定される。この装置では、さまざまな個別のヌクレオチド塩基が検出窓を通過する際、それらはこれを連続的に閉塞および開放する「事象」を引き起こし、電流または抵抗の特徴的な変動をもたらす。これらの変動はその後上述したような分析に適したデータストリームを生成するのに用いられる。
【0005】
安定な液滴ストリーム、とくに微小液滴ストリームの生成は、分子生物学においてすでに用途を有するもう1つの技術開発分野である。例えば、米国特許第US7708949号は安定な油中水滴を生成する新規マイクロ流体方法を開示し、例えば米国特許第US2011/0250597号は1つの核酸テンプレート(一般的にはポリヌクレオチドDNAまたはRNA断片)およびポリメラーゼ連鎖反応を用いてテンプレートを増幅させることができる複数のプライマー対を含有する微小液滴を生成するためのこの技術の利用について記載する。当技術分野に関する他の特許出願としては一般的には日本国特許第JP2004/290977号、第JP2004/351417号、米国特許第US2012/0122714号、第US2011/0000560号、第US2010/01376163号、第US2010/0022414号および第US2008/0003142号が挙げられる。
【0006】
国際公開第WO2004/002627号は、アップストリームおよびダウンストリームマイクロ流体領域間に不連続部分を形成するステップを含む各種装置を用いる液体−液体および気体−液体分散物の形成方法について開示する。しなしながら、単一ヌクレオチドDNA配列決定に対するその用途は教示されていない。
【0007】
国際公開第WO2010/077859号は、電極を備える基板、反応器経路、ならびにヌクレオチド塩基、洗浄バッファー、試料および酵素リザーバを備える液滴アクチュエータについて教示する。アクチュエータは一般的には核酸の増幅および配列決定に有用であると言及されるが、我々が後述する分析物分解方法の教示はない。むしろ、これは完全に異なる方法に関し;パイロシーケンシングを用いる分析物の相補鎖の合成を観察するものである。米国特許第US2009/0280475号は同様の対象に関する。
【0008】
我々はここで、1つの実施形態では分析物の漸進的分解によりその順序が分析物中の配列に特徴的なヌクレオチド塩基のストリームを生成するステップ;およびその後各ヌクレオチド塩基を検出を可能にするように捕捉するステップを含む新規配列決定方法を開発した。
【0009】
国際公開第WO94/18218号は、単一ヌクレオチドの順序づけられたストリームが分析物から分離され、その後各ヌクレオチドがレーザーを用いて励起され、その特徴的なスペクトル発光が検出される蛍光増強固体マトリックス中に含有されるゲノム配列決定装置について開示する。この配列決定装置により用いられる単一ヌクレオチド転位方法は、一連の液滴ではなく流動非混和性液体の単一の二重シースを形成するステップを含む。さらに、記載される配列決定装置は我々が記載するタイプの捕捉システムおよびフルオロフォア解放方法を用いるよりむしろ直接単一ヌクレオチドを検出することを求める。発光を検出する際に信号対雑音比の問題を引き起こすため、これは欠点であると我々は考える。これは配列決定装置自体の全体的な感度およびしたがって実用可能性を妥協するだろう。
【0010】
Stephan et al Journal of Biotechnology 86(2001)pp.255-267は、フルオロフォアで標識された固定化DNA試料のエキソヌクレアーゼ分解により生成される単一ヌクレオチドを計数する一般的な方法について教示する。しかしながら生成される異なる単一ヌクレオチドタイプ間の識別についての情報は提供されていない。
【0011】
デオキシリボヌクレオチド三リン酸の形態の単一ヌクレオチド塩基のストリームを生成するためのポリヌクレオチドの漸進的加ピロリン酸分解の使用は、http://www.mrc-lmb.cam.ac.uk/happy/HappyGroup/seq.htmlで概略的な形態で開示されたが、用いられる実際の方法についての情報はほとんど提供されていない。さらに、国際公開第WO03/080861号は、インテリジェントな染料で標識されたピロリン酸アニオンの存在下で行われる加ピロリン酸分解によりDNA分析物が単一ヌクレオチドの順序づけられたストリームに順次分解される配列決定方法について記載する。1つの例ではピロリン酸アニオンはこれが結合した特定のヌクレオチドタイプに応じて異なる蛍光寿命を有する染料JF−4で標識される。標識単一ヌクレオチドのストリームは次にレーザーにより励起され、分光分析され、ヌクレオチドの性質およびしたがってその順序が決定される。ここでも同様に、以下に我々が記載する捕捉システムおよびフルオロフォア解放方法を用いるよりむしろ直接単一ヌクレオチドが検出される。したがってこの方法も信号対雑音比およびしたがって感度の問題を引き起こすだろうと考えられる。
【発明の概要】
【0012】
本発明によると、(1)分析物から単一ヌクレオチド塩基のストリームを生成するステップ;(2)各単一ヌクレオチド塩基を捕捉システムと反応させることにより捕捉分子を生成するステップ;(3)捕捉分子の少なくとも一部を増幅させ、単一ヌクレオチド塩基に特徴的な複数のアンプリコンを生成するステップ;(4)アンプリコンを、特徴的な検出可能要素を有する対応プローブで標識するステップ;および(5)検出可能要素に特徴的な特性を検出するステップ、により特徴づけられる、ポリヌクレオチド分析物中のヌクレオチド塩基の配列を決定する方法が提供される。
【0013】
本発明の方法のステップ(1)は、ポリヌクレオチド分析物から単一ヌクレオチド塩基のストリームを生成すること含む。このステップで用いられる分析物は、適切には、多数のヌクレオチド塩基からなる二本鎖ポリヌクレオチドである。原則的に、ポリヌクレオチドの長さは、無制限とすることができ、ヒトゲノム断片中に見られる最大数百万のヌクレオチド塩基を含む。分析物自体は、適切には、自然発生のRNAまたはDNAであるが、本方法は、合成生成のRNAもしくはDNAまたは自然の中で一般的には見られないヌクレオチド塩基;すなわち、アデニン、チミン、グアニン、シトシンおよびウラシル以外のヌクレオチド塩基を全体的または部分的に構成する他の核酸を配列決定するのに用いることもできる。これらの例としては、4−アセチルシチジン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウリジン、2−O−メチルシチジン、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウリジン、5−カルボキシメチルアミノ−メチルウリジン、ジヒドロウリジン、2−O−メチルシュードウリジン、2−O−メチルグアノシン、イノシン、N6−イソペンチルアデノシン、1−メチルアデノシン、1−メチルシュードウリジン、1−メチルグアノシン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアノシン、2−メチルアデノシン、2−メチルグアノシン、3−メチルシチジン、5−メチルシチジン、N6−メチルアデノシン、7−メチルグアノシン、5−メチルアミノメチルウリジン、5−メトキシアミノメチル−2−チオウリジン、5−メトキシウリジン、5−メトキシカルボニルメチル−2−チオウリジン、5−メトキシカルボニルメチルウリジン、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデノシン、ウリジン−5−オキシ酢酸−メチルエステル、ウリジン−5−オキシ酢酸、ワイブトキソシン、ワイブトシン、シュードウリジン、キューオシン、2−チオシチジン、5−メチル−2−チオウリジン、2−チオウリジン、4−チオウリジン、5−エチルウリジン、2−O−メチル−5−メチルウリジンおよび2−O−メチルウリジンが挙げられる。
【0014】
ステップ(1)は、適切には、ポリヌクレオチド分析物を基板に結合させる第1サブステップをさらに含む。一般的に、基板は、マイクロ流体表面、マイクロビーズまたはガラスもしくは非分解性ポリマーからなる透過性膜を備える。好適には、基板は、分析物を受け入れるよう適合した表面をさらに備える。分析物をこうした表面に結合させることができる多数の方法があり、原則的にはそのすべてを用いることができる。例えば、1つの方法は、ガラス表面をエポキシシラン、アミノヒドロカルビルシランまたはメルカプトシランのような官能化シランでプライミングすることを含む。こうしてもたらされた反応性部位は、次に、末端アミン、スクシニルまたはチオール基を有する分析物の誘導体で処理することができる。
【0015】
ステップ(1)の1つの実施形態において、分析物は、その順序が前者の配列に対応する単一ヌクレオチド塩基のストリームを生成するよう処理される。このステップは、好適には、酵素を含む反応媒体の存在下で20〜90℃の範囲内の温度で行われる。好適に、この処理は、単一ヌクレオチド塩基が反応ゾーンから連続的に除去されるように非平衡流の条件下で行われる。もっとも好適には、反応は、酵素を含有する水性緩衝媒体に分析物が結合した表面上を連続的に流動させることにより行われる。
【0016】
この実施形態の好適な形態において、ステップ(1)で用いられる酵素は、適切な反応速度でデオキシリボヌクレオチド三リン酸をもたらす分析物の漸進的3’−5’加ピロリン酸分解を生じさせることができるものである。好適には、この分解速度は、可能な限り速く、1つの実施形態では毎秒1〜50、好適には1〜20ヌクレオチド塩基の範囲内にある。ポリヌクレオチドに適用されるような加ピロリン酸分解反応についてのさらなる情報は、例えば、J.Biol.Chem.244(1969)pp.3019−3028を参照することができる。この加ピロリン酸分解反応で用いられる酵素は、好適には、反応条件下で本質的にエキソヌクレアーゼ活性もエンドヌクレアーゼ活性も示さないポリメラーゼからなる群から選択される。有利に用いることができるポリメラーゼの例としては、これらに限定されないが、大腸菌(例えばクレノウ断片ポリメラーゼ)、テルムス・アクアティカス(Thermus aquaticus)(例えばTaq Pol)ならびにバチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、バチルス・カルドベロックス(Bacillus caldovelox)およびバチルス・カルドテナックス(Bacillus caldotenax)のような細菌から得られる原核生物pol1型酵素または酵素誘導体が挙げられる。適切には、加ピロリン酸分解は、ピロリン酸アニオンおよびマグネシウムカチオンを好適にはミリモル濃度でさらに含む媒体の存在下で行われる。本発明の別の実施形態において、デオキシリボヌクレオチド三リン酸は、分析物をエキソヌクレアーゼおよびキナーゼで処理することにより、2ステップで生成することができる。
【0017】
本発明の方法のステップ(2)において、ステップ(1)で生成された各単一ヌクレオチド塩基は、ヌクレオチド塩基の1つ以上のオリゴマーを含む捕捉システム自体により捕捉される。好適には、このステップが行われる前に、単一ヌクレオチド塩基を含有する水性媒体がピロホスファターゼで処理され、すべての残留ピロリン酸がリン酸アニオンに加水分解される。
【0018】
第1実施形態において、捕捉システムは、あるクラスの第1および第2オリゴヌクレオチドの対の1つを備える。こうした対における第1オリゴヌクレオチドは、好適には、(a)第1二本鎖領域および(2)nを1より大きい、好適には5より大きいものとした、nヌクレオチド塩基からなる第2一本鎖領域を備える。1つのサブクラスにおいて、第1オリゴヌクレオチドは、前駆体の3’末端を部分的に折り畳み、「j形状」と呼ぶことができる構成をもたらすことにより二本鎖領域が形成された概念的なまたは実際の一本鎖オリゴヌクレオチド前駆体から誘導される分子構造を有するものとみなすことができる。別のサブクラスにおいて、第1オリゴヌクレオチドは、第3の短い一本鎖オリゴヌクレオチドを長い第4の一本鎖オリゴヌクレオチドの3’末端上にハイブリダイズした後、二本鎖である得られる分子の末端を例えば2つの鎖の末端ヌクレオチドを架橋する保護基により「平滑」にすることにより生成される。一般的に、第1オリゴヌクレオチドの全長は、最大150ヌクレオチド塩基、好適には20〜100ヌクレオチド塩基である。これと同時に、整数nは、5〜40、好適には10〜30であることが好ましい。
【0019】
対における第2オリゴヌクレオチドに関して、これは一本鎖であり、適切には、全体的または部分的に、二本鎖領域の末端の1ヌクレオチド塩基向こうの第1オリゴヌクレオチドの一本鎖領域のそれの補体であるヌクレオチド塩基配列を有する。第2オリゴヌクレオチドの長さは重要ではなく、これが結合することができる一本鎖領域より長くも短くもすることができるが、好適には、n−1ヌクレオチド塩基長ではない。より好適には、第2オリゴヌクレオチドの長さは、捕捉分子中その2つの鎖の一方または他方に不対ヌクレオチド塩基(例えば2〜10ヌクレオチド塩基)の短いオーバーハングが残るように選択される。このクラスの捕捉システムは、単一ヌクレオチド塩基を第1オリゴヌクレオチドの二本鎖末端に結合させ、第2オリゴヌクレオチドを残った一本鎖領域上にハイブリダイズおよびライゲートし、そのオーバーハング以外は二本鎖である捕捉分子を生成することにより機能する。
【0020】
第2実施形態において、捕捉システムは、それぞれその末端が2つの異なる二本鎖領域に結合した一本鎖ヌクレオチド領域からなるあるクラスの単一オリゴヌクレオチドを備える。このクラスの捕捉システムでは、一本鎖ヌクレオチド領域は標的の検出に極めて選択的なプローブを形成するのみの1つのヌクレオチド塩基、すなわちストリーム中の相補的単一ヌクレオチド塩基を備える。
【0021】
二本鎖オリゴヌクレオチド領域について、それらは、それぞれ好適にはクローズドループである2つのオリゴヌクレオチド前駆体から、または後者の末端を折り畳むことにより2つのクローズドループオリゴヌクレオチド領域および一本鎖ヌクレオチド領域を構成する中間ギャップをもたらす一般的な一本鎖オリゴヌクレオチド前駆体から誘導される、または誘導可能であることが好ましい。すべての場合において、効果は同じであり;一本鎖ヌクレオチド領域の末端には標的の対応する5’および3’末端を結合させることができるオリゴヌクレオチド領域の他の鎖上の3’および5’自由末端が隣接するだろう。このように、捕捉システムの使用は、捕捉システムの利用可能な3’および5’末端を結合することにより一本鎖ヌクレオチド領域を標的単一ヌクレオチド塩基に結合させ、その全長に沿って二本鎖である捕捉分子をもたらすプロセスを含む。
【0022】
適切には、二本鎖オリゴヌクレオチド領域の長さは、最大50ヌクレオチド塩基対、好適には最大45ヌクレオチド塩基対、より好適には5〜40ヌクレオチド塩基対の範囲内、もっとも好適には10〜30の範囲内である。より長い領域を用いてもよいが、標的による一本鎖ヌクレオチド領域へのアクセスが絡み合いによって制限され得るという潜在的なリスクがある。このことは、本実施形態を、潜在的にあまり魅力的ではないものにしてしまう。
【0023】
上記クラスの両方について、ステップ(2)において、異なる相補的ヌクレオチド塩基にそれぞれ選択的であり、ハイブリダイゼーションにより異なる特徴的なプローブを結合することができる特徴的なヌクレオチド領域をそれぞれ有する捕捉分子の少なくとも2つの異なるセットの混合物を同時に用いることが好ましい。少なくともこの特徴的なヌクレオチド領域は、次にステップ(3)で増幅され、ステップ(4)でプローブを結合させることができる複数のアンプリコンが生成される。分析物がDNAまたはRNAである場合、それぞれ異なるヌクレオチド塩基および異なるプローブについて選択的である4つの異なる捕捉システムを同時に用いることがもっとも好ましい。
【0024】
ステップ(2)は、適切には、単一ヌクレオチド塩基が捕捉され、全体的に二本鎖であるかまたはある程度の上記鎖オーバーハングを除いて二本鎖である捕捉分子を生成する条件下、ストリーム中の各単一ヌクレオチド塩基を捕捉システム、もっとも好適には上述した4成分捕捉システムと接触させることにより行われる。この捕捉は、適切には、単一ヌクレオチドおよび捕捉システムを第2ポリメラーゼおよびリガーゼを含む2成分酵素システムの存在下で30〜80℃の範囲内の温度で接触させることにより行われる。好適な実施形態において、第2ポリメラーゼは、ステップ(1)で用いられるものと同じであり、これによりこれを追加成分の形態で添加する必要を回避する。
【0025】
本発明の方法のステップ(3)では、捕捉分子が、ステップ(2)で生成された生成物混合物と適合性のある当技術分野で利用可能な方法のいずれかを用いて増幅される。これらの方法は、限定されないが、ポリメラーゼ連鎖反応、リコンビナーゼポリメラーゼ増幅およびローリングサークル増幅のような熱サイクルおよび等温方法が挙げられ;これらのうちローリングサークル増幅は、上述した捕捉分子の第2クラスから誘導される捕捉分子にとくに有用である。これらの手段のいずれかにより、捕捉分子およびその配列補体の一部の多数のコピー(一般的には当技術分野においてアンプリコンと称される)を急速に形成することができる。これらの増幅方法のいずれかを行う正確な方法は当業者には周知であり、文献において容易に入手可能である。例えばポリメラーゼ連鎖反応の場合、その方法は、一般的には(a)捕捉分子を実際に対応する一本鎖状態に展開するように高温で変性させるステップ、(b)短い一本鎖プライマーオリゴヌクレオチドを展開捕捉分子上にその3’末端またはその近傍でアニールするステップ、(c)プライマーを5’−3’方向に展開捕捉分子の相補鎖が形成されるまで伸長するステップ、(d)ステップ(c)の生成物を変性させ、展開捕捉分子および相補鎖をともに一本鎖形態で再生するステップならびに(e)ステップ(b)〜(d)を複数回繰り返し、アンプリコンの複数コピーを急激に形成するすステップを含む。よって、実際には、ステップ(3)は、ステップ(2)の生成物を、少なくとも1つのプライマー、ポリメラーゼ、およびDNAの場合には例えばその特徴的な4つのデオキシリボヌクレオチド三リン酸の混合物で処理することを含む。ステップ(3)は、4つのデオキシリボヌクレオチド三リン酸のすべての導入を含むため、捕捉システムによるこれらの添加されたデオキシリボヌクレオチド三リン酸の捕捉が防止され、生成される他のヌクレオチド塩基に特徴的なさらなる捕捉分子を回避することが重要である。これは、例えば、ステップ(2)で用いられたリガーゼを、例えば熱処理により、デオキシリボヌクレオチド三リン酸の添加前に不活性化することにより達成してもよい。その他の点では、ステップ(3)のポリメラーゼ連鎖反応を行うのに用いられる反応条件および試薬は、適切には当技術分野において記載されるものである。上述した4成分システムの場合、ステップ(3)は、各対が捕捉システム中の4つの第2オリゴヌクレオチドの1つ以上について選択的な、最大4つの異なるプライマー対の添加を含むだろう。好適な実施形態では、捕捉システム中の4つの第2オリゴヌクレオチドのすべてに選択的である単一プライマー対が用いられる。
【0026】
本発明の方法のステップ(4)において、アンプリコンは、特徴的な検出可能要素を有するプローブで標識される。このステップは、ステップ(3)における増幅の最終サイクルが完了した後またはより好適にはステップ(3)が行われるのと同時に行うことができる。適切には、プローブは、プローブがアンプリコンに結合するまでは検出可能要素が検出可能でないものであり、また、適切には、検出可能要素により示される検出可能特性は、蛍光である。好適には、プローブは、ハイブリダイゼーションによりその対応するアンプリコン上の特有の配列に結合することができるオリゴヌクレオチドである。1つの実施形態において、使用されるプローブは、当技術分野において分子ビーコンとして知られるものの一例である。分子ビーコンは、一般的には、一本鎖オリゴヌクレオチドからなり、これは実際には折り畳まれ、ビーコンのセンサーとして作用する残った一本鎖ループおよび2つの末端に隣接するヌクレオチド塩基が相補的なヌクレオチド塩基対合によって互いに結合し、これにより二本鎖領域となる短いステムがもたらされる。この配置は、一本鎖ループが概念的な二本鎖オリゴヌクレオチドの同じ末端の相補鎖に結合したヘアピンに例えることができ、高度に歪んでいる。(ここでは互いに隣接し、ステムの遠端にある)オリゴヌクレオチドの自由3’および5’末端には、それぞれフルオロフォアおよびクエンチャが結合する。それらを互いに近接させることにより、それらの未使用状態で顕著な蛍光が発生しないようにする。本明細書において用いられる場合、分子ビーコンは、そのループがアンプリコンの特有の配列に選択的にハイブリダイズし、その際さらなる歪みをもたらし、これがビーコンのステムを展開させ、フルオロフォアおよびクエンチャを離し、ビーコンを蛍光させることができるように選択される。ここでも同様に上述の4成分システムを用いる場合には、それぞれアンプリコンの1つに選択的な4つの分子ビーコンの混合物が用いられる。用いることができる代替プローブとしては、例えば、Taqmanプローブ、スコーピオンプローブおよび同様に挙動することができる分子を挙げることができる。
【0027】
最後に、ステップ(5)では、アンプリコンに結合することにより活性化される検出可能要素が検出され、特定の単一ヌクレオチド塩基を識別すること、および分析物中のヌクレオチド塩基の配列を検出に関連したデータストリームから回収することを可能にする。これを行う方法は、当技術分野において周知であり;例えば、活性化分子ビーコンからの蛍光をそのフルオロフォアの特徴的な蛍光波長または波長包絡線に対して調整された光検出器または同等の装置を用いて検出してもよい。これにより、光検出器は次いで、特定のヌクレオチド塩基タイプに特徴的な、例えばコンピュータによる処理およびその後の分析が可能な電気信号を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、それぞれ単一ヌクレオチド塩基を含有する微小液滴を上述したようなタイプの捕捉システムと反応させるマイクロ流体配列決定装置を概略的に例示するものである。
【0029】
とくに好適な実施形態において、本発明の方法は、全体的または部分的に、微小液滴中で行われる。こうした方法は、例えば、ステップ(1)で生成された単一ヌクレオチド塩基を、順序の維持を補助する炭化水素またはシリコーン油のような非混和性担体溶媒中の対応する水性微小液滴のストリームに1つずつ挿入することにより開始してもよい。有利には、これは、例えば、反応媒体を適切な寸法の微小液滴ヘッドから溶媒の流動ストリームに入れることにより、加ピロリン酸分解反応ゾーンの微小液滴ダウンストリームを直接形成することによって行うことができる。あるいは、反応媒体の小さなアリコートを溶媒中に懸濁させた既存の水性微小液滴のストリームに、順次注入することができる。この後者の方法が用いられる場合、各微小液滴は、適切には、捕捉システムの成分ならびに各種酵素およびステップ(2)を行うのに必要なその他の試薬(例えばバッファー)を含有してもよい。最終的には、前者の実施形態において形成された微小液滴を、その後こうした既存の微小液滴のストリームと合体させ、同様の結果を達成することができる。この実施形態において、ステップ(5)は、次に、各液滴を調査し、アンプリコンにより活性化された検出可能要素およびよってそれが含有するヌクレオチド塩基の性質を識別することを、好適に含む。
【0030】
所定の微小液滴が2つ以上の単一ヌクレオチド塩基を含有するというリスクを回避するため、ステップ(1)の単一ヌクレオチド塩基は、各充填微小液滴が1〜20個、好適には2〜10個の空の液滴で離されるような割合で放出されることが好ましい。その後、溶媒中の充填されたおよび充填されていない微小液滴のストリームを、流路、適切にはマイクロ流体流路に沿って、微小液滴が離散状態に維持され且つ互いに合体する機会を持たないような割合および方法で、流動させる。適切には、用いられる微小液滴は、100ミクロン未満、好適には50ミクロン未満、より好適には20ミクロン未満、さらにより好適には15ミクロン未満の直径を有する。すべてのそれらの直径のうち、2〜20ミクロンの範囲内がもっとも好適である。1つの実施形態において、システム全体を通る微小液滴流量は、毎秒50〜3000液滴、好適には100〜2000液滴の範囲内である。
【実施例】
【0031】
ここで、本発明を、下記の実施例を参照しながら例示する。
【0032】
捕捉システムの調製および使用
下記の実験は、第1オリゴヌクレオチドがj形状であり、第2オリゴヌクレオチドが一本鎖である捕捉システムを用いる、単一ヌクレオチド塩基の捕捉およびフルオロフォアの解放について例示する。
【0033】
上述したようなj形状オリゴヌクレオチドの試料は、次の配列:
gtaggtcctggcacagagaaaaggagGcagtgatgttccatgactgatttttttttcagtcatggaacatcact
を有する75ヌクレオチド塩基、一本鎖オリゴヌクレオチドを折り畳むことにより調製され、配列中、g、t、c、およびaは、DNAのヌクレオチド塩基の従来の概念を示し、は、ホスホロチオ酸結合の存在を示す。折り畳みは、このオリゴヌクレオチドの水性溶液を95℃まで加熱した後、1℃当たり10分の速度でゆっくり室温まで冷却することにより行われる。こうして得られたj形状分子は、捕捉部位(上記配列中の大文字)である単一ヌクレオチド塩基に結合した残った一本鎖オリゴヌクレオチド領域(gtaggtcctggcacagaaaaaaggag)を備える。
【0034】
次の配列:
^ctccTTXTTtctgtgccaga
を有する対応する一本鎖オリゴヌクレオチドも調製され、配列中、^は、5’リン酸基を表し、大文字のTは、アジド結合剤によってAlexa Fluor 488染料で標識されたチミン塩基を表し、Xは、BHQ−1クエンチャで標識されたチミン塩基を表す。
【0035】
次いで、別々の捕捉およびヌクレオチド塩基混合物が調製される。捕捉混合物は、次の配合組成:
2.5μlの10×バッファーII
5μlの10×Taqリガーゼバッファー(NEB)
2.5μlの100nMの上記j形状分子
5μlの100nMの上記一本鎖オリゴヌクレオチド
2μlの熱安定無機ピロホスファターゼ(NEB)
5μlのTaqリガーゼ(NEB)
1μlの25mMのMnSO4
25μlの水
から誘導されるものに対応する組成を有し、ヌクレオチド塩基混合物の組成は、加ピロリン酸分解ステップから得られた材料を模倣するよう設計され、配合組成:
2.5μlの10バッファーII(Amplitaqを含み、マグネシウムを含まない)
1.5μlの25mMのMgCl2
2.5μlの10nMのデオキシシチジン三リン酸(dCTP)
2μlのAmplitaq(5U/μl)
2.5μlの10mMのピロリン酸ナトリウム
25μlの水
から誘導されるものに対応する。
【0036】
次に、等しい体積のこれらの2つの混合物を混合し、得られる生成物を50℃でインキュベートすることにより、dCTPの捕捉が行われる。これは、一般的には、30分で完了する。
【0037】
捕捉システムを用いた液滴マイクロ流体方法
図1は、それぞれ単一ヌクレオチド塩基を含有する微小液滴を上述したようなタイプの捕捉システムと反応させるマイクロ流体配列決定装置を概略的に例示するものである。
【0038】
ヒトDNAに由来する100ヌクレオチド塩基ポリヌクレオチド分析物の漸進的加ピロリン酸分解により得られる単一ヌクレオチドのストリームを含む水性媒体1を、PDMSポリマーからなる直径10ミクロンのマイクロ流体チューブを通って流動させる。加ピロリン酸分解反応自体は、Taq Polならびにそれぞれ1リットル当たり2ミリモル濃度のピロリン酸ナトリウムおよび塩化マグネシウムを含む72℃の水性緩衝(pH8)反応媒体のストリームを、分析物がスクシニル架橋により予め結合したガラスマイクロビーズに通すことにより行われる。マイクロビーズのダウンストリームである1中の単一ヌクレオチド塩基の順序は分析物の配列に対応する。1が液滴ヘッド2から第1チャンバー3に現れ、ここで非混和性軽質シリコーン油4の1つ以上のストリームと接触する。これらのストリームの速度は、乱流混合を回避し、それぞれ約8ミクロンの直径を有する油中に懸濁させた水性球状液滴5を形成するように選択される。一般的に、割合は、隣接する充填液滴の間に10個の空の液滴が存在するように調節される。5のストリームは、次に、同じ直径の第2マイクロ流体チューブに沿って、毎秒1000液滴の割合で、5ミクロンの水性球状液滴7の第2ストリームも第2液滴ヘッド8により供給される第2チャンバー6まで推進される。液滴5および7は順次合体し、直径約9ミクロンの肥大した水性液滴9が形成される。7のそれぞれは、5のそれぞれに存在する残留ピロリン酸アニオンをすべて破壊するピロホスファターゼを含有する。
【0039】
次いで、9のストリームは、マイクロ流体チューブによって同じ割合で第3チャンバー10まで推進され、そこで、これらの液滴が対応する液滴ヘッド12を通して同様に供給される5ミクロンの水性球状液滴11の第3ストリームと接触される。9のそれぞれがチャンバー6および10間を移動するのにかかる時間は、約2分である。
【0040】
次いで、液滴9および11は、10において合体し、液滴13(直径約10ミクロン)が生成される。11のそれぞれは、中温性リガーゼならびにj形状の第1オリゴヌクレオチドおよび4つの対応する第2一本鎖オリゴヌクレオチドの4つの対を備える捕捉システムを含有する。各j形状第1オリゴヌクレオチドは、60ヌクレオチド塩基長であり、60ヌクレオチド塩基一本鎖オリゴヌクレオチド前駆体を5’末端から第45ヌクレオチド塩基辺りで折り畳み、3ヌクレオチド一本鎖ループ、12ヌクレオチド塩基対二本鎖領域および33ヌクレオチド塩基一本鎖領域をもたらすことにより調製され、4つの第1オリゴヌクレオチドのそれぞれで異なる。これらの4つの第1オリゴヌクレオチドのそれぞれは、DNAの4つの特徴的なヌクレオチド塩基タイプ(すなわちA、T、GおよびC)に特徴的な異なる第33塩基(一本鎖末端から測定)も有する。4つの異なる第2オリゴヌクレオチドは、それぞれ、28ヌクレオチド塩基長であり、それらの第1オリゴヌクレオチド対の第4および第32ヌクレオチド塩基により画定される一本鎖領域のその部分と相補的である異なる配列を有する。
【0041】
次いで、13のストリームは、マイクロ流体チューブによって同じ速度で推進され、30分後にホットスポットを通過し、リガーゼが不活性化され(10〜20分)、第3チャンバー14に入り、そこで液滴ヘッド16を通して同様に供給される5ミクロンの水性球状液滴15の第4ストリームと合体する。15のそれぞれは、第2オリゴヌクレオチドのそれぞれに選択的な4つの異なるプライマー対、Taq Pol酵素、DNAに特徴的な4つのデオキシリボヌクレオチド三リン酸および13で生成することができる4つの異なる捕捉分子から生成することができるアンプリコンの4つのタイプのそれぞれに選択的な4つの異なる分子ビーコンを含有する。15は、ポリメラーゼ連鎖反応を行う際に一般的に用いられる他の添加剤を含有してもよい。こうして形成された合体微小液滴17のストリームは、次に、60〜95℃の20〜30の熱サイクル(毎分約1サイクル)にさらされ、その時間に、ポリメラーゼ連鎖反応による展開捕捉分子の増幅が行われる。この時間の終わりに、17は、検出システムに移される。
【0042】
検出システム(図示せず)は、一般的には、各液滴がレーザーからの入射光で調査される検出窓を備える。この光の作用は、次に、各液滴中の活性化分子ビーコンを、もともと捕捉分子中に組み込まれていた単一ヌクレオチド塩基に特徴的な方法で蛍光させる(液滴がもともと空だった場合は、本質的に一切蛍光しない)。次いで、この蛍光の存在または非存在が、上記4つの分子ビーコンの4つの特徴的な波長で検出される。このように、液滴を順に調査することにより、元のポリヌクレオチド分析物中のヌクレオチド塩基の配列を実際に読み出すことができる。蛍光の発現は一般的には急速であるが、空の液滴を確実に識別するため、各液滴の調査は、10分が経過して初めて行われる。
図1
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]