(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
チョクラルスキ法で成長したインゴットからスライスされたp型単結晶シリコンウエハであって、p型単結晶シリコンウエハは約10ミリオーム・cmより少ないウエハ抵抗率を有し、p型単結晶シリコンウエハはチョクラルスキ法で成長したインゴットからスライスされ、表面、裏面、表面と裏面との間の中心平面、表面と裏面とを接続する周縁エッジ、中心平面と直交する中心軸、および中心平面と表面との間のウエハの領域を含むバルク層を含み、p型単結晶シリコンウエハは中心軸から周縁エッジまで空孔が支配的であり、このp型単結晶シリコンウエハは、
少なくとも約1×1019原子毎立方センチメータの平均ホウ素濃度のホウ素ドーパント、
少なくとも約3×1018原子毎立方センチメータの平均砒素濃度の砒素、および、
中心軸から周縁エッジまで少なくとも約5×108析出物/cm3の平均濃度の酸素析出物であって、単結晶シリコンウエハは酸素析出物の濃度が約5×108析出物/cm3より少ない環状領域を含まない酸素析出物、を含むp型単結晶シリコンウエハ。
チョクラルスキ法で成長したインゴットからスライスされたp型単結晶シリコンウエハであって、p型単結晶シリコンウエハは約10ミリオーム・cmより少ないウエハ抵抗率を有し、p型単結晶シリコンウエハはチョクラルスキ法で成長したインゴットからスライスされ、表面、裏面、表面と裏面との間の中心平面、表面と裏面とを接続する周縁エッジ、中心平面と直交する中心軸、および中心平面と表面との間のウエハの領域を含むバルク層を含み、p型単結晶シリコンウエハは中心軸から周縁エッジまで空孔が支配的であり、このp型単結晶シリコンウエハは、
少なくとも約1×1019原子毎立方センチメータの平均ホウ素濃度のホウ素ドーパント、
少なくとも約5×1017原子毎立方センチメータの平均アンチモン濃度のアンチモン、および
中心軸から周縁エッジまで少なくとも約5×108析出物/cm3の平均濃度の酸素析出物であって、単結晶シリコンウエハは酸素析出物の濃度が約5×108析出物/cm3より少ない環状領域を含まない酸素析出物、を含むp型単結晶シリコンウエハ。
チョクラルスキ法で成長したインゴットからスライスされたp型単結晶シリコンウエハであって、p型単結晶シリコンウエハは約10ミリオーム・cmより少ないウエハ抵抗率を有し、p型単結晶シリコンウエハはチョクラルスキ法で成長したインゴットからスライスされ、表面、裏面、表面と裏面との間の中心平面、表面と裏面とを接続する周縁エッジ、中心平面と直交する中心軸、および中心平面と表面との間のウエハの領域を含むバルク層を含み、このp型単結晶シリコンウエハは、
少なくとも約1×1019原子毎立方センチメータの平均ホウ素濃度のホウ素ドーパント、
少なくとも約3×1018原子毎立方センチメータの平均砒素濃度の砒素、少なくとも約5×1017原子毎立方センチメータの平均アンチモン濃度のアンチモン、およびそれらの組み合わせからなるグループから選択される第2ドーパントであって、第2ドーパントの濃度はホウ素ドーパントの濃度より少ない第2ドーパント、および、
中心軸から周縁エッジまで少なくとも約5×108析出物/cm3の平均濃度の酸素析出物であって、単結晶シリコンウエハは、酸素析出物の濃度が約5×108析出物/cm3より少ない環状領域を含まない酸素析出物、を含むp型単結晶シリコンウエハ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明によれば、高くて均一な酸素析出挙動を示す、高ドープ単結晶シリコンウエハを準備するための方法が提供される。本発明の幾つかの具体例では、高ドープされた単結晶シリコンウエハは、成長モードまたはドーパント濃度に関係なく、均一に酸素析出物を析出する。基本的な本発明の原理は、結晶成長モード(v/G)の細部から、他のメカニズムに、内在する点欠陥濃度の制御をシフトし、これにより結晶は、均一な高い内在した点欠陥、空孔、または侵入の濃度になるように形成され、結晶成長またはドーパント濃度プロファイルの細部にかかわらず、結晶インゴット中のどこにおいても析出を均一に高くすることができる。
【0013】
本発明によれば、これが達成されるメカニズムは、最初のドーパントの濃度より実質的に低い濃度で、1またはそれ以上の追加の不純物を有する単結晶シリコンインゴットを成長することであり、これはウエハの電気的特性、即ち抵抗率に影響する。単結晶シリコンインゴットの成長中に追加される追加の不純物は、インゴットに、成長条件には依存しないで、更なる空孔または更なる自己侵入を加える。幾つかの具体例では、不純物の濃度自身は少量であっても、不純物は、十分な濃度の内在する点欠陥を加える。
【0014】
本発明の幾つかの具体例では、単結晶シリコンインゴットの成長中に不純物が加えられ、シリコン自己侵入(self-interstitials)の濃度を増加させる。例えば、単結晶シリコンインゴット中の炭素不純物は、以下の反応により追加の自己侵入を加える。
Ci⇔Cs+I
【0015】
小さいが、相当の炭素不純物の侵入成分により、過剰の自己侵入が、存在する成長時の濃度に加えられる。点欠陥CiとIの集団は、相互交換で侵入型点欠陥の集団を形成する。
【0016】
本発明の幾つかの具体例では、単結晶シリコンインゴットの成長中に不純物が加えられ、空孔の濃度を増加させる。幾つかの具体例では、結晶成長中に加えられ、空孔の濃度を増加させる不純物は、アンチモンSbを含む。幾つかの具体例では、結晶成長中に加えられ、空孔の濃度を増加させる不純物は、砒素Asを含む。AbとAs不純物は、空孔と合併するV−SbおよびV−As複合体の集団を介して、空孔の濃度を増加させる。
【0017】
それゆえに、例えば高ホウ素ドープ結晶のような、高ドープ結晶の任意ポテンシャルの点欠陥の型および濃度(これはv/Gおよび[B]の組み合わせにより制御できるであろう)の場合、実際の侵入型点欠陥の濃度と型は、比較的低濃度のそれらの不純物の追加により、独立して制御できる。例えば、十分な濃度の炭素を加えることにより、結晶はどこにおいても強く侵入型になり、一方、AsまたはSbの十分な濃度の追加により、インゴットはどこにおいても強く空孔型になる。いずれかの具体例においても、均一で高い酸素析出が達成される。有利には、高くて均一な酸素析出が、単結晶シリコンインゴットの成長条とは独立して、および/または単結晶シリコンインゴットからスライスされたウエハ中の結晶格子空孔テンプレートを刻み込むために設計された熱プロセス(例えば、高速ネルアニール)とは独立して、達成することができる。
【0018】
A.チョクラルスキ成長した単結晶シリコンインゴット
幾つかの具体例では、本発明は、チョクラルスキ成長した単結晶シリコンインゴットからスライスされた単結晶シリコンウエハ中の酸素析出挙動を制御する方法に関する。幾つかの具体例では、この方法は、高ホウ素ドーパント濃度と、侵入型欠陥の濃度を増加するための追加のドーパントを有する、単結晶シリコンインゴットを、チョクラルスキ法で成長させる工程を含む。
【0019】
単結晶シリコンインゴットは、標準的なチョクラルスキ法により成長しても良い。単結晶シリコンインゴットは、結晶引き上げ機で成長する。例えば、US6,554,898およびWO99/27165(双方は、MEMC Electronic Materials に譲渡されている)が参照され、これらの開示は、その全体があたかも記載されたかのように、ここに組み込まれる。一般的なCz引き上げ機は、ハウジング、溶融シリコンを含むためのハウジング中の坩堝、溶融シリコンから上方に成長するインゴットを引き上げるための引き上げメカニズム、および固体シリコン出発材料(即ち、多結晶の顆粒および/または多結晶の塊を含む多結晶チャージ)を溶融シリコンバス中で溶融するのに十分に近づいた加熱メカニズムを含む。多結晶材料は、WO99/55940(MEMC Electronic Materials に譲渡されている)中に記載されたように、この分野で知られた技術によりチャージしても良い。
【0020】
チョクラルスキ法によるインゴット成長は、加熱メカニズムに電力を供給することにより、固体シリコン出発材料のチャージを溶解することにより始まる。例えば、WO99/20815(MEMC Electronic Materials に譲渡されている。)参照。融液の流れは、坩堝の回転速度、不活性ガスの流速等により、種結晶を融液に浸漬する前に安定化される。種を上方に引き上げることで、固液界面で融液が結晶化し、結晶が成長し始める。種結晶から半径が大きくなる円錐形のネックは、融液から種結晶を引き上げる速度を下げることにより成長する。一旦所望の直径に到達すれば、引き上げ速度は、結晶が実質的に一定の直径で成長するまで、漸次増加する。結晶引き上げ機の加熱メカニズムは、成長するシリコンインゴットの固体化と冷却速度を制御するために制御される。坩堝中の融液の流れを安定化し、結晶中の酸素濃度を制御するために、結晶とは反対に坩堝が回転される。結晶成長の最終ステージは、直径がゆっくり減少し、円錐形が達成されるテイル成長であり、ここでは、一定の直径領域から結晶の端部に向かって、軸方向に端部の円錐の直径が減少する。一旦、融液から結晶が離れれば、引き上げ機への電力が低減され、結晶が冷却されると共に、上方チャンバ中に引き上げられる。プロセスの最後に、引き上げ機から結晶が持ち出され、更なる処理が行われる。
【0021】
先の公開(例えば、WO98/45507、WO98/45508、WO98/45509、およびWO98/45510参照。すべてMEMC Electronic Materials に譲渡されている。)によれば、侵入型点欠陥の型および初期濃度は、固体化の温度(即ち、約1410℃)から1300℃より高い温度までインゴットを冷却して、最初に決定される。即ち、それらの欠陥の型および初期濃度は、v/G比により制御され、ここでは、vは成長速度、Gはこの温度範囲での平均軸方向温度勾配である。v/Gの値が増加するほど、徐々に自己侵入が支配的な成長から、次第に空孔が支配的な成長への移動が、臨界値v/G
0近傍で起こり、この臨界値は、現在入手可能な情報に基づくと約2.1×10
−5cm
2/sKであり、ここでG
0は、上述の温度範囲内で軸方向温度勾配が一定である条件で既定される。この臨界値では、それらの内在する点欠陥が平衡状態である。
【0022】
v/G
0の値が臨界値を超えると、空孔の濃度が増加する。同様に、v/G
0の値が臨界値より小さくなると、自己侵入型の濃度が増加する。Cz成長結晶からスライスされたノンドープおよび低ドープの単結晶シリコンウエハ中の酸素析出物挙動が、内在する点欠陥の型および能動、特に空孔濃度に大きく依存することが観察された。高ドープ材料では、状況はより複雑である。例えば、高ホウ素ドープ材料([B]>約1×10
19原子/cm
3)では、成長時の空孔または自己侵入濃度が非常に低い空孔領域と侵入型領域との間の狭い帯を除いて、空孔と侵入型材料の双方の中で、多量の析出が観察された。この結果、そのようなウエハに、例えばNEC1プロセスのような酸素析出を引き起こす公知の加熱プロセスを行った後において、この領域には酸素析出が発生しない。そのようなウエハは、酸素析出の無い環状の領域を有し、この領域は、酸素析出物を含む内側の中心(一般には、空孔が支配的な領域であるが、他の構造も可能)と、酸素析出物を含む外部環状リング(一般には、侵入型が支配的な領域であるが、他の形態も可能である)とに囲まれる。これは、そのような高ドープ材料中で酸素析出能力を制御することの困難性に繋がる。幾つかの場合、加熱ゾーン、引き上げ速度、または抵抗率の仕様への要求により、内在する点欠陥濃度が低く制御された結晶成長の領域を避けることは、実質的ではない。本発明は、結晶成長プロセス中に不純物を追加することにより、高ドープされたシリコン基板中で、均一で高い酸素析出挙動を確実にする方法に関する。それらの不純物は、比較的低濃度でさえも、内在するどちらかの点欠陥を増加させる。追加の不純物またはドーパントは、炭素、砒素、およびアンチモンから選択しても良い。幾つかの具体例では、追加のドーパントは、少なくとも5×10
17原子毎立方センチメータの平均炭素濃度の炭素を含む。幾つかの具体例では、追加のドーパントは、少なくとも約3×10
18原子毎立方センチメータの平均砒素濃度の砒素を含む。幾つかの具体例では、追加のドーパントは、少なくとも約5×10
17原子毎立方センチメータの平均アンチモン濃度のアンチモンを含む。
【0023】
幾つかの具体例では、シリコン融液は、少なくとも約1×10
19atoms/cm
3のホウ素原子の平均濃度を有する単結晶シリコンインゴットを作製するために十分なホウ素で、結晶成長中にドープされても良い。シリコン融液中の高ドーパント濃度は、単結晶シリコンセグメント、例えば約10ミリオーム・cm以下の低抵抗率を有するウエハの準備を可能にする。幾つかの具体例では、シリコン中の高ドーピング濃度は、単結晶シリコンセグメント、例えば約9ミリオーム・cm以下の低抵抗率を有するウエハの準備を可能にする。ホウ素ドーパント濃度は、約3.8×10
20atoms/cm
3に達しても良く、一方で、最終Czインゴットで単結晶が達成される。
【0024】
幾つかの具体例では、追加のドーパントは、少なくとも5×10
17原子毎立方センチメータ(これは、約10ppma)の平均炭素濃度を含む。シリコンインゴットの単結晶性に影響する、これ以上の炭素濃度は、避けるべきである。
【0025】
幾つかの具体例では、追加のドーパントは、少なくとも約3×10
18原子毎立方センチメータの平均砒素濃度の砒素を含む。ホウ素はP型ドーパントで、砒素不純物はN型ドーパントなので、砒素ドーパントの上限は、約10ミリオーム・cm以下、または約9ミリオーム・cm以下、または約5ミリオーム・cm以下、または約2ミリオーム・cm以下、または約1ミリオーム・cm以下の単結晶シリコンウエハの所望の抵抗率に不利に影響する量より少ない。言い方を変えれば、砒素のようなN型ドーパントの追加は、追加したN型ドーパントがウエハの全体の抵抗率が、所望の抵抗率の約20%を超えないように、より好適には所望の抵抗率の約10%を超えないように、制限されるべきである。
【0026】
幾つかの具体例では、追加のドーパントは、少なくとも約5×10
17原子毎立方センチメータの平均アンチモン濃度でアンチモンを含む。ホウ素はP型ドーパントで、アンチモン不純物はN型ドーパントなので、アンチモンドーパントの上限は、約10ミリオーム・cm以下、または約9ミリオーム・cm以下、または約5ミリオーム・cm以下、または約2ミリオーム・cm以下、または約1ミリオーム・cm以下の単結晶シリコンウエハの所望の抵抗率に不利に影響する量より少ない。言い方を変えれば、アンチモンのようなN型ドーパントの追加は、追加したN型ドーパントが、ウエハの全体の抵抗率が所望の抵抗率の約20%を超えないように、より好適には所望の抵抗率の約10%を超えないように、制限されるべきである。
【0027】
B.低抵抗率単結晶シリコンウエハ
本発明の単結晶シリコンウエハは、従来のチョクラルスキ(Cz)結晶成長法を用いて成長した単結晶インゴットからスライスされた、一般には、少なくとも約150mm、少なくとも約200mm、少なくとも約250mm、少なくとも約300mm、少なくとも約400mm、少なくとも約450mm、またはそれ以上の見かけ上の直径を有するシリコンウエハである。ウエハは、研磨され、または代わりに、ラッピングやエッチングされて、研磨されなくても良い。標準的なシリコンスライシング、ラッピング、エッチング、および研磨技術と共に、そのような方法は、例えば、F. Shimuraの"Semiconductor Silicon Crystal Technology", Academic Press, 1989 および "Silicon Chemical Etching (J. Grabmaier ed.)", Springer-Verlag, New York, 1982 (引用することによりここに組み込まれる)。好適には、ウエハは、当業者に知られた標準的な方法で研磨され、洗浄される。例えば、W. C. O'Maraらの Handbook for Semiconductor Silicon Technology, Noyes Publications参照。
【0028】
ウエハは、好適には、表面、裏面、表面と裏面との間にあり、実質的に表面および裏面に平行な中心平面、および表面と裏面とを接続する周縁エッジを有する。ウエハは、さらに、中心平面と直交する想像上の中心軸と、中心軸から周縁に延びる半径長さを含む。このテキストにおいて「表」および「裏」の用語は、2つの主な、一般にはウエハの平坦な表面を区別するために使用される。(ここでその用語が使用されるような)ウエハの表面は、その上に電子デバイスが続いて形成される必要はなく、また、(ここでその用語が使用されるような)ウエハの裏面は、その上に電子デバイスが形成される面に対向するウエハの主面である必要はない。加えて、シリコンウエハは、一般に幾つかの全体膜厚ばらつき(TTV)、反り、および曲がりを有するため、表面上の全ての点と、裏面上の全ての点との間の中間点は、正確には平面内には無い。実質的には、TTV、反り、および曲がりはわずかであるため、中間点は、表面と裏面との間のおおよそ等距離の想像上の中心平面の中にあると近似できる。
【0029】
単結晶シリコンウエハは、チョクラルスキ成長した単結晶シリコンインゴットからスライスされ、上述のように、このインゴットは、約20ミリオーム・cm以下、好適には約9ミリオーム・cm以下の平均抵抗率を有するのに十分な濃度のp型ドーパントでドープされる。その観点では、単結晶シリコンウエハは、また、約20ミリオーム・cm以下、または約10ミリオーム・cm以下、または約9ミリオーム・cm以下、または約5ミリオーム・cm以下、または約2ミリオーム・cm以下、または約1ミリオーム・cm以下の平均抵抗率を有する。幾つかの具体例では、ウエハは少なくとも約1×10
19atoms/cm
3の平均ホウ素濃度のホウ素でドープされる。幾つかの具体例では、シリコンウエハは、約3.8×10
20atoms/cm
3までのホウ素ドーパント濃度を有する。
【0030】
ウエハは、Czプロセスにより、達成できる範囲内のいずれかの酸素濃度を有しても良い。幾つかの具体例では、本発明のウエハは、約4.5×10
17atoms/cm
3から約5.5×10
17atoms/cm
3までの酸素濃度、即ち、約9PPMAから約11PPMAまでの酸素濃度を有する。幾つかの具体例では、本発明のウエハは、約4.5×10
17atoms/cm
3より少ない、即ち約9PPMAより少ない酸素濃度を有する。幾つかの具体例では、ウエハは、約5.5×10
17atoms/cm
3から約8×10
17atoms/cm
3までの酸素濃度、即ち、約11PPMAから約16PPMAまでの酸素濃度を有する。幾つかの具体例では、ウエハは、約6×10
17atoms/cm
3から約9×10
17atoms/cm
3までの酸素濃度、即ち、約12PPMAから約18PPMAまでの酸素濃度を有する。幾つかの具体例では、ウエハは、約7.5×10
17atoms/cm
3から約8.5×10
17atoms/cm
3までの酸素濃度、即ち、約15PPMAから約17PPMAまでの酸素濃度を有する。
【0031】
幾つかの具体例では、本発明の単結晶シリコンウエハは、少なくとも約5×10
17原子毎立方センチメータの平均炭素濃度の炭素を含む。幾つかの具体例では、炭素濃度は約2×10
18原子毎立方センチメータより少なくても良い。
【0032】
幾つかの具体例では、本発明の単結晶シリコンウエハは、少なくとも約3×10
18原子毎立方センチメータの平均砒素濃度の砒素を含む。幾つかの具体例では、砒素濃度は、約10ミリオーム・cm以下、または約9ミリオーム・cm以下、または約5ミリオーム・cm以下、または約2ミリオーム・cm以下、または約1ミリオーム・cm以下の単結晶シリコンウエハの所望の抵抗率に不利に影響する量より少ない。言い方を変えれば、砒素のようなN型ドーパントの追加は、追加したN型ドーパントがウエハの全体の抵抗率が、所望の抵抗率の約20%を超えないように、より好適には所望の抵抗率の約10%を超えないように、制限されるべきである。
【0033】
幾つかの具体例では、本発明の単結晶シリコンウエハは、少なくとも約5×10
17原子毎立方センチメータの平均アンチモン濃度でアンチモンを含む。幾つかの具体例では、アンチモン濃度は、約10ミリオーム・cm以下、または約9ミリオーム・cm以下、または約5ミリオーム・cm以下、または約2ミリオーム・cm以下、または約1ミリオーム・cm以下の単結晶シリコンウエハの所望の抵抗率に不利に影響する量より少ない。言い方を変えれば、アンチモンのようなN型ドーパントの追加は、追加したN型ドーパントがウエハの全体の抵抗率が、所望の抵抗率の約20%を超えないように、より好適には所望の抵抗率の約10%を超えないように、制限されるべきである。
【0034】
C.酸素析出熱処理
本発明の方法では、低抵抗率の単結晶シリコンウエハは、酸素析出物が析出するのに十分な時間、ある温度で熱プロセスが行われる。特徴的に、低抵抗率のウエハは、中心軸から周縁エッジまでウエハを侵入型支配にし(例えば炭素)、または中心軸から周縁エッジまで空孔支配にする(例えば砒素およびアンチモン)。比較的低能度でそのような不純物を含むことにより、ウエハの酸素析出挙動は、単結晶シリコンウエハの成長条件から独立である。加えて、本発明のウエハの酸素析出挙動は、例えば高速熱アニールによりウエハ中に影響を残すいずれの結晶格子空孔プロファイルから独立でも良い。
【0035】
酸素析出物の核成長および成長に十分ないずれの熱処理も、ウエハを通して、即ち中心軸から周縁エッジまで、さらにはウエハの表面からウエハの裏面までで、均一で高い酸素析出物を有する本発明のウエハを準備するために適切である。幾つかの具体例では、ウエハは、酸素析出物の核成長および成長に十分な時間、約700℃を超える温度で、酸素析出物の熱処理が行われる。幾つかの具体例では、ウエハは、NEC1テスト手順、例えば800℃で4〜8時間、続いて1000℃で16時間、ウエハのアニールを含む酸素析出熱処理が行われる。幾つかの具体例では、酸素析出熱処理は、中心軸から周縁エッジに、少なくとも約5×10
8析出物/cm
3の平均濃度で酸素析出物を含むウエハを準備する。幾つかの具体例では、酸素析出熱処理は、中心軸から周縁エッジに、少なくとも約1×10
9析出物/cm
3の平均濃度で酸素析出物を含むウエハを準備する。幾つかの具体例では、酸素析出熱処理は、中心軸から周縁エッジに、少なくとも約5×10
9析出物/cm
3の平均濃度で酸素析出物を含むウエハを準備する。幾つかの具体例では、酸素析出熱処理は、中心軸から周縁エッジに、少なくとも約1×10
10析出物/cm
3の平均濃度で酸素析出物を含むウエハを準備する。
【0036】
D.ウエハの後処理
本発明のシリコンウエハは、様々な応用に使用しても良い。例えば、鏡面仕上げ(即ち、研磨ウエハ)に研磨された裸のシリコン表面を有するウエハは、集積回路の製造プロセスに直接使用されても良い。代わりに、エピタキシャル堆積用または(層転写または酸素注入による)SOI用の基板として使用されても良い。
【0037】
1.エッチング
必要であれば、ウエハの表面近傍領域、例えば一般には約2マイクロメータまでは、実質的に、または完全に、従来技術のエッチャントおよび技術を用いた化学エッチングにより除去される。
【0038】
2.研磨
必要であれば、酸素析出前または酸素析出後に、ウエハは、化学的または化学機械的に研磨されて鏡面仕上げされても良い。
【0039】
3.エピタキシャル層
ウエハは、エピタキシャル層堆積用に準備されても良い。エピタキシャル層がウエハ上に堆積された場合、本発明のプロセスは、エピタキシャル堆積の前または後のいずれに行われても良い。もし堆積前に行われた場合、本発明のプロセスの後で、エピタキシャル堆積の前に、ウエハ中で酸素析出核中心の安定化が望まれる。もし堆積後に行われた場合、エピタキシャル堆積後直ぐに、エピタキシャルリアクタ中で、本発明のプロセスで必要とされる冷却速度が達成される本発明のプロセスが行われることが望まれる。
【0040】
エピタキシャル層は、ウエハ全体の上、または代わりにウエハの一部だけの上に堆積されても良い。エピタキシャル層は、好適には、ウエハの表面上に堆積される。より好適には、ウエハの表面全体の上に堆積される。ウエハの他の部分の上に堆積されたエピタキシャル層を有することが好ましいか否かは、ウエハの使用の意図に依存する。多くの応用では、ウエハの他の部分の上のエピタキシャル層の存在または不存在は、重大ではない。
【0041】
ウエハ表面は、酸化層または窒化層を含んでも良い。例えば、シリコン酸化物層は、室温で空気に曝された場合にシリコン表面の上に形成され、一般に約10Å〜約15Åの厚さを有する。好適には、エピタキシャル層が表面上に堆積される前に、窒化物、酸化物、または窒化物/酸化物層がウエハの表面から除去される。
【0042】
シリコン酸化物または窒化物/酸化物層の除去は、酸化剤の無い雰囲気中で、表面から酸化物または窒化物/酸化物層が除去されるまで、表面を加熱することで達成されても良い。例えば、ウエハの表面は、好適には、少なくとも1100℃の温度まで加熱され、更に好適には、少なくとも約1150℃の温度まで加熱される。ウエハの表面をH
2または希ガス(例えば、He、Ne、またはAr)を含む雰囲気に曝しながら、この加熱は実施される。更に好適には、雰囲気は、H
2を含む。他の雰囲気の使用は、ウエハの表面の中にエッチピットを形成する傾向にあるため、最も好適には、雰囲気は、本質的にH
2からなる。
【0043】
一般に、シリコン酸化物または窒化物/酸化物層を除去するためにウエハ表面を加熱し、次に、酸化物または窒化物/酸化物層が除去された後に、30秒より短く(好適には約10秒以内に)、シリコン堆積を開始することが好ましい。一般に、少なくとも1100℃の温度まで(より好適には約1150℃の温度まで)加熱し、ウエハ表面がその温度に到達した後に、次に30秒より短く(より好適には約10秒以内に)シリコンの堆積を開始することでこれは完成される。シリコン酸化物または窒化物/酸化物層が除去された後に、約10秒までの間、シリコンの堆積の開始を待つことで、ウエハの温度が安定化し、均一になる。
【0044】
代わりに、酸化物または窒化物/酸化物層は、化学的に剥離されても良い。シリコン表面が窒化物/酸化物層を有する具体例では、化学ストリップが、窒化物/酸化物層を除去するための好ましい手段である。化学ストリップは、リン酸、フッ化水素酸、または公知の他の酸を用いた、従来技術で知られた手段により行われても良い。他の代替えでは、酸化物または酸化物/窒化物層は、例えばApplied Materials製のeMaX、または公知の他の方法を用いてエッチングされても良い。
【0045】
表面層の大部分がシリコン窒化物層の場合の具体例では、窒化物層は、研磨、化学エッチング、またはプラズマエッチング(例えばApplied Materials製のeMaX、または公知の他のエッチング方法)により除去しても良い。
【0046】
エピタキシャル堆積は、好適には、化学気相堆積で行われる。一般的に言えば、化学気相堆積は、例えばApplied Materialsから入手可能なCenturaリアクタのようなエピタキシャル堆積リアクタ中で、ウエハの表面を、シリコン含有雰囲気に露出させる工程を含む。好適には、ウエハの表面は、シリコン含有揮発性ガス(例えば、SiCl
4、SiHCl
3、SiH
2Cl
2、SiH
3Cl、またはSiH
4)を含む雰囲気に露出される。雰囲気は、また、キャリアガス(好適にはH
2)を含むことが好ましい。例えば、エピタキシャル堆積中のシリコン源は、SiH
2Cl
2またはSiH
4でも良い。もしSiH
2Cl
2を用いた場合、堆積中のリアクタ真空圧力は、約500Torrから約760Torrである。一方、もしSiH
4が使用された場合、リアクタ圧力は、好適には約100Torrである。最も好ましくは、堆積中のシリコン源はSiHCl
3である。これは、他のシリコン源よりずっと安価になる。加えて、SiHCl
3を用いたエピタキシャル堆積は、大気圧で行われる。真空ポンプが不要であり、リアクタチャンバは壊れないように頑丈である必要はなく、これは有利である。さらに、殆ど安全性の問題が無く、空気または他のガスがリアクタチャンバ中にリークする可能性を低くする。
【0047】
エピタキシャル堆積中に、ウエハ表面の温度は好適には傾斜し、シリコン含有雰囲気が、表面上に多結晶シリコンを堆積するのを防止する。一般に、この期間の表面の温度は、好適には少なくとも約900℃である。より好適には、表面の温度は、約1050℃と約1150℃との間の範囲に維持される。最も好適には、表面温度は、シリコン酸化物の除去温度に維持される。
【0048】
エピタキシャル堆積の成長速度は、好適には、約0.5から約7.0μm/分である。例えば、約1150℃の温度で、絶対圧力が約1atmまでの、約2.5mol%SiHCl
3と約97.5mol%H
2を本質的に含む雰囲気を用いることにより約3.5から4.0μm/分の速度を達成できる。
【0049】
幾つかの応用では、ウエハは、電気的特性を与えるエピタキシャル層を含む。幾つかの具体例では、エピタキシャル層は、リンで低ドープされる。それゆえに、エピタキシャル堆積の雰囲気は、例えばホスフィンPH
3のような揮発性化合物として存在するリンを含む。幾つかの具体例では、エピタキシャル層は、ホウ素を含んでも良い。そのような層は、例えば、堆積中に雰囲気にB
2H
6を含むことにより準備されても良い。
【0050】
エピタキシャル堆積は、一般に、エピタキシャル堆積中に形成された副産物を除去するために、エピタキシャル堆積に続くポストエピ洗浄工程を必要とする。この工程は、時間に依存するくもり(time-dependent haze)を防止するために使用され、これはそのような副産物が空気と反応する場合に起きる。加えて、多くのポストエピ洗浄技術は、エピタキシャル表面の上に酸化層を形成する傾向にあり、これは表面をパッシベート(即ち、保護)する傾向にある。本発明のエピタキシャルウエハは、公知の方法により洗浄されても良い。
【0051】
4.シリコンオンインシュレータ(SOI)
シリコンオンインシュレータ構造は、一般に、デバイス層、ハンドルウエハまたは支持層、および支持層とデバイス層の間の絶縁膜または層(一般には酸化物層)を含む。一般に、デバイス層は、約0.5から20マイクロメータの膜厚である。シリコンオンインシュレータ構造は、SIMOXまたはBESOLのような様々な公知の技術を持ち手準備しても良い。
【0052】
SOI構造は、例えば、この分野で標準的なイオン注入プロセスをウエハに行うことにより、SIMOXプロセスで準備しても良い(例えば、米国特許5,436,175および"Plasma Immersion Ion Implantation for Semiconductor Processing", Materials Chemistry and Physics 46 (1996) 132-139 参照。双方は参照されることにより、ここに組み込まれる)。
【0053】
SOI構造は、また、2つのウエハを貼り合わせて、貼り合わせたウエハの1つの一部を除去して準備しても良い。例えば、SOI構造は、BESOIプロセスで準備され、ウルは他のウエハに張り合わされ、続いて1つのウエハの実体部分が公知のウエハ薄膜化技術を用いてエッチング除去され、デバイス層が得られる(例えば、米国特許5,024,723および米国特許5,189,500参照。これらは参照されることによりここに組み込まれる)。
【0054】
上述のように、本発明の多くの目的が達成されることが理解される。以下の例は、本発明を表すであろう。
【0055】
例1.ホウ素ドープシリコンウエハ中での砒素とアンチモンの分離
高ホウ素ドープの単結晶シリコンインゴットは、チョクラルスキ法によりシリコン融液から成長される。インゴットは以下のドーパントである砒素またはアンチモンでドープされる。
図1は、固体化された融液を変数とした、期待されるホウ素、砒素、およびアンチモンの濃度を示すグラフである。
図1のグラフに示されるデータ「は、以下の計算を用いて得られた。
C(X)=C
0*(1−X)
(kseg−1)
ここで、
C(X)は、インゴットの一定の直径部分に沿った点におけるドーパント特性、
C
0は、インゴットの一定の直径部分の最初における初期ドーパント濃度、
Xは、固まったインゴットの割合、
ksegは、分離係数、である。
【0056】
ホウ素は、0.80の分離係数を有するため、固体化した融液の割合を関数としたホウ素の濃度は、インゴット成長の殆どを通して比較的一定である。
図1に見られるように、ホウ素濃度は、融液の約90%が固体化するまで、約1.0×10
19atoms/cm
3と約1.5×10
19atoms/cm
3との間の範囲の濃度から大きく逸出し始めることはない。砒素とアンチモンの分離係数は、それぞれ0.3および0.023と、より低いため、結晶成長中の比較的早くに、それらのドーパントは十分な濃度で融液中に蓄積され、それにより、インゴットの一定の直径部分の最初に比較して、インゴットの一定の直径部分の最後において、インゴットは十分に高いドーパント濃度を有するようになる。
【0057】
図1に記載されたグラフは、ホウ素と、砒素またはアンチモンの一方がドープされたインゴットからスライスされ、それによりウエハが予想可能で低い抵抗率を有し、一方で砒素とリンがドープされることにより、ウエハが高濃度の空孔を有し、これにより追加的に、ウエハの中心軸から周縁エッジまで均一な高酸素析出挙動を有する、高ホウ素ドープで低抵抗率の単結晶シリコンウエハの選択を可能にする。
【0058】
本発明の範囲から離れることなく、様々な変形が、上記構成およびプロセスで行うことができるため、上記記載に含まれる全ての内容は、例示的であり、限定的ではないと解釈されることを意図する。
【0059】
本発明またはその好適な具体例の要素を導入する場合に、「ある(a)」、「ある(an)」、「その(the)」、および「上記(said)」の冠詞は、1またはそれ以上の要素があることを意味することを意図する。「含む(comprising)」、「含む(including)」、および「有する(having)」の用語は、包括的であることを意図し、列挙された要素以外の追加の要素も存在することを意味する。