(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6289710
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】自動車前照灯
(51)【国際特許分類】
F21S 41/00 20180101AFI20180226BHJP
F21S 43/00 20180101ALI20180226BHJP
F21S 45/00 20180101ALI20180226BHJP
F21V 7/22 20180101ALI20180226BHJP
F21V 9/14 20060101ALI20180226BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20180226BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20180226BHJP
F21W 103/00 20180101ALN20180226BHJP
F21W 104/00 20180101ALN20180226BHJP
F21W 105/00 20180101ALN20180226BHJP
F21W 102/00 20180101ALN20180226BHJP
F21Y 101/00 20160101ALN20180226BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20180226BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20180226BHJP
【FI】
F21S8/12 530
F21S8/12 282
F21S8/12 290
F21S8/12 520
F21S8/12 110
F21V7/22 240
F21V9/14
G02B5/30
G02F1/13 505
F21W101:10
F21Y101:00 100
F21Y101:00 300
F21Y115:10
F21Y115:30
【請求項の数】7
【外国語出願】
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-101550(P2017-101550)
(22)【出願日】2017年5月23日
(65)【公開番号】特開2017-212210(P2017-212210A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2017年5月23日
(31)【優先権主張番号】10 2016 109 530.3
(32)【優先日】2016年5月24日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510238096
【氏名又は名称】ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【弁理士】
【氏名又は名称】林 恒徳
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン エーベルハルト
【審査官】
松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−185207(JP,A)
【文献】
特開2012−69295(JP,A)
【文献】
特開2011−243366(JP,A)
【文献】
特開2010−176981(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第102013113807(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/12
F21V 7/22
F21V 9/14
G02B 5/30
G02F 1/13
F21W 101/10
F21Y 101/00
F21Y 115/10
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源(20)と、
前記光源(20)から来る光を互いに異なるように偏光された2つの部分光路(S1、S2)に分割する、前記光源(20)の光路内に設けられた偏光ビームスプリッタ(30)と、
第1部分光路(S1)内に設けられた第1液晶マスク(40)、第1偏光フィルタ(50)および第1レンズ(60)と、
第2部分光路(S2)内に設けられた第2液晶マスク(42)、第2偏光フィルタ(52)および第2レンズ(62)と
を備えた自動車前照灯(10)において、
前記第1部分光路(S1)内の前記第1レンズが前記第2部分光路(S2)内の前記第2レンズ(62)と異なる焦点距離f1を有することを特徴とする自動車前照灯(10)。
【請求項2】
前記第1レンズ(60)の焦点距離f1が少なくとも20%だけ、特に好ましくは少なくとも40%だけ前記第2レンズ(62)の焦点距離f2と異なっていることを特徴とする請求項1に記載の自動車前照灯(10)。
【請求項3】
前記第2部分光路(S2)内において前記偏光ビームスプリッタ(30)の前方に、鏡(32)が設けられ、前記第2部分光路(S2)が前記鏡(32)の前方で前記第1部分光路(S1)に対してほぼ平行に延在するように、前記鏡(32)が配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の自動車前照灯(10)。
【請求項4】
前記両部分光路(S1、S2)がほぼ上下に配置され、より小さな焦点距離f1の前記第1レンズ(60)を有する前記第1部分光路(S1)が、より大きな焦点距離f2の前記第2レンズ(62)を有する前記第2部分光路(S2)の上方に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の自動車前照灯(10)。
【請求項5】
前記両部分光路(S1、S2)を取り囲んでいて前照灯ガラス(14)を備えている前照灯ハウジング(12)が設けられ、前記ハウジング(12)内の前記第2部分光路(S2)のほぼ水平に延在する区間(X2)が前記第1部分光路(S1)の水平に延在する区間(X1)よりも長くなるように、前記ハウジングが傾斜していることを特徴とする請求項4に記載の自動車前照灯(10)。
【請求項6】
前記液晶マスク(40、42)が、それぞれ互いに別々に作動可能な多数の液晶セル(41)を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の自動車前照灯(10)。
【請求項7】
前記光源(20)が、それぞれ互いに別々に作動可能な多数の光電池(21)を備えていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の自動車前照灯(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
高価値の自動車前照灯では、光源から来る光束をマスキングすることができる、特に可変にかつ迅速にマスキングすることができる液晶マスクが使用される。
【0003】
特許文献1は液晶マスクを備えたこのような自動車前照灯を開示している。液晶マスクは、1つの偏光面に関してのみ透過性であり一方、この偏光面に対して垂直な第2偏光面に関しては透過性でないという物理的な欠点を有する。これにより、偏光されていない入射光束の約50%が液晶マスクによって吸収される。この理由から、偏光ビームスプリッタが使用される。このビームスプリッタは光源の光路内に配置され、光源から来る光を互いに異なる2つの偏光された部分光路に分割する。両部分光路はそれぞれ液晶マスクに供給される。この液晶マスクはその透過の切換え状態で、当該の部分光路の偏光された光を透過させる。これにより、液晶マスクによって生じる全体損失を10%以下に低減することができる。液晶マスクによってマスキングされた両部分光路の光束は、両部分光路内の同一のレンズによって外側へ投射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第102013113807A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、液晶マスクを備えた自動車前照灯の空中像を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は本発明に従い、請求項1の特徴を有する自動車前照灯によって解決される。
【0007】
本発明に係る自動車前照灯は光源を備え、この光源は偏光されていない光を発生するかあるいは特に好ましくは互いにほぼ垂直な2つの偏光面で偏光されている光を発生する。光源は例えば白熱電球、ガス放電電球、発光ダイオードまたはレーザダイオードからなっている。
【0008】
光源の主光路には、偏光ビームスプリッタが配置されている。このビームスプリッタは光源から来る光を、互いに異なる2つの直線的な偏光された部分光路に分割する。偏光ビームスプリッタは例えばワイヤグリッド式ビームスプリッタである。このビームスプリッタは主光路に対して比較的斜めに、例えば約45°の角度で配置することができる。
【0009】
両部分光路はそれぞれ1つの光学機器を有する。この光学機器はそれぞれ、液晶マスク、偏光フィルタおよびレンズからなっている。液晶マスクによって、入射光がその偏光部に関連して非作動マスク状態で回転させられ、作動状態で回転させられない。液晶マスクに付設された偏光フィルタは光学的に液晶マスクの前方に配置され、偏光された光だけが偏光フィルタを通過することができる。液晶マスクは好ましくは、非作動状態で直線的な入射偏光光を回転し、それによってこの偏光光がほぼ損失のないように偏光フィルタを通過することができるように、形成および配置されている。その代わりに、液晶マスクと偏光フィルタは、直線的な入射偏光光が液晶マスクの作動状態でのみこの液晶マスクによって回転させられるかまたは回転させられず、それによって液晶マスクから出る光が偏光フィルタを実際に損失のないように通過することができるように形成されている。
【0010】
両部分光路内においてそれぞれ1個のレンズが光学的に液晶マスクの前方に設けられている。このレンズによって、偏光フィルタから出る光が曲げられ、それによって所望の空中像が周囲に生じる。この第1部分光路内の第1レンズは、第2部分光路内の第2レンズと異なる焦点距離を有する。両レンズの互いに異なる焦点距離とは、基本的にはすべてであると理解すべきである。これは他の空中像、例えばレンズの円筒状型の互いに異なる配向につながる。
【0011】
これにより、両部分光路の空中像の合計である全体空中像を非常に異なるように形成することができる。例えば、一方の部分光路によって比較的に幅の広い部分空中像が発生し一方、他方の部分光路によって当該の部分空中像の中央強度が非常に高くなるように、両部分光路の両レンズを選定することできる。これにより例えば、高い中央明度を有する典型的なハイビーム空中像を最適化することができる。すなわち、重ねられた2つの個々の部分空中像によって、従来の技術と比べて全体空中像の最高強度を高めることができる。
【0012】
さらに、より広い全体空中像を発生することができる。というのは、1つの部分光路の空中像が、空中像の中央の最高強度の大きな損失を甘受する必要なしに、1つの一様な空中像または2つの同一の部分空中像の場合に可能である広さよりも広くなるからである。ロービームとハイビームのために、より高い全体効率を有する人間工学的に最適化された空中像が生じる。
【0013】
液晶マスクが多数の液晶セルからなっているときに、液晶マスクがそれぞれその部分空中像の或る程度のグレーティングを生じるので、互いに異なる両部分空中像を重ねることによって均質的な全体空中像が達成される。さらに、全体空中像の解像度が高められる。
【0014】
第1レンズの焦点距離f1は好ましくは、少なくとも20%だけ第2レンズの焦点距離f2と異なっている。焦点距離が少なくとも40%だけ互いに異なっていると特に有利である。これにより、短い焦点距離のレンズを有する第1光路は、比較的に広い部分空中像を生じ、これに対して長い焦点距離のレンズを有する部分光路は、比較的に狭い部分空中像を生じる。これは結果として空中像中央の高い強度を伴う。
【0015】
有利な実施形では、第2部分光路内において偏光ビームスプリッタの光学的に前方に、鏡が設けられ、第2部分光路が鏡の光学的に前方で第1部分光路に対してほぼ平行に延在するように、鏡が配置されている。さらに、両部分光路は側方にできるだけ少し互いに離隔されている。これにより、いかなる場合でも、肉眼で見えるほどの両部分光路の同軸性が達成されるので、両部分空中像は実質的に互いに同心である。
【0016】
両部分光路は好ましくはほぼ垂直方向上下に配置され、より小さな焦点距離の第1レンズを有する第1部分光路が、より大きな焦点距離の第2レンズを有する第2部分光路の垂直方向上方に配置されている。液晶マスクからの大きな焦点距離のレンズの距離が、付設の液晶マスクからの小さな焦点距離のレンズの距離よりも大きいので、車両の傾斜したフロント範囲において一般的であるような、水平面に対して傾斜した前照灯の輪郭が生じる。
【0017】
両部分光路を取り囲んでいて前照灯ガラスを備えている前照灯ハウジングが設けられているときわめて有利である。前照灯ガラスが水平面に対して傾斜しているので、ハウジング内でほぼ水平に延在する第2または下側の部分光路の区間を、第1または上側の部分光路の水平に延在する区間よりも長くすることができる。第1部分光路の当該の区間は偏光ビームスプリッタの前方の区間であり、第2部分光路の当該の区間は鏡の前方の区間である。これにより、くさび状の前照灯を供することができる。この前照灯は車両に傾斜したフロント部分に問題なく組み込むことができる。
【0018】
両液晶マスクは好ましくは、それぞれ互いに別々に作動可能な多数の液晶セルを備えている。液晶マスクはそれぞれ二次元マトリックスの形に形成されているので、原理的には当該部分光束の任意の輪郭をマスキングすることができる。2つの部分空中像からなる全体空中像が発生させられるので、両液晶マスクの分解能をそれぞれ比較的に小さく選定することができる。液晶マスクの光学的な吸収損失が実質的に、液晶セルの数に比例するプリント配線の数に左右されるので、これにより、マスキングに起因する光学的な全体損失を比較的に小さく抑えることができる。
【0019】
光源が多数の光電池を備え、この光電池が二次元のマトリックスで配置され、かつそれぞれ互いに別々にまたは選択的に作動可能であると有利である。これにより、例えば前照灯のエネルギ消費を低減することができる。なぜなら、両液晶マスクによって等しくマスキングされているかまたはマスキングされる光源の光電池を常に作動停止することができるからである。
【0020】
次に、図に基づいて本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係る自動車前照灯の概略的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図には、自動車の前の車道と走行空間を照らす働きをする自動車前照灯10が概略的な縦断面図で示してある。そのために、前照灯10は前照灯の外側の全体の空中像を発生する。この空中像は全体状況に応じて適合させることができ、特にマスキングすることができる。
【0023】
前照灯10の光学部品は前照灯ハウジング12内に配置されている。この前照灯ハウジングは箱形の五角形のハウジング本体13を備え、さらにこのハウジング本体13の開口側に、水平面に対して傾斜した透明な前照灯ガラス14を備えている。
【0024】
ハウジング12内に光源20が配置されている。この光源は多数の個々の光電池21からなり、この光電池は二次元マトリックスで配置され、例えば発光ダイオードまたはレーザダイオードによって形成される。光源20または光電池21は偏光されていない光からなる、ほぼ平行で拡散しない光束を発生する。この光束は、偏光ビームスプリッタ30までほぼ水平な主光路を形成する。
【0025】
偏光ビームスプリッタ30は本実施の形態ではワイヤグリッドによって形成され、光源の光束または主光路に対して45°傾斜している。偏光ビームスプリッタ30は主光束を2つの部分光束に分割する。この部分光束は両部分光路S1、S2を形成する。この場合、両部分光路は互いに垂直に偏光されている。ビームスプリッタ30の透過方向には、偏光された水平な光だけを有する上側または第1の部分光束が続いており、これに対してビームスプリッタ30から下方に反射された部分光束は偏光された垂直な光だけからなっている。すなわち、光源20から来る主光路は2つの部分光路S1、S2に分割され、この部分光路はそれぞれ、互いに垂直な2つの偏光された部分光束によって形成される。
【0026】
ビームスプリッタ30から垂直方向下方に反射した、第2部分光路S2の部分光束は、鏡32に当たる。この鏡は本実施の形態では平らに形成され、ビームスプリッタ30の底面に対して平行に三次元的に配向されている。第2部分光路S2は鏡30によって第1部分光路S1に対して平行に向きを変えられる。
【0027】
第1光路S1においてビームスプリッタ30の前方におよび第2光路S2において鏡32の前方に、それぞれ1つの液晶マスク40、42が配置され、そしてこの液晶マスクの前方にそれぞれ1つの付設の偏光フィルタ50、52が配置されている。液晶マスク40、42はそれぞれ多数の液晶セル41を有し、この液晶セルは二次元のセルマトリックスを形成している。液晶マスク40、42によって、それぞれの光束をマスキングすることができる。
【0028】
液晶マスク40、42と偏光フィルタ50、52の良好な冷却を可能にするために、両液晶マスク40、42の前方に偏光フィルタ50、52がそれぞれ多少離して配置されている。液晶マスク40、42はその非作動状態で入射光束の偏光面を90°だけ回転し、そして液晶マスク40、42はその作動状態で偏光された入射光束をそれぞれ偏光しないで通過させることができる。前方に配置された偏光フィルタ50、52の偏光面は、液晶マスク40、42の非作動の液晶セル41から出る光が同じ偏光面を有するように選定されている。それによって、非作動の液晶セル41から来る光束は偏光フィルタ50、52も通過する。
【0029】
続いて、両光束はそれぞれレンズ60、62に当たる。この場合、上側または第1の部分光路S1のレンズ60の焦点距離f1は、第2または下側の部分光路S2のレンズ62の焦点距離f2よりも短い。
【0030】
ほぼ水平に延在する第1部分光路S1の区間X1は、当該のレンズ60の焦点距離f1が短いので、水平に延在する第2部分光路S2の区間X2よりも短い。
【0031】
光源20と両液晶マスク40、42は前照灯制御装置16によって制御される。前照灯制御装置16は、走行状態、ライティング状態および場合によっては他の境界条件についての信号を車両側から入手し、これらに依存して光源20の光電池21と両液晶マスク40、42の液晶セル41を制御する。
【符号の説明】
【0032】
10 前照灯
20 光源
30 ビームスプリッタ
40 第1液晶マスク
42 第2液晶マスク
50 第1偏光フィルタ
52 第2偏光フィルタ
60 第1レンズ
62 第2レンズ
S1 第1部分光路
S2 第2部分光路