(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
巻かれた金属線材を前記金属線材の軸回りに螺旋状にねじれた状態に引き出して、このねじれに基づいて前記金属線材を前記軸回りに回転させながら当該金属線材の軸方向に沿って走行させ、
前記軸回りに回転しながら前記軸方向に沿って走行する前記金属線材に連続的に処理を施す金属線材連続処理装置であって、
ウェットブラストにより、走行する前記金属線材からスケールを除去するスケール除去部と、
スケールが除去されて走行する前記金属線材に皮膜を形成する皮膜形成部とを備え、
前記スケール除去部は、液体と研磨剤との混合液を走行している前記金属線材に圧縮気体で噴射するブラストガンを、走行する前記金属線材の周囲で前記軸方向に沿って螺旋状の配列を成して複数並べて配置し、
全ての前記ブラストガンからの前記混合液の噴射が終わる所定の前記金属線材の走行位置において、走行方向の最後となるブラストガンの噴射時における前記各ブラストガンの前記金属線材に対する噴射位置が前記ブラストガン配列全体として前記金属線材の軸回りに略全周に渡って略均等に分散するように、前記ブラストガンが前記軸方向から見て前記金属線材のねじれに伴って前記軸回りで不均等な噴射角度間隔を成して配置され、
前記軸方向に沿って複数並べて配置された前記ブラストガンの前記噴射角度を、前記金属線材の前記軸回りの回転の回転角度の増加に応じて、並び順に前記噴射角度が増えるように異ならせ、
隣り合う前記ブラストガン同士の前記噴射角度の差の平均を隣り合う前記ブラストガン同士の距離の平均で除算した単位距離当たりの噴射角度差の値が走行する前記金属線材の単位走行距離当たりの前記軸回りの回転角度の2倍以上となっていることを特徴とする金属線材連続処理装置。
【背景技術】
【0002】
プレストレスト・コンクリート(PC)に緊張を与える緊張材として、例えば、ポールパイルのPC鋼線が知られている。ポールパイルは、円筒状のコンクリート杭であるが、杭だけでなく電柱等としても用いられ、プレストレス用のPC鋼線を有する。PC鋼線は、例えば、鋼材の線状体であるが、製造された鋼線の表面のスケールを除去した後に、鋼線の表面に皮膜を形成する処理がなされる。すなわち、鋼線のスケールを除去するバッチ酸洗工程(皮膜形成含む)として、塩酸への浸漬、水洗、中和、リン酸亜鉛皮膜の形成、湯洗、石灰塗布、乾燥が行われる。
【0003】
また、ポールパイル用のPC鋼線では、さらに、
図18に示すように、サプライ1による素線(鋼線)の供給、伸線機2による線材の伸線、インデント加工機3による線材のインデント加工、駒矯直加工機4による線材の矯正、高周波加熱装置5による線材の熱処理が行われた後に巻取装置6により加工後の線材が巻き取られる。サプライ1から巻取装置6までは、鋼線(線材)に対して連続的に処理が行われる。なお、インデント加工では、コンクリートへのPC鋼線の付着性を高めるために、例えば、素線の表面に軸方向に沿った凹みを形成する。
【0004】
それに対して、上述のスケールの除去および皮膜の形成は、連続処理ではなく、バッチ処理で行われる。例えば、スケールの除去としては、酸洗により線材表面のスケールが除去される。また、皮膜の形成は、例えば、ボンデライト処理によりリン酸塩皮膜を形成している。酸洗をバッチ処理で行う場合に、巻かれた状態の線材を強酸性溶液に浸けて酸洗を行い、次いで、皮膜を形成し、次に上述の線材の連続処理を行うが、この際に巻かれた線材を工程間で移送するのに手間がかかるとともに線材を疵つける虞がある。また、巻かれた状態の線材を酸洗した場合に、巻かれた線材において、隣接して重なる線材同士の間でスケールを落としきれなかったり、酸洗後に線材間に水が残り乾燥むらが生じたりする。この乾燥むらが錆の発生の要因となる。
【0005】
そこで、酸洗や皮膜形成を巻かれた状態の線材にバッチ処理で行うのではなく、線材を巻かれた状態から伸ばして連続的に電解酸洗や皮膜形成を行うことが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、線材の連続処理ではないが、メッキ処理前の鉄や鋼のワークの酸化皮膜を除去する方法として、ウェットブラスト処理を用いることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、電解酸洗処理を巻かれた状態の線材を伸ばして、連続処理で行うことにより、上述の巻かれた状態の線材をバッチ処理する際の問題の多くを解決できる可能性があり、酸洗時に巻かれた線材のように隣接する状態の線材がなく、線材が伸ばされているので、線材が重ならず、線材表面にスケールが残ったり、線材間で乾燥が遅くなって線材が錆たりする問題が緩和される。また、他の連続処理と合わせて多くの処理を連続的に行うことが可能となり、処理にかかる手間が低減される。しかし、例えば、電解酸洗をした場合に、金属の線材が水素に接触して水素を吸収し、水素脆化が起こり、金属線材が脆化して割れ易くなるという問題がある。たとえば、ハイカーボン材では、水素脆化により伸線加工時に割れが生じる虞がある。また、強酸性溶液の取扱に手間がかかり、使用済みの強酸性溶液の廃棄に環境への配慮が必要となる。
また、スケールの除去を連続的に行う方法として、ブラストガンから砥粒と液体の混合液を圧縮気体で噴射するウェットブラストが考えられるが、走行する金属線材の一つの通過点に周方向に複数のブラストガンを配置して全周のスケールを一度に除去することが困難であり、走行する金属線材に沿って複数のブラストガンを配置するとともに、混合液の噴射角度を180度や90度や60度ずつ変化させて、最終的に金属線材の全周のスケールを除去することが考えられる。しかし、金属線材は、ロール状に巻かれた状態から引き出される際に軸回りに回転するようにねじれた状態となり、このねじれに基づいて金属線材は走行中に回転してしまう。そのため、ブラストガンの噴射角度をブラストガンの並び順に異ならせて金属線材の全周のスケールを除去しようとした際に金属線材の軸回りの回転により、スケールがまだらに残る虞がある。なお、並んだ各ブラストガンの噴射角度を金属線材の回転に応じて設定することが考えられるが、金属線材の回転量は、ロール内の位置や、ロールによって異なる可能性があり、ブラストガンの配置や角度を変更することなく、常に金属線材からスケールをきれいに除去することが難しいと思われる。
【0008】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、酸洗を行わずに金属線材のスケールを連続的にウェットブラストで除去するとともに、ウェットブラストの際に金属線材の回転角度の変化に応じてブラストガンの角度や位置を変更することなくスケールを除去する金属線材連続処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の金属線材連続処理装置は、巻かれた金属線材を前記金属線材の軸回りに螺旋状にねじれた状態に引き出して、このねじれに基づいて前記金属線材を前記軸回りに回転させながら当該金属線材の軸方向に沿って走行させ、
前記軸回りに回転しながら前記軸方向に沿って走行する前記金属線材に連続的に処理を施す金属線材連続処理装置であって、
ウェットブラストにより、走行する前記金属線材からスケールを除去するスケール除去部と、
スケールが除去されて走行する前記金属線材に皮膜を形成する皮膜形成部とを備え、
前記スケール除去部は、液体と研磨剤との混合液を走行している前記金属線材に圧縮気体で噴射するブラストガンを、走行する前記金属線材の
周囲で前記軸方向に沿って
螺旋状の配列を成して複数並べて配置
し、
全ての前記ブラストガンからの前記混合液の噴射が終わる所定の前記金属線材の走行位置において、走行方向の最後となるブラストガンの噴射時における前記各ブラストガンの前記金属線材に対する噴射位置が前記ブラストガン配列全体として前記金属線材の軸回りに略全周に渡って略均等に分散するように、前記ブラストガンが前記軸方向から見て前記金属線材のねじれに伴って前記軸回りで不均等な噴射角度間隔を成して配置され、
前記軸方向に沿って複数並べて配置された前記ブラストガンの前記噴射角度を、前記金属線材の前記軸回りの回転の回転角度の増加に応じて、並び順に前記噴射角度が増えるように異ならせ、
隣り合う前記ブラストガン同士の前記噴射角度の差の平均を隣り合う前記ブラストガン同士の距離の平均で除算した単位距離当たりの噴射角度差の値が走行する前記金属線材の単位走行距離当たりの前記軸回りの回転角度の2倍以上となっていることを特徴とする。
【0010】
このような構成によれば、スケールの除去を、強酸を用いることなく、連続的に行うことができる。連続的にスケールの除去を行えることにより、例えば、伸線等の他の連続処理と組合せて連続的に処理を行えるので、処理が容易になる。また、強酸を使わないので、強酸の取扱や廃棄が問題となることがない。また、一箇所で複数方向から前記混合液を金属線材の全周に渡って噴射した場合に、複数の噴射がぶつかり合って、効率的にスケールを除去できない虞があるが、各噴射を金属線材の走行方向にずらして並べて配置することで効率的にスケールを除去することができる。また、水素脆化の問題も生じない。また、各ブラストガンの噴射角度を調整することで、ねじれにより金属線材が軸回りに回転し、状況に応じて回転角度が変化しても金属線材の全周のスケールを除去することが可能である。
なお、全ての前記ブラストガンの前記混合液の噴射が終わる所定の走行位置とは、走行方向に沿って並ぶブラストガンのうちの走行方向の最後となるブラストガンの位置である。また、ブラストガンからは連続的に混合液が噴射されるので、金属線材状の混合液が噴射された領域は、金属線材の表面を帯状に配置されることになり、ブラストガンの数に対応する帯が金属線材の全表面を覆うように混合液が噴射されるが、金属線材が回転することで帯の配置がらせん状にずれるが、それを許容するようにウェットブラストが配置されている。
【0012】
なお、例えば、金属線材が1m移動する毎に360度回転する状況で、ブラストガンが1/8m毎に噴射角度を45度ずつ増加して8つ配置されると、全て金属線材表面の同じ角度位置に帯状に混合液が噴射されてしまい、金属線材の全周の一部しかスケールを除去できない。したがって、金属線材の走行距離当たりの回転角度に対して各ブラストガンの噴射角度の距離当たりの変化量をずらす必要があり、金属線材の回転速度より単位距離当たりの噴射角度の変化量を大きくすることが好ましい。
【0013】
また、本発明の前記構成
では、前記軸方向に沿って複数並べて配置された前記ブラストガンの前記噴射角度を、前記金属線材の前記軸回りの回転の回転角度の増加に応じて、並び順に前記噴射角度が増えるように異ならせ、
隣り合う前記ブラストガン同士の前記噴射角度の差の平均を隣り合う前記ブラストガン同士の距離の平均で除算した単位距離当たりの噴射角度差の値が走行する前記金属線材の単位走行距離当たりの前記軸回りの回転角度の2倍以上となって
いる。
【0014】
したがって、効率的にウェットブラストによりスケールを除去することができる。例えば、走行中の金属線材の単位走行距離当たりの回転角度を測定し、ブラストガンの単位距離当たりの噴射角度差の値が、測定された金属線材の単位走行距離当たりの軸回りの回転角度のうちの最大の回転角度の2倍以上とすることで、金属線材の回転速度が変化しても単位距離当たりの噴射角度差の2倍以内に収まる可能性が高くなり、金属線材のねじれによる回転の回転速度が変化しても金属線材の全周に渡ってスケールを除去することができる。なお、単位距離当たりの噴射角度差の値が走行する前記金属線材の単位走行距離当たりの前記軸回りの回転角度の3倍以上となっていることがより好ましい。この発明は、各ブラストガンの噴射角度と、金属線材の走行方向に沿った位置の両方を限定したものであり、それを単位走行距離当たりの噴射角度差で示してい
る。
【0015】
本発明の前記構成において、前記単位距離当たりの噴射角度差の値が走行する前記金属線材の単位走行距離当たりの前記軸回りの回転角度の10倍以下となっていることが好ましい。
【0016】
このような構成によれば、ブラストガン同士の配置間隔が短くなり過ぎたり、隣り合うブラストガン同士の噴射角度の差が大きくなり過ぎたりするのを防止できる。言い換えれば、単位距離当たりの噴射角度差の値を設定した際に、この値の1/2〜1/10の範囲で金属線材の単位走行距離当たりの回転角度が変化しても対応可能であり、ブラストガンの配置や角度を変える必要がない。
なお、ブラストガン同士の配置間隔の下限や隣り合うブラストガン同士の噴射角度の差の上限を決めるものとしてもよく、例えば、ブラストガン同士の配置間隔の下限を0.05m以上としたり、隣り合うブラストガン同士の噴射角度の差の上限を120度以下としてもよい。
【0017】
本発明の前記構成において、前記スケール除去部によるスケール除去の前に、引き出された前記金属線材に曲げを加えて機械的にスケールを剥離させるベンディング部と、
前記ベンディング部を通過した前記金属線材を矯正して直線化して前記スケール除去部に送り出す矯正部とを備えることが好ましい。
【0018】
このような構成によれば、スケール除去部でウェットブラストによりスケールを除去する前にベンディング部で機械的にスケールの一部を金属線材の表面から剥離させることができる。これによりウェットブラストで効率的にスケールを除去可能になり、スケールが残るのを抑制することができる。また、ウェットブラストの前に矯正部で金属線材を真っ直ぐに矯正することで、ブラストガンから噴射される混合液が正確に金属線材の表面に当たるようにして、スケールが残るのを抑制することができる。
【0019】
本発明の前記構成において、前記スケール除去部を通過した前記金属線材を連続的に伸線する連続伸線部と、
前記金属線材の外周面に凹みを形成するインデント加工部と、
前記金属線材を真直加工する矯正加工部と、
前記金属線材を熱処理する加熱部とを備えることが好ましい。
【0020】
このような構成によれば、金属線材をPC鋼線として用いることができる。なお、インデント加工によりコンクリートに対するPC鋼線の付着力を大きくしている。また、加熱部での熱処理によりPC鋼線の硬さを調整している。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、スケール除去を、酸を使わずにウェットブラストで連続的に行うことで、効率的に金属線材を処理することが可能となるとともに、金属線材のねじれによる回転にも対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施の形態に係る金属線材連続処理装置を示す概略図である。
【
図2】同、ウェットブラスト装置を示す概略図であるある。
【
図3】同、ウェットブラスト装置を示す概略図であるある。
【
図4】同、ウェットブラスト装置における金属線材の回転による影響を説明するための図表である。
【
図5】同、ウェットブラスト装置における金属線材の回転による影響を説明するための図表である。
【
図6】同、ウェットブラスト装置における金属線材の回転による影響を説明するための図表である。
【
図7】同、ウェットブラスト装置における金属線材の回転による影響を説明するための図表である。
【
図8】同、ウェットブラスト装置における金属線材の回転による影響を説明するための図表である。
【
図9】同、ウェットブラスト装置における金属線材の回転による影響を説明するための図表である。
【
図10】同、ウェットブラスト装置における金属線材の回転による影響を説明するためのグラフである。
【
図11】同、ブラストガンの配置を変更した場合のウェットブラスト装置における金属線材の回転による影響を説明するための図表である。
【
図12】同、ブラストガンの配置を変更した場合のウェットブラスト装置における金属線材の回転による影響を説明するための図表である。
【
図13】同、ブラストガンの配置を変更した場合のウェットブラスト装置における金属線材の回転による影響を説明するための図表である。
【
図14】同、ブラストガンの配置を変更した場合のウェットブラスト装置における金属線材の回転による影響を説明するための図表である。
【
図15】同、ブラストガンの配置を変更した場合のウェットブラスト装置における金属線材の回転による影響を説明するための図表である。
【
図16】同、ブラストガンの配置を変更した場合のウェットブラスト装置における金属線材の回転による影響を説明するための図表である。
【
図17】同、ブラストガンの配置を変更した場合のウェットブラスト装置における金属線材の回転による影響を説明するためのグラフである。
【
図18】従来の金属線材連続処理装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1に示すように、本実施の形態の金属線材連続処理装置は、巻かれた金属線材10を直線状に引き出して供給するサプライ11と、金属線材10に曲げを加えてスケールを機械的に金属線材10表面から剥離させるベンディング装置(ベンディング部)12と、ベンディング装置12で曲げを加えられた金属線材を直線状に矯正する矯正装置(矯正部)13と、研磨材と水(液体)を圧縮空気(気体)で金属線材に噴射してスケールを除去するウェットブラスト装置(スケール除去部)14と、スケールを除去された金属線材10の表面に皮膜を形成する皮膜装置(皮膜形成部)15と、金属線材10を引き伸ばして径を小さくする連続伸線機(連続伸線部)16と、金属線材10の表面に凹みを形成するインデント加工を行うインデント加工機(インデント加工部)17と、金属線材10を真直加工する矯正加工機(矯正加工部)18と、金属線材10を熱処理する加熱装置(加熱部)19と、処理が終わった金属線材10を巻き取る巻取装置20とを備える。
サプライ(コイルプッシャ付き水平サプライ)11では、巻かれたロール状の金属線材10を例えばロールの軸回りに回転させて引き出すのではなく、巻かれた金属線材10を一方の端部側から引き出しており、例えば、ばねをそのまま伸ばしたように、ねじれを生じさせながら金属線材10を引き出して供給している。また、連続処理が金属線材10の1ロール分で終わらないように、サプライ11では、複数のロール状の金属線材10を加熱圧接機により溶接するようになっており、金属線材連続処理装置が作動中は、切れ目なしに連続的に金属線材10を供給可能となっている。
【0024】
ベンディング装置12は、ピンチローラを備え、供給された金属線材10をピンチローラで挟み込んで当該金属線材10を押し出して金属線材10をその長さ方向に沿って走行させることにより、金属線材10を巻取装置20側に送り出している。また、ベンディング装置12は、縦横の複数のベンディングローラを備え、金属線材10を上下や左右からベンディングローラで挟み込んで、金属線材10に曲げを加えてスケールを機械的に剥離させている。なお、ベンディング装置12による処理は、ウェットブラスト装置14によるスケール除去の前処理(予備処理)に当たるもので、全てのスケールを除去するものではなく、ウェットブラストでスケールを除去し易くするものである。
【0025】
矯正装置13は、ベンディング装置12で曲げを加えられた金属線材を直線状に矯正してウェットブラスト装置14に送り出すものであり、複数の矯正ローラで、金属線材10を上下や左右から挟み込んで直線状に矯正している。ウェットブラスト装置14では、できるだけ金属線材が直線状である方が効率的にスケールの除去ができる。
【0026】
図2に示すウェットブラスト装置14は、研磨材(砥粒)を水と混ぜた混合液を圧縮空気で金属線材10に噴射(投射)する複数のブラストガン31を備えており、複数方向から混合液を金属線材10に噴射することにより、金属線材10の外周面からスケールを除去できる。また、ブラストガン31については、後に詳細に説明するが金属線材10の走行方向に沿って互いに間隔を開けて並んで配置された状態となっている。
【0027】
混合液の砥粒は、多角形状のステンレス(例えばSUS430)であり、粒径が50〜200μmで、その硬度がHv750程度である。また、砥粒としては、金属線材10の表面のスケール性状や硬度に対応して、アルミナやジルコンサンド等のセラミック、ガラスビーズ等を選択しても良い。
ブラストガン31は金属線材10の周りに12本設置し、全周に噴射する。また、ブラストガン31は、金属線材10の走行方向(軸方向)に対して、90度(金属線材10に直交する角度)以外の角度で、金属線材10と平行とならない角度で混合液を噴射することが好ましい。すなわち、ブラストガン31は、90度以外の金属線材10と交差する角度で混合液を噴射するように配置されており、この際の角度θは、0°<θ<180°、θ≠90°である。また、走行する金属線材10に対して、ブラストガン31の噴射方向は、走行方向に沿う角度θとして0°<θ<90°であっても、走行方向と逆になる角度として90°<θ<180°であってもよい。
【0028】
皮膜装置15は、リン酸塩皮膜処理を行う装置であり、リン酸塩皮膜処理は、リン酸鉄、リン酸亜鉛、リン酸マンガンなどのリン酸塩の溶液を用いて金属の表面に化学的にリン酸塩皮膜を生成させる化成処理である。本実施の形態では、金属線材10の連続処理の一部として走行する金属線材10に皮膜を形成する。たとえば、金属線材10を陰極とし、燐酸塩皮膜形成液を電解液として、金属線材の表面に燐酸塩皮膜を形成する。金属線材10と接触して金属線材10を陰極とするローラ状の電極である集電ローラと、皮膜が化成しにくい鋼材や条件にても安定した皮膜化成が得られるようにする表面調整剤が貯留された表面調整槽と、燐酸塩皮膜形成液を電解液として燐酸塩皮膜を化成する電解化成槽と、金属線材10を洗浄する湯洗浄槽と、金属線材10を乾燥する乾燥装置を有する。
【0029】
連続伸線機16は、例えば、ダイスの孔に金属線材10を通して引っ張るものであり、ダイスの孔は、金属線材10が入る側より出る側の方が、孔が小さくなっており、ダイスを通しながら金属線材10を伸ばすことにより、金属線材10を所定の径としている。
【0030】
インデント加工機17は、凸付きローラで、金属線材10に凹みを付与するものであり、コンクリートの付着性を向上させるものである。
【0031】
矯正加工機18は、金属線材10に接触する駒を回転させ、金属線材10を真直加工する。
加熱装置19は、金属線材10を高周波誘導加熱する高周波加熱装置と、加熱した金属線材10を冷却する水冷槽を有する。加熱装置19は、金属線材10を熱処理して、引張強さと降伏強度を向上させる。なお、加熱装置19としては、高周波以外にも、ガス輻射炉、熱風炉、電気炉等が使用可能である。皮膜は、リン酸塩皮膜等の電解皮膜で無くとも良く、各種蒸着、各種メッキ、各種コーティング等で形成される皮膜であってもよい。
巻取装置20は、処理された金属線材10を巻き取るが、この際に金属線材10を任意の長さに切断する切断装置を有する。
【0032】
ウェットブラスト装置14のブラストガン31の配置について説明する。ウェットブラスト装置14は、
図2、
図3に示すように、金属線材10に対して設定角度となるように配置されるブラストガン31と、ブラストガン31を当該ブラストガン31から噴射される混合液の角度が定角度となるように支持するとともに、ブラストガン31から噴射される混合液を覆う支持カバー32と、支持カバー32を任意の角度で支持可能な脚部33と、脚部33を支持するベース部34とを備える。ベース部34は、金属線材10の走行(搬送)方向に沿って延在するように配置されている。脚部33は、ベース部34から立設された状態であり、支持カバー32を回転自在で設定角度で固定可能に支持している。支持カバー32にブラストガン31が固定的に支持されており、支持カバー32の角度でブラストガン31の噴射角度が決定するようになっている。また、支持カバー32を金属線材10が貫通するようにして走行する。
【0033】
なお、
図2および
図3は、本発明の実験段階におけるブラスト装置14を示すものであって、一種の比較例的なものであり、後述するブラストガン31の配置間隔および角度が後述の実施例と異なっており、以下において比較例として説明する。なお、
図2、
図3において、ブラストガン31の角度および配置間隔以外の構成は、本実施の形態のウェットブラスト装置14を示すものである。
この比較例では、走行する金属線材10のウェットブラスト装置14となる範囲にベース部34が設けられ、金属線材10の走行方向に沿って、2個ずつ同じ噴射角度で6対のブラストガン31が配置されている。すなわち、ブラストガン31として、第1ガンから第12ガンまで12個のブラストガン31が金属線材の走行方向に沿って並んで配置されている。たとえば、金属線材10一周分の360度内に60度毎に6対のブラストガン31が配置されている。たとえば、金属線材10が水平方向に走行している状態で、軸線方向に直交する方向の上を向く角度を0度とした場合に、第1ガンおよび第2ガンが右に30度の角度から金属線材10に混合液を噴射し、第3ガンおよび第4ガンが90度の角度から金属線材10に混合液を噴射し、第5ガンおよび第6ガンが150度の角度から金属線材10に混合液を噴射し、第7ガンおよび第8ガンが330度の角度から金属線材10に混合液を噴射し、第9ガンおよび第10ガンがおよそ270度の角度から金属線材10に混合液を噴射し、第11ガンおよび第12ガンが210度の角度から金属線材10に混合液を噴射するようになっている。なお、これら第1ガン〜第12ガンの角度は、金属線材10の軸周りの角度であり、第1ガン〜第12ガンは、金属線材10の走行方向に対して、その進行方向を0度とした場合に必ずしも走行方向に直交する方向の90度ではなく、0度から180度の範囲(90度を除く)で設定可能であり、90度より小さい場合に走行方向側に噴射する状態となり、90度より大きい場合に、走行方向の逆側に噴射する状態となる。
また、各ブラストガン31は、前半の6つと、後半の6つとに分けて配置されており、前半においては、隣り合うブラストガン31同士の間隔が例えば160〜180mmであり、後半においては、隣り合うブラストガン31同士の間隔が例えば160〜200mmであり、前半と後半の間には、740mmの間隔があけられている。
【0034】
ここで、上述のようにサプライ11において金属線材10にねじれが生じており、走行する金属線材は、ねじれに基づく力により、軸周りに回転していまい、走行していくにしたがって外周面の位置がずれることになる。これにより、上述のように金属線材10の走行方向に添って並んで配置されるブラストガン31の第1ガン〜第12ガンまで角度をずらしても金属線材10の全周に渡って所定の強度以上で混合液を当てた状態とすることが困難になり、スケールが一部残ってしまう虞がある。なお、スケールの除去に対して金属線材10の回転の回転速度と、各ブラストガン31同士の配置間隔および角度との関係が影響することになり、単に各ブラストガンの角度だけを考慮しても意味がない。
【0035】
ここでは、金属線材10がウェットブラスト装置14を1m移動する毎に、軸周りに
図4に示すように30度回転する場合と、1m移動する毎に、軸周りに
図5に示すように40度回転する場合と、1m移動する毎に、軸周りに
図6に示すように50度回転する場合と、1m移動する毎に、軸周りに
図7に示すように60度回転する場合と、1m移動する毎に、軸周りに
図8に示すように70度回転する場合と、1m移動する毎に、軸周りに
図9に示すように80度回転する場合とを想定した。
【0036】
各ブラストガン31は、上述のように60度毎に2ずつ配置されるとともに、金属線材10の走行方向に沿って
図4〜
図9に示す最終ガンまでの距離で配置されている。これらは第1ガン〜第12ガンの第12ガンまでの距離であり、第12ガンは距離0となる。したがって、各ブラストガン31の投射位置(略中央の位置)が、第12ガンが噴射される位置まで到達した場合に、6対のブラストガン31で均等に分散していれば、スケールをほぼ均等に除去できるが、各ブラストガン31の投射位置に対応する位置が第12ガン(ブラストガン)の投射位置で見た際に不均一で投射位置同士の間に60度より大きな間隔、たとえば90度等の間隔がある部分でスケールの除去が不十分となっている可能性がある。
【0037】
図10は、金属線材10において、上述のように第12ガンの混合液が投射された投射位置と同じ軸方向位置における第1ガン〜第12ガンの投射位置を角度で示すものである。なお、ここでは、隣り合う2つのブラストガン31同士が金属線材10に対して同じ角度で配置されているので、角度は6種類となっている。金属線材10が1m移動しても軸周りに回転しない場合には
図10のグラフのひし形の点で示されるように、投射位置は金属線材10の周方向に均等となる角度(60度)となっているが、1mで30度〜80度移動すると、投射位置が不均等となり、金属線材10の周方向の投射位置の間に60度ではなく90度以上の間隔があいている部分があり、金属線材10が1mで60度以上回転すると、投射位置同士の間に120度位上の間隔があく場合がある。金属線材10の同じ軸方向位置における各ブラストガン31の投射位置が周方向にずれる場合に、スケールを完全またはそれに近い状態まで落とすことが困難である。
【0038】
そこで、上述のように互いに隣接する2個ずつのブラストガン31を金属線材10に対して同じ角度とした配置をやめて、角度位置の間隔を狭くし、8つの角度位置について、1つまたは二つのブラストガン31を配置し、同じ角度となるブラストガン31を隣に配置せずに前半と後半で分けて配置するものとした。言い換えれば、前半と、後半とでそれぞれ6個のブラストガン31を略45度間隔(実際には42〜43度程度)で配置し、前半と後半と(第6ガンと第7ガンの角度差)の角度差を60度とし、前半の6個と、後半の6個のうちの4ずつを略同じ角度とすることで、略45度間隔で8つのブラストガンを配置していることになる。また、ブラストガン31は、混合液を略円錐状に広がるように噴射しているが、一つのブラストガン31から噴射された混合液が金属線材10の表面の全周のうちの60程度または60度以上の範囲で、スケールが除去されるようにブラストガン31から噴射される混合液の噴射時の広がり角度と、金属線材10からブラストガン31までの距離が設定されている。これにより、金属線材10の全周のスケールを除去するためには、最低6個のブラストガンが必要となる。なお、一つのブラストガン31による混合液の金属線材10の周方向に沿った噴射範囲は、スケールの除去率を考慮しなければ0度より大きい角度で、180度より小さい角度範囲で変更可能であるが、スケールの除去率を考慮すると60度程度が好ましいが60度に限られるものではない。噴射範囲を上述の60度より少し大きな範囲とすれば、金属線材10の全周に混合液を噴射するためのブラストガン31の必要最小限度の数を5個とすることも可能である。本実施の形態では、ブラストガン31の金属線材10の周方向の噴射範囲を略60度とし、必要最小限度のブラストガン31の数を6とするが、上述のように5であってもよい。但し、スケールの除去率を所望の値以上とする上では、金属線材10のスケールの除去において、金属線材10の全周が混合液に二度以上噴射されることが好ましく、ブラストガン31の数は、12個以上であることが好ましく、例えば、12個や18個であることが好ましい。ブラストガン31の数はこれに限られるものではなく、必ずしも6の倍数である必要はなく6〜18個程度のブラストガン31が配置されることが好ましい。
【0039】
なお、ブラストガン31を上述のように、一部の角度を重複させて12個配置するのではなく、全て異なる角度で8個だけ配置してもよいし、12個のブラストガン31を重複なく異なる角度で配置してもよい。ただし、スケール除去された金属線材10の表面の各位置では、二つ以上のブラストガン31による混合液が噴射されていることが好ましく、金属線材10の軸回りの一周当たり6個ずつで12個のブラストガン31が配置されていることが好ましい。
ここでは、金属線材10が水平方向に走行している状態で、軸線方向に直交する方向の上を向く角度を0度とした場合に、第1ガンの角度を299度とし、第2ガンの角度を342度とし、第3ガンの角度を24度とし、第4ガンの角度を66度とし、第5ガンの角度を108度とし、第6ガンの角度を150度とし、第7ガンの角度を210度とし、第8ガンの角度を253度とし、第9ガンの角度を296度とし、第10ガンの角度を339度とし、第11ガンの角度を21度とし、第13ガンの角度を63度とした。この角度は、上述の場合と同様に混合液の金属線材10への周方向の噴射角度となる。走行方向に対する噴射角度は上述の場合と同様である。前半と後半で、299度と296度、342度と339度、24度と21度、66度と63度とが重複する角度となる。
【0040】
ここで、金属線材10が単位距離として1m走行する際の回転角度を30度〜80度と見積もっている。それに対して、金属線材10の軸方向に沿って複数並べて配置されたブラストガン31の噴射角度を、金属線材10の軸回りの回転の回転角度の増加に応じて、並び順に噴射角度が増えるように異ならせ、隣り合うブラストガン31同士の噴射角度の差の平均(例えば、42.5度)を隣り合うブラストガン同士の距離の平均(例えば、172mm)で除算した単位距離(例えば、1m)当たりの噴射角度差の値(例えば、247度)が走行する金属線材10の単位走行距離当たりの前記軸回りの回転角度(見積の最大80度)の2倍以上となるようにしている。ここでは、80度の3倍以上の247度となっており、3倍以上としてもよい。なお、見積もった角度で最も小さい角度の30度に対しては、8倍以上となる。
【0041】
また、
図11〜16には、上述の金属線材10の走行1m当たりの回転角度が異なる場合の第1ガン〜第12ガンそれぞれの第12ガンまでの距離に基づく回転角度と、第1ガン〜第12ガンの投射の角度とから第12ガンの投射位置と同じ軸方向位置における各ブラストガン31の投射位置を角度で示している。
【0042】
これらの第12ガンの投射位置と同じ金属線材10の軸方向位置における第1ガン〜第12ガンの投射位置を投射範囲の中心の角度で
図17のグラフに示す。
図10のグラフと
図17のグラフを見比べると分かるように、ほぼ同じ角度のブラストガン31を隣接させずに離して配置するとともに、金属線材10の軸方向に沿って複数並べて配置されたブラストガン31の噴射角度を、金属線材10の軸回りの回転の回転角度の増加に応じて、並び順に噴射角度が増えるように異ならせ、隣り合うブラストガン31同士の噴射角度の差を隣り合うブラストガン同士の距離で除算した単位距離当たりの噴射角度差の値が走行する金属線材10の単位走行距離当たりの軸回りの回転角度の2倍以上となるようにすることで、第1ガンから第12ガンまでのブラストガン31による金属線材10外周面上の混合液の噴射位置を均等に近づけることができる。
また、走行する金属線材10の単位走行距離当たりの軸回りの回転角度に対して、隣り合うブラストガン31同士の噴射角度の差を隣り合うブラストガン同士の距離で除算した単位距離当たりの噴射角度差の値が多すぎると、金属線材10の回転速度によってはブラストガン31の配置間隔が短くなり過ぎたり、上述の角度差が大きくなり過ぎたりするので、隣り合うブラストガン31同士の噴射角度の差を隣り合うブラストガン同士の距離で除算した単位距離当たりの噴射角度差の値が走行する金属線材10の単位走行距離当たりの軸回りの回転角度の10倍以下より好ましくは9倍以下となるように設定することが好ましい。
この場合に、角度の異なるブラストガン31を増やすものとしてもよく、たとえば、全てのブラストガン31を投射位置(投射角度)が異なるものとしてもよい。また、各角度のブラストガン31の配置順を入れ替えるものとしてもよい。たとえば、ブラストガン31の走行方向に沿った配置順に角度が増加するものでなくともよく、例えば、単位距離当たりの噴射角度差を上述の条件で設定した後に、配置順を入れ替えるように変更してもよい。また、ここでの角度の増加とは、回転方向を指すことになり、金属線材10と同じ回転方向に合わせて角度が変化する場合に増加し、回転方向と逆に変化する場合に減少することにしている。ここで、ブラストガン31の上述の配置順を逆にして、上述の角度差がブラストガン31の配置順に減少するようにしてもよい。いずれにしろ、走行方向に沿って並ぶ各ブラストガン31の間隔と、ブラストガン31の金属線材10の軸回りの噴射角度とが、全てのブラストガン31からの混合液の噴射が終わる所定の金属線材10の走行位置において、軸回りに回転しながら軸方向に沿って走行している金属線材10の各ブラストガン31から混合液が噴射された少なくとも一つずつの領域が、金属線材10の軸回りに略全周に渡って略均等に分散するように設定されている。
【0043】
言い換えれば、各ブラストガン31それぞれの金属線材10の軸回りの噴射角度と、金属線材10の混合液を噴射された各被噴射位置がそれぞれ混合液を噴射されてから全てのブラストガン31の混合液の噴射が終わる所定の走行位置に至るまでの軸回りの回転角度と、をそれぞれ合わせた各角度が、金属線材10の軸回りに略全周に渡って略均等に分散するように設定されている。
【0044】
本実施の形態の金属線材連続処理装置によれば、スケールの除去に酸洗や電解酸洗を用いることなくウェットブラストによりスケールを除去し、かつ、ウェットブラストを走行する金属線材10に連続的に施すことにより、酸洗を行うことによる強酸の取扱の問題やバッチ処理による問題が解消できるとともに、電解酸洗による水素脆化の問題を解消できる。
また、ウェットブラスト31の配置間隔と混合液の噴射角度を上述のように設定することで、金属線材10が走行する際に回転し、かつ、その回転速度が状況によって変化するような場合であっても、上述のように、隣り合うブラストガン31同士の噴射角度の差を隣り合うブラストガン同士の距離で除算した単位距離当たりの噴射角度差の値が走行する金属線材10の単位走行距離当たりの軸回りの回転角度の2倍以上10倍以下の範囲内とすることで金属線材10の全周面のスケールを除去することが可能となる。すなわち、金属線材10の回転速度が状況に応じて変化しても、ブラストガン31の配置や回転角度を変更せずに対応することができる。
また、ウェットブラストによるスケール除去の前に予備的にベンディング装置12による機械的スケール除去を行うことで、スケール除去を効率的に行うことができる。また、ベンディング装置12とウェットブラスト装置14の間に矯正装置13を配置し、ベンディング装置12で曲げを加えられた金属線材10を直線状に矯正してからウェットブラストを行うことにより効率的にスケールを除去できる。
【0045】
また、スケール除去を直線状に走行する金属線材10に対して行うので、それ以後の皮膜形成、伸線、インデント加工、熱処理等を連続的に行うことが可能となり、効率的に金属線材10に処理を施すことができる。特に、処理前の鋼線から効率的にPC鋼線を作製することができる。
【0046】
なお、金属線材は、たとえば、鋼線であるが、鉄線であっっても、鉄以外の金属、たとえば、アルミニウムや銅の線材や合金の線材であってもよい。また、上述の金属線材連続処理装置は、PC鋼線用の装置であるが、金属線材10の処理としては、基本的にスケール除去と皮膜形成ができればよく、ピアノ線などの各種線材に適用できる。また、インデントを必要としなければ、インデント加工機17がないものとしてもよいし、熱処理しないのであれば、加熱装置19がないものとしてもよい。
【課題】酸洗を行わずに金属線材のスケールを連続的にウェットブラストで除去するとともに、ウェットブラストの際に金属線材の回転角度の変化に応じてブラストガンの角度や位置を変更することなくスケールを除去する金属線材連続処理装置を提供する。
【解決手段】金属線材処理装置は、巻かれた金属線材10を直線的に引き出して、金属線材10の長さ方向に沿って走行させ、走行する金属線材10に連続的にウェットブラストを施すものである。金属線材10の軸方向に沿って複数並べて配置されたブラストガン31の噴射角度を、金属線材10の軸回りの回転の回転角度の増加に応じて、並び順に噴射角度が増えるように異ならせる。隣り合うブラストガン31同士の噴射角度の差を隣り合うブラストガン同士の距離で除算した単位距離当たりの噴射角度差の値が走行する金属線材10の単位走行距離当たりの軸回りの回転角度の2倍以上10倍以下とする。