【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、固形腫瘍若しくは癌細胞に存在し及び/又は固形腫瘍若しくは癌細胞に特異的な標的タンパク質と特異的に結合する、癌の治療に用いるための新規で改善された抗体断片を同定した。
特に、固形腫瘍又は癌細胞と特異的に相互作用する特定タイプの抗体断片、すなわち重鎖抗体由来の重鎖可変ドメイン(以下、V
HHと称する)の放射標識により、本発明者らは、高い腫瘍又は癌細胞取り込み値、低い健常組織取り込み値、低い全体的体内分布及び早い血液からのクリアランスを特徴とする、改善され効果的な放射免疫療法方策を開発した。
【0005】
よって、本明細書で開示する放射標識抗体断片は、当該分野で公知である従来技術の(免疫グロブリン及び非免疫グロブリン)結合性物質に対して、(1)医療用途でのより高い最大許容量(MTD)の可能性(このことにより、高い治療投薬量の反復及び継続投与が可能になり、(放射免疫療法に特に関連する)正常な健常組織に対する用量制限性毒性(DLT)副作用を下回ったままで腫瘍又は癌細胞の成長を効果的に妨げる)、並びに(2)静脈内経路に加えて、経口、皮下、腹腔内、くも膜下腔内経路及び徐放製剤を含む、投与経路のより広い選択肢につながるより高い効力、より低い毒性及びより高い安定性を含む幾つかの利点を示す。また、サイズが小さいので、本明細書で開示する抗体断片は、その他のより大きいポリペプチド及びタンパク質が近づくことができない生理学的区画、組織及び器官に浸透する能力を有する。
【0006】
驚くべきことに、本明細書で開示する放射標識抗体断片は、一価形態で用いられるものであり、寿命が延長するように改変されていない。実際、全抗体は例外的に長い半減期を有するが、小さい抗体断片は循環からの迅速に排出されることに悩まされることが多い。よって、V
HHのインビボ用途は、例えば、抗血清アルブミンV
HHとの結合又はpeg化により、血漿半減期が延長するように改変されたV
HHに典型的に依存する(Siontorou 2013 International Journal of Nanomedicine 8:4215-4227;Tijinkら、2008 Mol Cancer Ther 7:2288-2297)。また、V
HHの多量体化は、インビボ貯留を長くし、親和性を増加させる(Siontorou 2013)。本発明者らは、一価で、寿命が延長されていないV
HHの治療有効性を示した。
【0007】
本発明は、このような放射標識抗体断片、並びに、1若しくは2以上の該放射標識抗体断片を含むか又は1若しくは2以上の該放射標識抗体断片から本質的になるポリペプチド、及び、該放射標識抗体断片又はポリペプチドの、予防目的及び/又は治療目的、特に放射免疫療法のための使用を提供する。
特定の実施形態では、放射標識抗体断片、並びに、1若しくは2以上の該放射標識抗体断片を含むか又は1若しくは2以上の該放射標識抗体断片から本質的になるポリペプチドは、例えば、限定されないが、癌疾患の再発の防止のような癌の予防のために、すなわち寛解の後の1又は2以上の兆候、症状又は疾患を回避又は予防するために用いることができる。
【0008】
幾つかの態様では、本発明は、癌の予防及び/又は治療方法に用いるための、癌細胞に存在する標的タンパク質と特異的に結合する、重鎖抗体由来の放射標識重鎖可変ドメイン(V
HH)又はその機能的断片を提供する。
他の態様では、本発明は、癌の予防及び/又は治療方法に用いるための、固形腫瘍に存在する標的タンパク質と特異的に結合する、重鎖抗体由来の放射標識重鎖可変ドメイン(V
HH)又はその機能的断片を提供する。
幾つかの態様では、本発明は、癌細胞に存在し及び/又は癌細胞に特異的な標的タンパク質と特異的に結合する少なくとも1つの放射標識V
HH又はその機能的断片を含む癌の予防及び/又は治療方法に用いるための医薬組成物を提供する。
他の態様では、本発明は、固形腫瘍に存在し及び/又は固形腫瘍に特異的な標的タンパク質と特異的に結合する少なくとも1つの放射標識V
HH又はその機能的断片を含む癌の予防及び/又は治療方法に用いるための医薬組成物を提供する。
【0009】
癌の予防及び/又は治療に用いるための放射標識V
HH若しくはその機能的断片又は医薬組成物のいずれかの幾つかの実施形態では、前記V
HH又はその機能的断片はHER2と特異的に結合する。
癌の予防及び/又は治療に用いるための放射標識V
HH若しくはその機能的断片又は医薬組成物のいずれかの幾つかの実施形態では、前記V
HH又はその機能的断片は、適切な競合アッセイを用いて決定するとき、HER2との結合についてモノクローナル抗体トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))又はモノクローナル抗体ペルツズマブ(Perjeta(登録商標))と競合しない。
癌の予防及び/又は治療に用いるための放射標識V
HH若しくはその機能的断片又は医薬組成物のいずれかの幾つかの実施形態では、前記放射標識V
HH又はその機能的断片は、投与を必要とする対象に、該対象において0.002〜0.1 mSv/MBqの間の算出平均実効線量を有するように投与される。
【0010】
癌の予防及び/又は治療に用いるための放射標識V
HH若しくはその機能的断片又は医薬組成物のいずれかの幾つかの実施形態では、前記放射標識V
HH又はその機能的断片は、1日1回から1ヶ月1回の間又は1ヶ月1回から1年1回の間の投与間隔で、投与を必要とする対象に投与される。
癌の予防及び/又は治療に用いるための放射標識V
HH若しくはその機能的断片又は医薬組成物のいずれかの幾つかの実施形態では、前記放射標識V
HH又はその機能的断片は、固形腫瘍若しくは癌細胞に存在し及び/又は固形腫瘍若しくは癌細胞に特異的な前記標的タンパク質と5nM以下の親和性で結合する。
癌の予防及び/又は治療に用いるための放射標識V
HH若しくはその機能的断片又は医薬組成物のいずれかの幾つかの実施形態では、前記放射標識V
HH又はその機能的断片は、α放出放射性同位体及びβ放出放射性同位体からなる群から選択される放射性同位体で標識されている。
【0011】
癌の予防及び/又は治療に用いるための放射標識V
HH若しくはその機能的断片又は医薬組成物のいずれかの幾つかの実施形態では、前記放射標識V
HH又はその機能的断片は、アクチニウム-225、アスタチン-211、ビスマス-212、ビスマス-213、セシウム-137、クロム-51、コバルト-60、ジスプロシウム-165、エルビウム-169、フェルミウム-255、金-198、ホルミウム-166、ヨウ素-125、ヨウ素-131、イリジウム-192、鉄-59、鉛-212、ルテチウム-177、モリブデン-99、パラジウム-103、リン-32、カリウム-42、レニウム-186、レニウム-188、サマリウム-153、テクネチウム-99m、ラジウム-223、ルテニウム-106、ナトリウム-24、ストロンチウム-89、テルビウム-149、トリウム-227、キセノン-133、イッテルビウム-169、イッテルビウム-177及びイットリウム-90からなる群から選択される放射性同位体で標識されている。
癌の予防及び/又は治療に用いるための放射標識V
HH若しくはその機能的断片又は医薬組成物のいずれかの幾つかの実施形態では、前記放射標識V
HH又はその機能的断片は131-ヨウ素で標識されている。
癌の予防及び/又は治療に用いるための放射標識V
HH若しくはその機能的断片又は医薬組成物のいずれかの幾つかの実施形態では、
前記放射標識V
HH又はその機能的断片は、N-スクシンイミジル-4-グアニジノメチル-3-[I-131]ヨードベンゾエート([I-131]SGMIB)又はその適切な誘導体若しくはバリアントを用いて131-ヨウ素で標識されている。
【0012】
癌の予防及び/又は治療に用いるための放射標識V
HH若しくはその機能的断片又は医薬組成物のいずれかの幾つかの実施形態では、前記V
HHは:
配列番号1を有するCDR1領域、配列番号2を有するCDR2領域及び配列番号3を有するCDR3領域、並びに/又は
配列番号4を有するCDR1領域、配列番号5を有するCDR2領域及び配列番号6を有するCDR3領域
を含む群から選択されるCDRの組み合わせの1つを含む。
癌の予防及び/又は治療に用いるための放射標識V
HH若しくはその機能的断片又は医薬組成物のいずれかの幾つかの実施形態では、前記V
HHは、配列番号7若しくは8のアミノ酸配列の少なくとも一方又はその機能的断片と少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する。
癌の予防及び/又は治療に用いるための放射標識V
HH若しくはその機能的断片又は医薬組成物のいずれかの幾つかの実施形態では、前記V
HHは、配列番号7若しくは8のアミノ酸配列の少なくとも一方又はその機能的断片と同一である。
【0013】
癌の予防及び/又は治療に用いるための放射標識V
HH若しくはその機能的断片又は医薬組成物のいずれかの幾つかの実施形態では、前記癌は乳癌である。
癌の予防及び/又は治療に用いるための放射標識V
HH若しくはその機能的断片又は医薬組成物のいずれかの幾つかの実施形態では、前記癌の予防及び/又は治療は免疫療法と組み合わせて行われる。
癌の予防及び/又は治療に用いるための放射標識V
HH若しくはその機能的断片又は医薬組成物のいずれかの幾つかの実施形態では、前記放射標識V
HH又はその機能的断片は、投与を必要とする対象に、静脈内、くも膜下腔内又は腹腔内投与される。
【0014】
癌の予防及び/又は治療に用いるための放射標識V
HH若しくはその機能的断片又は医薬組成物のいずれかの幾つかの実施形態では、前記V
HHは一価形態で存在する。
癌の予防及び/又は治療に用いるための放射標識V
HH若しくはその機能的断片又は医薬組成物のいずれかの幾つかの実施形態では、前記V
HH又はその機能的断片はシステイン含有タグ、好ましくはGGCタグを含まない。
癌の予防及び/又は治療に用いるための放射標識V
HH若しくはその機能的断片又は医薬組成物のいずれかの幾つかの実施形態では、前記V
HH又はその機能的断片は寿命が延長されていない。
癌の予防及び/又は治療に用いるための放射標識V
HH若しくはその機能的断片又は医薬組成物のいずれかの幾つかの実施形態では、前記V
HH又はその機能的断片はカルボキシ末端ポリペプチドタグを含まず、好ましくはタグ付加されていない。
【0015】
一態様では、本発明は、癌の予防及び/又は治療方法に用いるための、固形腫瘍に存在し及び/又は固形腫瘍に特異的な標的タンパク質(本明細書において、腫瘍特異的抗原とも称する)と特異的に結合する、重鎖抗体由来の放射標識重鎖可変ドメイン(V
HH)又はその機能的断片を提供する。
別の態様では、本発明は、癌の予防及び/又は治療方法に用いるための、癌細胞に存在し及び/又は癌細胞に特異的な標的タンパク質(本明細書において、癌細胞特異的抗原とも称する)と特異的に結合する、重鎖抗体由来の放射標識重鎖可変ドメイン(V
HH)又はその機能的断片を提供する。
ある種の実施形態では、本発明は、投与を必要とする対象に10μg〜1000μgの間のV
HHの用量で本明細書で開示する放射標識V
HH又はその機能的断片を投与することによる癌の予防及び/又は治療に用いるための、本明細書で開示する放射標識V
HH又はその機能的断片を提供する。
ある種の他の実施形態では、癌の防止又は治療は、投与を必要とする対象に本明細書で開示する放射標識V
HH又はその機能的断片を投与することにより達成され、V
HH又はその機能的断片が、対象における0.002〜0.1 mSv/MBqの間の算出平均実効線量を有することを特徴とする。
【0016】
特定の実施形態では、本発明は、投与を必要とする対象に放射標識V
HH又はその機能的断片を1日1回から1ヶ月1回の間又は1ヶ月1回から1年1回の間の投与間隔で投与することによる癌の予防及び/又は治療に用いるための、本明細書で開示する放射標識V
HH又はその機能的断片を提供する。
特定の実施形態では、本明細書で開示するV
HH又はその機能的断片は、固形腫瘍に存在し及び/又は固形腫瘍に特異的な標的タンパク質、例えば腫瘍特異的抗原と特異的に結合する。更なる特定の実施形態では、本明細書で開示するV
HH又はその機能的断片は、固形腫瘍に存在し及び/又は固形腫瘍に特異的な標的タンパク質と5nM以下、例えば1〜5nMの間、好ましくは2〜3nMの間の親和性で特異的に結合する。
更なる特定の実施形態では、本明細書で開示するV
HH又はその機能的断片は、癌細胞に存在し及び/又は癌細胞に特異的な標的タンパク質、例えば癌細胞特異的抗原と特異的に結合する。更なる特定の実施形態では、本明細書で開示するV
HH又はその機能的断片は、癌細胞に存在し及び/又は癌細胞に特異的な標的タンパク質と5nM以下、例えば1〜5nMの間、好ましくは2〜3nMの間の親和性で特異的に結合する。
【0017】
更なる特定の実施形態では、本明細書で開示するV
HH又はその機能的断片はHER2と特異的に結合する。更なる特定の実施形態では、本明細書で開示するV
HH又はその機能的断片はHER2と5nM以下、例えば1〜5nMの間、好ましくは2〜3nMの間の親和性で特異的に結合する。
ある種の実施形態では、本明細書で開示するHER2標的V
HH又はその機能的断片は、適切な競合アッセイを用いて決定するとき、HER2との結合についてトラスツズマブ及びペルツズマブと競合しない。このことにより、癌、より具体的にはHER2陽性癌、例えばHER2陽性乳癌の予防及び/又は治療方法において、本明細書で開示するHER2標的V
HH又はその機能的断片をトラスツズマブ(Herceptin(登録商標))及び/又はペルツズマブ(Perjeta(登録商標))と組み合わせて有利に用いることができる。
特定の実施形態では、本明細書で開示する放射標識HER2標的V
HH又はその機能的断片は、HER2のドメインIV、より具体的にはHER2のドメインIVのC末端とは異なる(すなわち、前記のものではない)HER2の結合部位を特異的に指向する。特定の実施形態では、本明細書で開示する放射標識HER2標的V
HH又はその機能的断片は、HER2のドメインIIとは異なる(すなわち、前記のものではない)HER2の結合部位を特異的に指向する。特定の実施形態では、本明細書で開示する放射標識HER2標的V
HH又はその機能的断片は、HER2のドメインIV、より具体的にはHER2のドメインIVのC末端及びHER2のドメインIIとは異なる(すなわち、前記のものではない)HER2の結合部位を特異的に指向する。
【0018】
更に具体的な実施形態では、本明細書で開示する放射標識V
HH又はその機能的断片は、限定されないが、アクチニウム-225、アスタチン-211、ビスマス-212、ビスマス-213、セシウム-137、クロム-51、コバルト-60、ジスプロシウム-165、エルビウム-169、フェルミウム-255、金-198、ホルミウム-166、ヨウ素-125、ヨウ素-131、イリジウム-192、鉄-59、鉛-212、ルテチウム-177、モリブデン-99、パラジウム-103、リン-32、カリウム-42、レニウム-186、レニウム-188、サマリウム-153、テクネチウム-99m、ラジウム-223、ルテニウム-106、ナトリウム-24、ストロンチウム-89、テルビウム-149、トリウム-227、キセノン-133、イッテルビウム-169、イッテルビウム-177及びイットリウム-90からなる群から選択される放射性同位体を含むα放出放射性同位体及びβ放出放射性同位体からなる群から選択される放射性同位体で標識されている。尚更なる具体的な実施形態では、本明細書で開示する放射標識V
HH又はその機能的断片はヨウ素-131で標識されている。
ある種の具体的な実施形態では、本発明は、癌の予防及び/又は治療に用いるための、腫瘍細胞特異的抗原又は癌細胞特異的抗原と特異的に結合する放射標識V
HH又はその機能的断片であって、N-スクシンイミジル-4-グアニジノメチル-3-[I-131]ヨードベンゾエート([I-131]SGMIB)又はその適切な誘導体若しくはバリアントを用いて131-ヨウ素で標識されている放射標識V
HH又はその機能的断片を提供する。
ある種の具体的な実施形態では、本発明は、癌の予防及び/又は治療に用いるための、腫瘍細胞特異的抗原又は癌細胞特異的抗原と特異的に結合する放射標識V
HH又はその機能的断片であって、N-スクシンイミジル-4-グアニジノメチル-3-[211At]アスタトベンゾエート([211At]SGMAB)又はその適切な誘導体若しくはバリアントを用いて211-アスタチンで標識されている放射標識V
HH又はその機能的断片を提供する。
【0019】
具体的な実施形態では、固形腫瘍と特異的に相互作用する本明細書で開示する放射標識V
HH又はその機能的断片のアミノ酸配列は、
配列番号1を有するCDR1領域、配列番号2を有するCDR2領域及び配列番号3を有するCDR3領域、並びに/又は
配列番号4を有するCDR1領域、配列番号5を有するCDR2領域及び配列番号6を有するCDR3領域
を含む群から選択されるCDRの組み合わせの1又は2以上を含む。
更に具体的な実施形態では、固形腫瘍抗原と特異的に相互作用する本明細書で開示する放射標識V
HHのアミノ酸配列は、配列番号7若しくは8のアミノ酸配列の少なくとも一方又はその機能的断片と少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する。
尚更に具体的な実施形態では、腫瘍特異的抗原と特異的に相互作用する本明細書で開示する放射標識V
HHのアミノ酸配列は、配列番号7若しくは8のアミノ酸配列の少なくとも一方又はその機能的断片と同一である。
【0020】
更に具体的な実施形態では、癌細胞特異的抗原と特異的に相互作用する本明細書で開示する放射標識V
HHのアミノ酸配列は、配列番号7若しくは8のアミノ酸配列の少なくとも一方又はその機能的断片と少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する。
尚更に具体的な実施形態では、癌細胞特異的抗原と特異的に相互作用する本明細書で開示する放射標識V
HHのアミノ酸配列は、配列番号7若しくは8のアミノ酸配列の少なくとも一方又はその機能的断片と同一である。
ある種の実施形態では、本発明は、癌の予防及び/又は治療に用いるための本明細書で開示する放射標識V
HH又はその機能的断片であって、前記癌が乳癌である放射標識V
HH又はその機能的断片を提供する。
ある種の他の実施形態では、本発明は、癌の予防及び/又は治療に用いるための本明細書で開示する放射標識V
HH又はその機能的断片であって、前記癌の予防及び/又は治療が免疫療法と組み合わせて行われる放射標識V
HH又はその機能的断片を提供する。
【0021】
ある種の他の実施形態では、癌の予防及び/又は治療は、本明細書で開示する放射標識V
HH又はその機能的断片を、投与を必要とする対象に、静脈内、くも膜下腔内又は腹腔内投与することにより達成される。
更に具体的な実施形態では、固形腫瘍抗原又は癌細胞特異的抗原と特異的に相互作用する本明細書で開示する放射標識V
HH又はその機能的断片のアミノ酸配列は、一価形態で存在する。尚更なる実施形態では、本明細書で開示するV
HH又はその機能的断片は、V
HH若しくは機能的断片の多量体化、例えば二量体化を誘導するタグ、より具体的にはシステイン含有タグ(例えばGGCタグ)を含まない。
ある種の実施形態では、固形腫瘍抗原又は癌細胞特異的抗原と特異的に相互作用する本明細書で開示する放射標識V
HH又はその機能的断片は、寿命が延長されていない形態で存在する。
ある種の実施形態では、固形腫瘍抗原又は癌細胞特異的抗原と特異的に相互作用する本明細書で開示する放射標識V
HH又はその機能的断片は、カルボキシ末端ポリペプチドタグを含まない。カルボキシ末端ポリペプチドタグを含まないV
HHは、腎臓での保持が少ないので、カルボキシ末端ポリペプチドタグ付加V
HH(例えば、Hisタグ付加V
HH及びMyc-Hisタグ付加V
HH)よりも有利である。
【0022】
更なる態様では、本発明は、癌の予防及び/又は治療方法に用いるための、少なくとも1つの放射標識V
HH又はその機能的断片を含むポリペプチドであって、V
HH又はその機能的断片が、固形腫瘍に存在し及び/若しくは固形腫瘍に特異的であり、並びに/又は癌細胞に特異的な標的タンパク質と特異的に結合するポリペプチドを提供する。
尚更なる態様では、本発明は、癌の予防及び/又は治療方法に用いるための、少なくとも1つの放射標識V
HH又はその機能的断片を含む医薬組成物であって、V
HH又はその機能的断片が、固形腫瘍に存在し及び/若しくは固形腫瘍に特異的であり、並びに/又は癌細胞に特異的な標的タンパク質と特異的に結合する医薬組成物を提供する。
更に具体的な実施形態では、本明細書で開示する医薬組成物は、薬学的に許容されるキャリア及び/又は1若しくは2以上の適切なアジュバントを更に含む。
幾つかの態様では、本開示は、癌細胞又は固形腫瘍に存在する標的タンパク質と特異的に結合する、重鎖抗体由来の、タグ付加されていない一価の放射標識重鎖可変ドメイン(V
HH)又はその機能的断片の有効量を、投与を必要とする対象に投与することを含む、癌の防止及び/又は治療方法にも関する。
【0023】
本明細書で記載する方法のいずれかの幾つかの実施形態では、タグ付加されていない一価の放射標識V
HH又はその機能的断片はハロゲン放射性同位体で標識されている。
本明細書で記載する方法のいずれかの幾つかの実施形態では、タグ付加されていない一価の放射標識VHH又はその機能的断片は131-ヨウ素で標識されている。
本明細書で記載する方法のいずれかの幾つかの実施形態では、タグ付加されていない一価の放射標識VHH又はその機能的断片は、N-スクシンイミジル-4-グアニジノメチル-3-[I-131]ヨードベンゾエート([I-131]SGMIB)又はその適切な誘導体若しくはバリアントを用いて131-ヨウ素で標識されている。
【0024】
本明細書で記載する方法のいずれかの幾つかの実施形態では、タグ付加されていない一価の放射標識VHH又はその機能的断片は、α放出放射性同位体及びβ放出放射性同位体からなる群から選択される放射性同位体で標識されている。幾つかの実施形態では、タグ付加されていない一価の放射標識VHH又はその機能的断片は、
アクチニウム-225、アスタチン-211、ビスマス-212、ビスマス-213、セシウム-137、クロム-51、コバルト-60、ジスプロシウム-165、エルビウム-169、フェルミウム-255、金-198、ホルミウム-166、ヨウ素-125、ヨウ素-131、イリジウム-192、鉄-59、鉛-212、ルテチウム-177、モリブデン-99、パラジウム-103、リン-32、カリウム-42、レニウム-186、レニウム-188、サマリウム-153、テクネチウム-99m、ラジウム-223、ルテニウム-106、ナトリウム-24、ストロンチウム-89、テルビウム-149、トリウム-227、キセノン-133、イッテルビウム-169、イッテルビウム-177及びイットリウム-90からなる群から選択される放射性同位体で標識されている。
本明細書で記載する方法のいずれかの幾つかの実施形態では、タグ付加されていない一価の放射標識VHH又はその機能的断片はHER2と特異的に結合する。
本明細書で記載する方法のいずれかの幾つかの実施形態では、タグ付加されていない一価の放射標識VHH又はその機能的断片は、HER2と特異的に結合し、ハロゲン放射性同位体で標識されている。
【0025】
本明細書で記載する方法のいずれかの幾つかの実施形態では、タグ付加されていない一価の放射標識VHH又はその機能的断片は、HER2と特異的に結合し、131-ヨウ素で標識されている。
本明細書で記載する方法のいずれかの幾つかの実施形態では、タグ付加されていない一価の放射標識VHH又はその機能的断片は、HER2と特異的に結合し、N-スクシンイミジル-4-グアニジノメチル-3-[I-131]ヨードベンゾエート([I-131]SGMIB)又はその適切な誘導体若しくはバリアントを用いて131-ヨウ素で標識されている。
本明細書で記載する方法のいずれかの幾つかの実施形態では、タグ付加されていない一価の放射標識VHH又はその機能的断片は、適切な競合アッセイを用いて決定するとき、HER2との結合についてモノクローナル抗体Herceptin(登録商標)(トラスツズマブ)又はモノクローナル抗体ペルツズマブ(Perjeta(登録商標))と競合しない。
本明細書で記載する方法のいずれかの幾つかの実施形態では、タグ付加されていない一価の放射標識VHH又はその機能的断片は、対象において0.002〜0.1 mSv/MBqの間の算出平均実効線量となるように対象に投与される。
【0026】
本明細書で記載する方法のいずれかの幾つかの実施形態では、タグ付加されていない一価の放射標識VHH又はその機能的断片は、1日1回から1ヶ月1回の間又は1ヶ月1回から1年1回の間の投与間隔で対象に投与される。
本明細書で記載する方法のいずれかの幾つかの実施形態では、タグ付加されていない一価の放射標識VHH又はその機能的断片は、固形腫瘍又は癌細胞に存在するHER2と5nM以下の親和性で結合する。
本明細書で記載する方法のいずれかの幾つかの実施形態では、タグ付加されていない一価の放射標識VHH又はその機能的断片は:
配列番号1を有するCDR1領域、配列番号2を有するCDR2領域及び配列番号3を有するCDR3領域、並びに
配列番号4を有するCDR1領域、配列番号5を有するCDR2領域及び配列番号6を有するCDR3領域
を含む群から選択されるCDRの組み合わせの1つを含む。
【0027】
本明細書で記載する方法のいずれかの幾つかの実施形態では、タグ付加されていない一価の放射標識VHH又はその機能的断片は、配列番号7及び8のアミノ酸配列の少なくとも一方と少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する。
本明細書で記載する方法のいずれかの幾つかの実施形態では、タグ付加されていない一価の放射標識VHH又はその機能的断片は、配列番号7及び8のアミノ酸配列の少なくとも一方と同一である。
本明細書で記載する方法のいずれかの幾つかの実施形態では、タグ付加されていない一価の放射標識VHH又はその機能的断片は:
配列番号1を有するCDR1領域、配列番号2を有するCDR2領域及び配列番号3を有するCDR3領域、並びに
配列番号4を有するCDR1領域、配列番号5を有するCDR2領域及び配列番号6を有するCDR3領域
を含む群から選択されるCDRの組み合わせの1つを含み、
N-スクシンイミジル-4-グアニジノメチル-3-[I-131]ヨードベンゾエート([I-131]SGMIB)又はその適切な誘導体若しくはバリアントを用いて131-ヨウ素で標識されている。
【0028】
本明細書で記載する方法のいずれかの幾つかの実施形態では、タグ付加されていない一価の放射標識VHH又はその機能的断片は、配列番号7及び8のアミノ酸配列の少なくとも一方と少なくとも80%のアミノ酸同一性を有し、N-スクシンイミジル-4-グアニジノメチル-3-[I-131]ヨードベンゾエート([I-131]SGMIB)又はその適切な誘導体若しくはバリアントを用いて131-ヨウ素で標識されている。
本明細書で記載する方法のいずれかの幾つかの実施形態では、タグ付加されていない一価の放射標識VHH又はその機能的断片は、配列番号7及び8のアミノ酸配列の少なくとも一方と同一であり、N-スクシンイミジル-4-グアニジノメチル-3-[I-131]ヨードベンゾエート([I-131]SGMIB)又はその適切な誘導体若しくはバリアントを用いて131-ヨウ素で標識されている。
本明細書で記載する方法のいずれかの幾つかの実施形態では、癌は乳癌である。
本明細書で記載する方法のいずれかの幾つかの実施形態では、該方法は対象に免疫療法を行うことを更に含む。
【0029】
本明細書で記載する方法のいずれかの幾つかの実施形態では、一価の放射標識V
HH又はその機能的断片は対象に静脈内、くも膜下腔内又は腹腔内投与される。
本明細書で記載する方法のいずれかの幾つかの実施形態では、一価の放射標識V
HH又はその機能的断片は寿命が延長されていない。
本明細書で記載する方法のいずれかの幾つかの実施形態では、一価の放射標識V
HH又はその機能的断片はカルボキシ末端ポリペプチドタグを含まず、好ましくはタグ付加されていない。
本開示の他の態様は、癌細胞又は固形腫瘍に存在する標的タンパク質と特異的に結合する、重鎖抗体由来の、タグ付加されていない一価の放射標識重鎖可変ドメイン(V
HH)又はその機能的断片に関する。幾つかの実施形態では、タグ付加されていない一価の放射標識VHH又はその機能的断片はHER2と特異的に結合する。幾つかの実施形態では、タグ付加されていない一価の放射標識VHH又はその機能的断片は、N-スクシンイミジル-4-グアニジノメチル-3-[I-131]ヨードベンゾエート([I-131]SGMIB)又はその適切な誘導体若しくはバリアントを用いて131-ヨウ素で標識されている。幾つかの実施形態では、タグ付加されていない一価の放射標識VHH又はその機能的断片は、HER2と特異的に結合し、N-スクシンイミジル-4-グアニジノメチル-3-[I-131]ヨードベンゾエート([I-131]SGMIB)又はその適切な誘導体若しくはバリアントを用いて131-ヨウ素で標識されている。
【0030】
本明細書で記載するタグ付加されていない一価の放射標識VHH又はその機能的断片のいずれかの幾つかの実施形態では、V
HH又はその機能的断片は、適切な競合アッセイを用いて決定したとき、HER2との結合についてモノクローナル抗体(Herceptin(登録商標))又はモノクローナル抗体ペルツズマブ(Perjeta(登録商標))と競合しない。
本明細書で記載するタグ付加されていない一価の放射標識VHH又はその機能的断片のいずれかの幾つかの実施形態では、一価の放射標識V
HH又はその機能的断片は、固形腫瘍又は癌細胞に存在するHER2と5nM以下の親和性で結合する。
本明細書で記載するタグ付加されていない一価の放射標識VHH又はその機能的断片のいずれかの幾つかの実施形態では、一価の放射標識V
HH又はその機能的断片は:
配列番号1を有するCDR1領域、配列番号2を有するCDR2領域及び配列番号3を有するCDR3領域、並びに
配列番号4を有するCDR1領域、配列番号5を有するCDR2領域及び配列番号6を有するCDR3領域
を含む群から選択されるCDRの組み合わせの1つを含む。
【0031】
本明細書で記載するタグ付加されていない一価の放射標識VHH又はその機能的断片のいずれかの幾つかの実施形態では、一価の放射標識V
HH又はその機能的断片は、配列番号7及び8のアミノ酸配列の少なくとも一方と少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する。
本明細書で記載するタグ付加されていない一価の放射標識VHH又はその機能的断片のいずれかの幾つかの実施形態では、一価の放射標識V
HH又はその機能的断片は、配列番号7及び8のアミノ酸配列の少なくとも一方と同一である。
本明細書で記載するタグ付加されていない一価の放射標識VHH又はその機能的断片のいずれかの幾つかの実施形態では、一価の放射標識V
HH又はその機能的断片は:
配列番号1を有するCDR1領域、配列番号2を有するCDR2領域及び配列番号3を有するCDR3領域、並びに
配列番号4を有するCDR1領域、配列番号5を有するCDR2領域及び配列番号6を有するCDR3領域
を含む群から選択されるCDRの組み合わせの1つを含み、
N-スクシンイミジル-4-グアニジノメチル-3-[I-131]ヨードベンゾエート([I-131]SGMIB)又はその適切な誘導体若しくはバリアントを用いて131-ヨウ素で標識されている。
【0032】
本明細書で記載するタグ付加されていない一価の放射標識VHH又はその機能的断片のいずれかの幾つかの実施形態では、一価の放射標識V
HH又はその機能的断片は、配列番号7及び8のアミノ酸配列の少なくとも一方と少なくとも80%のアミノ酸同一性を有し、N-スクシンイミジル-4-グアニジノメチル-3-[I-131]ヨードベンゾエート([I-131]SGMIB)又はその適切な誘導体若しくはバリアントを用いて131-ヨウ素で標識されている。
本明細書で記載するタグ付加されていない一価の放射標識VHH又はその機能的断片のいずれかの幾つかの実施形態では、一価の放射標識V
HH又はその機能的断片は、配列番号7及び8のアミノ酸配列の少なくとも一方と同一であり、N-スクシンイミジル-4-グアニジノメチル-3-[I-131]ヨードベンゾエート([I-131]SGMIB)又はその適切な誘導体若しくはバリアントを用いて131-ヨウ素で標識されている。
本明細書で記載するタグ付加されていない一価の放射標識VHH又はその機能的断片のいずれかの幾つかの実施形態では、一価の放射標識V
HH又はその機能的断片は寿命が延長されていない。
【0033】
本明細書で記載するタグ付加されていない一価の放射標識VHH又はその機能的断片のいずれかの幾つかの実施形態では、一価の放射標識V
HH又はその機能的断片は、カルボキシ末端ポリペプチドタグを含まない。
本開示のなお他の態様は、本明細書で記載するタグ付加されていない一価の放射標識V
HH又はその機能的断片のいずれか1つを含む医薬組成物に関する。医薬組成物の幾つかの実施形態では、タグ付加されていない一価の放射標識V
HH又はその機能的断片は、癌細胞又は固形腫瘍に存在する標的タンパク質と特異的に結合する。医薬組成物の幾つかの実施形態では、タグ付加されていない一価の放射標識V
HH又はその機能的断片はHER2と特異的に結合する。医薬組成物の幾つかの実施形態では、タグ付加されていない一価の放射標識V
HH又はその機能的断片は、N-スクシンイミジル-4-グアニジノメチル-3-[I-131]ヨードベンゾエート([I-131]SGMIB)又はその適切な誘導体若しくはバリアントを用いて131-ヨウ素で標識されている。医薬組成物の幾つかの実施形態では、タグ付加されていない一価の放射標識V
HH又はその機能的断片は、HER2と特異的に結合し、N-スクシンイミジル-4-グアニジノメチル-3-[I-131]ヨードベンゾエート([I-131]SGMIB)又はその適切な誘導体若しくはバリアントを用いて131-ヨウ素で標識されている。
【0034】
医薬組成物の幾つかの実施形態では、V
HH又はその機能的断片は、競合アッセイを用いて決定するとき、HER2との結合についてモノクローナル抗体トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))又はモノクローナル抗体ペルツズマブ(Perjeta(登録商標))と競合しない。
医薬組成物の幾つかの実施形態では、一価の放射標識V
HH又はその機能的断片は、固形腫瘍又は癌細胞に存在するHER2と5nM以下の親和性で結合する。
医薬組成物の幾つかの実施形態では、一価の放射標識V
HH又はその機能的断片は:
配列番号1を有するCDR1領域、配列番号2を有するCDR2領域及び配列番号3を有するCDR3領域、並びに
配列番号4を有するCDR1領域、配列番号5を有するCDR2領域及び配列番号6を有するCDR3領域
を含む群から選択されるCDRの組み合わせの1つを含む。
【0035】
医薬組成物の幾つかの実施形態では、一価の放射標識V
HH又はその機能的断片は、配列番号7及び8のアミノ酸配列の少なくとも一方と少なくとも80%のアミノ酸同一性を有する。
医薬組成物の幾つかの実施形態では、一価の放射標識V
HH又はその機能的断片は、配列番号7及び8のアミノ酸配列の少なくとも一方と同一である。
医薬組成物の幾つかの実施形態では、一価の放射標識V
HH又はその機能的断片は:
配列番号1を有するCDR1領域、配列番号2を有するCDR2領域及び配列番号3を有するCDR3領域、並びに
配列番号4を有するCDR1領域、配列番号5を有するCDR2領域及び配列番号6を有するCDR3領域
を含む群から選択されるCDRの組み合わせの1つを含み、
N-スクシンイミジル-4-グアニジノメチル-3-[I-131]ヨードベンゾエート([I-131]SGMIB)又はその適切な誘導体若しくはバリアントを用いて131-ヨウ素で標識されている。
【0036】
医薬組成物の幾つかの実施形態では、一価の放射標識V
HH又はその機能的断片は、配列番号7及び8のアミノ酸配列の少なくとも一方と少なくとも80%のアミノ酸同一性を有し、N-スクシンイミジル-4-グアニジノメチル-3-[I-131]ヨードベンゾエート([I-131]SGMIB)又はその適切な誘導体若しくはバリアントを用いて131-ヨウ素で標識されている。
医薬組成物の幾つかの実施形態では、一価の放射標識V
HH又はその機能的断片は、配列番号7及び8のアミノ酸配列の少なくとも一方と同一であり、N-スクシンイミジル-4-グアニジノメチル-3-[I-131]ヨードベンゾエート([I-131]SGMIB)又はその適切な誘導体若しくはバリアントを用いて131-ヨウ素で標識されている。
医薬組成物の幾つかの実施形態では、一価の放射標識V
HH又はその機能的断片は寿命が延長されていない。
医薬組成物の幾つかの実施形態では、一価の放射標識V
HH又はその機能的断片はカルボキシ末端ポリペプチドタグを含まない。
【0037】
発明の詳細な説明
[定義]
[一般的な定義]
本発明を、特定の実施形態に関して説明するが、本発明は、特許請求の範囲によってのみ限定され、下記の実施形態に限定されるものではない。特許請求の範囲におけるいずれの参照符号も、範囲を限定するものと解すべきでない。以下の用語及び定義は、本発明の理解を助けるためにのみ提供する。本明細書において具体的に定義しない限り、本明細書において用いる全ての用語は、本発明の当業者が理解するのと同じ意味を有する。当該分野の定義及び用語について、当業者は、特にSambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Press、Plainsview、New York (1989);及びAusubelら、Current Protocols in Molecular Biology (補遺47)、John Wiley & Sons、New York (1999)を参照できる。本明細書において提供する定義は、当業者が理解するものより狭義であると解するべきでない。
そうでないと示さない限り、詳細に具体的に記載しない全ての方法、工程、技法及び操作は、当業者に明確なように、それ自体既知の様式で行うことができ、行われている。例えば、標準的な手引書、上記の一般的な背景技術及びそこに引用する更なる参考文献をここでもまた参照できる。
【0038】
本明細書で用いる場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、単数形及び複数形の指示対象を含む。
用語「含む(comprising)」、「含む(comprises)」及び「含む(comprised of)」は、本明細書で用いる場合、「含む(including)、「含む(includes)」又は「含有する(containing)」、「含有する(contains)」と同義であり、包括的又は開放式であり、更なる記載されていないメンバー、要素又は方法工程を排除しない。
終点による数値範囲の言及は、それぞれの範囲内に包摂される全ての数及び分数並びに言及される終点を含む。
パラメータ、量、時間の期間などの測定可能な値に言及する場合の用語「約」は、本明細書で用いる場合、特定される値のそして特定される値からの±10%以下、好ましくは±5%以下、より好ましくは±1%以下、更により好ましくは±0.1%以下の変動を包含する(そのように変動することが開示される発明において適当である限り)ことを意味する。修飾語「約」が言及する値は、その数値自体が具体的に開示されており、その数値自体が好ましいものとして開示されていると理解される。
【0039】
本明細書で用いる場合、アミノ酸残基は、それらの正式名称又は標準的な三文字若しくは一文字アミノ酸コードのいずれかにより示される。
本明細書で用いる場合、用語「ポリペプチド」、「タンパク質」、「ペプチド」及び「アミノ酸配列」は交換可能に用いられ、コード及び非コードアミノ酸、化学的又は生化学的に改変又は誘導体化されたアミノ酸、並びに改変ペプチド主鎖を有するポリペプチドを含む、任意の長さのアミノ酸の重合形態のことをいう。
本明細書で用いる場合、用語「核酸分子」、「ポリヌクレオチド」、「ポリ核酸」、「核酸」は交換可能に用いられ、デオキシリボヌクレオチド若しくはリボヌクレオチド又はそれらのアナログのいずれかの任意の長さのヌクレオチドの重合形態のことをいう。ポリヌクレオチドは、任意の三次元構造を有してよく、既知又は未知の任意の機能を行うことができる。ポリヌクレオチドの非限定的な例は、遺伝子、遺伝子断片、エキソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、制御領域、任意の配列の単離RNA、核酸プローブ及びプライマーを含む。核酸分子は直鎖状又は環状であり得る。
【0040】
本明細書で用いる場合、用語「相同性」は、同じ又は異なる分類群からの2つの高分子間、特に2つのポリペプチド又はポリヌクレオチド間の少なくとも二次構造的類似性であって、系統が共通することに起因する類似性のことをいう。よって、用語「ホモログ」は、そのように関連し、二次構造的類似性、場合によっては三次構造的類似性を有する高分子のことをいう。2つ又は3つ以上のヌクレオチド配列を比較するために、第1のヌクレオチド配列と第2のヌクレオチド配列との間の「配列同一性(のパーセンテージ)」は、当業者に公知の方法を用いて、例えば、第2のヌクレオチド配列中の対応する位置でのヌクレオチドと同一の第1のヌクレオチド配列中のヌクレオチドの数を、第1のヌクレオチド配列中の全ヌクレオチド数で除し、100%を乗じることによるか、又はNCBI Blastのような配列アラインメントのための公知のコンピュータアルゴリズムを用いることにより算出できる。2つのアミノ酸配列間の配列同一性の程度の決定において、当業者は、アミノ酸残基が類似の化学構造の別のアミノ酸残基で置き換えられ、ポリペプチドの機能、活性又はその他の生物学的特性にはほとんど又は本質的に全く影響しないアミノ酸置換として一般的に説明できるいわゆる「保存的」アミノ酸置換を考慮することができる。可能な保存的アミノ酸置換は当業者に明らかである。アミノ酸配列及び核酸配列は、全長にわたって100%の配列同一性を有する場合、「全く同じ」と言える。
【0041】
用語「親和性」は、本明細書で用いる場合、ポリペプチド、特に免疫グロブリン(例えば抗体)又は免疫グロブリン断片(例えばV
HH)が、抗原とポリペプチドとの平衡を両者の結合により形成される複合体の存在へ向かってシフトするように抗原と結合する程度のことをいう。よって、例えば、抗原及び抗体(断片)を相対的に等しい濃度で組み合わせると、親和性が高い抗体(断片)は、得られる複合体の濃度が高くなる方に向かって平衡をシフトさせるように、結合可能な抗原と結合する。解離定数は、タンパク質結合ドメインと抗原標的との間の親和性を記述するために一般的に用いられる。典型的には、解離定数は、10
-5Mより低い。好ましくは、解離定数は、10
-6Mより低く、より好ましくは10
-7Mより低い。最も好ましくは、解離定数は、10
-8Mより低く、例えば10
-9Mより低い。
用語「特異的に結合する」は、本明細書で用いる場合、ポリペプチド、特に免疫グロブリン(例えば抗体)若しくは免疫グロブリン断片(例えばV
HH)又はその機能的断片が、異なる抗原の均質混合物に存在する特定の抗原と優先的に結合する能力のことを一般的に言う。ある種の実施形態では、特異的結合相互作用は、試料中の所望の抗原と非所望の抗原とを識別し、幾つかの実施形態では、所望の抗原と約10〜100倍以上(例えば約1000倍以上又は10,000倍以上)の非所望の抗原とを識別する。
【0042】
よって、本明細書で開示するアミノ酸配列(特に抗体断片、例えばV
HH)又はその機能的断片は、アミノ酸配列が、特定標的(又はその少なくとも1つの部分若しくは断片)に対する親和性及び/又は特異性を有し及び/又は特定標的(又はその少なくとも1つの部分若しくは断片)を特異的に指向する場合、当該特定標的と「特異的に結合する」といえる。
本明細書で開示するアミノ酸配列(特に抗体断片、例えばV
HH)又はその機能的断片は、本明細書で開示するアミノ酸配列が興味対象の第2の標的抗原と結合する親和性よりも少なくとも5倍、例えば少なくとも10倍、例えば少なくとも100倍、好ましくは少なくとも1000倍高い親和性で興味対象の第1の標的抗原と結合する場合、「興味対象の第2の標的抗原とは対照的に興味対象の第1の標的抗原に特異的」であるといえる。よって、ある種の実施形態では、本明細書で開示するアミノ酸配列が興味対象の第2の標的抗原とは対照的に興味対象の第1の標的抗原に「特異的」であるといえる場合、該アミノ酸配列は、興味対象の第1の標的抗原と特異的に結合する(本明細書で定義するとおり)が、興味対象の第2の標的抗原と結合しないことがある。
【0043】
本明細書で開示するアミノ酸配列(特に抗体断片、例えばV
HH)又はその機能的断片の「特異性」は、親和性及び/又はアビディティーに基づいて決定できる。本明細書で開示するアミノ酸配列の「親和性」は、本明細書で開示するアミノ酸配列とそれに結合する興味対象の標的タンパク質との解離平衡定数で表される。KD値が低いほど、本明細書で開示するアミノ酸配列とそれに結合する興味対象の標的タンパク質との間の結合強度がより強い。或いは、親和性は、1/KDに相当する親和性定数(KA)として表すこともできる。本明細書で開示するアミノ酸配列の結合親和性は、具体的な興味対象の標的タンパク質に応じて、当業者に公知の様式で決定できる。本明細書で開示するアミノ酸配列の「アビディティー」は、本明細書で開示するアミノ酸配列と関連する興味対象の標的タンパク質との間の結合強度の尺度である。アビディティーは、興味対象の標的タンパク質の結合部位と本明細書で開示するアミノ酸配列の結合部位との間の親和性と、本明細書で開示するアミノ酸配列に存在する該当の結合部位の数との両方に関係する。典型的には、本明細書で開示するアミノ酸配列は、興味対象の標的タンパク質と、約1マイクロモル(1μM)以下、好ましくは約1ナノモル(1nM)以下の解離定数(KD)[すなわち、約1,000,000/モル(10
6M
-1、1E6/M)以上、好ましくは1,000,000,000/モル(10
9M
-1、1E9/M)以上の結合定数(KA)]で結合する。約1ミリモルより大きいKD値は、非結合又は非特異的結合を示すと一般的に考えられる。当該分野において、KDは、kOn(モル
-1秒
-1又はM
-1s
-1で表される)と称する複合体の結合速度定数に対する、kOff(秒
-1又はs
-1で表される)と称する複合体の解離速度定数の比として表すこともできることが一般的に知られている。特に、本明細書で開示するアミノ酸配列は、興味対象の標的タンパク質と、0.1〜0.0001s
-1の間の範囲のkOff及び/又は1,000〜1,000,000M
-1s
-1の間の範囲のkOnで結合する。結合親和性、kOff及びkOn速度は、当業者に公知の方法、例えばELISA法、等温滴定型熱量測定、表面プラズモン共鳴、蛍光活性化細胞ソーティング分析などにより決定できる。
【0044】
本明細書で開示するアミノ酸配列、特に抗体断片、例えばV
HHは、それを産生する宿主細胞及び/又は培地から抽出又は精製した場合、本明細書で用いるように「本質的に単離された(形態)」であると考えられる。
本明細書で開示するアミノ酸配列(特に抗体断片、例えばV
HH)又はその機能的断片に関して、本明細書で開示するアミノ酸配列に存在する「結合領域」、「結合部位」又は「相互作用部位」との用語は、本明細書において、本明細書で開示するアミノ酸配列に存在する、標的分子との結合を担う特定の部位、部分、ドメイン又はアミノ酸残基ストレッチを意味する。このような結合領域は、本明細書で開示するアミノ酸配列の、標的分子と接触する特定のアミノ酸残基から本質的になる。
【0045】
本明細書において交換可能に用いられる用語「(との)競合」、「交差阻止」、「交差結合」及び「交差阻害」は、適切なインビトロアッセイ、細胞アッセイ又はインビボアッセイを用いて測定したとき、興味対象の標的タンパク質と本明細書で開示する他のアミノ酸配列との結合に干渉し得る本明細書で開示するアミノ酸配列、特に抗体断片、例えばV
HHのことを一般的にいう。よって、より具体的には、本明細書で開示するアミノ酸配列を用いる「競合」、「交差阻止」、「交差結合」及び「交差阻害」は、興味対象の標的タンパク質と本明細書で開示する他のアミノ酸配列との結合に干渉又は競合し、そのことにより、適切なインビトロ、細胞又はインビボアッセイを用いて測定したとき、「交差阻止」する本明細書で開示するアミノ酸配列を用いない興味対象の標的タンパク質と本明細書で開示する別のアミノ酸配列との結合と比較して、当該結合は少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、例えば少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又はそれ以上低減されることを意味してもよい。
本明細書で開示するアミノ酸配列(特に抗体断片、例えばV
HH)又はその機能的断片は、2つの異なる興味対象の標的タンパク質の両方に対して(本明細書で定義するとおり)特異的である場合、当該2つの異なる興味対象の標的タンパク質に対して「交差反応性」を示すといえる。
【0046】
本明細書で開示するアミノ酸配列(特に抗体断片、例えばV
HH)又はその機能的断片の2つ又は3つ以上の結合部位の全てが、興味対象の標的の同じ部位、決定基、部分、ドメイン又はアミノ酸残基ストレッチを指向するか又はそれと特異的に結合する場合、本明細書で開示するアミノ酸配列は、「二価」(アミノ酸配列の結合部位が2つの場合)、又は多価(アミノ酸配列の結合部位が3つ以上の場合)、例えば三価であるという。
本明細書で用いる場合、抗体断片(例えばV
HH)又はその機能的断片に言及する場合の用語「一価」は、単量体形態の抗体断片のことをいう。一価抗体断片は、結合部位を唯1つ含む。この文脈において、抗体断片(例えばV
HH)又はその機能的断片の結合部位は、興味対象の標的の特定の部位、決定基、部分、ドメイン又はアミノ酸残基ストレッチを指向するか又はそれと特異的に結合する、抗体断片の1つ又は2つ以上の「相補性決定領域」又は「CDR」を包含する。
本明細書で用いる場合、抗体断片(例えばV
HH)又はその機能的断片に言及する場合の用語「タグ付加されていない」は、外来ポリペプチド配列を含まない(例えば、本明細書で記載する放射性同位体で標識されたV
HH配列又はその断片のみを含む)抗体断片のことをいう。例示的な外来ポリペプチド配列としては、カルボキシ末端ポリペプチドタグ、例えばHisタグ、システイン含有タグ(例えばGGCタグ)及び/又はMycタグが挙げられる。
【0047】
本明細書で開示するアミノ酸配列、特に抗体断片、例えばV
HHに言及する場合の用語「二重特異的」は、a)本明細書で開示するアミノ酸配列の2つ又は3つ以上の結合部位が同じ興味対象の標的を指向するか又はそれに特異的に結合するが、その標的の同じ部位、決定基、部分、ドメイン又はアミノ酸残基ストレッチに結合しない(すなわち、各々が異なるものと結合する)場合、或いはb)本明細書で開示するアミノ酸配列の2つ又は3つ以上の結合部位が異なる興味対象の標的分子を指向するか又はそれと特異的に結合する場合のいずれかに、本明細書で開示するアミノ酸配列は、「二重特異的」(アミノ酸配列の結合部位が2つの場合)又は多重特異的(アミノ酸配列の結合部位が3つ以上の場合)であるといえることを意味する。用語「多重特異的」は、本明細書で開示するアミノ酸配列に3つ以上の結合部位が存在する場合に用いられる。
よって、「二重特異的」アミノ酸配列又は抗体断片(例えば「二重特異的」V
HH)或いは「多重特異的」アミノ酸配列又は抗体断片(例えば「多重特異的」V
HH)は、本明細書で用いる場合、それぞれ2つの又は少なくとも2つの結合部位を含む本明細書で開示するアミノ酸配列、特に抗体断片、例えばV
HHであって、これらの2つ以上の結合部位が異なる結合特異性を有するアミノ酸配列を意味する。よって、本明細書で開示するアミノ酸配列、特に抗体断片、例えばV
HHは、それぞれ2つの又は3つ以上の異なる結合領域が同じ単量体アミノ酸配列に存在する場合、「二重特異的」又は「多重特異的」であるとみなされる。
【0048】
本明細書で開示するアミノ酸配列(特に抗体断片、例えばV
HH)又はその機能的断片の「半減期」は、本明細書で開示するアミノ酸配列のインビボ血清濃度が50%低減するに必要な時間として一般的に定義できる。本明細書で開示するアミノ酸配列のインビボ半減期は、当業者に公知の任意の様式、例えば薬物動態分析により決定できる。当業者に明らかになように、半減期は、t1/2-アルファ、t1/2-ベータ及び曲線下面積(AUC)のようなパラメータを用いて表すことができる。インビボ半減期の増加は、t1/2-アルファ、t1/2-ベータ及び曲線下面積(AUC)のうちの1つ又は2つ以上、好ましくは3つ全ての増加を一般的に特徴とする。
本明細書で開示する抗体断片(例えばV
HH)又はその機能的断片に言及する場合の用語「寿命が延長された」は、半減期を延長するように抗体断片が改変されたことをいう。抗体及び抗体断片の半減期を延長するための方策は、当該分野において公知であり、例えば、限定されないが、半減期を延長する1又は2以上の基又は部分、例えばポリエチレングリコール(PEG)又はウシ血清アルブミン(BSA)又はヒト血清アルブミン(HSA)、抗体Fc断片或いは抗原結合抗体断片-標的血清タンパク質、例えば血清アルブミンとの(化学的又は他の)連結を含む。
【0049】
本明細書で用いる場合、用語「阻害」、「低減」及び/又は「妨害」は、興味対象の標的抗原と特異的に結合して、興味対象の標的抗原とその天然の結合パートナーとの間の相互作用を阻害、低減及び/又は妨害する本明細書で開示するアミノ酸配列(特に抗体断片、例えばV
HH)又はその機能的断片(の使用)のことをいうことがある。用語「阻害」、「低減」及び/又は「妨害」は、興味対象の標的抗原と特異的に結合して、適切なインビトロ、細胞又はインビボアッセイを用いて測定したとき、興味対象の標的抗原の生物活性を阻害、低減及び/又は妨害する本明細書で開示するアミノ酸配列(特に抗体断片、例えばV
HH)又はその機能的断片(の使用)のことをいうこともある。したがって、「阻害」、「低減」及び/又は「妨害」は、興味対象の標的抗原と特異的に結合して、興味対象の標的抗原が関与する1つ又は2つ以上の生物学的又は生理的機構、効果、応答、機能経路又は活性を阻害、低減及び/又は妨害する本明細書で開示するアミノ酸配列(の使用)のことをいうこともある。本明細書で開示するアミノ酸配列のアンタゴニストとしての作用は、興味対象の標的抗原に応じた任意の適切な様式及び/又は当該分野において公知の任意の適切な(インビトロ、通常は細胞又はインビボ)アッセイを用いて決定してよい。
【0050】
よって、より具体的には、本明細書で開示するアミノ酸配列(特に抗体断片、例えばV
HH)又はその機能的断片を用いる「阻害」、「低減」及び/又は「妨害」は、適切なインビトロ、細胞又はインビボアッセイを用いて測定したとき、同一条件下であるが本明細書で開示するアミノ酸配列を用いない同一アッセイにおいて興味対象の標的抗原の活性と比較して、少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、例えば少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%又はそれ以上、興味対象の標的抗原とその天然の結合パートナーとの間の相互作用を阻害、低減及び/若しくは妨害すること、又は興味対象の標的抗原の活性を阻害、低減及び/若しくは妨害すること、又は興味対象の標的抗原が関与する1若しくは2以上の生物学的若しくは生理的機構、効果、応答、機能経路若しくは活性を阻害、低減及び/若しくは妨害することのいずれかを意味してもよい。更に、「阻害」、「低減」及び/又は「妨害」は、同一条件であるが本明細書で開示するアミノ酸配列の非存在下と比較して、1若しくは2以上の天然の結合パートナーに対する興味対象の標的抗原の親和性、アビディティー、特異性及び/若しくは選択性の低下を誘導すること、及び/又は興味対象の標的抗原が存在する培地若しくは環境における1若しくは2以上の条件(例えばpH、イオン強度、補因子の存在など)に対する興味対象の標的抗原の感受性の低下を誘導することも意味することがある。本発明の関係において、「阻害」、「低減」及び/又は「妨害」は、興味対象の標的抗原の活性のアロステリック阻害、低減及び/又は妨害も含むことがある。
【0051】
本明細書で用いる場合、用語「亢進」、「増加」及び/又は「活性化」は、興味対象の標的タンパク質と特異的に結合して、興味対象の標的タンパク質とその天然の結合パートナーとの間の相互作用を亢進、増加及び/又は活性化する本明細書で開示するアミノ酸配列(特に抗体断片、例えばV
HH)又はその機能的断片(の使用)のことをいうことがある。用語「亢進」、「増加」及び/又は「活性化」は、興味対象の標的タンパク質と特異的に結合して、適切なインビトロ、細胞又はインビボアッセイを用いて測定するとき、その興味対象の標的タンパク質の生物活性を亢進、増加及び/又は活性化する本明細書で開示するアミノ酸配列(特に抗体断片、例えばV
HH)又はその機能的断片(の使用)のことをいうこともある。したがって、「亢進」、「増加」及び/又は「活性化」は、興味対象の標的タンパク質と特異的に結合して、興味対象の標的タンパク質が関与する1又は2以上の生物学的又は生理的機構、効果、応答、機能経路又は活性を亢進、増加及び/又は活性化する本明細書で開示するアミノ酸配列(の使用)のことをいうこともある。本明細書で開示するアミノ酸配列のアゴニストとしての作用は、興味対象の標的タンパク質に応じて任意の適切な様式及び/又は当該分野において既知の任意の適切な(インビトロ、通常は細胞又はインビボ)アッセイを用いて決定してよい。
【0052】
本明細書で開示するアミノ酸配列(特に抗体断片、例えばV
HH)又はその機能的断片の阻害若しくは拮抗活性又は亢進若しくは刺激活性は、可逆的又は不可逆的であってよいが、薬学的及び薬理学的用途のためには、典型的には、可逆的に生じる。
本明細書で開示するアミノ酸配列(特に抗体断片、例えばV
HH)又はその機能的断片は、該アミノ酸配列を産生する宿主細胞及び/又は培地から抽出又は精製された場合、本明細書で用いる「本質的に単離された(形態にある)」とみなされる。
本明細書で開示するアミノ酸配列(特に抗体断片、例えばV
HH)又はその機能的断片に関して、本明細書で開示するアミノ酸配列に存在する「結合領域」、「結合部位」又は「相互作用部位」との用語は、本明細書において、標的分子に存在する特定の部位、領域、遺伝子座、部分又はドメインであって、標的分子との結合を担う特定の部位、領域、遺伝子座、部分又はドメインの意味を有する。このような結合領域は、よって、その標的分子と結合した場合にアミノ酸配列と接触する標的分子の特定の部位、領域、遺伝子座、部分又はドメインから本質的になる。
【0053】
本明細書で用いる場合、用語「抗体」は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、単鎖抗体並びにFab、F(ab)2、Fvのような断片及び親抗体の抗原結合機能を保持するその他の断片のことをいう。よって、抗体は、免疫グロブリン若しくは糖タンパク質、又はその断片若しくは部分、又は改変された免疫グロブリン様フレームワーク内に含まれる抗原結合部分を含む構築物、又は非免疫グロブリン様フレームワーク若しくは足場を含む構築物内に含まれる抗原結合部分のことをいうことがある。
本明細書で用いる場合、用語「モノクローナル抗体」は、均質な抗体集団を有する抗体組成物のことをいう。この用語は、抗体の種又は供給源に関して限定されず、抗体が作製される様式によっても限定されることを意図しない。この用語は、免疫グロブリン全体並びに抗体の抗原結合機能を保持する断片などを包含する。任意の哺乳動物種のモノクローナル抗体を本発明において用いることができる。しかし、実際には、抗体は、モノクローナル抗体の生成に必要なハイブリッド細胞株又はハイブリドーマの作製に用いるラット又はマウスの細胞株の入手可能性のために、典型的には、ラット又はマウス起源のものである。
【0054】
本明細書で用いる場合、用語「ポリクローナル抗体」は、不均質な抗体集団を有する抗体組成物のことをいう。ポリクローナル抗体は、免疫された動物又は選択されたヒトからのプールした血清にしばしば由来する。
「抗体の重鎖可変ドメイン又はその機能的断片」は、本明細書で用いる場合、(i)天然に軽鎖を有さない重鎖抗体の重鎖可変ドメイン(以下、V
HHとも表示する)を意味し、これには、限定されないが、ラクダ科動物若しくはサメの重鎖抗体の重鎖可変ドメインが含まれ、又は(ii)従来型四本鎖抗体の重鎖可変ドメイン(以下、V
Hとも表示する)を意味し、これには、限定されないが、従来型四本鎖抗体の重鎖のラクダ化(下記で更に定義する)可変ドメイン(以下、ラクダ化V
Hとも表示する)又はその任意の機能的断片(例えば、限定されないが、腫瘍抗原又は癌細胞に存在する抗原との結合に特に適切であり、本明細書で開示するV
HHに存在し及び/又はV
HHに組み込まれ得る(又は本明細書で開示するV
HHのCDR配列に基づき、及び/若しくはCDR配列に由来し得る)1又は2以上のアミノ酸残基ストレッチ(すなわち小ペプチド)が含まれる。
【0055】
下記で更に説明するように、抗体の重鎖可変ドメインのアミノ酸配列及び構造は、限定されないが、当該分野及び下記で「フレームワーク領域1」又は「FR1」;「フレームワーク領域2」又は「FR2」;「フレームワーク領域3」又は「FR3」;及び「フレームワーク領域4」又は「FR4」とそれぞれ呼ばれる4つのフレームワーク領域又は「FR」を含むと考えられ、これらフレームワーク領域の間には、当該分野において「相補性決定領域1」又は「CDR1」;「相補性決定領域2」又は「CDR2」;及び「相補性決定領域3」又は「CDR3」とそれぞれ呼ばれる3つの相補性決定領域又は「CDR」が割り込んでいる。
本明細書で用いる場合、抗体に関する用語「相補性決定領域」又は「CDR」は、H鎖(重鎖)又はL鎖(軽鎖)の可変領域(それぞれVH及びVLとも略称する)のことをいい、抗原標的と特異的に結合できるアミノ酸配列を含む。これらCDR領域は、特定の抗原決定基構造についての抗体の基本的特異性を担っている。この領域は「超可変領域」ともいう。CDRは、可変領域内で不連続のアミノ酸ストレッチを表すが、可変重鎖及び軽鎖領域内でのこの重要なアミノ酸配列の位置は、種に関わらず、可変鎖のアミノ酸配列内で同様の位置であることが判明している。全ての正準抗体の可変重鎖及び軽鎖は、各々3つのCDR領域を有し、それぞれの軽鎖(L)及び重鎖(H)について、各々(L1、L2、L3、H1、H2、H3と称する)がその他のものと不連続である。
【0056】
下記で更に説明するように、抗体の重鎖可変ドメイン(V
HH又はV
Hを含む)の全アミノ酸残基数は、110〜130の範囲であり得、好ましくは112〜115、最も好ましくは113である。しかし、抗体の重鎖可変ドメインの部分、断片又はアナログは、該部分、断片若しくはアナログが機能的活性(の少なくとも一部分)を保持し、及び/又は該部分、断片若しくはアナログが由来する抗体の重鎖可変ドメインの結合特異性(の少なくとも一部分)を保持する限り、長さ及び/若しくはサイズに関して特に限定されない。機能的活性(の少なくとも一部分)を保持し、及び/又はそれが由来する抗体の重鎖可変ドメインの結合特異性(の少なくとも一部分)を保持する部分、断片又はアナログは、本明細書において、重鎖可変ドメインの「機能的断片」ともいう。
【0057】
抗体の重鎖可変ドメイン(V
HH又はV
Hを含む)の可変ドメインのアミノ酸残基は、上記のRiechmann及びMuyldermansの文献でラクダ科動物のV
HHドメインに用いられているように(例えば同文献の
図2を参照されたい)、Kabatら(「Sequence of Proteins of immunological interest」、US Public Health Services、NIH Bethesda, Md.、出版第91号)により示される重鎖可変ドメインについての一般的な番号付けに従って番号付けする。この番号付けに従って、重鎖可変ドメインのFR1は1位〜30位のアミノ酸残基を含み、重鎖可変ドメインのCDR1は31位〜35位のアミノ酸残基を含み、重鎖可変ドメインのFR2は36位〜49位のアミノ酸残基を含み、重鎖可変ドメインのCDR2は50位〜65位のアミノ酸残基を含み、重鎖可変ドメインのFR3は66位〜94位のアミノ酸残基を含み、重鎖可変ドメインのCDR3は95位〜102位のアミノ酸残基を含み、重鎖可変ドメインのFR4は103位〜113位のアミノ酸残基を含む。この点について、V
HHドメインについて当該分野で公知のように、各CDR中の総アミノ酸残基数は変動することがあり、Kabat番号付けにより示される総アミノ酸残基数に対応しないことがある(すなわち、実際の配列では、Kabat番号付けに従う1又は2以上の位置が存在しないことがあり、又は実際の配列は、Kabat番号付けにより許容される数より多いアミノ酸残基を含むことがある)ことに留意されたい。このことは、一般的に、Kabatに従う番号付けは、実際の配列中のアミノ酸残基の実際の番号付けに対応することもしないこともあることを意味する。しかし、一般的には、Kabatの番号付けに従って、そしてCDR中のアミノ酸残基数に関わらず、Kabat番号付けに従う1位はFR1の開始に相当し、逆もそうであり、Kabat番号付けに従う36位はFR2の開始に相当し、逆もそうであり、Kabat番号付けに従う66位はFR3の開始に相当し、逆もそうであり、Kabat番号付けに従う103位はFR4の開始に相当し、逆もそうであるということができる。
【0058】
重鎖可変ドメインのアミノ酸残基の番号付けの代替法は、Chothiaら(Nature 342, 877-883(1989))により記載される方法、いわゆる「AbM定義」及びいわゆる「コンタクト定義」である。しかし、本明細書、特許請求の範囲及び図面では、そうでないと示さない限り、Riechmann及びMuyldermansがV
HHドメインに用いたようにKabatに従う番号付けに従う。
【0059】
重鎖抗体及びその可変ドメインの一般的記載について、なかでも、一般的背景技術として挙げる以下の参考文献を参照する:Vrije Universiteit BrusselのWO 94/04678、WO 95/04079及びWO 96/34103;UnileverのWO 94/25591、WO 99/37681、WO 00/40968、WO 00/43507、WO 00/65057、WO 01/40310、WO 01/44301、EP 1134231及びWO 02/48193;Vlaams Instituut voor Biotechnologie (VIB)のWO 97/49805、WO 01/21817、WO 03/035694、WO 03/054016及びWO 03/055527;Algonomics N.V.及びAblynx NVのWO 03/050531;National Research Council of CanadaによるWO 01/90190;the Institute of AntibodiesによるWO 03/025020 (=EP 1 433 793);並びにAblynx NV によるWO 04/041867、WO 04/041862、WO 04/041865、WO 04/041863、WO 04/062551及びAblynx NVによる更に公開された特許出願;Hamers-Castermanら、Nature 1993年6月3日; 363 (6428): 446-8;Davies及びRiechmann、FEBS Lett. 1994年2月21日; 339(3): 285-90;Muyldermansら、Protein Eng. 1994年9月; 7(9): 1129-3;Davies及びRiechmann、Biotechnology (NY) 1995年5月; 13(5): 475-9;Gharoudiら、9th Forum of Applied Biotechnology、Med. Fac. Landbouw Univ. Gent. 1995; 60/4a 第I部: 2097-2100;Davies及びRiechmann、Protein Eng. 1996年6月; 9(6): 531-7;Desmyterら、Nat Struct Biol. 1996年9月; 3(9): 803-11;Sheriffら、Nat Struct Biol. 1996年9月; 3(9): 733-6;Spinelliら、Nat Struct Biol. 1996年9月; 3(9): 752-7;Arbabi Ghahroudiら、FEBS Lett. 1997年9月15日; 414(3): 521-6;Vuら、Mol. Immunol. 1997年11月-12月; 34(16-17): 1121-31;Atarhouchら、Journal of Carnel Practice and Research 1997; 4: 177-182;Nguyenら、J. Mol. Biol. 1998年1月23日; 275(3): 413-8;Lauwereysら、EMBO J. 1998年7月1日; 17(13): 3512-20;Frenkenら、Res Immunol. 1998年7月-8月; 149(6):589-99;Transueら、Proteins 1998年9月1日; 32(4): 515-22;Muyldermans及びLauwereys、J. Mol. Recognit. 1999年3月-4月; 12 (2): 131-40;van der Lindenら、Biochim. Biophys. Acta 1999年4月12日; 1431(1): 37-46;Decanniereら、Structure Fold. Des. 1999年4月15日; 7(4): 361-70;Ngyuenら、Mol. Immunol. 1999年6月; 36(8): 515-24;Woolvenら、Immunogenetics 1999年10月; 50 (1-2): 98-101;Riechmann及びMuyldermans、J. Immunol. 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【0060】
一般的に、用語「重鎖可変ドメイン」は、本明細書で最も広義に用いられているように、特定の生物学的供給源又は特定の作製方法に限定されない。例えば、下記でより詳細に論じるように、本明細書で開示する重鎖抗体由来の重鎖可変ドメイン(すなわちV
HH)は、(1)天然に存在する重鎖抗体のV
HHドメインを単離することにより、(2)天然に存在するV
HHドメインをコードするヌクレオチド配列の発現により、(3)任意の動物種、特に哺乳動物種、例えばヒトの天然に存在するV
Hドメインの(下記で説明するとおりの)「ラクダ化」により若しくはそのようなラクダ化V
Hドメインをコードする核酸の発現により、(4)Wardら(前出)に記載される「ドメイン抗体」又は「Dab」の「ラクダ化」により若しくはそのようなラクダ化V
Hドメインをコードする核酸の発現により、(5)タンパク質、ポリペプチド若しくは他のアミノ酸配列の製造に合成若しくは半合成技術を用いて、(6)核酸合成技術を用いてV
HHをコードする核酸を作製した後に、得られた核酸を発現することにより、及び/又は(7)上記の任意の組み合わせにより得ることができる。上記を行うための適切な方法及び技法は、本明細書の開示に基づいて当業者に明らかであり、例えば下記でより詳細に記載する方法及び技法を含む。
用語「有効量」は、本明細書で用いる場合、所望の1又は複数の結果を達成するために必要な量を意味する。
【0061】
本明細書で用いる場合、用語「決定する」、「測定する」、「評価する」、「モニターする」及び「アッセイする」は、交換可能に用いられ、定量及び定性の両方の決定を含む。
本明細書で用いる場合、用語「予防及び/又は治療」は、ある種の疾患及び/若しくは障害を予防及び/若しくは治療すること、ある種の疾患及び/若しくは障害の発症を予防すること、ある種の疾患及び/若しくは障害の進行を遅延若しくは逆転させること、ある種の疾患及び/若しくは障害に関連する1若しくは2以上の症状の発症を予防若しくは遅延させること、ある種の疾患及び/若しくは障害と関連する1若しくは2以上症状を低減若しくは軽減すること、ある種の疾患及び/若しくは障害の重篤度及び/若しくは期間を低減すること、並びに治療される対象若しくは患者にとって有益な本明細書で開示するアミノ酸配列の全般的な任意の予防若しくは治療効果を含む。
本明細書で用いる場合、用語「診断」、「予測」及び/又は「予後」は、本明細書で用いる場合、ある種の疾患及び/若しくは障害を診断、予測及び/若しくは予後予測することにより、ある種の疾患及び/若しくは障害の発症及び/若しくは存在を予測すること、並びに/又はある種の疾患及び/若しくは障害の進行及び/若しくは期間を予測すること、並びに/又はある種の疾患及び/若しくは障害に罹患した患者の治療に対する応答を予測することを含む。
【0062】
[発明に関連する定義]
本明細書で用いる場合、用語「固形腫瘍特異的抗原」、「腫瘍特異的抗原」、「腫瘍抗原」、「(固形)腫瘍に存在し及び/又は(固形)腫瘍に特異的な標的タンパク質」、「腫瘍特異的標的(タンパク質)」、「腫瘍関連抗原」は、本明細書において交換可能に用いられ、腫瘍細胞にのみ存在し、他のいずれの細胞にも存在しない任意のタンパク質、又は、幾らかの腫瘍細胞に存在し、幾らかの正常な健常細胞にも存在する任意のタンパク質を含む。腫瘍抗原の非限定的な例としては、組織分化抗原、変異タンパク質抗原、発癌ウイルス抗原、癌・精巣抗原及び血管又は間質特異的抗原が挙げられる。
本明細書で用いる場合、用語「腫瘍細胞」は、原発性又は転移性腫瘍病変に存在する細胞のことをいう。この関係において、腫瘍は、癌細胞のみからなるのではなく、癌化細胞と非癌化細胞との間の複雑な双方向相互作用が存在する器官様構造とみなされる。癌化細胞の悪性能力は、間質(線維芽細胞、脂肪細胞、血液及びリンパ管からなり得、広範な免疫細胞が相当浸潤していることもある)からの適切な支持構造を必要とする。
本明細書で用いる場合、用語「癌細胞特異的抗原」、「癌特異的抗原」、「癌抗原」、「癌細胞に存在し及び/又は癌細胞に特異的な標的タンパク質」、「癌細胞特異的標的(タンパク質)」、「癌(細胞)関連抗原」は、本明細書で交換可能に用いられ、癌細胞にのみ存在し、他のいずれの細胞にも存在しない任意のタンパク質、又は、幾らかの癌細胞に存在し、幾らかの正常な健常細胞にも存在する任意のタンパク質を含む。癌細胞特異的抗原の非限定的な例としては、組織分化抗原、変異タンパク質抗原、発癌ウイルス抗原、癌・精巣抗原及び血管又は間質特異的抗原が挙げられる。
【0063】
本明細書で用いる場合、「放射標識」アミノ酸配列、「放射標識」抗体断片又は「放射標識」V
HHにおける用語「放射標識」は、そのアミノ酸配列構造に放射性核種を含むか、結合するか又は化学的に連結することにより標識されているアミノ酸配列、抗体断片又はV
HHの放射性同位体標識のことをいう。
本明細書で用いる場合、用語「放射性核種」、「放射活性核種」、「放射性同位体」又は「放射活性同位体」は、本明細書において交換可能に用いられ、核内で又は内部転換を介して新たに創出された放射粒子に与えることができる過剰エネルギーにより特徴付けられる不安定な核を有する原子のことをいう。このプロセスの間に、放射性核種は、放射性崩壊を受け、ガンマ線及び/又は素粒子、例えばアルファ若しくはベータ粒子の放出をもたらす。これらの放出は電離放射線を構成する。放射性核種は、自然に生じるか、又は人工的に生成できる。
「固形腫瘍」又は「腫瘍」により、原発腫瘍及び/又は転移(場所は問わず)、例えば、限定されないが、神経膠腫、膵腫瘍;肺癌、例えば小細胞肺癌、乳癌;類表皮癌;神経内分泌腫瘍;婦人科及び泌尿器科系の癌、例えば子宮頸部、子宮、卵巣、前立腺、腎細胞癌、精巣胚細胞性腫瘍又は癌;膵臓癌(膵腺癌);膠芽腫;頭部及び/又は頚部癌;CNS(中枢神経系)癌;骨腫瘍;固形小児科腫瘍;血液悪性疾患;AIDS関連癌;軟組織肉腫、並びに黒色腫及びカポジ肉腫を含む皮膚癌を意味する。
【0064】
本明細書で用いる場合、用語「癌細胞」は、未制御の成長を伴い異常にかつ無制限に分裂及び再生し、離脱して体の他の部分に移動でき、別の部位に定着できる(転移と呼ばれる)細胞のことをいう。
「病変」は、本明細書で用いる場合、損傷又は疾患に起因する体組織又は器官における任意の異常な変化のことをいうことができる。癌の分野における用語法では、病変は、典型的には、腫瘍のことをいう。
本明細書で用いる場合、「HER-2陽性(癌)病変」、「HER-2陽性(乳)癌」又は「HER-2陽性腫瘍」における用語「HER-2陽性」は、HER2遺伝子増幅又はHER2タンパク質過剰発現を特徴とするために正常な健常細胞と比較して異常に高いレベルのHER2遺伝子及び/又はHER2タンパク質を有する癌性又は悪性細胞又は組織をいう。HER-2陽性乳癌は、HER2遺伝子増幅又はHER2タンパク質過剰発現を特徴とする癌性乳細胞を特徴とする。5つの乳癌症例のうちほぼ1症例において、癌細胞は、1又は2以上の遺伝子変異によるHER2遺伝子増幅を主な原因として、過剰のHER2を産生する。HER2遺伝子増幅によるHER2タンパク質レベルの上昇は、多くのタイプの癌で生じ得、よって乳癌に限定されない。
本明細書で用いる場合、「HER-2陰性(癌)病変」、「HER-2陰性(乳)癌」、「HER-2陰性腫瘍」、「HER-2陰性細胞」における用語「HER-2陰性」は、HER2遺伝子増幅又はHER2タンパク質過剰発現がないため正常レベルのHER2遺伝子及び/又はHER2タンパク質を特徴とする癌性若しくは悪性の細胞若しくは組織又は正常な健常細胞若しくは組織をいうことができる。
【0065】
用語「インサイチュハイブリダイゼーション(ISH)」は、本明細書で用いる場合、組織の部分若しくは切片において(インサイチュ)、又は組織が十分に小さい場合(例えば植物種子、ショウジョウバエ胚)には組織全体において(ホールマウントISH)、細胞において、及び循環腫瘍細胞(CTC)において特定のDNA若しくはRNA配列の位置決めをするために、標識した相補性DNA又はRNA鎖(すなわちプローブ)を用いるタイプのハイブリダイゼーションアッセイのことをいう。インサイチュハイブリダイゼーションは、組織切片中の個々の細胞内で特定のmRNA種を同定する強力な技法であり、生理学的プロセス及び疾患原因についての洞察を提供する。特に、インサイチュハイブリダイゼーションは、遺伝子の構成、調節及び機能を理解するための重要な工程である、染色体上又は組織内での特定の核酸配列の位置を明らかにするために用いられる。現在用いられている重要な技法は次のものを含む:オリゴヌクレオチド及びRNAプローブ(放射性標識及びハプテン標識)を用いるmRNAへのインサイチュハイブリダイゼーション;光学及び電子顕微鏡を用いる分析;ホールマウントインサイチュハイブリダイゼーション;RNA及びRNA+タンパク質の二重検出;並びに染色体配列を検出するための蛍光インサイチュハイブリダイゼーション。DNA ISHを用いて、染色体の構造を決定できる。蛍光DNA ISH(FISH)は、例えば、医学的診断に用いて、染色体の完全性を評価できる。RNA ISH(RNAインサイチュハイブリダイゼーション)を用いて、組織切片、細胞、ホールマウント及び循環腫瘍細胞(CTC)内のRNA(mRNA、lncRNA及びmiRNA)を測定し位置決めする。
【0066】
用語「蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)」は、本明細書で用いる場合、染色体上の特定のDNA配列の存在又は非存在を検出し位置決めするために用いるタイプのインサイチュハイブリダイゼーションアッセイのことをいう。FISHは、高度の配列相補性を示す染色体部分とのみ結合する蛍光プローブを用いる。蛍光顕微鏡を用いて、染色体のどこに蛍光プローブが結合したかを見出すことができる。FISHは、遺伝学的相談、医学及び種の同定に使用するDNA中の特異な特徴を見出すためにしばしば用いられる。FISHは、細胞、循環腫瘍細胞及び組織試料中の特定のRNA標的(mRNA、lncRNA及びmiRNA)を検出し位置決めするためにも用いることができる。この関係において、FISHは、細胞及び組織内の遺伝子発現の空間-時間的パターンを明らかにする助けとなり得る。
用語「免疫組織化学(IHC)」は、本明細書で用いる場合、生体組織の切片内で抗体が抗原に特異的に結合するという原理を利用して、組織切片の細胞において抗原(例えばタンパク質)を検出するプロセスのことをいう。免疫組織化学的染色は、異常細胞、例えば癌性腫瘍において見出される異常細胞の診断に広く用いられる。IHCは、バイオマーカー及び生体組織の異なる部分で異なって発現するタンパク質の分布及び局在を理解するために基礎研究においても広く用いられる。
「トラスツズマブ」(商品名:Herclon(登録商標)、Herceptin(登録商標))は、HER2/neu受容体に干渉するモノクローナル抗体である。この主な用途は、ある種の乳癌の治療のためである。
「ペルツズマブ」又は「2C4」(商品名:Perjeta(登録商標))は、HER2、より具体的にはHER2のドメインIIと結合することにより、他のHER受容体とHER2との二量体形成を阻害するモノクローナル抗体である。その主な用途は、HER2陽性乳癌の治療である。
【0067】
用語「原発腫瘍」は、本明細書で用いる場合、腫瘍進行が開始し、進行して癌性腫塊を生じた解剖学的部位で成長中の腫瘍である。
用語「転移性病変」は、本明細書で用いる場合、元の場所から体内の他の部分に広がった悪性又は癌性の腫瘍のことをいう。交換可能に用いることがある関連する医学用語として、後期癌、進行癌又は転移性疾患が挙げられる。一般的に、転移性病変は、治療できないと考えられるが、癌性細胞の拡散を抑え、おそらく個体の平均余命を延ばす処置はしばしば可能である。
転移は、体内で元の部位を超える癌の拡散に関する用語である。よって、転移性病変は、原発腫瘍の原位置から離れた場所で見出される癌性腫瘍である。転移性腫瘍は、原発腫瘍から細胞が離脱して、リンパ系及び血流を介して体内の離れた部分に移動するときに生じる。或いは、原腫瘍からの細胞は、近接する器官又は組織で新しい腫瘍の種となり得る。「転移性疾患」は、本明細書で用いる場合、後期癌をいい、癌細胞が原腫瘍の近傍のリンパ節に見出される場合にはステージIIIとされ、癌細胞が原発腫瘍部位を超えて体内の遠隔部分にまで移動した場合にはステージIVとされる癌の医学的分類のことをいう。転移性病変は脳、肺、肝臓又は骨で最も一般的に見出される。転移性癌の個体は、症状を経験することもしないこともあり、症状は、転移細胞が移転した領域と関連し得る。転移性病変が体内に存在すると、個体の癌は、ほとんどのタイプの癌について治療不能であるとみなされる。このことは、利用可能な治療法を用いて全ての存在する癌細胞を根絶することは非常に困難であることを意味する。この場合、治療目標は、腫瘍の成長を遅くし、可能な限り最高のクオリティー・オブ・ライフを維持し、個体の平均余命を可能な限り延ばすことになる。幾つかの場合では、転移性病変の人は、症状管理に適切な治療により数年間生存可能である。
【0068】
本明細書で用いる場合、対象内での放射線の「(算出平均)実効線量」は、身体の特定される全ての組織及び器官における等価線量の組織重み付けされた合計をいい、確率論的な健康リスク、すなわち身体部分に送達される電離放射線の癌誘発及び遺伝的影響の確率を表す。(算出平均)実効線量は、放射線のタイプ及び照射される各器官又は組織の性質を考慮に入れている。(算出平均)実効線量は、国際放射線防護委員会(ICRP)が考案した国際的な放射線防護制度における放射線防護において線量限界の中心量である。実効線量のSI単位はシーベルト(Sv)であり、1Svは1ジュール/キログラム(J/kg)である。この実効線量は、線量のICRP体系において、1991年に、以前の「実効線量当量」から置き換えられた。放射性医薬品を扱う手順については、実効線量は、典型的には、注入した単位活性あたりで表され、すなわちmSv/MBqで表される。そのため、個々の患者の実効線量は、MBqで表される注入した放射性医薬品の活性と、mSv/MBqで表される算出平均実効線量に依存する。
放射性医薬品の実効線量は、FDAにより2004年に承認されたOLINDA/EXM(登録商標)ソフトウェアを用いて算出される。OLINDA/EXM(登録商標)パーソナルコンピュータコードは、放射性医薬品の線量計算及び動力学モデリングを実行する(OLINDA/EXMは、器官レベルの内部線量評価/指数モデリング(Organ Level INternal Dose Assessment/EXponential Modeling)の略である)。OLINDA(登録商標)は、全身投与された放射性医薬品から、身体の異なる器官に対する放射線量を算出し、ユーザにより供給された生体動力学データについて回帰分析を行って、核医学薬物についての算出を支援する。この算出を用いて、核医学における診断及び治療用途での当該医薬品の使用リスク/利益の評価を行う。この技術は、内部線量界で広く受け入れられて用いられている、成人、子供、妊婦などについての幾つかの標準的な身体モデルを利用する。算出は、放射活性薬物を患者又は研究対象に与える場合に送達されるべき許容放射線量を研究する医薬業界開発者、核医学専門家、教育者、取締者、研究者その他の者にとって有用である。
【0069】
算出実効線量は、選択した標準身体モデル及び選択した排尿膀胱モデルに依存する。本明細書において示す値は、成人女性モデル及び1hの排尿膀胱間隔を用いて算出した。
本明細書で引用する全ての文書は、本明細書にその全体が参照により組み込まれる。そうでないと定義しない限り、技術的及び科学的用語を含む、発明の開示に用いる全ての用語は、本発明が属する分野の当業者により通常理解される意味と同義である。更なる手引きにより本発明の教示をよりよく認識するために用語の定義を含める。
【0070】
[説明の主要部]
本発明者らは、癌の予防及び/又は治療に用いるための、固形腫瘍及び/又は癌細胞に特異的な抗原と特異的に相互作用する固形腫瘍結合抗体断片及び癌細胞結合抗体断片、より具体的にはV
HH又はその機能的断片を同定した。加えて、そしてより重要なことには、本明細書で開示するV
HHを放射性標識することにより、放射免疫療法のための改善された効果的な方法が開発され、必要とする対象、特に必要とするヒト患者において、高い腫瘍又は癌細胞取り込み値、低い健常組織取り込み値、低い全体的体内分布及び早い血液からのクリアランスがもたらされる。
よって、本明細書で開示する放射標識V
HH又はその機能的断片は、高い治療有効性を示すだけでなく、正常な健常組織による低い取り込み及び早いクリアランスにより、従来の免疫療法又は公知の放射免疫療法剤と比較して、治療患者における低い毒性効果、したがってかなりより少ない副作用も示す。
よって、本明細書で開示する抗体断片の有効性及び効力は、医薬用途でのより高い最大許容量(MTD)の可能性を示唆し、高い治療投薬量の反復及び継続投与により、正常な健常組織に対する用量制限毒性(DLT)副作用を抑えつつ、腫瘍又は癌細胞成長に効果的に対抗することが可能になる。
【0071】
よって、本発明は、放射標識抗体断片、特に放射標識V
HH又はその機能的断片が、動物又はヒトを癌から効果的に保護し又は癌を効果的に治療するために用いることができることを初めて証明するものである。より具体的には、本発明は、寿命が延長されていない放射標識された一価のV
HH又はその機能的断片の治療有効性を示すものである。
本明細書で開示する放射標識抗体断片は、天然に存在するポリペプチドに由来することができる、或いは完全に人工的に設計可能である。このような天然に存在するポリペプチドの非限定的な例としては、重鎖抗体(hcAb)が挙げられ、例えば限定されないが、ラクダ科動物の重鎖抗体が含まれる。
特に、本明細書で開示する重鎖抗体由来の重鎖可変ドメイン(すなわちV
HH)は、単一ポリペプチド鎖からなり、翻訳後修飾されていない。より具体的には、本明細書で開示するV
HH又はその機能的断片は、先天又は適応免疫系に由来し、好ましくは先天又は適応免疫系のタンパク質に由来する。更により具体的には、本明細書で開示するV
HHは、4つのフレームワーク領域及び3つの相補性決定領域、又は(通常、相補性決定領域の少なくとも1つを形成する少なくとも幾つかのアミノ酸残基を含む)それらの任意の適切な断片を含む。特に、本明細書で開示するV
HHは、高い収率で(好ましくは微生物の組換え発現系において)容易に作製され、その後、簡便に単離及び/又は精製される。
【0072】
具体的な実施形態によると、本発明は、腫瘍抗原又は癌細胞抗原(例えば限定されないが、HER2)との結合に特に適切な幾つかのアミノ酸残基ストレッチ(すなわち小ペプチド)を提供する。
これらアミノ酸残基ストレッチは、本明細書で開示するV
HH中に、特には該V
HHの抗原結合部位(の一部)を形成するように存在し及び/又は組み込まれていることがある。これらアミノ酸残基ストレッチは、最初、抗体のCDR配列として創出された(又は、本明細書で更に説明するように、そのようなCDR配列に基づき、及び/又は由来し得る)ので、本明細書において一般的に「CDR配列」(すなわち、それぞれCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列)とも呼ばれる。しかし、本発明は、最も広義には、これらアミノ酸残基ストレッチにより、本明細書で開示する可変ドメインが腫瘍抗原及び/又は癌細胞特異的抗原と特異的に結合するようになる限り、当該ストレッチが当該重鎖可変ドメイン中で有し得る特定の構造的役割又は機能に限定されない。よって、一般には、本発明は、最も広義には、本明細書で記載するCDR配列の組み合わせを含み、且つ、腫瘍特異的又は癌細胞特異的標的タンパク質を特異的に指向する、癌の治療及び/又は予防に用いる放射標識V
HHに関する。
【0073】
よって、非限定的な具体的実施形態では、本明細書で開示するV
HHは、本明細書で記載するCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列を含む。特に、本明細書で開示するV
HHは、本明細書で記載するCDR1配列、CDR2配列及びCDR3配列の少なくとも1つの組合せを含む少なくとも1つの抗原結合部位を含んでいてもよい。
これらCDR配列組合せの1つを有する本明細書で開示する任意のV
HH抗体断片は、好ましくは、(本明細書で定義するとおり)腫瘍特異的抗原及び/又は癌細胞特異的抗原と特異的に結合することができるものであり、より具体的には、腫瘍特異的抗原及び/又は癌細胞特異的抗原と、解離定数(Kd)が溶液中10
-8モル/リットルの前記可変ドメイン又はそれ未満で特異的に結合する。
特定の実施形態では、本明細書で開示するHER2に対するV
HH抗体断片は、5nM以下、例えば1〜5nMの間、好ましくは2〜3nMの解離定数(Kd)でHER2と特異的に結合することができるものである。
V
HHの腫瘍抗原又は癌細胞抗原との特異的結合は、それ自体公知の任意の適切な様式で決定することができ、そのような様式としては、例えば、バイオパニング、スキャッチャード解析及び/又は競合結合アッセイ(例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素免疫アッセイ(EIA)及びサンドイッチ競合アッセイ)並びに当該技術分野で公知の異なる変形が挙げられる。
【0074】
更なる特定の実施形態では、本明細書で開示するV
HHは、
配列番号1を有するCDR1領域、配列番号2を有するCDR2領域及び配列番号3を有するCDR3領域、及び/又は
配列番号4を有するCDR1領域、配列番号5を有するCDR2領域及び配列番号6を有するCDR3領域
を含む群から選択されるCDR配列の少なくとも1つの組合せを含む。
よって、特定の実施形態では、本発明は、(一般)構造:
FR1 - CDR1 - FR2 - CDR2 - FR3 - CDR3 - FR4
(式中、FR1〜FR4は、それぞれフレームワーク領域1〜4をいい、CDR1〜CDR3は、それぞれ相補性決定領域1〜3をいい、これらは本明細書で更に定義されるとおりである)を有する重鎖抗体由来の重鎖可変ドメインを提供する。
配列番号7及び8(表1を参照)は、腫瘍特異的抗原(特にHER2)に対して惹起された重鎖可変ドメインのアミノ酸配列を示す。
【0075】
【表1】
【0076】
特に、幾つかの具体的な実施形態において本発明は、配列番号7若しくは8(表1を参照)の重鎖可変ドメイン又はそれらの機能的断片及び当該重鎖可変ドメイン又はその機能的断片をコードする核酸配列の少なくとも1つと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、例えば少なくとも90%若しくは95%又はそれ以上の配列同一性を有する、腫瘍特異的又は癌細胞特異的標的抗原を指向する放射標識V
HHドメインを提供する。
本明細書で開示する幾つかの特に好ましい重鎖可変ドメイン配列は、HER2と結合することができ及び/又はHER2を指向し、配列番号7又は8(表1を参照)の重鎖可変ドメインの少なくとも1つと少なくとも90%のアミノ酸同一性を有するものである(ここで、アミノ酸同一性の度合いの決定のためには、CDR配列を形成するアミノ酸残基を重視しない)。
これら重鎖可変ドメインにおいて、CDR配列(表2を参照)は、一般に、本明細書で更に定義されるとおりである。
【0077】
【表2】
【0078】
本発明は、本明細書で開示するV
HH断片(又はこれらを発現するヌクレオチド配列)の起源についても、本明細書で開示するV
HH断片若しくはヌクレオチド配列を作製若しくは得る(又は作製した若しくは得た)方法に関しても限定されないことに留意されたい。よって、本明細書で開示するV
HH断片は、(任意の適切な種に由来する)天然に存在するアミノ酸配列又は合成若しくは半合成のアミノ酸配列であってよい。本発明の非限定的な具体的態様では、アミノ酸配列は、(任意の適切な種に由来する)天然に存在する免疫グロブリン配列又は合成若しくは半合成の免疫グロブリン配列であり、これには、限定されないが、「ヒト化」免疫グロブリン配列(例えば、部分若しくは完全ヒト化マウス若しくはウサギ免疫グロブリン配列、特には、部分若しくは完全ヒト化V
HH配列)、「ラクダ化」免疫グロブリン配列、並びに、(例えば、合成若しくはランダムの又は天然に存在する免疫グロブリン配列から出発する)親和性成熟、CDRグラフト化、張り合せ(veneering)、異なる免疫グロブリン配列に由来する断片の組み合わせ、オーバーラップするプライマーを用いるPCRアセンブリ及び免疫グロブリン配列を工学的に操作するための当業者に周知の類似の技法;又は上記のいずれかの任意の適切な組合せのような技法により得られた免疫グロブリン配列が含まれる。また、本明細書で開示するV
HH配列又はその機能的断片は、本明細書に更に説明するように適切にヒト化されて、本発明の1又は2以上の更なる(部分又は完全)ヒト化アミノ酸配列をもたらすことができる。同様に、アミノ酸配列は、合成又は半合成の配列(例えば部分ヒト化配列)を含む場合、必要に応じて、本明細書で説明するように、更に適切にヒト化されて、本明細書で開示する1又は2以上の更なる(部分又は完全)ヒト化アミノ酸配列をもたらすことができる。
【0079】
特に、ヒト化アミノ酸配列は、ヒト化置換であり及び/又はヒト化置換に相当する少なくとも1つのアミノ酸残基が(特に、フレームワーク残基の少なくとも1つに)存在するアミノ酸配列であってよい。追加的に又は代替的に、天然に存在するV
HH配列のフレームワーク領域の配列と1又は2以上の近縁ヒトV
H配列の対応するフレームワーク配列との比較により、可能性がある他の有用なヒト化置換を突き止めることができる。その後、このようにして決定した1又は2以上の可能な有用ヒト化置換(又はその組合せ)を、前記V
HH配列に(本明細書に更に説明するように、それ自体公知の任意の様式で)導入することができ、得られたヒト化V
HH配列又はその機能的断片を、標的に対する親和性、安定性、発現の容易さ及びレベル、並びに/又は他の所望の特性について試験することができる。このようにして、限定的な試行錯誤により、当業者は、他の適切なヒト化置換(又はその適切な組合せ)を決定することができる。
本明細書で開示する医学目的、特に本明細書で開示する癌に対する治療及び予防用途(本明細書で開示するV
HH又はその機能的断片が指向する抗原を発現する腫瘍細胞若しくは癌細胞を死滅させるか、又はそのような腫瘍細胞若しくは癌細胞の成長及び/若しくは増殖を低減若しくは遅延させることが意図される)に適切になるように、V
HHを放射性核種と連結又は(例えば化学的に)結合させる。
【0080】
癌の予防及び/又は治療用の細胞毒性化合物を提供するために、本明細書で開示するV
HHと連結さ得る適切な放射性核種の例は、当業者に明らかであり、限定されないが、例えば、α放出放射性同位体及びβ放出放射性同位体からなる群から選択することができ、このような放射性同位体としては、限定されないが、アクチニウム-225、アスタチン-211、ビスマス-212、ビスマス-213、セシウム-137、クロム-51、コバルト-60、ジスプロシウム-165、エルビウム-169、フェルミウム-255、金-198、ホルミウム-166、ヨウ素-125、ヨウ素-131、イリジウム-192、鉄-59、鉛-212、ルテチウム-177、モリブデン-99、パラジウム-103、リン-32、カリウム-42、レニウム-186、レニウム-188、サマリウム-153、テクネチウム-99m、ラジウム-223 、ルテニウム-106、ナトリウム-24、ストロンチウム-89、テルビウム-149、トリウム-227、キセノン-133、イッテルビウム-169、イッテルビウム-177、イットリウム-90からなる群から選択される放射性同位体が挙げられる。
尚更なる具体的な実施形態では、本明細書で開示する放射標識V
HH又はその機能的断片は、ヨウ素-131で標識されている。
よって、一態様では、本発明は、癌の予防及び/又は治療に用いる、腫瘍抗原及び/又は癌細胞抗原を特異的に指向する放射標識V
HH配列又はその機能的断片を提供する。
【0081】
特定の実施形態では、本発明は、癌の予防及び/又は治療に用いる、より具体的には乳癌の予防及び/又は治療に用いる、腫瘍抗原及び/又は癌細胞抗原を特異的に指向する放射標識V
HH配列又はその機能的断片を提供する。
更なる特定の実施形態では、本発明は、癌の予防及び/又は治療に用いるための、配列番号7若しくは8又はその機能的断片の少なくとも1つと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、例えば少なくとも90%若しくは95%又はそれ以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、腫瘍抗原及び/又は癌細胞抗原を特異的に指向する放射標識V
HH配列を提供する。
更なる特定の実施形態では、本発明は、癌の予防及び/又は治療に用いるための、配列番号7若しくは8又はその機能的断片からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、腫瘍抗原及び/又は癌細胞抗原を特異的に指向する放射標識V
HH配列を提供する。
更なる特定の実施形態では、本発明は、癌の予防及び/又は治療に用いる、腫瘍抗原及び/又は癌細胞抗原を特異的に指向する
131I標識V
HH配列を提供する。
特定の実施形態では、本発明は、癌の予防及び/又は治療に用いる、より具体的には乳癌の予防及び/又は治療に用いる、腫瘍抗原及び/又は癌細胞抗原を特異的に指向する
131I標識V
HH配列又はその機能的断片を提供する。
【0082】
更なる特定の実施形態では、本発明は、癌の予防及び/又は治療に用いるための、配列番号7若しくは8又はその機能的断片の少なくとも1つと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、例えば少なくとも90%若しくは95%又はそれ以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、腫瘍抗原及び/又は癌細胞抗原を特異的に指向する
131I標識V
HH配列を提供する。
更なる特定の実施形態では、本発明は、癌の予防及び/又は治療に用いる、配列番号7若しくは8又はその機能的断片を有する、腫瘍抗原及び/又は癌細胞抗原を特異的に指向する
131I標識V
HH配列を提供する。
尚更なる特定の実施形態では、本発明は、乳癌の予防及び/又は治療に用いるための、配列番号7若しくは8又はその機能的断片の少なくとも1つと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、例えば少なくとも90%若しくは95%又はそれ以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、腫瘍抗原及び/又は癌細胞抗原を特異的に指向する
131I標識V
HH配列を提供する。
尚更なる特定の実施形態では、本発明は、乳癌の予防及び/又は治療に用いる、配列番号7若しくは8又はその機能的断片を有する、腫瘍抗原及び/又は癌細胞抗原を特異的に指向する
131I標識V
HH配列を提供する。
特に好ましい実施形態では、本発明は、単量体形態のV
HHドメイン又はその機能的断片、並びに、単量体形態のV
HHドメイン又はその機能的断片を含むポリペプチド及び医薬組成物、すなわち、当該ポリペプチド及び医薬組成物のインビボ半減期が可能な限り最小となるように唯1つのV
HHドメインを含むポリペプチド及び医薬組成物を提供する。
【0083】
[重鎖可変ドメイン配列のバリアント]
或る特定の態様では、腫瘍特異的抗原及び/又は癌細胞特異的抗原と特異的に結合する本明細書で開示する放射標識V
HHドメイン又はその機能的断片は、必要に応じて、1又は2以上のリンカーを介して1又は2以上の更なる基、部分又は残基と連結されていてよい。これら1又は2以上の更なる基、部分又は残基は、他の興味対象の標的との結合に働くことができる。このような更なる基、残基、部分及び/又は結合部位は、本明細書で開示する重鎖可変ドメインに更なる機能性をもたらしてももたらさなくてもよく、本明細書で開示する重鎖可変ドメインの特性を改変してもしなくてもよい。このような基、残基、部分又は結合単位は、例えば、生物学的に活性であり得る化学基であってもよい。
これら基、部分又は残基は、特定の実施形態では、重鎖可変ドメインにN又はC末端で、特にC末端で連結されている。
特定の実施形態では、腫瘍特異的抗原及び/又は癌細胞特異的抗原と特異的に結合する本明細書で開示する放射標識V
HHドメイン又はその機能的断片は、化学的に改変されていてもよい。例えば、そのような改変は、重鎖可変ドメインへの1又は2以上の官能基、残基又は部分の導入又は連結を含み得る。これら基、残基又は部分は、重鎖可変ドメインに1又は2以上の所望の特性又は機能を与えることができる。そのような官能基の例は当業者に明らかである。
【0084】
例えば、重鎖可変ドメインへのそのような官能基の導入又は連結は、重鎖可変ドメインの溶解性及び/若しくは安定性の増大、重鎖可変ドメインの毒性の低減、又は重鎖可変ドメインの望ましくない副作用の除去若しくは減弱、並びに/或いはその他の有利な特性をもたらすことができる。
特定の実施形態では、1又は2以上の基、残基、部分は、1又は2以上のリンカー又はスペーサーを介して重鎖可変ドメインに連結される。
好ましくは、1又は2以上の基、残基又は部分は、本明細書で開示する放射標識V
HH又はその機能的断片に、半減期の延長をもたらさない。したがって、好ましい実施形態では、本明細書で開示する放射標識V
HH又はその機能的断片は、寿命が延長されていない。
また、好ましくは、1又は2以上の基、残基又は部分は、本明細書で開示する放射標識V
HH又はその機能的断片の多量体化(例えば二量体化)を誘導しない。例えば、カルボキシ末端システイン含有タグ(例えばGCCタグ)を含むV
HHは、単量体形態及び二量体形態の等量混合物を生じる(Pruszyskiら 2013 Nucl Med Biol. 40:52-59)。したがって、特定の実施形態では、本明細書で開示する放射標識V
HH又はその機能的断片は、多量体化(例えば二量体化)を誘導するタグ、より具体的にはシステイン含有タグ、更により具体的にはGGCタグを含まない。
特定の実施形態では、本明細書で開示する放射標識V
HH又はその機能的断片は、C末端ポリペプチドタグ(例えばHisタグ及び/又はMycタグ)を含まず、好ましくはタグ付加されていない。有利なことには、カルボキシ末端ポリペプチドタグを有さないV
HHを用いる場合、ポリペプチドタグ(例えばHisタグ及びMyc-Hisタグ)が付加されたV
HHと比較して、腎臓貯留が著しく低減することが示された。
【0085】
腫瘍特異的抗原及び/又は癌細胞特異的抗原と特異的に結合する本明細書で開示する放射標識V
HHドメインは、好ましくは、(本明細書で更に説明するとおり)単量体形態であり、特に代替の実施形態では、腫瘍特異的抗原及び/又は癌細胞特異的抗原と特異的に結合する本明細書で開示する2又は3以上の放射標識V
HHドメイン又はその機能的断片は、互いに連結されていてよく、又は相互接続されていてもよい。特定の実施形態では、2又は3以上の重鎖可変ドメイン又はその機能的断片は、1又は2以上のリンカー又はスペーサーを介して互いに連結されている。本明細書で開示する異なる重鎖可変ドメインの結合に用いる適切なスペーサー又はリンカーは、当業者に明らかであり、一般には、ペプチド及び/又はタンパク質を連結するために当該技術分野で用いられる任意のリンカー又はスペーサーであってよい。
特に適切なリンカー又はスペーサーには、例えば、限定されないが、ポリペプチドリンカー、例えばグリシンリンカー、セリンリンカー、グリシン/セリン混合リンカー、グリシン-及びセリン-リッチリンカー若しくは主に極性ポリペプチド断片で構成されているリンカー、又はホモ若しくはヘテロ二官能性化学架橋化合物、例えばグルタルアルデヒド又は(必要に応じてPEGで間隔をあけた)マレイミド若しくはNHSエステルが含まれる。
例えば、ポリペプチドリンカー又はスペーサーは、1〜50アミノ酸、例えば1〜30、特に1〜10アミノ酸残基の長さを有する適切なアミノ酸配列であってよい。リンカーの長さ、可撓性の程度及び/又はその他の特性が重鎖可変ドメインの特性に幾らか影響し得ることは明らかである。このような影響を受け得る特性には、限定されないが、腫瘍標的又は癌細胞の標的に対する親和性、特異性又はアビディティーが含まれる。2又は3以上のリンカーを用いる場合、それらは同じでも異なってもよいことが明らかである。本発明との関係において及び本発明の開示において、当業者は、過度の実験を要することなく、本明細書で開示する重鎖可変ドメインの結合のための最適なリンカーを決定することができる。
【0086】
[重鎖可変ドメインの断片]
本発明は、腫瘍特異的抗原及び/又は癌細胞特異的抗原と特異的に結合する本明細書で開示する放射標識V
HHドメインの部分、断片、アナログ、変異体、バリアント及び/又は誘導体、並びに/或いは1又は2以上の当該部分、断片、アナログ、変異体、バリアント及び/又は誘導体を含むか又はそれから本質的になるポリペプチドも、本発明で企図する目的に適切である限り、包含する。本発明による当該部分、断片、アナログ、変異体、バリアント及び/又は誘導体は、依然として、腫瘍特異的抗原及び/又は癌細胞特異的抗原と特異的に結合できるものである。
例えば、本発明は、腫瘍抗原又は癌抗原との結合に特に適する幾つかのアミノ酸残基ストレッチ(すなわち小ペプチド)も提供する(これらは、本明細書において、本明細書で開示するV
HHのCDR配列とも呼ばれる)。これらストレッチは、本明細書で開示するV
HHの機能的断片とみなしてもよく、任意の適切な足場(タンパク質)(例えば、限定されないが、本明細書で開示するV
HH)に(特には、当該適切な足場又はV
HHの抗原結合部位(の一部)を形成するような様式で)存在し及び/又は組み込まれていてもよい。しかし、本発明は、最も広義には、アミノ酸残基ストレッチにより、足場又は本明細書で開示するV
HHが腫瘍抗原又は癌抗原と特異的に結合するようになる限り、当該アミノ酸残基ストレッチが足場又は本明細書で開示するV
HH中で有し得る特定の構造的役割又は機能に限定されないことに注意されたい。
【0087】
[核酸配列]
更なる態様では、本発明は、本明細書で開示する組成物中のV
HHドメインアミノ酸配列(又はその適切な断片)をコードする核酸配列を提供する。これら核酸配列は、ベクター又は遺伝子構築物又はポリヌクレオチドの形態でもあり得る。本明細書で開示する核酸配列は、合成若しくは半合成の配列、ライブラリー(特に発現ライブラリー)から単離されたヌクレオチド配列、オーバーラップするプライマーを用いてPCRにより作製されたヌクレオチド配列、又はそれ自体公知のDNA合成技法を用いて作製されたヌクレオチド配列であり得る。
【0088】
[構築物、ベクター、宿主細胞]
本明細書で開示する遺伝子構築物は、DNA又はRNAであってよく、好ましくは二本鎖DNAである。本発明の遺伝子構築物は、意図する宿主細胞又は宿主生物の形質転換に適切な形態、意図する宿主細胞のゲノムDNAへの組み込みに適切な形態、又は意図する宿主生物における独立の複製、維持及び/若しくは遺伝に適切な形態でもあり得る。例えば、本発明の遺伝子構築物は、ベクターの形態、例えばプラスミド、コスミド、YAC、ウイルスベクター又はトランスポゾンの形態であってよい。特に、ベクターは、発現ベクター、すなわちインビトロ及び/又はインビボで(例えば適切な宿主細胞、宿主生物及び/又は発現系において)発現をもたらすことができるベクターであってよい。
したがって、別の更なる態様では、本発明は、1又は2以上の本明細書で開示する核酸配列を含むベクターを提供する。
尚更なる態様では、本発明は、1又は2以上の本明細書で開示するアミノ酸配列を発現するか又は発現する能力を有する宿主又は宿主細胞を提供する。本発明のV
HH配列、ポリペプチドの発現に適切な宿主又は宿主細胞の例は、当業者に明らかである。
【0089】
[V
HHドメインを含むポリペプチド]
更なる態様では、本発明は、腫瘍特異的抗原及び/又は癌細胞特異的抗原と特異的に結合する少なくとも1つの本発明のV
HH配列を含むか又はそれから本質的になるポリペプチド(本明細書において、「本明細書で開示するポリペプチド」とも呼ぶ)を提供する。本発明のポリペプチドは、本明細書で開示する少なくとも1つのV
HH又はその機能的断片と、必要に応じて、(場合により1又は2以上のリンカーを介して連結された)1又は2以上の基、部分、残基とを含んでもよい。
特に好ましい実施形態では、本発明は、単量体形態のV
HHドメインを含むポリペプチド及び医薬組成物、すなわち、ポリペプチド及び医薬組成物のインビボ半減期が可能な限り最小となるように唯1つのV
HHドメインを含むポリペプチド及び医薬組成物を提供する。
しかし、代替の実施形態では、本発明は、二価(又は多価)又は二重特異性(又は多重特異性)ポリペプチドをもたらす2又は3以上の同一又は異なるV
HHドメインを含むポリペプチド及び医薬組成物も提供する。
【0090】
本明細書で開示するポリペプチドは、興味対象の他の標的又は標的タンパク質と結合するための1又は2以上の更なる基、部分又は残基を少なくとも含むことがある。このような更なる基、残基、部分及び/又は結合部位は、本明細書で開示するアミノ酸配列(及び/又はポリペプチド若しくはポリペプチドが存在する組成物)に更なる機能性をもたらしてももたらさなくてもよく、本明細書で開示するアミノ酸配列の特性を改変してもしなくてもよいことが明らかである。そのような基、残基、部分又は結合単位は、例えば、生物学的及び/又は薬理学的に活性であり得る化学基であってもよい。
好ましくは、更なる基、残基又は部分は、ポリペプチドに半減期の延長をもたらさない。したがって、好ましい実施形態では、本明細書で開示するポリペプチドは、寿命が延長されていない。
また、好ましくは、更なる基、残基又は部分は、本明細書で開示するポリペプチドの多量体化(例えば二量体化)を誘導しない。したがって、特定の実施形態では、本明細書で開示するポリペプチドは、多量体化(例えば二量体化)を誘導するタグ、より具体的にはシステイン含有タグ、更により具体的にはGGCタグを含まない。
特定の実施形態では、本明細書で開示するポリペプチドは、C末端ポリペプチドタグ、例えばHisタグ及び/又はMycタグを含まず、好ましくは、本明細書で開示するポリペプチドは、タグ付加されていない。
これらの基、部分又は残基は、特定の実施形態では、本明細書で開示するアミノ酸配列とN又はC末端で連結されている。
【0091】
[本明細書で開示するV
HH配列、ポリペプチド及び組成物の起源及び形態]
本発明は、本発明のV
HH配列若しくはその機能的断片、ポリペプチド又は組成物(又はそれらを発現するために用いる本発明のヌクレオチド配列)の起源に限定されないことに注意されたい。更に、本発明は、本明細書で開示するV
HH配列、ポリペプチド又はヌクレオチド配列が作製又は得られる様式にも限定されない。よって、本明細書で開示するアミノ酸配列は、合成又は半合成アミノ酸配列、ポリペプチド又はタンパク質であり得る。
本発明が提供するアミノ酸配列、ポリペプチド及び組成物は、本質的に単離された形態(本明細書で定義するとおり)であり得るか、又は少なくとも1つの本明細書で開示するアミノ酸配列を含むか若しくはそれから本質的になり得、1若しくは複数の他の基、部分若しくは残基(全て1若しくは複数の適切なリンカーにより所望により連結される)を所望により更に含み得る本明細書で開示するポリペプチド若しくは組成物の一部を形成できる。
【0092】
[標的種及び交差反応性]
本開示に基づいて、予防及び/又は治療用途のために、本明細書で開示するV
HH配列又はその機能的断片、ポリペプチド及び組成物は、原則として、全ての形態の腫瘍特異的抗原及び/又は癌細胞特異的抗原を指向するか又はそれと特異的に結合することが認識される。しかし、本明細書で開示するV
HH配列又はその機能的断片、ポリペプチド及び組成物が獣医学的目的を意図する場合、これらは、処置することを意図する種からの全ての形態の腫瘍特異的抗原及び/又は癌細胞特異的抗原を指向するか又はそれと特異的に結合するか、あるいはこれらは、処置される種からの腫瘍特異的抗原及び/又は癌細胞特異的抗原の全ての形態と少なくとも交差反応性を有する。したがって、1つの対象種からの全ての形態の抗原と特異的に結合するV
HH配列又はその機能的断片、ポリペプチド及び組成物は、1又は複数の他の対象種からの全ての形態の抗原と交差反応性を示すか又は示さないことがある。もちろん、ヒト又は動物で用いるためのアミノ酸配列の開発の関係において、研究及び実験室試験において用いるための処置されるものよりも別の種からの腫瘍特異的抗原及び/又は癌細胞特異的抗原の形態と結合するV
HH配列を開発できることが構想される。
本発明のV
HH配列及びポリペプチドは、腫瘍特異的抗原及び/又は癌細胞特異的抗原の幾つかの天然に存在する又は合成のアナログ、バリアント、変異体、対立遺伝子、部分及び断片と結合することも期待される。より具体的には、本発明のV
HH配列及びポリペプチドは、これらのV
HH配列及びポリペプチドと結合する(天然/野生型)抗原の結合部位、部分又はドメインを(まだ)含む腫瘍特異的抗原及び/又は癌細胞特異的抗原のこれらのアナログ、バリアント、変異体、対立遺伝子、部分及び断片と少なくとも結合する。
【0093】
[標的]
特定の実施形態では、本明細書で開示するV
HHドメインは、固形腫瘍及び/若しくは癌細胞に存在し及び/又は固形腫瘍及び/若しくは癌細胞に特異的な特定の標的タンパク質に対する親和性選択により得られる。特定の固形腫瘍抗原又は癌細胞に対する親和性選択により適切なポリペプチドを得ることは、例えば、腫瘍特異的抗原及び/又は癌細胞特異的抗原に対する結合について、表面上でV
HHを発現する細胞のセット、収集物又はライブラリー(例えばバクテリオファージ)をスクリーニングすることにより行うことができる。これらの全ては、以下の非限定的な工程を本質的に含むそれ自体既知の様式で行うことができる:a)腫瘍特異的又は癌細胞特異的タンパク質標的分子であって、可能性のある癌薬物の標的であることが知られている分子の単離溶液又は懸濁物を得る工程、;b)前記タンパク質標的分子に対するV
HHライブラリーからのファージ又は他の細胞をバイオパニングする工程;c)腫瘍特異的又は癌細胞特異的タンパク質標的分子と結合するファージ又は他の細胞を単離する工程;d)個別の結合するファージ又は他の細胞から、V
HH挿入断片をコードするヌクレオチド配列を決定する工程;e)組換えタンパク質発現を用いて、この配列に従って、ある量のV
HHを生成する工程;及びf)前記腫瘍特異的又は癌細胞特異的タンパク質標的分子についての前記V
HHドメインの親和性を決定する工程;及び所望によりg)バイオアッセイにおいて、前記V
HHドメインの腫瘍殺傷又は抗癌活性を試験する工程。V
HHドメインと腫瘍特異的又は癌細胞特異的タンパク質標的分子との間の親和性を決定するために、例えばSambrookら(2001)、Molecular Cloning, A Laboratory Manual. 第3版 Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NYに記載されるように当該技術において一般的なプラクティスである、例えば、酵素結合免疫吸着法(ELISA)又は表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイを含む様々な方法を用いてよい。解離定数は、ポリペプチドとその標的分子との間の親和性を表すために一般的に用いられる。典型的に、ポリペプチドとその標的分子との間の結合の解離定数は、10
-5Mより低く、より好ましくは、解離定数は、10
-6Mより低く、更により好ましくは、解離定数は、10
-7Mより低く、最も好ましくは、解離定数は、10
-8M以下、例えば好ましくは10
-9M以下、より好ましくは0.5.10
-9M以下、例えば10
-10M以下である。
【0094】
特定の実施形態では、本明細書で開示するV
HH断片は、5.10
-9M以下、例えば約1.10
-9M〜約5.10
-9Mの間、例えば約2.10
-9M〜約3.10
-9Mの間の解離定数で固形腫瘍抗原と特異的に結合する。
腫瘍特異的抗原又は癌細胞特異的抗原は、それぞれ腫瘍細胞又は癌細胞の表面上に特異的に発生又は特異的及び/又は豊富に発現され、好ましくは正常な健常細胞の表面上では発現されないか又は比較的低濃度若しくは密度でのみ発現される分子である。これらの腫瘍特異的又は癌細胞特異的抗原が本明細書で開示する放射標識V
HHと結合する場合、抗原が発現する対応する腫瘍又は癌細胞は、放射毒性の機構により死滅するか、又はその成長が少なくとも停止、阻害若しくは低減する。
適切な腫瘍特異的又は癌細胞特異的標的分子は、当業者にとって、現存する文献又は特許データベースから容易に入手可能であり、限定することなく、ras及びp53遺伝子の異常生成物を含む変異により異常な構造を有する腫瘍細胞で生成される任意のタンパク質、組織分化抗原、変異タンパク質抗原、発癌ウイルス抗原、癌・精巣抗原、癌胎児性抗原及び血管又は間質特異的抗原を含む。特異的腫瘍抗原の例は、限定されないが、CTAG1B、MAGEA1、酵素チロシナーゼ、アルファフェトタンパク質(AFP)、癌胎児性抗原(CEA)、EBV及びHPV、異常構造の細胞表面糖脂質及び糖タンパク質及びHER2、EGFR並びにそれらのバリアントを含む。
【0095】
特定の実施形態では、癌の予防及び/又は治療に用いるための本明細書で開示する放射標識V
HHドメインは、HER2を特異的に指向する。
特定の実施形態では、本発明は、乳癌の予防及び/又は治療に用いるための、HER2を特異的に指向する放射標識V
HH配列を提供する。
更なる特定の実施形態では、本発明は、癌の予防及び/又は治療に用いるための、配列番号7若しくは8又はその機能的断片の少なくとも1つと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、例えば90%又は95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、HER2を特異的に指向する放射標識V
HH配列を提供する。
更なる特定の実施形態では、本発明は、癌の予防及び/又は治療に用いるための、配列番号7若しくは8又はその機能的断片からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、HER2を特異的に指向する放射標識V
HH配列を提供する。
更なる特定の実施形態では、本発明は、癌の予防及び/又は治療に用いるための、腫瘍抗原及び/又は癌細胞抗原を特異的に指向する
131I標識V
HH配列又はその機能的断片を提供する。
【0096】
特定の実施形態では、本発明は、癌の予防及び/又は治療に用いるための、より具体的には乳癌の予防及び/又は治療に用いるための、HER2を特異的に指向する
131I標識V
HH配列又はその機能的断片を提供する。
更なる特定の実施形態では、本発明は、癌の予防及び/又は治療に用いるための配列番号7若しくは8又はその機能的断片の少なくとも1つと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、例えば90%又は95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、HER2を特異的に指向する
131I標識V
HH配列を提供する。
更なる特定の実施形態では、本発明は、癌の予防及び/又は治療に用いるための、配列番号7若しくは8又はその機能的断片を有する、HER2を特異的に指向する
131I標識V
HH配列を提供する。
尚更なる特定の実施形態では、本発明は、乳癌の予防及び/又は治療に用いるための、配列番号7若しくは8又はその機能的断片の少なくとも1つと少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、例えば90%又は95%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、HER2を特異的に指向する
131I標識V
HH又はその機能的断片を提供する。
尚更なる特定の実施形態では、本発明は、乳癌の予防及び/又は治療に用いるための、配列番号7又は8を有する、HER2を特異的に指向する
131I標識V
HH配列又はその機能的断片を提供する。
【0097】
ある種の非限定的な実施形態では、本発明の放射標識V
HH配列又はその機能的断片は、適切な競合アッセイを用いて決定されるように、HER2上のHerceptin(登録商標) (トラスツズマブ)結合部位とは異なり、及び/又はHER-2の結合についてHerceptin(登録商標)と競合しないHER2上の結合部位を特異的に指向する。
特定の実施形態では、本発明の放射標識V
HH配列は、HER2のドメインIVとは異なる(すなわちそれではない) HER2上の結合部位を特異的に指向する。尚更なる特定の実施形態では、本発明の放射標識V
HH配列又はその機能的断片は、HER2のドメインIVのC末端とは異なる(すなわちそれではない)HER2上の結合部位を特異的に指向する。
よって、特定の実施形態では、本発明の放射標識V
HH配列又はその機能的断片は、適切な競合アッセイを用いて決定されるように、HER2との結合についてモノクローナル抗体Herceptin(登録商標)(トラスツズマブ)と競合しない。
ある種の実施形態では、本発明の放射標識V
HH配列又はその機能的断片は、適切な競合アッセイを用いて決定されるように、HER2との結合についてモノクローナル抗体ペルツズマブ(Perjeta(登録商標))と競合しない。更なる実施形態では、本発明の放射標識V
HH配列又はその機能的断片は、HER2上のPerjeta(登録商標) (ペルツズマブ)結合部位とは異なるHER2上の結合部位を特異的に指向し、より具体的には、本発明の放射標識V
HH配列は、HER2のドメインIIとは異なる(すなわちそれではない)HER2上の結合部位を特異的に指向する。
【0098】
ある種の実施形態では、本発明の放射標識V
HH配列又はその機能的断片は、適切な競合アッセイを用いて決定されるように、HER2との結合についてモノクローナル抗体トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))及びモノクローナル抗体ペルツズマブ (Perjeta(登録商標))と競合しない。更なる実施形態では、本発明の放射標識V
HH配列又はその機能的断片は、HER2上のトラスツズマブ(Herceptin(登録商標))及びペルツズマブ(Perjeta(登録商標))結合部位とは異なるHER2上の結合部位を特異的に指向する。特定の実施形態では、本発明の放射標識V
HH配列は、HER2のドメインIV、より具体的にはHER2のドメインIVのC末端及びHER2のドメインIIとは異なる(すなわちそれらではない)HER2上の結合部位を特異的に指向する。
抗原ターゲティング(例えばHER2-ターゲティング)放射標識V
HH又はその機能的断片が結合剤、例えば同じ抗原を標的にするモノクローナル抗体と競合するか否かを決定するための適切な競合アッセイは、限定されないが、インビボ競合アッセイであってよい。インビボ競合アッセイでは、放射標識V
HH又はその機能的断片の体内分布を、放射標識V
HH又はその機能的断片のみを投与した試験動物と、放射標識V
HH又はその機能的断片の投与前に結合剤で前処理した試験動物とにおいて比較し、実質的に同じ体内分布は、放射標識V
HH又はその機能的断片が標的抗原との結合について結合剤と競合しないことを示す。
【0099】
[標的抗原の形態]
本明細書の開示に基づいて、医学的、すなわち予防及び/又は治療用途のために、本明細書で開示する重鎖可変ドメインは、原則的に、幾つかの異なる形態の腫瘍特異的抗原又は癌細胞特異的抗原を指向するか又はそれと特異的に結合することが認識される。本明細書で開示するV
HH又はその機能的断片は、それらの腫瘍抗原又は癌抗原の天然に存在する又は合成のアナログ、バリアント、変異体、対立遺伝子、部分及び断片と結合することも期待される。より具体的には、本明細書で開示する重鎖可変ドメインは、これらのV
HH又はその機能的断片が結合する天然の腫瘍又は癌抗原の結合部位、部分又はドメインを(まだ)含む腫瘍又は癌抗原のアナログ、バリアント、変異体、対立遺伝子、部分及び断片と少なくとも結合することが期待される。
HER2を特異的に指向するV
HH又はその機能的断片を本発明が提供する特定の実施形態では、本明細書で開示するV
HHが単量体形態のHER2とのみ結合できるか、又は多量体形態のHER2とのみ結合できるか、又はHER2の単量体及び多量体の両形態と結合できることが本発明の範囲内である。このような場合、ここでもまた、本明細書で開示するV
HH又はその機能的断片は、本明細書で開示するV
HHが多量体形態と結合する親和性及び特異性と同じ、又は異なる(すなわちより高い又はより低い)親和性及び/又は特異性で単量体形態のHER2と結合できる。
【0100】
HER2が他のタンパク質又はポリペプチド(例えば他のERBB受容体)と会合してタンパク質複合体(例えば多重サブユニットを有する)を形成できる場合(ヘテロ二量体化ともいう)、本明細書で開示するV
HHが非会合状態のHER2と結合できるか、又は会合状態のHER2と結合できるか、又は両方と結合できることが本発明の範囲内である。
一般的に、本明細書で開示するV
HH配列は、当業者に明らかであるように、生物学的及び/又は治療的観点から最も適切であるこれら形態のHER2(単量体、多量体及び会合形態を含む)と少なくとも結合する。
【0101】
[本明細書で開示するV
HH配列を生成(production)及び製造(manufacturing)する方法]
本発明は、V
HHドメイン配列又はその機能的断片を調製又は作製する方法、及びこれらをコードする核酸並びにこれらの重鎖可変ドメイン配列を含む宿主細胞、生成物及び組成物を生成する方法を更に提供する。このような方法の幾つかの好ましいが非限定的な例は、本明細書の更なる記載から明らかである。
当業者に明らかであるように、本明細書で開示する重鎖可変ドメイン配列を調製する特に有用な方法は、全般的に、以下の工程を含む:
(a)本明細書で開示する重鎖可変ドメイン配列をコードするヌクレオチド配列又はベクター若しくは遺伝子構築物 重鎖可変ドメイン配列をコードするヌクレオチド配列を発現する工程、
(b)所望により、重鎖可変ドメイン配列を単離及び/又は精製する工程。
【0102】
本明細書で構想する特定の実施形態では、腫瘍特異的又は癌細胞特異的重鎖可変ドメイン配列は、V
HH配列のランダムライブラリーの作製及び腫瘍特異的又は癌細胞特異的標的タンパク質と特異的に結合できるV
HH配列についてのこのライブラリーのスクリーニングを含む方法により得ることができる。
したがって、特定の実施形態では、本明細書で開示する重鎖可変ドメイン配列を調製する方法は、以下の工程を含む:
a)V
HHドメインのアミノ酸配列のセット、収集物又はライブラリーを準備する工程と、
b)前記アミノ酸配列のセット、収集物又はライブラリーを、腫瘍特異的又は癌細胞特異的標的と結合でき、及び/又は親和性を有するアミノ酸配列についてスクリーニングする工程と、
c)腫瘍特異的又は癌細胞特異的標的と結合でき、及び/又は親和性を有するアミノ酸配列を単離する工程。
【0103】
このような方法では、V
HH配列のセット、収集物又はライブラリーは、アミノ酸配列の任意の適切なセット、収集物又はライブラリーであってよい。例えば、アミノ酸配列のセット、収集物又はライブラリーは、免疫グロブリン断片配列(本明細書で記載するとおり)のセット、収集物又はライブラリー、例えば免疫グロブリン断片配列のナイーブセット、収集物又はライブラリー;免疫グロブリン断片配列の合成又は半合成セット、収集物又はライブラリー;及び/あるいは親和性成熟に供した免疫グロブリン断片配列のセット、収集物又はライブラリーであってよい。
本発明の特定の実施形態では、V
HH配列のセット、収集物又はライブラリーは、例えば、腫瘍特異的若しくは癌細胞特異的標的又はそれらに基づくか若しくはそれらに由来する適切な抗原性決定基、例えば抗原性部分、断片、領域、ドメイン、ループ若しくはその他のエピトープで適切に免疫された哺乳動物に由来する免疫グロブリン断片配列の免疫性セット、収集物又はライブラリーであってよい。ある特定の態様では、前記抗原性決定基は、細胞外部分、領域、ドメイン、ループ又はその他の細胞外エピトープであってよい。
上記の方法では、V
HH配列のセット、収集物又はライブラリーは、例えばスクリーニングを容易にするために、ファージ、ファージミド、リボソーム又は適切な微生物(例えば酵母)上に提示されていてよい。アミノ酸配列(のセット、収集物又はライブラリー)を提示及びスクリーニングするための適切な方法、技術及び宿主生物は、例えば更なる本開示に基づいて当業者に明らかである。HoogenboomによるNature Biotechnology、23、9、1105-1116 (2005)における概説も参照される。
【0104】
他の実施形態では、本明細書で開示する重鎖可変ドメイン配列を作製する方法は、少なくとも以下の工程を含む:
a)V
HHドメインアミノ酸配列を発現する細胞の収集物又は試料を準備する工程と、
b)前記細胞の収集物又は試料を、腫瘍特異的又は癌細胞特異的標的と結合でき、及び/又は親和性を有するアミノ酸配列を発現する細胞についてスクリーニングする工程と、
c)(i)前記アミノ酸配列を単離するか、又は(ii)前記アミノ酸配列をコードする核酸配列を前記細胞から単離した後に前記アミノ酸配列を発現する工程。
細胞の収集物又は試料は、例えば、B細胞の収集物又は試料であってよい。また、本方法において、細胞の試料は、腫瘍特異的若しくは癌細胞特異的標的、又はそれらに基づくか若しくはそれらに由来する適切な抗原性決定基、例えば抗原性部分、断片、領域、ドメイン、ループ若しくは他のそのエピトープで適切に免疫された哺乳動物に由来することがある。ある特定の実施形態では、抗原性決定基は、細胞外部分、領域、ドメイン、ループ又は他の細胞外エピトープであってよい。
【0105】
他の実施形態では、腫瘍特異的又は癌細胞特異的標的を指向する重鎖可変ドメイン配列を作製する方法は、少なくとも以下の工程を含む:
a)V
HHドメインアミノ酸配列をコードする核酸配列のセット、収集物又はライブラリーを準備する工程と、
b)前記核酸配列のセット、収集物又はライブラリーを、腫瘍特異的又は癌細胞特異的標的と結合でき、及び/又は親和性を有するアミノ酸配列をコードする核酸配列についてスクリーニングする工程と、
c)前記核酸配列を単離した後に、前記アミノ酸配列を発現する工程。
上記の方法では、アミノ酸配列をコードする核酸配列のセット、収集物又はライブラリーは、例えば、免疫グロブリン断片配列のナイーブセット、収集物又はライブラリーをコードする核酸配列のセット、収集物又はライブラリー;免疫グロブリン断片配列の合成又は半合成セット、収集物又はライブラリーをコードする核酸配列のセット、収集物又はライブラリー;及び/あるいは親和性成熟に供した免疫グロブリン断片配列のセット、収集物又はライブラリーをコードする核酸配列のセット、収集物又はライブラリーであってよい。
【0106】
特に、このような方法では、核酸配列のセット、収集物又はライブラリーは、腫瘍特異的又は癌細胞特異的抗原(本明細書で定義するとおり)を指向するV
HHドメインのセット、収集物又はライブラリーをコードする。
上記の方法では、ヌクレオチド配列のセット、収集物又はライブラリーは、例えばスクリーニングを容易にするために、ファージ、ファージミド、リボソーム又は適切な微生物(例えば酵母)上に提示されていてよい。アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列(のセット、収集物又はライブラリー)を提示及びスクリーニングするための適切な方法、技術及び宿主生物は、例えば更なる本開示に基づいて当業者に明らかである。HoogenboomによるNature Biotechnology、23、9、1105-1116 (2005)における概説も参照される。
本発明は、上記の方法、あるいは上記の方法の1つと更に少なくとも、前記V
HH配列のヌクレオチド配列又はアミノ酸配列を決定する工程と、前記V
HH配列をそれ自体既知の様式、例えば適切な宿主細胞若しくは宿主生物での発現又は化学合成により発現又は合成する工程とを含む方法により得ることができるか、又は得られるV
HH配列にも関する。
【0107】
[本明細書で開示するV
HHドメインの単離]
幾つかの場合では、本明細書で構想する腫瘍特異的又は癌細胞特異的標的と特異的に結合するアミノ酸配列を生成する方法は、腫瘍特異的若しくは癌細胞特異的標的についての検出可能な結合親和性又は腫瘍特異的若しくは癌細胞特異的標的に対する検出可能なインビトロ効果を有する少なくとも1つのV
HHドメインをアミノ酸配列ライブラリーから単離する工程を更に含んでよい。
これらの方法は、腫瘍特異的若しくは癌細胞特異的標的についての検出可能な結合親和性又は腫瘍特異的若しくは癌細胞特異的標的の活性に対する検出可能なインビトロ効果を有する少なくとも1つのV
HHドメインをコードする配列を増幅する工程を更に含んでよい。例えば、本明細書で記載する方法の選択工程から得られた特定のアミノ酸配列を提示するファージクローンを、宿主細菌の再感染及び成長培地でのインキュベーションにより増幅できる。
【0108】
特定の実施形態では、これらの方法は、腫瘍特異的又は癌細胞特異的標的と結合できる1又は複数のアミノ酸配列の配列を決定することを包含してよい。
アミノ酸配列のセット、収集物又はライブラリーに含まれる重鎖可変ドメイン配列が適切な細胞又はファージ又は粒子上に提示される場合、前記細胞又はファージ又は粒子から、アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を単離することが可能である。このようにして、選択されたアミノ酸配列ライブラリーメンバーのヌクレオチド配列を、日常的な配列決定法により決定できる。
更なる特定の実施形態では、本明細書で構想するV
HHドメインを生成する方法は、前記ヌクレオチド配列を、宿主生物において、適切な条件下で発現して、実際の所望のアミノ酸配列を得る工程を含む。この工程は、当業者に既知の方法により行うことができる。
更に、腫瘍特異的若しくは癌細胞特異的標的についての検出可能な結合親和性又は腫瘍特異的若しくは癌細胞特異的標的の活性に対する検出可能なインビトロ効果を有する、得られたV
HHドメイン配列は、所望によりそれらの配列を同定した後に、可溶性タンパク質構築物として合成してよい。
【0109】
例えば、上記の方法により得られ、得ることができ、又は選択されたV
HHドメイン配列は、当該技術において既知の組換え又は化学合成法を用いて合成できる。また、上記の方法により得られ、得ることができ、又は選択されたアミノ酸配列は、遺伝子工学技術により生成できる。よって、上記の方法により得られ、得ることができ、又は選択されたV
HH配列を合成する方法は、腫瘍特異的若しくは癌細胞特異的標的の活性についての検出可能な結合親和性又は腫瘍特異的若しくは癌細胞特異的標的の活性に対する検出可能なインビトロ効果を有するアミノ酸配列をコードする核酸又はベクターで宿主細胞を形質転換又は感染させることを含んでよい。したがって、腫瘍特異的若しくは癌細胞特異的標的についての検出可能な結合親和性又は腫瘍特異的若しくは癌細胞特異的標的に対する検出可能なインビトロ効果を有するV
HH配列は、組換えDNA法により作製できる。アミノ酸配列をコードするDNAは、慣習的な手順を用いて容易に合成できる。一旦調製されると、DNAを発現ベクターに導入でき、次いで該ベクターで宿主細胞、例えば大腸菌(E. coli)又は任意の適切な発現系を形質転換又はトランスフェクションでき、それにより、組換え宿主細胞及び/又はこれらの組換え宿主細胞が存在する培地中でアミノ酸配列の発現を得ることができる。
タンパク質発現及び精製の当業者に知られるように、適切な発現系を用いて発現ベクターから生成されるV
HHドメインは、精製を容易にするために、例えばHis-タグ又は他の配列タグで(典型的にはアミノ酸配列のN末端又はC末端の端にて)タグ付加されていてよい。
【0110】
核酸又はベクターの宿主細胞への形質転換又はトランスフェクションは、リン酸カルシウム-DNA共沈、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、ポリブレン媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポソーム融合、リポフェクション、プロトプラスト融合、レトロウイルス感染及び遺伝子銃を含む、当業者に既知の様々な手段により達成できる。
所望の重鎖可変ドメイン配列の発現のための適切な宿主細胞は、インビトロ又はインビボにある任意の真核又は原核細胞(例えば細菌細胞、例えば大腸菌、酵母細胞、哺乳動物細胞、鳥類細胞、両生類細胞、植物細胞、魚類細胞及び昆虫細胞)であってよい。例えば、宿主細胞は、トランスジェニック植物にあってよい。
よって、本出願は、腫瘍若しくは癌細胞特異的抗原についての検出可能な親和性又は腫瘍若しくは癌細胞特異的抗原の活性に対する検出可能なインビトロ効果を有するV
HHドメイン配列を生成する方法であって、そのようなV
HH配列をコードする核酸配列又はベクターで宿主細胞を形質転換、トランスフェクト又は感染させ、適切な条件下でそれらのアミノ酸配列を発現することを含む方法も提供する。
なお別の実施形態では、本発明は、本明細書で開示する医薬組成物を製造する(又は等価な用語である「生成する」)方法を更に提供する。
【0111】
特定の実施形態では、本発明は、少なくとも以下の工程を含む、本明細書で開示する医薬組成物を生成する方法を提供する:
- 腫瘍又は癌細胞特異的抗原と特異的に結合する少なくとも1つのV
HH又はその機能的断片を得る工程と、
- 前記V
HH又はその機能的断片を医薬組成物に処方する工程。
これらの方法の特定の実施形態では、腫瘍特異的又は癌細胞特異的抗原と特異的に結合する少なくとも1つの重鎖可変ドメイン又はその機能的断片を得る工程は:
(a)腫瘍特異的又は癌細胞特異的抗原と特異的に結合するV
HH又はその機能的断片をコードするヌクレオチド配列を発現する工程と、所望により、
(b) V
HH又はその機能的断片を単離及び/又は精製する工程と
を含む。
これらの方法の他の具体的な実施形態では、腫瘍特異的又は癌細胞特異的タンパク質標的と特異的に結合する少なくとも1つのV
HH又はその機能的断片を得る工程は:
a)V
HHドメイン配列又はV
HH配列の機能的断片のセット、収集物又はライブラリーを準備する工程と、
b)V
HHドメイン配列又はその機能的断片の配列の前記セット、収集物又はライブラリーを、腫瘍抗原と特異的に結合し、及び/又は腫瘍抗原に対する親和性を有する配列についてスクリーニングする工程と、所望により、
c)腫瘍特異的若しくは癌細胞特異的抗原と特異的に結合し、及び/又は腫瘍特異的若しくは癌細胞特異的抗原に対する親和性を有するV
HH配列又はその機能的断片の配列を単離する工程と
を含む。
【0112】
[本明細書で開示するV
HHドメインの放射標識]
予防及び治療の目的、特に、本明細書で開示するV
HHが指向する腫瘍特異的又は癌細胞特異的抗原を発現する腫瘍細胞又は癌細胞を死滅させるか又は成長若しくは増殖を少なくとも低減若しくは遅延させることを意図する癌関連疾患及び障害の予防及び/又は治療のために適切になるために、本明細書で開示するV
HHは、放射性核種と連結又は結合、例えば化学的に結合している。
癌の予防及び/又は治療のための細胞傷害性化合物を提供するために本明細書で開示するV
HH又はその機能的断片と連結できる適切な放射性核種の例は、当業者に明らかであり、例えば、いずれの限定もなく、例えば、限定されないが、アクチニウム-225、アスタチン-211、ビスマス-212、ビスマス-213、セシウム-137、クロム-51、コバルト-60、ジスプロシウム-165、エルビウム-169、フェルミウム-255、金-198、ホルミウム-166、ヨウ素-125、ヨウ素-131、イリジウム-192、鉄-59、鉛-212、ルテチウム-177、モリブデン-99、パラジウム-103、リン-32、カリウム-42、レニウム-186、レニウム-188、サマリウム-153、テクネチウム-99m、ラジウム-223 、ルテニウム-106、ナトリウム-24、ストロンチウム-89、テルビウム-149、トリウム-227、キセノン-133、イッテルビウム-169、イッテルビウム-177、イットリウム-90からなる群から選択される放射性同位体を含む、α放出放射性同位体及びβ放出放射性同位体からなる群から選択できる。
【0113】
まだ更なる具体的な実施形態では、本明細書で開示する放射標識V
HH又はその機能的断片は、ヨウ素-131で標識されている。
タンパク質に放射性核種を組み込むために様々な放射標識方策が利用可能である。放射化学者のための技術の選択は、主に、用いる放射性核種に依存する。ヨウ素の放射活性同位体は、求電子性置換により直接又はコンジュゲーションにより間接的に分子に組み込まれる能力を有する。他方、放射活性金属は、キレート化剤との錯体形成により標識されている。多くの金属性放射性核種は、キレート化剤と安定錯体を形成することによりタンパク質とのコンジュゲーションを可能にする能力を有する。ヨウ素核種での分子の放射標識は、製薬放射化学において非常に重要である。30種を超えるヨウ素の同位体が同定されているが、放射性ヨウ素化学においては4つだけが一般的に用いられている:
123I、
124I、
125I及び
131I。
【0114】
タンパク質の直接放射ヨウ素標識は、腫瘍ターゲティング又は癌細胞ターゲティング放射性医薬品の合成のための重要な方法である。一般的に、タンパク質放射ヨウ素標識の2つの基本的なアプローチがある。最も直接的なアプローチは、チロシン及びヒスチジン残基にて求電子性置換を用いる直接タンパク質標識である。放射性ヨウ素は、インサイチュで酸化されて、求電子物質
*I
+を創出する。このことは、クロラミンT、Iodogen(登録商標)及びN-ハロスクシンイミドのような酸化剤を用いて行われる。生じた求電子性物質は、アミノ酸チロシンの電子豊富な芳香環を攻撃して、σ錯体を形成する。この置換は、σ錯体を安定化する電子供与性ヒドロキシル基のためにチロシンにて行われる。タンパク質の標識は穏やかな条件下で起こる必要があるので、チロシンへのヨウ素の付着が非常に好ましい。
この方法は穏やかな条件下で行われ、これは、タンパク質の標識のために最適である。しかし、これは、タンパク質がアクセス可能なチロシン又はヒスチジン残基を含む場合にのみ可能である。
コンジュゲーションによるタンパク質の間接的なヨウ素化は、頻繁に用いられる代替法である。このアプローチでは、ヨウ素は、2つの官能基を含む補欠分子族を用いることにより組み込まれて、放射ヨウ素標識及びタンパク質への組み込みの両方が可能になる。放射ヨウ素標識のために用いられる様々な補欠分子族があるが、最も頻繁に用いられるものは、N-スクシンイミジル5-[
*1]ヨード-3-ピリジンカルボキシル([
131I]SIPC)及びN-スクシンイミジル-3-[
*I]-ヨードベンゾエート([
*I]SIB)である。両方の活性エステルは、タンパク質のアミノ基とコンジュゲートし、高いインビボ安定性を示す。
【0115】
芳香基のアシル化のための別の補欠分子族は、N-スクシンイミジル-4-グアニジノメチル-3-[I-131]ヨードベンゾエート([I-131]SGMIB)である。
本発明の特定の実施形態では、本明細書で開示する放射標識V
HHは、N-スクシンイミジル-4-グアニジノメチル-3-[I-131]ヨードベンゾエート([I-131]SGMIB)又はその適切な誘導体若しくはバリアントを用いてヨウ素-131で標識されている。
放射線療法についての詳細なプロトコールは、専門家が容易に利用可能である(Cancer Radiotherapy: Methods and Protocols (Methods in Molecular Medicine)、Huddart RA編、Human Press 2002)。当業者は、疾患の性質及び患者の素質に依存して、適当な用量及び施与スケジュールをどのように決定するかを理解している。特に、当業者は、用量制限毒性(DLT)をどのように評価し、したがって最大耐用量(MTD)をどのように決定するかを理解している。
【0116】
特定の実施形態では、本明細書で開示する放射標識V
HH又はその機能的断片は、約800 mCiより低い、例えば約150 mCiより低い、例えば約30 mCiより低い、例えば約15 mCiより低い放射活性線量にて投与される。
特定の実施形態では、放射性イムノコンジュゲートは、放射性核種に依存して約0.5 mCi/mg〜約8000 mCi/mg、例えば1mCi/mg〜約1500 mCi/mg、例えば1mCi/mg〜約300 mCi/mg、例えば1mCi/mg〜約150mCi/mgの比放射能を有し、静脈内、腹腔内又はその他の経路、例えばくも膜下腔内経路により投与できる。所望の処置の期間及び効率に依存して、本明細書で開示する放射性核種- V
HHコンジュゲートは、他の治療剤又は放射線感作薬と組み合わせて1回又は数回投与してよい。用いられる放射性イムノコンジュゲートの量は、癌の厳密な性質に依存する。投与あたりの放射活性の線量は、効果があるように十分高い必要があるが、用量制限毒性(DLT)より低い必要がある。
【0117】
[予防及び/又は治療及び/又は目的のためのV
HH配列、ポリペプチド及び医薬組成物]
尚更なる態様では、1又は複数の本明細書で開示するV
HH配列若しくはその機能的断片及び/又は本明細書で構想する核酸配列と、所望により、少なくとも1つの許容できる担体とを含む組成物(本明細書で構想する医薬組成物ともいう)が提供される。
ある種の特定の実施形態によると、本明細書で構想する組成物は、所望により、少なくとも1つの他の化合物を更に含んでよい。
特定の実施形態では、本明細書で開示する組成物は、医薬組成物である。
本明細書で構想する医薬組成物は、興味対象の腫瘍特異的又は癌細胞特異的標的分子に関連する疾患及び障害の予防及び/又は治療において用いることができる。特に、本出願は、温血動物、特に哺乳動物、より具体的にはヒトにおける予防及び/又は治療的使用に適切な1又は複数の本明細書で構想するV
HH配列又はその機能的断片を含む医薬組成物を提供する。
【0118】
1又は複数の癌関連疾患、障害又は状態の予防及び/又は治療における獣医学的目的のために用いることができる本明細書で構想する1又は複数のV
HH配列又はその機能的断片を含む医薬組成物も提供される。
処置の用量、投与経路、施与スキーム、反復及び期間は、一般的に、疾患の性質(腫瘍又は癌細胞のタイプ、グレード及びステージなど)及び患者(素質、年齢、性別など)に依存し、処置に責任を有する医学専門家により決定される。上記の開示する組み合わせの成分についての可能性のある用量に関して、処置に責任を有する医学専門家は、いずれの用量制限毒性又はその他の重篤な副作用が発生するかを注意深くモニタリングし、これらを管理するための必要な工程を行う。
一般的に、薬学的使用のために、本明細書で構想するV
HH配列又はその機能的断片は、本明細書で構想する少なくとも1つのV
HH配列又はポリペプチドと、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤若しくは補形剤及び/又は補助剤と、所望により、1若しくは複数の更なる医学的に活性なポリペプチド及び/又は化合物とを含む医薬調製物又は組成物として処方できる。このような製剤は、腹腔内、静脈内又は他の投与、例えばくも膜下腔内投与のために適切であってよい。 よって、本明細書で構想するV
HH配列又はその機能的断片及び/あるいはこれらを含む組成物は、例えば、腫瘍又は癌細胞の場所、タイプ及び起源に依存して全身、局所又は興味対象の組織若しくは器官に局部投与でき、好ましくは、用いられる具体的な医薬製剤又は組成物に依存して、腹腔内、静脈内又はくも膜下腔内投与できる。臨床家は、適切な投与経路及びそのような投与において用いるための適切な医薬製剤を選択できる。
【0119】
注射又は注入のために適切な医薬剤形は、滅菌水性液剤若しくは分散剤又は所望によりリポソームにカプセル化した、滅菌注入若しくは注射溶液若しくは分散液の即座の調製に適合した活性成分を含む滅菌散剤を含み得る。全ての場合では、最終的な剤形は、滅菌され、流体で製造及び貯蔵の条件下で安定でなければならない。液体担体又はビヒクルは、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、植物油、非毒性グリセリルエステル及びその適切な混合物を含む、溶剤又は液体分散媒であり得る。
予防及び/又は処置における使用のために必要な本明細書で構想するV
HH配列又はその機能的断片及びポリペプチドの量は、特定のV
HH配列又はその機能的断片及びポリペプチドだけでなく、投与の経路、処置される状態の性質並びに患者の年齢及び状態にも応じて変動でき、最終的に、付帯する医師又は臨床家の考え次第である。本明細書で構想するV
HH配列又はその機能的断片及びポリペプチドの投与量は、また、標的細胞、腫瘍、組織、グラフト又は器官に依存して変動できる。
【0120】
特に、本明細書で構想するV
HH配列又はその機能的断片及びポリペプチドは、なかでも状態の重篤度及び処置される患者に基づいて医療従事者が決定する量で投与される。典型的に、各疾患適応症について、最適用量は、1日あたり体重1kgあたりの投与量、継続的であるか(例えば注入による)、単回1日用量又は1日の間に複数の分割用量としてであるかを明らかにすることにより決定される。臨床家は、一般的に、本明細書で述べる因子に依存して、適切な1日用量を決定できる。具体的な場合では、臨床家は、例えば上記の因子及び臨床家の経験的判断に基づいて、これらの量から逸脱することを選択し得ることも明らかである。
本明細書で構想するV
HH及びV
HH又はその機能的断片を含むポリペプチドの有用な投与量は、それらのインビトロ活性及び/又は動物モデルにおいてインビボ活性を決定することにより決定できる。
ある種の実施形態では、本発明は、投与を必要とする対象に、10μg〜1000μgの間のV
HHの用量で放射標識V
HH又はその機能的断片を投与することによる癌の予防及び/又は治療に用いるための本明細書で開示する放射標識V
HH又はその機能的断片を提供する。更なる特定の実施形態では、本発明は、投与を必要とする対象に、10μg〜500μgの間の放射標識V
HH、例えば特に10〜100μgの間の放射標識V
HH、特に20〜70μgの間の放射標識V
HH、例えば40〜60μgの間の放射標識V
HH、より好ましくは、限定されないが、約50μgの放射標識V
HHの用量で放射標識V
HHを投与することによる癌の予防及び/又は治療に用いるための本明細書で開示する放射標識V
HH又はその機能的断片を提供する。
【0121】
よって、ある種の実施形態では、癌の予防及び/又は治療は、投与を必要とする対象に、本明細書で開示する放射標識V
HHを投与することにより達成され、V
HH又はその機能的断片が、対象における0.001〜0.05 mSv/MBqの間の算出平均実効線量、例えば、限定されないが、0.02〜0.05 mSv/MBqの間、より好ましくは0.02〜0.04 mSv/MBqの間、最も好ましくは0.03〜0.05 mSv/MBqの間の算出平均実効線量を有することを特徴とする。
したがって、投与あたり患者に与えられる放射活性の線量は、効果的であるように十分高い必要があるが、用量制限毒性(DLT)未満でなければならない。例えば131-ヨウ素での放射標識抗体を含む医薬組成物について、最大耐量(MTD)は、治療背景を超えないように決定しなければならない。
本明細書で構想するポリペプチド及び/又はそれを含む組成物は、防止又は処置される疾患又は障害の予防及び/又は治療に適切な処置の計画に従って投与される。臨床家は、一般的に、適切な処置計画を決定できる。一般的に、処置計画は、1又は複数の薬学的に有効な量又は用量で、1又は複数のV
HH配列又はポリペプチドあるいは1又は複数のそれを含む組成物を投与することを含む。
【0122】
所望の用量は、簡便に、単回用量又は適切な間隔で投与される分割用量(これは、更に分けて投与(sub-dosed)できる)にあってよい。投与計画は、長期(すなわち、少なくとも2週間、例えば数ヶ月又は数年)又は毎日の処置を含み得る。特に、投与計画は、1日1回から1ヶ月に1回、例えば1日1回〜2週間に1回の間、例えば、限定されないが、1週間に1回で変動できる。よって、処置の所望の期間及び効果に依存して、本明細書で開示するV
HH医薬組成物は、1回又は数回、間欠的、例えば数日、数週間又は数ヶ月にわたって異なる投与量で毎日投与してよい。本明細書で開示するV
HH組成物の施与量は、具体的な癌疾患の性質に依存する。多数回投与が好ましい。しかし、放射標識物質は、典型的に、4〜24週間離れた、好ましくは12〜20週間離れた間隔で投与される。当業者は、しかし、投与を2回以上(これは、互いにすぐ後に施与されてよい)又は例えば1日〜1週間の範囲の他の所定の間隔での施与に分けることをどのように選択するかを理解している。
特に、本明細書で構想するV
HH配列又はその機能的断片及びポリペプチドは、本明細書で記載する疾患及び障害の予防及び/又は治療のために用いられるか又は用いることができ、その結果、相乗効果が得られることがあるか又は得られないことがある他の薬学的に活性な化合物又は成分と組み合わせて投与してよい。そのような化合物及び成分並びにそれらを投与する経路、方法及び医薬製剤又は組成物の例は、臨床家に明らかである。
【0123】
本発明の関係において、「組み合わせて」、「併用療法で」又は「併用処置で」は、本明細書で開示する放射標識V
HH配列又は本明細書で開示する放射標識V
HH配列を含むポリペプチドが、計画中の患者に1又は複数の他の薬学的に活性な化合物又は成分と一緒に施与され、患者は、そのような組み合わせの有益な効果から利益を受け得ることを意味する。特に、両方の処置は、時間的に近接して患者に施与される。好ましい実施形態では、両方の処置は、4週間(28日間)以内に患者に施与される。より好ましくは、両方の処置は、2週間(14日間)以内、より好ましくは1週間(7日間)以内に施与される。好ましい実施形態では、2つの処置は、2又は3日以内に施与される。別の好ましい実施形態では、2つの処置は、同じ日、すなわち24時間以内に施与される。別の実施形態では、2つの処置は、4時間又は2時間又は1時間以内に施与される。別の実施形態では、2つの処置は、並行して、すなわち同時に施与されるか、又は2つの投与は、時間的にオーバーラップしている。
具体的な非限定的な実施形態では、本明細書で開示する放射標識V
HH配列若しくはその機能的断片又は本明細書で開示する放射標識V
HH配列を含むポリペプチドは、1又は複数の治療用抗体又は治療用抗体断片と一緒に施与される。よって、これらの具体的な非限定的な実施形態では、本明細書で開示する放射標識V
HH配列若しくはその機能的断片放射標識V
HH配列若しくはその機能的断片を含むポリペプチドを用いる放射免疫療法は、1又は複数の治療用抗体又は治療用抗体断片を用いる通常の免疫療法と組み合わせる。更なる特定の実施形態では、本明細書で開示する放射標識V
HH配列若しくはその機能的断片又は放射標識V
HH配列を含むポリペプチドは、1又は複数の治療用抗体又は治療用抗体断片との併用療法又は併用処置法、例えば、限定されないが、トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))及び/又はペルツズマブ(Perjeta(登録商標))との併用処置において用いられる。
【0124】
例えば、本明細書で開示する放射標識V
HH配列若しくはその機能的断片又は放射標識V
HH配列を含むポリペプチドと、1又は複数の治療用抗体又は治療用抗体断片、例えば、限定されないが、トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))及び/又はペルツズマブ(Perjeta(登録商標))とは、同時に注入してよいか、又は注入は、時間的にオーバーラップしてよい。2つの薬物を同時に投与するならば、これらは、1つの単一医薬調製物に一緒に処方できるか、又は例えば1つの単一注入溶液に溶解若しくは希釈することにより2つの異なる医薬調製物から投与の直前に一緒に混合できる。別の実施形態では、2つの薬物は、別々に、すなわち2つの独立した医薬組成物として投与される。好ましい一実施形態では、2つの処置の投与は、患者の体内の腫瘍細胞が有効量の細胞傷害性薬物及び放射線に同時に曝露されるような方法である。別の好ましい実施形態では、本明細書で開示する放射標識V
HH配列若しくはその機能的断片又は放射標識V
HH配列若しくはその機能的断片を含むポリペプチドと、1又は複数の治療用抗体又は治療用抗体断片、例えば、限定されないが、トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))及び/又はペルツズマブ(Perjeta(登録商標)の両方の有効量は、腫瘍の部位に同時に存在する。本発明は、定義する組み合わせに加えて投与される更なる薬剤の使用も受け入れる。これは、例えば、1又は複数の更なる化学療法剤であり得る。これは、与えられる他の薬物のいずれかの望ましくない副作用を防止、抑制又は改善するために用いられる1又は複数の薬剤でもあり得る。例えば、白血球の増殖を刺激するサイトカインは、白血球減少症又は好中球減少症の影響を改善するために用いてよい。
【0125】
更なる態様によると、興味対象の腫瘍特異的又は癌細胞特異的標的分子と特異的に結合する本明細書で構想するV
HH配列若しくはその機能的断片又はポリペプチドの使用は、前記腫瘍特異的又は癌細胞特異的標的分子が関与する少なくとも1つの癌関連疾患及び/又は障害の予防及び/又は治療のための医薬品の調製のために提供される。したがって、本出願は、腫瘍特異的又は癌細胞特異的標的分子が関与する少なくとも1つの癌関連疾患及び/又は障害の予防及び/又は治療における使用のための、腫瘍特異的又は癌細胞特異的標的、例えば、限定されないが、HER2と特異的に結合するV
HH配列又はその機能的断片、ポリペプチド及び医薬組成物を提供する。特定の実施形態では、投与を必要とする対象に、薬学的に活性な量の本明細書で構想する1又は複数のV
HH配列又はその機能的断片、ポリペプチド及び/あるいは医薬組成物を投与することを含む、少なくとも1つの癌関連疾患及び/又は障害の予防及び/又は治療方法も提供される。
本明細書で記載するポリペプチドで処置される対象又は患者は、任意の温血動物であってよいが、具体的に、哺乳動物、より具体的に癌関連疾患及び/若しくは障害に罹患しているか又はその危険性があるヒトである。
本明細書で記載するV
HH配列又はその機能的断片及びポリペプチド並びにそれを含む組成物の有効性は、関与する具体的な疾患又は障害に依存して、任意の適切なインビトロアッセイ、細胞ベースのアッセイ、インビボアッセイ及び/又はそれ自体既知の動物モデル、あるいはそれらの任意の組み合わせを用いて試験できる。適切なアッセイ及び動物モデルは、当業者に明らかである。
【0126】
関与する腫瘍特異的又は癌細胞特異的標的に依存して、当業者は、一般的に、適切なインビトロアッセイ、細胞アッセイ又は動物モデルを選択して、本明細書で記載するV
HH配列又はその機能的断片及びポリペプチドを、腫瘍特異的又は癌細胞特異的分子との結合について、そして1又は複数の癌関連疾患及び障害の関係における治療及び/又は予防効果について試験できる。
したがって、医薬品として用いるために、より具体的には癌に関連する疾患又は障害の処置、特に固形腫瘍の予防及び/又は治療方法に用いるための、少なくとも1つの放射標識V
HH配列又はその機能的断片を含むか又はそれから本質的になるポリペプチドが提供される。
特定の実施形態では、本明細書で構想するV
HH配列又はその機能的断片及びポリペプチドは、癌及び腫瘍性の状態を処置及び/又は防止するために用いられる。癌又は腫瘍性の状態の例は、限定されないが、線維肉腫、筋肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮腫(endotheliosarcoma)、リンパ管肉腫、リンパ管内皮腫(lymphangioendotheliosarcoma)、滑膜腫、中皮腫、ユーイング肉腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、胃癌、食道癌、直腸癌、膵癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮癌、頭頚部の癌、皮膚癌、脳癌、有棘細胞癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性肺癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頚癌、精巣癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、脳室上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫瘍、乏突起神経膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽腫、網膜芽細胞腫、白血病、リンパ腫又はカポジ肉腫を含む。
【0127】
本明細書で構想するV
HH配列及びポリペプチドは、様々な増殖性障害を処置するために用いることもできる。増殖性障害の例は、造血性腫瘍性障害及び細胞性増殖性及び/又は分化性障害、例えば、限定されないが、上皮肥厚、硬化性腺疾患及び小管乳頭腫(small duct papillomas);腫瘍、例えば間質腫瘍、例えば線維腺腫、葉状腫瘍及び肉腫及び上皮腫瘍、例えば大管乳頭腫(large duct papilloma);腺管上皮内癌(パジェット病を含む)及び小葉上皮内癌を含む上皮内(非浸潤性)癌、並びに限定されないが、浸潤性乳管癌、浸潤性小葉癌、髄様癌、膠質(colloid)(粘液性)癌、管状癌及び浸潤性乳頭癌を含む浸潤性(invasive)(浸潤性(infiltrating))癌を含む乳房の癌、様々な悪性新生物、女性化乳房性(gynecomastia)癌、腫瘍随伴症候群、細気管支肺胞上皮癌を含む気管支原性癌、神経内分泌癌、例えば気管支カルチノイド、様々な腫瘍及び転移性腫瘍;炎症性胸水貯留、非炎症性胸水貯留、気胸及び孤在性線維性腫瘍(胸膜線維腫)を含む胸膜腫瘍を含む胸膜の病変、悪性中皮腫、非腫瘍性ポリープ、腺腫、家族性症候群、結腸直腸発癌、結腸直腸癌、カルチノイド腫瘍、結節性肥厚、腺腫、並びに肝臓の原発癌及び転移性腫瘍を含む悪性腫瘍、体腔上皮の腫瘍、漿液性腫瘍、粘液性腫瘍、類内膜腫瘍、明細胞腺癌、嚢胞腺線維腫、ブレンナー腫瘍、表面上皮腫瘍;生殖細胞腫瘍、例えば成熟(良性)奇形腫、単胚葉性奇形腫(monodermal teratomas)、未熟悪性奇形腫、未分化胚細胞腫、内胚葉洞腫瘍、絨毛癌;性索間質腫瘍、例えば顆粒膜莢膜細胞腫瘍、莢膜細胞腫線維腫(thecomafibromas)、アンドロブラストーマ、ヒル細胞(hill cell)腫瘍及び性腺芽腫;並びに転移性腫瘍、例えばクルケンベルグ腫瘍を含む。
上記の開示を、以下の非限定的な実施例及び図面により更に説明する。図面において、以下を示す。