【実施例】
【0021】
図1は、本発明の実施例の制御装置10を備えた工作機械100の概略を示す図である。
工作機械100は、主軸110と、切削工具台130Aとを備えている。
主軸110の先端にはチャック120が設けられている。
主軸110は、ワーク保持手段としてチャック120を介してワークWを保持する。
主軸110は、図示しない主軸モータの動力によって回転駆動されるように主軸台110Aに支持されている。
前記主軸モータとして主軸台110A内において、主軸台110Aと主軸110との間に形成される従来公知のビルトインモータ等が考えられる。
【0022】
主軸台110Aは、工作機械100のベッド側に、Z軸方向送り機構160によって主軸110の軸線方向となるZ軸方向に移動自在に搭載されている。
主軸110は、主軸台110Aを介してZ軸方向送り機構160によって、前記Z軸方向に移動する。
Z軸方向送り機構160は、主軸110をZ軸方向に移動させる主軸移動機構を構成している。
【0023】
Z軸方向送り機構160は、前記ベッド等のZ軸方向送り機構160の固定側と一体的なベース161と、ベース161に設けられたZ軸方向に延びるZ軸方向ガイドレール162とを備えている。
Z軸方向ガイドレール162に、Z軸方向ガイド164を介してZ軸方向送りテーブル163がスライド自在に支持されている。
Z軸方向送りテーブル163側にリニアサーボモータ165の可動子165aが設けられ、ベース161側にリニアサーボモータ165の固定子165bが設けられている。
【0024】
Z軸方向送りテーブル163に主軸台110Aが搭載され、リニアサーボモータ165の駆動によってZ軸方向送りテーブル163が、Z軸方向に移動駆動される。
Z軸方向送りテーブル163の移動によって主軸台110AがZ軸方向に移動し、主軸110のZ軸方向への移動が行われる。
【0025】
切削工具台130Aは、ワークWを加工するバイト等の切削工具130が装着され、切削工具130を保持する刃物台を構成している。
X軸方向送り機構150が、工作機械100のベッド側に設けられている。
【0026】
X軸方向送り機構150は、前記ベッド側と一体的なベース151と、Z軸方向に対して上下方向で直交するX軸方向に延びるX軸方向ガイドレール152とを備えている。
X軸方向ガイドレール152はベース151に固定され、X軸方向ガイドレール152には、X軸方向送りテーブル153がX軸方向ガイド154を介してスライド自在に支持されている。
X軸方向送りテーブル153には、切削工具台130Aが搭載される。
【0027】
リニアサーボモータ155は可動子155aおよび固定子155bを有し、可動子155aはX軸方向送りテーブル153に設けられ、固定子155bはベース151に設けられている。
X軸方向送りテーブル153がリニアサーボモータ155の駆動によってX軸方向ガイドレール152に沿ってX軸方向に移動すると、切削工具台130AがX軸方向に移動し、切削工具130がX軸方向に移動する。
なお、Y軸方向送り機構を設けてもよい。
Y軸方向は、図示のZ軸方向およびX軸方向に直交する方向である。
前記Y軸方向送り機構は、X軸方向送り機構150と同様の構造とすることができる。
【0028】
X軸方向送り機構150をY軸方向送り機構を介してベッドに搭載することにより、Y軸方向送りテーブルをリニアサーボモータの駆動によってY軸方向に移動させ、切削工具台130AをX軸方向に加えてY軸方向に移動させ、切削工具130をX軸方向およびY軸方向に移動させることができる。
【0029】
Y軸方向送り機構を、X軸方向送り機構150を介してベッドに搭載し、前記Y軸方向送りテーブルに切削工具台130Aを搭載してもよい。
【0030】
前記刃物台移動機構(X軸方向送り機構150とY軸方向送り機構)と前記主軸移動機構(Z軸方向送り機構160)とが協動し、X軸方向送り機構150とY軸方向送り機構によるX軸方向とY軸方向への切削工具台130Aの移動と、Z軸方向送り機構160による主軸台110A(主軸110)のZ軸方向への移動によって、切削工具台130Aに装着されている切削工具130は、ワークWに対して相対的に任意の加工送り方向に送られる。
主軸110の回転、X軸方向送り機構150やZ軸方向送り機構160等の移動は、制御装置10で制御される。
【0031】
主軸移動機構と前記刃物台移動機構とから構成される送り手段により、主軸110と切削工具台130Aとを相対的に移動させ、切削工具130を、ワークWに対して相対的に任意の加工送り方向に送ることによって、
図2に示すように、ワークWは、前記切削工具130により任意の形状に切削加工される。
【0032】
なお本実施形態においては、主軸台110Aと切削工具台130Aとの両方を移動するように構成しているが、主軸台110Aを工作機械100のベッド側に移動しないように固定し、刃物台移動機構を、切削工具台130AをX軸方向、Y軸方向、Z軸方向に移動させるように構成してもよい。
この場合、前記送り手段が、切削工具台130AをX軸方向、Y軸方向、Z軸方向に移動させる刃物台移動機構から構成され、固定的に位置決めされて回転駆動される主軸110に対して、切削工具台130Aを移動させることによって、前記切削工具130をワークWに対して加工送り動作させることができる。
【0033】
また切削工具台130Aを工作機械100のベッド側に移動しないように固定し、主軸移動機構を、主軸台110AをX軸方向、Y軸方向、Z軸方向に移動させるように構成してもよい。
この場合、前記送り手段が、主軸台110AをX軸方向、Y軸方向、Z軸方向に移動させる主軸台移動機構から構成され、固定的に位置決めされる切削工具台130Aに対して、主軸台110Aを移動させることによって、前記切削工具130をワークWに対して加工送り動作させることができる。
【0034】
また、本実施形態においては、X軸方向送り機構150、Y軸方向送り機構、Z軸方向送り機構160は、リニアサーボモータによって駆動されるように構成されているが、従来公知のボールネジとサーボモータとによる駆動等とすることもできる。
本実施形態においては、ワークWと切削工具130とを相対的に回転させる回転手段が、前記ビルトインモータ等の前記主軸モータによって構成され、ワークWと切削工具130との相対回転は、主軸110の回転駆動によって行われる。
また、本実施例では、切削工具130に対してワークWを回転させる構成としたが、ワークWに対して切削工具130を回転させる構成としてもよい。
この場合切削工具130としてドリル等の回転工具が考えられる。
【0035】
主軸110の回転、Z軸方向送り機構160、X軸方向送り機構150、Y軸方向送り機構は、制御装置10が有する制御部11を制御手段として、制御部11によって駆動制御される。
制御部11は、各送り機構を振動手段として、各々対応する移動方向に沿って往復振動させながら、主軸台110A又は切削工具台130Aを各々の方向に移動させるように制御するように予め設定されている。
【0036】
各送り機構は、制御部11の制御により、
図3に示すように、主軸110又は切削工具台130Aを、1回の往復振動において、所定の前進量だけ前進(往動)移動してから所定の後退量だけ後退(復動)移動し、その差の進行量だけ各移動方向に移動させ、協動してワークWに対して前記切削工具130を前記加工送り方向に送る。
【0037】
工作機械100は、Z軸方向送り機構160、X軸方向送り機構150、Y軸方向送り機構により、切削工具130が前記加工送り方向に沿った往復振動しながら、主軸1回転分、すなわち、主軸位相0度から360度まで変化したときの前記進行量の合計を送り量として、加工送り方向に送られることによって、ワークWの加工を行う。
【0038】
ワークWが回転した状態で、主軸台110A(主軸110)又は切削工具台130A(切削工具130)が、往復振動しながら移動し、切削工具130によって、ワークWを所定の形状に外形切削加工する場合、ワークWの周面は、
図4に示すように、正弦曲線状に切削される。
なお正弦曲線状の波形の谷を通過する仮想線(1点鎖線)において、主軸位相0度から360度まで変化したときの位置の変化量が、前記送り量を示す。
図4に示されるように、ワークWの1回転当たりの主軸台110A(主軸110)又は切削工具台130Aの振動数Nが、3.5回(振動数N=3.5)を例に説明する。
【0039】
この場合、主軸110のn回転目(nは1以上の整数)とn+1回転目の切削工具130により旋削されるワークW周面形状の位相が、主軸位相方向(グラフの横軸方向)でずれる。
このためn+1回転目の前記位相の谷の最低点(切削工具130によって送り方向に最も切削された点となる点線波形グラフの山の頂点)の位置が、n回転目の前記位相の谷の最低点(実線波形グラフの山の頂点)の位置に対して、主軸位相方向でずれる。
【0040】
これにより、切削工具130の往動時の切削加工部分と、復動時の切削加工部分とが一部重複し、ワークW周面のn+1回転目の切削部分に、n回転目に切削済みの部分が含まれ、この部分では、切削中に切削工具130が、ワークWに対して何ら切削を行わずに空削りする所謂、空振り動作が生じる。
切削加工時にワークWから生じる切屑は、前記空振り動作によって順次分断される。
工作機械100は、切削工具130の切削送り方向に沿った前記往復振動によって切屑を分断しながら、ワークWの外形切削加工等を円滑に行うことができる。
【0041】
切削工具130の前記往復振動によって切屑を順次分断する場合、ワークW周面のn+1回転目の切削部分に、n回転目に切削済みの部分が含まれていればよい。
言い換えると、ワーク周面のn+1回転目における復動時の切削工具130の軌跡が、ワーク周面のn回転目における切削工具130の軌跡まで到達すればよい。
n+1回転目とn回転目のワークWにおける切削工具130により旋削される形状の位相が一致(同位相)とならなければよく、必ずしも180度反転させる必要はない。
【0042】
例えば振動数Nは、1.1や1.25、2.6、3.75等とすることができる。
ワークWの1回転で1回より少ない振動(0<振動数N<1.0)を行うように設定することもできる。
この場合、1振動に対して1回転以上主軸110が回転する。
振動数Nは、1振動当たりの主軸110の回転数として設定することもできる。
【0043】
工作機械100において、制御部11による動作指令は、所定の指令周期で行われる。
主軸台110A(主軸110)又は切削工具台130A(切削工具130)の往復振動は、前記指令周期に基づく所定の周波数で動作が可能となる。
例えば、制御部11によって1秒間に250回の指令を送ることが可能な工作機械100の場合、制御部11による動作指令は、1÷250=4(ms)周期(基準周期)で行われる。
【0044】
前記指令周期は前記基準周期に基づいて定まり、一般的には前記基準周期の整数倍となる。
前記指令周期の値に応じた周波数で往復振動を実行させることが可能となる。
図5に示されるように、例えば、前記基準周期(4(ms))の4倍の16(ms)を指令周期とすると、16(ms)毎に往動と復動を実行させることになり、1÷(0.004×4)=62.5(Hz)で主軸台110A(主軸110)又は切削工具台130A(切削工具130)を往復振動させることができる。
【0045】
その他、1÷(0.004×5)=50(Hz),1÷(0.004×6)=41.666(Hz),1÷(0.004×7)=35.714(Hz),1÷(0.004×8)=31.25(Hz)等の周波数でのみ、主軸台110A(主軸110)又は切削工具台130A(切削工具130)を往復振動させることができる。
【0046】
主軸台110A(主軸110)又は切削工具台130A(切削工具130)の往復振動の周波数(振動周波数)f(Hz)は、上記周波数から選択される値に定まる。
なお制御装置10(制御部11)によっては、前記基準周期(4ms)の整数倍以外の倍数で指令周期を設定することができる。
この場合、この指令周期に応じた周波数を振動周波数とすることができる。
【0047】
主軸台110A(主軸110)又は切削工具台130A(切削工具130)を往復振動させる場合、主軸110の回転数をS(r/min)とすると、振動数Nは、N=f×60/Sと定まる。
図6に示すように、回転数Sと振動数Nとは、振動周波数fを定数として反比例する。
主軸110は、振動周波数fを高くとるほど、また振動数Nを小さくするほど高速回転することができる。
【0048】
本実施例の工作機械100では、回転数Sと振動数Nと振動周波数fとをパラメータとし、ユーザによって、3つのパラメータうちの回転数Sと振動数Nの2つを、数値設定部12等を介して制御部11に設定することができるように構成されている。
回転数S又は振動数Nの制御部11への設定は、回転数S又は振動数Nの値を、制御部11にパラメータ値として入力することができる他、例えば回転数Sや振動数Nの値を加工プログラムに記載して設定したり、プログラムブロック(プログラムの1行)において振動数Nを引数として設定したりすることができる。
【0049】
特に振動数Nを加工プログラムのプログラムブロックにおいて引数として設定することができるように、設定手段を構成すると、一般的に加工プログラム上に記載される主軸110の回転数Sと、プログラムブロックでの引数として記載される振動数Nとによって、加工プログラムから容易に回転数Sと振動数Nとをユーザが設定することができる。
なお、前記設定手段による設定は、プログラムによるものでもよいし、ユーザが数値設定部12を介して設定するものでもよい。
【0050】
制御部11は、設定された回転数Sと振動数Nとに基づき、この回転数Sで主軸110を回転させ、この振動数Nで切削工具130が前記加工送り方向に沿って往復振動しながら加工送り方向に送られるように、主軸台110Aまたは切削工具台130Aを往復振動しながら移動させるように制御する。
【0051】
ただし回転数Sと振動数Nは前述のように振動周波数fに起因して定まるため、制御部11は、設定された回転数Sと振動数Nとを振動周波数fに基づいて補正する補正手段を備える。
補正手段は、振動周波数fを、N=60f/Sに基づいて、設定された振動数Nと回転数Sから算出される値に近い値を持つものに設定し、設定された振動周波数fによって、振動数Nと回転数Sとをそれぞれ設定された値に近い値に補正するように構成することができる。
【0052】
例えば、ユーザによって、S=3000(r/min)、N=1.5と設定されたとする。
この場合、S=3000(r/min)、N=1.5から振動周波数の値が75(Hz)となるため、補正手段は、例えば、振動周波数f=62.5(Hz)に設定する。
補正手段は、設定された振動周波数(62.5Hz)に基づき、例えば、回転数S(3000(r/min))を維持して振動数N=1.25と補正したり、振動数N(1.5)を維持して回転数S=2500(r/min)と補正したりする。
また振動周波数f=50(Hz)に設定し、回転数S=2400(r/min)、振動数N=1.25と両方を補正することもできる。
【0053】
この際、加工条件等に応じて、回転数Sや振動数Nのいずれかを優先して補正したり、両方を補正したりして、補正条件を変更することもできる。
なお前記設定手段によって使用する振動周波数fを予めユーザ側において設定し、設定された振動周波数fに応じて、振動数Nや回転数Sを補正するように構成することもできる。
【0054】
また、3つのパラメータうち振動数Nや回転数Sを、数値設定部12等を介して制御部11に設定するように構成したが、例えば、予め振動数Nを所定の値に固定して、入力不要にしておき、3つのパラメータうち1つとして回転数Sのみをユーザが設定して、この回転数Sと振動数Nとに応じて振動周波数fを設定し、回転数S又は振動数Nを補正するようにしてもよい。
なお、3つのパラメータうち1つとして回転数Sのみをユーザが設定する場合、制御部11を、設定された回転数Sに対して各振動周波数に対応する振動数を各振動周波数毎に算出し、設定された回転数Sを補正することなく、切削工具130の前記往復振動によって切屑が分断されるような振動数Nを設定するように構成することもできる。
この場合、制御部11は、ユーザによって設定された回転数Sに対して、制御部11が設定した振動数Nとなる振動周波数fで、切削工具130の前記往復振動を実行する。ただし、ユーザによって設定された回転数Sや動作可能な振動周波数によって、前記のように切屑が分断されるような振動数Nの設定が困難な場合は、制御部11によって、前記往復振動の振幅を、切屑が分断されるような値に調節設定するように構成することもできる。
【0055】
図7に示すように、制御装置10には、ワークWを回転させる主軸であると仮想的にみなす仮想主軸13が、ソフトウエア的に構築して制御部11に設けられている。
制御部11は、前記補正手段として機能する際、予め定められた設定に応じて、主軸110に代えて、仮想主軸13の回転数、仮想主軸13の1回転当たりの往復振動の振動数を補正するように構成されている。
例えば、主軸110の回転数Sの値を加工プログラムに記載して設定し、振動数Nの値を、プログラムブロックにおいて引数として設定することによって、回転数S又は振動数Nを制御部11に対して設定することができる場合、仮想主軸13に対する回転数の設定であることを制御部11に明示的に指令する加工プログラムに記載可能な仮想主軸回転開始コードを設けることができる。
【0056】
仮想主軸回転開始コードを加工プログラム内に記載することによって、制御部11が、加工プログラムに記載される回転数の値が仮想主軸13に対する回転数であるとみなし、仮想主軸13の回転数又は仮想主軸13の1回転当たりの往復振動の振動数を補正する補正手段として機能するように設定することができる。
つまり制御部11は、仮想主軸回転開始コードの読み込みによって、前記設定手段により設定される回転数を仮想主軸13に対する回転数とみなし、ユーザが設定した仮想主軸13の回転数又は仮想主軸13の1回転当たりの往復振動の振動数に応じて、該振動数を補正して設定し、各送り機構を振動手段として、各々対応する移動方向に沿って往復振動させながら、主軸台110A又は切削工具台130Aを各々の方向に移動させ、切削工具130をワークWに対して往復振動を伴いながら加工送り動作させる。
【0057】
上記のように主軸110に代えて仮想主軸13を対象として切削工具130をワークWに対して往復振動を伴いながら加工送り動作させることにより、例えば主軸110が回転停止した状態であっても、切削工具130をワークWに対して往復振動を伴いながら加工送り動作させることが可能となる。
【0058】
工作機械100には、例えば、加工プログラムによる直接制御の範囲外にある外部スピンドル20と、外部スピンドル20に接続されて外部スピンドル20の回転数を制御する外部スピンドルドライブユニット30とを用いることができる。
工作機械100の構成に含まれている主軸110に割り当てられた主軸番号、例えばS1以外の主軸番号、例えばS101を前記仮想主軸13の主軸番号として割り当てることによって、仮想主軸13に対して所定の回転数を設定することができる。
例えば
図8に示すように、S101=3970として、仮想主軸13の回転数の値として、3970(r/min)を設定することができる。
また前記仮想主軸回転開始コードを、例えばM403とすると、仮想主軸回転開始コードM403を仮想主軸13の回転数を設定するプログラムブロックに記載することで、制御部11は、仮想主軸13に設定された回転数と、設定手段によって設定される振動数Nとに基づいて、振動周波数fを設定し、設定された振動周波数fによって、振動数Nと回転数とをそれぞれ設定された値に近い値に補正することができる。
【0059】
振動数の設定は、切削工具130を前記加工送り方向に沿って往復振動しながら加工送り方向に送る振動切削加工の開始(振動開始)を、加工プログラムにおいてG△△△ P1の命令で指令するように制御部11を構成する場合、G△△△の命令に、Dに続く値(引数D)で制御部11に対して設定される振動数Nを指定させることができる。
【0060】
これによって、制御部11は、補正された回転数と振動数Nとに基づき、この回転数で仮想主軸13に対して回転を指示するとともに、この振動数Nで切削工具130が前記加工送り方向に沿って往復振動しながら加工送り方向に送られるように、主軸台110Aまたは切削工具台130Aを往復振動させながら移動させるように制御することができる。
ただし、仮想主軸13はソフトウエア的に構成されたものであり、制御部11が、ソフトウエア的に仮想主軸13が設定された回転数で回転しているものとみなすため、物理的な主軸110の回転は必要ない。
【0061】
このため、ユーザによる操作や、加工プログラムによる指令等で外部スピンドルドライブユニット30を介して、制御部11によって補正された回転数で外部スピンドル20を回転させることによって、主軸110が停止した状態であっても、外部スピンドル20によって前記振動切削加工を行うことができる。
また、主軸110を回転させずに補正・設定後の条件で振動手段による振動をさせた状態で、外部スピンドル20に取付けられたドリル21で切屑を分断させながらワークWに対して丸穴などの穴開け加工を実行することができる。
【0062】
なお、G△△△の命令にQに続く値(引数Q)で制御部11に対して、振幅送り比率を設定することもできる。
振幅送り比率とは、主軸位相0度から360度まで変化したときの送り量と振動手段による往復振動の振幅との比率であって、前記振幅を前記送り量で割った値をいう。
【0063】
振幅送り比率「2.0」を設定する場合はG△△△に続けて「Q2.0」と記載し、振動数を「0.5」と設定する場合はG△△△に続けて「D0.5」と加工プログラムに記載することによって、制御部11に対して振動数Nと振幅送り比率を設定することができる。
【0064】
図8の例では、振動切削加工の終了(振動停止)を、加工プログラムにおいてG△△△ P0の命令で指令するように制御部11が構成されている。
また、仮想主軸回転停止コードを、例えばM405とすると、仮想主軸回転停止コードM405を加工プログラムに記載することで、制御部11は、仮想主軸回転停止コードを読み込み、ソフトウエア的に回転しているものとみなされた仮想主軸13の回転が停止したとみなす。
【0065】
例えば、
図9および
図10に示すように、切削工具台130Aに、切削工具の一例としてブローチ加工用のブローチ130Bを装着し、主軸110を回転させずに、ブローチ130Bを送り方向に沿って振動させながら送ることによって、ワークWに対してブローチ加工を実行することができる。
このように、主軸110を回転停止させた状態で工具を送り方向に振動させてワークWの加工を実行することができる。
【0066】
このようにして得られた本発明の実施例である工作機械100の制御装置10は、ワークW又は切削工具130の一方であるワークWを回転させる主軸110であると仮想的にみなす仮想主軸13をソフトウエア的に構築して設け、仮想主軸13の回転数と、仮想主軸13の1回転当たりの往復振動の振動数Nと、制御部11による動作指令が可能な周期に起因する振動周波数fとをパラメータとし、少なくとも1つのパラメータとして例えば仮想主軸13の回転数の値を設定する設定手段と、未設定のパラメータとして例えば前記振動数Nおよび前記振動周波数fを所定の値に定め、前記振動周波数fの値に基づいて、設定手段によって設定されたパラメータとして例えば仮想主軸13の回転数および前記振動数Nの値を補正する補正手段とを設けたことにより、主軸110を回転させずに前記往復振動させて振動切削を実行することができる。
【0067】
以上の実施例においては、振動手段によって、移動方向に沿った往復振動として、所定の前進量だけ前進(往動)移動してから所定の後退量だけ後退(復動)移動する場合について説明したが、往復振動として、所定の第1速度での相対移動として前記往動移動と、前記第1速度より遅い第2速度での相対移動として前記復動移動に代えて加工送り方向への速度ゼロで停止とを繰り返す振動とすることもできる。
【0068】
また第2速度での相対移動として前記復動に代えて加工送り方向において第1速度での前記往動移動方向と同じ方向へ第1速度より遅い速度での移動とを繰り返してもよい。上記いずれの場合も、ワークWから生じる切屑の幅が狭くなる箇所で、切粉が折れるように分断されやすくなる。