特許第6289824号(P6289824)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6289824
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】蓄光性木質材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B27K 5/02 20060101AFI20180226BHJP
   B32B 21/00 20060101ALI20180226BHJP
   E04F 11/17 20060101ALI20180226BHJP
   G09F 13/20 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
   B27K5/02 Z
   B32B21/00
   E04F11/16 501E
   G09F13/20 D
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-132297(P2013-132297)
(22)【出願日】2013年6月25日
(65)【公開番号】特開2015-6746(P2015-6746A)
(43)【公開日】2015年1月15日
【審査請求日】2016年5月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】591020445
【氏名又は名称】立山科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】白川 友子
(72)【発明者】
【氏名】比嘉 匠
(72)【発明者】
【氏名】黒河 歩美
(72)【発明者】
【氏名】森井泉 仁
【審査官】 竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−279537(JP,A)
【文献】 特開平05−256015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27K 1/00 − 9/00
B32B 21/00
E04F 11/17
G09F 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材の組織内に蓄光材料と透明なバインダ浸透させて、表面から一定の深さまで前記蓄光材料の粒子が存在している蓄光性木質材料の製造方法において、
平均粒径が10nm〜100μmの前記蓄光材料と前記透明なバインダを混合し、前記蓄光材料の質量配合割合が液全体の質量の10〜30%である混合液を形成し、前記混合液に分散剤を液全体の質量配合割合で0.1〜5%混合し、かつ液全体の粘度が1〜5000cPとした混合液を用いて、前記木材表面に前記混合液を付着させて減圧下に置き、前記木材中に前記混合液を浸透させることを特徴とする蓄光性木質材料の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発光性を備え木材調の外観を有した蓄光性木質材料の製造方法関する。
【背景技術】
【0002】
従来、夜間の誘導標識や非常時の誘導光として、暗闇でも外部電源等を必要とせずに発光する蓄光材料を用いた表示板や標識があった。
【0003】
特に家屋やその他の建築物や構築物の材料である木材に蓄光性を持たせる手段として、特許文献1に開示されているように、蓄光性の顔料等を含んだシートを木材表面に貼り付けたり、特許文献2に開示されているように、蓄光性の顔料等を含んだ透明な樹脂塗料を、木材表面に塗布して、蓄光性を持たせ、種々の発光表示機能を持たせていた。
【0004】
さらに、特許文献3,4に開示されているように、板状の木材を蓄光材料を含んだある程度の厚みを有する接着剤により複数枚貼り合わせ、合板を形成して、この合板を任意の形状に加工して用いることにより、貼り合わせた端面から蓄光材料による発光が生じるようにした合板等の木材も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−192995号公報
【特許文献2】特開2001−329750号公報
【特許文献3】特開2004−249644号公報
【特許文献4】特開2010−162828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の特許文献1,2に開示された木質材料の場合、表面が蓄光材料により被覆されているだけであるので、例えば階段や手摺り、その他比較的他の部材との摩擦や接触が多く、摩耗が生じる箇所へ使用すると、蓄光材料を含んだシートの摩耗や剥離、木材表面に塗布された蓄光材料自体の剥離などが生じて発光性能が低下し、耐久性が問題であった。
【0007】
また、特許文献3,4に開示された木質材料の場合、摩耗により表面が削られても蓄光性を維持することができるが、発光部分が板同士の間の接着層に限られ、発光面積が狭く、十分な光量が得られないものであった。
【0008】
この発明は、上記背景技術の問題点に鑑みて成されたもので、簡単な構成で、耐久性や耐摩耗性があり、十分な発光量、発光面積を得ることができる蓄光性木質材料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、木材の組織内に蓄光材料と透明なバインダが浸透して、表面から一定の深さまで前記蓄光材料の粒子が存在している蓄光性木質材料の製造方法である。
【0010】
平均粒径が10nm〜100μmの前記蓄光材料と前記透明なバインダを混合し、前記蓄光材料の質量配合割合が液全体の質量の10〜30%である混合液を形成し、前記混合液に分散剤を液全体の質量配合割合で0.1〜5%混合し、かつ液全体の粘度が1〜5000cPとした混合液を用いて、前記木材表面に前記混合液を付着させて減圧下に置き、前記木材中に前記混合液を浸透させる蓄光性木質材料の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
この発明の蓄光性木質材料の製造方法は、表面が摩耗しても発光機能が損なわれることがなく、十分な光量を確保できるとともに、前記混合液の透明性により木目調を阻害することのない木質系材料を形成することができる。これにより、木造建築等の建築物や構造物と違和感なく調和させることができ、木造建築物等における各種の表示板等として用いることができる。
【0012】
さらに、本願発明の条件の範囲内で任意に蓄光材料の量を設定することにより、発光量を所望の値に調節することができ、用途に合わせて容易に製造することができる。また、製造が容易でコストも抑えることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明の一実施形態の蓄光性木質材料を示す概要斜視図である。
図2】この実施形態の蓄光性木質材料の断面図である。
図3】他の実施形態の蓄光性木質材料を示す概要斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態について説明する。図1図2は、この発明の一実施形態の蓄光性木質材料10を示す。この蓄光性木質材料10は、自然木を製剤して形成した所定の厚みの板材又は棒材等の木材12に、蓄光材料14を含浸させたものである。
【0015】
含浸させる蓄光材料14は、粒子状に形成され、平均粒径が100μm未満、好ましくは、10nm〜100μm、最適範囲は10〜30μmの材料を透明なバインダ16中に分散したものである。100μm以上の場合表面粗さが大きくなり、感触が良くないのと、光の反射により木目調が阻害されてしまう。また、平均粒径が100μm未満であってもバインダとの配合割合が30%を超えると同じく木目の色調が阻害されてしまう。逆にバインダとの配合割合が10%を低下すると発光が著しく低下する傾向がある。さらに、平均粒径が10nmより小さいと粒子同士の凝集が顕著におこり製造および品質面で安定しなくなる。なお、10μmより小さい粒径では発光輝度が極度に低下する現象が見られるので上記の範囲が最適となる。
【0016】
次に前記蓄光材料14を均一にバインダ16中に分散させるには、界面活性剤等の分散剤を前記混合液に対して質量配合割合で0.1〜5%添加し、且つこの混合液の粘度を1〜5000cPにする。これにより長期間にわたり蓄光材料14の沈殿がなくなりさらに木材に容易に浸透させることが可能となる。
【0017】
蓄光材料としては、硫化亜鉛系の材料(例えば、根本特殊化学社製ルGSS(商標))、アルミン酸塩化合物を主成分に希土類元素を加えて焼成した材料(根本特殊化学社製ルミノーバ(商標))、その他、酸化ストロンチウムや酸化アルミニウム等の化合物に希土類元素を添加した酸化物材料、具体的には、CaAl、SrAl、BaAlである。添加する付活剤としては、ユウロピウム(Eu)、ジスプロニウム(Dy)等がある。
【0018】
蓄光材料14を木材12の組織内に固定するバインダとしては、合成ゴム、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、ニトロセルロース、プロピオン酸セルロース、その他セルロース、でんぷん、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリビニルアルコール、カゼイン、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ABS樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミド、ポリ塩化ビニル、シリコーン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の材料を用いることが出来る。その他、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂、ポリエーテル樹脂等を用いても良い。これらは、単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0019】
バインダ16と蓄光材料14の配合割合は、質量割合で蓄光材料10〜30%、バインダ70〜90%の間で、用途や材料等に合わせて任意に設定することができる。
【0020】
次に、この実施形態の蓄光性木質材料10の製造方法について説明する。まず、所定のバインダ16の液体中に蓄光材料14を混合して、バインダ16中に蓄光材料14が分散した液体材料を作る。
【0021】
この後、この液体材料を木材12の表面に塗る。塗り方は刷毛で塗ってもよいし、スプレーで霧状にして塗布してもよい。塗布後約3時間の自然放置により蓄光材料とバインダの混合液は木材の組織内部まで浸透する。
【0022】
さらに深部に浸透させる場合は、この液体材料中に木材12を浸漬して、所定のチャンバー中で減圧する。減圧の程度は、浸透させる深さや蓄光材料14の粒度等により適宜調節する。減圧により、液体材料が木材12の組織内に浸入し、一定の深さまでバインダとともに蓄光材料が木材12中に浸透する。所定時間を経過した後、木材12を減圧チャンバーから取り出し、バインダ16を所定温度で乾燥し固化させて、蓄光性木質材料10が完成する。
【0023】
なお、上記減圧浸透に代えて、バインダ16の液中に蓄光材料14が分散した液体材料中に木材12を浸漬して、チャンバー内を加圧することにより、液体材料を木材12の組織内に浸入させ、一定の深さまでバインダとともに蓄光材料が木材12中に浸透したところで、木材12を取り出しても良い。
【0024】
この実施形態の蓄光性木質材料10によれば、蓄光材料14が木材12の内部の所定深さにまで浸透しているので、木材12の表面が摩耗により削られても、蓄光材料14は木材12の表面に常に露出し、発光機能が損なわれることがない。従って、階段やステップ、手摺り、その他、他の部材との間で摩擦が生じる部分に利用しても、摩耗による発光機能の低下や消失のない発光表示等が可能となる。しかも、木質系の材料であるので、階段やステップ以外に、表示板や案内板等に利用しても、木造建築等の構造物と違和感なく調和させることができ、木造建築物における各種の用途に用いることができる。さらに、任意に蓄光材料14の量を調節することにより、発光量を任意に設定することができ、また用途に合わせて容易に製造することができる。
【0025】
次に、この発明の蓄光性木質材料ではないが、他の実施形態の蓄光性木質材料20について、図3に基づいて説明する。ここで、上記実施形態と同様の部材は同一の符号を付して説明を省略する。この実施形態の蓄光性木質材料20は、粉粒又はチップ状の木材粉22と蓄光材料14をバインダ16により混合し、所定の形状に固めたものである。
【0026】
ここで用いる蓄光材料14とバインダ16は上記実施形態と同様の材料である。木材粉22は、平均粒径が20μm~4mmの木材の屑等であり、製材した際の鋸屑や木質系材料の廃材の粉砕粉、その他木材屑等を利用する。この粒度は、20μm未満の木材粉22は細かくするための製造が難しく、コストがかかるものであり、平均粒径が4mmを超えると、蓄光材料14からの発光が遮られる確率が高くなり、蓄光による発光機能が低下するからである。
【0027】
バインダ16と蓄光材料14、木材粉22の配合割合は、質量割合で、質量割合でバインダ21〜81%、蓄光材料3〜27%、木材粉10~70%の間で、用途や材料等に合わせて任意に設定することができる。
【0028】
次に、この実施形態の蓄光性木質材料10の製造方法について説明する。まず、所定のバインダ16に蓄光材料14と木材粉22を混合して、液体のバインダ16に蓄光材料14及び木材粉22を均一に混ぜ合わせる。この後、この混合材料を所定の型内に入れて、バインダの硬化温度で焼成する。これにより、バインダ16が硬化し、蓄光性木質材料20が完成する。この蓄光性木質材料20は、焼成後に、さらに所定形状に切削等の加工を施す事も可能であり、加工の自由度が高いものである。
【0029】
この実施形態の蓄光性木質材料20も上記実施形態と同様の効果を有し、任意の形状に成形することができる。
【0030】
なお、この発明の蓄光性木質材料は、上記実施形態に限定されるものではなく、蓄光材料やバインダは、適宜の材料を選択することができるものであり、木材や木材粉の種類も選ばないものである。
【実施例】
【0031】
以下に、この発明の蓄光性発光材料について、各種条件での実施例について、以下に説明する。表1に示すように、蓄光材料の平均粒径が100μmを超えると、耐久性、発光状態、透明度が、いずれも落ちてくることが確かめられた。さらに、蓄光材料の配合割合が、10〜30質量%以外のデータでは、発光状態や透明で性能が低下していることが確かめられた。
【0032】
【表1】
【符号の説明】
【0033】
10,20 蓄光性木質材料
12 木材
14 蓄光材料
16 バインダ
図1
図2
図3