【文献】
蒸留モノグリセライド−食品加工用製品|食品の理研ビタミン,2016年12月28日,[online],インターネット<URL:http://www.rikenvitamin.jp/business/material/techinfo/emulsifier/spec/01monogly.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
1位および3位に飽和脂肪酸Sが結合し、かつ2位に不飽和脂肪酸Uが結合したSUS型トリグリセリドと、1位および2位に飽和脂肪酸Sが結合し、かつ3位に不飽和脂肪酸Uが結合したSSU型トリグリセリドと、1位、2位、および3位の全てに飽和脂肪酸Sが結合したSSS型トリグリセリドとを含んでなり、前記SUS型トリグリセリドと前記SSU型トリグリセリドの質量比が0.1:1.0〜1.2:1.0であり、前記SUS型トリグリセリド、前記SSU型トリグリセリド、および前記SSS型トリグリセリドの合計含有量が40〜65質量%である油脂と、
前記油脂の質量に対して0.1〜10質量%の、パーム油の固化開始温度を1.0℃以上上昇させるソルビタン脂肪酸エステルと、
を含んでなり、油脂組成物中の油脂が前記油脂のみからなる、製菓製パン用油脂組成物。
1位および3位に飽和脂肪酸Sが結合し、かつ2位に不飽和脂肪酸Uが結合したSUS型トリグリセリドと、1位および2位に飽和脂肪酸Sが結合し、かつ3位に不飽和脂肪酸Uが結合したSSU型トリグリセリドとを含んでなり、前記SUS型トリグリセリドと前記SSU型トリグリセリドの質量比が0.1:1.0〜1.2:1.0である油脂と、
前記油脂の質量に対して0.1〜10質量%の、パーム油の固化開始温度を1.0℃以上上昇させるソルビタン脂肪酸エステルと、
前記油脂の質量に対して0.1〜10質量%のモノグリセリン脂肪酸エステルと、
を含んでなり、油脂組成物中の油脂が前記油脂のみからなる、製菓製パン用油脂組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者らは、特許文献1〜6に記載の油脂組成物には、以下の技術的課題があることを新たに知見した。特許文献1および2に記載の技術では、微細結晶を長期に維持することは難しい。特にパーム系油脂は対称型であるトリグリセリドを多く含有することから結晶の析出が遅く、マーガリンやショートニングなどの製造時に析出しなかった結晶が、保存中に析出し、その後粗大化し、可塑性が損なわれるという問題がある。また、特許文献3〜5に記載されるような乳化剤の添加では、油脂を製造する急冷条件においては、微細な結晶を形成し、維持することはできるものの、製菓、製パンに用いられた場合、生地は、200℃程度で焼成するため、生地温度は、98℃近くになり、油脂は融解する。その後焼成した菓子やパンは、室温で保存されることとなる。よって可塑性油脂の製造条件である急冷とは相違し徐冷条件となるため、焼成後の菓子やパンにおける油脂の結晶を微細な状態で維持することはできず、サクさのある食感の菓子やパンを得ることはできなかった。さらに、特許文献6に記載の技術では、対称型トリグリセリドであるパーム油を多く含有するため、マーガリンやショートニングなどの可塑性油脂としたときに経時的に硬くなるという問題があり、安定した物性のものを得ることができなかった。
【0008】
したがって、本発明の目的は、製菓や製パンに用いた場合、生地調製時の作業性に優れ、焼成した菓子やパンなどにサクさのある食感を付与することができる油脂組成物を提供することにある。さらに、本発明の目的は、当該油脂組成物を用いて、経時的な硬さの変化がなく、長期に安定した物性を有する可塑性油脂組成物を提供することにもある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、特定の種類のトリグリセリドを特定の含有量で含む油脂と、特定の乳化剤とを配合することにより上記課題を解決できることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の一態様によれば、
1位および3位に飽和脂肪酸Sが結合し、かつ2位に不飽和脂肪酸Uが結合したSUS型トリグリセリドと、1位および2位に飽和脂肪酸Sが結合し、かつ3位に不飽和脂肪酸Uが結合したSSU型トリグリセリドとを含んでなり、前記SUS型トリグリセリドと前記SSU型トリグリセリドの質量比が0.1:1.0〜1.2:1.0である油脂と、
パーム油の固化開始温度を1.0℃以上上昇させるソルビタン脂肪酸エステルと、
を含んでなる、製菓製パン用油脂組成物が提供される。
【0011】
本発明の態様においては、前記油脂が、1位、2位、および3位の全てに飽和脂肪酸Sが結合したSSS型トリグリセリドをさらに含んでなり、前記油脂中の前記SSU型トリグリセリド、前記SUS型トリグリセリド、および前記SSS型トリグリセリドの合計含有量が40〜65質量%であることが好ましい。
【0012】
本発明の態様においては、モノグリセリン脂肪酸エステルをさらに含んでなることが好ましい。
【0013】
本発明の態様においては、モノグリセリン脂肪酸エステルとソルビタン脂肪酸エステルの質量比が0.1:1.0〜3.0:1.0であることが好ましい。
【0014】
本発明の態様においては、ソルビタン脂肪酸エステルの構成脂肪酸の総数の80%以上が、パルミチン酸とステアリン酸であることが好ましい。
【0015】
本発明の態様においては、前記油脂が、パーム系油脂とラウリン系油脂とのエステル交換油を含んでなることが好ましい。
【0016】
本発明の他の態様においては、上記の製菓製パン用油脂組成物を含んでなる、可塑性油脂組成物が提供される。
【0017】
本発明の他の態様においては、上記の製菓製パン用油脂組成物を含んでなる、製菓製パン生地が提供される。
【0018】
本発明の他の態様においては、上記の製菓製パン生地を用いて製造された食品が提供される。
【0019】
本発明の他の態様においては、上記の製菓製パン用油脂組成物の製造方法であって、
パーム系油脂とラウリン系油脂とのエステル交換油を5〜50質量
%含有してなる前記油脂と、
前記ソルビタン脂肪酸エステルと、
を配合する工程を含んでなる、製菓製パン用油脂組成物の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明による製菓製パン用油脂組成物は、特定乳化剤と特定油脂を使用することにより、マーガリンやショートニングなどの製造条件である急冷時と、製菓や製パンを焼成し冷却されるまでの徐冷時の双方の条件において、油脂結晶の微細化を促進することができる。急冷時において微細結晶を促進化できるため、マーガリンやショートニングは可塑性に優れ、当該油脂組成物を製菓や製パンに用いた場合、生地への分散性に優れ、物性の良好な菓子やパンを得ることできる。製菓や製パンにおいては、可塑性油脂組成物を練り込み、その後生地は180〜230℃付近で焼成され、室温まで冷却される。生地に練り込まれた油脂は焼成温度では98℃付近となるため一旦溶解し、その後室温に置かれるため、徐冷条件で冷却され、油脂は結晶化する。本願は徐冷条件化においても微細結晶を促進化できるため、サクい食感のパンや菓子を提供することができる。また本願発明は製造機中での結晶化が促進されるため、マーガリンやショートニングなどの可塑性油脂組成物を長期に保存した場合でも、保存中に結晶が析出し、硬くなるという物性変化がなく安定な物性のものを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
油脂組成物
本発明による製菓製パン用油脂組成物は、特定の種類のトリグリセリドを特定の含有量で含む油脂と、特定の乳化剤とを含むものである。油脂組成物は、乳化剤以外の食品添加物をさらに含んでもよい。油脂組成物は、製菓や製パンに好適な原料として用いることができる。
【0023】
トリグリセリド
本発明において、油脂中のトリグリセリドとは、1分子のグリセロールに、3分子の脂肪酸がエステル結合した構造を有するものである。トリグリセリドの1、2、3位とは、脂肪酸が結合した位置を表す。なお、トリグリセリドの構成脂肪酸の略称として、S:飽和脂肪酸、U:不飽和脂肪酸、を用いる。
【0024】
トリグリセリドの構成脂肪酸の分析は、ガスクロマトグラフ法(AOCS Ce5−86準拠)や銀イオンカラム−HPLC法(J.High Resol.Chromatogr.,18,105−107(1995)準拠)により行うことができる。
【0025】
飽和脂肪酸Sは、油脂中に含まれるすべての飽和脂肪酸である。また、各トリグリセリド分子に結合している2つまたは3つの飽和脂肪酸Sは、同一の飽和脂肪酸であってもよいし、異なる飽和脂肪酸であってもよい。飽和脂肪酸Sとしては、酪酸(4)、カプロン酸(6)、カプリル酸(8)、カプリン酸(10)、ラウリン酸(12)、ミリスチン酸(14)、パルミチン酸(16)、ステアリン酸(18)、アラキジン酸(20)、ベヘン酸(22)、およびリグノセリン酸(24)が挙げられる。なお、上記の数値表記は、脂肪酸の炭素数である。
【0026】
不飽和脂肪酸Uは、油脂中に含まれるすべての不飽和脂肪酸である。また、各トリグリセリド分子に結合している3つの不飽和脂肪酸Uは、同一の不飽和脂肪酸であってもよいし、異なる不飽和脂肪酸であってもよい。不飽和脂肪酸Uとしては、ミリストレイン酸(14:1)、パルミトレイン酸(16:1)、オレイン酸(18:1)、リノール酸(18:2)、およびリノレン酸(18:3)、エルカ酸(22:1)等が挙げられる。なお、上記の数値表記は、脂肪酸の炭素数と二重結合数の組み合わせである。
【0027】
油脂組成物に用いられる油脂は、1位および3位に飽和脂肪酸Sが結合し、かつ2位に不飽和脂肪酸Uが結合したSUS型トリグリセリドと、1位および2位に飽和脂肪酸Sが結合し、かつ3位に不飽和脂肪酸Uが結合したSSU型トリグリセリドとを含んでなるものである。油脂は、1位、2位、および3位の全てに不飽和脂肪酸Sが結合したSSS型トリグリセリドをさらに含んでもよい。油脂組成物中の油脂の含有量は、好ましくは70〜99質量%であり、より好ましくは、80〜98質量%である。
【0028】
前記SUS型トリグリセリドと前記SSU型トリグリセリドの質量比は、0.1:1.0〜1.2:1.0であり、好ましくは0.3:1.0〜1.0:1.0であり、より好ましくは0.5:1.0〜1.0:1.0であり、さらに好ましくは0.6:1.0〜1.0:1.0であり、さらにより好ましくは0.7:1.0〜1.0:1.0である。前記SUS型トリグリセリドと前記SSU型トリグリセリドの質量比が上記範囲内にあれば、製造機内の急冷、製菓、製パンの焼成時における徐冷時においても結晶化が促進され、可塑性があり、製菓や製パンに用いた場合の生地への分散性に優れ、保存時においても硬さの変化のない油脂組成物を得ることができる。
【0029】
油脂中のSUS型トリグリセリド、SSU型トリグリセリド、およびSSS型トリグリセリドの合計含有量は、好ましくは40〜65質量%であり、より好ましくは40〜60質量%であり、さらに好ましくは40〜55質量%であり、さらにより好ましくは43〜53質量%である。SUS型トリグリセリド、SSU型トリグリセリド、およびSSS型トリグリセリドの合計含有量が上記範囲内にあれば、油脂結晶が核となり、結晶化を促進することができる。特に、該合計含有量が40質量%以上であれば、微細結晶量が増加し、サクさ感を強くすることができ、60質量%以下であれば、可塑性油脂組成物を調製したときに適度な硬さや伸展性が得られ、パン生地への分散性が良好となる。また、焼成したパンの口溶けが良好となる。
【0030】
油脂中のSUS型トリグリセリドの含有量は、好ましくは2〜30質量%であり、より好ましくは5〜25質量%であり、さらに好ましくは5〜20質量%である。SUS型トリグリセリドの含有量が上記範囲内にあれば、SUS型とSSU型の質量比を調整することができ、可塑性の良好な油脂組成物を得ることができる。
【0031】
油脂中のSSU型トリグリセリドの含有量は、好ましくは2〜60質量%であり、より好ましくは5〜40質量%であり、さらに好ましくは10〜30質量%である。SSU型トリグリセリドの含有量が上記範囲内にあれば、SUS型とSSU型の質量比を調整することができ、可塑性の良好な油脂組成物を得ることができる。
【0032】
乳化剤
本発明による製菓製パン用油脂組成物は、乳化剤として、パーム油の固化開始温度を1.0℃以上上昇させるソルビタン脂肪酸エステルを含むものである。パーム油の固化開始温度を1.0℃以上上昇させるソルビタン脂肪酸エステルを用いることで、製造機内の急冷、製菓や製パンの焼成時における徐冷時においても、結晶化が促進され微細結晶を得ることができる。
【0033】
本発明で用いるソルビタン脂肪酸エステルは、パーム油の固化開始温度を1.0℃以上、好ましくは1.5℃以上、より好ましくは2.0℃以上4.0℃以下上昇させるものである。パーム油の固化開始温度の上昇値が上記範囲内にあれば、製造機で結晶化が促進され、マーガリンやショートニングに良好な可塑性を持たせ、経時的な硬さの変化がなく、長期に安定した物性を持たせることができる。
【0034】
本発明において、パーム油の固化開始温度は、示差走査熱量測定(DSC)により測定した値である。固化開始温度の測定には、示差走査熱量計(型番:DSC Q1000、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いることができる。より詳細には、パーム油100質量部にソルビタン脂肪酸エステル0.5質量部を添加し、80℃から毎分10℃の速度で冷却し、固化開始温度を測定した。
【0035】
本発明で用いるソルビタン脂肪酸エステルは、構成脂肪酸の総数の好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上がパルミチン酸とステアリン酸である。また、パルミチン酸とステアリン酸の質量比は、好ましくは0.3:1.0〜1.0:1.0であり、より好ましくは0.5:1.0〜0.8:1.0である。パルミチン酸とステアリン酸の質量比が上記範囲程度であれば、固化開始温度をより上昇させることができる。
【0036】
本発明で用いるソルビタン脂肪酸エステルは、HLB値が好ましくは3.5〜5.5であり、より好ましくは4.0〜5.5である。
【0037】
本発明においては、上記のようなソルビタン脂肪酸エステルとして、市販のものを用いることができる。例えば、理研ビタミン(株)製のS−320YN、ポエムS−60V、およびソルマンS−300(V)等が挙げられる。
【0038】
ソルビタン脂肪酸エステルの含有量は、油脂の質量に対して、好ましくは0.1〜10質量%であり、より好ましくは0.1〜5.0質量%であり、さらに好ましくは0.2〜4.0質量%である。ソルビタン脂肪酸エステルの含有量が0.1質量以上であれば、結晶が促進され、10質量%以下であれば乳化剤としての異味が最終製品のパンや菓子などに影響を及ぼすのを防ぐことができる。
【0039】
本発明による製菓製パン用油脂組成物は、乳化剤として、モノグリセリン脂肪酸エステルをさらに含んでもよい。モノグリセリン脂肪酸エステルは、構成脂肪酸の総数の好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上が飽和脂肪酸である。飽和脂肪酸の炭素数は、好ましくは16以上であり、より好ましくは16以上20以下である。ソルビタン脂肪酸エステルとモノグリセリン脂肪酸エステルを併用することで、パンの硬さの経時変化の抑制しながら、サクさ感を向上することができる。
【0040】
モノグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、油脂の質量に対して、好ましくは0.1〜10質量%であり、より好ましくは0.1〜5.0質量%であり、さらに好ましくは0.2〜4.0質量%である。モノグリセリン脂肪酸エステルの含有量が上記範囲内にあれば、パンや菓子のサクさ感を向上させながら、経時的に硬くなるのを防ぐことができる。
【0041】
モノグリセリン脂肪酸エステルとソルビタン脂肪酸エステルの質量比は、好ましくは0.1:1.0〜5.0:1.0であり、好ましくは0.2:1.0〜4.0:1.0であり、より好ましくは0.5:1.0〜3.0:1.0であり、さらに好ましくは0.7:1.0〜2.5:1.0であり、さらにより好ましくは0.75:1.0〜2.0:1.0である。モノグリセリン脂肪酸エステルとソルビタン脂肪酸エステルの質量比が上記範囲内にあれば、長期に渡ってサクさ感を維持することができる。
【0042】
食品添加物
本発明による製菓製パン用油脂組成物は、抗酸化剤、香辛料、着色成分、香料、および乳化剤等の食品添加物をさらに含んでもよい。食品添加物は、特に限定されず、従来公知の食品添加物を用いることができる。
【0043】
抗酸化剤としては、例えば、L−アスコルビン酸やL−アスコルビン酸誘導体、トコフェロール、トコトリエノール、リグナン、ユビキノン類、キサンチン類、オリザノール、植物ステロール、カテキン類、ポリフェノール類、および茶抽出物が挙げられる。香辛料としては、例えば、カプサイシン、アネトール、オイゲノール、シネオール、およびジンゲロン等が挙げられる。着色成分としては、例えば、カロテンおよびアスタキサンチン等が挙げられる。香料としては、バターフレーバー、ミルクフレーバー等が挙げられる。乳化剤としては、結晶促進を阻害しないものであれば添加することができる。例えばグリセリン脂肪酸エステル、有機酸グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0044】
油脂組成物の製造方法
本発明による製菓製パン用油脂組成物の製造方法は、上記の油脂と、上記のソルビタン脂肪酸エステルとを配合する工程を含むものである。例えば、上記の油脂を溶解し、溶解した油脂中に上記のソルビタン脂肪酸エステルと、必要に応じて上記の食品添加物とを添加し、公知の方法で均一に分散および溶解することによって製造することができる。
【0045】
本発明による製菓製パン用油脂組成物の原料として用いる油脂は、パーム系油脂とラウリン系油脂とのエステル交換油を用いると、マーガリンやショートニングを製造する急冷工程、また製菓製パンを焼成し保存される徐冷工程いずれにおいても、結晶核となり、結晶化を促進できるため好ましく、原料油脂全体の5〜50質量%、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜40質量%であることが好ましい。パーム系油脂とラウリン系油脂とのエステル交換油は、ヨウ素価が20〜45、好ましくは25〜40であると、結晶化を促進するとともに、製菓製パンとしたときに口溶けがよいものを得ることができる。パーム系油脂としては、パーム油、パーム油の分別油およびそれらの加工油(硬化およびエステル交換のうち1以上の処理がなされたもの)であれば何れでもよく、具体的には、1段分別油であるパームオレイン、パームステアリン、パームオレインの2段分別油であるパームオレイン(パームスーパーオレイン)およびパームミッドフラクション、パームステアリンの2段分別油であるパームステアリン(ソフトステアリン)およびパームステアリン(スーパーステアリン)等が挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。ラウリン系油脂としては、ヤシ油、パーム核油、これらの分別油、硬化油等が挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。
【0046】
本発明の製菓製パン用油脂組成物に用いられる上記エステル交換油以外の油脂としては、パーム油、豚脂、乳脂、ヤシ油、パーム核油、菜種油、大豆油、綿実油、ヒマワリ油、コーン油、米油、サフラワー油、オリーブ油、ゴマ油、これらの分別油、硬化油、エステル交換油等が用いられる。油脂中のSUS型トリグリセリド、SSU型トリグリセリド、およびSSS型トリグリセリドの合計含有量のバランスを適宜調整するために、1種あるいは2種以上を選択して、原料油脂全体中の50〜95質量%含有させることが好ましい。
【0047】
上記エステル交換油を得るために用いるエステル交換反応は、化学的エステル交換反応であっても酵素的エステル交換反応であってもよい。化学的エステル交換反応は、ナトリウムメチラート等の化学触媒を用いて行われる、位置特異性の乏しいエステル交換反応である(ランダムエステル交換とも言われる)。
【0048】
化学的エステル交換反応は、例えば、常法に従って、原料油脂を十分に乾燥させ、触媒を原料油脂に対して0.1〜1質量%添加した後、減圧下、80〜120℃で0.5〜1時間攪拌することにより行うことができる。エステル交換反応終了後は、触媒を水洗にて洗い流した後、通常の食用油の精製工程で行われる脱色、脱臭処理を施すことができる。
【0049】
酵素的エステル交換反応は、リパーゼを触媒として用いて行われる。リパーゼとしては、リパーゼ粉末やリパーゼ粉末をセライト、イオン交換樹脂等の担体に固定化した固定化リパーゼを使用するができる。酵素的エステル交換によるエステル交換反応は、リパーゼの種類によって、位置特異性の乏しいエステル交換反応とすることもできるし、1,3位特異性の高いエステル交換反応とすることもできる。
【0050】
位置特異性の乏しいエステル交換反応を行うことのできるリパーゼとしては、アルカリゲネス属由来リパーゼ(例えば、名糖産業株式会社製のリパーゼQLM、リパーゼPL等)、キャンディダ属由来リパーゼ(例えば、名糖産業株式会社製のリパーゼOF等)等が挙げられる。
【0051】
1,3位特異性の高いエステル交換反応を行うことのできるリパーゼとしては、リゾムコールミーハイ由来の固定化リパーゼ(ノボザイムズ社製のリポザイムTLIM、リポザイムRMIM等)等が挙げられる。
【0052】
酵素的エステル交換反応は、例えば、リパーゼ粉末または固定化リパーゼを原料油脂に対して0.02〜10質量%、好ましくは0.04〜5質量%添加した後、40〜80℃、好ましくは40〜70℃で0.5〜48時間、好ましくは0.5〜24時間攪拌することにより行うことができる。エステル交換反応終了後は、ろ過等によりリパーゼ粉末または固定化リパーゼを除去後、通常の食用油の精製工程で行われる脱色、脱臭処理を施すことができる。
【0053】
用途
本発明による製菓製パン用油脂組成物は、可塑性油脂組成物の製造に好適に用いることができる。本発明による製菓製パン用油脂組成物や可塑性油脂組成物を製菓や製パンに用いた場合、生地への分散性に優れ、物性の良好な菓子やパンを得ることできる。可塑性油脂組成物としては、ショートニングや、水、添加物等を含有するマーガリン類等を挙げることができる。マーガリン類の乳化形態としては、W/O型、O/W/O型、O/W、W/O/W型であっても構わない。このような可塑性油脂組成物は、パン類、イースト菓子類、ペストリー、ケーキ等の食品の製造にも好適に用いることができる。
【0054】
マーガリン類の場合には、本発明の製菓製パン用油脂組成物を65〜99.5質量%添加することが出来る。また水以外に牛乳、脱脂乳などの乳、クリーム、ナチュラルチーズやプロセスチーズなどのチーズ、濃縮乳、脱脂濃縮乳、加糖れん乳、加糖脱脂れん乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、タンパク濃縮ホエイパウダー、ホエイ蛋白コンセントレート(WPC)、ホエイ蛋白アイソレート(WPI)、バターミルクパウダー、トータルミルクプロテイン、カゼインナトリウム、カゼインカリウムなどの乳製品、大豆蛋白、エンドウ豆蛋白、小麦蛋白などの植物蛋白、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノースなどの単糖、ラクトース、スクロース、マルトースなどの二糖類、オリゴ糖、トレハロース、糖アルコールなどの糖類、デンプン、デンプン分解物、多糖類、乳化剤、塩類、酸味料、pH調整剤などを添加できる。
【0055】
マーガリン類、ショートニングは、従来公知の方法で製造することができる。具体的にはマーガリン類は本発明の製菓製パン用油脂組成物を含有する乳化液を、ショートニングは本発明の製菓製パン用油脂組成物を、コンビネーター、パーフェクター、ボテーター等の冷却混合機で急冷捏和することにより得ることができる。
【0056】
また、本発明による製菓製パン用油脂組成物は、製菓製パン生地の製造に好適に用いることができる。本発明による製菓製パン用油脂組成物は、製菓製パン生地への分散性が良好であり、製菓製パン生地へ練り込み易く、また長時間保存しても油の染みだしなく安定した物性である。このような製菓製パン生地を用いて、パン類、イースト菓子類、ペストリー、ケーキ等の食品を製造することで、サクさがあり、口溶けの良い食品を得ることができる。
【0057】
本発明の製菓製パン用油脂組成物を使用した製菓製パン生地は、冷凍生地として冷凍保存されてもよく、焼成する他、電子レンジ調理、蒸す、揚げるなどの調理をすることにより、食品を得ることができる。
【0058】
本発明の製菓製パン生地を使用した食品としては、例えば、食パン、テーブルロール、菓子パン、調理パン、フランスパン、ライブレッドなどのパン類、シュトーレン、パネトーネ、クグロフ、ブリオッシュ、ドーナツなどのイースト菓子、デニッシュ、クロワッサン、パイなどのペストリー、バターケーキ、パウンドケーキ、スポンジ、ビスケット、クッキー、ドーナツ、ブッセ、ホットケーキ、ワッフルなどのケーキ等が挙げられる。
【実施例】
【0059】
以下に、実施例と比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例の内容に限定して解釈されるものではない。
【0060】
パン練り込み用マーガリンの製造
表1および表2に記載の配合割合(質量部)で油脂を混合し、70℃に加熱後、表1および表2に記載の割合(質量部)で、乳化剤としてソルビタン脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステルを添加して、実施例1〜12および比較例1〜6の油脂組成物を得た。油脂組成物中のトリグリセリドの含有量を、ガスクロマトグラフ法(AOCS Ce5−86準拠)により分析した。測定結果は、表1および2に示すとおりである。
【0061】
また、油脂組成物に添加したソルビタン脂肪酸エステル※3〜※7の詳細は、表3に示すとおりである。ソルビタン脂肪酸エステルを添加したパーム油の固化開始温度(℃)の上昇値は、以下のようにして測定した。まず、パーム油(ヨウ素価53)100質量部にソルビタン脂肪酸エステル0.5質量部を添加し、それを測定用のアルミニウムパンに3.5mg量り、さらにサンプルを何も入れない空パン(リファレンス)を用いて、示差走査熱量計(型番:DSC Q1000、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)で以下の条件で固化開始温度を測定した。次に、同様にして、ソルビタン脂肪酸エステルを添加していないパーム油の固化開始温度を測定した。ソルビタン脂肪酸エステルを添加したパーム油の固化開始温度とソルビタン脂肪酸エステルを添加していないパーム油の固化開始温度の差を、パーム油の固化開始温度(℃)の上昇値とした。
<測定条件>
示差走査熱量計のセル内の温度を80℃まで昇温し、5分間保持し、完全にサンプルを溶解させた。その後、毎分10℃(10℃/min.)で80℃から−40℃まで降温させ、その過程における固化開始温度(発熱ピークにおける発熱開始温度)を測定した。固化開始温度は、ベースラインとピークとの接線における交点とした。
【0062】
さらに、実施例1、比較例1、および比較例5の油脂組成物を20℃で72時間放置した後の顕微鏡写真(OPTIPHOT2−POL Nikon社製、倍率100倍)を、それぞれ
図1〜
図3に示す。
図1では、細かい結晶が析出していた。
図2では、結晶が成長し、非結晶部分が少なかった。
図3では、油脂の白い結晶部分と黒い非結晶部分(液体部分)がはっきりと分かれた。これらの結果から、パーム油の固化開始温度を1.0℃以上上昇させるソルビタン脂肪酸エステルを用いることで、結晶化が促進され、微細結晶を得ることができることが分かった。
【0063】
【表1】
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
【0066】
続いて、上記で製造した油脂組成物82質量部を70℃に調温して油相とした。一方、水16.5質量部に脱脂粉乳1.5質量部を添加し、85℃で加熱殺菌して水相を得た。次に、該油相に該水相を添加し、プロペラ攪拌機で撹拌して、油中水型に乳化した後、コンビネーターによって急冷捏和して、下記の配合割合のパン練り込み用マーガリンを得た。
マーガリン配合
油脂組成物 82質量部
水 16.5質量部
脱脂粉乳 1.5質量部
【0067】
食パンの製造
上記で製造したパン練り込み用マーガリンを用いて、下記の配合および製造条件で食パンを製造した。具体的には、イーストを分散させた水、イーストフード、および強力粉をミキサーボールに投入し、フックを使用し、下記条件にてミキシング、発酵を行い、中種生地を得た。その後、本捏配合のマーガリン以外の材料および中種生地を添加し低速3分、中高速3分でミキシングした後、マーガリンを投入し、さらに低速3分、中低速4分でミキシングしパン生地を得た。捏上温度は28℃であった。その後、室温で20分フロアタイムをとった後、成型して、38℃、湿度80%のホイロで45分発酵させた後、200℃で40分間焼成して食パンを得た。焼成したパンを室温で放冷させた後、20℃の恒温槽に保存した。
食パンの配合
・中種配合
強力粉 70質量部
イースト 2.5質量部
イーストフード 0.1質量部
水 40質量部
・本捏配合
強力粉 30質量部
上白糖 6質量部
食塩 1.8質量部
脱脂粉乳 2質量部
マーガリン 5質量部
水 25質量部
食パンの製造条件
・中種条件
ミキシング: 低速4分、中低速1分
捏上げ温度: 24℃
発酵時間: 27℃、75%、4時間
終点温度: 29℃
・本捏条件
ミキシング: 低速3分、中低速3分、(マーガリン投入)、低速3分、中低速4分
捏上温度: 28℃
フロアタイム:20分
成型: モルダー:3斤プルマン型
ホイロ: 38℃、80%、45分
焼成: 200℃ 40分
【0068】
実施例1〜12および比較例1〜6で製造したパン練り込み用マーガリンおよび食パンについて、下記の評価を行った。それぞれの評価結果は表4および表5に示す。
【0069】
・硬さ変化
マーガリンを円柱状の容器に入れ、表面が平らになるように、スパテラでカットし15℃で2日、30日保存したときの硬さをペネトロメーターを用い、AOCS Cc16−60の円錐型コーンアダプターの先端をマーガリン表面に接触する位置にセットし、5秒間落下させたときの進入距離(mm)の10倍をペネトロ値とし、硬さの指標とし、30日目と2日目とのペネトロ値の変化(
2日目のペネトロ値/
30日目のペネトロ値)により硬さの変化を評価した。
評価基準
◎:0.85以上1.15未満
○:1.15以上1.25未満
△:1.25以上1.35未満
×:1.35以上
【0070】
・生地への分散性
マーガリンを生地に添加したときのマーガリンの塊がなくなる時間を目視により評価した。
評価基準
◎:1分30秒〜2分以内で分散した。
○:2分超〜2分30秒以内で分散した。
△:2分30秒超〜3分以内で分散した。
×:3分超で分散した。
【0071】
・食感(サクさ感)
焼成した食パンを20℃で1日(D+1)および3日(D+3)保存した後、パネラー10名により食パンのサクさ感を以下のように評価した。
評価基準
◎:10名中8名以上が良好であると評価した。
○:10名中7〜5名が良好であると評価した。
△:10名中4〜3名が良好であると評価した。
×:10名中2名以下が良好であると評価した。
【0072】
・口溶け
焼成した食パンを20℃で1日保存した後、パネラー10名により食パンの口溶けを以下のように評価した。
評価基準
◎:10名中8名以上が良好であると評価した。
○:10名中7〜5名が良好であると評価した。
△:10名中4〜3名が良好であると評価した。
×:10名中2名以下が良好であると評価した。
【0073】
・結晶状態
油脂組成物を80℃で溶解後、スライドガラスに滴下しカバーガラスで覆い、20℃で72時間保存したときの結晶状態を偏光顕微鏡(OPTIPHOT2−POL Nikon社製、倍率100倍)により観察し以下のように判断した。
評価基準
○:微細結晶を多く含有する。
△:微細結晶と粗大結晶が混在する
×:粗大結晶が存在する。
【0074】
【表4】
【0075】
【表5】
【0076】
ロールイン用マーガリン(製パン用)の製造
表6および表7に記載の配合割合(質量部)で、パン練り込み用マーガリンの製造と同様にして、実施例13〜24および比較例7〜12の油脂組成物を得た。油脂組成物中のトリグリセリドの含有量を、パン練り込み用マーガリンの製造と同様にして、測定した。測定結果は、表6および表7に示すとおりである。
【0077】
【表6】
【0078】
【表7】
【0079】
続いて、上記で製造した油脂組成物82質量部を70℃に調温して油相とした。一方、水15.5質量部に脱脂粉乳1.5質量部および食塩1.0質量部を添加し、85℃で加熱殺菌して水相を得た。次に、該油相に該水相を添加し、プロペラ撹拌機で撹拌して、油中水型に乳化した後、コンビネーターによって急冷捏和して、25cm×21cm×1cmのシート状に成型した下記の配合割合のロールイン用マーガリン(製パン用)を得た。
マーガリン配合
油脂組成物 82質量部
水 15.5質量部
脱脂粉乳 1.5質量部
食塩 1.0質量部
【0080】
デニッシュの製造
下記の配合および製造条件でデニッシュを製造した。具体的には、パン練り込み用マーガリンおよびロールイン用マーガリン以外の材料をミキサーに投入し、低速3分、中低速5分ミキシングを行った後、パン練り込み用マーガリンを入れ低速2分、中低速4分ミキシングを行い、生地を得た。この生地を、フロアタイムをとった後、0℃で一晩リタードさせた。この生地にロールイン用マーガリンを折り込み、ゲージ厚3mmで3折り2回を加え5℃にて20分リタードし、3折り1回を加え5℃にて60分リタードさせた。その後ゲージ厚3mmとした後、10cm角(10cm×10cm)にカットし、ホイロ後、焼成してデニッシュを得た。
デニッシュの配合
強力粉 100質量部
上白糖 10質量部
食塩 1.6質量部
脱脂粉乳 4質量部
パン練り込み用マーガリン
(アドフリー440ミヨシ油脂製乳化剤無添加マーガリン) 10質量部
イースト 4質量部
水 63質量部
ロールイン用マーガリン(製パン用) 生地100質量部に対して20質量部
デニッシュ生地の製造条件
ミキシング: 低速3分、中低速5分、 (マーガリン投入)、低速2分、中低速4分
捏上温度: 25℃
フロアタイム:27℃ 75% 30分
リタード: 0℃ 一晩
ロールイン: 3折×2回 5℃にてリタード20分
3折×1回 5℃にてリタード60分
成型: シーターゲージ厚3mm
ホイロ: 35℃ 75% 60分
【0081】
実施例13〜24および比較例7〜12で製造したロールイン用マーガリンおよびデニッシュについて、下記の評価を行った。それぞれの評価結果は表8および表9に示す。
【0082】
・硬さ変化
25cm×21cm×1cmのシート状に成型したロールイン用マーガリンを円柱状の容器に隙間がないように重ね入れ、表面が平らになるようスパテラでカットし、15℃で2日、30日保存したときの硬さをペネトロメーターを用い、AOCS Cc16−60の円錐型コーンアダプターの先端をマーガリン表面に接触する位置にセットし、5秒間落下させたときの進入距離(mm)の10倍をペネトロ値とし、硬さの指標とし、30日目と2日目とのペネトロ値の変化(30日目のペネトロ値/2日目のペネトロ値)により硬さの変化を評価した。
評価基準
◎:0.85以上1.15未満
○:1.15以上1.25未満
△:1.25以上1.35未満
×:1.35以上
【0083】
・ロールイン時の作業性
約2Kgの生地にシート状のロールイン用マーガリン400gをのせ、折り込み時のロールイン用マーガリンの作業性を以下のように評価をした。
評価基準
◎:油脂切れなく、伸び非常に良好であった。
○:油脂切れなく、伸び良好であった。
△:やや油脂切れがあるが、伸び良好であった。
×:油脂切れが起こるか、生地に練り込まれる傾向があった。
【0084】
・ロールイン後の生地の縮み
3mm厚に成型した生地を10センチ角にカットし、10枚重ねたときの高さを測定し、以下のように評価した。
評価基準
◎:55mm以下
○:55mm超60mm以下
△:60mm超65mm以下
×:65mm超
【0085】
・デニッシュの層の形成状態
焼成したデニッシュを中央部でカットし、層の形成状態を目視により以下のように評価した。
評価基準
◎:膜が非常に薄く、きれいな層を形成していた。
〇:膜が薄く、きれいな層を形成していた。
△:やや膜が厚く、層の形成が少なかった。
×:膜が厚く、層の形成が少なかった。
【0086】
・食感(サクさ感)
焼成したデニッシュを20℃で1日(D+1)および3日(D+3)保存した後、パネラー10名によりデニッシュのサクさ感を以下のように評価した。
評価基準
◎:10名中8名以上が良好であると評価した。
○:10名中7〜5名が良好であると評価した。
△:10名中4〜3名が良好であると評価した。
×:10名中2名以下が良好であると評価した。
【0087】
・口溶け
焼成したデニッシュを20℃で1日保存した後、パネラー10名によりデニッシュの口溶けを以下のように評価した。
評価基準
◎:10名中8名以上が良好であると評価した。
○:10名中7〜5名が良好であると評価した。
△:10名中4〜3名が良好であると評価した。
×:10名中2名以下が良好であると評価した。
【0088】
・結晶状態
油脂組成物を80℃で溶解後、スライドガラスに滴下しカバーガラスで覆い、20℃で72時間保存したときの結晶状態を偏光顕微鏡(OPTIPHOT2−POL Nikon社製、倍率100倍)により観察し以下のように判断した。
評価基準
○:微細結晶を多く含有する。
△:微細結晶と粗大結晶が混在する
×:粗大結晶が存在する。
【0089】
【表8】
【0090】
【表9】
【0091】
ロールイン用マーガリン(製菓用)の製造
表10および表11に記載の配合割合(質量部)で、ロールイン用マーガリン(製パン用)の製造と同様にして、実施例25〜35および比較例13〜18の油脂組成物を得た。油脂組成物中のトリグリセリドの含有量を、パン練り込み用マーガリンの製造と同様にして、測定した。測定結果は、表10および表11に示すとおりである。
【0092】
【表10】
【0093】
【表11】
【0094】
続いて、上記で製造した油脂組成物82質量部を70℃に調温して油相とした。一方、水15.5質量部に脱脂粉乳1.5質量部および食塩1.0質量部を添加し、85℃で加熱殺菌して水相を得た。次に、該油相に該水相を添加し、プロペラ攪拌機で撹拌して、油中水型に乳化した後、コンビネーターによって急冷捏和して、25cm×21cm×1cmのシート状に成型した下記の配合割合のロールイン用マーガリン(製菓用)を得た。
マーガリン配合
油脂組成物 82質量部
水 15.5質量部
脱脂粉乳 1.5質量部
食塩 1.0質量部
【0095】
パイの製造
下記の配合および製造条件でパイを製造した。具体的には、上記で製造したロールイン用マーガリン以外の材料をミキサーに投入し、低速3分、中高速5分ミキシングを行った後、5℃にて60分リタードさせた。この生地にロールイン用マーガリンを折り込み、ゲージ厚4mmで3折り、4折りを加え5℃にて60分リタードさせた。さらにゲージ厚4mmで3折り、4折りを加え5℃にて60分リタードさせた。その後ゲージ厚3mmに延ばした後、10cm角(10cm×10cm)にカットし、焼成してパイを得た。
パイの配合
強力粉 70質量部
薄力粉 30質量部
上白糖 5質量部
食塩 1質量部
全卵(正味) 10質量部
練り込み用マーガリン
(アドフリー440ミヨシ油脂製乳化剤無添加マーガリン) 10質量部
冷水 40質量部
ロールイン用マーガリン(製菓用) 生地100質量部に対して70質量部
パイ生地の製造条件
ミキシング: 低速3分、中高速5分
リタード: 5℃ 60分
ロールイン: 3折×1回
(ゲージ厚4mm)4折×1回 5℃にてリタード60分
3折×1回
4折×1回 5℃にてリタード60分
成型: シーターゲージ厚3mm
焼成: 175℃ 20分
【0096】
実施例25〜35および比較例13〜18で製造したロールイン用マーガリン(製菓用)およびパイについて、上記のロールイン用マーガリン(製パン用)と同様の評価を行った。それぞれの評価結果は表12および表13に示す。
【0097】
【表12】
【0098】
【表13】