(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
直列で接続され、最上流に位置する第1の浸透気化膜モジュールと、最下流に位置する第2の浸透気化膜モジュールと、を含む複数の浸透気化膜モジュールであって、前記第1の浸透気化膜モジュールと前記第2の浸透気化膜モジュールの浸透気化膜はゼオライト膜からなり、各浸透気化膜モジュールは、水と水より沸点の高い液体有機物との混合液を供給され、供給される前記混合液を、前記供給される混合液よりも前記液体有機物の濃度が高い濃縮液と、前記供給される混合液よりも前記水の濃度が高い希薄蒸気と、に分離し、前記第2の浸透気化膜モジュールを除く各浸透気化膜モジュールは、分離された前記濃縮液を前記供給される混合液として、次段の浸透気化膜モジュールに供給する、複数の浸透気化膜モジュールと、
前記第1の浸透気化膜モジュールに供給される前記混合液を貯留する貯留槽と、
前記第1の浸透気化膜モジュールで生成された前記希薄蒸気を外部に放出する希薄蒸気放出手段と、
前記第2の浸透気化膜モジュールで生成された前記希薄蒸気を前記貯留槽または前記貯留槽と前記第1の浸透気化膜モジュールを接続する配管に戻す再循環手段と、
前記第2の浸透気化膜モジュールで生成された前記濃縮液の回収手段と、
を有し、
前記液体有機物はN−メチル−2−ピロリドンである液体有機物と水の分離システム。
前記第1の浸透気化膜モジュールは第1の浸透気化膜を備え、前記第1の浸透気化膜は、前記第1の浸透気化膜モジュールの第1の入口側空間を第1の透過側空間から仕切るとともに、前記第1の入口側空間に供給される前記混合液を、前記第1の入口側空間に滞留する第1の濃縮液と、前記第1の透過側空間に透過する第1の希薄蒸気と、に分離し、
前記第2の浸透気化膜モジュールは第2の浸透気化膜を備え、前記第2の浸透気化膜は、前記第2の浸透気化膜モジュールの第2の入口側空間を第2の透過側空間から仕切るとともに、前記第2の入口側空間に供給される前記混合液を、前記第2の入口側空間に滞留する第2の濃縮液と、前記第2の透過側空間に透過する第2の希薄蒸気と、に分離し、
前記希薄蒸気放出手段は、前記第1の透過側空間に接続された第1の真空ポンプと、前記第1の希薄蒸気を外部に放出する前に冷却し、凝縮させる冷却手段と、を有し、
前記再循環手段は、前記第2の透過側空間に接続された第2の真空ポンプと、前記第2の希薄蒸気を前記貯留槽または前記配管に戻す前に冷却し、凝縮させる冷却手段と、を有する、請求項1または2に記載の分離システム。
前記第1及び第2の浸透気化膜モジュールはそれぞれ複数のゼオライト膜を有し、前記第1及び第2の浸透気化膜モジュールの前記複数のゼオライト膜は、A型ゼオライトからなる、請求項1から3のいずれか1項に記載の分離システム。
前記第1及び第2の浸透気化膜モジュールはそれぞれ複数のゼオライト膜を有し、前記第1の浸透気化膜モジュールの前記複数のゼオライト膜は、A型ゼオライトと、T型、Y型、MOR型、CHA型から選択される少なくとも1種類のゼオライトからなり、前記第2の浸透気化膜モジュールの前記複数のゼオライト膜は、前記A型ゼオライトからなる、請求項1から3のいずれか1項に記載の分離システム。
直列で接続され、最上流に位置する第1の浸透気化膜モジュールと、最下流に位置する第2の浸透気化膜モジュールと、を含む複数の浸透気化膜モジュールを用いた、液体有機物と水の分離方法であって、前記第1の浸透気化膜モジュールと前記第2の浸透気化膜モジュールの浸透気化膜はゼオライト膜からなり、
各浸透気化膜モジュールで、供給される液体有機物と水の混合液を、前記供給される混合液よりも前記液体有機物の濃度が高い濃縮液と、前記供給される混合液よりも前記水の度が高い希薄蒸気と、に分離し、前記第2の浸透気化膜モジュールを除く各浸透気化膜モジュールで、分離された前記濃縮液を前記供給される混合液として、次段の浸透気化膜モジュールに供給する工程と、
前記第1の浸透気化膜モジュールで生成された前記希薄蒸気を外部に放出する工程と、
前記第2の浸透気化膜モジュールで生成された前記希薄蒸気を、前記第1の浸透気化膜モジュールに供給される前記混合液を貯留する貯留槽または前記貯留槽と前記第1の浸透気化膜モジュールを接続する配管に戻す工程と、
前記第2の浸透気化膜モジュールで生成された前記濃縮液を回収する工程と、
を有し、
前記液体有機物はN−メチル−2−ピロリドンである分離方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して本発明のいくつかの実施形態について説明する。本実施形態では液体有機物としてNMPが用いられるが、液体有機物はこれに限定されず、一般的には1気圧(1013hPa)時の沸点が水より高い液体有機物、好ましくは1気圧時の沸点が、浸透気化膜モジュールの一般的な運転温度である120℃、またはそれ以上の液体有機物を用いることができる。このような液体有機物の例を表1に示す。
【0013】
NMPはリチウムイオン電池における製造過程で使用される。リチウムイオン電池の正極及び負極は、主として活物質、集電体及びバインダーから構成されている。バインダーは一般的には、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を分散媒であるNMPに溶解させて製造されるバインダー混合スラリーとすることができる。活物質とバインダー混合スラリーとを集電体に塗布することで電極が製造される。NMPはスラリー塗布後の乾燥工程においてガス化し、環境への影響や費用の問題により大部分が回収される。最近は、回収したNMPがリチウムイオン電池の製造工程で再利用されることが多い。
【0014】
NMPは、排ガス中のNMPを吸着体または水スクラバーにより捕集することによって回収される。この工程により、NMP濃度70〜90%のNMPと水との混合液が得られる。その後、混合液からNMPが分離される。本発明の液体有機物と水の分離システム及び分離方法は、この混合液からNMPを分離する工程に用いられる。
【0015】
図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係る液体有機物と水の分離システム(以下、分離システム1という)の構成について説明する。
【0016】
分離システム1は、水とNMPとの混合液を貯留する貯留槽2を有している。貯留槽2は上述した回収工程で得られた混合液Sを貯留する。貯留槽2は他の任意の方法によって供給または製造された水とNMPとの混合液を貯留することもできる。
【0017】
貯留槽2の下流には直列で接続された複数の浸透気化膜モジュール3,4が設けられている。複数の浸透気化膜モジュール3,4は、本実施形態では上流に位置する第1の浸透気化膜モジュール3と、第1の浸透気化膜モジュール3の下流に位置する第2の浸透気化膜モジュール4と、からなっている。「上流」及び「下流」は混合液Sの流れる方向に沿って定義される。
【0018】
第1の浸透気化膜モジュール3は貯留槽2から混合液Sを供給され、供給された混合液Sを供給された混合液SよりもNMPの濃度が高い第1の濃縮液C1と、供給された混合液Sよりも水の濃度が高い第1の希薄蒸気V1と、に分離する。第1の浸透気化膜モジュール3は、第1の濃縮液C1を第2の浸透気化膜モジュール4に、新たな混合液C1として供給する。
【0019】
第2の浸透気化膜モジュール4は第1の浸透気化膜モジュール3から混合液C1を供給され、供給された混合液C1を供給された混合液C1よりもNMPの濃度が高い第2の濃縮液C2と、供給された混合液C1よりも水の濃度が高い第2の希薄蒸気V2と、に分離する。第2の浸透気化膜モジュール4で生成された第2の濃縮液C2は回収手段50によって回収され、リチウムイオン電池における製造過程で再使用される。
【0020】
複数の浸透気化膜モジュールは、直列で接続された3以上の浸透気化膜モジュールで構成することもできる。その場合、最上流に位置する浸透気化膜モジュールが本実施形態の第1の浸透気化膜モジュール3に対応し、最下流に位置する浸透気化膜モジュールが本実施形態の第2の浸透気化膜モジュール4に対応する。各浸透気化膜モジュールは以下のように作動する。
【0021】
第1の浸透気化膜モジュール3は貯留槽2から混合液Sを供給され、供給された混合液Sを供給された混合液SよりもNMPの濃度が高い第1の濃縮液C1と、供給された混合液Sよりも水の濃度が高い第1の希薄蒸気V1と、に分離する。第1の浸透気化膜モジュール3は、第1の濃縮液C1を次段の浸透気化膜モジュールに、新たな混合液C1として供給する。
【0022】
第1の浸透気化膜モジュール3と第2の浸透気化膜モジュール4の中間に位置する各浸透気化膜モジュールは、前段の浸透気化膜モジュールで生成された濃縮液を新たな混合液として供給され、供給された混合液を供給された混合液よりもNMPの濃度が高い濃縮液と、供給された混合液よりも水の濃度が高い希薄蒸気と、に分離する。各浸透気化膜モジュールは、濃縮液を次段の浸透気化膜モジュールに、新たな混合液として供給する。
【0023】
第2の浸透気化膜モジュール4は、前段の浸透気化膜モジュールで生成された濃縮液を新たな混合液として供給され、供給された混合液を供給された混合液よりもNMPの濃度が高い第2の濃縮液C2と、供給された混合液よりも水の濃度が高い第2の希薄蒸気V2と、に分離する。第2の浸透気化膜モジュール4で生成された第2の濃縮液C2は回収手段50によって回収され、リチウムイオン電池における製造過程で再使用される。
【0024】
第1の浸透気化膜モジュール3は第1の浸透気化膜31を備えている。第1の浸透気化膜31は、第1の浸透気化膜モジュール3の第1の入口側空間32を第1の透過側空間33から仕切るとともに、第1の入口側空間32に供給される混合液を、第1の入口側空間32に滞留する第1の濃縮液C1と、第1の透過側空間33に透過する第1の希薄蒸気V1と、に分離する。
【0025】
第2の浸透気化膜モジュール4は第2の浸透気化膜41を備えている。第2の浸透気化膜41は、第2の浸透気化膜モジュール4の第2の入口側空間42を第2の透過側空間43から仕切るとともに、第2の入口側空間42に供給される混合液を、第2の入口側空間42に滞留する第2の濃縮液C2と、第2の透過側空間43に透過する第2の希薄蒸気V2と、に分離する。
【0026】
図2は浸透気化膜モジュールの概略構成を示している。第1、第2の浸透気化膜モジュール3,4(及び他の浸透気化膜モジュール)は実質的に同一の構成を備えることができる。
図2(a)の全体断面図に示すように、浸透気化膜モジュール3,4は、円筒状のケーシング5と、ケーシング5の内部に配置された多数の管体6と、を有している。
図2(b)は
図2(a)中のb−b線に沿った管体6の断面図を示している。各管体6は、円筒形状の無機材料からなる基材7と、基材7の外周面に設けられたゼオライト膜8と、で構成されている。基材7はアルミナ、ムライト等の多孔質性のセラミック材料からなっている。浸透気化膜モジュールの構成は
図2に限定されず、浸透気化膜を使用している限り、任意の形状及び構成のモジュールを用いることができる。
【0027】
ケーシング5の内部は仕切り板9で上部空間10と下部空間11とに仕切られている。管体6の上端12は開かれており、下端13は閉じられている。上部空間10は管体6の上端12を収容しており、下部空間11は管体6の上端12を除くほとんどの部位を収容している。管体6の内部6aと上部空間10は透過側空間(第1及び第2透過側空間33,43)を構成し、その他の内部空間は入口側空間(第1及び第2入口側空間32,42)を構成している。ケーシング5の下部に設けられた入口部14から混合液が供給され(矢印A1)、下部空間11に充填される。混合液は管体6の側壁を構成するゼオライト膜8と接触することで脱水され、主に水が管体6の内部6aに透過し(矢印A2)、NMPの濃縮液が管体6の外部に残留する(矢印A3)。NMPの濃縮液は下部空間11の上部に設けられた濃縮液出口15から排出され(矢印A4)、管体6の内部6aに透過した、主に水からなる蒸気は管体6の上端12を通って上部空間10に流入し(矢印A5)、上部空間10に開口する蒸気出口16から排出される(矢印A6)。
【0028】
ゼオライト膜8は、A型、Y型、T型、MOR型、CHA型等のゼオライトを使用することができる。これらのゼオライトは骨格構造及びSiとAlの比率が異なり、Si/Al比が高いほど疎水性、すなわち水を透過させにくい性質がある。A型は特に脱水効率に優れ、好適に使用できる。一つの好ましい実施形態では、第1及び第2の浸透気化膜31,41のゼオライト膜8はA型ゼオライトのみで構成される。
【0029】
第1の浸透気化膜31のゼオライト膜8は、A型以外、例えばT型、Y型、CHA型のゼオライトを用いることが好ましい場合もある。A型ゼオライトは、水分濃度が高い場合や、酸などの不純物が混合液中に含まれる場合に、リークや性能の低下が生じやすい。これに対し、A型以外のゼオライトは上述の環境でより長期間性能を保持することができる。後述するように、第1の浸透気化膜31のゼオライト膜8は第2の浸透気化膜41のゼオライト膜8と比べ高い脱水性能を必要としない。また、後述するように、第1の浸透気化膜モジュール3から発生した第1の希薄蒸気V1は系外に放出されるため、第1の浸透気化膜31のゼオライト膜8のリークを防止する必要性は特に高い。このため、他の好ましい実施形態では、第1の浸透気化膜31のゼオライト膜8は、A型ゼオライトを部分的に含んでいる。すなわち、第1の浸透気化膜31のゼオライト膜8は、A型ゼオライトと、上述した他のゼオライト(例えばT型、Y型、MOR型、CHA型)から選択された少なくとも1種類のゼオライトと、を含んでいる。
【0030】
この場合でも、第2の浸透気化膜41のゼオライト膜8は、A型ゼオライトからなることが望ましい。第2の浸透気化膜41に供給される混合液は既に相当量脱水されており、含有水分が少ないため、混合液中の水分が膜性能に悪影響を及ぼす可能性は低い。また、混合液中の水分が少ないため、脱水の駆動力が小さく、A型以外の膜ではA型よりも大きな膜面積を必要とする。このため、A型以外の膜では装置規模、装置コストが大きくなりやすい。
【0031】
分離システム1は、第1の浸透気化膜モジュール3で生成された第1の希薄蒸気V1を外部に放出する希薄蒸気放出手段34を有している。希薄蒸気放出手段34は、第1の透過側空間33に接続された第1のドレンポット35と、第1のドレンポット35に接続された(あるいは、間接的に第1の透過側空間33に接続された)第1の真空ポンプ36と、を有している。第1の真空ポンプ36の入口配管37は第1のドレンポット35の上部空間35aに開口している。第1の真空ポンプ36は第1の透過側空間33を負圧にし、第1の浸透気化膜31に脱水のための駆動力を与える。希薄蒸気放出手段34はさらに、第1の浸透気化膜モジュール3と第1のドレンポット35との間に、第1の希薄蒸気V1を凝縮させる第1の冷却手段38を有している。第1の希薄蒸気V1が第1の冷却手段38で凝縮する際、VOC(揮発性有機化合物)が蒸気とともに液化して、凝縮した蒸気とともに第1のドレンポット35に取り込まれる。すなわち、VOCを回収する第1のドレンポット35を設けることで、VOCが気相で外部に排出されることが防止される。これによってVOCの放出管理が容易となり、VOCの排出規制への適合も容易となる。第1の冷却手段38は凝縮に必要な温度まで第1の希薄蒸気V1を冷却すればよく、例えば冷却塔を用いることができる。第1の透過側空間33に透過した第1の希薄蒸気V1は第1の冷却手段38によって、外部に放出される前に冷却され、凝縮する。凝縮水は第1のドレンポット35に回収される。回収された凝縮水は、第1のドレンポット35の底部に接続された排水管39を介して、外部に放出される。
【0032】
分離システム1は、第2の浸透気化膜モジュール4で生成された第2の希薄蒸気V2を貯留槽2に戻す再循環手段44を有している。再循環手段44は、第2の透過側空間43に接続された第2のドレンポット45と、第2のドレンポット45に接続された(あるいは、間接的に第2の透過側空間43に接続された)第2の真空ポンプ46と、を有している。第2の真空ポンプ46の入口配管47は第2のドレンポット45の上部空間45aに開口している。第2の真空ポンプ46は第2の透過側空間43を負圧にし、第2の浸透気化膜41に脱水のための駆動力を与える。再循環手段44はさらに、第2の浸透気化膜モジュール4と第2のドレンポット45との間に第2の冷却手段48を有している。
【0033】
第2の冷却手段48は第2の希薄蒸気V2を凝縮させるだけでなく、第2の透過側空間43の真空度を高めるために、できるだけ低い温度まで第2の希薄蒸気V2を冷却する必要があるため、冷水やブラインを用いることが好ましい。第2の透過側空間43に透過した第2の希薄蒸気V2は貯留槽2に戻される前に第2の冷却手段48によって冷却され、凝縮する。凝縮水は第2のドレンポット45に回収される。回収された凝縮水は、第2のドレンポット45の底部に接続された排水管49を介して、貯留槽2に戻される。回収された凝縮水は、貯留槽2と第1の浸透気化膜モジュール3を接続する配管58に戻すこともできる。すなわち排水管49は配管58に合流していてもよい。
【0034】
分離システム1は、貯留槽2と第1の浸透気化膜モジュール3との間に第1のイオン交換樹脂51を有している。混合液には酸性物質や塩基性物質が含まれている場合があり、特に塩基性物質、とりわけアミン類がNMPに残留すると、バインダーを構成するPVDFが脱フッ化反応を起こす。脱フッ化反応を生じたPVDFは粘性が変化し、スラリー塗布工程に影響を及ぼす可能性がある。そのため、第1のイオン交換樹脂51で塩基性物質を除去することが望ましい。
【0035】
分離システム1は、貯留槽2と第1の浸透気化膜モジュール3との間にフィルタ52を有している。ゼオライト膜8は混合液に含まれる微粒子が付着(目詰まり)することで、脱水性能が低下する可能性がある。微粒子が第1の浸透気化膜モジュール3に流入する直前でフィルタ52によって微粒子を除去することが望ましい。フィルタ52としては精密ろ過膜(MF膜)、限外ろ過膜(UF膜)が好適に使用できる。本実施形態ではフィルタ52は第1のイオン交換樹脂51の上流に設けられているが、第1のイオン交換樹脂51の下流に設けられていてもよい。
【0036】
分離システム1は、第1の浸透気化膜モジュール3の直前、すなわち、フィルタ52及び第1のイオン交換樹脂51と第1の浸透気化膜モジュール3の間に、加熱手段53を有している。加熱手段53は例えば、配管の外周に取り付けられるリボンヒータ、ベルトヒータであってよい。加熱手段53は配管中を流れる混合液の温度を少なくとも120℃まで高めることができる。混合液を加熱することで、第1及び第2の浸透気化膜モジュール3,4における脱水性能を高めることができる。
【0037】
分離システム1は、第2の浸透気化膜モジュール4の第2の入口側空間42に接続された冷却手段54を有している。冷却手段54は、高温の第2の濃縮液C2を、回収手段50に移送する前に冷却する。
【0038】
次に、以上説明した分離システム1の動作例について説明する。
【0039】
まず、リチウムイオン電池の製造に用いられた使用済みのNMPと水との混合液が貯留槽2に供給される。混合液Sはフィルタ52で不溶解性の微粒子等の不純物を除去され、次に、第1のイオン交換樹脂51で溶解性の不純物、特にアミン類が除去される。次に、混合液は加熱手段53で70℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上の温度に加熱され、第1の浸透気化膜モジュール3に供給される。なお、膜とモジュールの接合部分等の耐熱性の観点から、混合液の供給温度は200℃未満であることが望ましい。
【0040】
第1の浸透気化膜モジュール3は第1の浸透気化膜31によって第1の入口側空間32と、第1の透過側空間33と、に分離されている。混合液Sが加熱されていること、及び第1の透過側空間33が第1の真空ポンプ36によって負圧にされていることによって、第1の浸透気化膜31には、混合液Sを第1の透過側空間33に透過させる駆動力が与えられる。ゼオライト膜8を有する第1の浸透気化膜31は主として水を透過させ、第1の入口側空間32にNMPの濃度の高められた第1の濃縮水C1が生成され、第1の透過側空間33にNMPを少量含んだ第1の希薄蒸気V1が生成される。
【0041】
NMPの濃縮水C1は次に、第2の浸透気化膜モジュール4に供給され、同様の原理によって、第2の入口側空間42にNMPの濃度のさらに高められた第2の濃縮水C2が生成され、第2の透過側空間43にNMPを少量含んだ第2の希薄蒸気V2が生成される。第2の濃縮水C2は冷却手段54で冷却され、回収手段50に移送されて、リチウムイオン電池の製造プロセスで使用される。
【0042】
第1の透過側空間33に生成された第1の希薄蒸気V1は第1の冷却手段38によって冷却され、凝縮する。凝縮水は第1のドレンポット35に収集され、外部に排水される。第2の透過側空間43に生成された第2の希薄蒸気V2は第2の冷却手段48によって冷却され、凝縮する。凝縮水は第2のドレンポット45に収集され、貯留槽2に戻され、再び上述の工程が繰り返される。従って、貯留槽2に戻されたNMPは次サイクル以降の工程で回収することができる。
【0043】
浸透気化膜モジュールの脱水性能は、浸透気化膜を挟んだ両側、すなわち入口側空間と透過側空間の水分密度差と、透過側の真空度に依存する。具体的には入口側空間の水分密度が大きいほど、あるいは透過側の真空度が高いほど(絶対圧力が低いほど)脱水性能が向上する。第1の浸透気化膜モジュール3に供給される混合液は水の濃度が通常10〜30%であり、第1の浸透気化膜モジュール3は大きな水分密度差によって、大量の水を分離することができる。これに対し、第2の浸透気化膜モジュール4は既に脱水された混合液を処理するため、分離される水は少量である。一方、NMPの透過量は水分密度差に大きく依存しない。このため、第1の浸透気化膜モジュール3で生成される水蒸気のNMP濃度は極めて低く、第2の浸透気化膜モジュール4で生成される水蒸気のNMP濃度はこれより高くなる。
【0044】
本実施形態では、第1の浸透気化膜モジュール3で生成される、NMP濃度の低い第1の希薄蒸気V1(凝縮水)は外部に排出され、第2の浸透気化膜モジュール4で生成される、NMP濃度の高い第2の希薄蒸気V2(凝縮水)は貯留槽2に戻される。これによって、システム全体のNMP回収効率を高めることができる。貯留槽2に戻される凝縮水は、第1の浸透気化膜モジュール3で分離される水に比べ少量であり、水を戻すことによる脱水効率の低下は限定的である。
【0045】
また、浸透気化膜モジュールの脱水性能は、供給される混合液の単位流量あたりの浸透気化膜流路面積(浸透気化膜の流路面積を混合液の流量で割った値)と正の相関関係にある。従って、単一の浸透気化膜モジュールで必要な脱水性能を得る場合、浸透気化膜流路面積を増加させる必要がある。一方、NMPの透過量も浸透気化膜流路面積と正の相関関係にあるため、脱水性能を高めるために流路面積の大きな単一の浸透気化膜モジュールを用いた場合、NMPの透過量もこれに応じて増加する。これに対し本実施形態では、第1の浸透気化膜モジュール3は必要な脱水量の一部を脱水すればよく、流路面積を過度に大きくする必要がない。第2の浸透気化膜モジュール4は、透過するNMPは貯留槽2に回収されるため、脱水性能を高めるために流路面積を大きくしても問題とならない。換言すれば、第1の浸透気化膜モジュール3は脱水量とNMP透過量のバランスが考慮されるが、第2の浸透気化膜モジュール4はこのようなバランスを考慮する必要がない。このように2つの浸透気化膜モジュールを直列で設け、第2の浸透気化膜モジュール4を透過するNMPを回収することで、必要な脱水性能を得るとともに、NMPの系外放出量を抑制することができる。以上のことから明らかなように、第2の浸透気化膜モジュール4(より一般的には、凝縮水が回収される浸透気化膜モジュール)は、第1の浸透気化膜モジュール3(より一般的には、凝縮水が系外に放出される浸透気化膜モジュール)と比べ、浸透気化膜の流路面積(あるいは混合液の単位流量あたりの流路面積)を大きくすることが可能である。
【0046】
放出される凝縮水のNMP濃度が低いことから、放出時の処理も容易となる。上述のとおり、NMPの排出はVOC排出規制の適用を受ける場合があるが、NMP濃度が低い凝縮水はそのまま、または希釈して、排出できる可能性が高い。ただし、放出される凝縮水にはNMP由来の窒素、炭素成分が高濃度に含まれるため、除去することが望ましい場合がある。高濃度の炭素を除去するため、流動担体型嫌気処理、嫌気MBR法等の嫌気処理が適用できる。高濃度の窒素を除去する方法として、生物学的窒素除去方法が多数提案されている。例えば、グラニュールを利用した方法が適用できる場合がある(特開2006−289310号公報)。この方法では、硝化菌グラニュールの核として、嫌気性細菌を主体とするグラニュールが利用され、安定的な硝化処理が行われる。グラニュールは、UASB(Upflow Anaerobic Sludge Blanket;上向流嫌気性スラッジブランケット)に代表される反応装置で形成される。
【0047】
第1の浸透気化膜モジュール3は大きな水分密度差に起因する高い脱水性能を有しているため、さらに脱水性能を上げるために真空度を高める必要性が小さい。浸透気化膜モジュール3,4の透過側空間33,43に作用する負圧はドレンポット35,45の空間部35a,45aの水蒸気圧で決まる。水蒸気圧が低下すると、真空度が高められ、脱水性能が向上する。一方、水蒸気圧は凝縮水の水温が低いほど低下するため、脱水性能を上げるためには凝縮水を低温で冷却することが必要となる。しかし、第1の浸透気化膜モジュール3で発生した第1の希薄蒸気V1は30〜40℃程度まで冷却すれば十分であり、外気を利用した冷却塔など、運転コストの低い冷却手段38を用いることができる。
【0048】
これに対し、第2の浸透気化膜モジュール4は最終段の浸透気化膜モジュールであり、必要とされるNMP濃度を実現するため、高い真空度が求められる。一例では1.0kPA以下の真空度が要求される。このような高い真空度を実現するためには冷凍機などの運転コストの高い冷却手段を用いる必要がある。しかし、前述のように第2の浸透気化膜モジュール4で生成される第2の希薄蒸気V2は少量であり、運転コストの増加は限定的である。
【0049】
このように、第1の浸透気化膜モジュール3で生成された第1の希薄蒸気V1は、凝縮後排出し、第2の浸透気化膜モジュール4で生成された第2の希薄蒸気V2は、凝縮後貯留槽2に戻すことで、NMPの回収効率の改善と、動力費の抑制を実現することができる。
【0050】
分離システム1が3つ以上の直列配置された浸透気化膜モジュールを備える場合、第1の浸透気化膜モジュール3と第2の浸透気化膜モジュール4の間の中間の浸透気化膜モジュールから生成される希薄蒸気は、第1の希薄蒸気V1と同様外部に排出することもできるし、第2の希薄蒸気V2と同様貯留槽2に戻すこともできる。ただし、外部に排出される希薄蒸気は冷却塔等の冷却手段で冷却することが望ましく、貯留槽2に戻される希薄蒸気は冷凍機等の冷却手段で冷却することが望ましい。
【0051】
特許文献1に記載されているような単段式の浸透気化膜モジュールに対する本発明のメリットは以下の通りである。
【0052】
(1)まず、NMPの回収効率が改善される。単段式の浸透気化膜モジュールでは、単一の浸透気化膜モジュールで所望のNMP濃度を得ることが必要である。特にリチウムイオン電池の製造工程では水分濃度を0.1%以下、好ましくは0.05%以下、より好ましくは0.02%以下まで低下させることが必要とされる。このような水分濃度を実現するためには浸透気化膜の透過側空間を高い真空度に維持する必要がある。浸透気化膜モジュールは大きな水分密度差によって、大量の水を分離することができるが、脱水性能を高めるために流路面積を増加させた場合、透過側空間に透過するNMPの量が増え、結果として透過側蒸気のNMP濃度が高くなる。従って、必要な脱水性能を確保しつつNMPの回収効率を高めることが困難である。これに対して本発明では、第1の浸透気化膜モジュール3で大量の水を分離できるとともに、透過側空間に透過するNMPの量は限定的である。従って、NMPの回収効率を高めることが可能となる。透過側蒸気のNMP濃度が低いため、排水処理の負担も小さい。
【0053】
(2)次に、運転コストが改善される。単段式の浸透気化膜モジュールでは、浸透気化膜の透過側空間を高い真空度に維持するため、大量の排出蒸気を低い温度(例えば0℃)で冷却する必要がある。そのため、冷凍機などの運転コストが増大する。これに対して本発明では、第1の浸透気化膜モジュール3で大量に発生する蒸気を低い温度で冷却する必要がなく(例えば30〜40℃で十分である)、冷却塔などの運転コストの低い手段を採用できる。第2の浸透気化膜モジュール4で発生する蒸気は冷凍機などで冷却する必要があるが、冷却する蒸気量が限られているため、トータルの運転コストが大幅に低減される。
【0054】
(3)さらに、排水処理の負担が改善される。単段式の浸透気化膜モジュールでは、透過側蒸気のNMP濃度が高いため(例えば10%程度)、排水処理の負担も大きい。これに対して本発明では、排出される蒸気のNMP濃度が低いため(例えば2%程度)、排水処理の負担が小さい。
【0055】
また、後述する比較例で示すように、透過水の全量を貯留槽2に戻す場合、大量の水が貯留槽2に戻されるため、浸透気化膜モジュールでの脱水負荷がサイクル数の増加とともに増加する。本実施形態では透過水に含まれる水の一部が貯留槽2に戻されるが、浸透気化膜モジュールに供給される水の濃度が上昇し、脱水駆動力が増えるため、水の増加による影響が相殺される。
【0056】
本実施形態では、液相の混合液を浸透気化膜モジュールに供給しているが、従来の蒸気透過法のように蒸気を浸透気化膜モジュールに供給することは下記の理由から好ましくない。すなわち、浸透気化膜モジュールに凝縮水を蒸気相で戻す必要があり、蒸発器が別途必要になる。また、NMP等の高沸点液体有機物と水の混合液は、まず水が蒸発するため、浸透気化膜モジュールに水の蒸気が供給されやすくなる。水と高沸点液体有機物の濃度を浸透気化膜モジュールにとって適切な範囲に制御するため、水の一部を脱水するための設備が新たに必要となる。
【0057】
本発明の分離システム1では、さらに以下の変形実施形態が可能である。
【0058】
まず、希薄蒸気放出手段34は、第1の希薄蒸気V1に含まれるNMPの濃度を検出するセンサ55を有していてもよい。上述のように、第1の浸透気化膜モジュール3では大量の水が分離されるため、凝縮液に含まれるNMPの濃度は極めて低い。従って、第1の浸透気化膜31にリークが発生し第1の透過側空間33にNMPが侵入した場合、NMPの濃度は急激に上昇し、センサ55で容易に検知することができる。これによって、分離システム1をただちに停止し、大量のNMPの環境放出を防止することができる。また、上流の浸透気化膜は大量の水を処理するため、下流側の浸透気化膜より劣化しやすい。センサ55でNMPの濃度を監視することで、最も劣化しやすい第1の浸透気化膜31の状態を把握することができる。以上の効果は、第1の浸透気化膜モジュール3と第2の浸透気化膜モジュール4の直列構成を採用したことで得られることに留意されたい。
【0059】
さらに、再循環手段44は第2のイオン交換樹脂56を有していてもよい。浸透気化膜モジュールで分離された水には、浸透気化膜の基材7からはく離した無機成分由来、あるいは配管由来の溶解性不純物が混入している。そのため、本実施形態では上述した第1のイオン交換樹脂51に加え、第2のイオン交換樹脂56を有している。イオン交換樹脂のイオン除去効率は処理される液体の水分濃度と正の相関関係があり、水分濃度が高い液体ほどイオンが効率的に除去される。第2の浸透気化膜モジュール4で生成される凝縮水は、貯留槽2と第1の浸透気化膜モジュール3の間を流れる混合液よりも水分含有率が高い場合が多く、このような場合イオンの除去が容易である。このため、貯留槽2に凝縮水を戻す前にイオンを除去することで、システム全体のイオン除去効率を高めることができる。また、第1のイオン交換樹脂51の負荷を軽減し、使用するイオン樹脂の節約や通水可能時間の延長を実現することが可能となる。なお、排水管49を配管58に合流させる場合、第2のイオン交換樹脂56の出口側配管を配管58に接続することが好ましい。
【0060】
(実施例)
実施例では、
図3に示す構成の分離システムでNMPの回収効率などを測定した。ゼオライト膜8はA型ゼオライト膜を用いた。イオン交換樹脂はダウケミカル社MR型混床樹脂EG290を用いた。MF膜は膜厚0.1μmのポリエチレンフィルターを用いた。混合液はMF膜52及びイオン交換樹脂51で処理した後、蒸気で120℃まで加熱し(加熱手段53)、第1及び第2の浸透気化膜モジュール3,4に順次供給した。第1の浸透気化膜モジュール3で生成された第1の希薄蒸気V1は冷却水で冷却し(第1の冷却手段38)、排出した。第2の浸透気化膜モジュール4で生成された第2の希薄蒸気V2はブラインで冷却し(第2の冷却手段48)、貯留槽2との合流点に設けたタンク57に戻した。
【0061】
(比較例)
比較例では、
図4に示す構成の分離システムでNMPの回収効率などを測定した。第1及び第2の浸透気化膜モジュール3,4で生成された希薄蒸気は合流させた後、ブラインで冷却し(第2の冷却手段48)、排出した。その他の条件は実施例と同じとした。
【0062】
実施例の運転データを表2に、比較例の運転データを表3にそれぞれ示す。実施例でのNMPの回収率は99.50%であり、比較例の98%より良好である。実施例では透過液中のNMP量が比較例の1/4に減少しており、従ってNMPの未回収率も1/4に低減した。第1の浸透気化膜モジュール3で生成された第1の希薄蒸気V1を常温の冷却水で冷却したため、実施例の第1の浸透気化膜モジュール3にかかる負圧は6kPaAであった。これに対し、実施例、比較例とも第2の浸透気化膜モジュール4にかかる負圧は1kPaAであった。このため、実施例ではブラインの冷却エネルギも減少した。