特許第6289875号(P6289875)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6289875熱交換器アッセンブリ及び車両ヒータ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6289875
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】熱交換器アッセンブリ及び車両ヒータ装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20180226BHJP
   F28D 7/10 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
   B60H1/22 631Z
   F28D7/10 A
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-235906(P2013-235906)
(22)【出願日】2013年11月14日
(65)【公開番号】特開2014-97787(P2014-97787A)
(43)【公開日】2014年5月29日
【審査請求日】2016年7月6日
(31)【優先権主張番号】10 2012 220 792.9
(32)【優先日】2012年11月14日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513287336
【氏名又は名称】エーバーシュペッヒャー クライメット コントロール システムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Eberspaecher Climate Control Systems GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル フンブアク
【審査官】 河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−188040(JP,A)
【文献】 特開2003−080930(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0205066(US,A1)
【文献】 特開2004−028567(JP,A)
【文献】 特開2002−331821(JP,A)
【文献】 特開2001−330212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00−3/06
F28D 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器アッセンブリ、特に車両ヒータ装置用の熱交換器アッセンブリであって、
ハウジング長手方向軸線(L)の方向で延在するカップ状の熱交換器ハウジング(12)を備え、
該熱交換器ハウジング(12)は、外壁(18,20)及び内壁(22,24)を有し、前記外壁(18,20)と前記内壁(22,24)との間に、伝熱媒体流動室が形成されており、前記外壁(18,20)に、前記伝熱媒体流動室に向かって開放された少なくとも1つの伝熱媒体通流管体(50,52)が設けられ、前記熱交換器ハウジング(12)に、該熱交換器ハウジング(12)の、前記内壁(22,24)によって囲繞される内室(26)に向かって開放された排ガス通流管体(30)が設けられており、前記熱交換器ハウジング(12)は、外側周壁(18)及び外側底壁(20)を有する外側のハウジング部分(14)と、内側周壁(22)及び内側底壁(24)を有する内側のハウジング部分(16)とを有する熱交換器アッセンブリにおいて、
少なくとも1つの伝熱媒体通流管体(50,52)は、前記外側のハウジング部分(14)の外側周壁(18)の、前記外側底壁(20)から離れた軸方向の端部領域(44)に設けられており、
前記外側周壁(18)の第1の周方向領域(40)において、前記外側底壁(20)から比較的大きな延在長さを有して前記外側周壁(18)が形成され、かつ前記外側周壁(18)の第2の周方向領域(42)において、前記外側底壁(20)から比較的小さな延在長さを有して前記外側周壁(18)が形成されており、
前記少なくとも1つの伝熱媒体通流管体(50,52)は、前記第1の周方向領域(40)の領域に設けられており、
前記排ガス通流管体(30)は、前記内側のハウジング部分(16)の前記内側周壁(22)の周方向領域であって、前記外側のハウジング部分(14)の前記外側周壁(18)の前記第2の周方向領域(42)に対応し、該第2の周方向領域(42)に軸方向で隣接する周方向領域に設けられていることを特徴とする、熱交換器アッセンブリ、特に車両ヒータ装置用の熱交換器アッセンブリ。
【請求項2】
前記外側周壁(18)に2つの伝熱媒体通流管体(50,52)が、前記外側周壁(18)の略同じ軸方向の領域において、互いに周方向に間隔を置いて設けられている、請求項1記載の熱交換器アッセンブリ。
【請求項3】
前記少なくとも1つの伝熱媒体通流管体(50,52)と、前記排ガス通流管体(30)とは、前記熱交換器ハウジング(12)の略同じ軸方向の領域において、互いに周方向に間隔を置いて設けられている、請求項1又は2記載の熱交換器アッセンブリ。
【請求項4】
前記外側周壁(18)は、前記外側底壁(20)から離れて位置する軸方向の端部領域(44)において、前記ハウジング長手方向軸線(L)に関して斜めに終端している、請求項1から3までのいずれか1項記載の熱交換器アッセンブリ。
【請求項5】
前記少なくとも1つの伝熱媒体通流管体(50,52)は、略完全に、前記外側周壁(18)の、軸方向で前記外側周壁(18)の前記第2の周方向領域(42)を越えて突出する領域において、前記第1の周方向領域(40)に設けられている、請求項1から4までのいずれか1項記載の熱交換器アッセンブリ。
【請求項6】
前記内側のハウジング部分(16)の内側周壁(22)に、前記伝熱媒体流動室を軸方向で画成する端面(34)が設けられており、該端面(34)は、前記内側周壁(22)の第1の周方向領域(36)において、前記内側底壁(24)から比較的大きな軸方向の間隔を有し、かつ前記内側周壁(22)の第2の周方向領域(38)において、前記内側底壁(24)から比較的小さな軸方向の間隔を有する、請求項1からまでのいずれか1項記載の熱交換器アッセンブリ。
【請求項7】
前記端面(34)は、前記ハウジング長手方向軸線(L)に関して斜めに配置されている、請求項記載の熱交換器アッセンブリ。
【請求項8】
前記外側のハウジング部分(14)は、前記端面(34)の領域で前記内側のハウジング部分(16)に結合されている、請求項又は記載の熱交換器アッセンブリ。
【請求項9】
前記排ガス通流管体(30)は、前記内側周壁(22)に、該内側周壁(22)の第2の周方向領域(38)の領域において設けられている、請求項からまでのいずれか1項記載の熱交換器アッセンブリ。
【請求項10】
前記内側周壁(22)は、前記端面(34)を形成するために、段状の肉厚化部を有している、請求項からまでのいずれか1項記載の熱交換器アッセンブリ。
【請求項11】
前記内側周壁(22)は、前記内側底壁(24)から離れた軸方向の端部領域(28)において、前記ハウジング長手方向軸線(L)に対して略直交する平面で終端する、請求項1から1までのいずれか1項記載の熱交換器アッセンブリ。
【請求項12】
前記伝熱媒体流動室は、半径方向外側では実質的に前記外側のハウジング部分(14)の外側周壁(18)のみにより画成されている、請求項1から1までのいずれか1項記載の熱交換器アッセンブリ。
【請求項13】
前記外側のハウジング部分(14)は、前記少なくとも1つの伝熱媒体通流管体(50,52)と一体的に形成されているかつ/又は前記内側のハウジング部分(16)は、前記排ガス通流管体(30)と一体的に形成されている、請求項1から1までのいずれか1項記載の熱交換器アッセンブリ。
【請求項14】
前記外側のハウジング部分(14)は、プラスチック射出成形部品として形成されているかつ/又は前記内側のハウジング部分(16)は、金属ダイカスト部品として形成されている、請求項1から1までのいずれか1項記載の熱交換器アッセンブリ。
【請求項15】
燃料及び燃焼空気を供給すべきバーナ領域と、
請求項1から1までのいずれか1項記載の熱交換器アッセンブリ(10)と、
を備える車両ヒータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器アッセンブリ、特に車両ヒータ装置用の熱交換器アッセンブリであって、ハウジング長手方向軸線の方向で延在するカップ状の熱交換器ハウジングを備え、熱交換器ハウジングは、外壁及び内壁を有し、外壁と内壁との間に、伝熱媒体流動室が形成されており、外壁に、伝熱媒体流動室に向かって開放された少なくとも1つの伝熱媒体通流管体が設けられ、熱交換器ハウジングに、熱交換器ハウジングの、内壁によって囲繞される内室に向かって開放された排ガス通流管体が設けられており、熱交換器ハウジングは、外側周壁及び外側底壁を有する外側のハウジング部分と、内側周壁及び内側底壁を有する内側のハウジング部分とを有する熱交換器アッセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1において、原則カップ状に形成される熱交換器ハウジングを有する車両ヒータ装置用の熱交換器アッセンブリが公知である。この熱交換器ハウジングの外側のハウジング部分は、外側周壁及び外側底壁を備えて形成されている。カップ状の熱交換器ハウジングの内側のハウジング部分は、内側周壁及び内側底壁を有し、外側のハウジング部分内に装入されている。その結果、内側のハウジング部分は、外側のハウジング部分とともに伝熱媒体流動室を画成している。内側のハウジング部分の、外側底壁あるいは内側底壁から離れて位置する端部領域に、内側のハウジング部分は、外側周壁区分であって、内側周壁を囲繞し、略環状に形成され、かつ内側周壁に軸方向の端部領域で結合される外側周壁区分を備えて形成されている。外側周壁区分には、外側のハウジング部分の外側周壁が流体密に結合されている。外側周壁区分は、内側周壁の、カップ状の熱交換器ハウジングのハウジング長手方向軸線に関して同じ軸方向の領域に位置する区分とともに、環状の中間室を画成している。環状の中間室は、伝熱媒体流動室の一部を形成しており、半径方向外側で外側のハウジング部分の外側周壁によって閉鎖されていない。
【0003】
内側のハウジング部分には、外側周壁区分の軸方向の領域、つまり、伝熱媒体流動室の一部を形成する環状の中間室が形成されている軸方向の領域に、排ガス通流管体が設けられている。排ガス通流管体は、環状の中間室を貫通し、環状の中間室を半径方向内側で画成する内側周壁を貫いて、熱交換器ハウジングの、内側周壁によって囲繞される内室に向かって開放されている。車両ヒータ装置に組み込むと、燃焼排ガスが熱交換器ハウジングの内室を貫流するので、内側の熱交換器ハウジングは、燃焼排ガスから熱を受容し、伝熱媒体流動室内を流動する伝熱媒体、つまり例えば水に熱を伝達することができる。燃焼排ガスは、外側周壁区分と内側周壁との間の環状の中間室を貫通する排ガス通流管体を通してこの内室を後にする。
【0004】
外側のハウジング部分の外側周壁には、外側周壁が外側底壁に隣接する場所に、伝熱媒体通流管体が設けられている。伝熱媒体通流管体は、伝熱媒体流動室に向かって開放されており、これにより伝熱媒体流動室内への伝熱媒体の供給あるいは伝熱媒体流動室からの伝熱媒体の排出を可能にする。伝熱媒体通流管体は、例えば内側のハウジング部分に設けられた排ガス通流管体と同じ周方向領域に位置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許第0916908号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、構造が単純であって製造が容易な熱交換器アッセンブリ、特に車両ヒータ装置用の熱交換器アッセンブリを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、本発明に係る熱交換器アッセンブリ、特に車両ヒータ装置用の熱交換器アッセンブリであって、ハウジング長手方向軸線の方向で延在するカップ状の熱交換器ハウジングを備え、熱交換器ハウジングは、外壁及び内壁を有し、外壁と内壁との間に、伝熱媒体流動室が形成されており、外壁に、伝熱媒体流動室に向かって開放された少なくとも1つの伝熱媒体通流管体が設けられ、熱交換器ハウジングに、熱交換器ハウジングの、内壁によって囲繞される内室に向かって開放された排ガス通流管体が設けられており、熱交換器ハウジングは、外側周壁及び外側底壁を有する外側のハウジング部分と、内側周壁及び内側底壁を有する内側のハウジング部分とを有する熱交換器アッセンブリにより解決される。
【0008】
さらに、本発明に係る熱交換器アッセンブリでは、少なくとも1つの伝熱媒体通流管体が、外側のハウジング部分の外側周壁の、外側底壁から離れた軸方向の端部領域に設けられている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る熱交換器アッセンブリの構造では、少なくとも1つの伝熱媒体通流管体が、外側周壁の軸方向の領域であって、概してカップ状の構造を備えて形成される外側のハウジング部分の開放端の近傍に位置し、これにより製造工程時に容易に接近可能な軸方向の領域に設けられている。この種のハウジング部分は、一般に型充填法(Giessverfahren:溶融材料を型に充填して成形を行う方法)で製造され、この場合、型充填法に用いられる型が互いに入れ子に装入されなければならないため、少なくとも1つの伝熱媒体通流管体を、外側周壁の、外側底壁から離れて位置する軸方向の端部領域に形成したことによって、伝熱媒体通流管体を外側のハウジング部分の一体的な構成部分として形成し、かつ型充填法による工程の実施後、この工程のために必要な型部品を簡単に分解することが容易に可能となる。
【0010】
伝熱媒体流動室の信頼性の高い通流を可能とするため、外側周壁に2つの伝熱媒体通流管体が、外側周壁の略同じ軸方向の領域において、互いに周方向に間隔を置いて設けられている。この場合、一方の伝熱媒体通流管体は、伝熱媒体の供給のために使用可能であり、他方の伝熱媒体通流管体は、伝熱媒体の排出のために使用可能である。
【0011】
カップ状の熱交換器ハウジングを形成するためには、外側のハウジング部分と内側のハウジング部分とを互いに嵌め合わせる必要があるので、少なくとも1つの伝熱媒体通流管体と、排ガス通流管体とは、熱交換器ハウジングの同じ軸方向の領域において、互いに周方向に間隔を置いて設けられていると特に有利である。これにより、両ハウジング部分の挿嵌時に相互に挿嵌の妨げとなる事態は、回避される。同時に、熱交換器アッセンブリには、軸方向の領域に接続領域が形成される。このことは、接続したい管路のための易接近性を維持しつつ、例えば車両内への省スペースの格納を可能にする。
【0012】
排ガス通流管体が内側のハウジング部分に設けられているという事情を考慮しつつ、外側のハウジング部分の外側周壁により画成される伝熱媒体流動室をより大きな容積を備えて形成することができるように、外側周壁の第1の周方向領域において、外側底壁から比較的大きな延在長さを有して外側周壁が形成され、かつ外側周壁の第2の周方向領域において、外側底壁から比較的小さな延在長さを有して外側周壁が形成されており、少なくとも1つの伝熱媒体通流管体が、第1の周方向領域の領域に設けられていることが提案される。このために、例えば外側周壁は、外側底壁から離れて位置する軸方向の端部領域において、ハウジング長手方向軸線に関して斜めに終端するようになっていてもよい。択一的には、もちろん、外側底壁からそれぞれ異なる延在長さを有する周方向領域間の有段の移行も可能である。
【0013】
外側周壁に一体的に形成される伝熱媒体通流管体を形成するために、型充填法に用いられる相応の型を使用して、型充填法による工程を実施することは、少なくとも1つの伝熱媒体通流管体が、略完全に、外側周壁の、軸方向で外側周壁の第2の周方向領域を越えて突出する領域において、第1の周方向領域に設けられていると、特に簡単に実施可能である。
【0014】
内側のハウジング部分あるいはその内側周壁によって伝熱媒体流動室を、排ガス通流管体を設けるために十分なスペースが内側のハウジング部分に与えられているように軸方向で制限するために、内側のハウジング部分の内側周壁に、伝熱媒体流動室を軸方向で画成する端面が設けられており、端面が、内側周壁の第1の周方向領域において、内側底壁から比較的大きな軸方向の間隔を有し、かつ内側周壁の第2の周方向領域において、内側底壁から比較的小さな軸方向の間隔を有することが提案される。この場合、端面は、例えばハウジング長手方向軸線に関して斜めに配置されていてもよい。択一的には、本態様でも、内側底壁からそれぞれ異なる軸方向の間隔を有する領域間の有段の移行部が設けられていてもよい。外側のハウジング部分は、端面の領域で内側のハウジング部分に結合可能であり、排ガス通流管体は、好ましくは内側周壁に、内側周壁の第2の周方向領域の領域において設けられている。つまり、排ガス通流管体は、伝熱媒体流動室の適当な軸方向の制限により、熱交換器ハウジングの内室に連通する開口を形成するために十分な軸方向のスペースが内側のハウジング部分に残されている場所に設けられている。
【0015】
端面は、内側周壁において好ましくは段状の肉厚化により形成可能である。ここには、好ましくは垂直の段部が形成可能であるが、必須ではない。端面への湾曲した移行あるいは内側周壁のより厚みのある領域への湾曲した移行が、肉厚化部、ひいては端面を形成するために行われていてもよい。
【0016】
本発明に係る熱交換器アッセンブリは、一般に、カップ状の熱交換器ハウジングの、両ハウジング部分の底壁から離れた軸方向の端部領域で、他の構成群、特にバーナ領域に結合される。この領域で、排ガスの流出に対して流体密の閉鎖を簡単に実現するために、内側周壁が、内側底壁から離れた軸方向の端部領域において、ハウジング長手方向軸線に対して略直交する平面で終端することが提案される。
【0017】
製造技術的な理由から特に好ましい態様では、伝熱媒体流動室が、半径方向外側では実質的に外側のハウジング部分の外側周壁のみにより画成されていることが提案される。本態様では、つまり、半径方向外側での伝熱媒体流動室の画成が冒頭で述べた従来技術では内側のハウジング部分に外側周壁区分を形成することによって実施されるのと同様、伝熱媒体流動室の一部を内側のハウジング部分のみによって画成するアンダカット領域を、内側のハウジング部分に形成する必要がない。これにより、排ガス通流管体は、従来技術の場合にそうであるように内側の熱交換器ハウジングに形成される環状室を貫通せず、伝熱媒体流動室外に位置している。このことは、伝熱効率に影響を及ぼす可能性はあるものの、内側のハウジング部分を、これと一体的に設けられた排ガス通流管体とともに型充填法で製造することを著しく容易にする。
【0018】
既に上述したように、熱交換器ハウジングの本発明の構成により、特に簡単に、外側のハウジング部分が、少なくとも1つの伝熱媒体通流管体と一体的に形成されているかつ/又は内側のハウジング部分が、排ガス通流管体と一体的に形成されている。
【0019】
本発明の構造では、実質的に内側のハウジング部分のみが、比較的高温の燃焼排ガスと接触する。この理由から、内側のハウジング部分を例えばアルミニウム材料からなる金属ダイカスト部品として形成すると有利である。外側のハウジング部分は、このような高温には一般に曝されないので、コスト上の理由から、そして軽量化のために、好ましくはプラスチック射出成形部品として形成可能である。
【0020】
さらに本発明は、燃料及び燃焼空気を供給すべきバーナ領域と、上述の熱交換器アッセンブリとを備える車両ヒータ装置に関する。
【0021】
以下に、本発明について添付の図面を参照しながら詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】外側のハウジング部分及び内側のハウジング部分を備えるカップ状の熱交換器ハウジングの分解側面図である。
図2】外側のハウジング部分を図1に示した視線方向IIで見た図である。
図3】外側のハウジング部分を図2に示した視線方向IIIで見た図である。
図4】外側のハウジング部分を図2に示した視線方向IVで見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1には、熱交換器アッセンブリ10の熱交換器ハウジングが分解図で示され、全体として符号12が付されている。カップ状の構造を備えて、ハウジング長手方向軸線Lに沿って延在するように形成された熱交換器ハウジング12は、外側のハウジング部分14及び内側のハウジング部分16を有している。外側のハウジング部分14及び内側のハウジング部分16は、それぞれ、やはり略カップ状の構造を備えて形成されている。
【0024】
外側のハウジング部分14は、図1に破線で概略的に示した外側周壁18及び外側底壁20を有している。内側のハウジング部分16は、やはり破線で概略的に示した内側周壁22及び内側底壁24を有している。熱交換器ハウジング12を組み立てた状態で、内側のハウジング部分16は、外側のハウジング部分14内に装入されており、外側のハウジング部分14と相俟って1つの伝熱媒体流動室を画成している。内側のハウジング部分16は、熱交換器ハウジング12の内室26を画成している。内室26内には、この種の熱交換器アッセンブリ10を例えば車両ヒータ装置に組み込んだとき、バーナ領域から延びる火炎管が突入するように延在している。燃焼運転中に生成される燃焼排ガスは、火炎管を通して内側底壁24に向かって流動し、内側底壁24においてハウジング長手方向軸線Lに関して半径方向外向きに変向される。その後、燃焼排ガスは、図1には示さない火炎管と内側周壁22との間を通って、内側周壁22の、内側底壁24から離れて位置する軸方向の端部領域28に向かって逆流する。この端部領域28において、内側のハウジング部分16あるいは内側周壁22は、ハウジング長手方向軸線Lに対して略直交する平面で終端している。その結果、簡単に内側のハウジング部分16あるいは熱交換器アッセンブリ10は、排ガス流動室を密閉するために例えば車両ヒータ装置のバーナ領域に結合可能である。燃焼排ガスは、内側周壁22を貫通するとともに排ガス通流管体30に形成される排ガス出口開口32を通して、内室26を後にする。
【0025】
内側のハウジング部分16あるいはその内側周壁22には、軸方向の端部領域28の近傍に、両底壁20,24から離れた軸方向の領域において伝熱媒体流動室を画成する端面34が設けられている。この端面34は、例えば内側周壁22を段状に肉厚化することにより形成可能である。図1には、ハウジング長手方向軸線Lを略環状に取り巻く端面34が、ハウジング長手方向軸線Lに関して斜めに配置されていることが看取可能であり、その結果、内側周壁22の外周面の領域が概して円形に形成されている場合、端面34は、概して楕円形の形状をなしている。その際、図1に示すように、端面34は、略平たんに、つまりハウジング長手方向軸線Lに対して斜めに配置された平面内に位置していてもよい。このような平面に対して少なくとも部分的に角度を付けて端面34を配置すること、例えば端面34を円錐形に形成することも可能である。端面が平面であるか、例えば円錐形に角度を付けられているか、又は場合によっては湾曲して形成されているかにかかわらず、端面34の基本的な配置は、端面34が、ハウジング長手方向軸線L周りに概して環状に延びる構造において、ハウジング長手方向軸線Lに関して斜めに配置されていることにある。
【0026】
ハウジング長手方向軸線Lに関する端面34の傾斜位置により、次のような構成が得られる。すなわち、端面34は、内側周壁22の第1の周方向領域36において、ハウジング長手方向軸線Lに関してこの第1の周方向領域36に略直径方向で対向する第2の周方向領域38よりも、内側底壁24から大きな軸方向間隔を有している。これにより、内側のハウジング部分16の、内側周壁22の肉厚化により形成される領域は、図1に看取可能な側面図において、概してくさび形の形状を有している。
【0027】
内側のハウジング部分16における、伝熱媒体流動室を軸方向で画成する端面34のこの傾斜位置に対応して、外側のハウジング部分14の外側周壁18は、外側周壁18の第1の周方向領域40において、外側周壁18の、ハウジング長手方向軸線Lに関してこの第1の周方向領域40に略直径方向で対向する第2の周方向領域42よりも、外側底壁20から大きな軸方向延在長さを有しているように形成されている。このことは、外側周壁18が、外側周壁18の、外側底壁20から離れて位置する軸方向の端部領域44において斜めに終端していることを意味している。この端部領域44には、ハウジング長手方向軸線Lに関して、端面34と同じ傾き角が与えられている。組み立てられた状態で、外側周壁18の軸方向の端部領域44は、端面34を形成するために内側周壁22に肉厚化部が形成されている領域あるいは内側周壁22の外周面の寸法が増加されている領域で、内側周壁22に接続している。このために、軸方向で端面34に続いて、結合段部46が形成されていてもよい。結合段部46上には、外側のハウジング部分14の外側周壁18が、両ハウジング部分14,16相互の所定の相対的な位置決めあるいはセンタリングを実現するために、被嵌可能である。両ハウジング部分14,16の結合は、好ましくは材料結合、例えば接着により実施可能である。これにより同時に、両ハウジング部分14,16により画成される伝熱媒体流動室の流体密の閉鎖も達成されている。内側周壁22に設けられた結合段部46に対応して、相補的な結合段部48が、外側のハウジング部分14に形成されていてもよい。このことは、結合面の拡大と、付加的なラビリンスシールの形成とに貢献する。
【0028】
上述の構造によって、両ハウジング部分14,16間に形成される伝熱媒体流動室が、半径方向内側では、専ら内側周壁22によって、すなわち内側周壁22の、端面34に接続して内側底壁24まで延在する区分によって画成され、さらに軸方向では、両底壁20,24から離れて位置する軸方向の端部領域において専ら内側のハウジング部分16によって、すなわち内側周壁22の半径方向の拡張部によって形成される端面34によって画成され、さらに半径方向外側では、実質的に専ら外側のハウジング部分14の外側周壁18によって画成されていることが達成される。これにより、内側のハウジング部分16には、必ずしも、内側のハウジング部分16の、伝熱媒体流動室をハウジング長手方向軸線Lに関して半径方向外向きに画成するアンダカット領域が形成されない。このことは、型充填法での製造工程を明らかに容易にする。それにもかかわらず、このようなアンダカット領域の、例えば内側周壁22の第1の周方向領域36の近傍での形成は、例えば流動を案内するという理由から有利である場合、排除されるべきではない。しかし、内側周壁22の、端面34に接続する半径方向で拡張された領域は、ほぼアンダカットフリーである。その結果、以下にさらに説明するように、排ガス通流管体30は、事実上、伝熱媒体流動室外に位置しており、つまり伝熱媒体流動室を貫通しない。
【0029】
排ガス通流管体30のこの配置は、図1に明瞭に看取可能であるように、排ガス通流管体30が内側周壁22の第2の周方向領域38に配置され、つまり熱交換器アッセンブリ10全体の少なくともこの周方向領域で伝熱媒体流動室外に位置する領域に配置されていることにより達成可能である。
【0030】
外側のハウジング部分14には、伝熱媒体流動室内に伝熱媒体を供給するために、図2及び図3にも看取可能な2つの伝熱媒体通流管体50,52が設けられている。両伝熱媒体通流管体50,52は、それぞれ、伝熱媒体流動室に連通する開口54,56を形成し、例えば液状の伝熱媒体を伝熱媒体流動室に供給し、伝熱媒体を伝熱媒体流動室から排出するためにそれぞれの管路に接続可能である。その際、両伝熱媒体通流管体50,52は、好ましくは互いに略平行に周方向で間隔を置いて外側周壁18から延在可能である。
【0031】
両伝熱媒体通流管体50,52は、外側周壁18に、その第1の周方向領域40の領域、つまり外側周壁18が外側底壁20から比較的大きな延在長さを有する領域において設けられている。その際、好ましくは、両伝熱媒体通流管体50,52は、外側周壁18の第1の周方向領域40に、外側周壁18の、ハウジング長手方向軸線Lに関してこの第1の周方向領域40に直径方向で対向する第2の周方向領域42を軸方向で略完全に越えて延在する軸方向の領域において位置している。このことは、外側のハウジング部分14の、図4に示した側面図で見て、両開口54,56に、外側周壁18の、ハウジング長手方向軸線Lに関してこれらの両開口54,56に対向する領域が、軸方向でオーバラップしないことにつながる。これにより、型充填法での外側のハウジング部分14の製造時、開口54,56あるいはこの開口54,56を包囲する伝熱媒体通流管体50,52を形成するために必要な型充填法用の型部品の装入あるいは型充填法による工程の実施後の除去は、極めて容易に実施可能である。
【0032】
両ハウジング部分14,16が組み合わされた状態で、両伝熱媒体通流管体50,52の開口54,56は、熱交換器ハウジング12の、排ガス通流管体30が位置する周方向領域にハウジング長手方向軸線Lに関して対向するか、あるいは直径方向で反対側に位置する周方向領域に位置している。外側のハウジング部分14がその軸方向の端部領域44で斜めに終端しているという事情に基づいて、両伝熱媒体通流管体50,52は、組み合わされた状態で、内側のハウジング部分16に形成された排ガス通流管体30と略同じ軸方向の領域に位置している。ここで、略同じ軸方向の領域とは、伝熱媒体通流管体50,52と排ガス通流管体30とが、軸方向で少なくとも部分的に、好ましくはその軸方向延在長さの大部分で軸方向でオーバラップしていることを意味している。このオーバラップは、伝熱媒体通流管体50,52と排ガス通流管体30とが熱交換器ハウジング12のそれぞれ異なる周方向位置に設けられているという事情に基づいて、問題なく可能である。これにより、熱交換器ハウジング12には、両底壁20,24から軸方向に間隔を置いて、接続領域が形成される。接続領域には、一方では伝熱媒体の供給あるいは排出のための管路が接続可能であり、他方では排ガス案内系の管路が接続可能である。
【0033】
本発明の構造により、両ハウジング部分14,16をそれぞれ、ハウジング部分14,16と一体的に形成される管体30;50,52を備えて、型充填法で製造することが容易に可能となる。その際、内側のハウジング部分16は、金属ダイカスト法で例えばアルミニウム材料により製造可能である。その結果、排ガス温度が比較的高くても、内側のハウジング部分16を損傷させることはない。温度負荷をそれほど強く受けない外側のハウジング部分14は、プラスチック材料から射出成形法で製造可能である。
【符号の説明】
【0034】
10 熱交換器アッセンブリ、 12 熱交換器ハウジング、 14 外側のハウジング部分、 16 内側のハウジング部分、 18 外側周壁、 20 外側底壁、 22 内側周壁、 24 内側底壁、 26 内室、 28 端部領域、 30 排ガス通流管体、 32 排ガス出口開口、 34 端面、 36 第1の周方向領域、 38 第2の周方向領域、 40 第1の周方向領域、 42 第2の周方向領域、 44 端部領域、 46,48 結合段部、 50,52 伝熱媒体通流管体、 54,56 開口、 L ハウジング長手方向軸線
図1
図2
図3
図4