(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記高度変化判定部が高度変化の状態が変化したと判定した後、前記昇降速度算出部は、前記昇降速度を算出する際、前記第2の時間間隔を予め定めた第2の時間間隔の最大値に達するまで、時間経過に応じて増加させることを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
前記高度変化判定部が高度変化の状態が変化したと判定した場合、前記昇降速度算出部は、前記昇降速度を算出する際、前記第2の時間間隔を一時的に前記第1の時間間隔よりも短くなるように設定することを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
前記高度変化判定部は、現在までの予め定めた第1の時間間隔内で前記高度計測部が計測した高度の分布と、現在前記高度計測部が計測した高度を中心とする予め定めた高度の範囲とを比較して高度変化状態を判定することを特徴とする請求項1又は請求項4に記載の電子機器。
前記高度変化判定部は、現在から前記第1の時間間隔遡った時刻において前記高度計測部が計測した高度と、現在前記高度計測部が計測した高度とを比較して高度変化状態を判定することを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、各図において同一部分には同一符号を付している。
図1は、本実施形態における電子機器10の外観構成を示す正面図である。
電子機器10は、例えば、高度を計測する高度計測機能付きの電子時計である。電子機器10は、現在時刻と高度を計測し、計測した高度に基づいて昇降速度を算出する。
【0020】
電子機器10は、操作入力部104と、表示部105とを備える。
操作入力部104は、例えば、複数(本実施形態では、2個)のキー入力手段(操作入力部)104A、104Bを備える。キー入力手段104A、104Bは、それぞれボタンを有し、操作入力を受け付け、受け付けた操作入力に応じた操作信号を制御部101に出力する。
キー入力手段104Aは、例えば、ボタンが押下されることにより動作モードを切り替える操作を受け付ける。動作モードには、例えば、計測した現在時刻、高度及び昇降速度を表示する「通常モード」と、高度に関する高度情報(例えば、高度及び昇降速度)を記録する「高度ログモード」との2種類がある。電子機器10は、操作に応じて切り替えられた動作モードで動作する。
【0021】
キー入力手段104Bは、電子機器10が高度ログモードで動作しているとき、例えば、ボタンが押下されることにより表示部105に表示させる情報を切り替える操作を受け付ける。表示される情報には、例えば、「開始時表示」、「最大高度表示」、「現在高度表示」がある。開始時表示とは、記録を開始したときの高度情報である。最大高度表示とは、記録された高度情報が示す高度のうち最大となる高度(最大高度)に係る高度情報である。現在高度表示とは、高度ログモードで動作しているときに、その時点で取得した高度情報である。
【0022】
表示部105は、取得した情報を表示する。表示部105は、例えば、液晶ディスプレイ、セグメントディスプレイ、等である。
表示部105は、例えば、高度表示部105a、時刻表示部105b、及び昇降速度表示部105cを含んで構成される。
図1に示す例では、昇降速度を表示する昇降速度表示部105c、高度を表示する高度表示部105a、時刻を表示する時刻表示部105bの順で表示されている。
【0023】
図2は、本実施形態における電子機器10の構成を示すブロック図である。
電子機器10は、制御部101、発振回路102、分周回路103、操作入力部104、表示部105、電池106、気圧計測部107、高度計測部108、RAM(Random Access Memory:ランダムアクセスメモリ)110及びROM(Read Only Memory:読み出し専用メモリ)111を含んで構成される。
【0024】
制御部101は、電子機器10が備える各部の制御を行う。制御部101は、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。
機能面で考察すると、制御部101は、高度変化判定部1011と、昇降速度算出部1012を含んで構成される。
【0025】
高度変化判定部1011は、現在までの予め定めた第1の時間間隔(例えば、5分)内に高度計測部108から入力された高度信号に基づいて高度変化状態を判定する。
高度変化状態には、例えば、「上昇状態」、「下降状態」、「非昇降状態」がある。上昇状態は、時間の経過とともに高度が高くなる状態である。上昇状態は、例えば、電子機器10を所持するユーザが上り勾配を有する登山道を歩行しているときに現れる。下降状態は、例えば、電子機器10を所持するユーザが下り勾配を有する登山道を歩行しているときに現れることがある。非昇降状態とは、有意な高度の変化が現れない状態、つまり、上昇状態、下降状態のいずれでもない状態である。非昇降状態は、例えば、電子機器10を所持するユーザが、平地を歩行している場合や、休息している場合に現れることがある。高度変化状態を判定する処理の例については、後述する。
【0026】
昇降速度算出部1012は、現在までの第2の時間間隔内に高度計測部108から入力された高度信号に基づいて昇降速度の移動平均値を算出する。第2の時間間隔は、第1の時間間隔よりも大きい値である。第2の時間間隔は可変であってもよい。第2の時間間隔が可変である場合には、第2の時間間隔が第1の時間間隔よりも大きくなるように定められる可能性があれば、一時的に第2の時間間隔が第1の時間間隔と等しくなってもよいし、第1の時間間隔よりも小さくなってもよい。
昇降速度算出部1012は、例えば、高度変化状態が変化したとき、第2の時間間隔を第1の時間間隔に縮小し、その後、予め定めた第3の時間間隔(第2の時間間隔の最大値)に達するまで時間経過と同じ進行度合いで第2の時間間隔を拡大する。昇降速度を算出する処理の例については、後述する。
【0027】
制御部101は、分周回路103から入力された計測信号に基づいて現在時刻を計時する。制御部101は、算出した昇降速度の移動平均値と、高度変化判定部1011でサンプリングした高度と、を含む高度情報を生成する。通常モードで動作しているとき、又は、高度ログモードで動作し、かつキー入力手段104Bから操作信号が入力されないときは、制御部101は、計時した現在時刻を示す時刻情報と生成した高度情報を表示部105に出力し、表示部105に現在時刻、高度及び昇降速度を表示させる。
【0028】
制御部101は、操作入力部104から入力された操作信号に応じた処理を行う。例えば、通常モードで動作しているときに、キー入力手段104Aから操作信号(高度ログモード)が入力されると、制御部101は、動作モードを通常モードから高度ログモードに切り替え、高度ログモードでの動作を開始する。高度ログモードでは、制御部101は、高度情報を予め定めた時間間隔でRAM110にログファイルとして記録する。また高度ログモードで動作しているときに、キー入力手段104Aから操作信号(通常モード)が入力されると、制御部101は、動作モードを高度ログモードから通常モードに切り替え、高度情報の記録を停止する。
【0029】
制御部101は、高度ログモードで動作し、かつ現在取得された高度情報を表示させているとき、キー入力手段104Bから操作信号(開始時表示)が入力されると、記録を開始した時点(開始時)での高度情報をRAM110から読み出す。制御部101は、読み出した高度情報を表示部105に出力し、表示させる。
制御部101は、高度ログモードで動作し、開始時における高度情報を表示させているとき、キー入力手段104Bから操作信号(最大高度表示)が入力されると、最大高度に係る高度情報をRAM110から読み出す。制御部101は、読み出した高度情報を表示部105に出力し、表示させる。
制御部101は、高度ログモードで動作し、かつ最大高度に係る高度情報を表示しているとき、キー入力手段104Bから操作信号(現在高度表示)が入力されると、制御部101は、現在の高度情報を表示部105に出力し、表示させる。
【0030】
発振回路102は、所定の周波数(発振周波数、例えば、32768Hz)の発振信号を生成し、生成した発振信号を分周回路103に出力する。
分周回路103は、発振回路102から入力された発振信号の発振周波数を分周して、所定の周波数(クロック周波数、例えば、100Hz)の計測の基準となる計測信号を生成する。
電池106は、電子機器10を構成する各部に、動作するための電力を供給する。
【0031】
気圧計測部107は、気圧を計測し、計測した気圧を示す気圧信号を高度計測部108に出力する。気圧計測部107は、例えば、気圧センサである。
高度計測部108は、気圧計測部107から入力された気圧信号に基づき高度を計測し、計測した高度を示す高度信号を制御部101に出力する。高度計測部108は、高度を計測する際、例えば、式(1)を用いて、入力された気圧信号が示す気圧Pを高度hに換算する。
【0032】
h={(P
0/P)
(1/5.257)−1}・(T+273.15)/0.0065…(1)
【0033】
式(1)において、P
0は、所定の標高、例えば標高0m(海面の標高)における気圧1013hPaを示す。Tは温度(°C)を示す。
気圧計測部107と高度計測部108とで、高度を計測する高度計が構成される。
【0034】
RAM110は、電子機器10の各部での動作に用いられるデータ、各部で生成されたデータを記憶する。RAM110は、例えば、高度情報をログファイルとして記憶する。
ROM111には、制御部101が実行する動作用プログラムが予め記憶されている。この動作用プログラムは、制御部101の起動時に読み出され、制御部101は読み出された動作用プログラムで指定された処理を実行する。
【0035】
次に、高度変化判定部1011が高度変化状態を判定する処理の例について説明する。
高度変化判定部1011は、高度計測部108から入力された高度信号が示す高度を、予め定めた時間間隔(サンプリング間隔、例えば1分)ΔT毎にサンプリングする。以下の説明では、その時点でサンプリングされた高度を「現在の高度」と呼び、現在の高度よりも前にサンプリングされた高度を「過去の高度」と呼ぶ。また、サンプリングされた時刻のそれぞれを「サンプリング時刻」と呼ぶことがある。
【0036】
高度変化判定部1011は、現在時刻tよりも予め定めた第1の時間間隔ΔT1だけ過去の時刻t−ΔT1から現在時刻tまでの区間でサンプリングされた高度に基づいて高度変化状態を判定する。この時刻t−ΔT1から現在時刻tまでの区間を「判定区間」と呼ぶ。
ここで、高度変化判定部1011は、判定区間内でサンプリングされた高度の分布と、現在の高度hを中心とする予め定めた高度の範囲とを比較して高度変化状態を判定することができる。
高度変化判定部1011は、例えば、判定区間内でサンプリングされた高度が、いずれも状態判定下限値から状態判定上限値の間の範囲内にある場合、現在時刻tの高度変化状態が非昇降状態であると判定する。
状態判定下限値は、例えば、現在の高度hから予め定めた高度Δhだけ低い値h−Δhである。状態判定上限値は、例えば、現在の高度hから予め定めた高度Δhだけ高い値h+Δhである。
【0037】
高度変化判定部1011は、例えば、判定区間内でサンプリングされた高度の少なくとも1つが、状態判定下限値よりも低い場合、現在時刻tの高度変化状態が上昇状態であると判定する。
高度変化判定部1011は、例えば、判定区間内でサンプリングされた高度の少なくとも1つが、状態判定上限値よりも高い場合、現在時刻tの高度変化状態が下降状態であると判定する。
【0038】
なお、判定区間内でサンプリングされた高度には、状態判定下限値よりも低い高度と、状態判定上限値よりも高い高度との両方が含まれる場合がある。その場合、高度変化判定部1011は、例えば、状態判定下限値よりも低い高度と状態判定上限値よりも高い高度のうち、最も現在時刻tに近い時刻t’の高度に基づいて現在時刻tの高度変化状態を判定してもよい。即ち、時刻t’の高度が状態判定下限値よりも低い場合、高度変化判定部1011は、現在時刻tの高度変化状態が上昇状態であると判定する。時刻t’の高度が状態判定上限値よりも高い場合、高度変化判定部1011は、現在時刻tの高度変化状態が下降状態であると判定する。
【0039】
その他、高度変化判定部1011は、判定区間内でサンプリングされた高度に含まれる状態判定下限値よりも低い高度のサンプル数と、状態判定上限値よりも高い高度のサンプル数とを比較して、現在時刻tの高度変化状態を判定してもよい。即ち、状態判定下限値よりも低い高度のサンプル数が状態判定上限値よりも高い高度のサンプル数よりも多い場合、高度変化判定部1011は、上昇状態であると判定する。状態判定下限値よりも低い高度のサンプル数が状態判定上限値よりも高い高度のサンプル数と等しい場合、高度変化判定部1011は、非昇降状態であると判定する。状態判定下限値よりも低い高度のサンプル数が状態判定上限値よりも高い高度のサンプル数よりも少ない場合、高度変化判定部1011は、下降状態であると判定する。
【0040】
その他、高度変化判定部1011は、判定区間内でサンプリングされた高度の平均値が、状態判定下限値よりも低い場合に上昇状態と判定し、判定区間内でサンプリングされた高度の平均値が状態判定上限値よりも高い場合に下降状態と判定し、それ以外の場合に非昇降状態と判定してもよい。
このように、判定区間内でサンプリングされた高度の分布と、現在の高度を中心とする予め定めた高度の範囲と、を比較することで、計測誤差やノイズに対する影響を受けにくくなるので、高度変化状態を安定して判定することができる。
高度変化判定部1011は、判定した高度変化状態を示す高度変化状態情報とサンプリングした高度を昇降速度算出部1012に出力する。
【0041】
高度変化状態情報は、それぞれの高度変化状態に応じた値で表されてもよい。例えば、上昇状態、下降状態、非昇降状態は、それぞれ「+1」、「−1」、「0」といった値で表されてもよい。
なお、高度が状態判定下限値から状態判定上限値までの間であって、時刻が第1の時間間隔ΔT1だけ過去の時刻t−ΔT1から現在時刻tまでの区間を「検出窓」と呼ぶ。
【0042】
図3は、高度変化状態の判定例を示す図である。
図3(a)、(b)の横軸、縦軸は、それぞれ時刻、高度を示す。
図3(a)、(b)は、それぞれ各サンプリング時刻において、サンプリングされた高度を×印で示す。
図3(a)において、破線で示された長方形は、それぞれ検出窓w6、w9、w13を示す。検出窓w6は、時刻の範囲がt
1〜t
6の判定区間であって、高度の範囲がh
6−Δh〜h
6+Δhまでの区間である。h
6は、サンプリング時刻t
6における高度を示す。検出窓w6には、判定区間内でサンプリングされた高度h
1〜h
6のうち、高度h
3〜h
6が含まれるが、高度h
1、h
2は検出窓w6よりもそれぞれ低い。従って、高度変化判定部1011は、時刻t
6における高度変化状態を「上昇状態」と判定する。
【0043】
検出窓w9は、時刻の範囲がt
4〜t
9の判定区間であって、高度の範囲がh
9−Δh〜h
9+Δhまでの区間である。h
9は、サンプリング時刻t
9における高度を示す。検出窓w9には、判定区間内でサンプリングされた高度h
4〜h
9のいずれも含まれる。従って、高度変化判定部1011は、時刻t
9における高度変化状態を「非昇降状態」と判定する。
【0044】
検出窓w13は、時刻の範囲がt
8〜t
13の判定区間であって、高度の範囲がh
13−Δh〜h
13+Δhまでの区間である。h
13は、サンプリング時刻t
13における高度を示す。検出窓w13には、判定区間内でサンプリングされた高度h
8〜h
13のうち、高度h
11〜h
13が含まれるが、高度h
8〜h
10は検出窓w13よりもそれぞれ高い。従って、高度変化判定部1011は、時刻t
13における高度変化状態を「下降状態」と判定する。
【0045】
図3(a)に示す例では、判定された高度変化状態は、「上昇状態」、「非昇降状態」、「下降状態」と順次変化するが、「上昇状態」から「下降状態」、又は「下降状態」から「上昇状態」と変化することもある。
図3(b)において、破線で示された長方形は、それぞれ検出窓w8、w9を示す。検出窓w8は、時刻の範囲がt
3〜t
8の判定区間であって、高度の範囲がh
8−Δh〜h
8+Δhまでの区間である。h
8は、サンプリング時刻t
8における高度を示す。検出窓w8には、判定区間内でサンプリングされた高度h
7、h
8が含まれるが、高度h
3〜h
6は、検出窓w8よりもそれぞれ低い。従って、高度変化判定部1011は、時刻t
8における高度変化状態を「上昇状態」と判定する。
検出窓w9は、時刻の範囲がt
4〜t
9の判定区間であって、高度の範囲がh
9−Δhからh
9+Δhまでの区間である。h
9は、サンプリング時刻t
9における高度を示す。検出窓w9には、判定区間内でサンプリングされた高度h
4〜h
7、h
9が含まれるが、高度h
8は検出窓w9よりも高い。従って、高度変化判定部1011は、時刻t
9における高度変化状態を「下降状態」と判定する。
【0046】
なお、高度変化判定部1011は、現在の高度hと、現在時刻tから第1の時間間隔ΔT1遡った時刻t−ΔT1における高度h
t-Δ
T1とを比較して、高度変化状態を判定してもよい。例えば、現在の高度hから時刻t−ΔT1における高度h
t-Δ
T1の差が、予め定めた高度差の正の閾値よりも大きいとき、高度変化判定部1011は、上昇状態と判定する。現在の高度hから時刻t−ΔT1における高度h
t-Δ
T1の差が、予め定めた高度差の負の閾値よりも小さいとき、高度変化判定部1011は、下降状態と判定する。それ以外の場合、高度変化判定部1011は、非昇降状態と判定する。高度変化状態の判定に用いられる高度が2個に限定されるので、高度変化判定部1011は、簡素な処理で高度変化状態を判定することができ、ハードウェア規模の増大を抑制することができる。
【0047】
次に、昇降速度算出部1012が、昇降速度を算出する処理の例について説明する。
昇降速度算出部1012には、高度変化判定部1011から予め定めたサンプリング間隔ΔT毎にサンプリングされた高度が入力される。昇降速度算出部1012は、入力された現在の高度から直前の高度を差し引いて、現在の高度の差分を算出する。直前の高度とは、現在の高度の直前にサンプリングされた高度である。昇降速度算出部1012は、算出した差分をサンプリング間隔ΔTで除算して、現在の速度を算出する。
【0048】
昇降速度算出部1012は、起点時刻から現在時刻tまでの区間でサンプリング毎に算出した昇降速度を平均(移動平均)する。起点時刻は、現在時刻tよりも第2の時間間隔ΔT2だけ過去の時刻t−ΔT2である。移動平均を行うことで、サンプリング毎の昇降速度が平滑化される。以下の説明では、過去の時刻t−ΔT2から現在時刻tまでの区間を「移動平均区間」と呼び、移動平均区間の長さを「移動平均区間長」と呼ぶ。移動平均区間長はΔT2である。
【0049】
ここで、昇降速度算出部1012は、高度変化判定部1011から入力された高度変化状態情報に基づいて現在の高度変化状態が直前の高度変化状態から変化したか否かを判定する。高度変化状態が変化したと判定した場合には、昇降速度算出部1012は、移動平均区間長を第1の時間間隔ΔT1に縮小する。つまり、移動平均区間長(第2の時間間隔ΔT2)は、一時的に第1の時間間隔ΔT1と等しくなることがあるが、それ以外の場合には第1の時間間隔ΔT1よりも大きい。
【0050】
なお、高度変化状態が変化したと判定した場合、昇降速度算出部1012は、移動平均区間長を一時的に第1の時間間隔ΔTよりも短い時間間隔に定めてもよい。一時的とは、高度変化状態が変化したと判定されたサンプリング時刻、又は、そのサンプリング時刻から予め定めた時間(例えば、第1の時間間隔だけ経過するまで)の時刻である。また、第1の時間間隔よりも短い時間間隔は、その限りにおいて、少なくとも2サンプル、つまり、現在と、直前のサンプリング時刻が含まれていればよい。
【0051】
これにより、高度変化状態が変化した場合、移動平均区間長を短くすることで、昇降速度の移動平均値を表示するまでのレスポンスを向上することが可能である。また、現在よりも移動平均区間長だけ遡った時刻までの過去の昇降速度、つまり高度変化状態が変化する前の昇降速度が無視されるので、その時点の高度変化状態に応じた利用者の実感に合った移動平均値が得られる。特に、高度変化状態が上昇状態から下降状態に変化する場合(
図3(b)参照)、あるいはその逆の場合に有効である。
【0052】
高度変化状態が変化していないと判定した場合には、昇降速度算出部1012は移動平均区間長が予め定めた第3の時間間隔(第2の時間間隔の最大値)に達したか否かを判定する。第3の時間間隔に達したと判定された場合には、昇降速度算出部1012は、移動平均区間長を変化させない。第3の時間間隔に達していないと判定された場合には、昇降速度算出部1012は、移動平均区間長を時間経過と同じ進行度合いで拡大する。ここで、昇降速度算出部1012は、例えば、移動平均区間の起点となるサンプリング時刻を変更せず、移動平均区間の終点を現在のサンプリング時刻と定める。
【0053】
なお、電子機器10の起動直後では高度変化状態情報が存在しないため、昇降速度算出部1012は、現在の昇降速度を0と定めてもよい。また、現在時刻が起動から第1の時間間隔までの間、昇降速度算出部1012は、起動から現在時刻までの間にサンプリングされた昇降速度を平均して現在の昇降速度を定めてもよい。その間、高度変化判定部1011は、高度変化状態を判定しなくてもよい。
【0054】
図4は、移動平均区間の設定例を示す図である。
図4(a)、(b)は、サンプリング時刻毎のサンプリングされた高度を×印で示し、サンプリング時刻t
6〜t
14に係る移動平均区間を、それぞれ水平方向の矢印dm6〜dm14で示す。
図4(a)、(b)の横軸、縦軸は、それぞれ時刻、高度を示す。横軸の下方には、各サンプリング時刻における高度変化状態の値を示す。+1、0、−1は、それぞれ上昇状態、非昇降状態、下降状態を示す。なお、
図4に示す例では、第1の時間間隔、第3の時間間隔はそれぞれ5、10サンプルである。
【0055】
図4(a)は、サンプリング時刻t
1〜t
5の間、高度変化状態が非昇降状態(0)、サンプリング時刻t
6〜t
13の間、高度変化状態が上昇状態(+1)、サンプリング時刻t
14では、高度変化状態が非昇降状態(0)であることを示す。
矢印dm6は、サンプリング時刻t
6における移動平均区間が5サンプルの区間t
1〜t
6であることを示す。
矢印dm7〜dm11は、サンプリング時刻t
7からt
11にかけて移動平均区間長が時間経過と同じ進行度合いで1サンプルずつ拡大することを示す。矢印dm7〜dm11のそれぞれについて、移動平均区間の起点は、矢印dm6に係る移動平均区間の起点(サンプリング時刻t
1)と同一である。これに対し、矢印dm7〜dm11が示す移動平均区間の終点は、それぞれの時点での現在時刻(サンプリング時刻t
7〜t
11)となる。これは、昇降速度算出部1012は、高度変化状態に変更がなく、移動平均区間長が第3の時間間隔に達していないと判定したことによる。
【0056】
矢印dm12、dm13は、それぞれサンプリング時刻t
12、t
13において移動平均区間長が10サンプルと一定であり、移動平均区間の終点がそれぞれの時点での現在時刻となるように移動平均区間がシフトすることを示す。これは、昇降速度算出部1012が、高度変化状態に変更がなく、移動平均区間長が第3の時間間隔に達したと判定したことによる。
矢印dm14は、サンプリング時刻t
14における移動平均区間が5サンプルの区間t
9〜t
14であることを示す。これは、昇降速度算出部1012が、高度変化状態が上昇状態から非昇降状態に変化したことを検出したことに応じて、移動平均区間長を第1の時間間隔に縮小したことによる。
【0057】
図4(a)に示す例では、移動平均区間長が第3の時間間隔に達した後で、高度変化状態が変化したことに応じて、移動平均区間長が第1の時間間隔に縮小されるが、これには限られない。移動平均区間長が第3の時間間隔に達する前でも、高度変化状態が変化したことに応じて、移動平均区間長が第1の時間間隔に縮小されることがある。
【0058】
図4(b)は、サンプリング時刻t
1〜t
5の間、高度変化状態が非昇降状態(0)、サンプリング時刻t
6〜t
9の間、高度変化状態が上昇状態(+1)、サンプリング時刻t
10〜t
12の間、高度変化状態が非昇降状態(0)、サンプリング時刻t
13、t
14では、高度変化状態が下降状態(−1)であることを示す。
矢印dm6〜dm9は、サンプリング時刻t
6からt
9にかけて移動平均区間長が時間経過と同じ進行度合いで1サンプルずつ拡大することを示す。これは、昇降速度算出部1012は、高度変化状態に変更がなく、移動平均区間長が第3の時間間隔に達していないと判定したことによる。
矢印dm10は、サンプリング時刻t
10における移動平均区間が5サンプルの区間t
5〜t
10であることを示す。これは、昇降速度算出部1012が、高度変化状態が上昇状態から非昇降状態に変化したことを検出したことに応じて、移動平均区間長を第1の時間間隔に縮小したことによる。
【0059】
矢印dm11、dm12は、サンプリング時刻t
11からt
12にかけて移動平均区間長が時間経過と同じ進行度合いで1サンプルずつ拡大することを示す。これは、昇降速度算出部1012は、高度変化状態に変更がなく、移動平均区間長が第3の時間間隔に達していないと判定したことによる。
矢印dm13は、サンプリング時刻t
13における移動平均区間が5サンプルの区間t
8〜t
13であることを示す。これは、昇降速度算出部1012が、高度変化状態が非昇降状態から下降状態に変化したことを検出したことに応じて、移動平均区間長を第1の時間間隔に縮小したことによる。
矢印dm14は、サンプリング時刻t
14において移動平均区間長が時間経過と同じ進行度合いで1サンプル間隔拡大することを示す。これは、昇降速度算出部1012は、高度変化状態に変更がなく、移動平均区間長が第3の時間間隔に達していないと判定したことによる。
【0060】
次に、表示部105が表示する情報の例について説明する。
図5は、本実施形態に係る表示部105が表示する情報の例を示す。
図5(a)に示す例では、表示部105は、現在の昇降速度「0m/h」を昇降速度表示部105cに表示し、現在の高度「1600m」を高度表示部105aに表示し、現在時刻「P 10:08」を時刻表示部105bに表示する。「P 10:08」は、現在時刻が午後10時08分であることを示す。
【0061】
図5(b)に示す例では、表示部105は、現在の昇降速度「−280m/h」を昇降速度表示部105cに表示し、現在の高度「2150m」を高度表示部105aに表示し、現在時刻「A 8:48」を時刻表示部105bに表示する。「−280m/h」は、下降速度が280m/hであることを示す。つまり、負の昇降速度は下降速度を示し、正の昇降速度は上昇速度を示す。「A 8:48」は、現在時刻が午前8時48分であることを示す。
【0062】
図5(c)に示す例では、表示部105は、現在の昇降速度「190m/h」を昇降速度表示部105cに表示し、現在の高度「1750m」を高度表示部105aに表示し、現在時刻「P 2:48」を時刻表示部105bに表示する。「190m/h」は、上昇速度が190m/hであることを示す。「P 2:48」は、現在時刻が午後2時48分であることを示す
【0063】
次に、本実施形態に係るデータ処理について説明する。
図6は、本実施形態に係るデータ処理を示すフローチャートである。
(ステップS101)高度変化判定部1011には、高度計測部108から入力された高度信号が示す高度を、予め定めた時間間隔ΔT毎にサンプリングする。その後、ステップS102に進む。
【0064】
(ステップS102)高度変化判定部1011は、過去の時刻t−ΔT1から現在時刻tまでの判定区間内でサンプリングされた高度に基づいて高度変化状態を判定する。高度変化判定部1011は、例えば、判定区間内でサンプリングされた高度が、いずれも状態判定下限値から状態判定上限値の間の範囲内にある場合、現在時刻tの高度変化状態が非昇降状態であると判定する。高度変化判定部1011は、例えば、判定区間内でサンプリングされた高度の少なくとも1つが、状態判定下限値よりも低い場合、現在時刻tの高度変化状態が上昇状態であると判定する。高度変化判定部1011は、例えば、判定区間内でサンプリングされた高度の少なくとも1つが、状態判定上限値よりも高い場合、現在時刻tの高度変化状態が下降状態であると判定する。
高度変化判定部1011は、判定した高度変化状態を示す高度変化状態情報を昇降速度算出部1012に出力する。その後、ステップS103に進む。
【0065】
(ステップS103)昇降速度算出部1012は、高度変化判定部1011から入力された高度変化状態情報に基づいて現在の高度変化状態が直前の高度変化状態から変化したか否かを判定する。変化したと判定された場合には(ステップS103 YES)、ステップS104に進む。変化していないと判定された場合には(ステップS103 NO)、ステップS105に進む。
(ステップS104)昇降速度算出部1012は、移動平均区間長を第1の時間間隔ΔT1に縮小して、終点が現在時刻となるように移動平均区間をシフトする。その後、ステップS108に進む。
【0066】
(ステップS105)昇降速度算出部1012は移動平均区間長が予め定めた第2の時間間隔の最大値ΔT2
maxに達したか否かを判定する。最大値ΔT2
maxに達したと判定された場合には(ステップS105 YES)、ステップS107に進む。達していないと判定された場合には(ステップS105 NO)ステップS106に進む。
【0067】
(ステップS106)昇降速度算出部1012は、移動平均区間長を時間経過と同じ進行度合いで拡大して(サンプリング間隔ΔTだけ増加)、終点が現在時刻となるように移動平均区間をシフトする。その後、ステップS108に進む。
(ステップS107)昇降速度算出部1012は、移動平均区間長を変化させずに、終点が現在時刻となるように移動平均区間をシフトする。その後、ステップS108に進む。
【0068】
(ステップS108)昇降速度算出部1012は、サンプリング毎に現在の高度から直前の高度を差し引いて、現在の高度の差分を算出し、算出した差分をサンプリング間隔Δtで除算して、現在の昇降速度を算出する。昇降速度算出部1012は、現在時刻までの移動平均区間での昇降速度を平均して昇降速度の移動平均値を算出する。その後、ステップS109に進む。
【0069】
(ステップS109)制御部101は、算出した昇降速度の移動平均値を含む高度情報を生成する。制御部101は、生成した高度情報を表示部105に出力し、表示部105に昇降速度を表示させる。その後、ステップS101に戻り、ステップS102からステップS109の処理をサンプリング間隔ΔT毎に繰り返す。
【0070】
なお、昇降速度算出部1012は、移動平均区間長を第1の時間間隔に縮小して、終点が現在時刻となるように移動平均区間をシフトする処理は(
図6、ステップS104)、RAM110に記憶された現在よりも第1の時間間隔だけ過去よりも前の高度や昇降速度を消去することにより実現できる。その場合、高度変化判定部1011は、サンプリング間隔ΔT毎にサンプリングした高度を、昇降速度算出部1012は、サンプリング間隔ΔT毎に算出した昇降速度をそれぞれRAM110に記憶する。移動平均値を算出する際、昇降速度算出部1012は、RAM110において消去されずに残った昇降速度を用い、それらの平均値を移動平均値として算出する。
【0071】
また、昇降速度算出部1012は、移動平均区間長を時間経過と同じ進行度合いで拡大して、終点が現在時刻となるように移動平均区間をシフトする処理を(
図6、ステップS106)、RAM110に記憶された高度や昇降速度を消去せずに保持することによって実現してもよい。
また、昇降速度算出部1012は、移動平均区間長を変化させずに、終点が現在時刻となるように移動平均区間をシフトする処理を(ステップS107参照)、RAM110に記憶された高度や昇降速度のうち、最も早く記憶された高度や昇降速度を消去することで実現してもよい。
【0072】
このように、昇降速度算出部1012が移動平均区間長を高度変化状態(例えば、昇降状態の変化)に応じて縮小することで、現在の昇降速度が取得されてから昇降速度の移動平均値が算出されるまでの遅延を緩和する。そのため、移動平均値は直近の昇降状態に追従しうる。そして、移動平均区間長を昇降状態の判定に用いる第1の時間間隔に縮小することで、移動平均を行う昇降速度の算出に用いた高度を、昇降状態の判定に用いた高度の共通にすることができるので、判定された高度変化状態と算出された昇降速度とを整合することができる。
【0073】
なお、昇降速度算出部1012は、高度変化状態情報が示す高度変化状態が非昇降状態である場合には、昇降速度の移動平均値を0と定め、移動平均値を算出する処理を省略してもよい。但し、その場合でも昇降速度算出部1012は、高度変化状態の判定を行う。高度変化状態が非昇降状態である場合には、ユーザにとり昇降速度の移動平均値が有意でないため、その算出に係る処理を省略することで処理量を減少させることができる。
【0074】
上述したとおり、本実施形態に係る電子機器10は、高度を計測する高度計測部(例えば、108)と、現在までの予め定めた第1の時間間隔内で高度計測部が計測した高度に基づき高度変化の状態を判定する高度変化判定部(例えば、高度変化判定部1011)とを備える。また、電子機器10は、前記第1の時間間隔と等しく、あるいは前記第1の時間間隔よりも長い第2の時間間隔であって、現在までの第2の時間間隔内で高度計測部が計測した高度を用いて昇降速度を算出する昇降速度算出部(例えば、昇降速度算出部1012)を備える。
そのため、高度の変化状態が昇降速度を平均する時間間隔(第2の時間間隔)と等しいかそれよりも短い時間間隔(第1の時間間隔)の高度に基づいて算出されるので、その時点での昇降状態を反映し、かつ安定した昇降速度を計測することができる
【0075】
なお、上述した実施形態における電子機器10が備える各部の機能全体あるいはその一部は、これらの機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0076】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶部のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0077】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述した実施形態では、操作入力部104が備えるキー入力手段の個数は2個であるが、これには限られない。電子機器10が有する機能の数に応じて予め定めた数、例えば、1個でもよいし、2個よりも多くてもよい。
また、上述した実施形態では、電子機器10は高度計測機能付きの電子時計であるが、これには限られない。電子機器10は、例えば、高度計測機能を有していれば、いかなる電子機器、例えば、多機能携帯電話機(いわゆるスマートフォン)であってもよい。