特許第6289902号(P6289902)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6289902
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】注出部材、カラン及びサーバ
(51)【国際特許分類】
   B67D 1/08 20060101AFI20180226BHJP
【FI】
   B67D1/08 Z
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-271914(P2013-271914)
(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-124006(P2015-124006A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(72)【発明者】
【氏名】成田 秀一
(72)【発明者】
【氏名】杉山 尚明
(72)【発明者】
【氏名】武井 義明
【審査官】 北村 一
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−042599(JP,U)
【文献】 英国特許出願公告第01367354(GB,A)
【文献】 米国特許第04759634(US,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01155646(EP,A1)
【文献】 特表2016−507260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67D 1/00− 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料提供装置の発泡飲料が流れる配管の一端に取り付けられる注出部材であって、
前記配管の一端に回転可能に取り付けられる回転部と、
前記回転部に設けられ、前記発泡飲料を注出する注出口と
を備え、
前記回転部は、前記注出口から発泡飲料を注出するときに回転し、
前記注出口から注出する発泡飲料の注出方向が、前記回転部の回転軸の軸線方向とは異なる方向であり、かつ、前記回転部の回転軸の軸線方向とは交わらない方向である、注出部材。
【請求項2】
飲料提供装置の発泡飲料が流れる配管の一端に取り付けられる注出部材であって、
前記配管の一端に回転可能に取り付けられる回転部と、
前記回転部に設けられ、前記発泡飲料を注出する注出口と
を備え、
前記回転部は、前記注出口から発泡飲料を注出するときに回転し、
前記回転部は、該回転部に作用するモーメントによって回転する、注出部材。
【請求項3】
飲料提供装置の発泡飲料が流れる配管の一端に取り付けられる注出部材であって、
前記配管の一端に回転可能に取り付けられる回転部と、
前記回転部に設けられ、前記発泡飲料を注出する注出口と
を備え、
前記回転部は、前記注出口から発泡飲料を注出するときに回転し、
前記回転部は、
前記回転部の回転軸周りに形成された側壁部と、
前記側壁部から外方に延び、かつ、前記回転部の内部空間と連通する管状部材と
を備え、
前記管状部材に前記注出口が設けられている、注出部材。
【請求項4】
前記発泡飲料が穀物性発泡飲料である、請求項1〜のいずれか一項に記載の注出部材。
【請求項5】
請求項1〜のいずれか一項に記載の注出部材を備える、カラン。
【請求項6】
請求項に記載のカランを備える、サーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡飲料の注出に用いられる注出部材、カラン及びサーバに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、飲食店等で発泡飲料を提供する際には、ジョッキやグラス等の飲料容器をカランの下部に位置させた状態でカランを操作することにより、発泡飲料を飲料容器内に注出する。このようなカランはビールの注出に用いることができ、たとえば下記特許文献1には、ビールを注出するカラン(注出コック)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−25898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のカランにおいては、注出の際に、発泡飲料に空気を巻き込ませることについて十分な考慮がなされていなかったため、泡持ちのよい飲料を注出することが難しかった。
【0005】
そこで、本発明は、泡持ちのよい発泡飲料を注出することができる注出部材、カラン及びサーバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る注出部材は、飲料提供装置の発泡飲料が流れる配管の一端に取り付けられる注出部材であって、配管の一端に回転可能に取り付けられる回転部と、回転部に設けられ、発泡飲料を注出する注出口とを備え、回転部は、注出口から発泡飲料を注出するときに回転する。
【0007】
上記注出部材においては、配管の一端に回転可能に取り付けられた回転部が、注出口から発泡飲料を注出するときに回転する。このとき、注出口から注出された発泡飲料は、飲料容器の内側面や飲料容器内の発泡飲料の液面に当たって、発泡飲料の液体と泡とが共に回転方向に移動し、その移動の際に多くの空気を巻き込む。このように空気を多く巻き込むことで、泡持ちのよい発泡飲料が得られる。
【0008】
また、注出口から注出する発泡飲料の注出方向が、回転部の回転軸の軸線方向とは異なる方向であり、かつ、回転部の回転軸の軸線方向とは交わらない方向である態様であってもよい。上記注出方向に設計することで、注出口からの発泡飲料の注出の反力により、回転部が回転する。
【0009】
また、回転部は、該回転部に作用するモーメントによって回転する態様であってもよい。
【0010】
さらに、回転部は、回転部の回転軸周りに形成された側壁部と、側壁部から外方に延び、かつ、回転部の内部空間と連通する管状部とを備え、管状部材に注出口が設けられている態様であってもよい。この場合、管状部材の形状を変更することで、飲料の注出方向が変更される。
【0011】
また、本発明の一形態に係るカランは上述した注出部材を備える。
【0012】
また、本発明の一形態に係るサーバは上述したカランを備える。
【0013】
なお、上記発泡飲料は、たとえば穀物性発泡飲料である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、泡持ちのよい発泡飲料を注出することができる注出部材、カラン及びサーバが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施形態に係るカランを備えた飲料提供装置の構成を示す図である。
図2図2は、図1のカランの注出部材を示した側面図である。
図3図3は、図2の注出部材の回転部を示した平面図である。
図4図4は、図2の注出部材による飲料注出の様子を示した図である。
図5図5は、図3とは異なる態様の回転部を示した平面図である。
図6図6は、異なる態様の回転部を示した図であり、(a)は部分破断斜視図、(b)は(a)のb−b線断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、同一又は同等の要素については同一の符号を付し、説明が重複する場合にはその説明を省略する。
【0017】
図1は、実施形態に係るカラン10を備えた穀物性発泡飲料提供用の飲料提供装置1の全体構成を示している。ここで、穀物性発泡飲料とは、ビールや発泡酒等の穀物を原料とする発泡性の飲料であり、穀物には、例えば、大麦、小麦、米類、とうもろこし、豆類及びいも類からなる群より選択される1種以上が含まれる。なお、穀物性発泡飲料にはアルコール飲料の他、アルコールを含まない飲料も含まれる。以下では、穀物性発泡飲料としてビールを提供するものとして説明する。
【0018】
飲料提供装置1は、例えば、飲食店に設けられるものであり顧客の注文等に応じてカラン10からビールを注出する装置である。まずは、飲料提供装置1の全体構成について説明する。飲料提供装置1は、カラン10の他、炭酸ガスボンベ2と、減圧弁3と、炭酸ガスホース4と、ビール樽5と、ヘッド6と、ビールホース7と、サーバ8と、冷却装置9とを備えている。
【0019】
炭酸ガスボンベ2は、炭酸ガスが高圧で充填された略円柱状の容器である。炭酸ガスボンベ2は、ビール樽5の内部のビール液をサーバ8に押し出す機能を有すると共に、ビール樽5の内部のビール液に含まれる炭酸ガスの量を適正な量に保つ機能を有する。炭酸ガスボンベ2の内部において、炭酸ガスは、液体の状態で充填されており、例えば6〜8MPa程度の圧力で充填されている。炭酸ガスボンベ2は、炭酸ガスボンベ2内部の炭酸ガスの量を表示する残量表示計2aを備えている。残量表示計2aとしては、例えば、針状のものを用いることができ、この場合、当該針が上方を指しているときには炭酸ガスボンベ2内の炭酸ガスの量が比較的多いことを示し、当該針が下方を指しているときには炭酸ガスボンベ2内の炭酸ガスの量が少なくなってきたことを示す。このように、炭酸ガスボンベ2は、残量表示計2aを備えることにより、炭酸ガスボンベ2内の炭酸ガスの量を視認可能となっている。また、炭酸ガスボンベ2は、炭酸ガスボンベ2の上部に使用者が回転可能な開閉ハンドル(不図示)を備えており、この開閉ハンドルの回転により炭酸ガスボンベ2から減圧弁3への炭酸ガスの流路を開閉可能となっている。
【0020】
減圧弁3は、ビール樽5内部のビール液にかかる炭酸ガスによる圧力(以下、ガス圧と称する)を調整するための装置である。減圧弁3は、炭酸ガスボンベ2内の炭酸ガスの残圧を表示する残圧表示計3aと、ガス圧を調整するための回転式の操作部3bとを備えている。使用者は、例えば、操作部3bを時計回り方向に回転させることによりガス圧を上げて、操作部3bを反時計回り方向に回転させることによりガス圧を下げることができる。ここで、炭酸ガスが液体に溶け込む量は、液体の温度が高いほど少なく、液体の温度が低いほど多くなっている。よって、ビール樽5内のビール液の温度に合わせて減圧弁3でガス圧を適切な値とすることにより、高温時にビール液から炭酸ガスが抜けるガス分離や、低温時にビール液が炭酸ガスを過大に吸収する過飽和を防止することができる。
【0021】
ビール樽5は、ビール液が詰められた容器である。ビール樽5は、内部が密閉されているので、雑菌等がビール樽5の内部に入り込まないようになっている。また、ビール樽5の表面には、例えばカード状の液温検出部5aを貼り付けることが可能となっており、この液温検出部5aによってビール樽5内のビールの温度を検出することができる。液温検出部5aには、ビール樽5内のビールの温度のほか、検出したビールの温度に対応したガス圧の最適値が表示されるようになっている。よって、使用者は、減圧弁3の操作部3bを操作しながらガス圧を液温検出部5aに表示された値にすることによって、ビール樽5内のガス圧を最適な値にできるようになっている。また、ビール樽5は、内部にビールが流通するチューブ5bと口金(フィッティングバルブとも称される)5cとを備えている。ビール樽5のチューブ5bは、ビール樽5の内部で上下に延在しており、チューブ5bの上端に上記口金5cが設けられている。
【0022】
ヘッド6は、炭酸ガスボンベ2内の炭酸ガスを減圧弁3及び炭酸ガスホース4を介してビール樽5内に送り込むと共に、ビール樽5内のビール液をサーバ8に送り出す機能を有する。ヘッド6は、上下に移動させることにより炭酸ガスとビール液の流路を開閉可能な操作ハンドル6aと、炭酸ガスホース4と接続されるガス継手6bと、ビールホース7と接続されるビール継手6cとを備えている。ヘッド6の下部はビール樽5の口金5cに接続されるようになっており、ヘッド6の下部を口金5cに接続させた状態でヘッド6の操作ハンドル6aを下げることにより炭酸ガスホース4及びビールホース7の流路が開き、ヘッド6の操作ハンドル6aを上げることにより炭酸ガスホース4及びビールホース7の流路が閉塞される。なお、ガス継手6b及びビール継手6cは、ヘッド6の中央部で上下に延在する本体部6dに対して脱着自在となっており、ガス継手6b、ビール継手6c及び本体部6dが分解可能となっていることにより、ヘッド6を洗浄しやすい構造となっている。
【0023】
サーバ8は、ビールホース7を介してヘッド6と接続されており、ビール樽5からヘッド6及びビールホース7を介して送り出されたビール液を冷却する機能を有する。サーバ8は、いわゆる電気冷却式の瞬間冷却式サーバであり、サーバ8の内部には、ビールホース7からのビール液を冷却し、カラン10に飲料を供給する供給装置として機能する冷却装置9が設けられている。冷却装置9は、内部に冷却水を収容する冷却槽9aと、ビールホース7に接続されており冷却槽9aの内部で螺旋状に形成されたビールパイプ9bとを備えている。冷却槽9aの内側面には、冷却装置9の冷凍サイクル装置(不図示)に接続された冷媒管9cが上下に連設されており、冷凍サイクル装置内部の冷凍サイクルによって冷媒管9cに氷9dが形成されることにより、冷却槽9a内の水が冷却され、更にビールパイプ9b内部のビールが冷却される。また、ビールパイプ9bは螺旋状に形成されており、冷却槽9a内におけるビール液の流路を長く確保しているので、ビールパイプ9b内部のビール液は冷却装置9内部でより好適に瞬間冷却される。
【0024】
なお、本実施形態では、ビール樽5がサーバ8の外部に設けられ、サーバ8が冷却装置9を備えた電気冷却式の瞬間冷却式サーバである例について説明している。しかしながら、この電気冷却式の瞬間冷却式サーバに代えて、氷冷却式の瞬間冷却式サーバ、又は、ビール樽5、ヘッド6及びビールホース7が冷蔵庫内部に設けられた樽格納式サーバを用いるようにしてもよい。ここで、氷冷却式の瞬間冷却式サーバとは、冷却槽の内部に氷が設けられており、ビールパイプがコールドプレート(不図示)を介して上記氷によって冷却されるサーバである。また、樽格納式サーバとは、ビール樽、ヘッド、ビールホースが冷蔵庫内に格納された構造を備えるサーバであり、ビールホースはこの冷蔵庫によって冷却される。
【0025】
ここで、冷却装置9によって冷却されたビールを注出するカラン10についてより詳細に説明する。
【0026】
図2に示されるように、カラン10は、手で握って移動操作が可能なレバー11と、レバー11の操作によってカラン10内部のビールの流路を開閉するスライド弁(不図示)と、スライド弁を内部で移動可能に保持するカラン本体13と、カラン本体13から鉛直下方に延在するノズル(配管)14とを備えている。
【0027】
カラン10のレバー11は、使用者が図2の左側に位置する状態で、図2の左側に移動可能となっている。以下では、レバー11は、カラン本体13から上方に延在する略円柱状に形成されている。
【0028】
ノズル14は、カラン本体13から鉛直下方に延在しており、ノズル14の内部には、カラン本体13内のビール流路に連通されてビールが流通する流路を備えている。
【0029】
ノズル14の先端部14aには、液体用流路のビール液を飲料容器Aに注出する注出する注出部材20が取り付けられている。
【0030】
注出部材20は、図2および図3に示すように、ノズル14の先端部14aに取り付けられるベアリング部21と、ベアリング部21を介して先端部14aに回転可能に取り付けられる回転部22とを備えている。
【0031】
ベアリング部21は、管状のノズル14と同軸的に配置される環状の部分であり、ノズル14と回転部22との間に介在して、ノズル14に対して回転部22を自由に回転させる。
【0032】
回転部22は、六角環状の側壁部23と、側壁部23の下端開口を閉じる底部22aとを有し、ベアリング部21同様、管状のノズル14と同軸的に配置される。したがって、回転部22の回転軸Rは、ノズル14の中心軸と一致している。
【0033】
側壁部23は、回転部22の回転軸R周りに形成されており、6つの壁部23a〜23fによって構成されている。壁部23a〜23fには、一つおきに(本実施形態では、壁部23a、23c、23eに)外方に延びる注出ノズル24が設けられている。各注出ノズル24は、管状部材であり、回転部22の内部空間に連通している。そのため、各注出ノズル24は、回転部22内のビールを内部に導き入れて、先端開口(注出口)25から注出することができる。
【0034】
3つ注出ノズル24はいずれも、図3に示すように、平面視においてL字状を呈するように屈曲している。より詳しくは、3つの注出ノズル24は、回転部22の回転軸Rに関して同じ回転方向(図3では時計回り方向)を向くように、屈曲角θ図3では90°)で屈曲している。そのため、注出ノズル24の先端開口25から注出されるビール液の注出方向Dは、回転部22の回転軸Rの軸線方向とは異なる方向であり、かつ、回転部22の回転軸Rの軸線方向とは交わらない方向となっている。屈曲角θについては、90°〜135°の範囲が好ましい。
【0035】
なお、3つの注出ノズル24は、図2に示すように、その先端部が下向きに傾斜角θで傾斜している。傾斜角θはたとえば0°より大きく45°以下となっている。
【0036】
続いて、カラン10を用いて飲料容器Aにビールを注出する際の各構成要素の動作について、図4を参照しつつ説明する。
【0037】
まず、飲料提供装置1の使用者がレバー11を操作して、カラン本体13からノズル14へのビール流路が確立されると、ノズル14から注出部材20の回転部22内にビールが流入する。すると、ビールは、回転部22の内部空間と連通する注出ノズル24を通って、その先端開口25から注出される。先端開口25から注出されたビールは、たとえば飲料容器Aの内側面に衝突し、その内側面を伝って、飲料容器Aの底に向かって螺旋状に流れ落ちる。
【0038】
このときのビールの注出方向Dは、上述したとおり、回転部22の回転軸Rの軸線方向とは異なる方向であり、かつ、回転部22の回転軸Rの軸線方向とは交わらない方向となっているため、ビールの注出により、回転軸R周りのモーメントが発生する。より詳しくは、回転軸Rに関して時計回りの向きに屈曲された注出ノズル24により、ビール注出の反力として、回転部22には、回転軸Rに関して反時計回りのモーメントが発生する。そのモーメントの作用により、ノズル14に対して自由に回転可能な回転部22は、図4に示すように、回転部22と注出ノズル24とが一体的に回転軸Rに関して反時計回りに回転する。
【0039】
このように、上述した注出部材20においては、ノズル14の先端部14aに回転可能に取り付けられた回転部22が、注出ノズル24の先端開口25からビールを注出するときに回転する。このとき、注出ノズル24の先端開口25から注出されたビールは、飲料容器Aの内側面や飲料容器A内のビールの液面に当たって、ビール液と泡とが共に回転軸R周りの回転方向に移動し、その移動の際に多くの空気を巻き込む。
【0040】
ビールの泡に含まれる気体の大半が炭酸ガスである場合には、泡の外に存在する空気の比重と炭酸ガス比率が高い泡内の気体の比重とが大きく異なるため、平衡となりにくく、泡が崩壊しやすい。そこで、上述したようにビールに空気を巻き込ませて、泡内に空気を取り込むことで、泡内の比重と泡外の比重との差が緩和される。その結果、泡が崩壊するまでの時間が長くなり、泡持ちがよくなる。
【0041】
すなわち、上述した注出部材20においては、ビールを注出するときに、回転部22が回転して、ビールに多くの空気を巻き込ませることで、注出されたビールの泡持ちがよくなる。
【0042】
加えて、注出部材20では、ビールを注出するときに、回転部22が回転するため、注出ノズル24の先端開口25から注出されるビールの注出方向は、常に一定ではなく、時間の経過とともに変化する。その結果、飲料容器A内には、一方向からだけではなく、様々な方向からビールが注入されて、ビールが飲料容器A内において効果的に混ざり合う。
【0043】
一般に、飲食店等で提供される飲料は、飲料容器内に注出された直後から飲料容器内の全体にわたって均質であることが望ましいが、飲料の多くは、比重の異なる複数種類の材料を含んでおり、複数種類の材料のそれぞれの比重が異なるため、不均質になりやすい。上述した注出部材20を用いてビールを注出することで、ビールが飲料容器A内において効果的に混ざり合い、ビールの均質化が図られる。
【0044】
発泡飲料が、特に、複数種類の液体で構成されている飲料や固形分を含む飲料の場合には、不均質になりやすいが、注出部材20を用いることにより均質化を図ることが可能となる。固形分を含む飲料としては、粉末を液体に溶解させた飲料や、粉末に液体を加えて作る飲料などがある。複数種類の液体で構成される飲料としては、2種類のビール液を同じ量だけ混ぜて作るビール飲料(いわゆる、ハーフアンドハーフ)などがある。
【0045】
加えて、注出ノズル24が、側壁部23とは別部材であるため、必要に応じて、注出ノズルの形状を変更したり形状の異なる注出ノズルを選択したりする等して、飲料の注出方向を容易に変更することができる。
【0046】
なお、注出ノズル24は、上述した形状のノズルに限らず、様々な形状のノズルを採用することができる。たとえば、注出ノズル24の長さや径を変えたり、注出開口25の大きさを変えたりすることにより、上述した回転部22の回転速度を調整することができる。回転部22の回転速度を高くする方法としては、ノズル14の径より注出ノズル24の径を小さくする方法、側壁部23の内部空間の面積(回転軸Rに直交する面での面積)より抽出ノズル24の断面積を小さくする方法、注出ノズル24の径より注出開口25の径を小さくする方法などがある。
【0047】
回転部22の回転速度を増すことで、ビールが飲料容器Aの内側面または飲料容器内のビール液の液面に衝突する勢いが増し、ビールの炭酸ガスが適度に抜けて、味や香りが引き立つビールを注ぐことができる。加えて、ビールの注出時に、同時に泡を形成することができる(すなわち、1度注ぎ)ので、別途に泡を形成する場合(2度注ぎ)に比べて、ビール液に含まれる炭酸ガス量が少なくなり、炭酸がお腹にたまりにくくもなる。さらに、ビールの1度注ぎは、注ぎ手にある程度高い技術が求められるが、上述した注出部材20を用いて注出することで、高い技術力がなくても1度注ぎを実現できる。
【0048】
図5に、注出ノズルの変形例の一例を示す。図5に示した回転部22の注出ノズル24Aも、上述した注出ノズル24同様、回転部22の内部空間に連通し、かつ、壁部23a、23c、23eから外方に延びている。
【0049】
ただし、注出ノズル24Aは、上述した注出ノズル24とは異なり、回転部22の半径方向に真っ直ぐに延びる管状部材であり、また、その先端の開口は塞がれている。注出ノズル24Aは、先端開口の代わりに、側面に設けられた側面開口(注出口)25Aを有している。
【0050】
3つの注出ノズル24Aのそれぞれの側面開口25Aはいずれも、回転部22の回転軸Rに関して同じ側(図5では反時計回りの側)に設けられている。そのため、注出ノズル24Aの側面開口25Aから注出されるビール液の注出方向Dは、回転部22の回転軸Rの軸線方向とは異なる方向であり、かつ、回転部22の回転軸Rの軸線方向とは交わらない方向となっている。
【0051】
このような注出ノズル24Aを有する回転部22においても、上述した注出ノズル24を有する回転部22同様に、ビールの注出により、回転軸R周りのモーメントが発生する。すなわち、回転部22は、回転部22と注出ノズル24とが一体的に回転軸Rに関して時計回りに回転する。したがって、図5に示した回転部22を備える注出部材22によっても、ビールの均質化を図ることができる。
【0052】
なお、上述した実施形態では、ビール注出の反力によって回転部22を回転させる態様を示したが、ビール注出の反力以外の力で回転部を回転させてもよい。
【0053】
たとえば、図6に示すように、回転部22内にプロペラ部27を設けることで、回転部22を回転させてもよい。プロペラ部27は、中心部27aから放射状に延びる3枚のプロペラ27bを有し、プロペラ27bは側壁部23の壁部23b、23d、23fまで延びて固定されている。各プロペラ27bは、水平面(回転軸Rに対して直交する面)に対して同じ向きに傾斜するように設計されている。そのため、ノズル14から回転部22にビールが流入した際、その流入圧力によって、プロペラ部27には回転軸R周りのモーメントが発生する。図6に示した構成では、プロペラ部27には、回転軸Rに関して反時計回りのモーメントが発生する。その結果、ノズル14に対して自由に回転可能な回転部22は、そのモーメントにより、回転軸Rに関して反時計回りに回転する。
【0054】
このようなプロペラ部27を有する回転部22においても、上述した注出ノズル24、24Aを有する回転部22同様に、回転軸Rに関して回転するため、ビールの均質化を図ることができる。
【0055】
加えて、図6に示した回転部22は、ビール注出の反力による回転ではないため、ビールを注出する注出方向に関する制限がなく、注出口を自由に設計することができる。たとえば、図6に示すように、側壁部23の壁部を貫通する開口23gを設け、この開口23gを注出口とすることができる。
【0056】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0057】
たとえば、回転部に設ける注出ノズルの数は、3つに限らず、1つや2つ、4つ以上でもよい。また、回転部の側壁部は、六角環状に限らず、たとえば円環状や六角以外の多角環状であってもよい。さらに、回転部は、必ずしも側壁部を有する必要はなく、たとえば注出ノズル24がノズル14に直接取り付けられる態様であってもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…飲料提供装置、8…サーバ、10…カラン、20…注出部材、22…回転部、24、24A…注出ノズル、25、25A、23g…注出口。
図1
図2
図3
図4
図5
図6