特許第6289920号(P6289920)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6289920
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】砂防構造体
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/02 20060101AFI20180226BHJP
【FI】
   E02B7/02 B
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-11407(P2014-11407)
(22)【出願日】2014年1月24日
(65)【公開番号】特開2015-137522(P2015-137522A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2016年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鐵住金建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100178283
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 孝太
(72)【発明者】
【氏名】大隅 久
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 謙
(72)【発明者】
【氏名】筒井 智照
(72)【発明者】
【氏名】江守 良介
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−112529(JP,U)
【文献】 実開昭54−034182(JP,U)
【文献】 実開昭47−007402(JP,U)
【文献】 特開2007−000814(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103088791(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 5/00〜 7/18
E02B 8/00〜 8/08
E02B 1/00〜 3/28
B07B 1/00〜 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
河床に設置された支持構造物に複数の縦桁が架設されるとともに、前記縦桁の長手方向に間隔をあけて、長手方向を土石流の流下方向とする複数のスクリーン材が架設、固定されて構築される砂防構造体であって、
前記スクリーン材同士の長手方向の連結部位が、略同一間隔で直線状、折れ線状、又は弧状に前記土石流の流下方向に倒れるように傾斜して、前記スクリーン材の上面同士が略面一に前記縦桁上で固定されていること
を特徴とする砂防構造体。
【請求項2】
長手方向において隣接する2つの前記スクリーン材の、下流側にある前記スクリーン材の前記上流側端部は、上流側にある前記スクリーン材の前記下流側端部の平面視における下側に位置することを特徴とする請求項1記載の砂防構造体。
【請求項3】
下流側にある前記スクリーン材の上面よりも上流側にある前記スクリーン材の上面が高い位置にあることを特徴とする請求項1又は2記載の砂防構造体。
【請求項4】
前記下流側スクリーン材の上流側端部の形状と、前記上流側スクリーン材の下流側端部の形状は相補的であることを特徴とする請求項1乃至の何れか1項記載の砂防構造体。
【請求項5】
前記スクリーン材は、長手方向に垂直な平面における断面が逆台形であることを特徴とする請求項1乃至の何れか1項記載の砂防構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土石流の発生が予想される箇所の河床に設置し、土石流の発生時には礫と水とを分離させることで土石流を減勢または停止させるための砂防構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
河川や渓流において、台風や集中豪雨時等に土石流が発生することがある。土石流は、降り続く豪雨により軟弱となった山腹の地盤が流動化することで生じる土砂や石等の礫が河川や渓流の水と一体となり傾斜を流下することで発生し、下流の集落等に甚大な被害をもたらすものである。
【0003】
こうした土石流の集落への流下を防止するために、従来から様々な砂防構造体が用いられているが、その多くが、特許文献1に開示されているように、土石流の流下方向に略垂直に設けられた枠体等により構成されている。
【0004】
このような砂防構造体では、垂直に設けられた枠体により土石流に含まれる石や樹木を堰き止める一方、水や砂を通過させることで、岩石等と水等とを分離し、甚大な被害をもたらす土石流の状態のままふもとの集落に流下することを防止している。このように、土石流を直接受け止める砂防構造体は、捕捉工とも呼ばれる。
【0005】
しかし、土石流の流下方向に対して略垂直に設けられた枠体状の捕捉工では、想定される礫の粒径が大きく傾斜が急である場合、受け止めるエネルギー量が膨大なものとなり、捕捉工の破損を招くことがある。
【0006】
こうした破損を防止するため、捕捉工の機械的強度を増加させることも行われるが、機械的強度を増加させるべく捕捉工の肉厚化等をした場合、原料となる鋼材の使用量が増え、砂防構造体の製造コストの増加を招いてしまう。
【0007】
また、こうした捕捉工では、予想される土石の量が過度に多い場合、早期に捕捉工の許容堆積量を超えてしまい、土石流が捕捉工を越流することがある。そのため、全高がより高く、広範囲にわたる大規模な捕捉工を設置する必要が生じ、同様に鋼材の使用量が増加し、砂防構造体の製造コストの増加を招いてしまう。
【0008】
そこで、砂防構造体の製造コストを捕捉工よりも低廉に抑えつつ、土石流による被害を効果的に防止するため、発生した土石流の石などの礫を受け止めるのではなく減勢させる、減勢工が採用されている(特許文献2参照)。
【0009】
減勢工は、土石流を防止する砂防構造体という点では捕捉工と共通しているものの、捕捉工のように直接土石を受け止めるのではなく、ある程度流下させながら土石流を減勢させるものであるため、その作用及び作用を実現するための解決手段が捕捉工とは異なる技術である。
【0010】
具体的には、特許文献2に記載されている減勢工では、H型鋼よりなる支持桁上に断面逆台形の角形鋼管であるスクリーン材を並列配置することによりスクリーンを簀子状に形成し、このスクリーンの土石流の流下方向に対する立設角度を、上述した捕捉工よりもなだらかな略水平またはこれに近い傾斜としている。
【0011】
こうすることで、土石流が流下する傾斜を緩やかなものとし、土石流のエネルギーを減勢させつつ、簀子状のスクリーンで水と礫とを分離することで、最終的に土石流を消滅させる。
【0012】
大規模かつ高エネルギーな土石流が発生する現場であって、工作物の設置面積を広く確保できる場所は、こうした減勢工の設置に特に適していて、土石流による被害を効果的に防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平6−10330号公報
【特許文献2】実公平4−55076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
図23は、従来の減勢工の(A)は縦桁の接合部分を示す側面図、(B)は(A)の接合部分に砂礫が衝突、集積する様子を示す側面図、(C)は(A)の接合部分が礫により損傷する様子を示す側面図である。
【0015】
上述した従来の減勢工では、図23(A)に示すように、支持桁である縦桁のフランジ32上にスクリーン材480が長手方向及び短手方向に並置されて簀子状のスクリーンが形成されている。そして、長手方向に隣接する2つのスクリーン材480は、略直角となっているそれぞれの端部が若干の間隔を空けて対向し連結した状態となっている。
【0016】
こうした連結部位において、土石流がその流下方向(X方向)に流れると、図23(B)に示すように、下流側にあるスクリーン材480の上端部にある角部481に礫Fが衝突、集積することとなる。この衝突と集積を繰り返すことで、図23(C)に示すように、次第に角部481が損傷し、減勢工の強度が低下する原因となることがあった。
【0017】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、減勢工である砂防構造体であって、スクリーン材の連結部位における損傷の発生を効果的に防止することのできる砂防構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者は、上述した課題を解決するために、流下する土石流に含まれる礫が衝突してもその衝突エネルギーを受け流すことができ、スクリーン材の連結部位における損傷の発生を効果的に防止することができる砂防構造体を発明した。
【0019】
第1発明に係る砂防構造体は、河床に設置された支持構造物に複数の縦桁が架設されるとともに、前記縦桁の長手方向に間隔をあけて、長手方向を土石流の流下方向とする複数のスクリーン材が架設、固定されて構築される砂防構造体であって、前記スクリーン材同士の長手方向の連結部位が、略同一間隔で直線状、折れ線状、又は弧状に前記土石流の流下方向に倒れるように傾斜して、前記スクリーン材の上面同士が略面一に前記縦桁上で固定されていることを特徴とする。
【0020】
第2発明に係る砂防構造体は、第1発明に係る砂防構造体において、長手方向において隣接する2つの前記スクリーン材の、下流側にある前記スクリーン材の前記上流側端部は、上流側にある前記スクリーン材の前記下流側端部の平面視における下側に位置することを特徴とする。
【0022】
発明に係る砂防構造体は、第1又は第2発明に係る砂防構造体において、下流側にある前記スクリーン材の上面よりも上流側にある前記スクリーン材の上面が高い位置にあることを特徴とする。
【0023】
発明に係る砂防構造体は、第1乃至第発明の何れか1つに係る砂防構造体において、前記下流側スクリーン材の上流側端部の形状と、前記上流側スクリーン材の下流側端部の形状は相補的であることを特徴とする。
【0024】
発明に係る砂防構造体は、第1乃至第発明の何れか1つに係る砂防構造体において、前記スクリーン材は、長手方向に垂直な平面における断面が逆台形であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
上述した構成からなる本発明によれば、流下する土石流に含まれる礫が衝突してもその衝突エネルギーを受け流すことができ、スクリーン材の連結部位における損傷の発生を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1実施形態に係る砂防構造体が設置されている状態を示す斜視図である。
図2】第1実施形態に係る砂防構造体の全体斜視図である。
図3】第1実施形態に係る砂防構造体で用いられているスクリーンを示す斜視図である。
図4図3のスクリーン材から横桁を取り除いた状態を示す斜視図である。
図5】スクリーン材を示す、(A)は斜視図、(B)は側面図、(C)は角型鋼管の下流側の端部に溶接されている下流側端部を取り外した状態を示す拡大斜視図である。
図6】スクリーン材を縦桁に取り付けた様子を示す概略側面図である。
図7】第1実施例に係る砂防構造体で用いられている縦桁を示す斜視図である。
図8】第1実施例に係る砂防構造体で用いられている横桁を示す斜視図である。
図9】第1実施例に係る砂防構造体で用いられている支持構造物を示す斜視図である。
図10】第1実施例に係る砂防構造体において、支持構造物に縦桁が取り付けられる様子を示す斜視図である。
図11】第1実施例に係る砂防構造体において、縦桁に横桁とスクリーン材とが取り付けられる様子を示す斜視図である。
図12】本願発明の第2実施形態に係る砂防構造体が設置されている状態を示す斜視図である。
図13】第2実施形態に係る砂防構造体で用いられている支持構造物を示す斜視図である。
図14】第2実施形態において側部支持材が基礎構造物に取り付けられる様子を示す斜視図である。
図15】縦桁が支持構造物に取り付けられると共に、縦桁に横桁が取り付けられる様子を示す斜視図である。
図16】側部支持材に縦桁が取り付けられると共に、縦桁にスクリーン材が取り付けられる様子を示す斜視図である。
図17】本発明の第1変形例に係る砂防構造体で用いられるスクリーン材の(A)は下流側端部、(B)は上流側端部を示す斜視図である。
図18図17に示すスクリーン材が2つ接合される部分を示す側面図である。
図19】本発明の第2変形例に係る砂防構造体で用いられるスクリーン材の(A)は下流側端部、(B)は上流側端部を示す斜視図である。
図20図19に示すスクリーン材が2つ接合される部分を示す側面図である。
図21】本発明の第3変形例に係る砂防構造体で用いられるスクリーン材の(A)は下流側端部、(B)は上流側端部を示す斜視図である。
図22図21に示すスクリーン材が2つ接合される部分を示す側面図である。
図23】従来の減勢工の(A)は縦桁の接合部分を示す側面図、(B)は(A)の接合部分に砂礫が衝突、集積する様子を示す側面図、(C)は(A)の接合部分が砂礫により損傷する様子を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係る砂防構造体1について詳細に説明する。
【0028】
図1は、第1実施形態に係る砂防構造体1が設置されている状態を示す斜視図である。図2は、第1実施形態に係る砂防構造体1の全体斜視図である。
【0029】
砂防構造体1は、コンクリート製の支持構造物2の上に、簀子状のスクリーン5が載置され構築されている。構造体1は、山肌Mに囲まれた渓流Vの途中に、渓流Vの伸長方向、すなわち土石流が発生した際、その土石流の流下方向(X方向)にスクリーン材4の長手方向が向くように構築されている。支持構造物2上にスクリーン5が載置された状態において、支持構造物2とスクリーン5とにより囲まれて形成される空間Dは、排水溝として機能する。
【0030】
図3は、図1の実施例に係る砂防構造体1で用いられているスクリーン5を示す斜視図である。図4は、図3のスクリーン材から横桁6を取り除いた状態を示す斜視図である。
【0031】
スクリーン5は、複数のスクリーン材4が、縦桁3及び横桁6が連結されることで形成される枠体の上にその長手方向をX方向すなわち土石流の流下方向に向けるとともに、X方向と垂直なY方向に短手方向を向けて並列配置されて形成されている。
【0032】
スクリーン材4は、縦桁3のフランジ32上にボルト45を用いて固定されている。この固定の詳細は後述する
【0033】
図5は、スクリーン材4を示す、(A)は斜視図、(B)は側面図、(C)は角型鋼管の下流側の端部に溶接されている面材を取り外した状態を示す拡大斜視図である。
【0034】
スクリーン材4は、X方向に垂直な平面における断面が逆台形となる角型鋼管41の長手方向の両端部が、Y方向と平行な平面により斜めに切り落とされるとともに、その上流側の端部に鋼製の板材が取り付けられた上流側端部42b、下流側の端部に同じく鋼製の板材が取り付けられた下流側端部42aが溶接されて形成されている。角型鋼管41の両端部断面はそれぞれ平行となっている。角型鋼管41の上流側端部42bの端部上側にある角部は、X−Z平面による断面で見て鈍角となっている。
【0035】
ただし、スクリーン5の下流側の最端部に位置するスクリーン材4の端部については、斜めではなく垂直に、すなわちX−Z平面に平行に切り落とされた形状となっている。
【0036】
また、角型鋼管41の長手方向の両端部近傍の底部には、それぞれ孔部44が2つ形成された鋼製の長板状の部材である接合プレート43が溶接されている。接合プレート43は、孔部44が角型鋼管41を挟んでそれぞれ反対側に位置するようにして接合される。
【0037】
図6は、スクリーン材4を縦桁3に取り付けた様子を示す概略側面図である。X方向、すなわち土石流の流下方向に沿い並置された2つのスクリーン材4の上流側端部42bと下流側端部42aは、スクリーン材4が縦桁3のフランジ32上に取り付けられた状態において互いに平行に対向し、かつ、上流側端部42bが下流側端部42aの下側に位置した状態となっている。
【0038】
図7は、縦桁3を示す斜視図である。縦桁3は、H型鋼により形成される部材であり、ウェブ31と、ウェブ31の両端からウェブ31に対して垂直となる方向に張り出すフランジ32、そして長手方向両端部近傍においてフランジ32間に張り渡されているスチフナ33が形成されている。なお、図7では2本の縦桁3が長手方向に連続して描かれている。
【0039】
図7における縦桁3の上側にあるフランジ32の周縁部には、長手方向に沿い、複数の孔部35が形成されている。
【0040】
また、スチフナ33にも、それぞれ図7の上下に2つ並んで孔部36が形成されている。
【0041】
また、図7の下側にあるフランジ32の長手方向両端部近傍には、それぞれ孔部34が形成されている。
【0042】
図8は、横桁6を示す斜視図である。横桁6は、溝形鋼により形成される部材であり、ウェブ61と、ウェブ61の端部からそれぞれ同方向に平行に張り出すフランジ62とが形成されている。ウェブ61の長手方向両端部には、孔部65がそれぞれ2つずつ形成されている。
【0043】
図9は、支持構造物2を示す斜視図である。支持構造物2は、コンクリート製で砂防構造体1の土台となる構造物であり、基底部21、基底部21の±Y方向端部からそれぞれ立設される側壁22、基底部21の−X方向端部から側壁22と連続し、側壁22と同じ高さに立設される奥側壁23、及び2つの側壁22の中間位置において基底部21から立設される中間壁24と、を備えて構成されている。
【0044】
側壁22は、支持構造物2の内側の壁面において、X方向に沿い段部221が形成されている。この段部221の上面には、所定の間隔をあけて所定の数のアンカーボルト222が突出して形成されている。このアンカーボルト222には、後述するナット39が螺合可能となっている。
【0045】
中間壁24は、側壁22に形成された段部221と同じ高さに立設されている。中間壁24の上面にも、所定の間隔をあけて所定の数のアンカーボルト222が突出して形成されている。
【0046】
次に、上述した構成部材を備える砂防構造体1の建造について説明する。
【0047】
まず、支持構造物2への縦桁3の取り付けについて説明する。図10は、支持構造物2に縦桁3が取り付けられる様子を示す斜視図である。縦桁3は、支持構造物2の側壁22に設けられた段部221に、シュー7を介して載置され、ボルト締結される。
【0048】
シュー7は、モルタル樹脂よりなる板状の部材であり、その中央に孔部71が形成されていて、この孔部71と、縦桁3のフランジ32に形成された孔部34とは、支持構造物2の段部221または中間壁24の上面に設けられたアンカーボルト222を挿通可能な略同一の径を有している。
【0049】
支持構造物2への縦桁3の取り付けでは、まず、複数のシュー7が、その孔部71に支持構造物2のアンカーボルト222が挿通されるようにして、段部221に並置される。
【0050】
次に、複数の縦桁3が、その長手方向の一端側にある2つの孔部34に対して隣接する2つのアンカーボルト222が挿通されるようにして、シュー7上に載置される。
【0051】
次に、縦桁3の2つのフランジ32間に突出しているアンカーボルト222の先端部からナット39が螺合されることで、支持構造物2への縦桁3の取り付けが行われる。
【0052】
次に、縦桁3への横桁6とスクリーン材4との取り付けについて説明する。図11は、縦桁3に横桁6とスクリーン材4とが取り付けられる様子を示す斜視図である。
【0053】
横桁6は、その長手方向両端部に形成された孔部65を、縦桁3のスチフナ33に形成された孔部36に重ね合わせた状態で、ボルト37をこれらの孔部65、36に挿通しその端部にナット38を螺合することで縦桁3に取り付けられる。
【0054】
スクリーン材4は、接合プレート43に形成された2つの孔部44を、縦桁3の長手方向において隣接する2つの孔部35にそれぞれ重ね合わせるようにして縦桁3上に載置された後、ボルト45を孔部44から孔部35に挿通し、2つのフランジ32間に突出したボルト45の先端にナット46を螺合することで縦桁3に取り付けられる。
【0055】
こうして形成される砂防構造体1によると、土石流の岩石と水とを分離させることでこれを減勢または停止させることができる。
【0056】
また、土石流の流下方向下流にあるスクリーン材4の上流側端部42bの上側にある角部がX−Z平面視で鈍角であるため、流下する土石流に含まれる岩石や砂礫が衝突してもその衝突エネルギーを受け流すことができ、スクリーン材の連結部位における損傷の発生を効果的に低減することができる。
【0057】
[第2実施形態]
図12は、本願発明の第2実施形態に係る砂防構造体100が設置されている状態を示す斜視図である。
【0058】
第2実施形態に係る砂防構造体100は、山肌Mに囲まれた渓流Vの途中であって、渓流Vの伸長方向、すなわち土石流の流下方向Xに沿い設けられる点は上述した第1実施形態に係る砂防構造体1と同様である。
【0059】
しかし、第2実施形態に係る砂防構造体100は、山肌Mから渓流Vにかけて傾斜する傾斜面Sの延長方向についても、土石流の減勢を行いたい場合に用いられるものであり、第1実施形態に係る砂防構造体1の側部に連続し、更に傾斜したスクリーン5’を備える砂防構造体10が形成されている。
【0060】
以下の説明では、砂防構造体1の部分については上述した第1実施形態に係る砂防構造体1と異なる部分についてのみ説明し、主に砂防構造体10’について説明する。
【0061】
砂防構造体10’は、簀子状のスクリーン5’がスクリーン材4’を土石流の流下方向(X方向)に向けつつ、砂防構造体1の一端側の側壁22と、支持構造物2’に取り付けられた側部支持材82とにより支持されて構成されている。砂防構造体10’のスクリーン5’と支持構造物2’とにより形成される空間D’は、排水溝として機能する。
【0062】
なお、スクリーン5’は、縦桁3’と横桁6’とにより構成された枠体の上にスクリーン材を掛け渡して構成されている点で上述した第1実施形態に係る砂防構造体1のスクリーン5と共通した構成となっている。
【0063】
図13は、第2実施形態に係る砂防構造体で用いられている支持構造物2’を示す斜視図である。支持構造物2’は、コンクリート製で砂防構造体10の土台の一部となる構造物であり、底部及び底部の一端部から上方向(Z方向)に立設される側壁とにより構成される基底部22’と、側壁に設けられた段部21’と、側壁に設けられY方向に突出するアンカーボルト23’と、を備えて構成されている。
【0064】
次に、上述した構成部材を備える砂防構造体10の建造について説明する。
【0065】
図14は、第2実施形態において側部支持材82が支持構造物2’に取り付けられる様子を示す斜視図である。
【0066】
側部支持材82は、ウェブ826と2つのフランジ827を備えるH型鋼の長手方向一端側を垂直に切り、そこにベースプレート821が溶接されると共に、他端側を斜めに切り、そこに接合プレート824が溶接されて形成されている。
【0067】
ベースプレート821には、アンカーボルト23’を挿通可能な径を有する2つの孔部822が形成されている。
【0068】
接合プレート824には、後述するボルト888を挿通可能な4つの孔部825が形成されている。
【0069】
この側部支持材82の支持構造物2’への取り付けは、ベースプレート821の孔部822に支持構造物2’から突出しているアンカーボルト23’が挿通されるとともに、ベースプレート821を貫通したアンカーボルト23’の先端にナット823を螺合することで行われる。
【0070】
図15は、縦桁3’が支持構造物2’に取り付けられると共に、縦桁3’に横桁6’が取り付けられる様子を示す斜視図である。
【0071】
縦桁3’の支持構造物2’への取り付けは、支持構造物2’のアンカーボルト222’が縦桁3’のベースプレート36’に形成された孔部380’に挿通されるとともに、ベースプレート36’を貫通したアンカーボルト222’にナット39’が螺合されることで行われる。
【0072】
横桁6’の縦桁3’への取り付けは、横桁6’の端部に形成された孔部65’が縦桁3’に形成された孔部360’と重ね合わされるとともに、それらの孔部65’、360’にボルト37’が挿通され、挿通されたボルト37’の端部にナット38’を螺合することで行われる。
【0073】
図16は、側部支持材82に縦桁3’が取り付けられると共に、縦桁3’にスクリーン材4’が取り付けられる様子を示す斜視図である。
【0074】
側部支持材82への縦桁3’の取り付けは、側部支持材82の接合プレート824に形成された孔部825と、縦桁3’のフランジ32’の端部近傍に形成された孔部380’が重ねあわされるとともに、これらの孔部825、380’にボルト888が挿通され、挿通されたボルト888の先端部にナット889が螺合されることで行われる。
【0075】
縦桁3’へのスクリーン材4’の取り付けでは、まず、接合プレート43’に形成された2つの孔部44’に、縦桁3’の長手方向において隣接する2つの孔部35’をそれぞれ重ね合わせるようにして、スクリーン材4’が縦桁3’に載置される。次に、ボルト45’が孔部44’から孔部35’に挿通され、2つのフランジ32’間に突出したボルト45’の先端にナット46’が螺合される。こうして縦桁3’へのスクリーン材4’の取り付けが完了する。
【0076】
こうして形成される砂防構造体100によると、渓流Vの底部に加えて側部(傾斜面S側)からも土石流の礫と水とを分離させることができ、更に効果的に減勢または停止させることができる。
【0077】
また、土石流の流下方向下流にあるスクリーン材4及び4’の上流側端部42bの上側にある角部がX−Z平面視で鈍角であるため、流下する土石流に含まれる礫が衝突してもその衝突エネルギーを受け流すことができ、スクリーン材の連結部位における損傷の発生を効果的に防止することができる。
【0078】
なお、上述した各実施形態はあくまで本発明を説明するための例に他ならず、本発明はこれらの態様に限られるものではない。
【0079】
例えば、X方向に並ぶスクリーン材の継目部分については、上述した2つの実施形態に係る砂防構造体では図5に示す端部形状を有するスクリーン材同士が図6に示すように連続的に固定される態様となっていたが、本発明はこうした態様に限られず、例えば図17図22に示す各態様を採用してもよい。
【0080】
図17は、本発明の第1変形例に係る砂防構造体で用いられるスクリーン材401の(A)は下流側端部402a、(B)は上流側端部402bを示す斜視図である。図18は、図17に示すスクリーン材401が2つ接合される部分を示す側面図である。なお、以下に説明する各変形例では、スクリーン材401以外の構成は上述した2つの実施形態と同様であるため、ここではその説明は省略する。
【0081】
第1変形例に係る砂防構造体で用いられるスクリーン材401では、上流側端部402bは、Y方向から見てZ方向の高さが先端部に行くほど低くなる傾斜するとともに、途中からZ方向に向けて垂直に落ち込む、先細のテーパ状の形状をしている。
【0082】
また、上流側端部402bと対向する下流側端部402aは、図18に示すように、スクリーン材401が2つ接合された状態において上流側端部402bと相補的となる形状を有している。
【0083】
こうした形状を有するスクリーン材401によっても、上流側端部402bの上側にある角部がX−Z平面視で鈍角であるため、流下する土石流に含まれる岩石や砂礫が衝突してもその衝突エネルギーを受け流すことができ、スクリーン材401の連結部位における損傷の発生を効果的に防止することができる。
【0084】
図19は、本発明の第2変形例に係る砂防構造体で用いられるスクリーン材441の(A)は下流側端部442a、(B)は上流側端部442bを示す斜視図である。図20は、図19に示すスクリーン材441が2つ接合される部分を示す側面図である。
【0085】
第2変形例に係る砂防構造体で用いられるスクリーン材441では、上流側端部442bは、Y方向から見てZ方向の高さが次第に低くなるような円弧形状をしている。
【0086】
また、上流側端部442bと対向する下流側端部442aは、図20に示すように、スクリーン材441が2つ接合された状態において上流側端部442bと相補的となる形状を有している。
【0087】
こうした形状を有するスクリーン材441によっても、上流側端部442bの上側にある角部がX−Z平面視で円弧状であるため、流下する土石流に含まれる岩石や砂礫が衝突してもその衝突エネルギーを受け流すことができ、スクリーン材441の連結部位における損傷の発生を効果的に防止することができる。
【0088】
図21は、本発明の第3変形例に係る砂防構造体で用いられるスクリーン材461の(A)は下流側端部462a、(B)は上流側端部462bを示す斜視図である。図22は、図21に示すスクリーン材461が2つ接合される部分を示す側面図である。
【0089】
第3変形例に係る砂防構造体で用いられるスクリーン材461では、上流側端部462bは、Y方向から見てZ方向の高さが先端部に行くほど低くなる、先細のテーパ状の形状をしている。
【0090】
また、上流側端部462bと対向する下流側端部462aは、図22に示すように、Y方向から見てZ方向に向けて垂直に落ち込む形状をしている。
【0091】
こうした形状を有するスクリーン材461によっても、上流側端部462bの上側にある角部がX−Z平面視で鈍角であるため、流下する土石流に含まれる岩石や砂礫が衝突してもその衝突エネルギーを受け流すことができ、スクリーン材461の連結部位における損傷の発生を効果的に防止することができる。
【0092】
また、上述した各実施形態及び変形例に係る砂防構造体では、上流側にあるスクリーン材の上面と下流側にあるスクリーン材の上面とがそれぞれ同一平面状にある構成を想定していたが、本発明においてはこれに限らず、上流側にあるスクリーン材の上面が下流側にあるスクリーン材の上面よりも上側に位置する態様であってもよい。こうした態様であっても、上述した各実施形態及び変形例と同様の作用・効果を奏することができる。
【0093】
また、上述した各実施形態及び変形例に係る砂防構造体では、スクリーンが渓流Vの傾斜と略同一に傾斜するよう構築されていたが、本発明においてはこれに限らず、スクリーンが渓流Vから鈍角に立ち上がる傾斜を有していてもよい。こうした態様であっても、上述した各実施形態及び変形例と同様の作用・効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0094】
1 砂防構造体
2、2’ 支持構造物
3、3’ 縦桁
4、4’ スクリーン材
5、5’ スクリーン
6 横桁
7 シュー
10 傾斜面用砂防構造体
21 基底部
22 側壁
221 段部
222 アンカーボルト
23 奥側壁
24 中間壁
22’ 基底部
21’ 段部
23’ 孔部
32 フランジ
41 角型鋼管
42a 下流側端部
42b 上流側端部
61 リブ
62 フランジ
81 側部横桁
82 側部支持材
82a 傾斜端部
82b 垂直端部
82c 接合プレート
480 スクリーン材
811 リブ
812 フランジ
D、D’ 排水溝
F 礫
M 山肌
S 傾斜面
V 渓流
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23