(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車内床面にはシート装置を前後二列又は三列に渡って設けるのが一般的であり、さらに最後列のシート装置として上記構成のスライドシート装置を採用することがある。
さらに近年、車内空間の広さ(前後寸法)が拡大傾向にあり、これに合わせてスライドシート装置の前後方向のスライド量が増大する傾向にある。
しかしスライド量が大きい最後列のシート装置のシートクッション及びシートバックをスライド機構を利用して後端位置(リアモースト位置)までスライドさせかつリクライニングロック機構を利用してシートバックを後端位置(リアモースト位置)まで回転させようとすると、車両ボディの後部のホイールハウス(後部のタイヤを収納している部位)に対してシートバックが衝突(干渉)するおそれがある。
【0006】
また車両内の後部に最後列のシート装置の直後に位置する空間を形成し、当該後部空間の底面をリアデッキ(床板)により構成することがある。さらにこのリアデッキには、リアデッキの上方に位置する目隠し板を回転可能に取り付けるのが一般的である。
しかし最後列のシート装置のアッパレールが前端位置までスライドしたときにシートバックを前端位置まで回転させると、シート装置とリアデッキとの間に前後方向の大きなスペースが形成されることになる。
そのため目隠し板によってこのスペースを覆い隠すためには、目隠し板を大きくしなければならなかった。
【0007】
本発明は、特定のスライド位置においてシートバックを特定の位置まで回転させることによる問題が生じないようにした車両用スライドシート装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両用スライドシート装置は、車両床面に固定した直線に沿って延びるロアレールと、該ロアレールにスライド可能に取り付けたアッパレールと、該アッパレールに固定したシートクッションと、該シートクッションに対して
、所定の最大回転範囲内を回転可能として接続したシートバックと、上記アッパレールの上記ロアレールに対する
相対スライド位置が所定の第一スライド区間にあるときは上記シートバックが上記最大回転範囲内で回転するのを許容し、かつ、上記相対スライド位置が上記第一スライド区間とは別の第二スライド区間にあるときは上記シートバックの回転範囲を上記最大回転範囲より狭い規制範囲に規制するスライド回転連動機構と、を備え、上記スライド回転連動機構が、上記アッパレールと該アッパレールに対して不動の固定部材の少なくとも一方に設けた、上記アッパレールに対して相対移動可能かつ上記シートバックと接触することにより該シートバックの回転範囲を規定する回転範囲規制部材と、上記ロアレールに固定した、上記相対スライド位置が上記第一スライド区間にあるときは上記回転範囲規制部材の上記アッパレールに対する相対移動動作を制限せず、かつ、上記相対スライド位置が上記第二スライド区間にあるときは該相対移動動作を制限する相対移動規制部材と、を備え、上記回転範囲規制部材によって規定される上記シートバックの上記回転範囲は、上記回転範囲規制部材が上記アッパレールに対して相対移動できる範囲に応じて変化すること、を特徴としている。
【0011】
上記相対移動規制部材の上記直線方向の一方の端部に、上記シートバックが上記規制範囲以外の回転位置に位置しかつ上記相対スライド位置が上記第一スライド区間の上記第二スライド区間側の端部にあるときに、上記回転範囲規制部材が当接することにより、上記相対スライド位置が上記第一スライド区間から上記第二スライド区間へ移行するのを規制するスライド規制部を設けてもよい。
【0012】
上記回転範囲規制部材が、上記アッパレールに対して上下方向に相対移動可能で、上記相対スライド位置が上記第一スライド区間の上記第二スライド区間側の端部にあるとき自身の一部が上記相対移動規制部材の上記スライド規制部に当接可能である上下スライド部材と、上記アッパレールと該アッパレールに対して不動の固定部材の少なくとも一方に回転可能に支持しかつ上記上下スライド部材に回転可能に接続した、上記シートバックと接触することにより上記シートバックの上記回転範囲を規定する回転位置規定部材と、を備え、該回転位置規定部材の回転中心と上記上下スライド部材に対する回転接続位置との間に位置する部位に上記シートバックが接触してもよい。
【0013】
上記相対スライド位置が上記第一スライド区間の上記第二スライド区間側の端部にあるとき上記上下スライド部材の下部が上記スライド規制部に当接可能であり、上記アッパレールと該アッパレールに対して不動の固定部材の少なくとも一方が上下方向に延びるスライド溝を有し、上記シートバックが上記規制範囲以外の回転位置に位置しかつ上記相対スライド位置が上記第一スライド区間に位置するときに、上記スライド溝の下半部に嵌合しかつ上記スライド規制部より上方に位置するスライド嵌合部を上記上下スライド部材が有してもよい。
【0014】
上記シートバックの上記回転位置規定部材に対する接触位置が、上記回転接続位置よりも上記回転中心側に近い位置であってもよい。
【0015】
上記アッパレールに固定した、上記相対移動規制部材の直下に位置する浮上り時係合部材を備えてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の車両用スライドシート装置は、アッパレールのロアレールに対するスライド位置とシートバックのシートクッションに対する回転位置の一方が所定の範囲内に位置するときに、他方の位置が所定の範囲内に制限される。
そのため、例えば、本車両用スライドシート装置を後列のシート装置として利用し、当該シート装置の後方にホイールハウスを設けた態様で実施可能である。この態様で構成した場合に、アッパレールがロアレールに対して後端位置に位置するときにシートバックの後方への回転範囲を所定範囲(狭い範囲)に規制すれば、アッパレール(及び、シートクッション、シートバック)がロアレールに対して後端位置までスライドしたときに後方へ回転させたシートバックがホイールハウスと干渉するのを防止できる。
そして本発明では、アッパレールのロアレールに対する相対スライド位置が所定の第一スライド区間にあるときはシートバックが最大回転範囲内で回転するのを許容し、かつ、相対スライド位置が第一スライド区間とは別の第二スライド区間にあるときはシートバックの回転範囲を最大回転範囲より狭い規制範囲に規制するスライド回転連動機構を具備している。即ち、本発明の車両用スライドシート装置は、アッパレール(及び、シートクッション、シートバック)のロアレールに対するスライド位置に応じてシートバックの回転可能範囲が異なっている。例えば、本車両用スライドシート装置を後列のシート装置として利用し、第二スライド区間を第一スライド区間の後方の区間とし、さらに当該シート装置の後方にホイールハウスを設けた態様で実施可能である。この態様で構成した場合に、第二スライド区間にあるときのシートバックの後方への回転範囲を最大回転範囲より狭い規制範囲に規制すれば、アッパレール(及び、シートクッション、シートバック)がロアレールに対して後端位置までスライドしたときに後方へ回転させたシートバックがホイールハウスと干渉するのを防止できる。
【0019】
請求項2記載の発明によると、シートバックが規制範囲以外の回転位置に位置する場合に、アッパレール(及び、シートクッション、シートバック)の相対スライド位置が第一スライド区間から第二スライド区間へ移動するのを確実に防止できる。その一方で、シートバックが規制範囲に位置する場合に相対スライド位置が第一スライド区間に位置するときは、相対スライド位置を第一スライド区間から第二スライド区間へ移動させることが可能である。
【0020】
シートバックが回転したときに、シートバックの一部は上下動する。そのためシートバックの当該一部を上下スライド部材に対して直接接触(接続)することによっても、シートバックが規制範囲以外の回転位置に位置するときに上下スライド部材を上下動させることによって、相対スライド位置が第一スライド区間から第二スライド区間へ移動するのを規制できる。
しかし
請求項3記載の発明のように構成すると、シートバックの回転に連動して回転位置規定部材が回転したときに、回転位置規定部材の上下スライド部材に対する回転接続位置(部位)が、回転位置規定部材のシートバックとの接触部位よりも大きく上下動することになる。
従って、シートバックが規制範囲以外の回転位置に位置する場合に相対スライド位置が第一スライド区間の第二スライド区間側の端部に位置するときは、上下スライド部材を相対移動規制部材の一方の端部に確実に当接させて、相対スライド位置が第一スライド区間から第二スライド区間へ移動するのをより確実に規制できる。
【0021】
請求項4記載の発明によると、スライド嵌合部がスライド溝の上半部に嵌合している場合と比べて、上下スライド部材の下部(相対移動規制部材のスライド規制部との当接部)とスライド嵌合部との距離が短くなる。そのため、上下スライド部材の当該下部がスライド規制部に当接したときに、上下スライド部材(のスライド嵌合部より下方に位置する部位)が破損し難い。
【0022】
請求項5記載の発明によると、シートバックの回転位置規定部材に対する接触位置から回転位置規定部材の回転中心までの距離が短くなるので、回転位置規定部材に掛かる負担が小さくなる。
【0023】
請求項6記載の発明によると、アッパレールがロアレールに対して上方へ浮き上がったときに、浮上り時係合部材が下方から相対移動規制部材に当接することにより、アッパレールのロアレールに対するそれ以上の浮き上がりが規制される。
このように相対移動規制部材がアッパレールのスライド規制用ストッパと浮き上がり抑制用ストッパを兼用している。従って、スライド規制用ストッパと浮き上がり抑制用ストッパとしてそれぞれ別個のストッパを設ける場合と比べて、部品点数が少なく構造が簡単になる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、
図1−
図6を参照しながら本発明の第一の実施形態について説明する。なお、以下の説明中の方向は図中に記載した矢線方向を基準とする。
図示を省略した自動車(車両)の車内床面(車内空間)には前後二列に渡ってスライドシート装置が設けてあり、前後各列には左右に並べて二つのスライドシート装置がそれぞれ設けてある。図示したスライドシート装置10は後列右側のものである。
スライドシート装置10は左右一対のスライド機構12を具備している。各スライド機構12は、前後方向に直線的に延びるロアレール13と、ロアレール13にスライド可能に支持したアッパレール14と、を備えている。ロアレール13は前後方向に延びかつ上面が開口した金属製のチャンネル材である。左右のロアレール13は両者の前後両端位置を一致させた状態で車両床面に固定してある。ロアレール13の左右の内側壁には、下端が開放し上端が閉塞した多数のロック溝13a(
図2参照)が前後方向に並べて形成してある。アッパレール14は前後方向に延びる金属製部材であり、アッパレール14の下部がロアレール13の内部に対して挿入してある。
ロアレール13には4つのボール15を回転可能に支持した複数のリテーナ16が挿入してある。各リテーナ16が支持した4つのボール15はロアレール13の内面とアッパレール14の外面に対して回転可能に接触している。従ってアッパレール14は各ボール15を回転させながらロアレール13に対して前後方向にスライドすることが可能である。但し、ロアレール13には図示を省略した前端ストッパと後端ストッパが設けてあるので、アッパレール14のロアレール13に対するスライド範囲はアッパレール14が前端ストッパに当接する前端位置と後端ストッパに当接する後端位置との間に制限されている。またアッパレール14は対応するロアレール13に対して僅かに上方へ相対移動可能であるものの、ロアレール13からの上方への脱出は規制されている。
【0026】
アッパレール14の内部空間には金属製のロックレバー17が配設してある。このロックレバー17は左右方向に延びる回転中心軸を中心に回転可能(揺動可能)かつ前後動不能としてアッパレール14に装着してあり、ロック位置とアンロック位置との間を回転可能である。さらにアッパレール14の内部空間には金属製のロックバネ18が前後動不能として取り付けてある。このロックバネ18はロックレバー17に接触しており、常にロックレバー17を上記ロック位置に向けて付勢している。さらにロックバネ18の長手方向の中間部には4つのロック部18aが突設してある。
ロックレバー17に対してロックバネ18以外の外力を与えないとき、ロックレバー17は上記ロック位置に位置しかつロックバネ18のロック部18aがロアレール13のいずれかのロック溝13aに係合する。そのためアッパレール14はロアレール13に対してスライド不能になる。
一方、ロックバネ18の付勢力に抗してロックレバー17をアンロック位置まで回転させると、ロックバネ18が弾性変形して各ロック部18aがロック溝13aから下方に脱出する。そのためアッパレール14はロアレール13に対してスライド可能になる。
左右のスライド機構12のロックレバー17の前端部には、図示を省略した単一のループハンドルの左右両端部がそれぞれ接続している。即ち、当該ループハンドルを介して左右のロックレバー17が連動する構造になっている。そのためループハンドルを操作しないとき左右のロックレバー17は上記ロック位置に位置し、ループハンドルを回転させると左右のロックレバー17は一緒に上記アンロック位置まで回転する。
以上説明したロアレール13、アッパレール14、ボール15、リテーナ16、ロックレバー17、ロックバネ18、及びループハンドルがスライド機構12の構成要素である。
【0027】
左側のロアレール13の下面には金属製の相対移動規制部材20が固定してある。この相対移動規制部材20は、ロアレール13の下面に固定される平板からなる底面固定部21と、底面固定部21の左側縁部から上向きに突出する断面略逆U字形のストッパ部22と、を有している。
一方、左側のアッパレール14の上面には金属製の浮上り時係合部材24が固定してある。この浮上り時係合部材24は、アッパレール14の上面に固定される平板からなる天井面固定部25と、天井面固定部25の左側縁部から下向きに突出する断面略U字形の係合部26と、を有している。係合部26の右側壁部は上方に向かって突出する接触壁部27を構成している。係合部26の接触壁部27の少なくとも一部は常にストッパ部22の内部空間に位置している(ストッパ部22の天井部の直下に位置する)。スライド機構12が通常状態にあるとき(後述する浮き上がり状態にないとき)、接触壁部27の上端面とストッパ部22の天井部の下面との間には上下方向の隙間が存在する。
【0028】
続いてリクライニング機構30の構造について説明する。
左右のアッパレール14の上面には金属製のシートクッションフレーム31(固定部材)が固定してある。シートクッションフレーム31は前後方向に延びる部材であり、その後端部には上方に突出するシートバック接続部32が形成してある。左右のシートクッションフレーム31は図示を省略した連結部材(図示略)により結合してある。そのため左右のアッパレール14は互いに同期しながら左右のロアレール13に対してスライドする。さらに左右のシートクッションフレーム31(シートクッション)のシートバック接続部32を除く部分は柔軟かつ弾力を有するシートクッション本体28(シートクッション)の内部に埋設してある。
さらに左右のシートクッションフレーム31のシートバック接続部32の車外側には、左右一対の金属製のシートバックフレーム34がそれぞれ配設してある。左右のシートバックフレーム34は連結部材(図示略)によって互いに接続している。左右のシートバックフレーム34及び左右のシートクッションフレーム31のシートバック接続部32は柔軟かつ弾力を有するシートバック本体29(シートバック)の内部に埋設してある。右側のシートバックフレーム34の下端部は右側のシートクッションフレーム31のシートバック接続部32に対して左右方向に延びる回転接続軸を介して回転可能に接続してある。一方、左側のシートバックフレーム34の下端部は左側のシートクッションフレーム31のシートバック接続部32に対して公知のリクライングユニットRC(
図3参照)を介して回転可能に接続してある。
このリクライングユニットRCは、シートクッションフレーム31のシートバック接続部32に固定したベースプレートと、シートバックフレーム34に固定した、内周面に環状の内歯ギヤを有するギヤプレートと、ベースプレートとギヤプレートの中心部を相対回転可能に貫通しかつ上記回転接続軸と同軸をなす回転中心軸と、回転中心軸の半径方向にのみ相対移動可能としてベースプレートに支持したロック部材と、回転中心軸と一緒に回転する回転カムと、回転カムを回転付勢するロックスプリングと、を具備している。ロック部材は、その外周部に形成した外歯ギヤが、ギヤプレートの内歯ギヤと噛合する噛合位置と、内歯ギヤから内周側に離間する非噛合位置との間を半径方向に移動可能である。回転カムは、ロック部材を噛合位置に位置させるロック位置と非噛合位置に位置させるアンロック位置との間を回転可能である。ロックスプリングは回転カムをロック位置側に回転付勢している。従って、回転中心軸と連係しかつシートバック本体29の側面の外側に位置する操作レバー33(
図1参照)を回転操作しないとき(
図1に実線で示す初期操作位置に位置するとき)は、ロックスプリングの回転付勢力によってロック部材の外歯ギヤがギヤプレートの内歯ギヤと噛合するので、シートバックフレーム34(シートバック本体29)がシートクッションフレーム31(シートクッション本体28)に対して回転不能となる。一方、ロックスプリングの回転付勢力に抗して操作レバー33を回転操作すると(
図1の仮想線参照)、回転カムがアンロック位置に移動し、非噛合位置に移動したロック部材の外歯ギヤがギヤプレートの内歯ギヤから離間するので、シートバックフレーム34(シートバック本体29)がシートクッションフレーム31(シートクッション本体28)に対して回転可能(角度調節可能)になる。
本実施形態のギヤプレートに形成した上記内歯ギヤは、多数の歯部を周方向に約2°間隔で形成したものである。従ってリクライングユニットRCはシートバックフレーム34を2°単位でロック(回転規制)できる。シートバック本体29(シートバックフレーム34)はシートクッションフレーム31に対して
図1に実線で示す初期位置から前方と後方へ回転可能である。即ち、シートバック本体29は前方回転端位置(
図1の符号29A参照)と後方回転端位置(
図1の符号29B参照)までそれぞれ回転可能である。この前方回転端位置から後方回転端位置までの回転範囲が「最大回転範囲」である。
さらに左側のシートクッションフレーム31には金属製のシートベルトアンカー(図示略)が固定してあり、このシートベルトアンカーにはシートクッション本体28の外側に突出するシートベルト用ロック手段(図示略)が設けてある。
【0029】
続いてスライド回転連動機構40の詳しい構造について説明する。
左側のシートバックフレーム34の下端部には上記回転中心軸を中心とする径方向外側に突出する略三角形状の回転突部35が一体的に設けてある。この回転突部35の先端部には軸線が左右方向に延びる(シートバックの一部である)押圧ピン36が固定してある。
左側のシートクッションフレーム31の左側にはシートバックフレーム34及び押圧ピン36の直下に位置する金属製の回転位置規定部材41(回転範囲規制部材)が設けてある。回転位置規定部材41は略前後方向に延びる略矩形形状である。回転位置規定部材41の両端近傍にはピン接続孔41aとピン接続孔41bがそれぞれ貫通孔として穿設してある。
回転位置規定部材41の左側には、左側のシートクッションフレーム31に対して固定した金属製の支持部材44(固定部材)が設けてある。支持部材44には上下方向に延びるスライド溝45が穿設してある。支持部材44には回転接続ピン42が固定してあり、回転接続ピン42が支持部材44から右側に向かって突出している。さらに、この回転接続ピン42に対して回転位置規定部材41の後端近傍部に形成したピン接続孔41aが回転可能に嵌合している。従って、回転位置規定部材41は回転接続ピン42を中心に支持部材44に対して回転可能である。
支持部材44の左側にはスライド溝45と左右方向に対向する金属製の上下スライド部材47(回転範囲規制部材)が配設してある。上下スライド部材47は上下方向に延びる略矩形形状である。上下スライド部材47にはピン接続孔47aとピン接続孔47bが上下に並べて貫通孔として形成してある。
回転位置規定部材41の前部と上下スライド部材47の上部は、スライド溝45を貫通しかつ軸線が左右方向に延びる回転接続ピン49(回転範囲規制部材)によって互いに接続してある。回転接続ピン49はその左右両側部をなしかつ互いに同軸をなす小径部49aと、左右の小径部49aの間に位置する小径部49aより大径の中央大径部49bと、を一体的に有している。回転接続ピン49の右側の小径部49aは回転位置規定部材41のピン接続孔41bに対して相対回転可能に嵌合し、左側の小径部49aは上下スライド部材47のピン接続孔47aに対して固定状態で嵌合している。ただしピン接続孔41bは小径部49aに比べて回転位置規定部材41の長手方向寸法が僅かに長い。即ち、ピン接続孔41bと小径部49aの間には当該長手方向の隙間が形成してある。また回転接続ピン49の中央大径部49bはスライド溝45の内部に位置している。中央大径部49bの外径はスライド溝45の幅と略同寸法(スライド溝45の幅の方が僅かに大きい)である。そのため中央大径部49bはスライド溝45に沿って上下方向にスライド可能である。
【0030】
さらに上下スライド部材47のピン接続孔47bには回転接続ピン49と同一仕様の回転接続ピン50(回転範囲規制部材)(スライド嵌合部)の左側の小径部50aが固定状態で嵌合している。そして回転接続ピン50の中央大径部50bはスライド溝45に対して上下方向にスライド可能に嵌合している。従って、上下スライド部材47はスライド溝45に対してがたつくことなく上下方向にスライド可能である。具体的には、上方位置(
図5参照)と下端位置(
図4参照)との間を上下方向にスライド可能である(後述するように上下スライド部材47は上方位置よりもさらに上方へ移動可能である)。さらに支持部材44と回転位置規定部材41との間には回転位置規定部材41を
図3−
図5の時計方向に向けて移動付勢する付勢バネSP(
図3参照)が設けてある。
従って、回転位置規定部材41及び上下スライド部材47に対して付勢バネSP以外の外力を付与しないとき、回転位置規定部材41に押圧ピン36が当接することにより、回転位置規定部材41
図5に示す水平位置に位置し(このとき回転位置規定部材41が水平方向に対して傾斜するようにスライド回転連動機構40を設計してもよい)かつ上下スライド部材47は上方位置に位置する。一方、付勢バネSPの付勢力に抗して回転位置規定部材41を
図4に示す最大傾斜位置まで回転させると、回転位置規定部材41と連係している上下スライド部材47が下限位置まで移動する。
以上説明した相対移動規制部材20、回転位置規定部材41、回転接続ピン42、支持部材44、上下スライド部材47、回転接続ピン49、回転接続ピン50、及び付勢バネSPがスライド回転連動機構40の構成要素である。
【0031】
続いて本実施形態のスライドシート装置10の動作について説明する。
上記したようにアッパレール14のロアレール13に対するスライド可能範囲は上記前端位置と上記後端位置との間であり、その範囲は上下スライド部材47が相対移動規制部材20の前端より前方に位置する「第一スライド区間」と、上下スライド部材47が相対移動規制部材20の前端より後方に位置する「第二スライド区間」とに分けることが可能である。
以下の説明ではアッパレール14のロアレール13に対する相対スライド位置が「第一スライド区間」にある場合と、相対スライド位置が「第二スライド区間」にある場合とに分けて、スライドシート装置10の動作説明を行う。
【0032】
まずアッパレール14のロアレール13に対する相対スライド位置が「第一スライド区間」にある場合について説明する。
スライドシート装置10のシートバック本体29が
図1の実線で示す上記初期位置に位置しかつ操作レバー33が
図1に示す初期操作位置に位置するとき、上記リクライングユニットRCの上記ロックスプリングの回転付勢力によってロック部材の外歯ギヤがギヤプレートの内歯ギヤと噛合するので(リクライングユニットRCがロック状態となるので)、シートバック本体29は上記初期位置に保持される。このときシートバックフレーム34に設けた押圧ピン36は回転位置規定部材41の上面に当接している。そのため
図5に示すように、上下スライド部材47は上方位置に位置しかつ回転位置規定部材41は水平位置に位置する。このとき上下スライド部材47の下端部はストッパ部22の上面より上方に位置する。
【0033】
この状態から操作レバー33を回転させると、リクライングユニットRCの回転カムがアンロック位置に移動し非噛合位置に移動したロック部材の外歯ギヤがギヤプレートの内歯ギヤから離間するので(リクライングユニットRCがアンロック状態となるので)、シートバック本体29(シートバックフレーム34)は上記初期位置から前方回転端位置(
図1の符号29A参照)と後方回転端位置(
図1の符号29B)まで回転可能となる。シートバック本体29が初期位置より前方回転端位置側へ回転したときは、シートバックフレーム34に設けた押圧ピン36は回転位置規定部材41の上面から上方に離間し、上下スライド部材47は
図5に示す上記上方位置より更に上方の上限位置(回転接続ピン49がスライド溝45の上端面に当接する位置)に位置しかつ回転位置規定部材41は上記水平位置よりも時計方向に回転した位置へ移動する(傾斜する)。
【0034】
一方、シートバック本体29を初期位置から後方へ回転させると、シートバック本体29が後方回転端位置より僅かな角度(例えば10°)だけ前方の中間規制位置(
図1の符号29Cの位置)まで回転したときに、回転位置規定部材41の上面に当接している押圧ピン36が、付勢バネSPの付勢力に抗しながら回転位置規定部材41を回転接続ピン42回りに反時計方向に僅かに回転させる。すると回転位置規定部材41と連係している上下スライド部材47が下方に僅かにスライドするが、上下スライド部材47の下端部はストッパ部22の上面より上方に位置したままとなる。このとき押圧ピン36は、回転位置規定部材41のピン接続孔41a(回転接続ピン42)とピン接続孔41b(回転接続ピン49)の間でかつピン接続孔41b(回転接続ピン49)よりもピン接続孔41a(回転接続ピン42)に近い部位を押圧する。そのため、このとき押圧ピン36の回転位置規定部材41に対する接触位置から回転位置規定部材41の回転中心(回転接続ピン42)までの距離が短くなるので、押圧ピン36から回転位置規定部材41に掛かる負担は小さい。そしてシートバック本体29が中間規制位置からさらに後方へ回転すると、押圧ピン36が回転位置規定部材41を回転接続ピン42回りに下方へさらに回転させる。すると回転位置規定部材41と連係している上下スライド部材47がさらに下方にスライドし、それまではストッパ部22の上面より上方に位置していた上下スライド部材47の下端部がストッパ部22の上面より下方へ移動する。そしてシートバック本体29が後方回転端位置まで回転すると、回転位置規定部材41が最大傾斜位置まで回転し上下スライド部材47が下限位置まで移動するので、上下スライド部材47の下端部がストッパ部22の下面より下方へ大きく移動する(
図4参照)。
従って、シートバック本体29が中間規制位置より後方回転端位置側に位置する状態で上記ループハンドルを操作することによりアッパレール14をロアレール13に対してスライド可能な状態にし、その後にアッパレール14をロアレール13に対して「第一スライド区間」の後端位置までスライドさせると、上下スライド部材47の下部(下端近傍部)が相対移動規制部材20のストッパ部22の前端面であるスライド規制部22aに対して前方から衝突する。そのため、シートバック本体29が中間規制位置より後方に位置する状態でアッパレール14(シートクッション本体28、シートバック本体29)が「第二スライド区間」へ移行するのが規制される。さらにシートバック本体29が中間規制位置より後方に位置するときは回転接続ピン50がスライド溝45の下半部(かつスライド規制部22aより上方の部位)に嵌合するので、上下スライド部材47とスライド規制部22aの当接部から回転接続ピン50までの距離が短くなる。そのため上下スライド部材47の下部とストッパ部22のスライド規制部22aが衝突したときに、上下スライド部材47(の回転接続ピン50より下方に位置する部位)が破損し難い。
また車両ボディの内部の右側壁の後部にはスライドシート装置10の後方に位置するホイールハウス(この内部に後部右側のタイヤが収納されている)が形成してある。しかし、アッパレール14が「第一スライド区間」の後端位置に位置する(かつロックレバー17をロック位置に位置させた)状態でシートバック本体29を後方回転端位置まで回転させても、シートバック本体29が当該ホイールハウスと干渉することはない。
【0035】
続いてアッパレール14のロアレール13に対する相対スライド位置が「第二スライド区間」にある場合について説明する。
「第一スライド区間」にあるアッパレール14を「第二スライド区間」へ移動させるためには、まず操作レバー33を回転操作しながらシートバック本体29を中間規制位置か又は中間規制位置より前方位置まで回転させる。すると付勢バネSPの付勢力によって回転位置規定部材41が
図3−
図5の時計方向へ回転し上下スライド部材47が上方へ移動する。その結果、上下スライド部材47の下端部がストッパ部22の上面より上方に移動する。
従って、この状態で上記ループハンドルを操作することによりアッパレール14をロアレール13に対してスライド可能な状態にし、その後にアッパレール14をロアレール13に対して後方へスライドさせれば、上下スライド部材47をストッパ部22に対して衝突させることなくアッパレール14の相対スライド位置が「第二スライド区間」に移行する(
図5参照)。シートバック本体29が中間規制位置に位置するとき上下スライド部材47の下端面とストッパ部22の上面との間には微少な隙間が形成される。従って、シートバック本体29を中間規制位置又は中間規制位置より前方位置まで移動させておけば、アッパレール14はロアレール13に対して「第二スライド区間」を円滑にスライドできる。
そしてアッパレール14のロアレール13に対する相対スライド位置が「第二スライド区間」にあるときに、ロックレバー17をロック位置に位置させた状態でシートバック本体29を中間規制位置より後方へ回転させようとすると、上下スライド部材47の下端面がストッパ部22の上面に対して当接する。即ち、上下スライド部材47の下方へのスライド動作が規制されるので、シートバック本体29が中間規制位置より後方へ回転することは出来ない。別言すると、シートバック本体29の回転可能範囲が、「最大回転範囲」から中間規制位置より後方の範囲を除いた「(最大回転範囲より狭い)規制範囲」に制限される。従って、アッパレール14が上記後端位置までスライドした状態でシートバック本体29を後方回転端位置まで回転させることはできない。
そしてアッパレール14が「第二スライド区間」の最後部である上記後端位置まで移動したときに、シートバック本体29を中間規制位置まで後方に回転させても、シートバック本体29がホイールハウスと干渉することはない。
【0036】
以上説明したように本実施形態のスライドシート装置10は、スライド回転連動機構40によってアッパレール14(及び、シートクッション本体28、シートバック本体29)のロアレール13に対するスライド位置に応じてシートバック本体29(シートバックフレーム34)の回転可能範囲を異ならせ、それにより後方へ回転させたシートバック本体29がホイールハウスと干渉するのを防止している。
【0037】
さらに上下スライド部材47とシートバックフレーム34(押圧ピン36)を直接連係させるのではなく回転位置規定部材41を介して両者を連係することにより、上下スライド部材47とシートバックフレーム34(押圧ピン36)を直接連係させる場合と比べて、シートバックフレーム34(シートバック本体29)の回転角度当たりの上下スライド部材47の上下移動量を大きくしている。
従って、シートバック本体29が中間規制位置より後方に位置する状態でアッパレール14を第一スライド区間側から第二スライド区間側へスライドさせたときに、上下スライド部材47をストッパ部22のスライド規制部22aに対して確実に当接させることが可能である。即ち、相対スライド位置が第一スライド区間から第二スライド区間へ移動するのをより確実に防止できる。
【0038】
さらにスライド回転連動機構40の構成要素(相対移動規制部材20、押圧ピン36、回転位置規定部材41、回転接続ピン42、支持部材44、上下スライド部材47、回転接続ピン49、回転接続ピン50、及び付勢バネSP)のうち相対移動規制部材20のみをロアレール13側に設け、スライド回転連動機構40の構成要素の大部分(相対移動規制部材20を除く構成要素)をアッパレール14側に設けている。さらに相対移動規制部材20と上下スライド部材47を接離可能にしている(ピン等によって接続していない)。
そのため相対移動規制部材20を除くスライド回転連動機構40、シートクッションフレーム31、及び上記リクライングユニットRCを予め一体化した上で、この一体物を左右のアッパレール14の上面に固定し、その後に左右のシートバックフレーム34を左右のシートクッションフレーム31に接続することにより、スライドシート装置10を効率よく組み立てることが可能である。
【0039】
さらにスライドシート装置10の上記シートベルト用ロック手段に対して車両ボディの内部に設けたシートベルトの端部を接続し、この状態でスライドシート装置10を搭載した上記自動車が前方に位置する障害物(例えば他の自動車など)に衝突すると、この荷重が車両ボディから(スライドシート装置10の着座者を介して)シートベルトに及ぶ。さらに当該荷重がシートベルトからシートベルト用ロック手段、シートベルトアンカー、及びシートクッションフレーム31を介して左側のアッパレール14に対して上向きの荷重として及ぶ。そのため左側のアッパレール14が左側のロアレール13に対して浮き上がる。しかし左側のアッパレール14がロアレール13に対して僅かに上方へ浮き上がったときに、浮上り時係合部材24の接触壁部27が下方から相対移動規制部材20のストッパ部22の天井部に対して衝突することにより、左側のアッパレール14のロアレール13に対するそれ以上の浮き上がりを規制する。
さらに本実施形態の相対移動規制部材20は、上下スライド部材47用のストッパと浮上り時係合部材24用のストッパを兼用している。従って、上下スライド部材47用のストッパと浮上り時係合部材24用のストッパとしてそれぞれ別個のストッパを設ける場合と比べて、部品点数が少なく構造が簡単である。
【0040】
続いて本発明の第二の実施形態について
図7−
図9を参照しながら説明する。なお第一の実施形態と同じ部材には同じ符号を付すに止めて、その詳細な説明は省略する。
本実施形態の自動車も前後二列に渡ってスライドシート装置を具備するものである。但し、二列目のスライドシート装置(スライドシート装置10)の直後には空間(トランクエリア)が形成してある。この空間は車内空間の後部を構成するものであり、当該空間の底面はリアデッキ(床板)により構成してある。さらにこのリアデッキには、リアデッキの上方に位置する目隠し板(図示略)が回転可能に取り付けてある。
本実施形態のスライドシート装置10はスライド回転連動機構55に特徴がある。
シートバックフレーム34の回転突部35には長孔35aが貫通孔として形成してある。この長孔35aには回転接続ピン49の左側の小径部49aが嵌合している。但し、長孔35aの長手方向(略前後方向)の寸法は小径部49aの外径より大きい。そのため、この小径部49aは自身の軸線回りに長孔35aに対して回転できるだけでなく、長孔35aとの間の隙間分だけ長孔35aに対して略前後方向に相対移動可能である。
左側のシートクッションフレーム31の左側には、シートクッションフレーム31との間に左右方向の隙間を形成した状態で金属製の支持部材56(固定部材)が設けてあり、この支持部材56をシートクッションフレーム31に対して二つのビス58を利用して固定している。さらに、この支持部材56にはスライド溝45が穿設してある。
左側のシートクッションフレーム31と支持部材56の間の上記隙間にはスライド溝45と対向する状態で上下スライド部材47(回転範囲規制部材)が配設してある。さらに回転突部35の長孔35aと連係している回転接続ピン49の中央大径部49bがスライド溝45に上下方向にスライド可能として嵌合しており、回転接続ピン49の右側の小径部49aがピン接続孔47aに対して固定状態で嵌合している。さらに上下スライド部材47のピン接続孔47bには回転接続ピン50の右側の小径部50aが固定状態で嵌合している。そして回転接続ピン50の中央大径部50bがスライド溝45に対して上下方向にスライド可能に嵌合している。従って、上下スライド部材47は支持部材56(スライド溝45)に対してがたつくことなく上下方向にスライド可能である。
さらに上下スライド部材47のスライド動作とシートバックフレーム34の回転動作は連動する。即ち、シートバック本体29(シートバックフレーム34)が上記初期位置に位置するとき上下スライド部材47が
図8に示す中間位置に位置する。さらにシートバック本体29(シートバックフレーム34)が後方回転端位置に位置するとき上下スライド部材47が上方位置に位置し(図示略)、シートバック本体29(シートバックフレーム34)が前方回転端位置に位置するとき上下スライド部材47が
図9に示す下限位置に位置する。
またシートバック本体29が初期位置より前方に位置するとき(即ち、上下スライド部材47が中間位置より下方に位置するとき)は、上下スライド部材47の下端部がストッパ部22の上面より下方に位置する。一方、シートバック本体29が初期位置か又は初期位置より後方に位置するとき(即ち、上下スライド部材47が中間位置又は中間位置より上方に位置するとき)は、上下スライド部材47の下端部がストッパ部22の上面より上方に位置する。
以上説明した相対移動規制部材20、上下スライド部材47、回転接続ピン49、回転接続ピン50、支持部材56、及びビス58がスライド回転連動機構55の構成要素である。
【0041】
続いて本実施形態のスライドシート装置10の動作について説明する。
本実施形態のアッパレール14のロアレール13に対するスライド可能範囲は、上下スライド部材47が相対移動規制部材20の後端より後方に位置する「第一スライド区間」と、上下スライド部材47が相対移動規制部材20の後端より前方に位置する「第二スライド区間」とに分けることが可能である。さらに本実施形態の「第一スライド区間」はアッパレール14の上記後端位置と一致している(但し、「第一スライド区間」を前後方向に所定距離を有する区間として設定してもよい)。
【0042】
まずアッパレール14のロアレール13に対する相対スライド位置が「第一スライド区間(後端位置)」にある場合について説明する。
このとき
図9に示すように上下スライド部材47の支持部材56に対する上下動は相対移動規制部材20によって規制されない。そのためシートバック本体29(シートバックフレーム34)は前方回転端位置と後方回転端位置の間の全範囲(即ち上記最大回転範囲)を回転可能である。
例えば、ロックレバー17がロック位置に位置する状態で
図9に示すようにシートバック本体29(シートバックフレーム34)を前方回転端位置まで回転させると、上下スライド部材47が
図9に示す下限位置まで下方へスライドするので、上下スライド部材47の下端部がストッパ部22の下面より下方へ大きく移動する。
従って、この状態で上記ループハンドルを操作することによりアッパレール14をロアレール13に対してスライド可能な状態にし、その後にアッパレール14をロアレール13に対して前方へスライドさせると、上下スライド部材47の下部(下端近傍部)が相対移動規制部材20のストッパ部22の後端面であるスライド規制部22bに対して後方から衝突する。そのためシートバック本体29が前方回転端位置(初期位置より前方)に位置する状態でアッパレール14(シートクッション本体28、シートバック本体29)が「第二スライド区間」へ移行するのが規制される。さらにシートバック本体29が初期位置より前方に位置するときは回転接続ピン50がスライド溝45の下半部(かつスライド規制部22bより上方の部位)に嵌合するので、上下スライド部材47とスライド規制部22bの当接部から回転接続ピン50までの距離が短くなる。そのため上下スライド部材47とストッパ部22のスライド規制部22bが衝突したときに、上下スライド部材47(の回転接続ピン50より下方に位置する部位)が破損し難い。
【0043】
続いてアッパレール14のロアレール13に対する相対スライド位置が「第二スライド区間」にある場合について説明する。
ロアレール13に対する相対スライド位置が「第一スライド区間(後端位置)」にあるアッパレール14を「第二スライド区間」へ移動させるためには、まず操作レバー33を回転操作しながらシートバック本体29を初期位置又は初期位置より後方まで回転させる。すると上下スライド部材47の下端部がストッパ部22の上面より上方に移動する(
図8参照)。
従って、この状態で上記ループハンドルを操作することによりアッパレール14をロアレール13に対してスライド可能な状態にし、その後にアッパレール14をロアレール13に対して前方へスライドさせれば、上下スライド部材47がストッパ部22に対して衝突することなくアッパレール14の相対スライド位置が「第二スライド区間」に移行する(
図8参照)。シートバック本体29が初期位置に位置するとき上下スライド部材47の下端面とストッパ部22の上面との間には微少な隙間が形成される。従って、シートバック本体29を初期位置又は初期位置より後方まで移動させておけば、アッパレール14はロアレール13に対して「第二スライド区間」を円滑にスライドできる。
そしてアッパレール14のロアレール13に対する相対スライド位置が「第二スライド区間」にありかつロックレバー17がロック位置に位置するときに、シートバック本体29を初期位置より前方へ回転させようとすると、上下スライド部材47の下端面がストッパ部22の上面に対して当接する(
図8参照)。即ち、上下スライド部材47の下方へのスライド動作が規制されるので、シートバック本体29が初期位置より前方へ回転することは出来ない。別言すると、シートバック本体29の回転可能範囲が、「最大回転範囲」から初期位置より前方の範囲を除いた「(最大回転範囲より狭い)規制範囲」に制限される。従って、例えばアッパレール14が上記前端位置に位置する状態でシートバック本体29を前方回転端位置まで回転させることはできない。
二列目のスライドシート装置10のアッパレール14が前端位置までスライドさせた上でシートバック本体29を前方回転端位置に位置させたと仮定すると、スライドシート装置10のシートバック本体29と上記リアデッキとの間には上方から見たときに前後方向の大きなスペースが形成される。仮にこの状態でリアデッキに大量の荷物を載せると、荷物(の一部)が上記スペースに落下するおそれがある。そのため、この場合は上記スペースを覆い隠すための大きな目隠し板が必要となる。しかし本実施形態ではアッパレール14が後端位置に位置するときのみシートバック本体29が前方回転端位置へ回転可能であり、リアデッキに大量の荷物を載せるべくアッパレール14を後端位置に位置させながらシートバック本体29を前方回転端位置へ回転させると上記スペースが小さくなる。従って、小さな目隠し板によって上記スペースを覆い隠しながらリアデッキに大量の荷物を載せることが可能である(なおアッパレール14を前端位置までスライドさせてシートバック本体29を初期位置又は初期位置より後方に位置させた場合は、シートバック本体29が邪魔となるためリアデッキに大量の荷物を載せることはできない)。
【0044】
以上説明した本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形を施しながら実施可能である。
スライドシート装置10の右側にのみ相対移動規制部材20及びスライド回転連動機構40、55を設けたり、スライドシート装置10の左右両側に相対移動規制部材20及びスライド回転連動機構40、55を設けてもよい。
第一の実施形態のスライドシート装置10のスライド回転連動機構40から回転位置規定部材41を省略して、シートバックフレーム34と上下スライド部材47を第二の実施形態と同様の態様で直接連係してもよい。一方、第二の実施形態のスライドシート装置10のスライド回転連動機構55に第一の実施形態の回転位置規定部材41を設けて、回転位置規定部材41を介して回転突部35と上下スライド部材47を連係してもよい。
またシートクッションフレーム31や支持部材44、56を、アッパレール14の一部をなす部分として構成してもよい。
さらに一列目又は三列目以降のシート装置としてスライドシート装置10を採用してもよい。