特許第6289934号(P6289934)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6289934導電率計、その製造方法およびコアの取付構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6289934
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】導電率計、その製造方法およびコアの取付構造
(51)【国際特許分類】
   G01R 27/22 20060101AFI20180226BHJP
【FI】
   G01R27/22 A
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-32660(P2014-32660)
(22)【出願日】2014年2月24日
(65)【公開番号】特開2015-158402(P2015-158402A)
(43)【公開日】2015年9月3日
【審査請求日】2016年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】592187534
【氏名又は名称】株式会社 堀場アドバンスドテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 理一郎
(72)【発明者】
【氏名】久保田 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】木▲崎▼寛子
【審査官】 續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−242294(JP,A)
【文献】 特開2005−189207(JP,A)
【文献】 特開2011−007639(JP,A)
【文献】 特開2001−153844(JP,A)
【文献】 特開2005−189208(JP,A)
【文献】 特開平04−361168(JP,A)
【文献】 特開平11−118767(JP,A)
【文献】 特開平03−116904(JP,A)
【文献】 米国特許第04138639(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 27/22
G01N 27/74
G01R 15/18
G01R 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トロイダルコアおよび該トロイダルコアに巻き付けられたコイルからなる一対のインダクタと、これら各インダクタを貫通する配管体とを具備し、一方のインダクタのコイルに電流を流すことによって他方のインダクタのコイルに誘起される電流の値に基づいて、前記配管体中の流体の導電率を測定する導電率計において、
固化することによって前記トロイダルコアと前記配管体とを接合する樹脂製の接合体と、
前記トロイダルコアおよび接合体の間に介在する、前記接合体よりも軟らかい緩衝材とを具備することを特徴とする導電率計。
【請求項2】
前記接合体がトロイダルコアを覆うように配設してある請求項1記載の導電率計。
【請求項3】
前記トロイダルコアを収容する、一部に隙間を有した環状筐体をさらに具備し、この環状筐体が前記配管体に外嵌して取り付けられるものであって、
前記緩衝材が、前記環状筐体の内部に充填されてトロイダルコアをガタなく保持しており、
前記接合体が、前記環状筐体を覆うようにして該環状筐体を配管体に接合していることを特徴とする請求項1記載の導電率計。
【請求項4】
請求項3記載の導電率計の製造方法であって、
前記環状筐体にトロイダルコアを収容し、
該環状筐体の隙間から液状又はゲル状の前記緩衝材を注入して固化させ、
前記環状筐体を配管体に外嵌させ、
前記環状筐体を液状又はゲル状の前記接合体で覆った後、固化させることによって該環状筐体を前記配管体に接合することを特徴とする導電率計の製造方法。
【請求項5】
磁束を通過させるコアおよび該コアに巻き付けられたコイルからなる一対のインダクタと、これら各インダクタを貫通する本体部材とを具備し、一方のインダクタのコイルに電流を流すことによって他方のインダクタのコイルに誘起される電流の値に基づいて、前記本体部材中の流体の導電率を測定する導電率計において、前記コアを前記本体部材に取り付けるためのコアの取付構造であって、
固化することによって前記コアを前記本体部材に接合する樹脂製の接合体を具備し、前記コアと接合体との間に前記接合体よりも軟らかい緩衝材を介在させていることを特徴とするコアの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導法を利用した導電率計等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
流体の導電率を測定するためのこの種の導電率計は、特許文献1に示すように、前記流体が導入される環状の配管体に一対のインダクタを取り付けた構造をなすものであり、一方のインダクタに電流を流したときに流体を介して生じる他方のインダクタの電流を測定することによって、該流体の導電率を算出できるようにしてある。
このインダクタは、トロイダルコアにコイルを巻きつけたものであり、従来、配管体に熱可塑性樹脂を用いて接着固定してある。
【0003】
より具体的には、該インダクタの中心孔に配管体を貫通させた後、インダクタのまわりを熱可塑性樹脂で覆って固化させることによって該インダクタを配管体に接合してある。
ところで、かかる導電率計においては、製品性能を担保するために、ヒステリシス特性や透磁率特性が所定の基準を満たしたトロイダルコアを採用している。
【0004】
しかしながら、組み立て後の導電率計において、トロイダルコアのヒステリシス特性や透滋率特性が、単体でのそれから変化していることに本願発明者は気づいた。そして、その変化の度合いによっては、当初予定していた測定精度を発揮できなくなるおそれがあるので、その原因を突き止めるべく本願発明者が鋭意検討した結果、熱可塑性樹脂が硬化するときのわずかな体積変化や形状変化が、その原因であることがわかった。
【0005】
すなわち、熱可塑性樹脂が硬化するときの体積変化や形状変化によってトロイダルコアに残留応力が生じ、この残留応力がトロイダルコアの透滋率特性やヒステリシス特性を変化させることを本願発明者は突き止めた。
かかる問題は、コアを樹脂によって前記配管体のような本体部材に接合する場合に共通して生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−361168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、コア単体での特性を、本体部材に組み付けた後でも維持できるようなコア取付構造を提供し、例えば導電率計に適用したときに、予定通りの測定精度を担保できるようにすることをその所期課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明に係る導電率計は、トロイダルコアおよび該トロイダルコアに巻き付けられたコイルからなる一対のインダクタと、これら各インダクタを貫通する配管体とを具備し、一方のインダクタのコイルに電流を流すことによって他方のインダクタのコイルに誘起される電流の値に基づいて、前記配管体中の流体の導電率を測定するものにおいて、固化することによって前記トロイダルコアと前記配管体とを接合する樹脂製の接合体と、前記トロイダルコアおよび接合体の間に介在させた、前記接合体よりも軟らかい緩衝材とを具備することを特徴とする。
【0009】
このようなものであれば、接合体が固化するときに、該接合体に生じる体積変化や変形の影響が緩衝材によって緩和され、トロイダルコアにはほとんど伝わらないので、該トロイダルコアに不測の応力が発生することを防止できる。
【0010】
そして、このことにより、配管体に取り付け終わった状態でのトロイダルコアの特性を、トロイダルコア単体での特性とほぼ同様に維持できるので、導電率計として設計時に予定していた測定精度等を発揮させることができるようになる。
【0011】
前記接合体がトロイダルコアを覆うように配設してあるものであれば、接合体に、耐食性や機械的強度、保持力を備えさせることによって、緩衝材に、柔らかさのみを求めれば良くなり、緩衝材の素材選択肢が大幅に広がり、コスト削減にも寄与できる。
【0012】
具体的な実施態様としては、前記トロイダルコアを収容する、一部に隙間を有した環状筐体をさらに具備し、この環状筐体が前記配管体に外嵌して取り付けられるものであって、前記緩衝材が、前記環状筐体の内部に充填されてトロイダルコアをガタなく保持しており、前記接合体が、前記環状筐体を覆うようにして該環状筐体を配管体に接合しているものを挙げることができる。
【0013】
本発明に係る導電率計の製造方法としては、前記環状筐体にトロイダルコアを収容し、該環状筐体の隙間から液状又はゲル状の前記緩衝材を注入して固化させ、前記環状筐体を配管体に外嵌させ、前記環状筐体を液状又はゲル状の前記接合体で覆った後、固化させることによって該環状筐体を前記配管体に接合するものを挙げることができる。
【0014】
本発明は導電率計のみならず、広く適用できる。すなわち、磁束を通過させるコアを所定の本体部材に取り付けるためのコアの取付構造であって、固化することによって前記コアを前記本体部材に接合する樹脂製の接合体を具備し、前記コアと接合体との間に前記接合体よりも軟らかい緩衝材を介在させているものであればよい。
【発明の効果】
【0015】
このように構成した本発明によれば、接合体が固化するときに、該接合体に生じる体積変化や変形の影響が緩衝材によって緩和され、該トロイダルコアに不測の応力が発生することを防止できるので、配管体に取り付け終わった状態でのトロイダルコアの特性を、トロイダルコア単体での特性とほぼ同様に維持でき、設計時に予定していた性能を発揮させることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態における導電率計の全体概略図。
図2】同実施形態における金属筐体及びインダクタを示す分解斜視図。
図3】同実施形態における金属筐体及びインダクタを示す斜視図。
図4】同実施形態における導電率計の接合体及び緩衝材を示す部分断面図。
図5】同実施形態における導電率計の製造過程を示す過程図。
図6】同実施形態における導電率計の製造過程を示す過程図。
図7】同実施形態における導電率計の製造過程を示す過程図。
図8】同実施形態における導電率計の製造過程を示す過程図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0018】
本実施形態に係る導電率計100は、例えば半導体プロセスで用いられる材料液や洗浄液などの流体の導電率を測定するための電磁誘導方式のものであり、図2に示すように、前記流体が導入される配管体1と、該配管体1に取り付けられた一対のインダクタ2(なお、本明細書や図面等で、区別が必要なときは(1)などを付す。)と、一方のインダクタ2(1)に電流を流すとともに、そのことによって他方のインダクタ2(2)に生じる電流を測定し、その測定値から前記流体の導電率を算出する処理部4とを具備している。
【0019】
前記配管体1は、図1に示すように、流体が導入される導入管11と、導入管11の終端から2分岐して延伸する一対の分岐管12と、これら分岐管12の終端が共通に接続された導出管13とからなる、例えば合成樹脂製のものであり、前記一対の分岐管12によって閉ループが形成されるように構成してある。
【0020】
インダクタ2は、図1図3に示すように、円環状のトロイダルコア21と、このトロイダルコア21に巻きつけたコイル22とからなるものである。この実施形態では、このインダクタ2を円環状の金属筐体3に収容し、この金属筐体3の中心孔に前記分岐管12を貫通させた後、該金属筐体3(およびインダクタ2)を分岐管12に接着固定している。
【0021】
金属筐体3は、図1図3等に示すように、前記インダクタ2を収容する円環溝31cを有した筐体本体31と、この筐体本体31の開口を閉塞する蓋体32とを具備するものである。
【0022】
ここでは、図2に示すように、筐体本体31の内周壁31aの高さを外周壁31bの高さよりも低くするとともに、蓋体32を外周壁31bの先端面に接合するようにして、蓋体32と内周壁31aの先端面との間に隙間Sが生じるように構成してある。この隙間Sは、インダクタ2で発生する磁束を中心側に漏洩させるためのものである。
【0023】
なお、前記インダクタ2を前記分岐管12に外嵌させるために、この実施形態では、図1に示すように、前記配管体1を各分岐管12の中間で分離可能にしている。具体的には、前記配管体1を、前記導入管11および上流側の一対の分岐管12からなる上流側配管要素1Aと、導出管13および下流側の一対の分岐管12からなる下流側配管要素1Bとから構成している。そして、配管要素1A、1Bを分離させた状態で一方の配管要素(ここでは上流側配管要素1A)の各分岐管12にそれぞれ、前記インダクタ2を収容した金属筐体3を外嵌させ、その後、配管要素1A、1B同士を接続するようにしている。
【0024】
処理部4は、CPUなどを含むデジタル電気回路および増幅器などのアナログ電気回路から構成されたものであり、図1に示すように、電気回路が動作することによって、電源部41、電流測定部42、導電率算出部43等としての機能を発揮する。
電源部41は、一方のインダクタ2(1)のコイル(以下、一次コイル22(1)と言う。)に所定の交流電流を流すものである。
【0025】
電流測定部42は、前記一次コイル22(1)に電流が流れることによって他方のインダクタ2(2)のコイル(以下、二次コイル22(2)と言う。)に流れる電流を測定するものである。
導電率算出部43は、前記電流測定部42で測定された電流(以下、検出電流とも言う。)に基づいて流体の導電率を算出するものである。
【0026】
次に、この導電率計の動作について簡単に説明しておく。
電源部41によって、一次コイル22(1)に交流電流が流されると、一次交流磁束が発生し、この一次交流磁束によって流体の閉ループに電流が流れる。そして、この電流によって生じる二次交流磁束によって二次コイル22(2)に検出電流が流れる。
【0027】
この検出電流の値を前記電流測定部42が測定する。この前記検出電流は、流体の電気抵抗値に応じて(比例して)変化することから、前記導電率算出部43は、検出電流の値に基づいて流体の電気抵抗値を求め、最終的に流体の導電率を算出する。
【0028】
このような導電率計100において、この実施形態では、前記インダクタ2を配管体1に対して、以下のような取付構造によって固定していることに特徴がある。
【0029】
すなわち、この取付構造は、図4に示すように、基本的には、インダクタ2を収容しかつ配管体1に外嵌させた状態にある金属筐体3の全体を配管体1ごと、液状又はゲル状の接合体51によって覆い、これを固化させることによって、金属筐体3及びインダクタ2を配管体1に接着し、かつ、保護するようにしたものである。
【0030】
接合体51は、熱可塑性の第1樹脂を素材とするものであり、前述したように、金属筐体3の外表面を全て覆うが、該金属筐体3の内周面と配管体1の外周面との間の間隙Pにも隙間なく充填されている。
【0031】
ところで、前記金属筐体3には、内周面に前述した隙間Sが空いているために、前記接合体51を塗布・充填する際に、この隙間Sから接合体51が金属筐体3内に浸入し、内部のインダクタ2を包覆してしまう。
【0032】
そこで、この実施形態では、図5図6に示すように、金属筐体3に予め、固化したときの硬さが前記接合体51よりも柔らかい緩衝材を注入して固化させ、この緩衝材52がインダクタ2を包覆し金属筐体3内でガタなく保持するようにしている。次に、この金属筐体を、図7に示すように配管体1に外嵌させ、その後、図8に示すように、金属筐体3の全体を配管体1ごと、液状又はゲル状の接合体51によって覆い、これを固化させている。
【0033】
このことによってインダクタ2と接合体51との間に緩衝材52が介在することになる。この緩衝材52としては、その周囲にある接合体51の固化時における体積変化や変形を、自身の弾性変形によって受け止め、内部のトロイダルコア21には、その特性が変わるほどの応力を作用させない程度の硬度のものを選択しておくことが好ましい。
【0034】
しかして、このように構成した導電率計によれば、接合体51が固化するときに、該接合体51に生じる体積変化や変形の影響が緩衝材52によって緩和され、トロイダルコア21にはほとんど伝わらないので、トロイダルコア21に不測の応力が発生することを防止できる。
【0035】
そして、このことにより、配管体1に取り付け終わった状態でのトロイダルコア21の特性(ヒステリシス特性や透滋特性)を、トロイダルコア21単体での特性や仕様とほぼ同様に維持できる。
したがって、導電率計として設計時に予定していた測定精度等を発揮させることができるようになる。
【0036】
ただし、緩衝材52自身が固化するときにトロイダルコア21に大きな応力が作用してはならないので、緩衝材52として固化時の体積変化や変形がなるべく小さくものを選ぶ必要がある。
【0037】
また、接合体51と緩衝材52との2重構造にしているので、接合体51には、耐食性、機械的強度および保持力のみを求め、緩衝材52には、柔らかさのみを求めることができるようになり、それらの機能を全て兼ね備えた単一の樹脂を選択するよりも、樹脂の選択肢が大幅に広がり、コスト削減にも寄与できる。
【0038】
なお、本発明は、上述した実施形態に限られるものではない。
金属筐体は必ずしも必要ない。
緩衝材は、前記実施形態のように、トロイダルコアの表面全てを覆う必要はなく、一部に覆われていない部分があってよい。要は、接合体の固化時の体積変化影響をトロイダルコアに伝達しないように構成されていればよい。
【0039】
接合体は、前記実施形態のように、トロイダルコア及び緩衝材を完全に密閉するように覆うものでなくともよく、一部に覆われていない部分があってよい。
本発明は、導電率計に限られず、コアを所定の本体部材に取り付ける取付構造に適用しても構わない。
緩衝材は、固体に限られず、液体でもよいし気体でも良い。
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0040】
100・・・導電率計
1・・・配管体(本体部材)
2・・・インダクタ
21・・・トロイダルコア
22・・・コイル
51・・・接合体
52・・・緩衝材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8