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特許6289935磁気冷凍デバイスおよび磁気冷凍システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6289935
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】磁気冷凍デバイスおよび磁気冷凍システム
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/01 20060101AFI20180226BHJP
   F25B 21/00 20060101ALI20180226BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20180226BHJP
   C22C 30/00 20060101ALI20180226BHJP
   C22C 28/00 20060101ALI20180226BHJP
   C22C 1/08 20060101ALI20180226BHJP
   B22F 3/10 20060101ALI20180226BHJP
   B22F 7/00 20060101ALI20180226BHJP
   C22C 33/02 20060101ALI20180226BHJP
   C22C 1/04 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
   H01F1/01 150
   H01F1/01 170
   F25B21/00 A
   C22C38/00 303D
   C22C30/00
   C22C28/00 A
   C22C1/08 F
   B22F3/10 E
   B22F3/10 H
   B22F7/00 Z
   C22C33/02 J
   C22C1/04 F
   C22C1/04 E
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-33401(P2014-33401)
(22)【出願日】2014年2月5日
(65)【公開番号】特開2015-149464(P2015-149464A)
(43)【公開日】2015年8月20日
【審査請求日】2016年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000176660
【氏名又は名称】株式会社三徳
(74)【代理人】
【識別番号】100081514
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 一
(74)【代理人】
【識別番号】100082692
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵合 正博
(72)【発明者】
【氏名】橘川 武彦
(72)【発明者】
【氏名】栗岩 貴寛
(72)【発明者】
【氏名】松本 恭知
【審査官】 池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−502061(JP,A)
【文献】 特開2005−015911(JP,A)
【文献】 特表2011−523771(JP,A)
【文献】 特表2010−531968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/01
B22F 3/10
B22F 7/00
C22C 1/04
C22C 1/08
C22C 28/00
C22C 30/00
C22C 33/02
C22C 38/00
F25B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
球状のGd系もしくはNaZn13型結晶構造を主相とするLa(Fe、Si)13系の磁気冷凍材料を焼結することにより得られた連通孔を有する焼結体形状であり、
前記Gd系は、組成式:Gd1-xx(Mは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、HoおよびErから選択される1種以上の元素から選択される1種以上の元素であり、xは0<x≦0.99である。)で表され、
前記La(Fe、Si)13系は、組成式:Fe100-a-b-cREabTMc(REはLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、ErおよびTmからなる群から選択され、Laを90原子%以上含む少なくとも1種の希土類元素、AはAl、Si、Ga、GeおよびSnからなる群から選択される、少なくともGaを含む1種以上の元素、TMはSc、Ti、V、Cr、Mn、Co、Ni、CuおよびZnからなる群から選択される少なくとも1種の遷移金属元素であり、a,bおよびcは、各々5≦a≦10、4.7≦b≦18、0≦c≦9である。)で表される、
磁気冷凍デバイス。
【請求項2】
球状のNaZn13型結晶構造を主相とするLa(Fe、Si)13系の磁気冷凍材料を焼結することにより得られた連通孔を有する焼結体形状であり、
前記La(Fe、Si)13系は、組成式:Fe100-a-b-cREabTMc(REはLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、ErおよびTmからなる群から選択され、Laを90原子%以上含む少なくとも1種の希土類元素、AはAl、Si、Ga、GeおよびSnからなる群から選択される、少なくともGaを含む1種以上の元素、TMはSc、Ti、V、Cr、Mn、Co、Ni、CuおよびZnからなる群から選択される少なくとも1種の遷移金属元素であり、a,bおよびcは、各々5≦a≦10、4.7≦b≦18、0≦c≦9である。)の水素化物である、
磁気冷凍デバイス。
【請求項3】
前記磁気冷凍デバイス中の前記磁気冷凍材料の充填率が75%以上90%以下である
請求項1または2記載の磁気冷凍デバイス。
【請求項4】
前記充填率が80%よりも大きく、90%以下である
請求項記載の磁気冷凍デバイス。
【請求項5】
前記焼結体形状が、2種以上の異なる組成の磁気冷凍材料を積層し、共焼結して得られる、
請求項1〜のいずれか記載の磁気冷凍デバイス。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか記載の磁気冷凍デバイスを用いた磁気冷凍システム。
【請求項7】
磁気冷凍材料の充填率が異なる請求項1〜記載の磁気冷凍デバイスから選択される複数の磁気冷凍デバイスを用いた磁気冷凍システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調設備、冷凍庫及び冷蔵庫などの家電製品や自動車用のエアコンなどに好適に用いられる磁気冷凍デバイスおよびこれを用いた磁気冷凍システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化などの環境問題を引き起こすフロン系ガスを冷媒とする従来の気体冷凍方式に替わる磁気冷凍方式が提案されている。
この磁気冷凍方式では、磁気冷凍材料を冷媒とし、等温状態で磁性材料の磁気秩序を磁場で変化させた際に生じる磁気エントロピー変化および断熱状態で磁性材料の磁気秩序を磁場で変化させた際に生じる断熱温度変化を利用する。したがって、この磁気冷凍方式によれば、フロンガスを使用せずに冷凍を行なうことができ、従来の気体冷凍方式に比べて冷凍効率が高いという利点がある。
【0003】
特許文献1には、粒子の周囲にSn又はSn合金皮膜を被覆し、空隙率が20〜35%のLaFeSiH磁性材料の製造方法について開示されている。特許文献2には、La(Fe、Si)13H合金からなり、充填率が85〜99%となるように空孔が形成された磁気冷凍材料及びその製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−120391号公報
【特許文献2】特開2013−060639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1および2に開示された磁気冷凍材料はいずれも粉砕粉を用いて成形または焼結して得られたものであって、多くの閉孔を有するため、磁気冷凍デバイスとして用いた際に熱交換媒体の接触面積の減少による熱交換性能の低下や圧力損失の増大といった問題がある。
また単なる球状の磁気冷凍材料を封入した磁気冷凍デバイスでは、充填率が低いため、磁気冷凍システムの小型化が難しいといった問題がある。
【0006】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。熱交換媒体の圧力損失が小さく、かつ磁気冷凍材料の充填率が高く小型化に有利な磁気冷凍デバイスを提供することにある。
さらに、本発明の別の課題は、前記磁気冷凍デバイスを用いた磁気冷凍システムを提供することにある。
【発明の効果】
【0007】
本発明の磁気冷凍デバイスを用いた場合、熱交換媒体の圧力損失が小さく、かつ磁気冷凍材料の充填率が大きいため磁気冷凍システムの小型化に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1で作製した焼結体の断面の観察像を示す図である。
図2】圧力損失評価装置の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、球状のGd系もしくはNaZn13型結晶構造を主相とするLa(Fe、Si)13系の磁気冷凍材料からなり、該磁気冷凍材料を焼結することにより得られた連通孔を有する焼結体形状の磁気冷凍デバイスに関する。なお、連通とは連なって通じることを意味し、連通孔とは連なって通じている孔を表している。
【0010】
本発明の磁気冷凍デバイスに用いるGd系の磁気冷凍材料は、組成式:Gd1-xx(Mは、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、HoおよびErから選択される1種以上の元素。0<x≦0.99)で表される組成を有する合金である。該合金中のM元素は好ましくはY、Tb、Dy、HoおよびErである。M元素の置換量xは好ましくは0<x≦0.50である。
【0011】
本発明の磁気冷凍デバイスに用いるNaZn13型結晶構造を主相とするLa(Fe、Si)13系の磁気冷凍材料は、組成式:Fe100-a-b-cREabTMc(REはLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、ErおよびTmからなる群から選択され、Laを90原子%以上含む少なくとも1種の希土類元素、AはAl、Si、Ga、GeおよびSnからなる群から選択される少なくともGaを含む1種以上の元素、TMはSc、Ti、V、Cr、Mn、Co、Ni、CuおよびZnからなる群から選択される少なくとも1種の遷移金属元素、5原子%≦a≦10原子%、4.7原子%≦b≦18原子%、0原子%≦c≦9原子%)で表される。
【0012】
aは、RE元素の含有量を表す。aは5原子%≦a≦10原子%である。REはLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、ErおよびTmからなる群から選択され、Laを90原子%以上含む少なくとも1種の希土類元素である。REはキュリー温度や動作温度範囲の調整に寄与する元素である。La含有量が90原子%以下の場合、磁気エントロピー変化量(−ΔS)が低下するため好ましくない。
【0013】
bは、A元素の含有量を表す。bは4.7原子%≦b≦18原子%である。A元素はAl、Si、Ga、Ge及びSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素である。bが4.7原子%より小さいとキュリー温度が下がるため好ましくない。一方、bが18原子%より大きいと磁気エントロピー変化量(−ΔS)が下がるため好ましくない。A元素はSi、Ga、Alが好ましく、Siは化合物の融点の調整、機械強度の増加などの効果があり、GaもしくはAlは動作温度範囲を調整するのに効果がある。
【0014】
cは、TM元素の含有量を表す。cは0原子%≦c≦9原子%である。TM元素はSc、Ti、V、Cr、Mn、Co、Ni、CuおよびZnからなる群から選択される少なくとも1種の遷移金属元素である。これらの元素はα−Feの析出を抑制したり、キュリー温度を制御したり、粉末の耐久性を改善したりすることが可能である。cが9原子%より大きいと動作温度範囲が狭くなるため好ましくない。TM元素はCoが好ましく、キュリー温度や磁気エントロピー変化量(−ΔS)を調整するのに効果がある元素である。
【0015】
Feは、NaZn13型結晶構造相を有する化合物相の生成効率に影響を及ぼす。
【0016】
また本発明の磁気冷凍デバイスに用いるNaZn13型結晶構造を主相とするLa(Fe、Si)13系の磁気冷凍材料は、組成式:Fe100−a−b−cRETMH(REはLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、ErおよびTmからなる群から選択され、Laを90原子%以上含む少なくとも1種の希土類元素、AはAl、Si、Ga、GeおよびSnからなる群から選択される少なくとも1種の元素、TMはSc、Ti、V、Cr、Mn、Co、Ni、CuおよびZnからなる群から選択される少なくとも1種の遷移金属元素、5原子%≦a≦10原子%、4.7原子%≦b≦18原子%、0原子%≦c≦9原子%)で表される水素化物であってもよい。ただし、水素化物を焼結すると脱水素化されるため、水素を含有しないNaZn13型結晶構造を主相とするLa(Fe、Si)13系の磁気冷凍材料を焼結体とした後、水素化を行うことが好ましい。水素化は、水素含有雰囲気中、180℃以上350℃以下で熱処理して行うことができる。
【0017】
本発明の磁気冷凍デバイスは、球状の前記磁気冷凍材料を用いて焼結することで得られた連通孔を有する焼結体を用いる。該焼結体を用いることにより熱交換媒体を供給、排出する際の圧力損失が減少し、かつ磁気冷凍材料の充填率を高くすることができる。該球状の磁気冷凍材料は、アスペクト比が10以下、好ましくは5以下、さらに好ましくは2以下である。アスペクト比の小さい球状の磁気冷凍材料を用いることにより、より均一な連通孔を有する焼結体が得られる。本願において、アスペクト比の測定は、磁気冷凍材料をよく混合した後、四分法により採取した試料について、光学顕微鏡を用いて任意の100個の粒子のアスペクト比を計測し、それらの平均値を算出した。これを3回繰り返し、3回の平均値をアスペクト比とした。
【0018】
Gd系及びNaZn13型結晶構造を主相とするLa(Fe、Si)13系の磁気冷凍材料において、酸素、窒素及び原料の不可避不純物の含有量は、少ない方が好ましいが、微量であれば含有してもよい。
【0019】
本発明の磁気冷凍デバイスに用いる磁気冷凍材料の球状粉を製造する方法は、球状粉が得られれば特に限定されない。例えば、所定の組成となるように配合した原料を準備する。次いで不活性ガス雰囲気下、配合した原料を真空高周波溶解炉などの溶解炉で溶解した後、ガスアトマイズやディスクアトマイズなどのアトマイズ法、回転電極法等で球状の磁気冷凍材料を得ることができる。また必要に応じて篩い分け、形状分級を行うことで、所望の粉末を得ることができる。該球状粉末の粒径は、100μm以上750μm以下の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは100μm以上300μm以下の範囲である。
【0020】
球状の磁気冷凍材料は、均質化のために熱処理してもよい。熱処理する場合の条件は、不活性雰囲気下600℃以上1,250℃以下の温度で行うのが良い。熱処理時間は、10分以上100時間以下である。好ましくは10分以上30時間以下である。
【0021】
本発明の磁気冷凍デバイスは、上記磁気冷凍材料の充填率が75%以上90%以下であり、好ましくは80%以上90%以下である。この場合、特に熱交換媒体の圧力損失が適正な値となり、かつ磁気冷凍材料の充填率が高いため、熱交換効率が高く、磁気冷凍システムの小型化が可能となる。本願において充填率とは、焼結体の重量を、焼結体の寸法より求めた体積で割って焼結体の密度を算出し、さらに該焼結体密度を磁気冷凍材料の密度で割って算出した値である。
【0022】
本発明の磁気冷凍デバイスに用いる連通孔を有する磁気冷凍材料の焼結体の製造方法は、特に限定されないが、例えば上記所定の粒径を有する球状の磁気冷凍材料を金型に挿入し、次いで雰囲気炉においてArや窒素などの不活性ガス雰囲気中で700℃以上1200℃以下、1時間以上40時間以下熱処理することによって得ることができる。熱処理温度、時間を制御することにより、得られる焼結体における磁気冷凍材料の充填率を制御することができる。また、通電焼結法、ホットプレス等で行うこともできる。図1に示すように球状の磁気冷凍材料が互いにネッキングして焼結している。空隙も略均一に形成されている。結果、充填密度が高く、圧力損失が適正な磁気冷凍デバイスを得ることができる。また、強度も高く、磁気冷凍システムに用いた際に微粉の発生がほとんど生じないことも本発明のメリットである。
【0023】
本発明の磁気冷凍デバイスは、2種以上の異なる組成の磁気冷凍材料を積層し、共焼結した焼結体の形状とすることができる。例えば、NaZn13型結晶構造を主相とするLa(Fe、Si)13系の磁気冷凍材料の場合、Coの添加量を変えることによりキュリー点が制御できることが知られている。Co量の異なるLa(Fe、Si)13系の磁気冷凍材料を積層し、共焼結を行うことで、一体化したカスケード型の磁気冷凍デバイスを得ることができる。
【0024】
本発明の磁気冷凍システムには、本発明の磁気冷凍材料デバイスを使用する。磁気冷凍システムは、その種類によって特に限定されるわけではないが、磁気冷凍作業室内に配置した本発明の磁気冷凍材料デバイスを構成する磁気冷凍材料の表面を熱交換媒体が流通するように、磁気冷凍作業室の一方の端部に熱交換媒体の導入配管、他方の端部に熱交換媒体の排出配管を設けるとともに、磁気冷凍作業室の近傍に永久磁石が配置され、かつ本発明の磁気冷凍材料に対する永久磁石の相対位置を変化させて磁界の印加及び除去を行う駆動装置を備えているものが好ましい。
【0025】
駆動装置を作動させて作業室と永久磁石の相対位置を変化させると、本発明の磁気冷凍材料に対して磁界が印加された状態から、除去された状態に切り替わる際、結晶格子から電子スピンにエントロピーが移動し,電子スピン系のエントロピーが増加する。それによって、本発明の磁気冷凍材料の温度が低下し、それが熱交換用媒体に伝達され、熱交換用媒体の温度が低下する。このようにして温度が低下した熱交換用媒体は、磁気冷凍作業室から排出配管を通って排出され、外部の低温消費施設に冷媒として供給され、優れた磁気冷凍システムが得られる。
【0026】
本発明において、圧力損失は以下の方法で行った。まず図2の模式断面図で示す圧力損失評価装置を用いて圧力損失を測定した。得られた焼結体を内径がφ20mmのプラスチック製の管1に挿入し、試験試料2とする。次に流体として水を使用し、流量−圧力損失試験を行った。試験試料入口側の圧力計3による圧力をP1、出口側の圧力計4による圧力をP2とし、試験試料前後の圧力降下ΔP(ΔP=P1−P2)を測定した。
【0027】
本発明の磁気冷凍システムは、磁気冷凍材料の充填率が異なる磁気冷凍デバイスを組み合わせて用いることができる。例えば磁気冷凍材料を用いたモジュール内を通過する冷媒温度はモジュール内で熱交換を行いながら通過する為に、磁気冷凍材料の充填率を部位ごとに最適化することで、システムの効率化や小型化に有利となる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例および比較例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【実施例1】
【0029】
最終的に得られる合金の組成が表1に示した組成となるように原料を秤量した後、高周波溶解炉にてArガス雰囲気中で溶解し、合金溶融物とした。つづいて、この合金溶融物を、ガスアトマイズ法により球状の粉末を得た。該粉末を篩分・形状分級し、100μm〜300μmの球状の粉末を得た。該粉末のアスペクト比は1.1であった。その後、該粉末を内径φ20mmの金型に挿入し、1気圧のArガス雰囲気中において、1,100℃、20時間で熱処理を行い、連通孔を有するφ20mmの焼結体を得た。得られた焼結体の高さが30mmとなるように切断した。該焼結体の充填率は75%であった。
得られた焼結体を図2に示す圧力損失評価装置内の内径がφ20mmのプラスチック製の管に挿入し、試験試料とする。次に流体として水を使用し、流量−圧力損失試験を行った。試験試料入口側の圧力をP1、出口側の圧力をP2とし、試験試料前後の圧力降下ΔP(ΔP=P1−P2)を測定した。また、各種焼結体を用いた時の所定の流量で入り口側の圧力(P1)が一定となるように、ニードルバルブにて調整を行った。実施例1の焼結体を用いた場合のΔPを100と定義した。得られた焼結体の断面を光学顕微鏡にて観察した。観察像を図1に示す。
【0030】
(実施例2〜4、6、7、参考例5
最終的に得られる合金を表1に示す組成に変更し、熱処理の条件を適宜変更した以外は、実施例1と同様にして連通孔を有する焼結体を得た。得られた焼結体について、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0031】
(比較例1)
最終的に得られる合金の組成を実施例1と同じとなるように原料を秤量した後、高周波溶解炉にてArガス雰囲気中で溶解し、合金溶融物とした。つづいて、この合金溶融物を、銅製ロールを用いたストリップキャスティング法により鋳片を得た。得られた鋳片をパルペライザーで粗粉砕した後、ジェットミルで平均粉末粒径D50=5μmとなるまで粉砕した。この粉砕粉を成型機で2t/cmの圧力でプレスを行い、グリーン体を作製した。その後、得られたグリーン体を1気圧のArガス雰囲気中において、1,100℃、20時間で熱処理を行い、焼結体を得た。得られた焼結体をφ20mm、高さ30mmとなるように機械加工を行った。得られた焼結体について、実施例1と同様の評価を行ったものの圧力損失が大きく、測定不能であった。その結果を表1に示す。
【0032】
(比較例2)
最終的に得られる合金の組成を実施例1と同じとなるように原料を秤量した後、高周波溶解炉にてArガス雰囲気中で溶解し、合金溶融物とした。つづいて、この合金溶融物を、銅製ロールを用いたストリップキャスティング法により鋳片を得た。得られた鋳片をパルペライザーで粗粉砕した後、バンタムミルで平均粉末粒径D50=50μmとなるまで粉砕した。分級機を用いて10μm以下の微細粒子を除去し、平均粉末粒径D50=81μmの粉末を得た。得られた粉末の表面に無電解メッキにより膜厚20μmの錫を形成した。該粉末を成形機を用いて2t/cmの圧力でプレスを行い、グリーン体を得た。得られたグリーン体をArガス雰囲気中240℃で加熱して成形体を得た。得られた成形体をφ20mm、高さ30mmとなるように機械加工を行った。該焼結体について、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0033】
(比較例3)
実施例1で得られた粉末に焼結を施さずに、内径がφ20mmのプラスチック製の管に高さ30mmとなるように挿入した以外は実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
【符号の説明】
【0035】
1…管 2…試験試料 3…入口側の圧力計 4…出口側の圧力計
5…流量計 6…圧力調整器 7…ニードルバルブ
図1
図2