特許第6289939号(P6289939)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6289939二つのインクジェット印刷ヘッドを用いて被印刷物上に複数のセクションから成る印刷画像を形成するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6289939
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】二つのインクジェット印刷ヘッドを用いて被印刷物上に複数のセクションから成る印刷画像を形成するための方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20180226BHJP
   B41J 2/21 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
   B41J2/01 307
   B41J2/01 451
   B41J2/01 401
   B41J2/21
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-41476(P2014-41476)
(22)【出願日】2014年3月4日
(65)【公開番号】特開2014-168958(P2014-168958A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2016年11月18日
(31)【優先権主張番号】10 2013 003 689.5
(32)【優先日】2013年3月4日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390009232
【氏名又は名称】ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Heidelberger Druckmaschinen AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ハンス−ユルゲン ラートイェン
【審査官】 島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0206530(US,A1)
【文献】 特開平09−076480(JP,A)
【文献】 特開2008−062516(JP,A)
【文献】 特開2009−083320(JP,A)
【文献】 特開2009−302608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 − 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つのインクジェット印刷ヘッドを用いて、複数のセクションから成る印刷画像を被印刷物上に形成する方法であって、
第1の印刷ヘッド(3a)によって形成される第1の印刷画像セクション(2a)と、第2の印刷ヘッド(3b)によって形成される第2の印刷画像セクション(2b)とを、y方向におけるy座標の位置Y1で統合することにより前記印刷画像(7)を形成する、方法において、
x方向に延在する、前記位置Y1を中心とした幅DYのデータストライプ(8)を前記印刷画像(7)のデータにおいて選択するステップと、
選択された前記ストライプ(8)における前記印刷画像(7)のデータを、エッジ検出を実施できる、x方向における寸法dx及びy方向における寸法dyを有するデータフィールド(9)が存在するか否かについて検査するステップと、
前記データフィールド(9)を選択し、該データフィールド(9)のx座標x1及びy座標y1を検出するステップと、
印刷画像(2,2a,2b)を形成するステップと、
前記位置x1,y1において記録され、且つ、少なくともdx×dyの大きさを有している、前記データフィールド(9)と相関関係にある、前記被印刷物(1)上の測定フィールド(9’)の画像(11)をカメラ(5)によって記録するステップと、
前記測定フィールド(9’)の前記画像(11)のデータにおいてエッジ検出を実施するステップと、
エッジが検出された場合には、前記第1の印刷ヘッド(3a)及び前記第2の印刷ヘッド(3b)の内の少なくとも一つの印刷ヘッドのy位置を補正するステップと、
を備えていることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記エッジ検出においてソーベルフィルタを使用する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エッジ検出において、閾値比較を少なくとも1回実施する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記印刷画像(7)のデータの検査時に、50%から70%の平均色濃度を有するデータフィールド(9)が存在しているか否かを検査する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記印刷画像(7)のデータの検査時に、前記データフィールド(9)が均一な色濃度を有しているか否かを検査する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記印刷画像(7)のデータの検査時に、前記データフィールド(9)が色濃度の変化又は相応のグレー値の変化を有していないか否か、又は、変化の過度に低い空間周波数に起因して、使用されるエッジフィルタでは識別されない非常に弱い色濃度の変化若しくは相応のグレー値の変化又は最大平均色濃度の変化を有しているか否かを検査し、前記変化に関しては以下のことが該当する:
前記データフィールド(9)内の前記印刷画像(7)の色濃度の変化の勾配又は相応のグレー値の変化の勾配は0から0.5の間、又は0.05から0.25の間、又は0.1である、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記データストライプ(8)の選択、前記データフィールド(9)の検査及び選択を印刷の開始前に実施し、その際に検出された、前記データフィールド(9)又は相関関係にある測定フィールド(9’)の座標を、前記画像(11)の記録のためにデータメモリ(6’)に提供する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
制御ループにおいて画像(11)の記録、エッジ検出の実施及び印刷ヘッド補正を複数回実施することによって、前記方法を閉ループ制御として実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記方法を、多色印刷画像を形成する際に、少なくとも二つの色分解に対して別個に実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記印刷ヘッド(3a,3b)の位置補正をモータによる位置調整によって実施する、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載されている方法に関する。
【0002】
本発明は、インクジェット印刷ヘッドを用いる印刷の分野に属する。
【背景技術】
【0003】
この技術分野における公知の従来技術として例えば特許文献1が挙げられ、この特許文献1からは既に、ブリスターパッケージのインクジェット印刷が公知である。ブリスターパッケージは、実質的に2次元で印刷できるヒートシール性フィルムを有しており、また直線的に送られる。従って、生産が高速であるにもかかわらず、送り及び印刷は大抵の場合、問題なく行われる。空間内で湾曲した外表面を有する、3次元に成形された立体物の印刷は遙かに困難である。更には、いずれの場合においても、個々の印刷ヘッドの幅よりも広い領域を印刷することが必要になると考えられる。パッケージング、例えばボトル生産工場においてビンの印刷のために、インクジェット印刷システムが益々使用されるようになっている。その種のシステムの個々の印刷ヘッド又はモジュールは、型及びメーカに応じて、例えば約50mmから約100mmの幅を有している。従って、比較的幅の広い印刷システムは、必要とされる印刷幅を達成するために、複数の個々のモジュールを相互に接して整列させることによって(いわゆる「スティッチング(Stitching)」によって)構成されるが、境界部が生じることは不可避である。
【0004】
それらの境界部においては、印刷時にモジュール相互の連絡部がストライプとして印刷画像において可視とならないように、個々のモジュール(例えばXaar 1001)を(x方向、y方向及び角度に関して)相互に位置調整する必要がある。つまり、モジュール間の重畳又は間隙によって不所望な暗いストライプ(過度に多くのインク)又は明るいストライプ(過度に少ないインク)が生じる。この位置調整は、連絡部のない印刷画像を保証するために、組み立て最終工程の直後においても、モジュールの交換を伴うサービスの度にも実施することができる。更に、見当合わせが例えば熱の影響によって変化した場合には、その種の位置調整が運転中にも必要になることが考えられる。
【0005】
市販のその種のモジュールの解像度は300dpiから600dpiの間であり、これは80μmから40μmに相当する。モジュールの連絡部が可視になることを回避するために、二つのモジュール間の移行領域(「スティッチング」領域)における重畳領域内の印刷画像における印刷線の誤った位置調整は、線幅の半分(上述の例では40μmから20μm)よりも大きくなってはならない。その種の位置調整のエラーは運転中の温度の影響によっても十分に発生し得る。
【0006】
従来技術として更に特許文献2が挙げられ、この特許文献2には印刷エラーを回避するための方法が開示されており、この方法では先ず、セットアップ中にテスト画像が印刷され、そのテスト画像においていわゆる「スティッチエラー」が測定され、印刷ヘッドが相応に補正された(いわゆる「マスキングされた」)データでもって駆動制御される。従って補正がデータのレベルで行われる。その際に、印刷画像内の暗い位置は明るい位置よりも可視のエラーである可能性が高いという知識が利用され、従って、特に画像内容に依存して補正が行われる。つまり、LUTアーキテクチャが選択され、そこでは種々の重み付け係数を調整することができる(例えば被印刷物の異なる速度を考慮する乗算器も調整することができる)。後続の生産の間に印刷画像が監査され、印刷濃度(print density)が変化した際に、マスキングの強さが動的に適合される。テスト画像を利用する際の問題は、システムの安定性に依存して、場合によっては複数のテスト画像が連続的に(反復的に)印刷されなければならない可能性があることであり、これは時間が掛かり、また刷り損じを生じさせる。この特許文献2にはヘッドの機械的な位置調整に関しては開示されていない。特にこの特許文献2には、印刷画像又はその評価だけを補正に使用し、それによってテスト画像の印刷を回避する可能性に関しては何ら記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US 7,955,456 B2
【特許文献2】WO 2011/011038 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの背景の下での本発明の課題は、いわゆるスティッチングエラー(複数の印刷ヘッドが相互に接して整列されていることに起因するエラー。この場合、それらの印刷ヘッドは相互に過度に大きい間隔又は過度に小さい間隔を有している)に起因する、複数のインクジェット印刷ヘッドを用いる印刷時の品質低下を回避し、場合によっては反復的に行われる事前のテスト画像の印刷及びその測定を省略することができる、従来技術に比べて改善された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、この課題は、請求項1の特徴部分に記載されている構成を備えている方法によって解決される。本発明の有利な実施の形態は、従属請求項並びに以下の説明及び添付の図面より明らかになる。
【0010】
複数のセクション、即ち、第1の印刷ヘッドによって形成される第1の印刷画像セクションと、第2の印刷ヘッドによって形成される第2の印刷画像セクションとが、y方向において、実質的にy座標Y1で統合されることにより形成される印刷画像を、二つのインクジェット印刷ヘッドを用いて被印刷物上に形成する本発明による方法は、以下のステップを備えている:
−x方向に延在する、前述の位置Y1を中心とした幅DYのデータストライプを印刷画像のデータにおいて選択するステップ、
−選択されたストライプにおける印刷画像のデータを、エッジ検出を実施できる、x方向における寸法dx及びy方向における寸法dyを有するデータフィールドが存在するか否かについて検査するステップ、
−データフィールドを選択し、そのデータフィールドのx座標x1及びy座標y1を検出するステップ、
−印刷画像を形成するステップ、
−位置x1,y1において記録され、少なくともdx×dyの大きさを有している、データフィールドと相関関係にある、被印刷物上の測定フィールドの画像をカメラによって記録するステップ、
−測定フィールドの画像のデータにおいてエッジ検出を実施するステップ、
−エッジが検出された場合には、二つの印刷ヘッドの内の少なくとも一つの印刷ヘッドのy位置を補正するステップ。
【0011】
本発明による方法は有利には、複数のインクジェット印刷ヘッドを用いて印刷を行う際の、いわゆるスティッチングエラーに起因する品質の低下を回避し、その際に事前に行われる、場合によっては反復的なテスト像の印刷及びそのテスト像の測定を省略することができる。即ち、本方法は付加的な印刷、またそのためのデータは必要とされず、その代わりに、印刷画像、又はその印刷画像から取得された情報若しくはデータを直接的に使用して機能する。適切なテスト画像の煩雑な調整及びその印刷、従ってそれに伴う不所望な刷り損じを無くすことができる。その代わりに、本発明による方法では、実際の印刷データにおいて、カメラ検査のための、被印刷物上の適切な位置が発見される。本方法を、主としてコンピュータ支援により実施することができるので、非常に高速に実施することができ、また印刷ヘッドの位置決めの補正も相応に高速に実施することができる。更には、その種の補正を印刷中に実施することができるので、僅かな位置ずれも何時でも検出及び補正することができる。従って、本方法は閉ループ制御にも非常に適している。
【0012】
本発明による方法の有利な実施の形態では、エッジ検出の際にソーベル(Sobel)フィルタ(同義語:ソーベルの演算子(Sobel-Operator))を使用することができる。ソーベルフィルタはグレー値の変化の一次微分を計算し、それと同時に微分方向に直交する方向において平滑化を行う。基礎となるアルゴリズムは、オリジナルの画像から、オリジナル画像における高周波数をグレー値でもって表す勾配画像を形成する行列を用いる畳み込みを利用する。輝度が最大の領域は、オリジナルの画像の輝度が最も大きく変化し、従って最も高い輝度エッジが存在する領域である。従って大抵の場合は、ソーベルの演算子を用いた畳み込み後に更に閾値比較が実施される。
【0013】
本発明による方法の有利な実施の形態では、印刷画像のデータの検査時に、約50%から約70%の平均色濃度を有するデータフィールドが存在しているか否かを検査することができる。好適ではないとしても、それよりも低い値又はそれよりも高い値(約30%から約90%)も利用することができる。100%の平均色濃度も使用することができる。つまり、100%の色濃度を有する測定フィールドにおいては重畳部を確かに確認することはできないが、その代わりに、間隙は生じた明るい線によってより鮮明に見えるようになる。従って、重畳部も間隙も確実に検出することができるので、約50%から約70%の平均色濃度値は有利である。
【0014】
本発明による方法の有利な実施の形態では、印刷画像のデータの検査時に、データフィールドが均一な色濃度、即ち一様な(且つ異質ではない、又は過度に不均一でない)色濃度を有しているか否かを検査することができる。その種のデータフィールドにおいては、重畳部及び間隙によって、非常に良好に検出可能な暗い線又は明るい線が生じ、またそれと共に検出可能な線のエッジも生じる。
【0015】
本発明による方法の有利な実施の形態では、印刷画像のデータの検査時に、データフィールドが色濃度の変化又は相応のグレー値の変化を有していないか否か、又は非常に弱い色濃度の変化若しくは最大平均色濃度の変化を有しているか否かを検査することができ、特に変化に関しては以下のことが当てはまる:フィールド内(データストライプの内側)の印刷画像の色濃度の変化の勾配又は相応のグレー値の変化の勾配が約0(変化無し)から約0.5(最大平均変化の領域)の間、有利には約0.05から約0.25(平均変化の領域)の間、特に有利には約0.1である。
【0016】
本発明による方法の有利な実施の形態では、データストライプの選択、データフィールドの検査及び選択を印刷の開始前に実施することができ、その際に検出された、データフィールド又は相関関係にある測定フィールドの座標を、画像の記録のためにデータメモリに提供することができる。しばしば「プリフライト」とも称されるその種のプロセスにおいて、検査(画像記録及び画像評価)に必要とされるデータをコンピュータ技術により取得することができる。その場合、計算時間はあまり問題にはならない。何故ならば、計算は印刷及び検査が開始される前に実質的に終了しているからである。
【0017】
本発明による方法の有利な実施の形態では、制御ループにおいて画像記録、エッジ検出及び印刷ヘッド補正が複数回実施されることによって、本方法を閉ループ制御として実施することができる。そのようにして、僅かな位置ずれ、及び/又は、緩慢に発生するか、若しくは、緩慢に変化する位置ずれを実質的に遅延なく識別及び補正することができるので、複数の同一の印刷画像又は複数の変化する印刷画像を有する、印刷ジョブの全ての印刷画像の品質は非常に優れている。
【0018】
本発明による方法の有利な実施の形態では、本方法を、多色印刷画像を形成する際に、少なくとも二つの色分解に対して別個に実施することができる。有利には、シアン(C)、マゼンダ(M)、黄(Y)及び黒(K)を用いる公知の4色印刷において、C,M,Y及びKのいわゆる色分解各々が本発明に従い処理され、その際に、場合によっては必要となる補正が実施され、有利には閉ループ制御によって実施される。
【0019】
本発明による方法の有利な実施の形態では、印刷ヘッドの位置補正をモータによる位置調整によって実施することができる。有利にはこのために、高速に反応するアクチュエータが使用され、それにより、印刷ヘッドの必要な位置補正を実質的に遅延なく実施することができ、従ってエラーを有する印刷画像を実質的に回避することができる。
【0020】
上述の本発明による方法を、添付の特許請求の範囲における同義の独立請求項又はその特徴の組み合わせによっても表すことができる。つまり、インクジェット印刷のための方法では、カメラが被印刷物上の測定フィールドの画像を記録し、コンピュータが画像処理によって印刷ヘッドの位置ずれを検出し、印刷ヘッドの横方向の位置を制御し、またその際にモータによる位置調整が行われる。
【0021】
以下では、本発明のその種の実施の形態、並びに構造的及び/又は機能的に有利な実施の形態を、添付の図面を参照しながら有利な実施例に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明による方法の有利な実施例を実施する際の、印刷システムの有利な実施例の概略図を示す。
図2】xyデータセットの形態での印刷画像又はその表示の概略図を示す。
図3】例示的なカメラ画像の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1には、二つのセクション2a及び2bから構成されている印刷可能な領域2を有する被印刷物1が示されている。セクション2aはインクジェット印刷ヘッド3aによって印刷され、また、セクション2bはインクジェット印刷ヘッド3bによって印刷される。y方向では、位置Y1において二つのセクションが境界を接している。二つの印刷ヘッドは領域DYにおいてオーバーラップ、即ち重畳している。この領域DYをスティッチング領域とも称する。この領域DYでは、水平であるy方向における印刷ヘッドの不正確な位置決め(位置ずれ)に起因して、印刷画像内に不所望な明るい線(印刷ヘッド相互間の過度に大きい距離)又は不所望に暗い線(印刷ヘッドの過度に大きい重畳)が生じる可能性がある。顧客の元に新たに設置された印刷装置は、確かに所期段階では高い精度で位置調整されているが、しかしながら時間の経過と共に、また熱の影響にも起因して、非常に僅かな位置ずれ及び非常に緩慢に変化する位置ずれが生じ、それらの位置ずれは目標値からの偏差が僅かであるにもかかわらず、印刷画像内に可視の影響、従って品質を損なわせる影響を及ぼす(例えば、上述したような線を生じさせる)。その種の線は本発明により回避される。
【0024】
印刷ヘッド3bをy方向において位置調整することができる。位置調整のための駆動部としてアクチュエータ4が設けられている。x方向において位置調整可能なカメラ5が被印刷物1に向けられており、またこのカメラ5によって被印刷物の複数の領域の画像11(図3を参照されたい)を記録することができる。それらの画像は制御装置のコンピュータ6に供給される。
【0025】
図2には、印刷可能な領域2内に印刷されるべき印刷画像7が示されている。印刷画像は、印刷画像データのxyマトリクスを含むファイル、例えばいわゆるビットマップファイルとして存在している。データマトリクスにおいては、実質的に領域DYと一致する幅を有しており、また有利には位置Y1を基準としてy方向の位置について対称的な幅を有している、x方向に延在するストライプ8が選択される。その領域内、又はその領域にある印刷画像データには前述の不所望な明るい線又は暗い線が予期されるので、その領域又はその領域にある印刷画像データが選択される。ストライプ8を含むより広い幅のストライプを選択することもできる。続けて、そのストライプ内の選択されたデータが検査される。
【0026】
選択された印刷画像データの検査は以下のように実施される:コンピュータ6において、相応のプログラムを使用して、(座標x1及びy1を有する)任意の位置にあるストライプ8内に、被印刷物1上の測定フィールド9’(図1を参照されたい)として使用することができる、x方向における寸法dx及びy方向における寸法dyを有するサイズ又は面積のフィールド9が存在するか否かが検査される。その際に、プログラムはフィールド9内のデータを、それらのデータが既知の画像処理ステップに基づくエッジ検出又は境界検出に適しているか否か、例えば、いわゆるソーベルフィルタのようなディジタルエッジフィルタの使用に適しているか否かについて検査する。例えばフィールド9が実質的に均一なグレー値を有している場合には、そのフィールド9は適切である。この関係において「グレー値」とは、通常の4色印刷を行う際の複数の色値C,M,Y又はKの個々の色値とも解される。従って、CMYK印刷画像では、フィールドの存在についての検査が色分解毎に別個に実施される。非常に不均一なグレー値を有するフィールド、又は、例えば文字を有しているフィールドにおいては、グレー値の変化の高い空間周波数に起因して、既存の線を検出するためには、エッジ検出だけでは十分でない可能性がある。従って、その種のフィールドは選択されない。
【0027】
特に以下の三つの判定基準が満たされている場合にはフィールド9は適切である:
A)約50%から約70%の平均色濃度を有している。
B)実質的に均一な色濃度の変化又は相応のグレー値の変化、若しくは、変化の過度に低い空間周波数に起因して、使用されるエッジフィルタでは識別されない、非常に弱い色濃度の変化乃至最大平均色濃度の変化又は相応のグレー値の変化を有している。この変化に関しては以下のことが当てはまる:フィールド9内(データストライプ8の内側)の印刷画像の色濃度の変化の勾配又は相応のグレー値の変化の勾配が約0(変化無し)から約0.5(最大平均変化の領域)の間、有利には約0.05から約0.25(平均変化の領域)の間、特に有利には約0.1である。
C)完全にストライプ8内にある場所x1,y1及び寸法dx×dyを有している必要があり、且つ、ディジタルフィルタの全体のサイズを、位置Y1を超えてスライドさせるには十分な大きさを有している必要がある。例1(理想的な場合):ソーベルフィルタは5×5ピクセルのサイズを有し、且つ、各ピクセルは10×10μmのサイズを有している。その場合、DYに関しては2×5×10μm=100μmの最小幅が得られる。例2(実際の例):境界部の位置は既に約100μmの不正確性を有している。この不正確性に更に、使用されるカメラから印刷個所及び印刷インクの乾燥個所まで距離があることによって惹起される不正確性、又は、印刷ヘッド及びカメラの機械的な保持部における熱作用によって惹起される不正確性が加わる。従って、ストライプの幅DYは実際には約2mm以上となる。10mmのイメージサークルを有するカメラはそのような2mmの幅のストライプを問題なく検出することができ、それどころかストライプを更に数mm側方に往復移動させることも可能である。ソーベルフィルタは5×5ピクセルのサイズを有し、且つ、各ピクセルは10×10μmのサイズを有している。ストライプ8は約2mmの幅を有している。従ってこの実際の例においては、ソーベルフィルタの全幅をそのストライプ内にスライドさせることができる。
【0028】
ストライプ8内でその種のフィールド9が発見されると、そのフィールド9は本発明による方法の更になる経過のために選択され、従って測定フィールド9’となる。複数の有用なフィールド、例えばフィールド9及び10が発見された場合には、それら複数のフィールドの内、最も有用なフィールド、例えば、上述の判定基準AからCを最も良く満たしているフィールドが選択される。この選択されたフィールドの座標(x座標x1及びy座標y1)が検出され、それらの座標が更なるステップにおいて使用される。
【0029】
データストライプの選択、データフィールドの検査及び選択を、有利には、印刷の開始前に実施することができ、その際に検出された、データフィールド9又は、そのデータフィールド9と相関関係にある測定フィールド9’の座標x1及びy1を、カメラ5を用いる画像11の記録のために、データメモリ6’に提供することができる。
【0030】
カメラ5は測定フィールド9’(図1を参照されたい)の画像11(図3を参照されたい)を記録する。このために、カメラを例えば位置調整によって、画像を記録することができるポジションへと移動させることができる。しかしながら、幅DYのストライプがそのカメラの下を通過して移動するようにカメラが位置決めされている場合には、測定フィールドがカメラの記録領域に達している瞬間にのみカメラを起動させることができる。このために、選択された測定フィールドの座標x1及びy1を利用することができ、それらの座標によって、被印刷物の寸法、又は、被印刷物上の印刷画像2の場所の知識、並びに、被印刷物1の送り速度の知識のもとで、カメラの起動時点を算出することができる。記録される画像は少なくともdx×dyのサイズを有しているべきであり、それによって、その画像内でエッジ検出を実施することができる。
【0031】
記録された画像11のデータ、例えばビットマップとしてのデータがコンピュータ5に供給される。コンピュータ又はそのコンピュータ上で実行されるプログラムによってエッジ検出が実施され、例えば既に上述したソーベルフィルタが使用される。
【0032】
少なくとも一つの印刷ヘッドの相当な位置ずれが存在する限り、エッジ検出によって、測定フィールド9’の画像11のデータにおけるエッジが結果として供給される。その際、閾値比較も実施することができる。つまり所定の閾値を超えると、印刷ヘッドの不所望な重畳が検出される。所定の別の閾値を下回ると、不所望な間隙、即ち印刷ヘッド間の過度に大きい距離が検出される。発生しているケース(重畳又は間隙の発生)に応じて、印刷ヘッドの内の少なくとも一つの印刷ヘッドのモータによる位置調整の方向が決定される。
【0033】
図3には、選択された測定フィールド9’のそのようにして記録された三つの画像11が例示的に示されている。左側の画像からは、二つの印刷ヘッド3a及び3bが正確に接するように配向されており、従って、それらの印刷ヘッドの境界部Y1に可視の線は生じていないことが見て取れる。従って、この画像は均一なグレー値を示す。中央の画像からは、二つの印刷ヘッドが過度に重畳しており、従って、境界部Y1に暗い線が生じていることが見て取れる。右側の画像からは、二つの印刷ヘッドが過度に相互に距離を置いており、従って、印刷画像において境界部Y1に明るい線が生じていることが見て取れる。
【0034】
エッジ検出の実施により、図3の左側の画像又は右側の画像に示したケースのどちらかが検出されると、コンピュータ6からアクチュエータ4に信号が送信され、アクチュエータ4による印刷ヘッド3bの補正された位置調整が行われる。択一的に、印刷ヘッド3aの位置調整を行うこともできるか、又は両方の印刷ヘッドの位置調整を行うこともできる。この位置調整は、いかなる場合においてもy方向で実施され、また位置調整の値は検出された線の幅と相関関係にある。
【0035】
印刷ヘッド3bの位置調整が印刷画像の変化を生じさせ、また図3に示した線の幅が短くなるので、後続の印刷物の内の一つにおける測定フィールド9’の画像11の再度の記録、またエッジ検出による画像11の再度の評価を、閉制御ループを形成するために使用することができる。この制御又は既述のサンプリング制御システムの枠内では、反復的に、若しくはそれどころか継続的に、測定フィールド9’が選択されて、その測定フィールド9’の画像が記録され、画像のデータにおいてエッジ検出が実施され、エッジが存在する場合には印刷ヘッドの補正された位置調整が行われる。測定フィールドを一度だけ、有利には印刷の開始前に選択し、その後は、制御中に繰り返し監視のために使用することができる。印刷が同一である場合には固定の測定フィールドが有利であるが、これに対し印刷が変化する場合には、印刷が変化する度に測定フィールドを新たに決定することが有利である。従って最終的には、制御パラメータとして、第1の印刷ヘッドの最後のノズル(又はノズル列)から隣接する第2の印刷ヘッドの最初のノズル(又はノズル列)までの距離が使用される。この距離を、エッジ検出の際に発見された(明るい又は暗い)線の幅から決定することができる。
【0036】
CMYK画像が印刷される場合、有利には、上述の方法を色分解毎に、即ちC,M,Y及びKに対して別個に実施することができる。つまり、色分解毎にデータフィールド9が決定され、そのデータフィールド9から測定フィールド9’が決定される。異なる色分解に対する測定フィールドは同一のxy座標を有している必要はない。つまり、カメラ5は被印刷物1上の印刷画像の異なる個所にある画像11を記録することができる。その場合、エッジ検出もやはり色分解毎に別個に実施することができ、エッジ検出の結果、即ちモータによる位置調整のための制御値が、異なる色CMYKのための個々の印刷ヘッドに供給される。つまり、ただ一つ、又は複数、又はそれどころか全ての色分解若しくは所属の印刷ヘッドに対して補正を実施することができる。種々の色分解を記録するために、カメラは相応のカラーフィルタ、有利には自動的に切り換え可能なカラーフィルタを装備することができるか、又は相応の照明手段、有利には自動的に切り換え可能な照明手段を使用することができる。複数の色分解の内の一つについて、エッジ検出にとって有用なデータフィールド9をストライプ8内で決定することができない場合には、該当する二つの印刷ヘッド3a及び3bを制御から除外することができる。何故ならば、その場合には、該当する印刷ヘッドの位置ずれは線の形成による可視の障害を生じさせないことが予期されるからである。同一のことが一つの色分解において印刷ヘッドの全ての境界部について当てはまる場合には、その色分解全体を制御から除外することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 被印刷物、 2 印刷可能な領域、 2a,2b セクション、 3a,3b インクジェット印刷ヘッド、 4 アクチュエータ、 5 カメラ、 6 コンピュータ、 6’ データメモリ、 7 印刷画像(データ)、 8 ストライプ(データ)、 9 フィールド(データ)、 9’ 測定フィールド、 10 フィールド(データ)、 11 画像、 Y1 印刷ヘッドの境界部、 DY ストライプの幅、 x1 測定フィールドのx座標、 y1 測定フィールドのy座標、 dx x方向における測定フィールドの幅、 dy x方向における測定フィールドの幅
図1
図2
図3