(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
個別の自己比較およびピアベースの比較を組み合わせて用いて、車両のタイヤの健康状態を監視する発明にかかる実施形態
個別の自己比較は、車両のタイヤ間の分散を低減し、その際、個別の自己比較は、現時点におけるタイヤの状態とそのタイヤについて正常に動作していると考えられる状態とを比較するために用いられる様々な方法論を含むと考えられるだろう。以下でより明らかとなるように、タイヤについて正常に動作していると考えられることは、典型的には固定の膨張レベルと結び付けられず、例えば、タイヤがある圧力の範囲で膨張しても、まだ正常な動作状態であると考えられる。1つの実施形態において、例えば、個別の自己比較は、タイヤの圧力を、そのタイヤについて正常な動作状態で動作していると仮定されるタイヤ固有モデルの学習(training)期間に計算された平均圧力と比較する。
【0015】
ピアベースの比較は、それぞれのタイヤ内の分散を低減し、車両上の全てのタイヤがほど同じ動作条件であると仮定して、現時点におけるタイヤの状態を、同じ車両に搭載された他のタイヤの現時点における状態と比較するために用いられる様々な方法論を含むと考えられるだろう。このように、車両上の他のタイヤと比べて特定のタイヤ中に検知された差異は、例えば、車両に搭載された全てのタイヤまたはタイヤのサブセットの平均または中央値により示されるように、そのタイヤの不健康な状態またはそのタイヤに関する他の異常を示しているかもしれない。
【0016】
個別の自己比較とピアベースの比較とを組み合わせることによって、予め定められたいかなる「正常」な値よりも、現時点のタイヤの状況に基づいて学習されている間、車両に搭載された様々なタイヤが効果的に同じ「正常」な値に正常化されるだろう。そして、学習または監視中に、現在の動作条件に関わらず、例えば、周囲温度および/またはタイヤ温度、または車両がまだ止まっているか動作中であるかなどに関わらず、車両に搭載された他のタイヤとは異なる特定のタイヤを探し出すために、個別の自己比較およびピアベースの比較が用いられ、不健康な状態のタイヤが特定されるだろう。
【0017】
さらなる実施形態において、深刻なリークやタイヤ膨張のような異常がまた検知されるだろう。そして、例えば1または複数のタイヤの膨張が検知された場合、タイヤ固有モデルの再学習を開始するだろう。さらに、同じ実施形態において、タイヤの再膨張または修理にかかる時間を算出することができるように、予測アルゴリズムが、タイヤのリーク率を予測するために用いられるだろう。
【0018】
他の変形または修正は、当業者にとって明らかであるだろう。
【0019】
(ハードウェアおよびソフトウェア環境)
数字がいくつかの図に渡って同様の部分を示す図面を参照する。
図1は、複数の車両、例えばトラクタトレーラー14およびバス16を監視することが可能なタイヤ健康状態監視サービス12として実施される、タイヤ健康状態監視システム10の一例を示す。サービス12は、例えば、乗用車、自動車、トラック、バン、建設機器、農業機器、バスなどを含むいかなるタイプの車両に搭載されたタイヤをも監視することが可能であり、本発明は
図1に描かれた特定の車両に限定されないことが、理解されるであろう。
【0020】
サービス12は、車両14,16とネットワーク18、例えば無線事業者を介して無線で通信する。無線事業者は、サービス12を運営するものであってもよいし、または、完全に独立したものであってもよく、また、パブリックまたはプライベートまたは実際には私有のものであってもよい。サービス12は、有線および/または無線の通信メディアにより、ネットワーク18と接続される。
【0021】
サービス12は、車両14,16から収集された、タイヤ圧力監視システム(TPMS:Tire Pressure Management System)データ、例えば圧力、温度、車両識別子、タイヤ識別子、ホイール識別子、場所データ、および/またはタイムスタンプを記憶するために用いられるデータベース20と接続される。さらに、以下でより詳細に説明するように、サービス12は、例えば、サービス12のプロバイダーのエージェントまたはその権限を有する代表者、例えば認定ディーラーおよび/またはサービスセンターであるサービスエージェント22を含む様々なエンティティによりアクセスされる。さらに、車両のフリートの代わりに監視するのいくつかの実施形態では、フリートエージェント24がまた、サービス12へのアクセスを行うかもしれない。さらなるインタフェース、例えば車両の運転者やオーナー、管理者などのためのインタフェースが本発明のいくつかの実施形態で提供されてもよい。
【0022】
図2は、TPMSデータを収集し、通信し、処理するシステム10中の構成要素をより詳細に示す。例えば、車両14上で、車両のそれぞれのタイヤ/ホイールに複数のTPMSセンサ28が組み込まれており、車両に配置された受信機制御部(RCU:Receiver Control Unit)30にTPMSデータを伝送するようになっている。これらの構成要素の典型的な配置が、対応する円および逆三角形によって
図1中に図形として描かれており、最も近いTPMSセンサ28と通信するために、複数のRCU30が車両の異なる場所に配置されうることは理解されるだろう。
【0023】
それぞれのRCU30は、通常は、TPMSデータを、車両14上のTPMSデータのいくつかの処理を実行し、例えば圧力測定値、温度測定値、および/または低圧力および/または温度アラートのようなデータをオペレータに報告するダッシュボードディスプレイクラスタ32に出力する。クラスタ32は、オーディオおよび/またはビジュアルメーターまたはディスプレイに組み込まれ、他のボード上の電子コンポーネントと統合されうる、プログラム可能な電子またはコンピュータ装置であってよい。例えば、中央監視サービスが用いられていない、いくつかの実施形態では、ここに開示されるピアベースの予測アルゴリズムは、車両14内で、例えばクラスタ32または他のボード上の電子コンポーネント内で、ローカルに実行されるかもしれない。
【0024】
ここに描かれた実施形態では、中央監視を導入しており、車両14は、無線事業者18を通信してTPMSデータをサービス12に伝送するテレマティックス/GPS(Global Positioning System)ユニット34をまた含む。ユニット34は、統合されたGPS受信機によって生成された場所データや、センサ28によって収集された追加のデータを出力するように構成されてもよい。ユニット34によって伝送されるデータは、いくつかの実施形態では、前処理されていてもよいし、加工されていないデータであってもよいことは理解されるであろう。さらに、データが無線事業者18に伝送されるプロトコルは、それぞれの実施形態において異なっていてよい。さらに、いくつかの実施形態では、GPSセンシングが省略されてもよい。加えて、いくつかの実施形態では、双方向の通信がサポートされていてもよい。例えば、サービス12は、車両14の運転者にアラートやステータス情報を提供してもよく、いかなるアラート状況にも対処し、または車両サービスを調整するために、運転者が、例えば電子メッセージ、声、および/またはビデオ通信で、サービスエージェントと通信するメカニズムを提供してもよい。
【0025】
無線事業者18は、例えばFTP(File Transfer Protocol)サーバ38と接続することで、ユニット34からサービス12に提供されるTPMSおよび他のデータを提供する。サーバ38は、入力されるデータをデータベース20に記録するために、入力されるデータをデータベース管理システム40に渡す。このデータは、続いて、以下により詳細に説明される方法で、監視アプリケーション42により監視および処理される。
【0026】
次に
図3を参照すると、装置50中に、サービス12のハードウェアおよびソフトウェア実装例が描かれている。本発明の目的のために、装置50は、ほとんどのタイプのコンピュータ、コンピュータシステム、または他のプログラム可能な電子機器であってよく、以下単純にコンピュータとする。しかしながら、コンピュータ50は、例えば、クラスタまたは他の分散コンピューティングシステム中の、1または複数のネットワークコンピュータであってもよく、または、例えばデスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、ハンドヘルドコンピュータ、携帯電話、セットトップボックスなどの1つのコンピュータまたは他のプログラム可能な電子機器であってもよいことは、理解されるであろう。
【0027】
コンピュータ50は、通常、コンピュータ50のメインストレージや補助的なレベルのメモリ、例えばキャッシュメモリ、不揮発性またはバックアップメモリ(例えばプログラマブル、またはフラッシュメモリ)を含むランダムアクセスメモリ(RAM)として機能する、メモリ54と接続された少なくとも1つのマイクロプロセッサを含むCPU(Central Processing Unit)52を有する。加えて、メモリ54は、物理的にコンピュータ50の他の場所、例えばCPU52中のプロセッサ内のいかなるキャッシュメモリや、仮想メモリとして用いられる記憶容量などに位置するメモリストレージを含むと考えられてよい。メモリストレージは、例えば、マスストレージデバイス56またはコンピュータ50と接続される他のコンピュータ上に格納されてもよい。コンピュータ50はまた、通常、複数の入力を受信して、外部と情報を伝達するために、出力する。ユーザまたはオペレータとのインタフェースのために、コンピュータ50は、通常、1または複数のユーザ入力装置を組み込んだユーザインタフェース58(例えば、とりわけ、キーボード、マウス、トラックボール、ジョイスティック、タッチパッド、および/またはマイクロフォン)およびディスプレイ(例えば、とりわけ、CRT(Cathode Ray Tube)モニター、LCD(Liquid Crystal Display)ディスプレイパネル、および/またはスピーカ)を有する。そうでなければ、ユーザ入力は他のコンピュータまたはターミナルを介して受信されてもよい。
【0028】
追加のストレージのために、コンピュータ50は、1または複数のマスストレージデバイス56、例えば、とりわけ、フレキシブルディスクまたは他のリムーバブルディスクドライブ、ハードディスクドライブ、ダイレクトアクセスストレージデバイス(DASD)、光学ドライブ(例えば、CD(Compact Disc)ドライブ、DVD(Digital Versatile Disc)ドライブなど)および/またはテープドライブを有してもよい。さらに、コンピュータ50は、他のコンピュータや電子機器、例えば1または複数のクライアントコンピュータ64(例えば、エージェント22,24と接続するために)および1または複数のサーバ66(例えば、他の実施形態のサービス12を実装する)と情報の伝達ができるように、1または複数のネットワーク62(例えば、とりわけ、LAN(Local Area Network),WAN(Wide Area Network),無線ネットワーク、および/またはインターネット)とのインタフェース60を有してもよい。コンピュータ50は、本技術でよく知られているように、通常、適切な、CPU52とコンポーネント54,56,58、および60のそれぞれとの間の、アナログおよび/またはデジタルインタフェースを有することは、理解されるべきであろう。他のハードウェア環境は、本発明の文脈内で考えられる。
【0029】
コンピュータ50は、オペレーティングシステム68の制御の下動作し、様々なコンピュータソフトウェアアプリケーション、コンポーネント、プログラム、オブジェクト、モジュール、データ構造など、例えば、コールセンターアプリケーション70(例えば、モニタリングアプリケーション42が実行される)を実行、または、そうでなければ、利用する。さらに、様々なアプリケーション、コンポーネント、プログラム、オブジェクト、モジュールなどは、1つ、またはコンピュータ50とネットワーク62を介して接続された他のコンピュータ内の、例えば、コンピュータプログラムの機能を実現するために要求される処理がネットワーク上の複数のコンピュータに割り当てられる、分散またはクライアント−サーバコンピューティング環境内の複数のプロセッサ上で実行してもよい。
【0030】
一般に、ルーティンは、オペレーティングシステムの一部として実装されようが、特定のアプリケーション、コンポーネント、プログラム、オブジェクト、モジュール、または一連の処理、若しくは、それらの組み合わせとして実装されようとも、本発明の実施形態を実装するために実行され、ここでは「コンピュータプログラムコード」または単に「プログラムコード」と呼ばれる。プログラムコードは、通常、コンピュータ中の複数のメモリまたはストレージデバイス中で様々な時間に常駐する1または複数の命令を含んでおり、コンピュータ中の1または複数のプロセッサによって読み込まれ実行されるとき、コンピュータに、本発明の様々な態様を具現化するステップまたは要素を実行するのに必要なステップを実行させる。さらに、本発明は、以下に機能するコンピュータおよびコンピュータシステムとして説明されるが、当業者は、本発明の様々な実施形態は、様々な形態でプログラム製品として配布可能であり、本発明は、実際に配布を実行するために用いられる、特定のタイプのコンピュータが読取り可能な媒体に関わらず、同様に適用することが可能であることを理解するであろう。
【0031】
そのようなコンピュータ可読媒体は、コンピュータ可読記憶媒体および通信媒体を含むことができる。コンピュータ可読記憶媒体は、本質的に非一時的なものであり、揮発性および非揮発性のもの、リムーバブルおよび非リムーバブルな媒体を含むことができる。また、コンピュータ可読記憶媒体は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、または他のデータのような情報の記憶のための任意の方法または技術において実装される。コンピュータ可読記憶媒体は、さらに、RAM(Random Access Memory),ROM(Read Only Memory),EPROM(Erasable Programmable ROM),EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM),フラッシュメモリ、または他の固体記憶技術、CD−ROM(Compact Disc−ROM)、DVD(Digital Versatile Disk)、または他の光学ストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ、又は他の磁気ストレージデバイス、又は、所望の情報を記憶し、コンピュータ50によりアクセスされるいかなる他の媒体もまた含む。通信媒体は、コンピュータ可読命令、データ構造、または他のプログラムモジュールを実現するだろう。例えば、限定はしないが、通信媒体は、有線ネットワークまたは直接有線接続などの有線媒体と、音響、RF、赤外線および他の無線媒体などの無線媒体を含むことができる。上記の組み合わせもまた、コンピュータ可読媒体の範囲内に含まれるであろう。
【0032】
以下に説明する様々なプログラムコードは、本発明の特定の実施形態において実装されるアプリケーションに基づいて識別することができる。しかしながら、以下のいずれかの特定のプログラム用語は、単に便宜上使用されることが理解されるべきであり、かくして、本発明は、そのような用語によって識別され、および/または暗に示される特定の用途に使用するように限定されるべきではない。さらに、通常、コンピュータプログラムがルーティン、プログラム、方法、モジュール、オブジェクトなどに編成可能な無限数の方法も、プログラムの機能が、通常コンピュータ内に常駐する様々なソフトウェアレイヤ(例えば、オペレーティングシステム、ライブラリ、API、アプリケーション、アプレット等)間に割り当てられることが可能な様々な方法も与えられる。本発明は、ここで説明する特定の機構やプログラム機能の割り当てに限定されないことは理解されるべきであろう。
【0033】
当業者は、
図1−3に描かれた例示的な環境は、本発明を限定することを意図していないことを認識するであろう。実際、当業者は、他の代替的なハードウェアおよび/またはソフトウェア環境が本発明の範囲から逸脱しない限り用いられてよいことを理解するだろう。
【0034】
(予測ピアベースのタイヤ健康状態の監視)
本発明の実施形態は、予測ピアベースのタイヤ健康状態の監視を用いて、特定の車両に搭載された複数のタイヤの健康状態を監視する。特に、例えばトラックのような商用の車両の1または複数のフリートからタイヤの健康状態を監視するのに適した、集中型のタイヤ健康状態監視サービスのアプリケーションにおける、予測ピアベースのタイヤ健康状態の監視のそのような実装の1つが、
図4のプロセス100によって描かれている。
【0035】
プロセス100は、初期化102、データ取得104、データ処理106、健康状態評価108、異常検知および診断110、およびリーク予測112の6つの主なステップを含んでおり、これらのステップのそれぞれは、以下により詳細に説明される。ステップ104−112およびいくつかの例において、ステップ102において実行される動作の全てまたは一部は、通常コンピュータ内、例えば
図2−3の監視アプリケーション42に含まれるような、ソフトウェアおよび/またはハードウェアを介して実装される。いくつかの実施形態において、これらのステップの機能の全てまたは一部は、オンボードコンピュータまたは車両上に配置されたプログラム可能な電子機器中で実装されてもよい。または当業者によって理解されるであろう他の方法は、本発明の開示の利点を有する。
【0036】
初期化ステップ102は、車両上の全タイヤはリークがないことを保証するために、タイヤ健康状態監視システムが初めてタイヤに適用される場合に、実行される。以下でより明らかになるように、システムは、通常、タイヤが旅行な状態であるときに収集されたデータにより学習されることを必要とし、タイヤにリークが生じている場合には、この条件に違反して、モデルパラメータは質が低下したものとなり、結果としてモデルの精度が低下するだろう。このため、ステップ102において、全てのタイヤが良好な状態であることを確認するために、全てのタイヤが良好であるか否かに基づいて、ブロック114中でタイヤチェックが実行される。ブロック116は、不良タイヤを交換または修正するタイヤメンテナンス動作を開始するためにブロック118に進み、そして初期タイヤチェックを再試行するか、または、監視を開始するためにステップ104に進む。タイヤチェックおよび/またはタイヤメンテナンス動作は、本発明の様々な実施形態において、手作業で、および/または自動で実行されてよい。例えば、一実施形態において、タイヤチェックは、車両がリークを試験するために停止していることが分かっている期間において、複数のタイヤについてTPMSデータを取得することによって実行されてよい。
【0037】
システムが初期化され、車両の全てのタイヤが良好であることが確認されると、車両についての監視は、TPMSデータが定期的にタイヤ健康状態監視サービスに送信されるように、車両が動作しているときのみ、または、その代わりに、車両の動作状態に関わらず全ての時間において確立されてもよい。
図1のボックス120は、タイヤ監視サービスにより受信されたTPMSデータのそれぞれの新たなパッケージに応じて実行される動作を描いている。
【0038】
ステップ104において、例えば、
図2に関連して上述された、オンボードコンポーネントにより収集および送信された、TPMSデータのパッケージは、タイヤ健康状態監視サービスによって取得することができる。それぞれのパッケージは、例えば、データを取得したタイムスタンプおよびGPA位置と共に、1つの車両からの全てのタイヤの現時点における温度および圧力を含むことができる。ロードトラクタトレーラーについて言えば、例えば、パッケージは、全18タイヤについての圧力および温度を含むことができる。
【0039】
続いて、ステップ106において、収集されたデータは、前処理される。収集されたデータは、しばしば、正常な値の範囲内ではなく、コンテキスト値に合致しない、予期しない異常値を含むことがあることがわかった。これらの異常値は、取り除かれなければ、後述のモデル精度を低下させる可能性があり、そのため、ステップ106は、全ての受信データを前処理して、データをきれいにする。次に、例えば物理モデルを介して、温度について補正する形の追加的な前処理が実行されてもよい。一実施形態において、例えば、収集されたデータの前処理は、補正された圧力変数、温度効果について補正したタイヤ圧力の代表値を生成するために用いられてもよい。
【0040】
次に、ブロック108および110により描かれるように、収集および前処理されたデータを用いて、健康評価と異常検知および診断動作が実行される。ブロック108において、それぞれの健康評価の繰り返しは、初めにシステムモードを確認して、モデル学習処理を実行するか否かを決定する(ブロック122)。特に、本発明にかかる実施形態は、車両固有のタイヤ健康状態評価モデルを用いて、特定の車両のタイヤを監視し、モデルは、通常、動作前に学習されていなければならない。したがって、モデルは、テストモードと動作モードとを交互に行うことができる。
【0041】
このため、もし学習モードであることがブロック122において検知されると、ブロック124に進んで、最新の受信データに従った履歴データから生成したモデルパラメータを更新することによって、タイヤ健康状態評価モデル126を学習させる。動作モードまたはテストモードが検知されると、ブロック122の代わりに、健康値生成ブロック128に遷移して、健康状態評価工程108の出力として、それぞれのタイヤについて健康値HVが生成される。いくつかの動作、例えば、個々の自己タイヤ比較、ピアベースの比較などがブロック128で実行され、より正確な健康値が生成される。これらの動作は、以下により詳細に説明される。
【0042】
異常検知および診断ステップ110は、健康評価ステップ108から健康値を受信して、ブロック130において、異常が検知されたか否かが特定される。描かれた実施形態において、タイヤ膨張のようなシステムの異常は、自動検知可能なように設計される。そのような異常が検知された場合、ブロック132に進んで、全ての健康値が「正常」、すなわち、リークがなく、十分に膨張されたタイヤであることを示すと考えられる範囲内であるか否かが特定される。もしそうでないならば、ブロック134に進んで、潜在的に緩やかなリーク状態を示す。健康値が正常である場合、ステップ104に戻って、処理待ちTPMSデータの追加パッケージを処理する。
【0043】
ブロック130に戻ると、システム異常が検知される度に、異常は、異なる分離規則に従って、様々なグループに分類される。ブロック136は、例えば、異常が、深刻なリークよりむしろ膨張によって引き起こされているか否かを判定する。もしそうであるならば、ブロック138に進んで、関連する健康評価モデルは、膨張後に受信したデータに基づいて再学習されるように学習モードを選択する。代わりに、深刻なリークが異常の原因である場合、ブロック140に進んで、緊急イベントを生成し、サービスプロバイダエージェント、車両の運転者、フリートエージェント、および/または他の利害関係者にに知らせる。
【0044】
ブロック134に戻ると、ステップ110において緩やかなリークが検知された場合、ステップ112に進んで、予測動作を開始し、モデルの履歴データに基づいて、タイヤがもはや動作上の使用に適していない閾値に達するまで、タイヤが動作することが可能な時間を予測する。予測動作のさらなる詳細は、以下に説明されるだろう。
【0045】
また、ブロック142−144に描かれたように、データの傾向に基づいて、以前リークていると判断されたタイヤが修理されたか場合、各繰り返しのブロック142において、リカバリチェックが実行される。もしそうであるならば、ブロック144に進んで、そのタイヤについて、モードを学習モードに設定する。そうでないならば、ブロック144は省略される。
【0046】
前述のステップについてさらに詳細に述べる前に、本発明に係る予測ピアベースのタイヤ健康状態監視の実行について、複数の仮定がなされている。まず1つ目に、タイヤが動作している間、タイヤ空洞の容積が大きく変化せず、典型的には、無視できる程度であると仮定する。したがって、空洞の容積は、定数として扱うことができる。
【0047】
2つ目に、データは、良好な状態にある同じタイヤから取得されるデータである限り、いつでも同じようにふるまうと仮定することができる。データ駆動型の統計モデルは、通常、健康状態が良好であるときにシステムから取得されたデータにより学習され、将来のデータをテストして、新たなデータが同じ分布に従っているか否かを判断して、もしそうでなければ、新たなデータは、システムの健康状態が悪いことを示していると考えられる。したがって、この仮定に合致しない場合、テストデータのいくつかは、他の分布にしたがっており、モデルは、自動的にネガティブな健康状態を示していると取り扱われる。
【0048】
3つ目に、膨張させたり修理したりといったタイヤメンテナンスの後、タイヤ圧力は、正常な範囲に維持されると仮定することができる。また、初めのシステム初期化の前に、異常なリーク(
図4のステップ102においてテストされた状態)を生じているタイヤはないと仮定する。いくつかの実施形態において、そのような状況は、単に圧力データに閾値を設定することによって、検知することができる。
【0049】
4つめに、トラクタトレーラーのような1つの車両からの全てのタイヤは、路面粗さ、温度環境、気圧環境、通常の緩やかなリーク率など、同様の動作条件を共有していると仮定することができる。この仮定は、以下でより詳細に説明するように、ピアベースの健康状態の比較の適用を容易にする。
【0050】
5つ目に、正常に動作している間、1つの車両からのタイヤの半数以上が良好な状態であると仮定することができ、すなわち、任意の時点でリークを有するタイヤは半数未満である。この仮定は、全てのタイヤから、全ての他の値が比較される公証値(nominal value)となる最も正常な値を選択することを容易にする。
【0051】
6つ目に、1つの車両からの2つのタイヤが同時に深刻なリークを生じる可能性は、非常に低いと仮定することができる。
【0052】
図4に描かれた複数のステップに関するさらなる詳細が、上述の仮定を用いて以下に提供される。
【0053】
(データ処理)
図5の説明に戻る。この図は、データ処理ステップ106において実行されるステップをさらに詳細に示す。データ収集方法は、しばしば不完全であり、範囲外の値や不可能なデータの組み合わせや、適切なデータクリーニング処理なしの分析データなどの問題を生じ、誤った結果を引き起こす可能性があることが見出された。本発明にかかる実施形態は、しかしながら、ブロック150において、まず、入ってくるデータを前処理して、範囲外の異常値を除去し、2番目に、ブロック152において、温度効果について圧力データを補正し、そして3番目に、ブロック154において、不可能な組み合わせの異常値を取り除く。
【0054】
異常値の観点から、加工していないTPMSデータから観察することができる異常値は、主に次の2つのタイプがあることが見出された。1つ目の異常タイプは、正常な範囲から外れた値を有するデータポイントと考えられる、範囲外の値である。一実施形態において、例えば、2つの連続するデータポイント間の差異を計算することができ、差分値が所定の閾値を超えている場合、このデータポイントを取り除くことができる。
図6は、例えば、155で示される圧力は160psiであり、正常な範囲(例えば、典型的なトラック用タイヤについては、正常範囲は90−130psiかもしれない)と考えられる範囲をはるかに超えており、データセットから除去するのに適している。
【0055】
2つ目のタイプの異常値は、「不可能なデータの組み合わせ」として定義され、全ての変数がそれ自身はそれぞれ正常な範囲内であるが、データパッケージまたは全ての変数の組み合わせとしては、データ値が無理な値である。例えば、異常な圧力および温度の値が、加工していないデータ中に存在するが、正常な圧力および温度の範囲内にあり、これら2つの変数の組み合わせは、いくつかの実施形態では、不可能な組み合わせの異常値を検知するために共に値を評価するために用いることができる。
【0056】
描かれた実施形態において、特に、補正された圧力が計算され、一定の温度に圧力測定値が標準化される。
【0057】
伝統的に、それはタイヤが「コールド」である場合、すなわち、しばらくの間使用されていなかったタイヤの圧力測定値を用いることが推奨されている。数分でもタイヤが動作されると、内部タイヤ温度は、典型的には、圧力に対する測定可能な影響を与えるポイントまで増加する。しかしながら、TPMSセンサは、しばしばタイヤが回転を開始した後に測定値を取得し、TPMSセンサから収集されたほとんど全ての圧力データは、典型的には、温度の影響を含んでいる。さらに、温度および圧力が一緒にプロットされる場合、高い線形相関、例えば約0.96の相関係数、がしばしば観測される。
【0058】
理想的な気体法則PV=nRTが、圧力を温度について補正するために用いられる。タイヤが固定された、閉じ込められた体積であると仮定した場合、収縮に起因したタイヤサイズの変化は無視できると考えられ、理想的な気体法則は、次のように書き換えられる。
【0060】
数式の右辺にある値の全ては定数であり、この場合圧力は、温度に比例することが示されている。このため、2つの新たな値、補正された圧力Cおよび公証温度T0を導入することによって、次の関係が成立する。
【0062】
公証温度T0として、摂氏25度のような所定の定数を選択することによって、TPMSシステムから収集された圧力および温度ペアのそれぞれについて、固有の対応する補正された圧力が、摂氏25度の温度と対応して生成されてもよい。この変換を行うことで、理想的に、温度の影響が全く補正された圧力から除去されて、補正された圧力は、タイヤがリークを全く生じていない場合、平坦な線となる。しかしながら、補正された圧力は、まだ、TPMSセンサがリム上に取り付けられた場所などの環境要素に起因する揺らぎを有すると考えられる。実際にはキャビティはホイール温度と近く、実際のキャビティ温度とホイール温度に近いキャビティとの間には、差異が存在するけれども、測定された温度は、キャビティ温度として取り扱われる。さらに、この差異は、周囲温度の影響をうけるかもしれない。このようにいくつかの差異が依然として補正された圧力値に予期されるかもしれない。
【0063】
温度補正をした後、不可能な組み合わせの異常値がより容易に識別することができることが見出された。
図7Aおよび7Bは、例えば、それぞれ圧力およびタイヤ用圧力補正値を示す。
図7Aの157に示すように、異常値圧力は、それ自体正常な値の範囲を超えていないが、
図7Bの159に示されるように、圧力値が温度に対して補正された場合、その結果である補正された圧力値は、より容易に異常値として識別され、したがって除外することができる。
【0064】
(健康評価)
次に、
図4の説明に戻る。描かれた実施形態における健康評価ステップ108は、車両全体の健康状態を推定するために、タイヤの健康状態を示す1つの値または値の集合が生成されることが望ましい。車両は、典型的には、ほとんどの時点において規則的な健康状態を維持しているので、それはしばしばそうでなければ、診断および予測の手順は、実質的な計算コストを負う可能性があるため、障害の頻度を最小限にすることが望ましい。したがって、新たな潜在的な障害の初期の兆候が検知されるまで、故障診断および予測とは別の予備段階として、健康評価を実行することによって、そのような故障診断および予測を延期することができる。しかしながら、他の実施形態では、故障診断および予測がより頻繁に行われてもよい。
【0065】
健康評価モデル126は、上述したように、学習モードとテストモードで動作する。学習は、典型的には、健康な状態のデータを用いるため、システムの基準(baseline)が表現される。そして、テストの間、新たなデータは、学習された基準と比較される。テストされたサンプルが基準と似ている場合、システムは良好な健康状態と結論づけ、そうでなければ、システムは状態が許容されるものではなく、故障診断および予測を含むいくつかのメンテナンスアクションが開始されてよい。
【0066】
描かれた実施形態において、健康評価は、個別のタイヤの自己比較と、ピアベースの比較の両方が組み込まれている。
図8中に示すように、例えば、
図4の健康値生成ステップ128は、車両に搭載されたそれぞれのタイヤについて、個別の自己比較を用いて、個別の健康値(IHV)を生成するブロック160を含むことができる。次に、ピアベースの比較がブロック162−168で実行される。用いられるアルゴリズムによって、全てのタイヤまたはタイヤのサブセットについての平均または中央値が、ブロック162,164、および166のうちの1つで計算される。そして、ブロック168において、ブロック162,164、または166において計算された平均または中央値から、典型的には、それぞれのタイヤについて計算されたIHVから、計算された平均または中央値を差し引くことにより、ピアベースの健康値(PHV:ピア健康値)が車両に搭載されたそれぞれのタイヤについて生成される。
【0067】
以下でより明らかになるように、個別のタイヤの自己比較は、1つの車両に搭載された異なるタイヤ間の差異を最小化または排除するために用いることができ、ピアベースの比較は、1つのタイヤからのデータ内の変動を平滑化するために用いることができる。さらに、3つのブロック162−166が
図8に描かれており、多くの実施形態において、ピアベースの比較アルゴリズムは、PHVを求めるときに、1つのブロックだけを用いることが理解されるであろう。
【0068】
(健康評価−個別のタイヤ自己比較)
個別のタイヤ自己比較の観点から、タイヤメンテナンスが、例えば従来の工作機械のメンテナンスプロセスと比較された場合、両プロセスの初期状態は、類似しており、すなわち、タイヤは適切に膨張され、工具は新たに変更されている。しかしながら、タイヤが同じ圧力レベルである限り、タイヤはまだ良好な健康状態であるとみなされる一方、工作機械については、使用が開始された初日から健康状態が低下を開始する。タイヤの健康状態は、タイヤがリークを開始した後でのみ、低下を開始する。タイヤの圧力が、過剰摩耗を示す所定のレベルに達した工作機械と類似した所定のレベルに達した場合、部品のメンテナンスが始動されるべきである。タイヤについては、リークは修理されるであろう。一方工作機械については、工具を交換する必要があるだろう。
【0069】
しかしながら、重要な相違点が、タイヤのメンテナンスと工作機械のメンテナンスとの間に存在する。メンテナンス後のタイヤは通常同様に膨張されるが必ずしも同じ圧力レベルでないのに対して、新たに導入された工具に関しては、全ての工具は同じ仕様に従うことが期待されているので、通常全て同じ健康状態である。タイヤは異なるレベルに膨張されるかもしれないけれども、それらは全てまだ同じ「良好な」健康状態、すなわち、それらはリークが生じていないと考えられる。このように、図示した実施形態では、車両上の異なるタイヤ間における膨張レベルの不一致は、望ましくは、メンテナンス後に全てのタイヤが同じ健康な初期状態となることを保証するために、補正される。そうでなければ、このような不一致は、タイヤの本当の健康状態を分からなくし、劣化状態を早期に発見することを阻む。
【0070】
このため、図示された実施形態では、特定のタイヤの現時点におけるパフォーマンスを、その「正常な」パフォーマンス、すなわち、タイヤのモデルが学習された状態と比較し、個別のタイヤ間の相違を低減または取り除くために、個別のタイヤ自己比較が用いられる。一実施形態において、1つの車両上の全てのタイヤからの補正された圧力を同じレベルに集中させるために、例えば、距離ベースの評価(DBA:Distance−Based Assesment)が用いられるかもしれない。
【0071】
DBAモデルを用いて、それぞれのタイヤからの第1の複数のデータサンプルは、それぞれのタイヤについてモデルの基準を「学習」するために用いられる。各タイヤからのデータサンプルの平均値であるデータのセンターは、TPMSシステムからの任意のデータ取得誤差をキャンセルして通常の動作基準を確立するために計算される。後続のデータサンプルは、この平均値と比較されて、「距離」またはデータサンプルと平均値との間の差異が生成される。ここで個別の健康値(IHV)と称されるこの距離は、個々のタイヤにおける変化を特定するために使用される。一実施形態において、例えば、各タイヤについての平均圧力値が、学習の間求められ、IHVは、それぞれのタイヤについて、補正された圧力と平均値との間の差異に基づいて、算出されてもよい。
【0072】
図9A−9Bは、例えば、1つの車両上の4つのタイヤについてのデータポイントの集合例について、DBAのパフォーマンスを描いている。
図9Aのグラフは、4つのタイヤについて計算された補正後の圧力を示し、
図9Bは、同じ4つのタイヤのDBAモデルから生成されたようなIHVを示す。この例において、IHVに対するフィッシャーの基準値は0.1374であり、これは、補正された圧力のみに対する対応する値0.007よりも実質的に高い。フィッシャーの基準は、データセットに2以上のクラスが存在する場合に、複数の変数の分離を評価するインフォマティクステストである。2つのクラスのデータセットについて、フィッシャーの基準は、以下のように与えられる。
【0074】
ここでm1およびm2は、それぞれ2つのクラスの平均であり、s1およびs2は、2つのグループの標準偏差である。分母は、各グループ内の分散の総和を表しており、分離は、2つのグループ間の二乗距離を表している。そのため、より大きなフィッシャーの基準値は、より高い分離の可能性を示している。
【0075】
他のモデルおよび個別の自己比較技術が、本発明の他の実施形態において用いられてもよいことは、理解されるであろう。例えば、用いられてもよい2つの代替的な自己比較技術は、ロジスティック回帰および自己組織化マップを含む。DBAと同様に、できるだけ早くテストを開始して可能なリークを検知するために、少なくとも2つのサンプルの最小値の基礎学習が求められ、その後、モデルパラメータは、より多くのデータサンプルが受信されるにつれて、更新され続ける。いくつかの実施形態において、テストおよび学習が平行して実行されてもよく、新たなデータパッケージが受信される毎に、モデルは十分なデータサンプルが収集されて、十分にモデルが学習されるまで更新されることができ、学習が継続されなくなった時点においても、テストは続けられる。学習段階におけるデータサンプルが、全てのタイヤからの一般的な健康規準を形成することができる程度に広く正常なパフォーマンス範囲をカバーすることができるように、例えば、学習データおよびテストパフォーマンスのサイズを利用して、学習サンプルの数は選ばれる。1つのモデルは、通常、各タイヤから構築され、すなわち、18のタイヤを有するトラックについては、18のモデルが構築される。
【0076】
ロジスティック回帰(LR:Logistic Regression)は、しばしばロジスティックモデルまたはロジットモデルとして知られ、通常、0と1の間の値に多次元データをマッピングすることによって、離散イベントの発生確率を予測するために用いられる二項回帰(Binominal Regression)である。モデルによって用いられるデータは、性別、プレゼンス、年などのように、数字で表したものであっても、分類的に表したものであってもよい。タイヤ健康状態監視の目的のために、それは、管理された(supervised)方法として、定量的に現時点におけるシステムの健康状態を評価するために用いられてよい。
【0077】
LRは、以下のロジスティック関数に基づいている。
【0079】
p(z) =
ここで、zは、以下のように定義される。
【0081】
そして、β0は、インターセプトであり、β1、β2...は、回帰係数であり、x1、x2...は、独立変数である。
【0082】
これらの数式から、LRの重要な利点は、全ての独立変数の線形結合が、負の無限大から正の無限大の値であるのに対して、出力が0から1の範囲の値となる点である。
【0083】
上記の方程式を書き直すことによって、下記の関係が見出される。
【0085】
実際に、LRは、通常、許容される状態と許容できない状態の両方のデータが必要とされる学習段階の間、管理された統計モデルとして用いられる。サンプル入力{x1、x2、・・・}のグループは、両方のシステム状態から見出され、対応する確率{p(x)}は、モデルのニーズ(例えば、0.95は、許容される状態に対して用いることができ、0.05は、許容できない状態について用いられる)に従って特定される。そして、モデルパラメータβ0,β1,β2,・・・は、反復ループによって、観察されたデータの確率を最大化する、最良のパラメータの組み合わせを探る、最尤推定(MLE:Maximum Likelihood Estimation)により取得することができる。
【0086】
モデルパラメータが学習された後、テストデータは、現時点におけるシステムの個別健康値(IHV)を算出するモデルに適合することができる。LRモデルの学習要求に合致するために、LRモデルは、許容できる状態と許容できない状態の両方のデータによって学習されることが可能である。タイヤ膨張について、0psiは、タイヤが達する最低の圧力値であり、悪い状態からのデータとして取得することができる。このため、0psi以外のいくつかの値は、許容できない状態について用いられるが、いくつかの補正された圧力サンプルは、許容できる状態を示すために用いることができる。2つの対応するHV0.95および0.05は、それぞれ各健康状態について取得することができる。学習後、LRからの全ての出力IHVは、0から1の間の値となる。
【0087】
自己組織化マップ(SOM:Self Organizing Map)は、通常、教師無し学習モデルとみなされるニューラルネットワークモデルの一種であり、データのトポロジ構造によってのみ学習されているため、データ分類情報が不要である。SOMは、近傍関数を導入することによりトポロジ構造を保持し、それは通常、データ次元数を小さな数字、通常2に減少させるため、良好なデータ可視化ツールである。
【0088】
SOMは、それぞれが重みベクトルと相関しているニューロンのノードからなる。初めに全てのノードがランダムに地図上に配置され、その後、反復学習工程において、それらは、以下に示す学習ルールに基づいて更新される。
−サンプルベクトルが入力としてマップに与えられた場合、このサンプルベクトルと全てのノードとの間の距離が計算され、最短距離のノードが選択されて、BMU(Best Matching Unit)とされる。
−トポロジ形状によって予め定められた、BMUの隣接ノードは、新たなサンプルベクトルに従って全て更新され、学習率は、BMUおよびサンプルベクトル間の距離に対して個別の値であり、単調に減少している。
−学習段階の終わりにおいて、ノードは、グループにクラスター化し、各グループは、データ型の1つのクラスを表している。
【0089】
自己組織化マップ−平均量以下誤差(SOM−MQE)も、健康評価に用いられる拡張SOMモデルである。半教師有学習方法SOM−MQEは、モデル学習の利便性の観点から、利点を有するため、タイヤの健康評価に用いるために、故障データが通常より貴重で収集が困難であるのに対して、データを健康な状態において集めることは比較的容易である。現時点のシステムについて示される健康が悪化するにつれて、さらに多くのテストサンプルが基準から取得される。
【0090】
マップは、まず、正常な動作データで学習され、そして、テストサンプルとそのBMUの間の距離として定義されるMQEが計算される。BMU識別処理が、テストサンプルに対する最小ユークリッド距離を有する学習されたノードを探すことを目的としたサーチプロセスであるため、空間に従い、学習データによりカバーされないサンプルでさえ、BMUを見つけて、SOM−MQEモデルの健康識別子を取得する、MQEを計算することができる。
【0091】
LRモデルと同様に、SOM−MQEモデルは、許容できる状態から収集されたと仮定される、最初のサンプルによって学習することができる。SOM−MQEモデルからの通常の出力は、正の数であるMQE距離である。しかしながら、結果をより直感的にするために、より良好にリークを表すために、全てのMQE距離を負の数にすることが望ましい場合がある。
【0092】
追加的なモデルおよび方法、例えば統計的パターン認識、ガウス混合モデル、ニューラルネットワークなどが、IHV生成するために用いられるだろう。しかしながら、本発明は、ここで開示する特定のモデルおよび方法に限定されない。
【0093】
(健康評価−ピアベースの比較)
前述の処理ステップは、多くの実施形態において、1つの車両上のタイヤ間の分散の多くを最小化または低減することが分かっているため、多くの実施形態において、ピアベースの比較をさらに用いて、各タイヤ内に生じうる変動に対処することが望ましい。
【0094】
再び、従来の工作機械の監視に関する工作機械のメンテナンスと比較して参照すると、よりよく元のデータセットを表すためと、データセットのサイズを低減するための両方のために用いられる特徴は、通常、連続稼働(runs)(工作機械が全ての反復可能な移動を終了するまでの期間)に基づいて抽出される。工作機械は、同じ一連の動きを何度も何度も繰り返しているため、唯一の形態(regime)を有していると仮定すると、上記の特徴は、工作機械が良好な状態を保持している場合、一定のままである。一方、タイヤは、固定の動作計画を有しておらず、例えば、車両は毎日異なる経路を走行する。さらに、車両が毎日同じ経路を走行する場合でさえ、環境温度のような環境条件は、刻々と変化する。したがって、分析の基準として使用するための固定の動作サイクルを定義することがはるかに困難である。別の言い方をすれば、タイヤの動作は、環境の不確実性に大幅に影響を受ける動的プロセスであることが分かる。
【0095】
これらの環境の不確実性の結果、温度補正の後でさえ、タイヤにリークが生じていないことが期待される、補正された圧力の理論上の平坦ラインは、実際には見られない。代わりに、多くの変動に平坦な傾向が通常みられる。変動は、環境温度、タイヤ負荷、速度、路面粗さ、環境気圧などの変化のような多くの観点から引き起こされる可能性がある。さらに、個別のタイヤ自己比較を通して、変動の影響は、例えば
図10に示されるように、補正圧力からIHVに受け継がれる。
【0096】
システム監視の観点から、変動は、障害検知および予測の両方の精度を低下させる。例えば、障害検知について、比較的大きな変化を有する傾向がみられるため、閾値の設定は、感度と誤警報との間の大きなトレードオフに直面している。
【0097】
高いピークは、ほとんど温度ビルドアップにより引き起こされる一方、タイヤ温度が低いときに車両が駐車されると、通常、IHVデータ中に谷が形成されることが知られている。温度補正の後でさえも、補正圧力は依然としてある程度、例えば環境温度に起因する温度の影響を受けていることが分かる。環境温度は、追加的なモデリングおよび/または補正のための基準を形成することができるが、多くの実施形態において、通常、多くの従来のTPMSシステムにより環境温度が提供されていないことを考えると、環境温度を監視することを回避することが望ましい。
【0098】
環境温度は、いくつかの実施形態で用いられるが、図示された実施形態においてデータ起因のピアベースの比較は、環境温度に起因する変動の影響および他の環境的な影響を低減するために用いられている。
【0099】
図示された実施形態におけるピアベースの比較は、車両上の全てのタイヤが、環境条件、道路条件、および通常のタイヤの緩やかなリークを含む、類似した動作条件を共有しているという上記の仮定に基づいている。1つの車両からの全てのタイヤは、類似した一般的なパフォーマンスを共有しているため、いくつかの実施形態において、全てのタイヤからのIHVの平均値が、個別のタイヤと平均値との差異がリーク状態を示すことができるように、
図8のブロック162に示されるように、計算されてもよい。
【0100】
しかしながら、全てのタイヤの平均は、全てのタイヤが健康な状態であるときに十分かもしれないが、リークしたタイヤが含まれている場合、特に、リークが深刻である場合、平均値はリークしたタイヤの状態によりバイアスがかかった値となることが分かっており、一般的な健康なタイヤの状態を十分に示すことができない。
図11は、例えば、データの冒頭の半分の平均値(データポイント648以前)がリークを生じているタイヤ1によりひどく偏った状態である、データセットの一例を示している。一方、タイヤ1は、ポイント648において修理され、4つのタイヤからのIHVは、同じレベルに集中した状態に戻り、より平均値近辺を追うようになる。
【0101】
他の実施形態において、追加のルールが、リークが生じていないと判定されたタイヤの平均値を算出することを試みることによって、リークを生じているタイヤによる潜在的なバイアスに対処するために統合されてもよい。したがって、動作している間に、潜在的なリークがいずれかのタイヤに検知された場合、タイヤは、平均値が計算されるとき、
図8のブロック164に描かれたように、このリークが生じたタイヤからのデータは含まれず、平均値はタイヤの部分集合に基づいている。リークしたタイヤに起因するバイアスに、少なくとも部分的に対処するルールの適用が見出された。しかしながら、リークの開始時において、圧力低下が最初は小さいかもしれないが、圧力低下が平均値に影響えを与えるかもしれないため、いくつかの例においては、バイアスの問題が依然として存在するかもしれない。例えば、
図11に描かれた同様のケースにおいて、平均値は、リークがデータポイント260において検知されるまで、4つのタイヤ全てに基づいて計算され得る。
図12に示されるように、例えば、リークを検知した後に、平均値が、全ての良好なタイヤの一般的なパフォーマンスをよく示すことを観察することができる。しかしながら、検知の前には、タイヤ1は既にリークしており、平均値への小さなバイアスが、分解プロットからよりよく見ることができる。
【0102】
したがって、さらに他の実施形態では、リークしたタイヤの潜在的なバイアスに対処するために、追加のルールを統合することが望ましい場合がある。具体的には、上述の通り、通常の動作の間、車両からの半分以上のタイヤは良好な状態であるとする他の仮定をすることができる。別の言い方をすると、10個のタイヤのうち少なくとも6個は、任意の時点においてリークしていないと仮定することができ、そして、車両から検知可能なリークを有さないタイヤの半分以上は、良好な状態であると仮定することができる。例えば、トラクタは10個のタイヤを有し、そのうち2個のタイヤは検知可能なリークを有している。この場合、追加のルールによれば、検知可能なリークを有していない8個のタイヤのうちの少なくとも5個は、良好な状態であると仮定することができる。
【0103】
ステートメントが上手く受け入れられた場合、
図8のブロック166により描かれるように、車両上のタイヤの全てまたはサブセットの中央値は、一般的なタイヤ健康なタイヤのパフォーマンスを示すように用いられる。さらに、中央値の計算は、車両のタイヤのうち半分以上は良好な状態であるという上述の仮定に従った良好なタイヤからの値を参照する、全ての値のちょうど中央にある1または2の値だけを必要とするだろう。
図13は、例えば、4つのタイヤのIHVと、一般的に健康なタイヤのパフォーマンスを全ての良好なタイヤの、動的な動作条件およびいくつかリークしたタイヤを有する場合の状態を示す中央値を描く。注目すべきことに、いくつかの実施形態では、既知のまたは予測されるリークしたタイヤを中央値の計算から除外することが望ましいかもしれないが、多くの実施形態では、これらのリークしたタイヤを中央値の計算に含めても、結果としての中央値にはっきりとした変化は見られないので、リークしたタイヤを計算から除外しようとすることは、望ましくないかもしれない。
【0104】
したがって、いくつかの実施形態では、一部のタイヤから計算された中央値に基づく一般的な健康なタイヤのパフォーマンスは、動的な動作条件に起因する変動を低減するために、全ての個別のタイヤパフォーマンス、すなわちIHVから取り除かれるかもしれない。ピアベースの比較が行われた後に得られたこの値は、
図14A−14Bに描かれたようにここでピアベースの健康値(PHV:Peer−based Health Value)と称され、ここで(
図14B)説明される方法により計算されたPHV値は、同じタイヤについての対応するIHV値(
図14A)よりも比較的小さい分散を有することが観察されるだろう。そして、温度効果を含む環境要素がデータに与える影響は大幅に小さい。
【0105】
車両のタイヤの一部を用いて平均値または中央値を求めることは、本発明にかかる様々な方法で行われてよく、車両のタイヤのうち様々な数および組み合わせのタイヤが用いられてよい。例えば、平均値または中央値は、各車軸から、各タイヤ種類(例えばステア/ドライブ/トレーラー)から、または、ステア、内部駆動、外部駆動、内部トレーラー、および/または外部トレーラータイヤから取得されてよい。またその代わりに、平均値または中央値は、上述のタイヤの組み合わせのうち、最大値および最小値、または2番目に大きい値および2番目に小さい値から取得されてよい。本発明は、しかしながら、ここで説明された特定の求め方に限定されない。
【0106】
(異常検知および診断)
再び
図4に戻り、異常検知および診断ステップ110について具体的には、車両の各タイヤについて計算されたPHVは、障害を検知し、障害の検知に応じて、診断を実行するために分析される。
【0107】
全てのタイヤは、通常のリークを有すると仮定することができ、正常な範囲内で圧力を維持するように定期的に膨張される。さらに、各膨張の後に、データから2つの可能な結果を見つけることができる。1.タイヤ間の圧力の差異は依然として同じである。2.タイヤ間の圧力の差異は変化する。ほとんどの場合において、圧力の差異は、膨張後変化する。その一方で、上記で説明された車両についてのタイヤ健康状態評価モデルは、全てこれらの圧力の差異に基づいており、タイヤが膨張した後、タイヤ健康状態評価モデルは、通常、タイヤ間の新たな圧力の差異を求めるために、再学習する必要がある。いくつかの実施形態において、モデル再学習を手動で開始することがサポートされ得るけれども、他の実施形態において、手動の再学習をサポートすることは、できないか、または望ましくない。そして、自動的にタイヤの膨張を識別して、それによりタイヤ健康状態評価モデルの再学習を開始するために、データ駆動型の異常検知アルゴリズムを提供することが望ましい場合がしばしばある。
【0108】
異常検知は、望ましくは、比較的良い感度を維持しながら、比較的低い誤警報の発生率を提供する十分な精度を提供する。さらに、適時性は、通常、リアルタイムシステムにおいて高く評価されているので、望ましくは、異常が発生した後、比較的短時間で異常が検知されるべきである。
【0109】
これらのしばしば競合する懸念点に対処するために、例えば、平均値、中央値、差異、標準偏差、最大値、最小値などを含む異なる特徴が、加工されたおよび/または加工されていないデータから抽出することができ、これらの特徴は単一のタイヤ内の値およびタイヤ間の値の両方を含む。「単一のタイヤ内」は、特徴が、タイヤの特定の期間(またはその代りに、移動ウィンドウ技術を用いて)にわたる1つのタイヤから抽出されることを意味する。「タイヤ間」は、一方、特徴が、同じタイムスタンプにおける様々なタイヤから収集されたデータから抽出されることを意味する。多くのテストされた特徴は、膨張イベントを示すことが可能であるけれども、多くは、膨張が発生した後、適した特徴を抽出するために十分なデータを収集するために、比較的長いラグを必要とすることがわかった。
【0110】
いくつかの実施形態において、2つの異なるタイプの特徴が用いられる。第1に、ここで異常検知特徴値と呼ばれ、異常が発生したポイントを特定するために用いられる。第2に、ここで異常診断特徴値と呼ばれ、何が異常ポイントを引き起こしたのかを診断するために用いられる。
【0111】
図15Aおよび15Bは、例えば、異常検知特徴値、健康なタイヤ間のPHVの標準偏差(
図15A)、および時間差の平均(
図15B)として用いられる2つの候補特徴値を示す。一例として、時間差の平均を計算するために、全てのタイヤについて同じタイヤ位置からの2つの連続測定値の差異を計算することができ、健康なタイヤからの全ての差異の平均が計算されてよい。したがって、例えば、10個の健康なタイヤがあった場合、第1のデータパッケージからの読み取り値は、[100,100,...100,105]であり、第2のデータパッケージからの読み取り値は、[100,100,...100,100]であり、時間差は、[0,0,...0,−5]であり、−0.5の平均値が導かれる。
【0112】
両図から、2つのクラスタが描かれており、最初のクラスタは、異常が発生したとき(170および172の線で描かれる)、新たなクラスタの形にシフトアップする。異常検知特徴値は、システムレベル、例えば車両レベルの異常を検知するために用いられ、車両の全てのタイヤからの情報が各特徴値について考慮される。
図15A−15Bは、長時間にわたる各特徴値の表示を提供することが理解されるだろう。しかしながら、リアルタイムシステムにおいて、特徴値は、1つずつ計算され、異常が発生したとき、1つのポイントしか第2のクラスタにおいて観察されないであろう。リアルタイムシステムにおいて、クラスタのシフトは、
図15Bの174により示されるデータ値のケースのような異常値としての1つのピークにより引き起こされないことを確認するために、1または複数の余分なデータパッケージのラグを提供することは望ましいであろう。
【0113】
異常ポイントが検知された後、異常ポイントの背景となる理由を理解することを試みる診断プロセスを提供することは望ましい。そのような診断プロセスは、異常検知特徴値とは対照的に、1または複数の異常診断特徴値を扱い、異常が検知されたときのタイヤの個別のパフォーマンスを理解するために用いることを意図しており、そのような特徴値は、したがって、個別のタイヤから取得することができる。例えば、
図16A−16Bは、それぞれ2つの異なる特徴値、10個のタイヤのそれぞれについての、IHVおよびその最小値の差異(
図16A)と、標準偏差(
図16B)の使用を描いている。
【0114】
図17は、本発明に係る異常検知および診断プロセス200の一例を描いている。プロセス200は、各タイヤについてIHVおよびPHV値が計算された後、データポイントの新たなセット毎に実行することができる。プロセス200は、ブロック202において、例えば、良好な状態のタイヤからのIHVに基づいて、1または複数の異常検知特徴値を計算することによって開始される。異常検知特徴値は、例えば、PHVの標準偏差、IHV、または加工された圧力、時間差の平均値などを含むことができる。
【0115】
続いて、ブロック204において、動的閾値または移動閾値が、問題となる特徴値の過去の傾向に基づいて計算することができる。一実施形態において、例えば、平均値から5シグマ距離は、ポイントが異常であるか否かを決定するための閾値として用いられてよい。また代わりの実施形態において、固定の閾値が用いられてもよい。
【0116】
続いて、ブロック206および208は、それぞれ特徴値が計算された閾値を超えるか否かを決定し、もしそうであるならば、閾値は、連続するサンプル周期の所定数を超えているか否かを判断する。一実施形態において、例えば、もし2つの連続する異常検知特徴値が移動閾値を超えるならば、異常が検知されてもよい。他の実施形態において、たった1つの閾値が、異常を検知するために用いられてもよく、また他の実施形態においては、2以上の閾値を超えたことにより、異常が検知されてもよい。
【0117】
ブロック206の状態にもブロック208の状態にも当てはまらない場合、異常は検知されず、プロセス200は完了する。そうでなければ、制御は、ブロック210に渡されて、異常ポイントとしての閾値外となる最初のポイントが識別される。
【0118】
ブロック212は、続いて、発生した異常ががリークイベントによるものであるか膨張イベントによるものであるか決定することを試みるために、異常診断を開始する。描かれた実施形態では、4つの可能性のあるイベントが示されている。(1)深刻なリークがタイヤで発生する、(2)1つのタイヤが膨張した、(3)2つのタイヤが膨張した、(4)3つ以上のタイヤが膨張した。
【0119】
ブロック212は、投に、1または複数の異常検知特徴値を再計算するが、最小のIHVを有するタイヤを計算から除外する。例えば、10個のタイヤ中で、1から9のタイヤは良好な状態であると考えられ、異常が発生したとき、タイヤ1が、タイヤ1から9の中で最小のIHVを有していた場合、異常検知特徴値は、タイヤ2から9に基づいて再計算されるだろう。そうすることで、もし異常が深刻なリークにより引きおこされた場合、リークしたタイヤは、最小のIHVを有し、このため、最小のIHVを含む異常検知特徴値と含まない異常検知特徴値とがブロック214中で比較され、小さな差異は、異常ポイントを引き起こしたのは深刻なリークではないことを示すのに対して、結果間の任意の重要な(non−trivial)差異(すなわち、閾値以上の差異)は、通常、最小のIHVを有するタイヤが異常ポイントを引き起こし、そのため、深刻なリークを有することを示すだろう。
【0120】
したがって、深刻なリークの場合、制御は、ブロック216に移り、最小のIHVを有するタイヤの深刻なリークを示すイベントを信号伝達する。そうでなければ、制御はブロック218に移り、1つ以上の異常検知特徴値を計算する。
【0121】
上述の通り、描かれた実施形態において依拠することができる1つの仮定は、2つのタイヤが同時に深刻なリークを開始する可能性は非常に低く、そのため、異常が1つのタイヤの深刻なリークにより引き起こされていない場合、1または複数のタイヤの膨張により引き起こされたと考えることができるだろう。そのようなため、異常が検知されたが、深刻なリークが示されないとき、全ての良好な状態のタイヤについて、潜在的な膨張、タイヤ交換、またはローテーションのためのチェックが行われてもよい。さらに、モデル再学習が、タイヤの健康値をリセットしてこれらの値を約0に戻すため、緩やかなタイヤのリーク傾向は、いくつかの例において、再学習の結果として変化させる(disguised)ことができる。したがって、潜在的に不要なモデル再学習を防止するために、いくつかの実施形態においては、タイヤの一部のみの膨張を検知して、これらの膨張されたと判定されたタイヤだけが再学習されるようにすることが望ましいかもしれない。描かれた実施形態では、例えば、「1つのタイヤの膨張」および「2つのタイヤの膨張」イベントが、「3つ以上のタイヤが膨張した」イベントと共に検出することができ、1,2,または全てのタイヤモデルが必要に応じて再学習されるだろう。いくつかの実施形態において、全てのタイヤが、任意のタイヤが膨張されたことに応じて再学習されてもよく、他の実施形態において、膨張された3、4、またはそれ以上のタイヤが別々にチェックされてもよいことが理解されるだろう。
【0122】
異常診断特徴値は、システム変更、例えば、膨張チェック、タイヤ交換、タイヤローテーション、および/または任意の他のタイヤ圧の意図的な変更の検知のために用いられ、異常の発生後に抽出された特徴値は、それらの履歴特徴値により生成される閾値とテストされる。閾値を超える値の数は、異常の発生源を分類するために使用されてもよい。このため、例えば、ブロック218は、IHV間の差異やその最小値、標準偏差などの1または複数の異常診断特徴値を計算する。
【0123】
次に、ブロック220において、1または複数の動的閾値または移動閾値が、問題となる特徴値の履歴傾向に基づいて計算されるだろう。1つの実施形態において、例えば、各個別タイヤからの最新の100個の異常診断特徴値の平均値および標準偏差が計算されてもよい。1つの例において、2つの閾値が用いられてもよく、第1の閾値は、プラス/マイナス3回の標準偏差の平均値であり、第2の閾値は、マイナスプラス4回の標準偏差の平均値である。代わりの実施形態では、固定の閾値が用いられてもよい。
【0124】
ブロック222は、そして閾値を超え、このため意図的に変更されたと決定されるタイヤの数を求める。一実施形態において、同じタイヤからの最新の2つの異常診断特徴値は、2つの閾値とそれぞれ比較され、もし1つのタイヤについての両方の異常診断特徴値が第2の閾値の外にある場合、タイヤは、膨張された/交換された/ローテーションされたタイヤとしてラベルづけることができる。さらに、第1の閾値を超える異常診断特徴値の数は、全てのタイヤに渡って累算されてもよく、第1の閾値を超える異常診断特徴値のトータル数が現在の数(例えば5)を超えると、全てのタイヤは一緒に再学習されてもよい。
【0125】
1つのタイヤが膨張されたと判断された場合、制御はブロック224に移り、タイヤは膨張され、そのタイヤに対するモデルは再学習されるであろうことを示すイベントが信号伝達される。2つのタイヤが膨張されたと判断された場合、制御はブロック226に移り、2つのタイヤが膨張され、これらのタイヤに対するモデルが再学習されるであろうことを示すイベントが信号伝達される。そうでなければ、制御はブロック228に移り、全てのタイヤが再学習されるべきであることを示すイベントが信号伝達される。
【0126】
(緩やかなリークのチェック)
再び
図4、特に、ステップ134の緩やかなリークのチェックに戻る。タイヤに対するPHVが正常である場合、緩やかなリークがチェックされるだろう。一実施形態において、タイヤが緩やかにリークしているか否かを決める閾値基準、例えばPHVが−3psiを下回るまで低下すること、が(例えばユーザによって)決定される。全てのホイール位置からの全てのPHVは、繰り返し毎に順番に閾値基準と比較することができ、PHVが閾値を大幅に下回る(例えば、閾値を1psi以上下回る)場合、2ポイントが、緩やかなリーク識別子に累積されるか、またはホイール位置と関連付けてカウントされる。PHVが閾値を大幅に下回らない(例えば1psiより小さい)場合、1ポイントが緩やかなリーク識別子またはカウントに追加され、しかしPHVが閾値を下回らない場合、累積リーク識別子またはカウントはゼロにリセットされて、ポイントの累積が再開される。
【0127】
緩やかなリーク識別子が他の閾値基準に合致する、例えば、3のような所定の値に到達すると、同じホイール位置からの最新の2つのPHVの平均値が計算され、緩やかなリークレベルの初期値として記憶される。緩やかなリーク識別子がゼロにリセットされない限り、同じ緩やかなリークレベルの初期値が、このホイール位置について用いられる。緩やかなリークイベントがその後、他の閾値基準に応じて、例えば最新の2つのPHVの平均値が、同じホイール位置からの緩やかなリークレベルの初期値と比較され、最新の2つのPHVの平均値が、所定量(例えば1.5psi)の緩やかなリークレベルの初期値より低い場合、開始されてもよい。
【0128】
(タイヤリカバリチェック)
再び
図4、特にステップ142のリカバリチェックに戻る。このステップは、任意の検知されたリークしたタイヤが修理されたか否かデータの傾向に基づいてチェックする。リークしたタイヤが修理されたか回復したとき、タイヤは再膨張され、その結果、そのタイヤのPHVの上昇が引きおこされると仮定される。一実施形態において、繰り返し毎に、リークしたタイヤのデルタPHV(現在のPHVと1つ前のPHVとの間の差異)が、閾値、例えば5psiと比較される。現在のデルタPHVが閾値より大きい場合、次のデルタPHV(次の繰り返しからの)を、第2の閾値、例えば10psiと比較することができる。もし両方のデルタPHVが閾値より大きい場合、タイヤは、リークから回復した(健康なタイヤに再び戻った)と考えることができ、タイヤリカバリイベントの開始と、このタイヤに対して実行される再学習とを引き起こす(ブロック144)。
【0129】
(タイヤ健康予測)
また再び
図4に戻り、描かれた実施形態の追加の観点は、ブロック112において実装される、タイヤ健康予測(prediction)または兆候(prognostivs)である。兆候は、システムの将来の健康の傾向を、その履歴状態に基づいて予測するために用いられ、描かれた実施形態においては、緩やかにリークしたタイヤからの履歴PHVは、予測モデルに従い、タイヤの将来のパフォーマンスを見通す。
【0130】
本発明にかかる予測モデルは、複数の異なるタイプの予測技術を用いて実装されてよい。ここに、線形、指数関数、三次スプライン、および区分線形としてデザインされた、4つのそのような予測技術が、より詳細に以下に説明される。この説明の文脈の中で、10トラクタ/トレーラーの組合せ(すなわち10−18車輪)の、16分おきに収集されたTPMSに基づいたデータセット例が、PHV値を16分おきに生成するために用いられ、PHV値は、各モデルについての入力データとして用いられ、各モデルの出力は、およそ5時間(20インターバル)の将来のリーク傾向となり、所定の低圧力閾値に到達する。
【0131】
各モデルは、イベントの検知時に始まり、イベントの終わりが到達するまで、(例えば、タイヤが修理されるか差異膨張される)例えば、再帰的に更新されることによって設定されてもよい。初期の学習セットは、最新のタイヤ膨張イベントおよびリーク検知イベント間で収集されたデータを含む。さらに、予測モデルによる予測は、N個のステップ(例えば、20ステップ)をカバーすることができ、繰り返し毎に計算される二乗平均平方根誤差(RMSE)は、20ステップの予測を用いる。
【0132】
異なる技術を比較するために、2つの典型的なイベントが用いられた。第1(イベント1)は、比較的シンプルであり、より線形であり、第2(イベント2)は、より多くの傾き変化を有する。
図18Aおよび18Bは、それぞれこれらの2つのイベントに対応するPHV値を描いている。
【0133】
図19Aおよび19Bは、それぞれイベント1および2に対するデータポイントへの線形回帰モデルの適用を描いている。線形回帰予測は、ローカル傾向に比較的弱い脆弱性を有することが見つかっており、傾斜があるところとして示されることができ、切片であり、傾斜がゼロ以下であるように制約される。
【0134】
図20Aおよび20Bは、それぞれ、指数関数回帰モデルのイベント1および2に対するデータポイントへの適用を描いており、指数関数的な外挿を用いており、これに対して
図21Aおよび21Bは、それぞれ他の指数関数回帰モデルのイベント1および2に対するデータポイントへの適用を描いており、線形外挿を用いている。指数関数回帰予測は、f(t)=ae
btの形で表され、傾斜abは正の値でない。指数関数外挿(
図20Aおよび20B)を用いて、当てはめた指数方程式は、外挿のために用いられ、一方、線形外挿(
図21Aおよび21B)を用いて、最新の学習ポイントの位置/勾配は、外挿のために用いられる。
【0135】
線形回帰モデルも指数関数回帰モデルも両方、いくつかの適用において、制限を有するかもしれない。例えば、
図22に描かれたように、追加的な学習データ(例えば10日)がイベント2について用いられ、両方のモデルが比較的質の悪い予測結果を提供するだろう。いくつかの適用において、学習データセット中に存在する大きな曲率の可能性を低減するために、学習データとしてのデータポイントの一部だけを用いることによって(例えば最後の50,150,250などのデータポイントを学習ポイントとして用いることによって)、当てはめを改善することが望ましいかもしれない。
【0136】
用いられ得るその他の予測技術は、しばしばデータ中に突然の状態変化を有するシステムをモデル化するために用いられる区分回帰である。区分回帰を用いて、異なる状態は、モデルの異なる部分によりモデル化され、典型的には、グローバル最小二乗推定が、全ての部分にわたる当てはめ性能を最適化するために用いられる。2つの部分の接続点、および/または、曲線上の左/右の最高点は、節(knot)とみなされ、節の数と位置とは、典型的には、モデルパフォーマンスを最大化するように配置される。両方とも、前もって決定され、または最適モデルを用いて計算される。
【0137】
ここで説明される2つの区分回帰モデル例(三次スプラインおよび区分線形)は、節の最大数として6を用いて、学習データは、5つまでの部分に分けられ、それぞれ別にモデル化される。さらに、節の正確な数は、いくつかの実施形態では、以下により詳細に説明される、一般的なクロス検証法を用いて最適化することができる。
【0138】
節の位置は、学習データセット中の曲線がよりよくモデル化されるように、さらに、よりよい予測結果が生成されるように、モデル自身によって最適化されてもよい。
【0139】
他の技術の中でも、多変量適応回帰スプライン(MARSとして知られる)技術が、区分回帰モデルを構築するために用いられてもよい。
【0140】
MARS技術を用いて、最終モデルは、典型的に、次の数式で表される。
【0142】
複数(n)の基底関数Bi(x)は、それぞれ対応する重みwiによって重みづけされる。各基底関数は、典型的には、定数項、ヒンジ関数、または複数のヒンジ関数の乗算として実装することができる。ヒンジ関数は、cが節に対応する定数であるとき、典型的には、max(0,c−x)またはmax(0,x−c)の形をとる区分関数である。
【0143】
モデル構築プロセスは、通常、2つのフェーズ:事前選択および事後削除を有する段階的回帰と似ている。事前選択の間、学習データセットは、許容される最小モデル誤差が達成されるまで、複数のバラバラな(disjoint)部分に分割される。モデルは、全ての学習データの平均であるただ一つの項を有することによって、初期化される。そして、最長マッチを行う(greedy)アルゴリズムを用いて、次の部分を分割し、事情誤差の和に関して、全体的なモデル学習の誤差を最も減少させる次の基底関数ペアを加えるために、次の節(2つの部分の間のブレークポイント)を探索し続ける。基底関数は、通常、現在の基準が合致するまで、例えば学習誤差が現在の値より小さくなるまで、次の基底関数の加算前後で、モデル誤差の低下が現在の値よりも小さくなるまで、または、基底関数の数が現在の限界値に到達するまで、加えられる。
【0144】
事後削除フェーズにおいては、事前選択のモデル中の有効な隣接項は、モデルの一般化を加速するために結合される。一般クロス検証(GCV)値が、全ての部分に渡ってGCVを最小化することを目的として、モデルの当てはめ性能および複雑さの両方を考慮するために用いられてよい。
【0146】
ここで、kは基底関数の数であり、dは全ての節に対するペナルティ(例えば2)であり、nは、学習データポイントの数である。
【0147】
三次スプラインモデルは、各部分がf
i(t)=a
i+b
itの形で示され、どの部分も線形に制限され、線形/傾斜/曲線が連続的であり、傾斜が正でない、三次多項式区分回帰モデルである。この例において、6つの節が用いられ、予測は、線形外挿に基づいて、最新の(最も右の)学習ポイントの傾斜および位置が用いて行われる。
図23Aおよび23Bは、例えば、そのような三次スプラインモデルのイベント1および2に対するデータポイントそれぞれへの適用を描いている。
【0148】
区分線形モデルは、対照的に、各部分がf
i(t)=b
itの形をとり、線上のどこでも、線が連続的であり、傾斜が正でない、一次多項式区分回帰モデルである。この例において、6つの節が用いられ、予測は、線形外挿に基づいて、最新の(最も右の)学習ポイントの傾斜および位置を用いて行われる。
図24Aおよび24Bは、例えば、そのような区分線形モデルのイベント1および2に対するデータポイントそれぞれへの適用を描いている。
【0149】
上記の5つのモデルの性能(線形、指数外挿を用いた指数関数、線形外挿を用いた指数関数、三次スプライン、および区分線形)は、固定サイズの移動ウィンドウ(上記の20ステップ)のイベント1および2の両方についての予測結果に基づいて平方根平均二乗誤差(RMSE)値を用いて比較されうる。予測は、リークが検知された後すぐに開始されてもよいし、新たな測定値を受信するたび(すなわち、新たな測定結果が学習データセットに加えられる度)に更新されてもよい。したがって、RMSE値の配列は、全てのモデルについて、リークの検出と修理の間に生成することができる。
【0150】
学習データセットは、上記に開示された方法で、予測モデルが再学習された最後のときから(モデル再学習は、例えば、タイヤ膨張/交換により開始されてよい)生成された全てのPHV値を含んでもよい。最後の再学習からリークの開始までの期間は変化するため、学習データの主な構成は変わることがある。リークがモデル再学習の直後に開始した場合、学習データの大部分はリークが開始した後に収集され、リークが最後のモデル再学習から数日後に開始された場合、学習データセットは、リークが開始する前に収集されたデータをより多く含むだろう。この説明の目的のために、小さい学習データセット(すなわち、ほとんどのデータがリーク開始後)と大きい学習データセット(すなわち、ほとんどのデータがリーク開始前)の両方が、それぞれ前述のリークイベントの両方についてそれぞれ用いられる。前述の
図18Aおよび18Bは、例えば、イベント1および2それぞれに対する小さい学習データセットの一例を描いており、
図25Aおよび25Bは、イベント1および2それぞれに対する大きな学習データセットの一例を描いている。
【0151】
図26A−26Bは、イベント1および2それぞれに対する、小さい学習データセットについての5つの前述のモデルの比較性能(RMSEの観点で)を描いている。
図26Aは、イベント1について、小さい学習セットのために、指数関数的な指数外挿モデルは、他の4モデルの性能よりも遅れていることを示している。
図26Bは、イベント2について、小さい学習セットのために、指数関数モデルよりも、曲率、線形、三次スプライン、および区分線形モデルがよりよい傾向を示すことを描いている。
【0152】
図26C−26Dは、イベント1および2に対する線形、三次スプライン、および区分線形モデルそれぞれの比較性能(RMSEの観点で)を描いている。一般的に、大きな学習セットについて、三次スプラインおよび区分線形モデルは、線形モデルよりもより良い性能を示す。さらに、タイヤリーク傾向は、しばしば比較的ノイズが多いため、三次スプラインモデルは、いくつかの例において、(区分線形と比較して)、あまりに柔軟すぎて、学習に時間がかかる(一次元対三次元)ため、いくつかの実施形態では、区分線形回帰モデルを用いることが緩やかなリーク予測においては望ましい場合がある。
【0153】
しかしながら、例えば、自動回帰移動平均(ARMA)、線形回帰、多項回帰、二次方程式回帰、指数関数回帰、線形外挿を用いた指数関数回帰、スプライン回帰、区分線形回帰、ニューラルネットワーク、カルマンフィルタ、粒子フィルタ、類似ベース予測など、代替の回帰または外挿アルゴリズムが将来のタイヤの膨張レベルを予測するために用いられてもよいことは理解されるであろう。いくつかの実施形態においては、例えば、データセットを、ダウンサンプリング(例えばいくつかのデータポイントの平均を取ることによって)および/またはアップサンプリング(データポイント間に補間することによって)することによる、1または複数のノイズ除去技術が、モデル精度を改善するために適用されることが望ましい場合があることがまた理解されるであろう。
【0154】
さらに、いくつかの実施形態においては、互いに連携して複数の回帰モデルを用いる、例えば、直線予測に関する線形回帰と傾斜カーブの当てはめを変更するために用いられる指数関数回帰とを用いて、線形回帰を、二次および指数関数回帰と融合させることが望ましいかもしれない。融合ルールは、学習データセットの形状の専門知識および予測サンプルに基づいており、例えば、品質が低下しているタイヤのカーブ形状は、上昇し続けないであろうし、様々な種類の回帰を異なる複数のポイントで組み合わせておよび/または選択して用いることができるであろうという知識に基づくことができる。
【0155】
決定された予測に基づいて、様々な実施形態が警告および予測に関連する情報を車両の運転者、車両またはフリートのオーナー、サービスまたは保守提供者、および/またはサードパーティーなどに提供することができるだろう。そして例えばタイヤ保守動作が自動的にまたは手動で計画されるだろう。例えば、タイヤは修理または交換が計画されてよい。さらに、予測に関連する情報は、例えば、タイヤが膨張、修理、および/または交換を必要とする前にどのくらいの長さ使用することができるかを決定するために用いられてもよい。
【0156】
描かれた実施形態は、圧力、温度およびタイムスタンプのようなタイヤデータを用いているが、環境温度、トレッド深さ、タイヤ、リム、またはホイール上の様々なポイントから取得された追加の温度、振動などのような追加のデータがまた、本発明にかかるタイヤ監視システムで用いられてもよいことが理解されるだろう。したがって、本発明は、ここで説明される特定の実施形態に限定されない。
【0157】
(動作例)
ここで説明された監視および予測機能についてさらに説明するために、LTL海運業界(すなわち、1つのトラックからの全ての荷物が様々な場所から来て、様々な場所にまた分配される)で用いられる、10のトラクタトレーラーの組合せ(すなわち、各トラックからの18タイヤ)から取得された、現実世界のデータセットが解析された。各トラックは、18のタイヤ全てからデータを取得し、測定値はタイヤが回転しているとき(加速度計により検知される)約30秒毎に取得され、約16分毎に収集されるTPMシステムと共に提供された。収集されたデータは、手動でダウンロードされ、そのデータから、各タイヤについて各収集インターバルにおける、関連するタイムスタンプ、温度、および圧力が解析のために抽出された。概して、おおよそ7か月分のデータが各トラックについて収集された。
【0158】
オフラインデータを用いてリアルタイムの状態をシミュレーションするために、1つのデータパッケージがシステム読み込まれて同時に処理されるような反復アルゴリズムが用いられた。健康状態の悪いタイヤが検知されると、アラームが設定され、そうでなければ、次の繰り返しが開始する。
【0159】
健康なタイヤ上で異常を検知する観点から、システム全体への入力変数は、温度、圧力および時間であった。しかしながら、トラックが動いていない夜間または週末であることに起因してデータ中に大きなギャップがあるため、データ視覚化は、データポイントをインデックスに対してプロットよりむしろ時間に対してプロットすることによって改善することができるだろうことが見出された。
【0160】
例えば、異常検知特徴値の使用は異常を容認し、特に車両上の複数のタイヤの膨張が検知されることが見出された。
図27は、例えば、車両上の10個のタイヤのセットに対するIHVプロットの一例を示している。さらに、この図は、ポイント365より前の異なるタイヤのIHVは、それぞれ近接しているが、ポイント365を過ぎた後、分かれていることを示している。
【0161】
リアルタイムシステムの観点から、このイベントは発生した後比較的すぐに検知されることが望ましい。このため、
図28A中に示されているポイント366以前のIHV(膨張が発生した後の1つのデータポイントを含む)を調べることは当然である。ポイント365のそれ以前のポイントからの変化を視覚化することは難しいかもしれないが、上述の異常検知特徴値を適用sる鵜ことによって、例えば、健康なタイヤ間のPHVの標準偏差を計算することによって(例えば、
図15Aに示されるように)、変化は視覚化しやすくなる。異常検知特徴値は、
図28Bに示され、2つの連続した特徴値のデータポイント(ポイント365,366)が閾値を超えたことがシステム異常が検知されたことを示している。
【0162】
その後、異常検知特徴値を、最小のIHVを有するタイヤを除いて再計算することを通して、上述の通り、閾値以上の類似する特徴値が、ポイント365および366に見つかり、このため、システム異常の原因は膨張と分類された。さらに、異常診断特徴値は、2以上のタイヤが膨張されたことを示し、全てのタイヤの健康評価モデルが再学習された。再学習の後、タイヤ自己比較およびピアベースの比較の両方を含み、全てのタイヤのIHVは、一緒に結合され、PHVは健康状態が良好な状態が維持されていることを示すゼロ付近の値に戻される。
図29Aおよび29Bは、再学習後のIHVおよびPHVをそれぞれ示し、膨張後、より多くの空気がタイヤ中に注入されたけれども、タイヤはまだ以前と同じ健康状態を実際には示していることは注目すべきである。このように、タイヤの健康状態は、各タイヤ中の空気の量に基づいて変化しない。
図29BにおけるPHVは、全てタイヤが膨張イベントの前後両方において等しく良好な状態であることを示す0付近である。
【0163】
タイヤを様々な膨張レベルから同じ健康状態にして、それらの類似した動作体制の効果を起こり得る悪いタイヤ状態の検知を扱うデータの中から抽出することによって、良好な状態のグループ内における分散を低減することが分かった。さらに、システムは、膨張イベントが精度よく検知されるように変わる。
【0164】
次に、リーク検知および予測の観点から、緩やかなリークを検知し、リークしているタイヤのリークレートを予測することを試みるために、同じデータセットが用いられる。
図30は、例えば、データセット中における、トラックからの4つのタイヤの補正された圧力のプロットを描いている。誤警報を多く生成し過ぎないで、リークしているタイヤを検知するために、正常なタイヤを示す最も低い圧力よりもさらに低い閾値が設定された。また、4つのタイヤのいくつかは、データポイント1189で膨張され、タイヤリークを検知するために2つの異なる閾値が設定されることが必要であることが知られていた。膨張の前に、97psiの閾値260が設定され、膨張後の閾値262は、103psiに設定された。補正された圧力を用いて、プロット264に示されたタイヤ3からのリークは、圧力が初めて大きく低下したポイント1387において最初に検知された。
【0165】
しかしながら、上述の予測アルゴリズムを適用することによって、より早期にリークを検知することを達成することができる。まず、タイヤ自己比較、膨張検知、およびモデル再学習を通して、
図31に示されるように、任意のタイヤについて任意の時に、ただ1つの閾値が必要とされた。また補正された圧力からは観察することができない緩やかなリークは、IHVプロット中の266に示され、リークしているタイヤを検知する時間は、時間的にずっと早いポイント、例えばポイント300当たりに移動することができる。そして、ピアベースの比較が実行された後、各タイヤ中において、
図32に示されるように、より小さいデータ分散を得て、リーク検知時間がさらにポイント120辺りに前進させることができる。さらに、リークは、最初検知されたときには申告でないため、タイヤの将来の健康状態を推測するためにその後予測プロセスが開始された。
【0166】
様々な追加の変更が、本発明の主旨および範囲を逸脱することなく行うことができる。従って、本発明は、ここに添付される特許請求の範囲による。