(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は実施例1の光偏向器1の表側を斜めから見た斜視図である。光偏向器1は、反射部2、トーションバー3a,3b、内側圧電アクチュエータ4a〜4d、内側枠5、外側圧電アクチュエータ6a,6b、外側枠7及び電極パッド8a,8bを備える。光偏向器1は、正面視(光偏向器1が光を出射する側を光偏向器1の表側として、該表側を光偏向器1の正面と呼ぶ)で左右対称の構造となっている。
【0024】
光偏向器1の実施例を含む全ての実施例及び後述の比較例において、構成要素のうち、左右両側に配設されるものについては、光偏向器1の正面視で左側のものには、符号の末尾を「a」とし、光偏向器1の正面視で右側のものには、符号の末尾を「b」とする。また、左右の構成要素を総称するときは、符号の末尾の「a」及び「b」を省略する。
【0025】
反射部2は、例えば円形又は楕円であり、表側に反射面としての鏡面を有し、図示していない光源からの光(光束)を反射する。
【0026】
以下、説明の便宜上、
図1において、中心O、x軸、y軸、z軸を定義する。中心Oは円形の反射部2の中心であり、x軸、y軸及びz軸は、中心Oにおいて相互に直交する。x軸及びy軸は、矩形の外側枠7の長辺及び短辺に対してそれぞれ平行な方向として定義される。z軸は、光偏向器1の裏側から表側の向きが正の向きとなっている。
【0027】
1対のトーションバー3a,3bは、y軸−z軸平面に含まれる反射部2の中心線(以下、「縦中心線」という)に沿って反射部2の両側に配設され、内側の端部を反射部2の周縁に結合している。縦中心線に対し、x軸−z軸平面に含まれるの中心線を、以下、横中心線(本発明の「別の中心線」の一例)という。縦中心線と横中心線とは、中心Oにおいて直交する。光偏向器1の作動中、縦中心線はx軸の回りを往復回動し(反射部2の縦の首振りに相当)、横中心線はy軸の回りを往復回動する(反射部2の横の首振りに相当)。
【0028】
円弧形の4つの内側圧電アクチュエータ4(本発明の「圧電アクチュエータ」の一例)は、反射部2の外側を周回する配列で、配設される。内側圧電アクチュエータ4a,4bは、先端部においてトーションバー3aの中間部に結合している。内側圧電アクチュエータ4c,4dは、先端部においてトーションバー3bの中間部に結合している。
【0029】
内側枠5は、内周線輪郭が円形に、外周線輪郭が正方形にそれぞれ形成され、中心を中心Oに揃え、内周側において4つの内側圧電アクチュエータ4を包囲している。トーションバー3は、外側の端部において内側枠5の内周に結合している。内側連結部11(本発明の「第1連結部」の一例)はx軸に沿って延在し、内側枠5は内側連結部11を介して内側圧電アクチュエータ4を支持する。
【0030】
外側圧電アクチュエータ6(本発明の「別のアクチュエータ」の一例)は、x軸方向に内側枠5の両側に配設されている。外側連結部13(本発明の「第2連結部」の一例)は、x軸に沿って延在し、両端において内側枠5の外周と外側圧電アクチュエータ6の先端部とを連結している。外側圧電アクチュエータ6は、ミアンダパターンで配列されたカンチレバー式の圧電アクチュエータ要素16a〜16dを、内側の先端部から外側の基端部に順番に有している。以下、圧電アクチュエータ要素16a〜16dを総称するときは、単に「圧電アクチュエータ要素16」と称する。複数の圧電アクチュエータ要素16は、内側枠5側から順番に配列された折返し部17a〜17cにより直列に連結されている。以下、折返し部17a〜17cを総称するときは、単に「折返し部17」と称する。
【0031】
外側圧電アクチュエータ6の最先端の圧電アクチュエータ要素16a及び最基端の圧電アクチュエータ要素16dの長さは、中間の圧電アクチュエータ要素16b,16cの長さの半分になっている。
【0032】
外側枠7は、短辺及び長辺がそれぞれx軸及びy軸に平行な矩形輪郭に形成され、中心を中心Oに合わせている。固定部14は、x軸に沿って延在し、両端において外側圧電アクチュエータ6の基端部と外側枠7の短辺の中間部とを連結している。電極パッド8は、外側枠7の短辺部の表側に配設される。光偏向器1は、MEMSのチップから成り、該チップは所定のパッケージ内に収納される。電極パッド8は、パッケージの電極とワイヤボンディングされる。
【0033】
内側枠5が、支持している反射部2、トーションバー3及び内側圧電アクチュエータ4を含む構造部分を以下、共振構造部分と呼ぶことにする。また、該共振構造部分(反射部2が回動するモード)の共振周波数(例:25.3kHz)を単に「共振周波数」という。
【0034】
内側圧電アクチュエータ4は、電極パッド8から共振周波数の電圧を供給される。正面視で左側の内側圧電アクチュエータ4a,4dと右側の内側圧電アクチュエータ4b,4cとは、駆動電圧は逆位相になっている。これにより、内側圧電アクチュエータ4は、各時点で先端部を介してトーションバー3を縦中心線の回りに往復回動する。これに伴い、反射部2も、縦中心線の回りに往復回動する。
【0035】
外側圧電アクチュエータ6は、電極パッド8から所定周波数(例:60Hz)の電圧を供給される。内側枠5側から数えて1番、3番の圧電アクチュエータ要素16a,16cの圧電膜と、2番、4番の圧電アクチュエータ要素16b,16dの圧電膜とは、駆動電圧制御装置(図示せず)から電極パッド8(
図1)を介して供給される駆動電圧(周波数は例えば60Hz)が逆位相になっている。これにより、外側圧電アクチュエータ6の基端部に対する先端部のx軸回りの回転量は、4つの圧電アクチュエータ要素16おける基端部に対する先端部のx軸回りの回転量の加算値となる。この結果、内側枠5は、外側圧電アクチュエータ6によりx軸回りに往復回動し、反射部2は横中心線回りに往復回動することになる。
【0036】
反射部2には、図示していないレーザ光源から光が入射する。反射部2は、縦中心線回りの往復回動により、レーザ光源から光を、x軸方向に往復回動する反射光として出射する。反射部2は、また、横中心線回りの往復回動により、レーザ光源から光を、y軸方向に往復回動する反射光として出射する。この結果、光偏向器1から出射光は、x軸方向及びy軸方向の二次元の走査光となる。
【0037】
図2において、(a)は、光偏向器1の背面図、(b)は(a)の矢視A2−A2の断面図である。なお、
図2以降の光偏向器の断面図では、非主要部については図示を省略したり、簡略化している。また、正面図の左右は背面図では右左となる。
図2(a)及び(b)は、図示の簡略化のために、
図1の一部の形状を少し変形して記載している。
【0038】
図2(a)並びに後述の
図7(a)、
図10(a)、
図12、
図14、
図16及び
図18の背面図において、斜め破線のハッチングで示した領域は、光偏向器1の裏面側においてSi層33(
図2(b))の裏面から同一の隆起量で隆起している部位を示している。
【0039】
図2(a)の光偏向器1において、斜め破線のハッチングで示した領域は、内側枠5の周回リブ25及び分岐リブ26と、外側連結部13とになっている。分岐リブ26は、内側枠5において周回リブ25の外周から分岐して、外側連結部13と結合している。外側連結部13の厚みと、内側枠5における周回リブ25及び分岐リブ26の形成部位の全体の厚みとは等しくなっている。
【0040】
内側枠5は、Si層33のみから成る本体部24と、裏面側において本体部24から隆起する周回リブ25及び分岐リブ26とを有している。内側枠5の本体部24は、すなわち周回リブ25及び分岐リブ26による補強がなくても、内側枠5より内側に配設される反射部2及び内側圧電アクチュエータ4等の要素を支持することができる剛性が確保される厚みとなっている。光偏向器1では、このような本体部24に対して、さらに、本体部24の裏面の所定部位に周回リブ25及び分岐リブ26が付加された構成となっている。
【0041】
本体部24からの周回リブ25及び分岐リブ26の隆起量は、この実施例では同一である。周回リブ25は、内側枠5の円形の内周縁に沿って周回している。分岐リブ26は、x軸に沿って周回リブ25から外側へ分岐し、内側枠5の外周縁に至り、そこで、外側連結部13に同一の隆起量で連なる。外側連結部13は、x軸に沿って延在し、内側枠5と外側圧電アクチュエータ6のミアンダパターン配列における最も内側の圧電アクチュエータ要素16aの先端部と連結している。
【0042】
内側連結部11は、表面及び裏面をz軸方向に内側枠5の本体部24の表面及び裏面に揃えられ、すなわち本体部24と等しい厚みとされている。y軸方向に、内側連結部11の寸法(幅)は、外側連結部13の寸法(幅)と等しくなっている。内側連結部11は、x軸に沿って延在し、外側の端部(基端部)において内側枠5の周回リブ25の上層の本体部24に結合している。
【0043】
内側連結部11は、内側の端部(先端部)において、周方向に隣接する内側圧電アクチュエータ4間に割り込んで、両側縁で内側圧電アクチュエータ4の基端部に結合し、内側の端は内側圧電アクチュエータ4の周方向配列の内側の円周線に達している。
【0044】
図2(b)において、光偏向器1は、下から上へ順番に、Si層31、中間酸化膜層(酸化Si層)32、Si層33及びPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)膜層39が積層されている。Si層31、中間酸化膜層32及びSi層33は、SOI(Silicon on Insulator)基板36を構成する。内側圧電アクチュエータ4及び圧電アクチュエータ要素は、PZT膜層39を有している。光偏向器1は、SOI基板36からMEMS技術によりPZT膜層39等の所望の層を積層したり、表側及び裏側からエッチングされたりして、製造される。
【0045】
図2(b)において、外側枠7の部位では、SOI基板36のSi層31がそのまま残されている。これに対し、外側枠7以外の外側連結部13、周回リブ25及び分岐リブ26の部位では、Si層31は、全量ではないものの、リブとしての高さまでエッチング処理により削られている。また、反射部2及び内側連結部11の部位は、Si層31がエッチングにより全量、削られているとともに、中間酸化膜層32もエッチングにより全量削除されて、Si層33のみとなっている。
図2(b)の断面図には、現れないが、内側枠5の本体部24もSi層33のみとなっている。
【0046】
図3は、光偏向器1において内側圧電アクチュエータ4の圧電膜に印加する駆動電圧の周波数と反射部2の機械振れ角(=全体の振れ角の1/2。実線)及び水平位相差(破線)との関係を示す図である。なお、光偏向器1は、x軸及びy軸がそれぞれ水平方向及び鉛直方向の軸となるように、配設されたと、仮定している。
【0047】
以下、y軸−z軸平面を光偏向器1の「中心鉛直面」という。また、中心鉛直面に対する内側圧電アクチュエータ4の反射面の法線の傾斜角を反射部2の「水平方向振れ角」という。内側圧電アクチュエータ4の反射面の法線が中心鉛直面に含まれるとき、水平方向振れ角は0°となる。
【0048】
反射部2は、内側圧電アクチュエータ4の作用により水平方向へ共振周波数で往復回動するときは、反射部2が、中心鉛直面に対して水平方向左右にそれぞれ最大に振れたときの水平方向振れ角の絶対値は等しくなる。
図3の機械半角とは、内側圧電アクチュエータ4が中心鉛直面に対して水平方向左右にそれぞれ最大に振れたときの水平方向振れ角の絶対値と、定義する。
【0049】
図3では、内側圧電アクチュエータ4の駆動電圧の周波数を、24kHzから28kHzまで、掃引して、該周波数と機械半角等との関係を調べている。
図3によれば、機械半角は、共振時の周波数25.3kHzで最大値となり、該周波数の近辺で急峻に上昇する特性になっている。機械半角が最大となる周波数は、縦中心線(トーションバー3の軸線に一致する)の回りの反射部2の共振周波数であり、反射部2及びトーションバー3の重量、形状及び寸法等により決まる。
【0050】
光偏向器1では、駆動電圧制御装置(図示せず)から電極パッド8(
図1)を介して内側圧電アクチュエータ4の圧電膜に共振周波数の駆動電圧が供給され、これにより、反射部2は、縦中心線の回りに共振周波数で往復回動し、トーションバー3の反射面からの反射光としての走査光を、該共振周波数の水平方向走査周波数で、出射することになる。
【0051】
水平位相差は、駆動電圧制御装置が電極パッド8を介して内側圧電アクチュエータ4の圧電膜に駆動電圧を供給して、反射部2を縦中心線回りに往復回動させるときの該駆動電圧波形と、縦中心線回りの反射部2の往復回動との位相差と定義する。
【0052】
図3によれば、水平位相差は、内側圧電アクチュエータ4の駆動電圧の周波数の増大に連れて、25.3kHzの共振周波数より少し低い周波数から立ち上がり、その後は、360°近辺に維持されている。しかしながら、周波数が共振周波数以上になった後も、水平位相差が急峻に増大している箇所としてP1,P2が存在することが分かる。
図3によれば、P1,P2の周波数はそれぞれ25.7kHzと、26.8kHzとなっている。
【0053】
反射部2は、縦中心線の回りに、25.3kHzの共振周波数で往復回動する偏向モードの他に、種々の動作モードで往復振動する。P1の動作モードは、ポンピングモードと呼ばれるものであり、共振周波数より約500Hz(
図3では400Hz)上の周波数において、反射部2がz軸方向に並進する動作モードである。P2の動作モードでは、外側圧電アクチュエータ6がy軸方向に往復動してしまうことに起因して、反射部2が揺動する動作モードであることが判明している。
【0054】
図3において、共振周波数の25.3kHzを下限周波数、P2の周波数より大きい周波数を上限周波数として、下限周波数−上限周波数の所定の周波数範囲を設定する。
図3では、該所定の周波数範囲において、P1,P2以外の水平位相差は、約360°になっている。反射部2を縦中心線の回りに共振周波数で往復回動させる際、内側圧電アクチュエータ4の圧電膜の一部を回転角センサに使って、該回転角センサの出力電圧から反射部2の水平方向振れ角を検出し、内側圧電アクチュエータ4の圧電膜の駆動電圧を水平方向振れ角の検出値に基づいてフィードバック制御する。
【0055】
したがって、フィードバック制御の精度を高めるためには、水平位相差は、下限周波数〜上限周波数の周波数範囲の任意の周波数において基準値(
図3では、360°)に対して所定の制限幅内に収まることが望まれる。
【0056】
図4は比較例1としての光偏向器101の背面図である。
図4の光偏向器101の要素のうち、
図2の光偏向器1の要素と同一の要素は、
図2の要素に付けた符号と同一の符号を付けている。
【0057】
実施例1の光偏向器1と比較例1の光偏向器101との相違点は、光偏向器1では、内側枠5の本体部24に周回リブ25及び分岐リブ26が形成されているが、光偏向器101では、内側枠105の本体部124には、リブが形成されていない点、及び光偏向器1の外側連結部13が外側連結部113に代えられている点である。内側枠5の本体部124、及び外側連結部113は、共に等しい厚みであるとともに、光偏向器1(
図2)の本体部24の厚みに等しくなっている。
【0058】
図5は、実施例1(光偏向器1)及び比較例1(光偏向器101)における内側圧電アクチュエータ4の圧電膜の駆動電圧と反射部2の機械半角との関係を対比して示している。駆動電圧の周波数は、実施例1及び比較例1共に共振周波数(前述の
図3において機械半角のピークが生じる時の周波数)とされている。
図5によれば、駆動電圧は、機械半角の大きい領域では、実施例1の方が比較例1より同一の駆動電圧に対して機械半角が増大することが分かる。
【0059】
図6は、実施例1及び比較例1における内側圧電アクチュエータ4の圧電膜の駆動電圧の周波数と反射部2の機械半角との関係を対比して示している。反射部2の機械半角の値と反射部2の振動エネルギーとは比例関係にあるので、特性線が急峻となっている実施例1のQ値の方が比較例1のQ値より高いことが分かる。計算では、Q値は、実施例1では635であり、比較例1では127となった。
【0060】
実施例1では、比較例1に比して、
図5において、共振周波数で同一の機械半角を得るための内側圧電アクチュエータ4の駆動電圧を小さくできたこと、及び
図6においてQ値を大きくできたことには、次のことが寄与したと考えられる。すなわち、実施例1では、内側枠5に周回リブ25及び分岐リブ26が形成され、かつ外側連結部13の厚みが、内側枠5における周回リブ25及び分岐リブ26の形成部位の全体の厚みと等しくされたことである。なお、駆動電圧の低減及びQ値の増大は、内側圧電アクチュエータ4の駆動電力の低減及び縦中心線回りの反射部2の往復回動周波数の制御精度向上につながる。
【0061】
図7は、第2実施例の一次元走査型の光偏向器40の構造に関し、(a)は光偏向器40の背面図、(b)は(a)の矢視A7−A7の断面図である。
図7の光偏向器40の要素のうち、
図2の光偏向器1の要素と同一の要素は、
図2の要素に付けた符号と同一の符号を付けている。
【0062】
光偏向器40では、光偏向器1の外側圧電アクチュエータ6及び外側枠7が省略され、代わりに、外側枠47が設けられている。外側枠47は、光偏向器1の外側枠7と同様に、Si層31を有していて、厚みが外側枠7と等しいものとなっている。外側連結部13は、x軸に沿って延在し、外側の端部において外側枠47に直結している。
【0063】
図8は、比較例2としての光偏向器140の構造に関し、(a)は光偏向器140の背面図、(b)は(a)の矢視A8−A8の断面図である。
図8の光偏向器140の要素のうち、
図7の光偏向器40の要素と同一の要素は、
図7の要素に付けた符号と同一の符号を付けている。なお、光偏向器140のうち、外側枠145以外の要素としての反射部2、トーションバー3及び内側圧電アクチュエータ4は、比較例1の光偏向器101(
図4)のそれらと同一である。
【0064】
光偏向器140では、光偏向器101(
図4)の外側圧電アクチュエータ6及び外側枠7が省略され、代わりに外側枠145が設けられている。外側枠145は、光偏向器40(
図7)と同様に、Si層31を有していて、厚みが光偏向器1の外側枠7と等しくなっている。光偏向器140において、内側連結部11は、x軸方向に延在し、外側の端において外側枠145の内周に結合している。
【0065】
図9は、実施例2(光偏向器40)及び比較例2(光偏向器140)における内側圧電アクチュエータ4の圧電膜の駆動電圧と反射部2の機械半角との関係を対比して示している。駆動電圧の周波数は、実施例2及び比較例2共に共振周波数(機械半角のピークが生じる時の周波数)とされている。
【0066】
図9によれば、駆動電圧は、機械半角の大きい領域では、実施例2の方が比較例2より同一の駆動電圧に対して機械半角が増大することが分かる。
図9において、実施例2では、比較例2に比して、同一の機械半角を得るための内側圧電アクチュエータ4の駆動電圧を小さくできたことは次のことが寄与していると考えられる。すなわち、実施例2では、実施例1と同様に、内側枠5に周回リブ25及び分岐リブ26が形成され、かつ外側連結部13の厚みが、内側枠5における周回リブ25及び分岐リブ26の形成部位の全体の厚みと等しくされたことである。
【0067】
光偏向器40は、光偏向器1と同様に、内側枠5に周回リブ25及び分岐リブ26が形成され、かつ外側連結部13の厚みが、内側枠5における周回リブ25及び分岐リブ26の形成部位の全体の厚みと等しくされた構造となっている。したがって、光偏向器40においても、光偏向器1と同様に、反射部2のポンピングを防止することができる。
【0068】
図10は実施例3としての光偏向器50の背面図である。光偏向器50の要素のうち、
図2の実施例1の光偏向器1の要素と同一の要素は、
図2の要素に付けた符号と同一の符号を付けている。
【0069】
光偏向器50では、光偏向器1の内側連結部11に代えて、内側連結部51が設けられている。内側連結部11と内側連結部51とは、厚みが相異するのみであり、位置や正面視の形状等の他の構造については両者は同一となっている。厚みに関して、前述の
図2(b)では、内側連結部11の部位は、裏面側においてSi層31及び中間酸化膜層32が全部削除されて、本体部24の厚みと等しい厚みになっていた。これに対し、内側連結部51の部位は、外側連結部13及び分岐リブ26の部位と同様に、Si層31は部分的に削除されるだけであり、内側枠5における周回リブ25及び分岐リブ26の形成部位の全体の厚みと等しい厚みになっている。
【0070】
図11は、光偏向器50において、内側圧電アクチュエータ4の圧電膜に印加する駆動電圧の周波数と反射部2の機械半角(実線)及び水平位相差(破線)との関係を示すグラフである。
【0071】
水平位相差について、
図11(光偏向器50)と
図3(光偏向器1)とを対比すると、
図3におけるP1のポンピングモードが
図11では消滅していることが分かる。この消滅には、光偏向器1と光偏向器50との構造対比から、周回リブ25及び分岐リブ26の形成部位の全体と等しい厚みにされた内側連結部51が寄与していると考えられる。なお、光偏向器50でも、y軸方向の外側圧電アクチュエータ6の往復動に因るP2の動作モードは抑止できていない。
【0072】
図12は実施例4としての光偏向器60の背面図である。光偏向器60の要素のうち、
図10の実施例3の光偏向器50の要素と同一の要素は、
図10の要素に付けた符号と同一の符号を付けている。
【0073】
光偏向器60では、光偏向器50の外側連結部13、分岐リブ26及び内側連結部51に代えて、外側連結部63、分岐リブ66及び内側連結部61が設けられている。光偏向器50(
図10)の外側連結部13、分岐リブ26及び内側連結部51と、光偏向器60の外側連結部63、分岐リブ66及び内側連結部61との相違点は、背面視の幅(=正面視の幅)である。すなわち、外側連結部63、分岐リブ66及び内側連結部61の幅d2は、外側連結部13、分岐リブ26及び内側連結部51の幅d1より大に設定されている(d2>d1)。例えば、d1は120μmであるのに対し、d2は、d1より200μm、大きい320μmになっている。なお、光偏向器50(
図10)の外側連結部13、分岐リブ26及び内側連結部51と、光偏向器60の外側連結部63、分岐リブ66及び内側連結部61とは、幅はそれぞれd1,d2となっていて相違するものの、厚みは等しくなっている。
【0074】
図13は、光偏向器60において、内側圧電アクチュエータ4の圧電膜に印加する駆動電圧の周波数と反射部2の機械半角(実線)及び水平位相差(破線)との関係を示す図である。
【0075】
水平位相差について
図13と
図11とを対比すると、
図11におけるP2の動作モードが
図13において消滅していることが分かる。この消滅には、光偏向器50と光偏向器60との構造対比から、外側連結部63、分岐リブ66及び内側連結部61の幅のd1からd2への増大が寄与していると考えられる。
【0076】
図14は実施例5としての光偏向器70の背面図である。光偏向器70の要素のうち、
図12の実施例4の光偏向器60の要素と同一の要素は、光偏向器60の要素に付けた符号と同一の符号を付けている。
【0077】
光偏向器70では、光偏向器60の幅d2の幅広の外側連結部63及び分岐リブ66が、光偏向器1(
図2)又は光偏向器50(
図10)の幅d1の幅狭の外側連結部13及び分岐リブ26に置き換えられている(d1<d2)。
【0078】
図15は、光偏向器70において、内側圧電アクチュエータ4の圧電膜に印加する駆動電圧の周波数と反射部2の機械半角(実線)及び水平位相差(破線)との関係を示す図である。
【0079】
図15によれば、
図3におけるP1のポンピングモードが消滅していることが分かる。この消滅には、
図10と同様に、周回リブ25及び分岐リブ26の部位と内側連結部61が寄与していると考えられる。ただし、
図13において消滅していたP2の動作モードが復活したことが分かる。このことから、光偏向器50(
図10)が有していたP2の動作モードを消滅させるためには、光偏向器50の幅狭の内側連結部11を幅広の内側連結部61に置き換えただけでは足らず、分岐リブ26及び外側連結部13も幅広の分岐リブ66及び外側連結部63に置き換える必要があることが理解できる。
【0080】
なお、
図14の光偏向器70は、厚い厚みの周回リブ25、分岐リブ26及び外側連結部13を有している点で、本発明の実施例であり、
図5及び
図6で説明した効果を奏することができる。
【0081】
図16は実施例6としての光偏向器80の背面図である。光偏向器80の要素のうち、
図12の実施例4の光偏向器60の要素と同一の要素は、光偏向器60の要素に付けた符号と同一の符号を付けている。光偏向器80では、光偏向器60の内側連結部61が、頂角を内側に向けた二等辺三角形の内側連結部81に置き換えられている。なお、内側連結部81の底辺の長さは、背面視の内側連結部61の幅d2に等しい。
【0082】
図17は、光偏向器80において、内側圧電アクチュエータ4の圧電膜に印加する駆動電圧の周波数と反射部2の機械半角(実線)及び水平位相差(破線)との関係を示す図である。
【0083】
図17によれば、
図3におけるP1のポンピングモードが消滅していることが分かる。この消滅には、
図10と同様に、周回リブ25及び分岐リブ26の部位と内側連結部61が寄与していると考えられる。ただし、
図13において消滅していたP2の動作モードが復活したことが分かる。このことから、光偏向器50(
図10)が有していたP2の動作モードを消滅させるためには、光偏向器50において周回リブ25より外側の外側連結部13及び分岐リブ26を幅広の外側連結部63及び分岐リブ66に置き換えただけでは足らず、周回リブ25より内側の内側連結部11も幅広の内側連結部61に置き換える必要があることが分かる。
【0084】
なお、
図16の光偏向器80は、厚い厚みの周回リブ25、分岐リブ26及び外側連結部63を有している点で、本発明の実施例であり、
図5及び
図6で説明した効果を奏することができる。
【0085】
図18は実施例7としての光偏向器90の背面図である。光偏向器90の要素のうち、
図12の実施例4の光偏向器60の要素と同一の要素は、光偏向器60の要素に付けた符号と同一の符号を付けている。光偏向器90では、光偏向器60の内側連結部61が、光偏向器50(
図10)の内側連結部51に置き換えられている。
【0086】
図19は、光偏向器80において、内側圧電アクチュエータ4の圧電膜に印加する駆動電圧の周波数と反射部2の機械半角(実線)及び水平位相差(破線)との関係を示す図である。
【0087】
図19によれば、
図17のP2の動作モードは消滅しているものの、それ以外のP3,P4の動作モードが新たに出現してしまったことが分かる。このことから、新たな不適切な動作モードの出現を回避しつつ、P2の動作モードを消滅するためには、光偏向器50(
図10)の内側連結部51、分岐リブ26及び外側連結部13に対し、光偏向器60(
図12)のように、すべて幅広の内側連結部61、分岐リブ66及び外側連結部63に置き換える必要があることが理解できる。
【0088】
なお、光偏向器80は、光偏向器1と同様に、内側枠5に周回リブ25及び分岐リブ66が形成され、かつ外側連結部63の厚みが、内側枠5における周回リブ25及び分岐リブ66の形成部位の全体と等しい厚みとされた構造となっている。したがって、光偏向器80は、本発明の実施例である。そして、光偏向器1について説明した
図5及び
図6の効果を同様に奏することができる。
【0089】
本発明の実施形態について説明した。該実施形態の光偏向器は、光スキャナに装備され、該光スキャナは、例えば、走査光の出射が必要となるプロジェクタ、バーコードリーダ、レーザプリンタ、車両用ヘッドランプ、又は車両に装備されるヘッドアップディスプレイ等に装備される。
【0090】
本発明は、実施形態に限定されることなく、改良及び変形した構成を包含する。例えば、図示の実施形態では、反射部2は円形になっているか、正方形、矩形又は多角形にすることもできる。ただし、二次元走査型光偏向器に装備される反射部2は、直交する2つの中心線を有する形状(例:円、矩形又は正六角形)に限定される。
【0091】
内側圧電アクチュエータ4の内外周の形状は、円形の反射部2に合わせて、円形となっているが、反射部2が非円形であれば、該非円形に合わせた形状にすることができる。
【0092】
光偏向器1(
図2の実施例1)では、周回リブ25は、内側枠5の内周縁に沿って、内側枠5の全周を周回しているが、内側枠5の外周縁に沿って周回していたり、内周縁と外周縁との中間部を周回するようになっていても、
図5及び
図6の実施例1と同一の効果を得ることができる。ただし、周回リブ25は、内側枠5の内周縁に沿って、背面視が全長にわたり等幅で周回する方が、全長及び最大幅が減少し、内側枠5の軽量化上、好ましい。
【0093】
光偏向器50(
図10の実施例3)において、周回リブ25を内側枠5の内周縁に沿ってではなく、内側枠5の内周縁から外周縁の方へ離して、周回させるようにすることもできる。しかしながら、その場合には、周回リブ25と内側連結部51との連結するリブが内側枠5の裏面に形成される必要がある。
【0094】
1,40,50,60,70,80,90・・・光偏向器、2・・・反射部、3・・・トーションバー、4・・・内側圧電アクチュエータ(圧電アクチュエータ)、5・・・内側枠、6・・・外側圧電アクチュエータ(別の圧電アクチュエータ)、7,47・・・外側枠、11,51・・・内側連結部(第1連結部)、13,63・・・外側連結部(第2連結部)、17・・・折返し部、25・・・周回リブ、26,66・・・分岐リブ。