特許第6289961号(P6289961)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6289961
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】基板処理装置及び基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20180226BHJP
   H01L 21/306 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
   H01L21/304 648H
   H01L21/304 643A
   H01L21/304 647Z
   H01L21/306 R
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-65610(P2014-65610)
(22)【出願日】2014年3月27日
(65)【公開番号】特開2015-191895(P2015-191895A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2016年8月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000866
【氏名又は名称】特許業務法人三澤特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100088720
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞一
(74)【代理人】
【識別番号】100118430
【弁理士】
【氏名又は名称】中原 文彦
(72)【発明者】
【氏名】大田垣 崇
(72)【発明者】
【氏名】林 航之介
(72)【発明者】
【氏名】檜森 洋輔
【審査官】 柴山 将隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−211092(JP,A)
【文献】 米国特許第06588437(US,B1)
【文献】 特開2009−231732(JP,A)
【文献】 特開2004−214449(JP,A)
【文献】 特開2013−172079(JP,A)
【文献】 特開2004−111668(JP,A)
【文献】 特開2014−022661(JP,A)
【文献】 特開2008−198699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/306
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する基板の表面に処理液を供給して、前記処理液と前記基板とを反応させ、または、前記基板上に既に存在する処理液を別の処理液に置き換える液供給部と、
前記液供給部により前記処理液が供給されている前記基板の表面全体または前記基板の表面上に予め設定した1つまたは複数箇所の表面温度を検出する温度検出部と、
前記温度検出部により検出された前記表面温度が予め設定した所定温度に達したか否かを判断する温度監視部と、
前記温度監視部により前記表面温度が前記所定温度に達したと判断された場合、前記液供給部に前記処理液の供給を停止させる制御部と、
を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記液供給部は、前記処理液としてエッチング液及びリンス液をそれぞれ供給し、
前記温度検出部は、前記液供給部により前記エッチング液が供給されている前記基板の表面全体または前記基板の表面上に予め設定した1つまたは複数箇所の表面温度を検出し、
前記制御部は、前記温度監視部により前記表面温度が前記所定温度に達したと判断された場合、前記液供給部に前記エッチング液の供給を停止させ、次に前記リンス液の供給を開始させることを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記液供給部は、前記基板の表面に前記処理液を供給するノズルを有しており、
前記温度検出部は、前記基板の表面全体または前記基板の表面上に予め設定した複数箇所の表面温度分布を検出し、
前記温度検出部により検出された前記表面温度分布に応じて、前記基板に対する前記処
理液の供給位置を変えるように前記ノズルを移動させる移動機構と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記温度監視部により前記表面温度が前記所定温度に達していないと判断された場合であって、前記処理液の供給開始から予め設定した所定の処理設定時間が経過した場合、処理不良の発生を報知する報知部をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
回転する基板の表面に処理液を供給して、前記処理液と前記基板とを反応させ、または、前記基板上に既に存在する処理液を別の処理液に置き換える工程と、
前記処理液が供給されている前記基板の表面全体または前記基板の表面上に予め設定した1つまたは複数箇所の表面温度を検出する工程と、
検出した前記表面温度が予め設定した所定温度に達したか否かを判断する工程と、
前記表面温度が前記所定温度に達したと判断した場合、前記処理液の供給を停止する工程と、
を有することを特徴とする基板処理方法。
【請求項6】
前記処理液を供給する工程では、前記処理液としてエッチング液を供給し、
前記エッチング液の供給を停止した場合、前記基板の表面にリンス液を供給する工程と、
前記リンス液が供給されている前記基板の表面全体または前記基板の表面上に予め設定した1つまたは複数箇所の表面温度を検出する工程と、
検出した、前記リンス液が供給されている前記基板の表面温度が予め設定した所定温度に達したか否かを判断する工程と、
前記表面温度が前記所定温度に達したと判断した場合、前記リンス液の供給を停止する工程と、
をさらに有することを特徴とする請求項5に記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記基板の表面温度を検出する工程では、前記基板の表面全体または前記基板の表面上に予め設定した複数箇所の表面温度分布を検出し、
検出した前記基板の表面温度分布に応じて、前記基板に対する前記処理液の供給位置を変える工程を有することを特徴とする請求項5または請求項6に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記表面温度が前記所定温度に達していないと判断した場合であって、前記処理液の供給開始から予め設定した所定の処理設定時間が経過した場合、処理不良の発生を報知する工程をさらに有することを特徴とする請求項5ないし請求項7のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、基板処理装置及び基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板処理装置は、半導体や液晶パネルなどの製造工程において、ウェーハや液晶基板などの基板の表面に処理液(例えば、エッチング液やリンス液など)を供給して基板表面を処理する装置である。この基板処理装置の中には、基板を水平状態で回転させ、ノズルから基板表面の略中央に処理液を供給し、その処理液を回転の遠心力によって基板表面に広げるスピン処理を行う装置が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−17461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述の基板処理装置において、基板表面からの処理液の排出が不完全であり、処理液が基板表面に残留すると、基板表面の処理均一性(例えば、エッチング処理やリンス処理などの処理均一性)が悪化し、あるいは、汚れやシミなどのステインが発生するため、処理不良が生じてしまう。また、処理液が過剰に供給されることがあり、処理液の消費量が増加してしまう。このようなことから、処理不良の抑止及び処理液消費量の削減が求められている。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、処理不良の抑止及び処理液消費量の削減を実現することができる基板処理装置及び基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る基板処理装置は、
回転する基板の表面に処理液を供給して、前記処理液と前記基板とを反応させ、または、前記基板上に既に存在する処理液を別の処理液に置き換える液供給部と、
前記液供給部により前記処理液が供給されている前記基板の表面全体または前記基板の表面上に予め設定した1つまたは複数箇所の表面温度を検出する温度検出部と、
前記温度検出部により検出された前記表面温度が予め設定した所定温度に達したか否かを判断する温度監視部と、
前記温度監視部により前記表面温度が前記所定温度に達したと判断された場合、前記液供給部に前記処理液の供給を停止させる制御部とを備える。
【0007】
実施形態に係る基板処理方法は、
回転する基板の表面に処理液を供給して、前記処理液と前記基板とを反応させ、または、前記基板上に既に存在する処理液を別の処理液に置き換える工程と、
前記処理液が供給されている前記基板の表面全体または前記基板の表面上に予め設定した1つまたは複数箇所の表面温度を検出する工程と、
検出した前記表面温度が予め設定した所定温度に達したか否かを判断する工程と、
前記表面温度が前記所定温度に達したと判断した場合、前記処理液の供給を停止する工程とを有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、処理不良の抑止及び処理液消費量の削減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の一形態に係る基板処理装置の概略構成を示す図である。
図2】実施の一形態に係るリンス液供給時の基板の表面温度分布を説明するための説明図である。
図3】実施の一形態に係る基板処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の一形態について図面を参照して説明する。
【0011】
図1に示すように、実施の一形態に係る基板処理装置1は、処理室となる処理ボックス2と、その処理ボックス2内に設けられたカップ3と、そのカップ3内で基板Wを水平状態で支持する支持部4と、その支持部4を水平面内で回転させる回転機構5と、支持部4上の基板Wの表面に処理液を供給する液供給部6と、処理液供給時の基板Wの表面温度を検出する温度検出部7と、その温度検出部7を支持する支持機構8と、処理液供給時の基板Wの温度を監視する温度監視部9と、処理不良を報知する報知部10と、各部を制御する制御部11とを備えている。
【0012】
カップ3は、円筒形状に形成されており、支持部4を周囲から囲んで内部に収容する。カップ3の周壁の上部は径方向の内側に向かって傾斜しており、支持部4上の基板Wが露出するように開口している。このカップ3は、回転する基板W上から流れ落ちた処理液や飛散した処理液を受け取る。なお、カップ3の底部には、受け取った処理液を排出する排出管(図示せず)が接続されている。
【0013】
支持部4は、カップ3内の略中央に位置付けられ、水平面内で回転可能に設けられている。この支持部4は、ピンなどの支持部材4aを複数有しており、これらの支持部材4aによってウェーハや液晶基板などの基板Wを着脱可能に保持する。
【0014】
回転機構5は、支持部4に連結された回転軸やその回転軸を回転させるモータ(いずれも図示せず)などを有している。この回転機構5は、モータの駆動により回転軸を介して支持部4を回転させる。回転機構5は制御部11に電気的に接続されており、その駆動が制御部11により制御される。
【0015】
液供給部6は、支持部4上の基板Wの表面に処理液をそれぞれ供給する複数のノズル6a及び6bと、それらのノズル6a及び6bを支持部4上の基板Wの表面に沿って移動させる移動機構6cと、各ノズル6a及び6bに処理液を提供する液提供部6dとを備えている。
【0016】
各ノズル6a及び6bは、支持部4上の基板Wの表面上方であってその表面の中心付近に位置するように設けられている。第1のノズル6aは、液提供部6dから提供されたエッチング液を回転中の支持部4上の基板Wの表面上方からその表面に向けて吐出する。また、第2のノズル6bは、液提供部6dから提供されたリンス液を回転中の支持部4上の基板Wの表面上方からその表面に向けて吐出する。
【0017】
なお、図1では、ノズル本数は二本となっているが、この本数は例示であり、特に限定されるものではない。また、ノズルは処理液の種類ごとに一本設けられているが、これに限るものではなく、一種類に二本など複数本設けられても良く、この本数は特に限定されるものではない。
【0018】
移動機構6cは、各ノズル6a及び6bを保持するアーム21と、そのアーム21を水平面内で回転可能にその一端部を支持する支柱22とにより構成されている。アーム21は支柱22を中心として支持部4上の基板Wの表面に沿って回転するため、そのアーム21が支持するノズル6a及び6bも基板Wの表面に沿って移動することになる。例えば、移動機構6cは、支持部4上の基板Wの表面略中央に対向する処理位置と、その処理位置から退避して支持部4上の基板Wの搬入や搬出を可能とする待機位置とに各ノズル6a及び6bを移動させる。この移動機構6cは制御部11に電気的に接続されており、その駆動が制御部11により制御される。
【0019】
液提供部6dは、液量を調整する調整弁となるバルブ31及び32、さらに、処理液を貯留するタンクや駆動源となるポンプ(いずれも図示せず)などを備えている。この液提供部6dは、各バルブ31及び32を開状態とし、ポンプの駆動により各ノズル6a及び6bに処理液(エッチング液やリンス液)を与える。液提供部6dは制御部11に電気的に接続されており、その駆動が制御部11により制御される。このため、各バルブ31及び32の個々の開口量が制御部11により制御されることになる。
【0020】
なお、エッチング処理液としては、例えば、フッ酸や硝酸などを含む各種の薬液を用いることが可能であり、リンス液としては、例えば、純水や超純水などの各種の液体を用いることが可能である。
【0021】
温度検出部7は、基板Wの表面温度を検出する検出部(例えば、熱感知機器)であり、支持部4上の基板Wの表面上方にその表面温度を検出することが可能になる位置に設けられている。この温度検出部7は温度監視部9に電気的に接続されており、検出した基板Wの表面温度を温度監視部9に伝える。温度検出部7としては、基板Wの表面温度分布を検出するサーモグラフィを用いることが可能であり、さらに、サーモグラフィに替えて複数の非接触式温度計(例えば、非接触放射温度計)や接触式温度計などを用いることも可能である。なお、基板Wの表面温度分布を検出する必要が無い場合もあり、温度検出部7として非接触式温度計又は接触式温度計を一つだけ用いることも可能である(詳しくは、後述する)。
【0022】
この温度検出部7は、例えば、図2に示すような基板Wの表面温度分布を検出する。この温度分布は、常温(例えば、20℃)のリンス液が基板Wの表面上に供給された直後の温度分布である。その後、リンス液の供給が継続されると、基板Wの表面温度分布は徐々にリンス液の温度(常温)で均一になっていく。このとき、リンス液がノズル6bから供給される基板Wの表面上の供給位置(供給点)A1は、基板Wの略中央(中央付近)である。基板Wの供給位置A1の周辺の表面温度は20℃程度となり、基板Wの最外周部(最外縁部)の一部の温度は105℃となっている。この105℃の温度を有する箇所は、前工程のエッチング処理により残留したエッチング液の反応熱によって温度が高くなっている箇所、すなわちリンス液によるリンス処理、例えばリンス液の供給が不十分で、エッチング処理が進行している個所である。
【0023】
図1に戻り、支持機構8は、温度検出部7を保持するアーム8aと、そのアーム8aを支持する支柱8bとにより構成されている。アーム8a及び支柱8bは、各ノズル6a及び6bからの処理液の供給を妨げない位置に設けられ、温度検出部7を支持部4上の基板Wの表面温度を検出することが可能となるように保持している。なお、基板Wの搬入や搬出にアーム8aが邪魔となる場合には、アーム8aを旋回させる旋回機構を設け、基板Wの搬入や搬出時に旋回機構によりアーム8aを邪魔にならない位置に移動させるようにしても良い。
【0024】
温度監視部9は、エッチング処理やリンス処理などの基板処理時に温度検出部7により検出された基板Wの表面温度を監視し、必要に応じて制御部11に監視結果を伝える。例えば、エッチング処理又はリンス処理時には、基板Wの表面温度が所定のエッチング設定温度又はリンス設定温度に達したか否かを判断し、その判断結果を制御部11に伝える。エッチング処理時の判断には、基板Wの表面温度として、表面温度分布のうち一番低い温度を用い、その一番低い温度が所定のエッチング設定温度(例えば、100℃)に達したか否かを判断する。一方、リンス処理時の判断には、基板Wの表面温度として、表面温度分布のうち一番高い温度を用い、その一番高い温度が所定のリンス設定温度(例えば、20℃)に達したか否かを判断する。
【0025】
なお、前述の判断に用いる温度としては、基板Wの表面温度分布のうち一番低い温度や一番高い温度を用いること以外にも、基板Wの表面温度分布の平均値を取り、その平均値を用いても良い。また、基板Wの表面において、エッチング処理やリンス処理などの基板処理が不十分となる箇所(例えば、基板Wの最外周部の一部)が実験や経験などから判明している場合には、その箇所の表面温度を検出するように温度検出部7として非接触式温度計又は接触式温度計を設け、検出した表面温度を前述の判断に用いるようにしても良い。また、基板処理が不十分となる箇所が複数存在する場合には、それらの箇所の表面温度を検出するように非接触式温度計又は接触式温度計を複数設け、検出した複数の表面温度のうち一番高い温度や一番低い温度を用いたり、あるいは、それら表面温度の平均値を用いたりしても良い。
【0026】
報知部10は、エッチング処理やリンス処理が不良である場合、その処理不良の発生をユーザに報知する。この報知部10としては、例えば、ランプやブザーなどの警報器、文字を表示する表示部及び音声を出力する音声出力部などを用いることが可能である。
【0027】
制御部11は、各部を集中的に制御するマイクロコンピュータと、基板処理に関する基板処理情報や各種プログラムなどを記憶する記憶部(いずれも図示せず)とを備えている。この制御部11は、基板処理情報や各種プログラムに基づいて回転機構5や液供給部6などを制御し、回転中の支持部4上の基板Wの表面に対し、液提供部6dから提供される処理液(エッチング液又はリンス液)を各ノズル6a及び6bのどちらか一方から供給する制御を行う。
【0028】
次に、前述の基板処理装置1が行う基板処理の流れについて図3を参照して説明する。
【0029】
図3に示すように、エッチング処理において、ノズル6aから回転中の支持部4上の基板Wの表面へのエッチング液の供給が開始され(ステップS1)、基板Wの表面の温度監視が温度監視部9によって開始される(ステップS2)。なお、基板Wの表面温度は温度検出部7により常時検出されているが、ステップS2の温度監視の開始から検出温度が監視されることになる。
【0030】
ステップS1において、エッチング液の供給が開始されると、ノズル6aから基板中心付近に供給されたエッチング液は遠心力によって基板周縁部へと流れていく。これにより、エッチング処理中、基板Wの表面はエッチング液によって覆われることになる。このときの基板Wの表面温度が温度検出部7により検出され、温度監視部9に入力される。
【0031】
ステップS2の後、エッチング液供給開始からの経過時間が所定のエッチング設定時間(例えば、数分)内であるか否かが制御部11により判断され(ステップS3)、経過時間が所定のエッチング設定時間内であると判断されると(ステップS3のYES)、検出温度が所定のエッチング設定温度(例えば、100℃)以上であるか否かが温度監視部9により判断される(ステップS4)。なお、エッチング設定時間がエッチング処理時の処理設定時間であり、予めユーザによって設定されている。
【0032】
ステップS4において、検出温度が所定のエッチング設定温度以上でないと判断されると(ステップS4のNO)、エッチング処理が継続され、処理フローがステップS3に戻される。このステップS3において、経過時間が所定のエッチング設定時間内でない、つまり、エッチング処理が終了したと判断された場合には(ステップS3のNO)、振り切り乾燥などの基板乾燥後に基板Wの回転が制御部11により停止され、所定のエッチング設定時間内に検出温度が所定のエッチング設定温度以上とならなかったため(すなわち、エッチング液が基板Wの表面全体に十分に行き渡らなかったため)、エッチング処理不良が発生した旨の警告が報知部10により報知される(ステップS5)。
【0033】
ここで、ステップS4では、温度監視部9により監視されている検出温度として、表面温度分布のうち一番低い温度が用いられ、その一番低い温度が所定のエッチング設定温度以上であるか否かが判断される。この判断により、エッチング処理の完了タイミングを把握することが可能になる。すなわち、一番低い温度が所定のエッチング設定温度以上になるということは、基板Wの表面全体にエッチング液が十分に行き渡り、その基板Wの表面全体で十分な反応(反応熱)が生じて表面全体が均一に処理され、基板Wの表面全体でエッチング処理が完了したことを示す。
【0034】
ステップS4において、検出温度が所定のエッチング設定温度以上であると判断された場合には(ステップS4のYES)、エッチング処理からリンス処理への切り替えが行われ、すなわち、エッチング液の供給が制御部11により停止されてリンス液の供給が開始される(ステップS6)。
【0035】
ステップS6において、リンス液の供給が開始されると、ノズル6bから基板中心付近に供給されたリンス液は遠心力によって基板周縁部へと流れていく。これにより、リンス処理中、基板Wの表面はリンス液によって覆われることになる。このときの基板Wの表面温度が温度検出部7により検出され、温度監視部9に入力される。
【0036】
ステップS6の後、リンス液供給開始からの経過時間が所定のリンス設定時間(例えば、30秒)内であるか否かが制御部11により判断され(ステップS7)、経過時間が所定のリンス設定時間内であると判断されると(ステップS7のYES)、検出温度が所定のリンス設定温度(例えば、20℃)以下であるか否かが温度監視部9により判断される(ステップS8)。なお、リンス設定時間がリンス処理時の処理設定時間であり、予めユーザによって設定されている。
【0037】
ステップS8において、検出温度が所定のリンス設定温度以下でないと判断されると(ステップS8のNO)、リンス処理が継続され、処理フローがステップS7に戻される。このステップS7において、経過時間が所定のリンス設定時間内でない、つまり、リンス処理が終了したと判断された場合には(ステップS7のNO)、振り切り乾燥などの基板乾燥後に基板Wの回転が制御部11により停止され、所定のリンス設定時間内に検出温度が所定のリンス設定温度以下とならなかったため(すなわち、リンス液が基板Wの表面全体に十分に行き渡らなかったため)、リンス処理不良が発生した旨の警告が報知部10により報知される(ステップS5)。
【0038】
ここで、ステップS8では、温度監視部9により監視されている検出温度として、表面温度分布のうち一番高い温度が用いられ、その一番高い温度が所定のリンス設定温度以下であるか否かが判断される。この判断により、リンス処理の完了タイミングを把握することが可能になる。すなわち、一番高い温度が所定のリンス設定温度以下になるということは、基板Wの表面全体にリンス液が十分に行き渡って表面全体が均一に処理され、その基板Wの表面全体でリンス処理が完了したことを示す。
【0039】
ステップS8において、検出温度が所定のリンス設定温度以下であると判断された場合には(ステップS8のYES)、リンス処理の終了、すなわち、リンス液の供給が制御部11により停止され(ステップS9)、さらに、温度監視部9による温度監視が停止され(ステップS10)、振り切り乾燥などの基板乾燥後に基板Wの回転が制御部11により停止される(ステップS11)。
【0040】
このような基板処理によれば、エッチング処理時、基板Wの表面に対するエッチング液の供給が基板Wの表面温度に応じて停止される。また、リンス処理時にも、基板Wの表面に対するリンス液の供給が基板Wの表面温度に応じて停止される。このため、エッチング処理及びリンス処理の処理完了タイミングが最適となり、処理に必要となる適量の処理液が基板Wの表面上に供給されることになる。
【0041】
詳述すると、エッチング処理では、適量のエッチング液が基板Wの表面全体に行き渡り、基板Wの表面全体で十分な反応(反応熱)が生じ、その基板Wの表面全体が均一に処理されることになる。このため、エッチング液の不足や残留などによる基板Wのエッチング処理均一性の悪化、さらに、汚れやシミなどのステインの発生を抑止することができる。加えて、適量のエッチング液が供給されるため、エッチング液の消費量を削減することができる。
【0042】
また、リンス処理では、適量のリンス液が基板Wの表面全体に行き渡り、基板Wの表面全体が均一に処理されることになる。このため、リンス液の不足や前工程のエッチング液の残留による基板Wのリンス処理均一性の悪化、さらに、汚れやシミなどのステインの発生を抑止することができる。加えて、適量のリンス液が供給されるため、リンス液の消費量を削減することができる。
【0043】
また、前述のようなエッチング処理やリンス処理において、処理不良が発生すると、その処理不良の発生がユーザに報知されるため、ユーザは処理不良の発生を把握することが可能になる。これにより、ユーザは処理不良を判定するために製品を検査する必要が無くなるので、ユーザの利便性を向上させることができ、さらに、検査時間の削減や検査精度の向上を達成することができる。
【0044】
以上説明したように、実施の一形態によれば、ノズル6a又は6bにより処理液(例えば、エッチング液又はリンス液)が供給されている基板Wの表面温度を検出し、その検出した表面温度が所定温度に達した場合、ノズル6a又は6bの処理液供給を停止することによって、処理完了タイミングが適切となり、処理に必要となる適量の処理液が基板Wの表面上に供給されることになる。このため、処理液の不足や残留などにより基板Wの表面の処理均一性が悪化すること、あるいは、汚れやシミなどのステインが発生することを抑止することが可能となる。また、過剰な処理液の供給が行われないため、処理液の消費量の増加を抑止することが可能となる。このようにして、処理不良の抑止及び処理液消費量の削減を実現することができる。
【0045】
(他の実施形態)
前述の実施形態においては、基板Wを枚葉処理によって処理しているが、これに限るものではなく、バッチ処理によって処理するようにしても良い。このバッチ処理を行う場合、各種の温度検出部7を用いることが可能であるが、基板Wが重なるように近い距離で並ぶ場合には、温度検出部7として接触式温度計を用い、その接触式温度計を基板Wごとにその表面に直接設けるようにすることが望ましい。なお、バッチ処理時には、基板Wが漬けられる処理液を貯留する貯留槽(貯留部)が、基板Wの表面に処理液を供給する液供給部として機能する。なお、基板Wの表面への処理液供給を停止する場合には、基板取出機構を制御して貯留槽から基板Wを取り出したり、あるいは、排出弁を制御して貯留槽内の処理液を排出したりする。
【0046】
また、前述の実施形態においては、処理中に各ノズル6a及び6bを移動機構6cにより移動させていないが、これに限るものではなく、例えば、処理中に基板Wの表面温度に応じて各ノズル6a及び6bを移動機構6cにより移動させるようにしても良い。一例として、エッチング処理時には、基板Wの表面温度が他の箇所に比べて最も低い箇所に対向するようにノズル6aを移動させたり、また、リンス処理時には、基板Wの表面温度が他の箇所に比べて最も高い箇所に対向するようにノズル6bを移動させたりする。このような場合には、エッチング処理やリンス処理の処理時間を短縮することが可能となるため、処理不良の抑止を実現しつつ、処理液の消費量をさらに削減することができる。
【0047】
また、前述の実施形態においては、検出温度が所定の設定時間内に所定の設定温度に達しない場合に、エッチング処理又はリンス処理を停止して警告の報知を行っているが、これに限るものではなく、例えば、警告の報知を行わず、検出温度が設定温度に達するまで処理を継続するようにしても良い。
【0048】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0049】
1 基板処理装置
6 液供給部
6a ノズル
6b ノズル
6d 液提供部
6c 移動機構
7 温度検出部
9 温度監視部
10 報知部
11 制御部
W 基板
図1
図2
図3