特許第6289967号(P6289967)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6289967
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】設備更新方法及び設備更新用の通報装置
(51)【国際特許分類】
   E03F 5/02 20060101AFI20180226BHJP
   E03F 5/22 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
   E03F5/02
   E03F5/22
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-68661(P2014-68661)
(22)【出願日】2014年3月28日
(65)【公開番号】特開2015-190208(P2015-190208A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2016年12月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107478
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 薫
(72)【発明者】
【氏名】末吉 康則
(72)【発明者】
【氏名】十川 孝志
(72)【発明者】
【氏名】川勝 啓行
(72)【発明者】
【氏名】松江 寛史
【審査官】 西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−171880(JP,A)
【文献】 特開2011−008627(JP,A)
【文献】 米国特許第05924846(US,A)
【文献】 特開2002−322983(JP,A)
【文献】 特開2002−130147(JP,A)
【文献】 特開2010−236190(JP,A)
【文献】 特開2002−230670(JP,A)
【文献】 特開平10−030271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 5/02
E03F 5/22
E04D 13/08
F04B 49/00
F04D 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンホールに設置された水位計と電気的に接続され前記水位計の出力信号を所定の水位信号に変換する水位変換器と、前記マンホールに設置された水中ポンプと電気的に接続され前記水位変換器から入力される水位信号に基づいて前記水中ポンプを起動または停止制御する制御回路と、を備えて構成されている既設のマンホールポンプの制御盤の設備更新方法であって、
バッテリーバックアップされ、前記水位計と電気的に接続され、前記水位計の出力信号を前記所定の水位信号に変換する水位変換機能を備える通報装置を、前記水位変換器に代えて設置する設備更新方法。
【請求項2】
マンホールに設置された水位計と電気的に接続され前記水位計の出力信号を所定の水位信号に変換する水位変換器と、前記マンホールに設置された水中ポンプと電気的に接続され前記水位変換器から入力される水位信号に基づいて前記水中ポンプを起動または停止制御する制御回路と、マンホールポンプ設備の稼働情報を外部に送信する通報装置と、を備えて構成されている既設のマンホールポンプの制御盤の設備更新方法であって、
バッテリーバックアップされ、前記水位計と電気的に接続され、前記水位計の出力信号を前記所定の水位信号に変換する水位変換機能を備える更新用の通報装置を、既設の水位変換器及び通報装置に代えて設置する設備更新方法。
【請求項3】
前記通報装置は、前記水位信号及び前記制御回路から入力されるポンプ制御信号に基づいてマンホールポンプ設備の稼働情報を外部に送信するものである請求項1または2記載の設備更新方法。
【請求項4】
マンホールポンプの制御盤に設置される設備更新用の通報装置であって、
マンホールに設置された水位計と電気的に接続され前記水位計の出力信号を所定の水位信号に変換するとともに、マンホールに設置された水中ポンプを起動または停止制御する制御回路に、変換した水位信号を出力する水位変換部と、
マンホールポンプ設備の稼働情報を外部に送信する通報部と、
停電時に前記水位変換部及び通報部に給電するバックアップ用バッテリを備えた電源部と、
を備えている設備更新用の通報装置。
【請求項5】
前記通報部は、前記水位信号及び前記制御回路から入力されるポンプ制御信号に基づいてマンホールポンプ設備の稼働情報を外部に送信するものである請求項4記載の設備更新用の通報装置
【請求項6】
前記水位変換部は停電時に前記バックアップ用バッテリから前記水位計に給電して前記水位計の出力信号を所定の水位信号に変換するように構成され、
前記通報部は停電時でも外部要求に応じて前記水位信号を通報するように構成されている請求項4または5記載の設備更新用の通報装置。
【請求項7】
前記水位変換部は停電時に前記バックアップ用バッテリから前記水位計に給電して前記水位計の出力信号を所定の水位信号に変換するように構成され、
前記通報部は停電時に水位信号が警報レベルに達すると、自発的に外部通報するように構成されている請求項4から6の何れかに記載の設備更新用の通報装置。
【請求項8】
請求項4から7の何れかに記載の通報装置と、マンホールに設置された水中ポンプと電気的に接続され、水位変換器から入力される水位信号に基づいて前記水中ポンプを起動または停止制御する制御回路を備えたマンホールポンプの制御盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備更新方法及び設備更新用の通報装置に関し、特に既設のマンホールポンプの制御盤の設備更新方法及び設備更新用の通報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上流の汚水管から流入した汚水を下流の汚水管に搬送する複数台の水中ポンプが収容されたマンホールの近傍には制御盤が設置されている。
【0003】
制御盤は、マンホールに設置された投込圧力式の水位計と電気的に接続され水位計の出力信号を所定の水位信号に変換する水位変換器と、マンホールに設置された水中ポンプと電気的に接続され前記水位変換器から入力される水位信号に基づいて水中ポンプを起動または停止制御する制御回路と、バッテリーバックアップされ水位変換器から入力される水位信号及び制御回路から入力されるポンプ制御信号に基づいてマンホールポンプ設備の稼働情報を外部に送信する通報装置等の機能ブロックと、水中ポンプと制御回路及び水位計と水位変換器等を接続するための複数の端子が配列された端子台等と、それらを収容する制御盤筺体を備えている。
【0004】
水位変換器は圧力センサが内蔵された水位計に給電し、その通電電流によって検知される水位を水中ポンプの制御に必要な水位信号、つまり停止水位LWL、起動水位HWL、高水位HHWL等に変換するとともに、通報用のアナログ計測信号、例えば4〜20mAの電流信号や1〜5Vの電圧信号に変換する電子回路である。
【0005】
通常は、このような制御盤を構成する部品に故障が発生すると、故障した部品単位に交換することにより復旧されているが、機能ブロック毎の耐用年数が経過すると機能ブロック単位で交換されている。
【0006】
特許文献1には、制御回路による制御方法そのものを変更する必要がある場合等の大規模な改修に備えて、既存の制御盤設備を有効利用して更新設備に要するコストを低減することができる水中ポンプの制御ユニット及び水中ポンプの制御盤が提案されている。
【0007】
しかし、そのような大改修にはそれに応じたコストを要すること、水位変換器や通報装置等の電子回路はリレー回路等で構成される制御回路よりも耐用年数が短いこと、設備更新コストの低減等の理由で、これら水位変換器や通報装置等の機能ブロック単位で交換される場合も多くあり、通報装置が組み込まれていない既存の制御盤に通報装置のみを組込む場合もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2013−24151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の通報装置は水位変換器により変換された水位信号や制御回路によるポンプの稼働情報等を記憶するメモリと、メモリに記憶された稼働情報等を外部に送信する通信回路を備え、外部の監視装置からの送信要求に応答して稼働情報等を送信し、水中ポンプの故障やマンホールの汚水水位が異常上昇した場合等には、自発的に外部の監視装置に異常情報を通報するように構成されている。そして、通報装置は停電時であっても水位信号の稼働情報を外部の監視装置に送信するためにバッテリーバックアップされている。
【0010】
このような通信回路には様々な態様があり、通常はNTT一般回線、パケット通信網、携帯電話網等の広域無線通信回線に接続可能な通信回路で構成されているが、広域無線通信回線を介して外部に送信可能な通信回路を備えていない制御盤には子局となる小電力無線通信回路が設置され、子局から親局となる小電力無線通信回路を備えた近隣の制御盤に可動情報等を送信し、親局となる制御盤に備えた広域無線通信回線に接続可能な通信回路から外部の監視装置に通報するように構成されている場合もある。
【0011】
しかし、停電が発生すると水位信号を生成する水位変換器は動作を停止するため、その後の正確な水位の変動を把握することができないという問題があり、そのために水位変換器にバックアップ用電源を設けるとコストが上昇するという問題もあった。
【0012】
また、水中ポンプ及び水中ポンプの制御系となる制御回路及び水位変換器は、三相200Vの商用電源から給電されるが、その他の負荷回路には別途単相の商用電源から給電する必要があるという法的な制限から、避雷器を夫々に設ける場合には備品コストが上昇し、一方のみに避雷器を設けると耐雷特性が低下するという問題もあった。
【0013】
本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたものであり、停電時にも適切に水位を検知して外部の監視装置に通報が可能になる安価な設備更新方法及び設備更新用の通報装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の目的を達成するため、本発明による設備更新方法の第一の特徴構成は、特許請求の範囲の書類の請求項1に記載した通り、マンホールに設置された水位計と電気的に接続され前記水位計の出力信号を所定の水位信号に変換する水位変換器と、前記マンホールに設置された水中ポンプと電気的に接続され前記水位変換器から入力される水位信号に基づいて前記水中ポンプを起動または停止制御する制御回路と、を備えて構成されている既設のマンホールポンプの制御盤の設備更新方法であって、バッテリーバックアップされ、前記水位計と電気的に接続され、前記水位計の出力信号を前記所定の水位信号に変換する水位変換機能を備える通報装置を、前記水位変換器に代えて設置する点にある。
【0015】
上述の構成によれば、バッテリーバックアップされた通報装置に水位変換機能を備えているので、停電時であっても水位センサに給電することができ、水位変換された水位信号を外部の監視装置に通報できるようになる。通報装置を備えていない既設のマンホールポンプの制御盤に新規に通報装置を組み込む場合に安価に好適に対応できるようになる。また、水位変換機能が組み込まれ水位センサに接続可能な通報装置であるので、三相200Vの商用電源から給電可能になり、一系統の商用電源のみに避雷器を設ければよいので安価に耐雷特性を向上させることができる。
【0016】
同第二の特徴構成は、同請求項2に記載した通り、マンホールに設置された水位計と電気的に接続され前記水位計の出力信号を所定の水位信号に変換する水位変換器と、前記マンホールに設置された水中ポンプと電気的に接続され前記水位変換器から入力される水位信号に基づいて前記水中ポンプを起動または停止制御する制御回路と、マンホールポンプ設備の稼働情報を外部に送信する通報装置と、を備えて構成されている既設のマンホールポンプの制御盤の設備更新方法であって、バッテリーバックアップされ、前記水位計と電気的に接続され、前記水位計の出力信号を前記所定の水位信号に変換する水位変換機能を備える更新用の通報装置を、既設の水位変換器及び通報装置に代えて設置する点にある。
【0017】
上述の構成によれば、バッテリーバックアップされた通報装置に水位変換機能を備えているので、停電時であっても水位センサに給電することができ、水位変換された水位信号を外部の監視装置に通報できるようになる。既設のマンホールポンプの制御盤の耐用年数を超えた水位変換器や通報装置を更新する場合に、極めて合理的に設備更新できるようになる。同様に、水位変換機能が組み込まれ水位センサに接続可能な通報装置であるので、三相200Vの商用電源から給電可能になり、一系統の商用電源のみに避雷器を設ければよいので安価に耐雷特性を向上させることができる。
【0018】
同第三の特徴構成は、同請求項3に記載した通り、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、前記通報装置は、前記水位信号及び前記制御回路から入力されるポンプ制御信号に基づいてマンホールポンプ設備の稼働情報を外部に送信するものである点にある。
【0019】
通電時、停電時を問わず水位信号が検知でき、その時の水位信号とポンプ制御信号との組合せから得られる様々なマンホールポンプ設備の稼働情報が外部に送信されるようになる。
【0020】
本発明による設備更新用の通報装置の第一の特徴構成は、同請求項4に記載した通り、マンホールポンプの制御盤に設置される設備更新用の通報装置であって、マンホールに設置された水位計と電気的に接続され前記水位計の出力信号を所定の水位信号に変換するとともに、マンホールに設置された水中ポンプを起動または停止制御する制御回路に、変換した水位信号を出力する水位変換部と、マンホールポンプ設備の稼働情報を外部に送信する通報部と、停電時に前記水位変換部及び通報部に給電するバックアップ用バッテリを備えた電源部と、を備えている点にある。
【0021】
上述の構成によれば、バックアップ用バッテリを備えた電源部を備えた通報装置に水位変換部を備えているので、停電時であっても水位センサに給電することができ、水位変換された水位信号を外部の監視装置に通報できるようになる。このような通報装置は水中ポンプを制御するための機能を備えているので、水中ポンプに接続される三相200Vの商用電源から給電可能になり、一系統の商用電源のみに避雷器を設ければよいので安価に耐雷特性を向上させることができる。
【0022】
同第二の特徴構成は、同請求項5に記載した通り、上述の第一の特徴構成に加えて、前記通報部は、前記水位信号及び前記制御回路から入力されるポンプ制御信号に基づいてマンホールポンプ設備の稼働情報を外部に送信するものである点にある。
【0023】
通電時、停電時を問わず水位信号が検知でき、その時の水位信号とポンプ制御信号との組合せから得られる様々なマンホールポンプ設備の稼働情報が外部に送信されるようになる。
【0024】
同第三の特徴構成は、同請求項6に記載した通り、上述の第一または第二の特徴構成に加えて、前記水位変換部は停電時に前記バックアップ用バッテリから前記水位計に給電して前記水位計の出力信号を所定の水位信号に変換するように構成され、前記通報部は停電時でも外部要求に応じて前記水位信号を通報するように構成されている点にある。
【0025】
停電時であっても適切に水位信号が得られ、外部の監視装置等に通報することができる。
【0026】
同第四の特徴構成は、同請求項7に記載した通り、上述の第一から第三の何れかの特徴構成に加えて、前記水位変換部は停電時に前記バックアップ用バッテリから前記水位計に給電して前記水位計の出力信号を所定の水位信号に変換するように構成され、前記通報部は停電時に水位信号が警報レベルに達すると、自発的に外部通報するように構成されている点にある。
【0027】
停電時であっても適切に水位信号が得られ、外部の監視装置等に通報することができ、しかも異常水位になると自発的に外部に通報するので、管理者側で迅速な対応が可能になる。
【発明の効果】
【0028】
以上説明した通り、本発明によれば、停電時にも適切に水位を検知して外部の監視装置に通報が可能になる安価な設備更新方法及び設備更新用の通報装置を提供することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】(a)は本発明によるマンホールポンプ設備の制御盤の側面図、(b)は同正面図
図2】制御盤の回路図
図3】マンホールポンプ設備の説明図
図4】設備情報処理システムの説明図
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明による既設のマンホールポンプ設備の制御盤の設備更新方法及び設備更新用の通報装置を説明する。
【0031】
図3及び図4に示すように、地中に埋設された汚水配管に沿って所定の間隔でマンホールポンプ設備9(9−1〜9−n)が配置され、上流側の汚水流入管11から流入する汚水を貯水する貯水槽10(10−1〜10−n)と、貯水された汚水を、汚水圧送管13を介して汚水流出管14に送水する二台の水中ポンプ12(12−1〜12−n)と、貯水槽10(10−1〜10−n)に貯水された汚水の水位を計測する投込圧力式の水位センサ15と、異常な高水位を検知するフロート式水位センサ16等を備え、各貯水槽10(10−1〜10−n)の近傍に制御盤1(1−1〜1−n)が設けられている。尚、nは設備数であり、数施設から数十施設で一グループが構成されている。
【0032】
各制御盤1(1−1〜1−n)のケーシング1a内部には、制御回路2(2−1〜2−n)と、水位変換器3(3−1〜3−n)と、通報装置4(4−1〜4−n)が設置されている。通報装置4の親局となるマンホールポンプ設備9(9−1)には、さらに公衆回線網等への接続端末が設置されて無線通信ネットワークが構築されている。
【0033】
各制御回路2(2−1〜2−n)は、水中ポンプ12(12−1〜12−n)に給電するリレー回路と、リレー回路を制御するシーケンサ回路等が設けられている。
【0034】
水位変換器3(3−1〜3−n)は、水位センサ15の出力信号を所定の水位信号に変換するマイクロコンピュータを含む電子回路を備えている。所定の水位信号とは、制御回路2(2−1〜2−n)に出力するためのポンプ始動水位LWL、ポンプ停止水位HWL、高水位HHWLの3レベルの信号と、通報装置4(4−1〜4−n)に出力するためのアナログ信号、例えば4〜20mAの電流信号や1〜5Vの電圧信号である。尚、「LWL」はLow Water Levelの略記、「HWL」はHigh Water Levelの略記である。
【0035】
制御回路2(2−1〜2−n)は、水位変換器3(3−1〜3−n)の出力信号に基づいて、貯水槽10(10−1〜10−n)の水位がポンプ始動水位HWLに達すると一方の水中ポンプ12を駆動して、汚水を汚水流出管14に送水し、汚水水位がポンプ停止水位LWLに達すると当該一方の水中ポンプ12を停止し、次に水位がポンプ始動水位HWLに達すると他方の水中ポンプ12を駆動して、汚水を汚水流出管14に送水し、汚水水位がポンプ停止水位LWLに達すると当該他方の水中ポンプ12停止する一連の汚水の圧送制御を繰り返す。
【0036】
通報装置4(4−1〜4−n)にはメモリが設けられ、水位変換器3(3−1〜3−n)で変換された水位信号であるアナログ信号が例えば1分間隔で記憶されるとともに、1時間当りの各水中ポンプ12の運転回数及び運転時間が記憶される。
【0037】
さらに、フロート式水位センサ16により警報水位ALWLが検知されると異常高水位、水中ポンプ12に備えた温度センサにより異常過熱が検知されるとポンプ加熱といった異常情報がメモリに記憶される。他に、ポンプ故障、ポンプ吸込閉塞(始動水位よりも低いが、設定時間よりもポンプ運転時間が長い)、エアロック(設定時間よりもポンプ運転時間が長く、始動水位が維持される)、水位センサ異常、流入量異常等の異常情報が制御部2(2−1〜2−n)で検知され、その結果が通報装置4のメモリに記憶される。
【0038】
このようにして各通報装置4(4−1〜4−n)のメモリには、水位情報、各水中ポンプ12の運転回数及び運転時間、異常情報等でなる稼働情報が記憶される。
【0039】
無線子局側の通報装置4(4−2〜4−n)は、それぞれに備えたメモリに格納された稼働情報を無線親局側の通報装置4(4−1)に直接または他の無線子局を経由して無線送信し、無線親局側の通報装置4(4−1)は、無線子局側の通報装置4(4−2〜4−n)から無線送信された稼働情報、及び、自らのメモリに格納された稼働情報を遠隔地にある外部の監視装置に出力する。
【0040】
尚、本無線通信ネットワークは小エリア通信システムとして、新簡易無線方式による無線通信ネットワークが採用されたものを例示しているが、異なる周波数帯域を使用する他の規格による無線方式や、有線方式による自営専用回線を採用することも可能である。
【0041】
図1(a),(b)には、マンホールポンプ設備の制御盤1が例示されている。通常、制御盤1は水中ポンプが設置されたマンホールの近傍に設置されている。
【0042】
制御盤1は、上述した制御回路2、水位変換器3、通報装置4と、端子台20と、それらを収容する制御盤筺体30を備えている。端子台20には、制御回路2のリレー回路を介して電源ラインと水中ポンプ12を接続する端子や水位計15の出力ラインと水位変換器3を接続する端子を含む複数の端子が配列されている。
【0043】
制御盤筺体30には開閉自在な扉体32が取り付けられ、制御盤筺体30の内部背面側には制御回路2、水位変換器3及び端子台20を取り付ける支持板34がボルト固定されている。
【0044】
さらに、操作スイッチやメータ等の表示器が設置された操作部36、水中ポンプの状態等を外部に伝達する通報装置4等を備えた中扉体38を備えている。操作部36には、水中ポンプ12の稼動状態をモニタする電流計、水中ポンプ12を強制駆動するスイッチ等が設けられている。また、メータ等の表示器を外部から目視確認できるように扉体32には透明ガラス窓32aが設けられている。さらに、制御盤筺体30の天井壁には通報装置4のアンテナAが設置され、商用電源の停電に備えて通報装置4にはバックアップ用のバッテリ4aを備えている。
【0045】
制御盤1の一方の側壁下部には吸気用の開口として複数のスリット40が形成され、他方の側壁上部には排気用の開口として複数のスリット42が形成されるとともにそのスリット42の内側に排気ファン44が取り付けられている。つまり、スリット40から吸い込まれた外気が制御盤筺体30内部を上昇してスリット42から排気される冷却機構が構成されている。
【0046】
制御回路2の下部に設置された端子台20の入力端子を介して商用電源から供給される三相200Vの電源ラインPLと制御回路2とが接続され、同じく端子台20の出力端子を介して制御回路2と負荷となる二台の水中ポンプ12のモータM1,M2が接続されている。さらに、端子台20の信号端子を介してマンホールに設置された水位計15の出力ラインLSと水位変換器3とが接続され、同様に端子台20の制御端子を介して制御回路2から排気ファン44や結露防止用のヒータ(図示せず)への給電線が接続されている。
【0047】
三相200Vの商用電源系統が、水中ポンプ12及び水位変換器3へ電源を供給する第1の電源回路に接続され、単相200V(または単相100V)の商用電源系統が、通報装置4に電源を供給する第2の電源回路に接続され、それぞれの電源系統に避雷器が設けられている。
【0048】
つまり、制御盤1には、マンホールに設置された水位計15と電気的に接続され水位計15の出力信号を所定の水位信号に変換する水位変換器3と、マンホールに設置された水中ポンプ12と電気的に接続され水位変換器3から入力される水位信号に基づいて水中ポンプ12を起動または停止制御する制御回路2と、バッテリーバックアップされ水位変換器3から入力される水位信号及び制御回路2から入力されるポンプ制御信号に基づいてマンホールポンプ設備の稼働情報を外部に送信する通報装置4が設けられている。
【0049】
このような制御盤1を構成する機能ブロックである水位変換器3や通報装置4等の電子部品の耐用年数が経過した場合に、未だ耐用年数が経過しておらず十分に使用可能な制御回路2(通常は、電子部品に比べてリレー回路等の機械部品の方が、寿命が長い傾向がある。)を含めて交換すると多大なコストを要することになる。
【0050】
そのような限られた予算の中で対応できないような場合に、従来備わっていない機能を付加しながらも設備コストを抑えてコスト効果的なメンテナンスを行なうために本発明による設備更新方法が有用になる。
【0051】
即ち、バッテリーバックアップされ、水位計15と電気的に接続する端子が設けられ、当該端子を介して入力される水位計の出力信号を所定の水位信号に変換する水位変換機能を備え、水位信号及び制御回路から入力されるポンプ制御信号に基づいてマンホールポンプ設備の稼働情報を外部に送信する更新用の通報装置4を、既設の水位変換器3及び通報装置4に代えて設置するのである。
【0052】
上述の構成によれば、バッテリーバックアップされた通報装置に水位変換機能を備えているので、停電時であっても水位センサに給電することができ、水位変換された水位信号を外部の監視装置に通報できるようになる。
【0053】
既設のマンホールポンプの制御盤1の耐用年数を超えた水位変換器や通報装置を更新する場合に、極めて合理的に設備更新できるようになる。同様に、水位変換機能が組み込まれ水位センサに接続可能な通報装置であるので、三相200Vの商用電源から給電可能になり、一系統の商用電源のみに避雷器を設ければよいので安価に耐雷特性を向上させることができる。
【0054】
更新用の通報装置4は、マンホールに設置された水位計15と電気的に接続され水位計15の出力信号を所定の水位信号に変換するとともに、マンホールに設置された水中ポンプ12を起動または停止制御する制御回路2に、変換した水位信号を出力する水位変換部3と、水位信号及び制御回路2から入力されるポンプ制御信号に基づいてマンホールポンプ設備の稼働情報を外部に送信する通報部4と、停電時に水位変換部及び通報部に給電するバックアップ用バッテリ4aを備えた電源部とを備えている。
【0055】
また、水位変換部3は停電時にバックアップ用バッテリ4aから水位計15に給電して水位計15の出力信号を所定の水位信号に変換するように構成され、通報部4は停電時に外部要求に応じて水位信号を通報するように構成されている。
【0056】
停電時であっても適切に水位信号が得られ、外部の監視装置等に通報することができ、しかも異常水位になると自発的に外部に通報するので、管理者側で迅速な対応が可能になる。
【0057】
図2に基づいて、設備更新後の制御盤1の回路構成を説明する。
商用電源から供給されるAC200V三相交流がメインブレーカ50を介して二系統の漏電ブレーカ51,52に分岐接続されるとともに、制御用電源ブレーカ53に分岐接続されている。符号60は避雷器(アレスタ)である。
【0058】
漏電ブレーカ51,52を介して電磁開閉器54,55が水中ポンプ12のインダクションモータM1,M2に接続される。漏電ブレーカ51,52とインダクションモータM1,M2の間には進相コンデンサC1,C2及び過負荷検知回路56,57や電流トランス58,59が介装され、図示していないが過負荷検知回路56,57や電流トランス58,59の出力が制御回路2に入力されている。
【0059】
また、AC200V三相交流からAC200V単相交流が分岐され、制御用電源ブレーカ53を介してリレー回路61,62,63に接続されている。制御回路2によってリレー回路61,62,63が制御され、ヒータ64、冷却ファン44、パトライト(登録商標)66等がオンまたはオフされる。
【0060】
さらに、AC200V単相交流は制御用電源ブレーカ53を介してAC/DCコンバータ67に入力されている。AC/DCコンバータ67によってDC24Vの直流電圧が生成され、DC24Vの直流電圧がさらにDC/DCコンバータ68に入力されてDC5Vの直流電圧が生成される。
【0061】
DC24Vの直流電圧は水位計15の駆動電圧として使用され、DC5Vの直流電圧は、マイクロコンピュータを備えた水位変換部3及び通報部4に制御用電源として供給される。尚、制御回路2にマイクロコンピュータ等の電子回路が設けられている場合には、制御回路2にもDC5Vの直流電圧が供給される。
【0062】
図2でハッチングされた水位変換部3、通報部、バッテリ4aが、既存の水位変換器、通報装置に代えて新設された機能ブロックである通報装置4となる。このように水中ポンプ12を制御するための水位センサの信号処理を行なう水位変換部3を組込んだ通報装置4であれば、AC200V三相交流の負荷に接続できるようになり、既存の制御盤1に引き込まれていた単相200Vの商用電源が不要になり、そのための避雷器も不要になる。
【0063】
AC/DCコンバータ67の出力端子に並列にバックアップ用のバッテリ4aが接続され、商用電源の停電時にはバッテリ4aからDC24Vの直流電圧が水位計15及びDC/DCコンバータ68に印加されるように構成されている。
【0064】
上述したように、制御回路2は、シーケンサ回路によって電磁開閉器54,55を制御して水中ポンプ12を運転し、リレー回路61,62,63を制御してヒータ64、冷却ファン44、パトライト(登録商標)66を駆動する。
【0065】
水位変換部3は水位センサ15の駆動電流が入力され、当該駆動電流に基づいてマンホールの貯水水位を判断し、上述したポンプ12の制御のための水位レベル信号を生成して制御回路2に出力するとともに、水位を示すアナログ信号を生成して通報部4に出力する。
【0066】
通報部4には水位変換部によって変換されたアナログ信号のみならずポンプ12の制御のための水位レベル信号が入力されるようになるので、電磁開閉器54,55を含む制御回路の異常を検知することができるように構成されている。
【0067】
例えば、ブレーカ51,52,53が正常である場合、水位レベル信号がポンプの起動水位HWLに達しているのに、水中ポンプ12を駆動する電磁開閉器54,55の接点信号または接点信号に相当する信号が通報部に入力されないことを検知すると、電磁開閉器54,55に異常が発生したと判断する。このような異常情報が遠方の監視装置に通報されるので、迅速なメンテナンスが可能になる。
【0068】
上述の構成で、商用電源が停電した場合には、バッテリ4aからDC24Vの直流電圧が水位計15及びDC/DCコンバータに供給され、水位変換部によって水位変換処理が行なわれ、その変換出力が通報部のメモリに記憶されて外部に通報される。つまり、停電時にも水位計測が可能になる。
【0069】
尚、長時間の停電時にはバッテリ消費電力を低減するため、通報装置のマイクロコンピュータはスリープモードに入り、リアルタイムクロックによって所定時間ごとにウェークアップして水位を検知し、その値が異常である場合には外部に通報し、その後スリープモードに戻るように構成することが好ましく、スリープモード時に外部の監視装置からのアクセス信号でウェークアップして、マンホールポンプ装置の稼働情報や異常情報を返信し、その後スリープモードに戻るように構成することが好ましい。
【0070】
以下、別実施形態を説明する。
上述した実施形態では、通報装置4を備えた既設の制御盤に対する設備更新方法について説明したが、未だ通報装置を備えていない既設の制御盤に新たに通報装置を設置する場合の設備更新方法にも適用できる。
【0071】
マンホールに設置された水位計と電気的に接続され前記水位計の出力信号を所定の水位信号に変換する水位変換器と、マンホールに設置された水中ポンプと電気的に接続され水位変換器から入力される水位信号に基づいて水中ポンプを起動または停止制御する制御回路とを備えて構成されている既設のマンホールポンプの制御盤に対して、バッテリーバックアップされ、水位計と電気的に接続する端子が設けられ、端子を介して入力される水位計の出力信号を所定の水位信号に変換する水位変換機能を備え、水位信号及び制御回路から入力されるポンプ制御信号に基づいてマンホールポンプ設備の稼働情報を外部に送信する通報装置を水位変換器に代えて設置すればよい。
【0072】
マンホールポンプ設備を例に本発明による設備更新用の通報装置を説明したが、本発明による通報装置はマンホールポンプ設備に用いられるものに限らず、調整池等に設置される雨水排水ポンプ設備、寒冷地の融雪用の散水ポンプ設備、井戸からの取水ポンプ設備等、様々な水中ポンプの通報装置に適用することができる。そして、それらの設備に不可欠な各種のセンサ、例えば水位センサ(水位計)、流量センサ、温度センサ等に対して電力を供給し、各種のセンサからの出力信号を所定の信号に変換する信号変換部を通報装置に組み込むことで、商用電源が停電しても通報装置に備えたバックアップ用の電源によって各種のセンサからの出力信号を得て、そのトレンドを監視することができるようになる。
【0073】
上述した制御盤は一具体例に過ぎず、該記載により本発明の範囲が限定されるものではなく、制御盤の具体的な回路構成、各種の構造物の寸法、材料、構成等は、本発明による作用効果を奏する範囲で適宜変更設計できる。
【符号の説明】
【0074】
1:水中ポンプの制御盤
2:制御回路
3:信号変換器
4:通報装置
4a:バックアップ用のバッテリ
図1
図2
図3
図4