特許第6289970号(P6289970)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6289970射出成形機、射出成形機の設定装置、および射出成形機の設定方法
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  • 特許6289970-射出成形機、射出成形機の設定装置、および射出成形機の設定方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6289970
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】射出成形機、射出成形機の設定装置、および射出成形機の設定方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20180226BHJP
   B29C 45/48 20060101ALI20180226BHJP
【FI】
   B29C45/76
   B29C45/48
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-70443(P2014-70443)
(22)【出願日】2014年3月28日
(65)【公開番号】特開2015-189212(P2015-189212A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2016年10月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】雷 磊
(72)【発明者】
【氏名】横山 拓
【審査官】 今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−000737(JP,A)
【文献】 特開2002−137273(JP,A)
【文献】 特開2010−089484(JP,A)
【文献】 特開2012−131176(JP,A)
【文献】 特開2001−347545(JP,A)
【文献】 特開2006−168325(JP,A)
【文献】 特開平8−174609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/76
B29C 45/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給口を後部に有する加熱シリンダと、
前記供給口に成形材料を供給する材料供給装置と、
前記加熱シリンダ内で回転することにより前記成形材料を前方に送るスクリュと、
成形条件を設定する設定装置とを備え、
該設定装置は、型内圧のバラツキに基づいて、前記スクリュの回転数と前記材料供給装置の供給速度との関係を設定し、前記型内圧として、計量工程後に前記スクリュに作用する残圧を用いる、射出成形機。
【請求項2】
前記設定装置は、前記型内圧のバラツキ、および計量時間のバラツキに基づいて、前記関係を設定する、請求項に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記設定装置は、計量時間のバラツキを用いて前記関係を補正する、請求項1または2に記載の射出成形機。
【請求項4】
前記材料供給装置は、前記成形材料を収容するフィードシリンダと、該フィードシリンダ内で回転することにより前記成形材料を前記供給口に供給するフィードスクリュとを含み、
前記材料供給装置の供給速度として、前記フィードスクリュの回転数が用いられ、
前記関係として、前記スクリュの回転数と前記フィードスクリュの回転数との比が用いられる、請求項1〜のいずれか1項に記載の射出成形機。
【請求項5】
供給口を後部に有する加熱シリンダと、前記供給口に成形材料を供給する材料供給装置と、前記加熱シリンダ内で回転することにより前記成形材料を前方に送るスクリュとを備える射出成形機の設定装置であって、
型内圧のバラツキに基づいて、前記スクリュの回転数と前記材料供給装置の供給速度との関係を設定し、前記型内圧として、計量工程後に前記スクリュに作用する残圧を用いる、射出成形機の設定装置。
【請求項6】
供給口を後部に有する加熱シリンダと、前記供給口に成形材料を供給する材料供給装置と、前記加熱シリンダ内で回転することにより前記成形材料を前方に送るスクリュとを備える射出成形機の設定方法であって、
型内圧のバラツキに基づいて、前記スクリュの回転数と前記材料供給装置の供給速度との関係を設定し、前記型内圧として、計量工程後に前記スクリュに作用する残圧を用いる、射出成形機の設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機、射出成形機の設定装置、および射出成形機の設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は、加熱シリンダと、加熱シリンダ内に成形材料を供給する材料供給装置と、加熱シリンダ内に回転自在に且つ進退自在に配設されるスクリュとを備える(例えば、特許文献1参照)。スクリュを回転させると、スクリュの螺旋状の溝に沿って成形材料が前方に送られる。成形材料は前方に移動しながら徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ前方に溜まるにつれ、スクリュが後退させられる。その後、スクリュを前進させると、スクリュ前方の成形材料が加熱シリンダから金型装置内に充填される。金型装置内の成形材料は冷却固化され、成形品が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−351661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
計量工程において、スクリュの回転に伴い成形材料が前方に送られる。スクリュの溝内における成形材料の充填状態は、スクリュの回転数と、材料供給装置の供給速度とで決まる。スクリュの回転数が一定の場合、材料供給装置の供給速度が大きくなるほど、上記充填状態が密の状態になる。上記充填状態は、成形品の品質の安定性に影響を与える。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、成形品の品質の安定性を向上できる、射出成形機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一態様によれば、
供給口を後部に有する加熱シリンダと、
前記供給口に成形材料を供給する材料供給装置と、
前記加熱シリンダ内で回転することにより前記成形材料を前方に送るスクリュと、
成形条件を設定する設定装置とを備え、
該設定装置は、型内圧のバラツキに基づいて、前記スクリュの回転数と前記材料供給装置の供給速度との関係を設定し、前記型内圧として、計量工程後に前記スクリュに作用する残圧を用いる、射出成形機が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、成形品の品質の安定性を向上できる、射出成形機が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態の射出成形機を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、各図面において、同一の又は対応する構成については同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。充填時のスクリュ20の移動方向(図1中左方向)を前方とし、計量時のスクリュ20の移動方向(図1中右方向)を後方として説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態の射出成形機を示す図である。射出成形機は、加熱シリンダ10、スクリュ20、計量モータ52、射出モータ54、圧力検出器56、材料供給装置60、コントローラ70、および表示装置80を備える。
【0011】
加熱シリンダ10は供給口12から供給された成形材料を加熱する。供給口12は加熱シリンダ10の後部に形成される。加熱シリンダ10の外周には、ヒータなどの加熱源が設けられる。加熱シリンダ10の前端にはノズル14が設けられる。
【0012】
スクリュ20は、加熱シリンダ10内において回転自在に且つ進退自在に配設される。スクリュ20は、主に、スクリュ本体21、およびスクリュ本体21より前方に配設された射出部22で構成される。スクリュ本体21は、フライト部23、およびフライト部23の前端に配設された圧力部24を備える。
【0013】
フライト部23は、棒状の本体部23a、および該本体部23aの外周面に突出させて形成された螺旋状のフライト23bを備え、該フライト23bに沿って螺旋状の溝26が形成される。フライト部23の後端から前端にかけて、溝26の深さは一定であってよく、スクリュ圧縮比が一定であってよい。
【0014】
圧力部24は、棒状の本体部23aよりも外径の大きい円柱部で構成されてよい。本体部23aと円柱部との間には、本体部23aから円柱部にかけて外径が徐々に大きくなる図示されない円錐台状の傾斜部が設けられてもよく、傾斜部および円柱部で圧力部24が構成されてもよい。
【0015】
尚、圧力部24を配設することなく、スクリュ本体21の全体にわたってフライト部を形成してもよい。スクリュ本体21は後端から前端にかけて、供給部、圧縮部、計量部として区別されてもよい。この場合、螺旋状の溝の深さは、供給部で深く、計量部で浅く、圧縮部において前方に向かうほど浅い。
【0016】
射出部22は、先端に円錐形の部位を備えたヘッド部31、該ヘッド部31の後方に隣接させて形成されたロッド部32、該ロッド部32の周囲に配設された逆止リング33、および圧力部24の前端に取り付けられたシールリング(チェックリング)34を含む。
【0017】
計量モータ52は、スクリュ20を回転させる。計量モータ52はエンコーダ52aを有してよい。エンコーダ52aは、計量モータ52の出力軸の回転数を検出することによりスクリュ20の回転数を検出し、回転数を示す信号をコントローラ70に出力する。コントローラ70は、計量工程においてスクリュ20の回転数が設定値になるように計量モータ52をフィードバック制御する。
【0018】
射出モータ54は、スクリュ20を進退させる。スクリュ20と射出モータ54との間には、射出モータ54の回転運動をスクリュ20の直線運動に変換する運動変換部が設けられる。射出モータ54はエンコーダ54aを有してよい。エンコーダ54aは、射出モータ54の出力軸の回転数を検出することによりスクリュ20の前進速度を検出し、スクリュ20の前進速度を示す信号をコントローラ70に出力する。コントローラ70は、充填工程においてスクリュ20の前進速度が設定値になるように射出モータ54をフィードバック制御する。
【0019】
圧力検出器56は、例えば射出モータ54とスクリュ20との間に配設され、圧力検出器56に作用する圧力を検出する。この圧力は、スクリュ20の背圧やスクリュ20が押す成形材料の圧力を示す。圧力検出器56は、圧力検出器56に作用する圧力を示す信号をコントローラ70に出力する。コントローラ70は、保圧工程においてスクリュ20が押す成形材料の圧力が設定値になるように射出モータ54をフィードバック制御する。また、コントローラ70は、計量工程においてスクリュ20の背圧が設定値になるように射出モータ54をフィードバック制御する。
【0020】
充填工程では、射出モータ54を駆動してスクリュ20を前進させ、スクリュ20の前方に蓄積された液状の成形材料を金型装置内に充填させる。スクリュ20の前進速度の設定値は、一定でもよいし、スクリュ位置または経過時間に応じて変更されてもよい。スクリュ20が所定位置(所謂V/P切換位置)まで前進すると、保圧工程が開始される。尚、充填工程開始からの経過時間が所定時間に達すると、保圧工程が開始されてもよい。
【0021】
保圧工程では、射出モータ54を駆動してスクリュ20を前方に押し、金型装置内の成形材料に圧力をかける。不足分の成形材料が補充できる。成形材料の圧力の設定値は、一定でもよいし、経過時間などに応じて段階的に変更されてもよい。保圧工程後、冷却工程が開始される。冷却工程中に計量工程が行われてよい。
【0022】
計量工程では、計量モータ52を駆動してスクリュ20を回転させ、スクリュ20の螺旋状の溝26に沿って成形材料を前方に送る。これに伴い、成形材料が徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ20の前方に送られ加熱シリンダ10の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ20が後退させられる。スクリュ20の回転数の設定値は、一定でもよいし、スクリュ位置または経過時間に応じて変更されてもよい。
【0023】
計量工程では、スクリュ20の急激な後退を制限すべく、射出モータ54を駆動してスクリュ20に対して背圧を加えてよい。背圧が設定値になるように射出モータ54が駆動される。スクリュ20が所定位置まで後退し、スクリュ20の前方に所定量の成形材料が蓄積されると、計量工程が終了する。
【0024】
尚、本実施形態の射出装置は、インライン・スクリュ方式であるが、プリプラ方式でもよい。プリプラ方式の射出装置は、可塑化シリンダ内で溶融された成形材料を射出シリンダに供給し、射出シリンダから金型装置内に成形材料を射出する。可塑化シリンダ内にはスクリュが回転自在にまたは回転自在に且つ進退自在に配設され、射出シリンダ内にはプランジャが進退自在に配設される。
【0025】
材料供給装置60は、設定された供給速度で加熱シリンダ10の供給口12に成形材料を供給する。材料供給装置60は、ホッパ61、フィードシリンダ63、筒状の案内部65、フィードスクリュ67、およびフィードモータ69などを備える。
【0026】
フィードシリンダ63は、ホッパ61の下端から水平に延び、ホッパ61内から供給される成形材料を収容する。尚、フィードシリンダ63は、必ずしも水平方向に延在する必要はなく、例えば水平方向に対して斜めに延在してもよく、出口側が入口側よりも高くてもよい。
【0027】
フィードスクリュ67は、フィードシリンダ63内に回転自在に配設される。
【0028】
フィードモータ69は、フィードスクリュ67を回転させる。フィードモータ69はエンコーダ69aを有してよい。エンコーダ69aは、フィードモータ69の出力軸の回転数を検出することによりフィードスクリュ67の回転数を検出し、回転数を示す信号をコントローラ70に出力する。コントローラ70は、計量工程においてフィードスクリュ67の回転数が設定値になるようにフィードモータ69をフィードバック制御する。
【0029】
フィードモータ69は、フィードスクリュ67を回転させることにより、フィードスクリュ67の螺旋状の溝に沿って成形材料を前方に送る。成形材料は、フィードシリンダ63の前端から案内部65へ送られ、案内部65内を落下し、加熱シリンダ10の供給口12に供給される。
【0030】
計量工程では、フィードモータ69を駆動してフィードスクリュ67を回転させ、加熱シリンダ10の供給口12に成形材料を供給する。その供給速度はフィードスクリュ67の回転数に比例する。フィードスクリュ67の回転数の設定値は、スクリュ20の回転数の設定値と同様に、一定でもよいし、スクリュ位置または経過時間に応じて変更されてもよい。
【0031】
フィードスクリュ67とスクリュ20とは、同期して回転されてよく、同時に回転開始され、同時に回転終了されてよい。成形材料は、供給口12で滞留することなく、スクリュ20の回転によって前方に送られる。スクリュ20の溝26内における成形材料の充填状態は、密の状態ではなく、疎の状態(飢餓状態)とされる。
【0032】
尚、フィードスクリュ67は、スクリュ20よりも早く回転開始され、早く回転終了されてもよい。その時間差は、例えば案内部65内における成形材料の落下時間であってよい。
【0033】
コントローラ70は、メモリなどの記憶部72およびCPU(Central Processing Unit)74を有し、記憶部72に記憶される制御プログラムをCPU74に実行させることにより、射出成形機の各種動作を制御する。また、コントローラ70は、成形条件を設定する設定装置として機能する。
【0034】
尚、本実施形態では、コントローラ70が設定装置として機能するが、設定装置はコントローラ70とは別に設けられてもよい。
【0035】
ところで、計量工程において、スクリュ20の回転に伴い成形材料が前方に送られる。スクリュ20の溝26内における成形材料の充填状態(以下、単に「充填状態」とも呼ぶ)は、スクリュ20の回転数と、材料供給装置60の供給速度とで決まる。スクリュ20の回転数が一定の場合、材料供給装置60の供給速度が大きくなるほど、充填状態が密の状態になる。充填状態は、成形品の品質の安定性に影響を与える。
【0036】
そこで、コントローラ70は、スクリュ20の回転数と、材料供給装置60の供給速度との関係を設定する。材料供給装置60の供給速度としてはフィードスクリュ67の回転数が用いられてよく、上記関係としてはスクリュ20の回転数と、フィードスクリュ67の回転数との比が用いられてよい。この比は、スクリュ20の回転数に対するフィードスクリュ67の回転数の百分率(以下、「同期率」とも呼ぶ)で表されてよい。
【0037】
コントローラ70は、同期率を設定するため、同期率毎に型内圧のバラツキ(以下、「型内圧バラツキ」とも呼ぶ)を測定してよい。型内圧は、金型装置内における成形材料の圧力であり、金型装置内に配設される圧力検出器によって検出できる。型内圧が安定すれば、成形品密度や成形品重量などが安定する。
【0038】
型内圧バラツキは、ショット毎に型内圧を測定したときの、測定値のバラツキであり、ショットによる差異である。その測定値は、ピーク値、V/P切換時の値、時間積分値などのいずれでもよい。そのバラツキとしては、最大値と最小値との差、標準偏差、変動係数などが用いられる。
【0039】
コントローラ70は、同期率毎に型内圧バラツキを測定することで、同期率と型内圧バラツキとの関係を求める。そうして、コントローラ70は、型内圧バラツキに基づいて同期率を設定する。型内圧が安定し、成形品密度や成形品重量などが安定する。
【0040】
同期率が小さいほど、型内圧バラツキが小さい傾向がある。同期率が小さいほど、上記充填状態が疎の状態となり、成形材料を均一に加熱できるためと推定される。また、上記充填状態が疎の状態となることで、スクリュ20の進退時の摩擦抵抗が減り、スクリュ20が滑らかに進退するためと考えられる。
【0041】
コントローラ70は、型内圧バラツキと、その他のパラメータとに基づいて同期率を設定してよい。例えば、コントローラ70は、計量時間が冷却時間を超えないように(計量工程が冷却工程中に完了するように)同期率を設定してよい。スクリュ20の回転数が一定の場合、同期率が小さいほど、材料供給装置60の供給速度が小さく、計量時間が長い。
【0042】
ところで、計量工程中にはスクリュ20の背圧やスクリュ20の回転によるせん断応力などによって成形材料が圧縮される。スクリュ20の回転停止後には、圧縮された成形材料が膨張しようとするため、回転停止状態のスクリュ20に圧力が作用する。この圧力を残圧と呼ぶ。
【0043】
計量工程後にスクリュ20に作用する残圧は、スクリュ20前方の成形材料の密度に対応する。スクリュ20前方の成形材料が充填工程などにおいて金型装置内に充填されるため、型内圧と残圧とは相関する。
【0044】
そこで、コントローラ70は、同期率の設定に用いる型内圧バラツキとして、残圧のバラツキ(以下、「残圧バラツキ」とも呼ぶ)を用いてよい。残圧が安定すれば、成形品密度や成形品重量などが安定する。
【0045】
残圧は、圧力検出器56によって検出できる。圧力検出器56は、計量工程や保圧工程の制御に用いられるものであって、専用品ではない。そのため、使いやすさやコストなどの点で優れている。
【0046】
残圧バラツキは、ショット毎に残圧を測定したときの、測定値のバラツキであり、ショットによる差異である。その測定値は、時間積分値(例えば計量工程終了から所定時間内の時間積分値)、所定時(例えば計量工程終了から所定時間経過時)の値、ピーク値などのいずれでもよい。そのバラツキとしては、最大値と最小値との差、標準偏差、変動係数などが用いられる。尚、残圧は、スクリュ20を回転停止位置に位置保持した状態で測定してよい。
【0047】
コントローラ70は、型内圧バラツキ(残圧バラツキを含む)と、計量時間バラツキとに基づいて同期率を設定してよい。計量時間が安定すれば、成形材料の加熱時間が安定し、成形材料の熱劣化が抑制できるため、成形品材質が安定する。
【0048】
計量時間は、コントローラ70に備えられるタイマー76などで計測できる。計量時間バラツキは、ショット毎に計量時間を測定したときの、測定値のバラツキであり、ショットによる差異である。そのバラツキとしては、最大値と最小値との差、標準偏差、変動係数などが用いられる。計量時間は型内圧(型内圧としての残圧を含む)と異なり同期率に応じて変化するため、その変化の影響を削減できる変動係数が特に好適である。変動係数は、標準偏差を平均値で割ったものである。
【0049】
同期率が小さいほど、計量時間バラツキが大きい傾向がある。同期率が小さいほど、スクリュ20の溝26内における成形材料の充填状態が疎の状態となり、成形材料同士の間に隙間が形成され、成形材料の搬送が不安定になるためと推定される。
【0050】
同期率が小さいほど、型内圧バラツキは小さく、計量時間バラツキは大きい。型内圧バラツキと計量時間バラツキとは、異なる変化傾向を示す。
【0051】
コントローラ70は、型内圧バラツキ(残圧バラツキを含む)と計量時間バラツキとに基づいて同期率を設定する場合、型内圧バラツキと計量時間バラツキとの積に基づいて同期率を設定してよく、上記積が最小値となるように同期率を設定してよい。成形品密度や成形品重量の安定性と、成形品材質の安定性とを両立することができる。尚、コントローラは上記積と他のパラメータとに基づいて同期率を設定してもよく、この場合、上記積が最小値とならなくてもよい。
【0052】
コントローラ70は、型内圧バラツキ(残圧バラツキを含む)に基づいて同期率を設定する際に、計量時間バラツキを用いて同期率を補正してもよい。
【0053】
コントローラ70は、同期率を設定するため、同期率毎に計量時間バラツキを測定してよい。計量時間が安定すれば、成形材料の加熱時間が安定し、成形材料の熱劣化が抑制できるため、成形品材質が安定する。
【0054】
計量時間は、コントローラ70に備えられるタイマー76などで計測できる。計量時間のバラツキとしては、最大値と最小値との差、標準偏差、変動係数などが用いられる。計量時間は型内圧(型内圧としての残圧を含む)と異なり同期率に応じて変化するため、その変化の影響を削減できる変動係数が特に好適である。変動係数は、標準偏差を平均値で割ったものである。
【0055】
コントローラ70は、同期率毎に計量時間バラツキを測定することで、同期率と計量時間バラツキとの関係を求める。そうして、コントローラ70は、計量時間バラツキに基づいて同期率を設定する。計量時間が安定し、成形品材質などが安定する。
【0056】
同期率が小さいほど、計量時間バラツキが大きい傾向がある。同期率が小さいほど、スクリュ20の溝26内における成形材料の充填状態が疎の状態となり、成形材料同士の間に隙間が形成され、成形材料の搬送が不安定になるためと推定される。
【0057】
コントローラ70は、計量時間バラツキと、その他のパラメータとに基づいて同期率を設定してよい。
【0058】
例えば、コントローラ70は、計量時間バラツキと、型内圧バラツキとに基づいて同期率を設定してよい。成形品密度や成形品重量の安定性と、成形品材質の安定性とを両立することができる。
【0059】
同期率が小さいほど、型内圧バラツキは小さく、計量時間バラツキは大きい。型内圧バラツキと計量時間バラツキとは、異なる変化傾向を示す。
【0060】
そこで、コントローラ70は、型内圧バラツキと計量時間バラツキとの積に基づいて同期率を設定してよく、上記積が最小値となるように同期率を設定してよい。尚、コントローラは上記積と他のパラメータとに基づいて同期率を設定してもよく、この場合、上記積が最小値とならなくてもよい。
【0061】
表示装置80は、コントローラ70による制御下で各種画面を表示する。表示装置80は、例えばタッチパネルで構成されてよく、入力操作を受け付ける操作部と、画面を表示する表示部とを一体に有してよい。コントローラ70は、操作部における入力操作に応じた画面を表示部に表示させる。
【0062】
表示装置80は、型内圧バラツキ(残圧バラツキを含む)と同期率との関係を表示してよい。この関係は、グラフや表などの形態で表示されてよい。ユーザが型内圧バラツキと同期率との関係を知ることができる。
【0063】
表示装置80は、計量時間バラツキと同期率との関係を表示してよい。この関係は、グラフや表などの形態で表示されてよい。ユーザが計量時間バラツキと同期率との関係を知ることができる。
【0064】
表示装置80は、型内圧バラツキと同期率との関係と、計量時間バラツキと同期率との関係とを同時に表示してよい。成形品密度や成形品重量の安定性と、成形品材質の安定性とを両立できる同期率がわかる。
【0065】
表示装置80は、型内圧バラツキと計量時間バラツキとの積と、同期率との関係を表示してよい。
【0066】
表示装置80は、コントローラ70が設定した同期率を表示してよく、その同期率を、型内圧バラツキと同期率との関係、計量時間バラツキと同期率との関係、および上記積と同期率との関係のうちの少なくとも1つの関係と同時に表示してよい。
【0067】
以上、射出成形機などの実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、種々の変形、改良が可能である。
【0068】
例えば、上記実施形態の材料供給装置60は、フィードスクリュ67を含むが、真空ローダを含んでもよく、その構成は特に限定されない。材料供給装置60は、供給速度を変更できるものであればよい。
【符号の説明】
【0069】
10 加熱シリンダ
20 スクリュ
21 スクリュ本体
22 射出部
23 フライト部
24 圧力部
26 溝
52 計量モータ
54 射出モータ
56 圧力検出器
60 材料供給装置
63 フィードシリンダ
67 フィードスクリュ
69 フィードモータ
70 コントローラ
80 表示装置
図1