特許第6289990号(P6289990)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6289990
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】吊り下げ用フック
(51)【国際特許分類】
   A61G 12/00 20060101AFI20180226BHJP
【FI】
   A61G12/00 E
   A61G12/00 B
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-92529(P2014-92529)
(22)【出願日】2014年4月28日
(65)【公開番号】特開2015-208523(P2015-208523A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2017年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】591253593
【氏名又は名称】株式会社ケアコム
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】矢部 剛生
【審査官】 井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−236563(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3160125(JP,U)
【文献】 実開昭49−149822(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0221301(US,A1)
【文献】 実開昭54−040230(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 12/00
A47G 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品が懸架される部分であって、壁面に固定されたフックの少なくとも上方部分を挿入可能な空洞を内部に有している第1の懸架部と、
上記第1の懸架部の前方先端よりもさらに前方に設けられ、物品が懸架される第2の懸架部とを備え、
上記第1の懸架部は、上記フックの少なくとも上方部分を上記空洞内に挿入したときに、上記第1の懸架部を上記フックに対して固定させるための構造を有しており、
上記第2の懸架部は、少なくとも上記第1の懸架部との接続部位から所定長の部分が弾性部材により構成されていることを特徴とする吊り下げ用フック。
【請求項2】
上記第1の懸架部は、上記フックの少なくとも上方部分を上記空洞内に挿入したときに上記壁面の側となる後方端部から上記前方先端まで、上記壁面に対して略垂直に突出する形状に構成されており、
上記第1の懸架部の上記前方先端に設けられ、上記第1の懸架部に懸架された上記物品を係止する係止部をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の吊り下げ用フック。
【請求項3】
上記第1の懸架部は、上記フックの少なくとも上方部分を上記空洞内に挿入したときに上記壁面の側となる後方端部から上記前方先端までの間において、後方下側から前方上側に向けて傾斜する面を有する形状に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の吊り下げ用フック。
【請求項4】
上記第2の懸架部は、上記物品が懸架された状態で、上記壁面から水平方向に離間する方向の外力を上記物品が受けた場合、当該外力により上記弾性部材が変形して、上記壁面から水平方向に離間する方向に傾倒する可倒性を有していることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の吊り下げ用フック。
【請求項5】
上記第2の懸架部は、上記第1の懸架部との接続部位から所定距離の位置に、幅方向の全域にわたって形成された直線状の溝であるスリットを有していることを特徴とする請求項4に記載の吊り下げ用フック。
【請求項6】
上記空洞の形状およびサイズが、上記フックの少なくとも上方部分を上記空洞内に挿入したときに、上記第1の懸架部の上記空洞側の内接面と上記フックの外接面とが圧接するような形状およびサイズに形成されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の吊り下げ用フック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を壁面から吊り下げるための吊り下げ用フックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ナースコールシステムは、ベッドサイド等に設置するナースコール子機と、ベッドサイド等の壁に埋め込み設置するウォールユニットと、部屋の入口付近に設置する廊下灯と、ナースセンタに設置するナースコール親機とを備えて構成されている。ナースコール子機には種々のタイプがあるが、例えば図7(a)に示すように、呼出ボタン101の他にスピーカ102とマイク103とを備えて通話を行うことが可能なタイプのハンド形子機100が多く用いられている。また、図7(b)のように、呼出ボタン111のみを備えたタイプの握り押しボタン110も存在する。
【0003】
また、ウォールユニットにも種々のタイプがある。例えば、ナースコール子機のプラグを接続する差込口(プラグ受け)を備えるとともに、呼出ボタン、スピーカ、マイクを備えて通話を行うことが可能なタイプの壁埋込形子機がある。また、ウォールユニットの中には、図8に示すように、差込口201の他に、図7(a)に示したハンド形子機100が備えるハンガー部104を懸架することが可能になされたフック202を備えたものも存在する。
【0004】
図8に示すような一般的なフック機能付きウォールユニットでは、フック202が固定式であり、フック202の姿勢変化ができないように構成されている。そのため、例えば、フック202に懸架されたハンド形子機100が無理に引っ張られた場合(例えば、ハンド形子機100のコードをベッドの手すりに括り付けた状態のまま、ベッドを移動させると、ハンド形子機100がベッドによって無理に引っ張られてしまう)、フック202およびハンド形子機100のハンガー部104に過度な外力が加わり、フック202またはハンガー部104の損壊を招く恐れがある。
【0005】
また、フックが特定の電気機器を懸架するためのものである場合、この電気機器よりも重い物体が懸架されると、フックが重さに耐えることができなくなり、フックが壊れてしまうケースが生じる。このような問題を回避するための技術として、電気機器に設けられたハンガー部を懸架するための突出部を回転可能に壁面に取り付け、電気機器のプラグがコンセントに接続されたときに、突出部が上方に位置するように回転して電気機器のハンガー部を懸架可能な状態となる一方、突出部が下方に位置するように回転したときに、コンセントに接続されているプラグの接続を解除し、突出部がハンガー部を保持しなくなるようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2011−253650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載のフックでは、突出部が上方に位置するように回転して電気機器(ハンド形子機など)のハンガー部が突出部に懸架された状態で、ベッドの手すりにコードが括り付けられたハンド形子機が無理に引っ張られた場合に、突出部が自動的に下方に位置するように回転して突出部がハンガー部を保持しなくなるわけではない。そのため、ハンド形子機が無理に引っ張られた場合に、フックまたはハンガー部の損壊を招く恐れがあるという問題は解消することができない。
【0008】
また、上記特許文献1に記載のフックでは、物を懸架することが可能な部分は突出部の1ヵ所のみとなっている。これは、1つのフックには1つの物品(ハンド形子機など)を懸架することを前提としたものである。なお、ハンド形子機に対して握り押しボタンを連結して使用することがある。この場合、フックの突出部にハンド形子機のハンガー部を懸架した上で、さらに握り押しボタンのコードを突出部に掛けておくことが可能である。
【0009】
しかしながら、このようにすると、患者がハンド形子機をフックから外して使用しようとする際に、同じ突出部に掛けられている握り押しボタンのコードが邪魔になってハンガー部を外しにくくなることがあるという問題があった。逆に、患者が握り押しボタンをフックから外して使用しようとする際に、同じ突出部に掛けられているハンド形子機のハンガー部が邪魔になってコードを外しにくくなることがあるという問題もあった。
【0010】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、物品が懸架されるフックに対して過度な外力が加えられた場合であっても、当該フックおよび物品の損壊を回避することができるようにするとともに、物品のハンガー部やコードを整理して懸架しやすくすることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した課題を解決するために、本発明の吊り下げ用フックは、物品が懸架される第1の懸架部と、当該第1の懸架部の前方先端よりもさらに前方に設けられ、物品が懸架される第2の懸架部とを備える。そして、第2の懸架部を、少なくとも第1の懸架部との接続部位から所定長の部分を弾性部材により構成するようにしている。
【発明の効果】
【0012】
上記のように構成した本発明によれば、異なる部位に形成された第1の懸架部と第2の懸架部のそれぞれに対して物品を整理して懸架することができる。例えば、第1の懸架部にある物品のコードを掛ける一方、第2の懸架部に別の物品のハンガー部を懸架するといった使い方ができる。また、本発明によれば、物品が第2の懸架部に懸架された状態において、懸架された物品が無理に引っ張られる等により、水平方向(壁面から離間する方向)に過度な外力が第2の懸架部に加えられた場合であっても、弾性部材が変形して第2の懸架部が変位することにより、物品の係止状態が解除され、外力を逃がすことができる。これにより、吊り下げ用フックおよび物品の損壊を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態による吊り下げ用フックの構成例を示す図である。
図2】本実施形態による吊り下げ用フックを壁面に固定されたフックに装着した状態を示す側断面図である。
図3】本実施形態による吊り下げ用フックにハンド形子機および握り押しボタンが懸架された通常の使用状態を示す側面図である。
図4】本実施形態による吊り下げ用フックがハンド形子機によって引っ張られたときの状態を示す側面図である。
図5】本実施形態による吊り下げ用フックの第1の懸架部の変形例を示す図である。
図6】本実施形態による吊り下げ用フックの変形例を示す側面図である。
図7】ナースコール子機の構成例を示す図である。
図8】フック付きウォールユニットの従来の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態による吊り下げ用フック1の構成例を示す図であり、(a)は側面図、(b)は背面図(図1(a)の左側から見た図)を示している。本実施形態による吊り下げ用フック1は、図8に示したフック202に対して着脱可能に構成したものである。
【0015】
図1に示すように、本実施形態による吊り下げ用フック1は、第1の懸架部11、第2の懸架部12および係止部13を備えて構成されている。第1の懸架部11は、物品が懸架される部分である。例えば、図7(a)に示したハンド形子機100のハンガー部104、または図7(b)に示した握り押しボタン110のコード112を第1の懸架部11に懸架することが可能である。
【0016】
第1の懸架部11は、壁面に固定されたフック202の少なくとも上方部分(本実施形態では、フック202の全体)を挿入可能な空洞21を内部に有している。第1の懸架部11は、フック202を空洞21内に挿入したときに、第1の懸架部11をフック202に対して固定させるための構造を有している。具体的には、空洞21が、下方が開放された空間であり、その空間の断面形状がフック202の係止部の外形と略同じ形状となっている。
【0017】
このような構成により、フック202を空洞21内に挿入するようにして吊り下げ用フック1をフック202に装着したときに、第1の懸架部11の空洞21側の内接面22と、フック202の係止部の外接面とが圧接するようになっている。なお、吊り下げ用フック1をフック202に装着したときの密着度を上げるため、空洞21の断面形状の大きさをフック202の係止部の大きさと略同じか、それより若干小さく形成するのが好ましい。さらに、この第1の懸架部11を、弾性を有する部材、例えば軟性樹脂(ゴムまたはエストラマー)により構成するのが好ましい。
【0018】
第1の懸架部11は、フック202を空洞21内に挿入したときに壁面の側となる後方(図1(a)の左側)端部から前方(図1(a)の右側)先端まで、壁面に対して略垂直に突出する形状に構成されている。係止部13は、そのように構成された第1の懸架部11の前方先端に設けられている。そして、係止部13は、第1の懸架部11に懸架された物品を係止する機能を有している。
【0019】
すなわち、係止部13は、第1の懸架部11の先端面において、第1の懸架部11の最上面よりも上側に張り出した構成となっている。この係止部13により、第1の懸架部11に懸架された物品の水平方向(壁面から離間する方向)への抜け落ちを係止することが可能となっている。
【0020】
第2の懸架部12も、第1の懸架部11と同様物品が懸架される部分であり、第1の懸架部11の前方先端よりもさらに前方に設けられている。第2の懸架部12は、第1の懸架部11とは形状が異なる。すなわち、第2の懸架部12は、側断面が略L字型の形状をしている。そして、第2の懸架部12は、第1の懸架部11の先端面の最下部から立設され、断面がL字の一辺を成す第1の面12aがほぼ水平状態となり、もう一辺を成す第2の面12bがほぼ垂直状態となっている。このほぼ垂直状態となった第2の面12bにより、第2の懸架部12に懸架された物品の水平方向(壁面から離間する方向)への抜け落ちを係止することが可能となっている。
【0021】
なお、ここでは、第2の懸架部12を側断面が略L字型の形状となるように構成する例を示しているが、これに限定されない。例えば、側断面が略ノの字型またはU字の右半分のような形状となるように構成してもよい。
【0022】
この第2の懸架部12は、少なくとも第1の懸架部11との接続部位から所定長の部分(本実施形態では、第2の懸架部12の全体)が弾性部材により構成されている。弾性部材は、例えば、第1の懸架部11と同様のゴムまたはエストラマーである。つまり、本実施形態では、第1の懸架部11、第2の懸架部12および係止部13の全てを、ゴムまたはエストラマーにより一体的に成形している。第2の懸架部12を弾性部材で構成することにより、第2の懸架部12は、ここに物品が懸架された状態で、壁面から水平方向に離間する方向の外力を物品が受けた場合、当該外力により弾性部材が変形して、壁面から水平方向に離間する方向に傾倒する可倒性を有している。
【0023】
この可倒性を強めるために、第2の懸架部12は、第1の懸架部11との接続部位から僅かに離れた第1の面12a上の位置に、当該第1の面12aの厚みを部分的に小さくするためのスリット14を有している。このスリット14は、第1の面12aの幅方向(図1(b)の左右方向)の全域にわたって形成された直線状の溝である。このスリット14がなくても第2の懸架部12は可倒性を有するが、可倒性を強めるために形成するのが好ましい。
【0024】
図2は、本実施形態による吊り下げ用フック1を、壁面50に固定されたフック202に装着した状態を示す側断面図である。図2に示す吊り下げ用フック1の断面は、図1(b)にX−Xで示した箇所のものである。図2に示すように、第1の懸架部110の長さは、壁面50に設けられた化粧プレート200からのフック202の長さと略同じか、それより若干長く形成されている。これにより、吊り下げ用フック1をフック202に装着すると、吊り下げ用フック1がフック202の全体を下方の開放部を除いて覆うようになっている。
【0025】
図3および図4は、本実施形態による吊り下げ用フック1の使用状態を示す図である。このうち、図3は、本実施形態の吊り下げ用フック1にハンド形子機100および握り押しボタン110が懸架された通常の使用状態を示す側面図である。一方、図4は、ハンド形子機100によって吊り下げ用フック1が壁面50から離間する方向へ引っ張られたときの状態を示す図である。
【0026】
図3に示すように、吊り下げ用フック1の第1の懸架部11は、壁面50から垂直に突出した状態で、その上面は水平状態となっている。これにより、例えば握り押しボタン110のコード112を上方から第1の懸架部11に懸架して、コード112が壁面50から離間する方向に抜け落ちるのを係止部13により係止することができるようになっている。
【0027】
また、図3に示す通常の使用状態では、第2の懸架部12は、第1の面12aがほぼ水平状態となり、第2の面12bがほぼ垂直状態となっている。これにより、例えばハンド形子機100のハンガー部104を上方から第2の懸架部12に懸架して、ハンガー部104が壁面50から離間する方向に抜け落ちるのを係止することができるようになっている。
【0028】
一方、図4の矢印Aに示すように、第2の懸架部12に懸架されたハンド形子機100が壁面50から離間する方向に引っ張られると、第2の懸架部12がスリット14の位置において弾性変形する。すなわち、ハンド形子機100のハンガー部104が第2の面12bにより係止された状態で、壁面50から水平方向に離間する方向の外力をハンド形子機100が受けた場合、第2の懸架部12は、当該外力によりスリット14の部分を基点として下方に折れるように傾倒する。これにより、第2の面12bによる係止状態が解除され、第2の懸架部12に懸架されていたハンガー部104は、第2の懸架部12から滑り落ちる。
【0029】
以上詳しく説明したように、本実施形態では、物品が懸架される第1の懸架部11と、当該第1の懸架部11の前方先端よりもさらに前方に設けられ、物品が懸架される第2の懸架部12とを備えた構成としている。そして、第2の懸架部12を弾性部材(ゴムまたはエストラマー)により構成している。
【0030】
このように構成した本実施形態の吊り下げ用フック1によれば、異なる部位に形成された第1の懸架部11と第2の懸架部12のそれぞれに対して2つの物品を分けて懸架することができる。例えば、図3に示したように、第1の懸架部11に握り押しボタン110のコード112を掛ける一方、第2の懸架部12にハンド形子機100のハンガー部104を懸架するといった使い方ができる。これにより、ハンド形子機100のハンガー部104や握り押しボタン110のコード112を整理して懸架しやすくすることができる。
【0031】
また、本実施形態の吊り下げ用フック1によれば、ハンド形子機100のハンガー部104が第2の懸架部12に懸架された状態において、懸架されたハンド形子機100が無理に引っ張られる等により、水平方向(壁面50から離間する方向)に過度な外力が第2の懸架部12に加えられた場合であっても、第2の懸架部12が弾性変形して変位することにより、ハンガー部104の係止状態が解除され、外力を逃がすことができる。これにより、吊り下げ用フック1およびハンド形子機100のハンガー部104の損壊を回避することができる。
【0032】
また、本実施形態の吊り下げ用フック1は、第1の懸架部11の内部に空洞21を有し、壁面50に固定されたフック202を空洞21内に挿入可能な構成としている。そして、フック202を空洞21内に挿入したときに、第1の懸架部11をフック202に対して固定させるための構造を持たせている。これにより、壁面50に既に固定されているウォールユニットを取り換える必要がなく、本実施形態の吊り下げ用フック1をフック202に装着するだけで良いというメリットも有する。
【0033】
なお、上記実施形態では、第2の懸架部12の全体を弾性部材により構成する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第2の懸架部12は、スリット14およびその周辺部分のみを弾性部材により構成し、それ以外の部位は硬性樹脂等により構成するようにしてもよい。あるいは、第1の面12aを弾性部材により構成し、第2の面12bを硬性樹脂により構成するようにしてもよい。
【0034】
また、上記実施形態では、吊り下げ用フック1をフック202に装着する場合、フック202の全体が第1の懸架部11の空洞21内に挿入されるように、空洞21の断面形状をフック202の係止部の形状と略同じとする構成としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、図5(a)のように、フック202の少なくとも上方部分が空洞21内に挿入されるように空洞21を構成するようにしてもよい。あるいは、図5(b)に示すように、フック202の全体がその下方も含めて吊り下げ用フック1で覆われるように、空洞21の下方を開放せずに閉じた空間とするようにしてもよい。
【0035】
また、上記実施形態では、吊り下げ用フック1をフック202に装着したときに、第1の懸架部11の内接面22とフック202の係止部の外接面とが圧接するようにして、第1の懸架部11をフック202に固定させる例について説明したが、固定させるための構造はこれに限定されない。例えば、図5(c)に示すように、第1の懸架部11の空洞21の内接面22から内側に突出するツメ部23を設け、このツメ部23をフック202の係止部に係止させるようにしてもよい。
【0036】
図5(c)のような構成とすれば、吊り下げ用フック1が壁面50から離間する方向に引っ張られても、ツメ部23がフック202に引っ掛かり、吊り下げ用フック1がフック202から容易に外れないようにすることができる。この場合でも、第2の懸架部12が弾性変形して傾倒するので、ハンド形子機100のハンガー部104や吊り下げ用フック1の損壊を回避することができる。
【0037】
また、上記実施形態では、第1の懸架部11、第2の懸架部12および係止部13を一体的に構成し、何れも弾性部材(ゴムまたはエストラマー)とする例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1の懸架部11および係止部13を硬性部材により構成する一方、第2の懸架部12の全体または一部を弾性部材により構成するようにしてもよい。ただし、第1の懸架部11、第2の懸架部12および係止部13を一体として弾性樹脂で構成した方が好ましい。一体成形により製造が容易であり、第1の懸架部11の内接面22とフック202の外接面との密着力も大きくなり、装着の安定性が増すからである。
【0038】
また、上記実施形態では、第1の懸架部11に握り押しボタン110のコード112を懸け、第2の懸架部12にハンド形子機100のハンガー部104を懸架する例について説明したが、掛け方を逆にしてもよい。あるいは、第2の懸架部12にハンド形子機100のハンガー部104を懸架するとともに、同じハンド形子機100のコードを第1の懸架部11に掛けるようにしてもよい。また、懸架する物品もハンド形子機100や握り押しボタン110に限定されない。懸架可能な構造を有しているものであれば、吊り下げ用フック1に懸架することが可能である。
【0039】
また、上記実施形態では、第1の懸架部11を、その後方端部から前方先端まで、壁面50に対して略垂直に突出する形状に構成し、第1の懸架部11の前方先端に係止部13を設ける例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図6に示すように、第1の懸架部11’を、後方端部から前方先端までの間において、後方下側から前方上側に向けて傾斜する面11aを有する形状に構成してもよい。この場合の面11aは、図6に示すような曲面でもよいし、平面でもよい。図6のように第1の懸架部11’を構成する場合、係止部13は不要である。
【0040】
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 吊り下げ用フック
11,11’ 第1の懸架部
12 第2の懸架部
12a 第1の面
12b 第2の面
13 係止部
14 スリット
21 空洞
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8