(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6289992
(24)【登録日】2018年2月16日
(45)【発行日】2018年3月7日
(54)【発明の名称】粒状物収納容器
(51)【国際特許分類】
B65D 83/04 20060101AFI20180226BHJP
【FI】
B65D83/04 F
B65D83/04 E
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-94126(P2014-94126)
(22)【出願日】2014年4月30日
(65)【公開番号】特開2015-209262(P2015-209262A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2016年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】當麻 徹
【審査官】
植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】
実公昭37−003792(JP,Y1)
【文献】
実公昭34−021581(JP,Y1)
【文献】
実公昭09−002895(JP,Y1)
【文献】
実開平05−089281(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/04−83/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底壁を有する容器本体と、
前記底壁に対向する天壁及び該天壁に連結するとともに該底壁に向けて延在する縁壁を有し、該底壁、該天壁及び該縁壁との間で粒状物の収納空間を形成するとともに、前記容器本体に対し該底壁に沿う向きに揺動可能に支持される蓋体とを備え、
前記容器本体は、前記底壁に連結しその内側に前記粒状物を受け入れる受容空間を形成するとともに該受容空間に通じる入側開口を備える隔壁を有し、
前記蓋体は、前記収納空間に連通し該粒状物を一列に整列させる通路と、該通路に通じるとともに該蓋体の揺動にて該隔壁に向かい合う閉鎖状態或いは該入側開口に向かい合う開放状態に切り替わる出側開口とを有し、
前記隔壁は、円弧状に形成される円弧部を有し、前記蓋体は、前記縁壁との間で前記通路を形成するとともに該円弧部に摺動可能に当接して該蓋体を揺動可能に支持する内部壁を有する粒状物収納容器。
【請求項2】
前記内部壁は、前記隔壁に設けた係合部に係合して前記容器本体に対して該蓋体を抜け止め保持する被係合部を有する請求項1に記載の粒状物収納容器。
【請求項3】
前記蓋体は、前記通路に向けて延在するとともに前記収納空間から該通路に向かうにつれて前記縁壁との間隔を狭める傾斜壁を有する請求項1又は2に記載の粒状物収納容器。
【請求項4】
前記蓋体は、前記通路の延在する向きと交差する向きに延在し該通路内の粒状物を前記出側開口へ導くストッパーを有する請求項1〜3の何れか一項に記載の粒状物収納容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状物を収納する粒状物収納容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば球形状や扁平円形状をなす、菓子や薬剤等の粒状物を収納する粒状物収納容器としては、収納凹部の側方に計量凹部を設けた容器体と、計量凹部の内周上端部に開閉可能に嵌合する基板と、収納凹部を覆うとともに基板を固着させたシート材とを備え、計量凹部内に移動させた粒状物を、基板を開くことで取り出せるようにしたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−180726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで特許文献1の容器は、計量凹部が下方を向くように容器を傾倒させて収納凹部の粒状物を計量凹部に移動させ、次いで基板を開いて容器を反転させることで、計量凹部の粒状物を取り出すことができるように構成している。しかし、容器の姿勢によっては、計量凹部から取り出す粒状物に続いて収納凹部の他の粒状物が容器外に出てしまうことがあった。このため、余分な粒状物を再度容器内に戻さなければならず、手間を要することになっていた。また、一旦指で触れたものを容器内に戻すことになるので、衛生面の点でも改善の余地が残されていた。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決することを課題とするものであり、その目的は、意図した通りの個数で粒状物を取り出すことができる、新たな粒状物収納容器を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、底壁を有する容器本体と、
前記底壁に対向する天壁及び該天壁に連結するとともに該底壁に向けて延在する縁壁を有し、該底壁、該天壁及び該縁壁との間で粒状物の収納空間を形成するとともに、前記容器本体に対し該底壁に沿う向きに揺動可能に支持される蓋体とを備え、
前記容器本体は、前記底壁に連結しその内側に前記粒状物を受け入れる受容空間を形成するとともに該受容空間に通じる入側開口を備える隔壁を有し、
前記蓋体は、前記収納空間に連通し該粒状物を一列に整列させる通路と、該通路に通じるとともに該蓋体の揺動にて該隔壁に向かい合う閉鎖状態或いは該入側開口に向かい合う開放状態に切り替わる出側開口とを有
し、
前記隔壁は、円弧状に形成される円弧部を有し、前記蓋体は、前記縁壁との間で前記通路を形成するとともに該円弧部に摺動可能に当接して該蓋体を揺動可能に支持する内部壁を有する粒状物収納容器である。
【0008】
前記内部壁は、前記隔壁に設けた係合部に係合して前記容器本体に対して該蓋体を抜け止め保持する被係合部を有することが好ましい。
【0009】
前記蓋体は、前記通路に向けて延在するとともに前記収納空間から該通路に向かうにつれて前記縁壁との間隔を狭める傾斜壁を有することが好ましい。
【0010】
前記蓋体は、前記通路の延在する向きと交差する向きに延在し該通路内の粒状物を前記出側開口へ導くストッパーを有することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
容器本体に、粒状物を受け入れる受容空間を形成するとともに受容空間に通じる入側開口を備える隔壁を設け、蓋体に、粒状物を一列に整列させる通路と、この通路に通じるとともに蓋体の揺動にて隔壁に向かい合う閉鎖状態或いは入側開口に向かい合う開放状態に切り替わる出側開口とを設けたので、意図する個数の粒状物を受容空間に出した後は、蓋体を揺動させて閉鎖状態に切り替えることによって、容器の姿勢にかかわらず受容空間内の粒状物のみを取り出すことができる。
【0012】
隔壁に、円弧状に形成される円弧部を設け、蓋体に、縁壁との間で通路を形成するとともに円弧部に摺動可能に当接して蓋体を揺動可能に支持する内部壁を設ける場合は、蓋体を揺動させる機能を隔壁及び内部壁に持たせることができるので、蓋体を揺動させる機構を別途設ける必要がなくなって構造が簡素化できる。
【0013】
内部壁に、隔壁に設けた係合部に係合して容器本体に対して蓋体を抜け止め保持する被係合部を設ける場合は、容器本体から蓋体が不用意に外れることがなくなるので使い勝手が良くなる。
【0014】
蓋体に、通路に向けて延在するとともに収納空間から通路に向かうにつれて縁壁との間隔を狭める傾斜壁を設ける場合は、収納空間内の粒状物が通路に向けて移動しやすくなるので、粒状物がより取り出しやすくなる。
【0015】
蓋体に、通路の延在する向きと交差する向きに延在し通路内の粒状物を出側開口へ導くストッパーを設ける場合は、通路内を移動する粒状物は、ストッパーによって進行方向が変えられた後に出側開口へ向かうことになるので、粒状物が意図せずに連続的に出てしまう不具合を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に従う粒状物収納容器の一実施形態につき、出側開口が閉鎖状態である場合の平面図である。
【
図3】
図1の状態から蓋体を揺動させて、出側開口が開放状態である場合の平面図である。
【
図5】本発明に従う粒状物収納容器の他の実施形態につき、出側開口が閉鎖状態である場合の平面図である。
【
図7】
図5の状態から蓋体を揺動させて、出側開口が開放状態である場合の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明をより具体的に説明する。なお、本明細書、特許請求の範囲、要約書において、「上」とは、容器本体の底壁に対して蓋体の天壁が位置する側であり、「下」とは、その反対側である。
【0018】
図1〜
図4は、本発明に従う粒状物収納容器の一実施形態を示す図である。本実施形態の粒状物収納容器は、容器本体10、及び蓋体20で構成されていて、扁平円形状となる粒状物Tを収納できるようにしている。
【0019】
容器本体10は、平板状の底壁11を備えている。本実施形態の底壁11は、平面視において、平行に延在する一対の直線状端縁11a、11bの相互間を、後述する揺動軸Pを中心とする2つの円弧状端縁11c、11dで繋いだ形状になるものである。また
図2に示すように底壁11の下面には、操作時に指掛かりとなる突起11eが設けられている。また底壁11の端縁には、底壁11を全周に亘って取り囲むとともに上方へ向けて延在する外周壁12が一体に連結している。
【0020】
外周壁12の内側には、底壁11に一体に連結するとともに上方へ向けて延在する隔壁13が設けられている。本実施形態の隔壁13は、揺動軸Pを中心として円を描くように延在するとともにその周方向の一部が上下方向に切り欠かれた形状になる円弧部13aと、円弧部13aの周方向に離間する2つの端縁間において、この円弧部13aに一体に連結するとともに揺動軸Pに向けて凸状に形成される凸状部13bとで構成されている。凸状部13bの内側には、粒状物Tを後述する収納空間から受け入れる受容空間S1が形成されていて、円弧部13aの周方向に離間する2つの端縁間には、受容空間S1に通じる入側開口H1が形成されている。本実施形態における受容空間S1は、粒状物Tを1個収容できる大きさになっている。
【0021】
図2に示すように隔壁13には、円弧部13aの外周面から突出する爪状の係合部14が、円弧部13aの周方向に沿って形成されている。なお、本実施形態の係合部14は、円弧部13aの周方向全域に亘って設けているが、その延在長さを短くしたり途中を分断したりして部分的に設けるようにしてもよい。
【0022】
隔壁13の上部には、受容空間S1の上方を開放するようにして設けられる上壁15が一体に連結している。
【0023】
蓋体20は、平板状をなすとともに底壁11に対向するように設けられる天壁21を備えている。本実施形態の天壁21は、平面視において、揺動軸Pを中心とする2つの円弧状端縁21a、21bの相互間を、円弧状端縁21aの接線方向に延在するとともにこの円弧状端縁21aから離れるにつれて相互間の幅を狭める一対の直線状端縁21c、21dで繋いだ形状になるものである。また
図1、
図2に示すように天壁21の上面には、操作時に指掛かりとなる突起21eが設けられている。また天壁21の端縁には、天壁21を取り囲むとともに底壁11に向けて下方に延在する縁壁22が一体に連結している。底壁11、天壁21及び縁壁22で取り囲まれる領域は、粒状物Tの収納空間S2となっている。
【0024】
縁壁22の内側には、隔壁13を取り囲むとともに、円弧部13aの外周面に摺動可能に当接する円弧状の内部壁23が設けられている。これにより蓋体20は、容器本体10に対して、揺動軸Pを中心として底壁11に沿う向きに揺動可能に支持されることになる。また、縁壁22の円弧状端縁21aに沿う部分と内部壁23との相互間は、収納空間S2に連通する通路S3となっている。ここで通路S3は、粒状物Tが一列に整列する幅で形成されている。通路S3は、内部壁23の一部を上下方向に切り欠くように形成した出側開口H2まで延在している。
【0025】
図2に示すように内部壁23内周面には、爪状に形成された係合部14に係合するように、本実施形態では上方に対して下方が突出する段状に形成された、被係合部24が設けられている。これにより蓋体20は、容器本体10に対して抜け止め保持されることになる。
【0026】
図1に示すように天壁21の下面には、直線状端縁21d側の縁壁22から通路S3に向けて延在するとともに、収納空間S2から通路S3に向かうにつれて直線状端縁21c側の縁壁22との間隔が狭くなる傾斜壁25が、内部壁23に接するように設けられている。更に、出側開口H2が形成される内部壁23の端縁と縁壁22との間には、通路S3が延在する円弧状の向きに対して交差する向き(本実施形態では、通路S3の延在する向きに対して直交する向き)に延在する板状のストッパー26が設けられている。
【0027】
上記のように構成される粒状物収納容器は、蓋体20の内側に粒状物Tを収容しておき、容器本体10を蓋体20に被せて、係合部14と被係合部24とを嵌め合わせることで組み立てることができる。
【0028】
そして、
図1、
図2に示すように、直線状端縁11b側の外周壁12に対して直線状端縁21c側の縁壁22が近接或いは当接するように蓋体20を揺動させることで(外周壁12が揺動する蓋体20のストッパーとして機能する)、出側開口H2が隔壁13の円弧部13aに向かい合う状態(閉鎖状態)になる。この状態においては、通路S3と受容空間S1が連通していないため、粒状物Tを収納空間S2及び通路S3内に留めておくことができる。なお、本実施形態においては傾斜壁25を設けているので、収納空間S2内の粒状物Tを通路S3へスムーズに移動させることができる。
【0029】
続いて
図3、
図4に示すように、直線状端縁11a側の外周壁12に対して直線状端縁21d側の縁壁22が近接或いは当接するように蓋体20を揺動させることで(この場合も外周壁12が揺動する蓋体20のストッパーとして機能する)、出側開口H2が入側開口H1に向かい合う状態(開放状態)になる。そして、容器を傾けたり振ったりすることによって、通路S3内の粒状物Tを受容空間S1内に出すことができる。
【0030】
その後、蓋体20を
図1、
図2に示す位置まで揺動すれば、出側開口H2を再度閉鎖状態にすることができるので、受容空間S1に収容された粒状物Tのみを取り出すことができる。
【0031】
次に、本発明に従う粒状物収納容器の他の実施形態について、
図5〜
図8を参照しつつ説明する。なお、上述した実施形態と同一の構成となる部位は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0032】
図5〜
図8に示す粒状物収納容器は、
図1〜
図4に示す粒状物収納容器に対して、隔壁13及び上壁15に代えて隔壁16を設けたものである。隔壁16は、揺動軸Pを中心として円を描くように延在するとともにその周方向の一部が上下方向に切り欠かれた形状になる円弧部16aを備えている。円弧部16aの内側には、複数の粒状物Tを収容できる大きさとなる受容空間S4が形成されている。また、円弧部16aの周方向に離間する2つの端縁間には、受容空間S4に通じる入側開口H1が形成されている。
【0033】
本実施形態の粒状物収納容器も、
図5、
図6に示すように蓋体20を揺動させることで、出側開口H2が隔壁16の円弧部16aに向かい合う状態(閉鎖状態)になるので、粒状物Tを収納空間S2及び通路S3内に留めておくことができる。
【0034】
次いで
図7、
図8に示すように蓋体20を揺動させることで、出側開口H2が入側開口H1に向かい合う状態(開放状態)になるので、通路S3内の粒状物Tを受容空間S4内に1個、或いは複数個出すことができる。ここで、通路S3内の粒状物Tが出側開口H2から出る際は、ストッパー26によって粒状物Tの進行方向が変えられるので、粒状物Tが意図せずに連続的に出てしまう不具合を抑制することができる。なお、余分な粒状物Tが受容空間S4内に出てしまった場合でも、容器を傾けたり振ったりすることによって、粒状物Tを指で直接触れることなく通路S3内に戻すことができる。
【0035】
その後、蓋体20を
図5、
図6に示す位置まで揺動すれば、出側開口H2を再度閉鎖状態にすることができる。受容空間S4から粒状物Tを取り出すには、容器を反転させてもよいが、受容空間S4は広いため、粒状物Tを指で直接摘まむことも可能である。
【0036】
本発明に従う粒状物収納容器は、本実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に従う範囲で種々の変更が可能である。上述した実施形態では、容器本体10に設けた隔壁13、16の円弧部13a、16aに対し、蓋体20に設けた内部壁23が摺動可能に当接することによって蓋体20を揺動可能に支持するようにしたが、このような揺動機構に代えて、例えば容器本体10及び蓋体20の何れか一方に円柱部を設けるとともに、何れか他方にこの円柱部に対応する円筒部を設けて揺動機構を形成してもよい。また受容空間S1、S4の大きさは、適宜変更することができる。更に、被係合部24を爪状とし、係合部14はこれに係合する凹状、段状としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明によれば、意図した通りの個数で粒状物を取り出すことができる、新規の粒状物収納容器を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0038】
10 容器本体
11 底壁
11a、11b 直線状端縁
11c、11d 円弧状端縁
11e 突起
12 外周壁
13 隔壁
13a 円弧部
13b 凸状部
14 係合部
15 上壁
16 隔壁
16a 円弧部
20 蓋体
21 天壁
21a、21b 円弧状端縁
21c、21d 直線状端縁
21e 突起
22 縁壁
23 内部壁
24 被係合部
25 傾斜壁
26 ストッパー
H1 入側開口
H2 出側開口
P 揺動軸
S1 受容空間
S2 収納空間
S3 通路
S4 受容空間
T 粒状物